説明

二重装着光学系を備えた荷電粒子光学系

【課題】 試料を有するカートリッジを受け取るように備えられたその場試料ホルダを用いた試料の交換、及び全体が取り外されるホルダを用いた試料の交換に適した荷電粒子光学系のより簡便な構成を提案する。
【解決手段】 たとえば電子顕微鏡のような荷電粒子光学系(100)は、操作用に多数の試料のうちの特別な1つを収容するための空間(104)を備えた真空チャンバ(102)を有する。当該荷電粒子光学系は、前記空間に対して出し入れできるように動かすことのできる部分(108)を備えた装着体(106)を有する。前記部分は、当該光学系外部から運ばれる試料キャリア(110)を第1ホルダ(112)へ取り付け、又は前記第1ホルダから前記キャリアを外して当該光学系内部から前記キャリアを取り外すように備えられている。前記キャリアは第1試料を収容する。当該光学系は、前記第1ホルダ又は上に第2試料がマウントされる第2ホルダを取り外し可能なように供するため、前記チャンバの壁内にインターフェースを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子光学系に関し、当該光学系へ試料キャリアを装着する装着体に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子光学系は、荷電粒子-たとえば電子又はイオン-を試料に照射してその試料の像の生成又は表面の改質をするために特化された装置として周知である。係る装置の様々な構成は、それぞれの構成に対して通称で呼ばれている。たとえば、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、反射電子顕微鏡(REM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)、集束イオンビーム装置などである。試料が照射される分室は、荷電粒子の散乱を防止するように十分な低圧にまで排気された状態に保たれる。電磁レンズ又は静電レンズは、荷電粒子ビームの制御及びコリメーションに用いられる。典型的にはキャリア上に収容されている試料は試料ホルダの上に設けられる。その試料ホルダは、ビームに対して求められる位置に試料を保持するため、荷電粒子光学系の壁を貫通して延在する。試料ホルダは、「試料ホルダチップ」と呼ばれる試料が設けられる端部を有する。
【0003】
荷電粒子光学系の中には、たとえば試料の3次元モデル用にその試料の一連の像を生成することができるように、静止したホルダに対してチップの位置及び/又は配向をその場で変化させることのできる試料ホルダを有するものがある。ホルダが荷電粒子光学系から取り外されるときに、試料がチップ上に設けられる。たとえば特許文献1は、TEM内に試料チップを設けるホルダ集合体を備えたTEMを開示している。試料チップホルダ集合体は試料チップを支持するチップホルダを有する。そのチップホルダは、支持軸に対して実質的に垂直な方向の運動を支持する細長の支持体に結合する。アクチュエータは、その支持体に対するチップホルダの運動を生じさせるその支持体に設けられている。クリップ又は他の機械的な固定手段を用いるのではなくて試料チップに試料を結合させる手段により、試料チップのサイズを顕著に減少させることが可能となる。特に試料を固定又は設置する機構が必要なくなるため、TEM極部分の狭いギャップ間に適合するようなかなり薄いチッププロファイルが可能となる。一旦結合すると、個々の試料は、処理され、かつ交換可能な試料チップを供えた集合体として保存されて良い。
【0004】
さらに他の荷電粒子光学系は、低温用途-たとえば生体試料の調査-向けに特別に設計されている。係る光学系では、調査される試料はたとえば液化窒素又はヘリウム温度にまで冷却され、試料ホルダチップに設けられる。
【0005】
求められる低温に試料を保持するため、係る光学系の一構成は、試料ホルダに設けられていて試料と熱的に接触している冷却装置を有する。しかしこの構成は、試料ホルダチップで試料を交換するのに、試料ホルダ全体が光学系から取り外されなければならないという欠点を有する。試料交換は、動作中の温度と同じような低温では行うことができない。その結果、新たな試料を有する試料ホルダを光学系へ再導入する際、当該光学系全体は熱平衡ではないため、電子ビームに対する試料の熱ドリフトが生じ、像品質に悪影響が及ぼされる。従って当該光学系は、高品質像を得ることができる前に熱平衡に到達していなければならない。よって当該光学系が動作可能な時間が短くなってしまう。
【0006】
特許文献2は、低温用途向けの電子顕微鏡の構成を開示している。このとき試料ホルダは、電子顕微鏡の通常動作中、排気された分室内の固定された位置に保持されている。試料ホルダは、電子顕微鏡外部からのアクセスが可能な、試料ホルダの並進及び回転用制御ユニットを有する。脱着ユニットは、試料ホルダが配置される位置付近である電子顕微鏡の壁に-好適には電子顕微鏡の鏡筒の壁と同じ高さであって試料ホルダと正反対の位置に-設けられている。電子顕微鏡の動作中に試料を収容する対象物空間はまた、脱着ユニットの一部をも収容する。脱着ユニットが設けられることで、装置の設計-特にその光学的側面について-を修正することを要しないという利点が与えられる。なぜなら脱着ユニットが設けられても粒子光学鏡筒内での光学素子の位置が影響を受けないからである。脱着ユニットは、電子顕微鏡の鏡筒内部にある排気空間に対して試料を搬入出し、かつ前記空間内部の試料ホルダへ試料を運び込み、かつ該ホルダから試料を運び出す。試料自体はまだ所望の最終温度に到達している必要はない。なぜなら試料はわずか少量の冷却物質でしか構成されていないために、熱容量が小さく、すぐに冷却できるので、試料ホルダの顕著な加熱は起こらないためである。調査される試料は、既知の方法(たとえば従来の試料ホルダの場合に用いられるような方法)で対象物空間内へ搬入され、続いて脱着ユニットのアーム端部に設けられ、その後脱着ユニットへ導入される。その後試料ホルダの端部は、試料を受け渡すため、脱着ユニットのアーム端部と接触する。試料を脱着ユニットから試料ホルダへ搬送する間、試料ホルダ端部と脱着ユニットの対応する端部との間の熱接触は、脱着ユニットの搬送アームの断熱を供することにより、かつ/又はこのアームを細くすることにより、かつ/又は接触期間を制限することにより、制限されて良い。よって試料ホルダ自体は、試料を交換するために装置から取り外されないのは明らかである。実際試料ホルダは、光学系が主要な動作をしない状態で通常動作している間に取り外すことができない。複数の冷却管が、装置内部に設けられた試料ホルダと冷却源との間にそれぞれ別個に供されている。ここで「それぞれ別個に」という語は、冷却管が試料ホルダ端部へ接続し、それ以外の態様では試料ホルダには接続しないことを意味すると解される。その結果、冷却が最も望ましい場所-つまり試料のすぐ近く-で冷却が起こる。
【0007】
特許文献3は、交換可能な試料キャリアとの併用に適している試料ホルダに関する。より詳細には特許文献3は、試料キャリアと試料ホルダの複合構造に関する。試料キャリアは試料ホルダからそれぞれ別個に実装されて良い。試料キャリアは金属片から作製されて良く、かつ単純で高価ではない素子である。試料キャリアが結合する試料ホルダの一部分も単純な形状を有する。試料キャリアは結合ツールを用いることによって真空中で試料ホルダと結合することができる。協働する複合構造の実施例においては、結合ツールは自動結合ツールである。自動結合ツールはプロセスの自動化を可能にする。また結合ツールは、真空中で試料キャリアを試料ホルダへ取り付けることを可能にする。後者は、事前に冷却された試料キャリアが低温-たとえば液化窒素又はヘリウム周辺温度-の試料ホルダに取り付けられなければならない、所謂低温での用途において特に重要である。交換可能な試料キャリアと併用されるように備えられた光学系は、各々が各異なるキャリアに収容されている複数の試料からなるバッチの(自動)処理に非常に適している。
【0008】
他の実施例では、試料キャリアの試料ホルダヘの結合、又はその試料ホルダからの試料キャリアの取り外しは、真空中で行われる。真空は、TEM、STEM、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、集束イオンビーム装置(FIB)、オージェアナライザ、2次イオン質量分析計(SIMS)、走査プローブ顕微鏡(SPM)、X線アナライザ、スパッタコータ、プラズマクリーナ、又は蒸着ユニットの一部であって良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7291847号明細書
【特許文献2】米国特許第5986270号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0250881号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
荷電粒子光学系内部に試料ホルダチップを設置できる空間は非常に小さく、一般的には固有寸法は5nmのオーダーである。試料ホルダはまた、たとえば0.1nm以下の画像分解能を可能にするため、機械的に非常に安定である。上述の特許文献は、試料ホルダ集合体が一般的には特定の種類の用途向けに設計されていることを示している。たとえば低温用途に用いられる試料ホルダの設計は、熱に関する基準についての検討に基づく。そのような基準とはたとえば、適切な材料で作られているか、又は、低温で適切に機能するように、試料ホルダチップの位置と配向を制御するための接合剤と潤滑剤が使用されているかである。別な例として、高温-たとえば500K-で使用するための試料ホルダは、材料及び接合剤に新たな要求を課す。さらに別な例として、試料ホルダは、試料を保持する交換可能カートリッジを受け取るように備えられて良い。さらに別な例として、たとえばチップの位置及び/又は配向(1つ以上の自由度を伴って傾く)をそのホルダに対して調節可能な試料ホルダが利用可能である。このためチップでは複雑な機器構成が必要となってしまう。このことは荷電粒子光学系の試料ホルダ集合体が高価な部品であることを示している。
【0011】
本願発明者らは、荷電粒子光学系への試料の装着が一般的にデリケートなプロセスであることを認識していた。試料は試料ホルダ上に設けられなければならない。試料は、設けている間及び/又はそのホルダを荷電粒子光学系へ装着する間に、損傷を受ける恐れがある。
【0012】
本願発明者らはまた、既知の荷電粒子光学系の構成では、試料ホルダの用途は特定の種類に限定されてしまうことも認識していた。特許文献2は、電子顕微鏡内に設けられた試料ホルダ、及び該試料ホルダ上に試料を配置する搬送ユニットについて開示している。試料ホルダは、試料を受け取るために搬送ユニットへ向かって移動し、続いて電子顕微鏡を動作させる位置へ戻るように移動する。操作可能な空間が存在するため、搬送ユニットの一部と冷却手段の一部が対象物空間へ入り込むようにして延在する結果、特許文献2に開示された構成が複数の試料ホルダの交換による試料の交換に適さなくなる。また上述のように取り外し及び再挿入が熱平衡の要件と干渉するので、特許文献2に開示された構成は1つの試料ホルダの交換による試料の交換にも適さなくなる。他方特許文献1では、試料ホルダの用途は、すでにチップに結合した試料を有する試料ホルダに限定される。試料を交換するため、試料ホルダは電子顕微鏡から取り外されなければならず、かつ試料はチップから機械的若しくは化学的に取り外されるか、又は交換されなければならない。チップへ新たな試料を結合させた後でなければ、試料ホルダを、新たな動作サイクルを行う電子顕微鏡に再挿入することができない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って本願発明者らは、試料を有するカートリッジを受け取るように備えられたその場試料ホルダを用いた試料の交換、及び全体が取り外されるホルダを用いた試料の交換に適した荷電粒子光学系のより簡便な構成を提案する。
【0014】
より具体的には本発明は、動作中に多数の試料のうちの特定の1つを収容する空間を備えた排気可能チャンバを有する荷電粒子光学系に関する。当該光学系は装着体(loader)を有し、該装着体は、一部を、前記空間に対して制御可能に出し入れできるように案内する案内手段を有する。前記一部は、前記チャンバ外部から運ばれるキャリアを第1試料ホルダへ取り付けること、又は、前記第1試料ホルダから前記キャリアを取り外して前記チャンバ内部から前記キャリアを取り除くことを可能にするように備えられている。前記キャリアは前記試料のうちの第1試料を収容するように備えられている。当該光学系はまた、当該光学系の動作中、前記第1試料ホルダ又は上に前記試料のうちの第2試料が設けられている第2試料ホルダを取り外し可能なように収容及び位置設定するためのインターフェースをも前記チャンバ内に有する。
【0015】
従って本発明の荷電粒子光学系は、既にホルダ上に設けられた試料を装着するだけではなく、カートリッジ、又は当該光学系内に既に設けられているホルダへ取り付けられなければならない他のキャリア上の試料を装着することを可能にする。これらの種類のホルダ間での交換は、オペレータからの追加サービス動作を必要としない。よって本発明に係る光学系はその動作の柔軟性-当該光学系が、高い試料温度、低い試料温度、試料の変形の利用等といった全種類の実験をサポートするのに用いることができること-を維持する。特許文献2に開示された電子顕微鏡では、試料ホルダは装着ユニットに対して接近又は遠ざかるように移動する。その一方で本発明では、装着体は、静止したホルダに対して接近又は遠ざかるように移動する一部を収容する。従って本発明に係るカートリッジ装着サイクルはホルダの設置と干渉しない。
【0016】
本発明の光学系に係る実施例では、前記装着体は真空ロードロックを有し、かつ前記一部はグリッパを有する。知られているように、真空ロードロックは真空を維持しながら対象物をチャンバへ搬入出することを可能にする。案内手段は、キャリアへ着脱するように移動するときに、前記グリッパを案内するように備えられている。当該光学系は、当該光学系又はチャンバ内部であって前記空間外部の引っ込んだ位置に前記グリッパを装着できるように、前記真空ロードロック及びグリッパを機械的に係合する手段を有する。
【0017】
他の実施例では、前記手段は鍵及び該鍵と一致する案内チャネルを有する。前記鍵は前記グリッパ及び真空ロードロックのうちの一の上に設けられる。前記案内チャネルは前記グリッパ及び真空ロードロックのうちの他の中に設けられる。
【0018】
本発明はさらに、上で特定した荷電粒子光学系で用いられる装着体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る荷電粒子光学系のブロック図である。
【図2】本発明に係る装着体を表すブロック図である。
【図3】本発明に係る装着体を表すブロック図である。
【図4】本発明に係る装着体を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、例示及び添付図面の参照によりさらに詳細に説明される。
【0021】
全ての図を通じて、同一又は対応する特徴部位は同一参照番号によって表されている。
【0022】
図1は本発明の荷電粒子光学系100のブロック図である。荷電粒子光学系は当技術分野において周知であるので、図1は、本発明に関連する部品のみを図示している。
【0023】
荷電粒子光学系100-たとえばTEM又はSTEM-は排気可能なチャンバ102を有する。排気可能なチャンバ102は、真空ポンプ(図示されていない)と結合し、かつ荷電粒子光学系100の動作時に複数の試料のうちの特定の1つを収容する空間を有する。荷電粒子光学系100はまた装着体106をも有する。装着体106は空間106へ出し入れするように移動可能な部分108を供する。部分108は、荷電粒子光学系100の外部若しくはチャンバ102の外部から運ばれたキャリア110を第1試料ホルダ112へ取り付けること、又は、第1試料ホルダ112からキャリア110を取り外してチャンバ102の内部若しくは荷電粒子光学系100の内部からキャリア110を取り除くことを可能にするように備えられている。キャリア110は複数の試料のうちの第1試料114を収容するように備えられている。荷電粒子光学系100はさらにチャンバ102内にインターフェース116を有する。インターフェース116は、第1試料ホルダ112又は上に複数の試料のうちの第2試料120を設けている第2試料ホルダ118を取り外し可能なように収容することを目的とする。
【0024】
第2試料ホルダ118は、チルト、ダブルチルト、回転、加熱又は他の機能を示す、当業者にとって既知の標準的なサイドエントリーTEM試料ホルダに似ていることが好ましい。とはいえ他の種類の試料ホルダが用いられても良い。
【0025】
従って荷電粒子光学系100は、第1試料114が装着体106を介して第1試料ホルダ112上へその場で設けられる第1モード、及び、第1試料ホルダ112と第2試料ホルダ118を交換する際に第2試料120が第2試料ホルダ118に設けられた状態で共に搬送される第2モード、で動作する。部分108が空間104へ出入りするように移動可能であることに留意して欲しい。部分108が空間104へ入り込むように移動するとき、キャリア110はホルダ112へ取り付けられ、又はホルダ112から取り外されて良い。このとき部分108は空間104から引っ込んでいて良い。第1試料ホルダ112の代わりに第2試料ホルダ118が用いられる場合、部分108は問題が生じないように保持されるので、第2試料ホルダ118を操作する空間が最大化される。ここで第2試料ホルダ118は、第1試料ホルダ112のチップ端よりもわずかに広い空間を占めるチップ端を有することが可能である。
【0026】
このようにして、本発明による荷電粒子光学系100は、グリッパによって導入されて第1試料ホルダと結合する小さなチップ上に設けられた試料を介して、標準的なサイドエントリーTEM試料ホルダを用いたシステムの全機能とカセット装着体の機能とを結合させることにより、試料が設けられる前記チップの受け取り体として機能する。
【0027】
図2は断面から見た本発明の装着体106のブロック図である。図1に図示された排気可能チャンバ102は壁220を有する。装着体106は真空ロードロック202を有する。部品108は、鍵206によって真空ロードロックと係合するグリッパ204を有する。ホルダ112へのキャリア110の取り付け(グリッパが矢印208の方向に移動するとき)又は第1試料ホルダ112(矢印208とは反対の方向に移動するとき)及び荷電粒子光学系100からのキャリア110の取り外しを目的として、試料114を備えたキャリア110を荷電粒子光学系100に対して搬送するのにグリッパ204を用いることが、真空ロードロック202によって可能となる。グリッパ204は手動制御されて良いし、又はロボティックス分野において既知の適切なアクチュエータを用いることにより、コンピュータ若しくはマイクロ制御装置によって自動制御されても良い。キャリア110及び第1試料ホルダ112は、たとえば上述したような特許文献3に開示された方法、又はグリッパ204を用いて第1試料ホルダ112とキャリア110を機械的に適合させることを可能にする他の方法に従って設計される。真空ロードロック202は、キャリア110の搬入出中に空間104を真空に保つことが好ましい。
【0028】
真空ロードロック202とグリッパ204の係合は、グリッパ204だけが、真空ロードロック202に対してある特定の方向で、その真空ロードロック202へ取り付け又は取り外しできるようにされることが好ましい。そのような係合が好ましい理由は、グリッパ及び/又は試料114を備えたキャリア110が依然として装置内に挿入されたままで、かつ第1試料ホルダ112と結合したままの状態であるときに、別なキャリア及び別な試料を備えた別なグリッパが誤って搬入されることを回避するためである。そのため、キャリア110を第1試料ホルダ112へ取り付けた後、グリッパ204は真空ロードロック202へ引き込まれ、かつ試料114上で実験が行われている間そこに留まることができる。第1試料ホルダ112が電子ビームの方向に対して試料114を傾けるようにチップの向きを変化させるとき、グリッパ204は電子ビーム又は第1試料ホルダ112と干渉しないように位置設定される。
【0029】
図3及び図4は、図2と共に単純な係合機構を表す図である。グリッパ204は鍵206を有し、その鍵206の形状及び寸法は真空ロードロック202中のプロファイルを有する案内用チャネル302と一致する。チャネル302は、グリッパ204を案内し、かつ引っ込んだ位置にグリッパ204を固定する。動作をわかりやすくするため、グリッパは真空ロードロック202を介して荷電粒子光学系100へ運び込まれるものとする。図2の矢印208はグリッパ204の移動方向を表す。図3は、矢印208の後部によって表されているように荷電粒子光学系100外部から真空ロードロック202を見たときの、真空ロードロック202の下半分を表す図である。図4では、チャネル302は第1部分402を有する。第1部分402は、グリッパ204を最初に矢印208の方向へ動かすように鍵206を案内する。続いてグリッパ204はある位置に維持され、かつ部分404を介して鍵を部分406へ動かすように、長手軸の周りで時計回りに回転する。一旦鍵206が部分406に入ると、グリッパ204は、キャリア110を第1試料ホルダ112へ取り付けるように、矢印208の方向へさらに動くことができる。よって一旦キャリア110が設けられると、グリッパ204は矢印208の方向とは反対の方向-つまり荷電粒子光学系100からその外部へ向かう方向-へ引き込まれる。チャネル302はある位置に鍵206を保持するための部分408を有する。ここでグリッパ204は真空ロードロック202内に引き込まれ、かつ固定される。図2、図3、及び図4は、グリッパ204を真空ロードロック202へ係合する例を図示するに過ぎない。当業者にとっては、他のプロファイルを有するチャネルが一致する鍵と併用されて良いこと、及び鍵が真空ロードロック202内に収容されたままで案内チャネルをグリッパ204の外側表面に作ることが可能であることは明らかである。
【0030】
一旦グリッパ204がチャネル部分408に固定されると、グリッパは矢印208の方向-荷電粒子光学系100内部へ向かう方向-に動くことによってしか解放できない。これにより、試料114での実験が終了するときに、第1試料ホルダ112からキャリア110を取得するのが補助され、かつ試料114は取り外し、又は別な試料と交換可能となる。チャネル302のプロファイルは、(好適には真空ロック-図示されていない-を介して)荷電粒子光学系100からグリッパ全体を取り外すため、グリッパ204が第1試料ホルダ112からキャリア110を取得しなければならないように設計されて良い。この構成は、キャリア110が依然として第1試料ホルダ112に取り付けられたままであるときに他のキャリア(図示されていない)が偶然搬送されるのを防ぐ。またグリッパ204が部分408において引っ込んだ位置で固定されるとき、グリッパ204は、電子ビーム、又は、該電子ビームに対して試料114及び試料120を設置若しくは配向させる第1試料ホルダ112のチップ若しくは第2試料ホルダ118のチップの制御された運動とも干渉しないことに留意して欲しい。
【0031】
インターフェース116に設けられたときの第1試料ホルダに対して位置合わせされるように、グリッパ204がインターフェース116に対向する空間へ入り込んでかつ位置設定されるように、真空ロードロック202は位置設定される。荷電粒子光学系100は依然として、空間104で試料120を交換する手順は試料120が取り付けられている第2試料ホルダ118を取り外す手順を含む場合でも使用可能であることに留意して欲しい。
【符号の説明】
【0032】
100 荷電粒子光学系
102 排気可能チャンバ
104 空間
106 装着体
108 部分
110 キャリア
112 第1試料ホルダ
114 第1試料
116 インターフェース
118 第2試料ホルダ
120 第2試料
202 真空ロードロック
204 グリッパ
206 鍵
208 矢印
220 壁
302 チャネル
304 矢印
402 第1部分
404 部分
406 部分
408 部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作中に多数の試料のうちの特定の1つを収容する空間を備えた排気可能チャンバを有する荷電粒子光学系と併用される装着体であって、
当該装着対は一部を前記空間に対して制御可能に出入りできるように案内する案内手段を有し、
前記一部は前記チャンバ外部から運ばれるキャリアを第1試料ホルダへ取り付けること、又は、前記第1試料ホルダから前記キャリアを取り外して前記チャンバ内部から前記キャリアを取り除くことを可能にするように備えられ、かつ
前記キャリアは前記試料のうちの特定の1つの試料を収容するように備えられている、
装着体。
【請求項2】
当該装着体は真空ロードロックを有し、
前記一部はグリッパを有し、
前記案内手段は、前記キャリアへ着脱するように移動するときに、前記グリッパを案内するように備えられ、かつ
前記案内手段は、前記荷電粒子光学系内でかつ前記空間外部の引っ込んだ位置に前記グリッパを固定できるように、前記真空ロードロック及びグリッパを機械的に係合する係合手段を有する、
請求項1に記載の装着体。
【請求項3】
前記係合手段は鍵及び該鍵と一致する案内チャネルを有し、
前記鍵は前記グリッパ及び真空ロードロックのうちの一の上に設けられ、かつ
前記案内チャネルは前記グリッパ及び真空ロードロックのうちの他の中に設けられる、
請求項2に記載の装着体。
【請求項4】
上記請求項のうちのいずれかに記載の装着体(loader)を有する荷電粒子光学系であって、
当該荷電粒子光学系は:
当該荷電粒子光学系の動作中に多数の試料のうちの特定の1つを収容する空間を備えた排気可能チャンバ;
一部を前記空間に対して制御可能に出入りできるように案内する案内手段を有する装着体であって、前記一部は前記チャンバ外部から運ばれるキャリアを第1試料ホルダへ取り付けること、又は、前記第1試料ホルダから前記キャリアを取り外して前記チャンバ内部から前記キャリアを取り除くことを可能にするように備えられ、かつ前記キャリアは前記試料のうちの第1試料を収容するように備えられている、装着体;並びに、
当該荷電粒子光学系の動作中、前記第1試料ホルダ又は上に前記試料のうちの第2試料が設けられている第2試料ホルダを取り外し可能なように収容及び位置設定するために前記壁内に存在するインターフェース;
を有する荷電粒子光学系。
【請求項5】
前記装着体は真空ロードロックを有し、
前記一部はグリッパを有し、
前記案内手段は、前記キャリアへ着脱するように移動するときに、前記グリッパを案内するように備えられ、かつ
前記案内手段は、当該荷電粒子光学系内でかつ前記空間外部の引っ込んだ位置に前記グリッパを固定できるように、前記真空ロードロック及びグリッパを機械的に係合する係合手段を有する、
請求項4に記載の荷電粒子光学系。
【請求項6】
前記係合手段は鍵及び該鍵と一致する案内チャネルを有し、
前記鍵は前記グリッパ及び真空ロードロックのうちの一の上に設けられ、かつ
前記案内チャネルは前記グリッパ及び真空ロードロックのうちの他の中に設けられる、
請求項5に記載の荷電粒子光学系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−108936(P2010−108936A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249986(P2009−249986)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】