説明

亜リン酸エステル組成物及びその製造方法

【課題】粉塵が生じにくく、熱可塑性樹脂に添加すると十分に分散して熱可塑性樹脂に優れた耐着色性を与える組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】亜リン酸エステル(1)100重量部及び軟化点または融点が115℃以下である脂肪族炭化水素系滑剤0.5〜8重量部を含む組成物であって、該組成物における該亜リン酸エステル(1)の含有量が30〜99.5重量%である組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の劣化防止剤として好適な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1)で表される亜リン酸エステルは、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の劣化防止剤として有用であることが特許文献1に知られており、具体的にはポリプロピレンに添加剤として金属石鹸であるステアリン酸カルシウム及び亜リン酸エステルの溶融混練したペレット状の樹脂組成物がNOxガスによる着色が小さい、すなわち耐着色性に優れることが開示されている。

【0003】
[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xは単結合、硫黄原子又は−CHR6−基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、
Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は*−COR7−基を表し、R7は単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、*印は、この箇所と式(1)における>P−O−基中の酸素原子とが結合していることを表し、
Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表すが、
Yがヒドロキシル基であるときは、R及びRのいずれか一方は炭素数3〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、また、式(1)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよく、式(1)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよく、式(1)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。]
【0004】
特許文献1に記載の亜リン酸エステルは、通常、平均粒径20〜60μm程度の粉末であり、熱可塑性樹脂に添加する際に粉塵が生じるという問題があった。
一方、特許文献2には、亜リン酸エステルとは異なるリン酸エステル金属塩を主成分とし、金属石鹸を含む添加剤組成物が粉塵を生じるという問題に対し、結着剤として金属石鹸よりも低い融点の有機化合物(具体的にはグリセリンモノステアレート)をさらに添加すると、添加剤組成物は顆粒状となって粉塵が生じにくいことが開示されている。同時に、結着剤として滑剤(例えば、ポリプロピレンワックス、分子量7000、融点140℃)を添加すると、該添加剤組成物が熱可塑性樹脂に分散しにくいことも開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−273494号公報([請求項1]、実施例14[0110]〜[0115])
【特許文献2】特開2001−81236号公報([特許請求の範囲]、[0004]、[0005]、[0059]実施例6、[0060]実施例15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが、亜リン酸エステルを主成分とする組成物にグリセリンモノステアレートをさらに添加した組成物について、該添加剤組成物を熱可塑性樹脂とともに溶融混練して得られた熱可塑性樹脂組成物は耐着色性が十分ではないことが明らかになった。
本発明の目的は、亜リン酸エステルを主成分とする組成物において、該組成物は粉塵が生じにくく、該組成物を熱可塑性樹脂に添加すると十分に分散して熱可塑性樹脂に優れた耐着色性を与える該組成物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような状況下、特定の滑剤を混合せしめた組成物が、かかる課題をいずれも解決し得ることを見出し、本発明は完成した。
すなわち、本発明の組成物に係る発明は、式(1)で示される亜リン酸エステル100重量部及び軟化点または融点が115℃以下である脂肪族炭化水素系滑剤0.5〜8重量部を含む組成物であって、該組成物における該亜リン酸エステル(1)の含有量が30〜99.5重量%である組成物、である。
中でも、組成物が顆粒状であることを特徴とする顆粒状組成物は、熱可塑性樹脂への分散性に一層、優れ、耐着色性に優れた熱可塑性樹脂組成物を与えることから好ましい。
また、本発明の製造方法に係る発明は、式(1)で示される亜リン酸エステル100重量部に、軟化点または融点が115℃以下である脂肪族炭化水素滑剤0.5〜8重量部を混合し、40〜110℃の温度範囲で造粒することを特徴とする顆粒状組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、亜リン酸エステルを熱可塑性樹脂に添加時等の取り扱い時における粉塵の発生が低減され、該組成物に含まれる亜リン酸エステルは熱可塑性樹脂に十分に分散される。また、本発明の組成物を含む熱可塑性樹脂組成物は、耐着色性が向上する。
さらに、本発明の製造方法は、簡便に、粉塵の発生が低減された顆粒状組成物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる亜リン酸エステル(1)は、上記式(1)で表される化合物である。
亜リン酸エステル(1)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基又はt−オクチル基等が挙げられる。
炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられ、
炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基等が挙げられ、
炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
【0010】
亜リン酸エステル(1)において、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。炭素数1〜8のアルキル基としては、前記と同じ基が挙げられる。
としては、水素原子又はメチル基が好ましい。
亜リン酸エステル(1)において、Xは単結合、硫黄原子又は−CHR6−基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、前記と同じ基が挙げられる。
−CHR6−基としては、例えば、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、1−シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。Xとしては、単結合、メチレン基又はエチリデン基が好ましい。リン系酸化防止剤(I)において、Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は*−COR7−基を表し、R7は単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、*印は、この箇所と式(I)における>P−O−基中の酸素原子とが結合していることを表す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。Aとしては、炭素数2〜4のアルキレン基又は前述した*−COR7−基が好ましい。
上記の炭素数2〜4のアルキレン基は、その炭素−炭素結合がヘテロ原子を含む基で中断されていてもよい。この場合のヘテロ原子を含む基としては、−O−C(=O)−又は−C(=O)−O−基が挙げられる。R7としては、炭素数1〜4のアルキレン基が好ましい。
【0011】
Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表すが、Yがヒドロキシル基であるときは、R及びRのいずれか一方は炭素数3〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基であることが好ましい。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられ、炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
式(1)におけるYがヒドロキシル基である場合は、Zが水素原子又はメチル基であることがより好ましく、R及びRの一方がt−ブチル基であることがより好ましい。
また、式(1)におけるZがヒドロキシル基である場合は、Rがメチル基であり、Yが水素原子であり、Rがt−ブチル基であることが好ましい。
また、式(1)におけるR、R、Rは、それぞれ、互いに同一でもよく、異なってもよい。
【0012】
亜リン酸エステル(1)のうち、特に好ましい化合物を以下に例示する。
6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等。
【0013】
本発明で用いられる亜リン酸エステル(1)は、通常、45μm以下の微粒子が10重量%以上含み、重量基準の平均粒径は、20〜60μm程度である。
【0014】
本発明に用いられる脂肪族炭化水素系滑剤は、軟化点または融点が115℃以下である。ここで、軟化点は、JIS K 2531で測定した値であり、融点は、JIS K 0064−3.1で測定した値である。
本発明に用いられる脂肪族炭化水素系滑剤の軟化点または融点が、115℃以下であると、得られる組成物の粉塵の低減される傾向や、亜リン酸エステルが熱可塑性樹脂に分散されやすい傾向があることから好ましい。
脂肪族炭化水素系滑剤は、通常、分子量6000以下のアルカンからなる混合物であり、具体的には、流動パラフィン、融点40〜70℃程度の天然または合成パラフィン、軟化点115℃以下のポリエチレンワックスおよびこれらの部分酸化物、あるいはフッ化物、塩化物等が例示される。
【0015】
脂肪族炭化水素系滑剤は市販されているものをそのまま用いてもよく、具体的には、流動パラフィンとしては、「ハイホワイト(新日本石油製)」などが例示され、パラフィンとしては、「145°パラフィン(融点63℃、新日本石油製)」、「140°パラフィン(融点62℃、新日本石油製)」、「135°パラフィン(融点60℃、新日本石油製)」、「130°パラフィン(融点57℃、新日本石油製)」、「125°パラフィン(融点54℃、新日本石油製)」などが例示される。
ポリエチレンワックスとしては、「サンワックス 131−P(軟化点108℃、三洋化成製)」、「サンワックス 151−P(軟化点107℃、三洋化成製)」、「サンワックス 161−P(軟化点111℃、三洋化成製)」、「サンワックス 165−P(軟化点107℃、三洋化成製)」、「サンワックス 171−P(軟化点105℃、三洋化成製)」、「三井ハイワックス110P(軟化点100℃、三井化学製)、「三井ハイワックス220P(軟化点113℃、三井化学製)」などが例示される。
【0016】
脂肪族炭化水素系滑剤としては、中でも、ポリエチレンワックスが、組成物を保存する際に固結を抑制する傾向があることから好ましい。
【0017】
本発明の組成物は、亜リン酸エステル(1)100重量部に対し、上記脂肪族炭化水素系滑剤0.5〜8重量部、好ましくは1〜6重量部を含み、熱可塑性樹脂を20重量部以下含有していてもよい。
脂肪族炭化水素系滑剤が0.5重量部以上であると、顆粒化や溶融が容易に進行して微粉が抑制される傾向があることから好ましく、8重量部以下であると、顆粒化する際に粒径の大きい顆粒が低減され、顆粒中の亜リン酸エステル(1)の濃度が高くなる傾向があることから好ましい。
なお、組成物における亜リン酸エステル(1)含有量は、30〜99.5重量%であり、好ましくは、50〜99重量%である。
【0018】
本発明の組成物は、熱可塑性樹脂に配合した際に熱可塑性樹脂の着色等、悪影響を与えない範囲で、さらに下記の添加剤群から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含むことができる。
本発明で用いられる添加剤の重量基準の平均粒径としては、0.1〜100μmの範囲であることが好ましく、0.5〜70μmの範囲であることが特に好ましい。
市販の添加剤をそのまま用いる場合は、予め公知の方法で好ましい重量基準の平均粒径に調整した後、使用することが好ましい。
[添加剤群:中和剤、脂肪性炭化水素系滑剤以外の滑剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、金属石鹸、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、顔料、難燃剤、充填剤、及び、フェノール系酸化防止剤などの亜リン酸エステル(1)以外の酸化防止剤]
【0019】
上記の添加剤としては、以下の化合物等が挙げられる。
ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの中和剤;
オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の滑剤;
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン ジホスフォナイト、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等のリン系酸化防止剤;
【0020】
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3、−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}−1,6−ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系光安定剤;
【0021】
2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等の紫外線吸収剤;
【0022】
合成ハイドロタルサイト、天然ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム等の中和剤;
炭酸カルシウム、ケイ酸塩、ガラス繊維、タルク、カオリン、マイカ、硫酸バリウム、カーボンブラック、カーボンファイバー、ゼオライト、金属粉、金属酸化物などの充填剤
【0023】
ステアリン酸のリチウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、又は鉄塩、パルチミン酸のリチウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、又は鉄塩、ラウリン酸のリチウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、又は鉄塩、ベヘニン酸のカルシウム塩又は亜鉛塩、12−ヒドロキシステアリン酸のカルシウム塩、マグネシウム塩又は亜鉛塩等のような炭素数4〜18の脂肪酸金属塩等を含む金属石鹸;
【0024】
次の帯電防止剤;
4級アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤、ベタイン型の両性界面活性剤、リン酸アルキル型のアニオン界面活性剤、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アミン塩やピリジン誘導体等のカチオン界面活性剤、
硫酸化油、石鹸、硫酸化エステル油、硫酸化アミド油、オレフィンの硫酸化エステル塩類、脂肪アルコール硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、琥珀酸エステルスルホン酸塩や燐酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、
多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物やポリエチレングリコール等のノニオン界面活性剤、カルボン酸誘導体やイミダゾリン誘導体等の両性界面活性剤等の帯電防止剤、又はこれらのうち、融点が70℃を越える帯電防止剤;
【0025】
アルミニウムシリケート、合成シリカ、天然シリカ、ゼオライト、カオリンや珪藻土等の無機アンチブロッキング剤又はポリメチルメタアクリル酸架橋物等の有機アンチブロッキング剤;
【0026】
カーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリレン又はペリニン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロ−ピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ジスアゾ縮合系顔料やベンズイミダゾロン系顔料等の顔料;
【0027】
デカブロモビフェニル、三酸化アンチモン、リン系難燃剤、水酸化アルミニウム等の難燃剤;
【0028】
2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)−トリオン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス (6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤(1)以外のフェノール系酸化防止剤;
【0029】
本発明の組成物において、上記添加剤の含有量は、後述する金属石鹸を除き、亜リン酸エステル(1)100重量部に対し、通常、100重量部以下、好ましくは70重量部以下、更に好ましくは40重量部以下含有させてもよい。
組成物中における上記添加剤の合計含有量は、0〜90重量%程度である。
【0030】
本発明の組成物は、金属石鹸を含有することが好ましい。好ましい金属石鹸の配合比率としては、亜リン酸エステル(1)の100重量部に対し、金属石鹸が0.1〜100重量部、特に好ましくは、0.1〜40重量部の範囲である。
【0031】
本発明の組成物の形状としては、例えば、溶融混練したのち押出成形してなるペレット状、顆粒状などが挙げられるが、顆粒状組成物が製造が容易で、熱可塑性樹脂への分散性に優れ、結果として得られる熱可塑性樹脂組成物の耐着色性が向上する傾向があることから好ましい。
以下、顆粒状組成物について説明する。
【0032】
顆粒状組成物は、篩による粒径45μm以下の成分が、通常、10重量%以下である。このことにより、組成物の粉塵の発生が著しく抑制される。
粒径45μm以下の成分を低減する方法としては、例えば、例えば、脂肪族炭化水素系滑剤0.5〜8重量部の含有量を多くする使用する方法、例えば、亜リン酸エステル100重量部及び脂肪族炭化水素滑剤等を混合、造粒する時間を長くする方法、例えば、亜リン酸エステル100重量部及び脂肪族炭化水素滑剤等を混合、造粒する温度を高くする方法などが挙げられる。
【0033】
顆粒状組成物は、平均粒径が、通常、80〜2000μmである。
平均粒径が80μm以上であると、粉塵の発生が抑制される傾向があることから好ましく、2000μm以下であると、熱可塑性樹脂への亜リン酸エステルの分散性に優れる傾向があることから好ましい。特に、平均粒径が、90〜1000μmであるときが好ましい。
本発明における平均粒径とは、JIS Z 8801の標準篩を搭載したセイシン企業製ロボットシフターを用い、試料約5gを振動レベル8、シフトタイム3分、パルス間隔1秒で篩い分けを行い、篩の目開きと篩に残った粒子の重量から重量基準の平均粒径を求める。
【0034】
ここで、本発明においては、顆粒1個に上記の重量比率で亜リン酸エステル(1)及び脂肪族炭化水素系滑剤を含有することを意味するのではなく、顆粒状組成物全体を意味し、顆粒状組成物中に上記重量比率で亜リン酸エステル(1)及び脂肪族炭化水素系滑剤を含んで構成されていることを意味する。
また、顆粒状組成物とは、JIS−Z 8841(1993)10項 解説表1 造粒物の形状及び名称に記載の不規則形状の顆粒集合体を意味する。
【0035】
顆粒状組成物の製造方法としては、例えば、亜リン酸エステル(1)の100重量部に対して、上述した脂肪族炭化水素系滑剤の少なくとも1種の0.5〜8重量部、好ましくは1〜6重量部、特に好ましくは2〜5重量部、さらに必要に応じて添加物を40〜110℃の温度範囲で造粒する方法などが挙げられる。
本発明における造粒温度とは、亜リン酸エステル(1)、脂肪族炭化水素系滑剤および必要によりさらに添加されている添加剤からなる混合物の温度である。
脂肪族炭化水素系滑剤の軟化点または融点および量によっても異なるが、好ましい造粒温度は、脂肪族炭化水素系滑剤の軟化点または融点を3〜25℃程度、下回る温度である。造粒温度が軟化点または融点−3℃以下であると、微粉の生成が抑制される傾向があることから好ましく、軟化点または融点−25℃以上であると、脂肪族炭化水素系滑剤の流動性が抑制され、顆粒化の操作が容易になる傾向があることから好ましい。
【0036】
造粒方法としては、通常、亜リン酸エステル(1)、脂肪族炭化水素系滑剤および必要に応じて加えられる添加物の混合物を均一となるように混合し得る機器であり、かつ、混合時における前記混合物の温度が40〜110℃、好ましくは、脂肪族炭化水素系滑剤の軟化点を3〜25℃程度、下回る温度に調整し得る機器を用いて造粒する方法である。
かかる機器としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ハイスピードミキサーなどの高速回転機器などが挙げられる。
【0037】
具体的な造粒方法としては、例えば、亜リン酸エステル(1)、脂肪族炭化水素系滑剤および必要に応じて加えられる添加物をヘンシェルミキサー等の混合機に仕込んだ後に高速で攪拌混合する方法、例えば、亜リン酸エステル(1)および必要に応じて加えられる添加物に加熱溶融した脂肪族炭化水素系滑剤を噴霧混合して攪拌下に冷却する方法等が挙げられる。
造粒温度を40〜110℃に設定する方法としては、例えば、ヘンシェルミキサーに温水ジャケットを取り付けて加温する方法、例えば、高速攪拌に伴って発生する剪断熱を利用して昇温する方法等が挙げられる。
上記方法の中でも、亜リン酸エステル(1)、脂肪族炭化水素系滑剤および必要に応じて加えられる添加物をヘンシェルミキサー等の混合機に仕込んだ後、高速で攪拌混合する方法が操作上簡便であり、特に好ましい。
【0038】
かくして得られた顆粒状組成物は、微粉が少ないので粉塵飛散量が少なく、流動性が良好である。得られた顆粒状組成物から篩操作により、微粉を取り除いてもよいが、本発明の顆粒状組成物は、微粉が少ないので、篩工程を省略することもできる。
【0039】
本発明の組成物は、熱や光により劣化しやすい熱可塑性樹脂の劣化防止剤として適している。本発明における熱可塑性樹脂は、分子量10000以上の高分子化合物を主成分とする混合物である。
熱可塑性樹脂の例としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等)、ポリスチレン系樹脂(GP−PS、HI−PS、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン三元共重合体等)、ポリアミド系樹脂(6ナイロン、12ナイロン等)、環状ポリオレフィン、塩素含有ポリマー(ポリ塩化ビニル、塩素化ゴム等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリウレタン、エンジニアリングプラスチックス(ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート等)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンが好ましい。特に、190℃において荷重2.16kgを負荷したときのMI(メルトインデックス)が0.01〜100の範囲であるポリエチレン、230℃において荷重2.16kgを負荷したときのMI(メルトインデックス)が0.01〜100の範囲であるポリプロピレンなどが好ましい。
【0040】
中でも、上記顆粒状組成物は、熱可塑性樹脂に添加した際に、得られる熱可塑性樹脂組成物の加工安定性が向上し、耐着色性を向上させる。
本発明の組成物の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、通常、0.01〜1重量部の範囲であり、好ましくは0.02〜0.5重量部の範囲であり、特に好ましくは0.04〜0.2重量部の範囲である。本発明の組成物の添加量が上記範囲内であると、加工安定性が向上する傾向があることから好ましい。
【0041】
本発明の組成物を熱可塑性樹脂に配合する方法としては、例えば、組成物と熱可塑性樹脂とを混合後、単軸又は多軸の押出し機により溶融混練する方法、例えば、熱可塑性樹脂を重合した後の溶液に組成物を予め溶剤に溶解又は懸濁させた液をフィードし、その後、蒸発留去等の方法で溶剤を除く方法等が挙げられる。
このようにして得られた熱可塑性樹脂は、フィルム、成形材料やパイプ等の製品に加工することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0043】
以下の実施例には、以下の化合物を使用した。
亜リン酸エステル(1−1、と略記する):6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン
脂肪族炭化水素系滑剤(2−1、と略記する):ポリエチレンワックス(三洋化成社製 サンワックス P−151 軟化点 107℃)
グリセリンモノステアレート(2’、と略記する)
金属石鹸(3、と略記する):ステアリン酸カルシウム
【0044】
(実施例1)
<顆粒状組成物の製造例>
混合槽の内部に温度センサー及び温水ジャケットを備えた容量10Lのヘンシェルミキサーの混合槽に、亜リン酸エステル(1−1)1kg及び結着剤として脂肪族炭化水素系滑剤(2−1)50gを投入した。続いて、温水ジャケットを90℃に通液して、回転数950回転で高速混合して造粒した。混合開始4分20秒で混合槽内部の温度センサーが84℃(終点温度)に達するとともに、攪拌を停止し、排出口から顆粒状組成物A 1kgを取り出した。
【0045】
(実施例2〜4及び比較例1〜4)
表1に記載の化合物と量を用い、ジャケット温度および混合の終点温度を表1に記載の条件で造粒する以外は実施例1と同様に実施して、<顆粒状組成物B〜H>を製造した。
尚、実施例4、比較例2及び比較例3には、添加剤として金属石鹸(3)を200g混合槽に投入して、造粒した。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1〜4及び比較例1〜4で得た顆粒状組成物の粒度を測定した。結果を表2に示す。粒度は、セイシン企業製ロボットシフターを用い、試料約5gを振動レベル8、シフトタイム3分、パルス間隔1秒で測定した。粒径45μm以下の含量が少ないほど微粉が少なく、取り扱い時の粉立ちが少ないことを意味する。
【0048】
【表2】

【0049】
(実施例5)
<ポリプロピレン組成物の製造と得られたポリプロピレン組成物の耐着色性>
1kgのポリプロピレン(MI:3g/10min)と0.5gのステアリン酸カルシウムと1gの顆粒状組成物Aとをドライブレンドし、30mmφ単軸押出し機により押出し温度230℃で押出し、ペレットを得た。このペレットを230℃で射出成形し、ポリプロピレンシート(40×60×1mm)を得た。ポリプロピレンシートを650ppmのNOxガスに曝露した前後の耐着色性(ΔYI)は1.07であった。
【0050】
<耐着色性(ΔYI)の評価方法>
ポリプロピレンシートを650ppmのNOxガスに約25℃で7日間曝露した。曝露前後のシートのイエローネスインデックス(YI)を測定し、曝露後のYIと曝露前のYIの差(ΔYI)で、ポリプロピレン組成物の耐着色性を評価した。
【0051】
(実施例6〜8、比較例5〜8)
顆粒状組成物を表3に記載のものを用いる以外は実施例5と同様にして、実施例6〜8及び比較例4〜8を実施した。結果を実施例5と併せて表3に示す。ΔYIの小さい方が、耐着色性に優れることを意味する。
【0052】
【表3】

【0053】
(実施例9)
[ポリエチレン組成物の製造と得られたポリエチレン組成物の加工安定性]
1kgの直鎖状低密度ポリエチレン(MI:1g/10min)と3gの酸化防止剤組成物Aとをドライブレンドし、30mmφ単軸押出し機により押出し温度210℃で押出し、ペレットを得た(このペレットのMFR(190℃、5kg)を測定し初期MFRとした)。このペレットを250℃で3回繰り返し押出した。3回押出し後のペレットのMFR(190℃、5kg)を測定し、ポリエチレン組成物の加工安定性を評価した。
【0054】
<加工安定性(MFR(g/10min))の評価方法>
JIS K 7210(1976)(A法) ただし、温度は、190℃、荷重は、5kgとした。
【0055】
(実施例10〜12、比較例9〜10)
顆粒状組成物を表4に記載のものを用いる以外は実施例9と同様にして、実施例10〜12及び比較例9〜10を実施した。結果を実施例9と併せて表4に示す。繰り返し押出し後のMFRが初期MFRに近いほど加工安定性に優れることを意味する。
【0056】
【表4】

【0057】
(実施例13)
[ポリスチレン組成物の製造]
1kgのポリスチレンと1gの顆粒状組成物Aとをドライブレンドし、30mmφ単軸押出し機により押出後、得られたペレットを射出成形し耐着色性に優れたポリスチレンシートが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される亜リン酸エステル100重量部及び軟化点または融点が115℃以下である脂肪族炭化水素系滑剤0.5〜8重量部を含む組成物であって、該組成物における該亜リン酸エステル(1)の含有量が30〜99.5重量%である組成物。

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xは単結合、硫黄原子又は−CHR6−基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、
Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は*−COR7−基を表し、R7は単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、*印は、この箇所と式(1)における>P−O−基中の酸素原子とが結合していることを表し、
Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表すが、
Yがヒドロキシル基であるときは、R及びRのいずれか一方は炭素数3〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、式(1)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよく、式(1)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよく、式(1)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。]
【請求項2】
脂肪族炭化水素系滑剤が、流動パラフィン、融点が40〜70℃のパラフィン、および軟化点が115℃以下のポリエチレンワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種の脂肪族炭化水素系滑剤である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物が顆粒状である顆粒状組成物。
【請求項4】
顆粒状組成物における粒径45μm以下の成分の含有量が、10重量%以下である請求項3に記載の顆粒状組成物。
【請求項5】
式(1)で示される亜リン酸エステル100重量部及び融点または軟化点が115℃以下の脂肪族炭化水素滑剤0.5〜8重量部を混合し、40〜110℃の温度範囲で造粒することを特徴とする顆粒状組成物の製造方法。
【請求項6】
造粒温度が脂肪族炭化水素滑剤の融点または軟化点を3〜25℃下回る温度である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂100重量部に請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を0.01〜1重量部配合することを特徴とする熱可塑性樹脂の安定化方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂がポリオレフィンであることを特徴とする請求項7に記載の安定化方法。

【公開番号】特開2008−120896(P2008−120896A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305066(P2006−305066)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】