説明

互いに同心的に配置された2つの射出領域を有する噴射剤ノズルを備えるアーク溶接トーチまたは切断トーチの洗浄装置、およびこれに対応する方法

本発明は、噴射剤ノズルによりトーチの個々の機能部品に吹き付けられる低温の噴射剤によって、アーク溶接トーチまたは切断トーチから汚れを洗浄する装置(10)および方法に関する。噴射剤ノズル(12)は、互いに同心的に配置された少なくとも2つの噴射剤の射出領域(22、24)を有しており、トーチの洗浄されるべきすべての機能部品に広い面積で同時に、かつ的確に低温の噴射剤を作用させるために、開口角の異なる少なくとも2つの補助ジェットを形成するように構成されている。このことは、洗浄結果を大幅に損なうことなく、噴射剤ノズルの位置に対するトーチヘッド部の位置決めについての広い許容範囲を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク溶接トーチまたは切断トーチを洗浄する装置、および、ガスノズル、通電ノズル等のようなアーク溶接トーチまたは切断トーチの機能部品を低温の噴射剤を用いて洗浄するための対応する洗浄方法に関する
【背景技術】
【0002】
たとえばCOペレットと圧縮空気、あるいはCOスノーと圧縮空気といった低温の噴射剤または噴射剤混合物を用いてアーク溶接トーチまたは切断トーチを洗浄するための洗浄装置ならびに洗浄方法は、それ自体としては従来技術で知られている。コールドジェット技術に基づくこのような洗浄方法は、トーチの機能部品と、これに付着するたとえばスパッタ等の汚れとの異なる熱膨張特性を利用するものであり、このような汚れは、トーチの機能部品に低温の噴射剤が作用したときに、発生する熱応力に基づいて機能部品から除去される。
【0003】
したがって、その使用が常に部分的にトーチの機能部品の著しい負荷を伴うことになる、たとえばフライス工具、ワイヤブラシ等の機械式の洗浄工具を利用せずにすませることができる。
【0004】
たとえば国際公開第02/49794A1号公報より、コールドジェット技術を適用して溶接トーチを洗浄する方法および装置が公知である。その場合、低温の噴射剤または低温の噴射剤混合物は均等に、もしくはインターバルをおいて、洗浄されるべき面に吹き付けられる。さらに、回転可能な複数の噴射ノズルによって、溶接トーチの定義された区域を、特定の可変な角度で洗浄することができる。しかしその場合の欠点は、このような装置の洗浄能力を、トーチの側方にあるガス入口穴にまで作用させることができないことである。
【0005】
さらに問題となるのは、外側からも内側からも行わなくてはならないガスノズルの洗浄である。この点で、回転式の噴射剤ノズルは噴射剤を、ノズルの回転角に対応しているガスノズル内部の部分領域へ常に向けており、トーチの機能部品の完全な洗浄用としては限定的にしか設計されていない。
【0006】
さらに国際公開第2005/102584A1号公報より、多段階の洗浄方法が公知となっており、この場合、第1の段階では洗浄ヘッドの洗浄スリーブが、ガスノズルの外径に依存して決まる間隔をおいて、ガスノズルの手前で位置決めされる。そしてこの間隔で、第1の洗浄ステップで、ガス吐出開口部の洗浄がCOスノーの作用によって行われる。その後、溶接トーチがコンタクトチューブとともに洗浄装置の洗浄スリーブの中へ挿入され、それにより、引き続いてコンタクトチューブおよびガスノズルの内部領域の洗浄が行われる。
【0007】
さらに国際公開第2005/102584A1号公報は、リング状に構成された冠状ノズルの形態で配置されている内穴を備える洗浄パイプを開示している。この文献には、たとえば軸方向で互いに相応に段差のある冠状ノズルを備える、互いに段差のある2つの洗浄パイプも記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような2段階の洗浄プロセスにおける欠点は、洗浄装置の手前で溶接トーチを正確に位置決めすることにあり、特に、洗浄ステーションの洗浄スリーブの中へ、トーチのコンタクトチューブを正しい見当で挿入することにある。特に、そのための衝突を回避するために、多くの場合、かなり高いコストのかかるセンサ装置が必要である。特に、手作業または手動操作による溶接トーチまたは切断トーチの場合、このような正しい見当での位置決めを保証することはできず、洗浄スリーブへコンタクトノズルを挿入するときに損傷が起こる可能性があり、そのような損傷は、保守整備の目的のための洗浄工程の中断ないし溶接設備全体の作動停止を要求してしまう。
【0009】
それに対して本発明の課題は、冒頭に述べた種類の洗浄装置をさらに改良して、溶接トーチまたは切断トーチの機能部品の完全な洗浄がただ1回のステップで、ないしはただ1つの所定の洗浄位置でのトーチの位置決めによって、行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の根底にある課題は、請求項1に記載の洗浄装置によって解決され、ならびに、請求項17に記載の洗浄方法によって解決される。本発明のその他の有利な実施形態は、それぞれの従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明は、アーク溶接トーチまたは切断トーチを洗浄する装置に関するものであり、特に、ガスノズルやコンタクトノズルないし通電ノズル等のようなその機能部品から、たとえば金属スパッタのような汚れを、たとえば圧縮空気との組み合わせも含めたCOペレット、液体CO、またはCOスノーといった低温の噴射剤を機能部品へ作用させるための噴射剤ノズルを用いて洗浄することに関するものである。
【0012】
本発明による装置は、互いに同心的に配置された少なくとも2つの噴射剤の射出領域を備える噴射剤ノズルを有している。これら少なくとも2つの射出領域は構造的に互いに分離されており、トーチの洗浄されるべきほぼすべての機能部品へ、低温の噴射剤を的確かつ同時に作用させることを可能にする。このとき洗浄装置から射出される噴射は、相応の噴射フォーミングを受ける。したがって、洗浄装置に対して相対的なさまざまな洗浄位置へのトーチの位置決めまたは移動は、もはや必要ない。
【0013】
したがって、溶接トーチまたは切断トーチをただ1つの所定の洗浄位置へ位置決めすることで、ほぼ完全に汚れを洗浄することができる。
【0014】
第1の実施形態では、少なくとも2つの射出領域は内側および外側の射出領域として構成されており、噴射剤ノズルはそれに応じて内側および外側の案内部材を有しており、特に、内側および外側のスリーブを有している。内側および外側のスリーブは、同心的な射出領域を形成するために、互いに同心的に配置されているのが好ましい。このとき内側のスリーブないし内側の案内部材は、外側の案内部材ないし外側のスリーブで完全に取り囲まれている。
【0015】
トーチの洗浄時には、内側のスリーブだけでなく、内側および外側のスリーブで形成される中間スペースも通って噴射剤が流動する。内側および外側の案内部材を貫流した後、噴射剤は両方の射出領域から、典型的にはそれぞれ異なる角度で射出され、それにより、特に、トーチの機能部材への噴射剤による均等および/または完全な作用を行うことができる。
【0016】
本発明の1つの発展例によると、噴射剤ノズルは一体的に構成されており、すなわち、噴射剤ノズルの内側および外側のスリーブはただ1つの構造的なユニットを形成しており、内側および外側のスリーブはウェブ連結部によって互いに連結されているのが好ましい。内側および外側の案内部材からなる噴射剤ノズルの一体的な構成は、特に、洗浄装置への噴射剤ノズルの取付けのために好ましく、また、たとえば洗浄目的や点検目的のための噴射剤ノズルの取替えのためにも好ましい。
【0017】
特に、噴射剤ノズルは洗浄装置のハウジングに取外し可能に取り付けられていることが意図される。
【0018】
本発明の1つの有利な実施形態では、噴射剤ノズルは外側の案内部材に外嵌可能なユニオンナットによって洗浄装置のハウジングに取付可能である。このときユニオンナットは、噴射ノズルの領域に配置されたハウジング側のねじ山に螺着可能であり、このことは噴射剤ノズルそのものの交換や洗浄を大幅に容易にする。
【0019】
これに加えて、噴射剤ノズルのハウジング側の保持手段およびこれと協働作用する対応保持手段が、洗浄装置のハウジングに噴射ノズルを保持するために設けられる。このとき噴射剤ノズルの対応保持手段は、噴射剤ノズルの外側の案内部材ないし外側のスリーブに配置されるのが好ましい。保持手段として、ないし対応保持手段として、円筒ピンまたは心合わせピン、ないし円筒ピンまたは心合わせピンに対応して構成された受け部が設けられるのが好ましい。
【0020】
円筒ピンまたは心合わせピンはハウジング側で洗浄装置に配置されており、対応保持手段としての外側の案内部材に沿って噴射剤ノズルに嵌込み可能であるのが好ましい。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態では、噴射剤ノズルの内側および外側の案内部材の領域に、噴射剤の吐出開口部が設けられている。好ましくはハウジング側に配置されるこれらの吐出開口部は、たとえば穴によって構成されている。
【0022】
本発明の1つの発展例では、噴射剤は洗浄プロセスのとき選択的に、かつ独立して、個々の吐出開口部を通して噴射剤ノズルの異なる案内部材ないし案内領域へと誘導することができる。
【0023】
さらに、噴射剤ノズルの内側の射出領域に位置している吐出開口部は、噴射剤ノズルの外側の射出領域に設けられた吐出開口部よりも、洗浄装置のハウジングから大きい間隔をおいて配置されていることが意図される。このようにして、洗浄剤の内側の吐出開口部は、外側の吐出開口部よりも、装置のハウジングから突出することになる。内側および外側の射出領域の手前に設けられた吐出開口部が、ハウジングから、ないし噴射剤ノズルの自由端から、それぞれ異なる距離で間隔をおいて配置されていることによって、特に、異なる射出領域から射出される補助ジェットの異なる開口角を生成することができる。
【0024】
本発明のさらに別の有利な実施形態では、内側の案内部材の幾何学形態は、実質的に、アーク溶接トーチまたは切断トーチの通電ノズルの幾何学形態に合わせて適合化されている。
【0025】
さらに、噴射剤ノズルの外側の案内部材の幾何学形態は、実質的に、アーク溶接トーチまたは切断トーチのガスノズルの幾何学形態に合わせて適合化されていることが意図される。それに応じて、内側の案内部材ないし内側の射出領域から射出される噴射剤は、トーチの通電ノズルまたはコンタクトノズルを洗浄することが意図されるのに対して、外側の射出領域ないし外側の射出領域から射出される噴射剤は、実質的にガスノズルを洗浄する役目を果たす。
【0026】
特に、内側の案内部材はガスノズルの内側領域を洗浄するためにも構成されているのに対して、外側の案内部材から射出される洗浄ジェットは、ガスノズルの外壁の洗浄にも利用されるのが好ましい。洗浄装置のハウジングへの噴射剤ノズルの取外し可能な取付けと組み合わされた、溶接トーチまたは切断トーチの洗浄されるべき機能部品の幾何学形態に合わせた案内部材ないし噴射剤ノズルの幾何学形態の適合化は、トーチヘッド部の寸法が異なるさまざまな種類のトーチに合わせた、洗浄装置の汎用的な適合化を可能にする。すなわち、相応の噴射ノズルを交換することで、多数の異なる溶接トーチまたは切断トーチに合わせて、洗浄装置を汎用的に適合調節することができる。
【0027】
さらに、内側の案内部材ないし内側のスリーブは、実質的に通電ノズルを洗浄することが意図される内側のジェットを生成するために構成されており、噴射剤ノズルの外側の案内部材ないし外側のスリーブは、実質的にアーク溶接トーチまたは切断トーチのガスノズルを洗浄することが意図される外側のジェットを生成するために構成されていることが意図される。このとき、内側の案内部材によって生成される内側のジェットは、追加的に、溶接トーチまたは切断トーチのガスノズルの内側領域を洗浄する役目も果たす。
【0028】
典型的な場合、噴射剤ノズルから射出される両方の補助ジェットの開口角はそれぞれ異なっており、そのようにして、トーチのすべての機能部品に噴射剤を同時に、かつほぼ完全に作用させる役目を果たす。特に、内側のジェットは外側のジェットに比べて小さい開口角を有していてよい。しかしながら必要な場合には、外側のジェットが内側のジェットよりも小さい開口角を有していてもよい。機能部品を洗浄するための好ましい開口角は、機能部材の幾何学形態とトーチ機能部品の寸法、ならびに、洗浄工程のときのトーチと噴射剤ノズルの所定の間隔もしくは意図される間隔から算出される。
【0029】
さらに、少なくとも噴射剤ノズルの外側の機能部材は、少なくともアーク溶接トーチまたは切断トーチの環状スパッタの断面の領域に位置する断面を有していることが意図される。特に、噴射剤ノズルと環状スパッタが半径方向で対称に構成されている場合、環状スパッタの自由直径は、典型的には、噴射剤ノズルの外側の案内スリーブの外径よりも小さい。それにより、トーチの洗浄時に除去された環状スパッタが洗浄ノズルの上に落下し、そのために洗浄工程が損なわれることが簡単なやり方で防止される。
【0030】
さらにこの実施形態に基づいて、トーチヘッド部からの環状スパッタの落下を防止するために、圧縮空気を使用せずにすませることができる。トーチヘッド部に沿って環状スパッタが滑り落ちるのは必ずしも防止されないものの、噴射剤ノズルの寸法に基づき、環状スパッタが噴射剤ノズルの上に載ることはあり得ない。
【0031】
本発明のさらに別の有利な実施形態では、内側の案内部材の自由端は外側の案内部材の自由端よりも突出している。それに応じて、内側の案内部材ないし内側のスリーブは、軸方向で見て、外側の案内部材ないし外側の案内スリーブよりも大きい長さを有している。
【0032】
特に、噴射剤ノズルの内側の射出領域が位置することになる吐出開口部が、噴射剤ノズルの外側の射出領域に設けられた吐出開口部よりも、洗浄装置のハウジングから大きい間隔をおいて配置されている実施形態では、内側の案内部材が、長手方向で見て、外側の案内部材よりも短く構成されていてもよく、それにもかかわらず、外側の案内部材の自由端に対してはこれよりも突出している。
【0033】
このとき案内部材の自由端は、噴射剤の両方の射出領域を形成する、洗浄装置のハウジングと反対を向いているほうの案内部材の端部に常に相当している。
【0034】
さらに別の独立した思想によれば、本発明は、アーク溶接トーチまたは切断トーチ、特にガスノズル、通電ノズル等のようなその機能部品から、低温の噴射剤をそのような機能部品へ作用させることによって汚れを洗浄する方法に関するものである。本発明による方法では、特に、ガスノズルと通電ノズルへ噴射剤を同時に作用させることが意図されており、それにより、トーチヘッド部とその機能部品を実質的に完全に洗浄するための1段階の洗浄方法が可能となる。
【0035】
このとき各機能部品の同時の洗浄は、互いに同心的に配置された噴射剤ノズルの2つの射出領域から射出される2つの補助ジェットによって行われる。
【0036】
これらの補助ジェットは、特に、それぞれ異なる開口角を有している。
【0037】
特に、トーチヘッド部に低温の噴射剤が広い面積で作用し、それにより、トーチのガスノズルの内部空間への噴射剤ノズルの挿入はもはや必要なくなる。したがって、噴射剤ノズルとトーチガスノズルとの接触や衝突を防ぐために用いられる、しばしば高いコストのかかるセンサ装置は、もはや必要なくなる。噴射剤ノズルないしトーチヘッド部の機能部品の損傷の危険が、それによって最低限に減る。一方では、洗浄されるべきトーチヘッド部は、洗浄プロセス中、所定の洗浄位置で保持されるだけでよいからである。
【0038】
また他方では、トーチヘッド部とガスノズル内部空間とに噴射剤が広い面積で作用することに基づき、噴射剤ノズルに対するトーチヘッド部の絶対的に正確な、ないしは正しい見当での位置決めが、もはや必要なくなる。
【0039】
したがって本発明による洗浄方法では、トーチヘッド部と噴射剤ノズルとの間の位置決め精度は、洗浄結果に多大な品質低下を起こすことなく、ある程度まで誤差を許容することが可能である。
【0040】
この洗浄方法は、特に、アーク溶接トーチまたは切断トーチのすべての機能部品に噴射剤を作用させるためにそれぞれ異なる開口角を有する、噴射剤ノズルの2つの射出領域から射出される2つの補助ジェットによって実施される。
【0041】
それによって特に、アーク溶接トーチまたは切断トーチが洗浄装置の射出領域の手前にあるただ1つの所定の洗浄位置で保持される、1段階の洗浄方法を実施することができる。
【0042】
本発明の上記以外の目的、利点、および構成要件については、以下の図面を用いて実施例を参照しながら説明する。このとき、説明および/または図示されるすべての構成要件は、特許請求の範囲やその要約書に関わりなく、それ自体として、および/または任意の有意義な組み合わせのかたちで、本発明の対象をなしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
図1は洗浄装置10を斜視図で示しており、そのハウジング40に噴射剤ノズル12が配置されている。このとき噴射剤ノズル12はユニオンナット20によって、洗浄装置10のハウジング側の受け部18に取り付けられている。洗浄を行うために、トーチ44が噴射剤ノズル12の手前で所定の間隔のところに位置決めされ、洗浄プロセス中に低温の噴射剤が作用する。
【0044】
噴射剤ノズル12は、同心的に配置された2つの、スリーブとして構成された案内部材14、16を有している。洗浄プロセス中には、内側のスリーブ14からだけでなく、内側のスリーブ14と外側のスリーブ16の間の中間スペース24からも、噴射剤がそれぞれ異なる開口角で射出される。このような2部分からなる案内スリーブ12の構成は、特に、洗浄されるべきトーチヘッド部およびその機能部品に、低温の噴射剤を広い面積で的確に作用させるのに役立つ。
【0045】
したがって噴射剤ノズル12をトーチ44のガスノズル46の中へ洗浄目的のために挿入しなくてよく、また、洗浄プロセス全体をただ1回のステップで実施することができ、トーチ44は噴射剤ノズル12の位置に対して定置に保持することができる。
【0046】
図2は、噴射剤ノズル12のためのハウジング側の受け部18の拡大図を示している。(ここには図示しない)噴射剤ノズル12は洗浄装置10から取り外されており、受け部18に配置されたリング26およびこれから突出する円筒領域30を見ることができる。リング26は、典型的な場合、円周側のねじ山42を有しており、このねじ山にユニオンナット20が噴射剤ノズル12の取付けのために螺着される。リング26は、突出している円筒領域30と同様、噴射剤または噴射剤混合物のための個々の吐出開口部32、34ならびに36、38を端面側に有している。
【0047】
リング26に直接配置されている吐出開口部32、34は、外側のスリーブ16のための領域に配置されており、突出する円筒領域30の領域に配置された吐出開口部36、38は、内側のスリーブ14の領域に配置されている。このとき、突出する円筒状域30に形成された吐出開口部36、38は、洗浄装置10のハウジング壁40に対して、吐出開口部32、34よりも大きい間隔を有している。このような吐出開口部32、34、36、38の構成ないし配置は、開口角の異なる補助ジェットを生成するために好ましい。
【0048】
突出する円筒領域30に代えて、またはこれとの組み合わせで、噴射剤ノズル12の軸から半径方向に異なる間隔をおいた個々の吐出開口部32、34、36、38は、開口角の異なる補助ジェットを生成するために異なる直径を有していてもよい。
【0049】
図3では上記に加えて、円筒ピン28がリング26に配置されており、この円筒ピンは、これと協働作用する噴射剤ノズル12の外側のスリーブ16の受け部とともに、受け部18で噴射剤ノズル12を保持するために協働作用する。円筒ピンまたは心合わせピン28の(図示しない)受け部は、スリーブ16の壁部に配置されるか、または、スリーブ16と内側のスリーブ14との間の中間領域で外側のスリーブ16に配置される。このように円筒ピンまたは心合わせピン28は、受け部18で噴射剤ノズル12を保持し、回らないように固定する役目を果たす。
【0050】
最後に図4と図5は、ユニオンナット20によって保持部18に取外し可能に取り付けられた、噴射剤の内側の射出領域22と外側の射出領域24とを有する噴射剤ノズル12を示している。このときユニオンナット20は、噴射剤ノズル12の外側のスリーブ16に上から被せられて、リング26とねじ止めされている。このようなねじ止めによって、噴射剤ノズル12は一方では洗浄装置10のハウジング40に確実に固定され、また他方では、洗浄目的や保守整備目的のためにわずかな回数の操作によって簡単な仕方で洗浄装置10から取り外したり、あるいは、洗浄装置10をさまざまな切断トーチまたは溶接トーチに合わせて適合化するために、簡単な仕方で取り替えたりすることができる。
【0051】
さらに図6は、噴射剤ノズル12の手前で洗浄位置に配置されたトーチ44を示している。ここでは内側の案内部材14の自由端が、外側の案内部材16の自由端よりも突き出している様子を明らかに見ることができる。さらに、案内部材14および16の半径は、トーチ44の通電ノズル48およびガスノズル46の寸法に合わせて適合化されている。
【0052】
特に図7に示す拡大図を見ると明らかなように、噴射剤ノズル12の外側の案内部材16は、トーチ44のガスノズル46の直径の範囲内の直径を有している。内側の案内部材14から、および内側の案内部材14と外側の案内部材16との間から、それぞれ異なる開口角で射出される噴射剤または噴射剤混合物は、この構成では、通電ノズル48と、ガスノズル46の内側領域および外側領域とに、噴射剤をほぼ完全に作用させるのに適している。
【0053】
このときトーチは、洗浄手順全体を通じてただ1つの洗浄位置に保持されており、異なる機能部品を洗浄するために異なる位置へ移動させる必要がない。洗浄位置、すなわちトーチヘッド部と噴射剤ノズル12の吐出開口部との間隔は、噴射剤ノズル12の幾何学形態に応じて、および、ガスノズル46や通電ノズル48などの洗浄されるべき機能部品の幾何学形態に応じて算出される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による洗浄装置の考えられる1つの実施形態を示す斜視図である。
【図2】噴射剤ノズルのためのハウジング側の収容領域を示す拡大図である。
【図3】噴射剤ノズルを固定するための円筒ピンを備える、図2に対応する図面である。
【図4】噴射剤ノズルが外嵌されている、図2および図3に対応する図面である。
【図5】ユニオンナットによって取り付けられた噴射剤ノズルである。
【図6】噴射剤ノズルの手前の洗浄位置にある切断トーチまたは溶接トーチを示す側面図である。
【図7】図6に示す側面図の拡大図である。
【符号の説明】
【0055】
10…洗浄装置、12…噴射剤ノズル、14…内側の案内部材、16…外側の案内部材、18…受け部、20…ユニオンナット、22…内側の射出領域、24…外側の射出領域、26…リング、28…心合わせピン、30…突出する円筒部、32…吐出開口部、34…吐出開口部、36…吐出開口部、38…吐出開口部、40…ハウジング、42…ねじ山、44…トーチ、46…ガスノズル
48…通電ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能部品に低温の噴射剤を作用させるための噴射剤ノズル(12)を備える、アーク溶接トーチまたは切断トーチ(44)およびその機能部品から汚れを洗浄する装置(10)において、
前記噴射剤ノズル(12)が互いに同心的に配置された少なくとも2つの噴射剤の射出領域(22、24)を有していることを特徴とする装置。
【請求項2】
内側および外側の射出領域(22、24)を形成するために前記噴射剤ノズル(12)は内側の案内部材(14)と外側の案内部材(16)を有しており、特に内側および外側のスリーブを有していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記噴射剤ノズル(12)は一体的に構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記内側および外側の案内部材(14、16)はウェブ連結部によって相互に連結されていることを特徴とする、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記噴射剤ノズル(12)は前記洗浄装置(10)のハウジング(40)に取外し可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記噴射剤ノズル(12)は、ハウジング側のねじ山(42)に螺着可能かつ前記外側の案内部材(16)に外嵌可能なユニオンナット(20)によって前記ハウジング(40)に取付可能であることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つのハウジング側の保持手段(28)、およびこれと協働作用する、前記外側の案内部材(16)に配置された対応保持手段が、前記洗浄装置(1)の前記ハウジング(40)に前記噴射剤ノズル(12)を保持するために設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記保持手段(28)は前記対応保持手段に構成された受け部へ差込可能な円筒ピンとして構成されていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記噴射剤ノズル(12)の前記内側および外側の案内部材(14、16)の領域に噴射剤の吐出開口部(32、34、36、38)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記内側の射出領域(22)に設けられた前記吐出開口部(36、38)は、前記外側の射出領域(24)に設けられた前記吐出開口部(32、34)よりも、前記ハウジング(40)に対して大きい間隔をおいて配置されていることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記内側の案内部材(14)の幾何学形態はアーク溶接トーチまたは切断トーチ(44)の通電ノズル(48)の幾何学形態に合わせて適合化されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記外側の案内部材(16)の幾何学形態はアーク溶接トーチまたは切断トーチ(44)のガスノズル(46)の幾何学形態に合わせて適合化されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記噴射剤ノズル(12)の前記内側の案内部材(14)と前記外側の案内部材(16)は開口角の異なる2つの補助ジェットを生成するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記内側の案内部材(14)は実質的に前記通電ノズル(48)を洗浄することが意図される内側のジェットを生成するために構成されており、前記外側の案内部材(16)は実質的にアーク溶接トーチまたは切断トーチ(44)の前記ガスノズル(46)を洗浄することが意図される外側のジェットを生成するために構成されており、前記内側のジェットは好ましくは前記外側のジェットよりも小さい開口角を有していることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記噴射剤ノズル(12)の前記外側の案内部材(16)は、少なくともアーク溶接トーチまたは切断トーチ(44)の環状スパッタの断面の領域に位置する半径方向の断面を有していることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記内側の案内部材(14)の自由端は前記外側の案内部材(16)の自由端よりも突出していることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
ガスノズル(46)と通電ノズル(48)に低温の噴射剤が同時に作用する機能部品への作用によってアーク溶接トーチまたは切断トーチ(44)およびその機能部品から汚れを洗浄する方法において、
アーク溶接トーチまたは切断トーチ(44)の前記機能部品の洗浄が、噴射剤ノズル(12)の互いに同心的に配置された2つの射出領域(22、24)から射出される2つの補助ジェットによって行われることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記射出領域(22、24)から射出される前記補助ジェットはそれぞれ異なる開口角を有していることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アーク溶接トーチまたは切断トーチ(44)は前記洗浄装置(10)の前記射出領域(22、24)の手前にある所定の洗浄位置で保持されることを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−546541(P2008−546541A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518657(P2008−518657)
【出願日】平成18年6月10日(2006.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005584
【国際公開番号】WO2007/003256
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(506310038)アレクサンダー ビンツェル シュヴァイステヒニック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー. カーゲー (3)
【Fターム(参考)】