説明

亜鉛含有排水の排水処理方法及び亜鉛含有排水の排水処理設備

【課題】 効率良く亜鉛を減少させることができる亜鉛含有排水の排水処理方法等を提供することを課題としている。
【解決手段】 亜鉛を含む亜鉛含有排水に凝集剤を加えることにより亜鉛を含む懸濁粒子を生じさせる懸濁粒子生成工程と、前記懸濁粒子を含む亜鉛含有排水をpH8.0〜11.0に調整するpH調整工程と、該pH調整工程によりpH調整された前記亜鉛含有排水と加圧溶解された気体成分を含む加圧水の減圧により生じた気泡とを接触させ、該気泡を前記懸濁粒子に付着させることにより前記懸濁粒子を前記気泡とともに浮上させる加圧浮上工程と、浮上した前記懸濁粒子を除去する除去工程とを実施する亜鉛含有排水の排水処理方法等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛含有排水の排水処理方法及び亜鉛含有排水の排水処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、亜鉛含有排水の排水処理方法としては、例えば、亜鉛を含む亜鉛含有排水に凝集剤を加え、亜鉛を含む凝集物を生成させ、該凝集物を沈殿させた沈殿物を除去することにより、亜鉛含有排水中の亜鉛を減少させる方法が知られている。
具体的には、例えば、亜鉛含有排水に塩化第二鉄などの凝集剤を加え、凝集剤により生じた凝集物を沈殿させた沈殿物を除去することにより、亜鉛含有排水中の亜鉛を減少させる方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、斯かる亜鉛含有排水の排水処理方法においては、亜鉛を含む凝集物を沈殿させるために、比較的長い時間を要するため、亜鉛を減少させる効率が必ずしも優れたものではないという問題がある。また、例えば、所定量の亜鉛含有排水から生じた凝集物を沈殿させるために、比較的面積の広い排水処理槽を要することから、設備コスト上の観点でも、亜鉛を減少させる効率が必ずしも優れたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−221575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点等に鑑み、効率良く亜鉛を減少させることができる亜鉛含有排水の排水処理方法を提供することを課題とする。また、効率良く亜鉛を減少させることができる亜鉛含有排水の排水処理設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係る亜鉛含有排水の排水処理方法は、亜鉛を含む亜鉛含有排水に凝集剤を加えることにより亜鉛を含む懸濁粒子を生じさせる懸濁粒子生成工程と、前記懸濁粒子を含む亜鉛含有排水をpH8.0〜11.0に調整するpH調整工程と、該pH調整工程によりpH調整された前記亜鉛含有排水と加圧溶解された気体成分を含む加圧水の減圧により生じた気泡とを接触させ、該気泡を前記懸濁粒子に付着させることにより前記懸濁粒子を前記気泡とともに浮上させる加圧浮上工程と、浮上した前記懸濁粒子を除去する除去工程とを実施することを特徴とする。
【0007】
上記構成からなる亜鉛含有排水の排水処理方法においては、前記懸濁粒子生成工程において亜鉛を含む懸濁粒子を生じさせ、前記pH調整工程において亜鉛含有排水をpH8.0〜11.0に調整することにより、亜鉛が排水中へ溶解することが抑制された状態になる。即ち、前記pH調整工程においては、亜鉛含有排水のpHを8.0以上に調整するため、懸濁粒子から亜鉛が亜鉛イオンとなって亜鉛含有排水中に溶解することが抑制される。また、亜鉛含有排水のpHを11.0以下に調整するため、水酸化亜鉛の態様となっている亜鉛がテトラヒドロキソ亜鉛酸イオンとなって亜鉛含有排水中に溶解することが抑制される。このような環境下にある亜鉛は、溶解度が比較的低い状態であるため、溶解しているより安定な状態となるべく、懸濁粒子中において不溶性の状態を維持しようとする。従って、亜鉛が懸濁粒子に含有された状態にて排水中に存在し得る。
また、前記加圧浮上工程においては、加圧水に溶解した気体成分から減圧により気泡が生じる。該気泡が比較的小径であることから、該気泡が前記懸濁粒子に付着しやすい。そして、気泡が付着した懸濁粒子は、気泡とともに浮上するため、排水中の亜鉛を亜鉛含有排水の液面側へ比較的短時間で移動させることができる。
さらに、前記除去工程において、気泡が付着し浮上した懸濁粒子を除去することにより、亜鉛濃度が低減された処理水を得ることができる。
【0008】
また、本発明に係る亜鉛含有排水の排水処理方法は、前記pH調整工程の後、且つ、前記加圧浮上工程の前に、前記亜鉛含有排水に凝集剤を加えることにより前記懸濁粒子を凝集させる凝集工程を実施することが好ましい。
【0009】
本発明に係る亜鉛含有排水の排水処理設備は、亜鉛を含む亜鉛含有排水に凝集剤を加えることにより亜鉛を含む懸濁粒子を生じさせる懸濁粒子生成手段と、前記懸濁粒子を含む亜鉛含有排水をpH8.0〜11.0に調整するpH調整手段と、該pH調整手段によりpH調整された前記亜鉛含有排水と加圧溶解された気体成分を含む加圧水の減圧により生じた気泡とを接触させ、該気泡を前記懸濁粒子に付着させることにより前記懸濁粒子を前記気泡とともに浮上させる加圧浮上手段と、浮上した前記懸濁粒子を除去する除去手段とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述の通り、本発明の亜鉛含有排水の排水処理方法は、効率良く亜鉛を減少させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)亜鉛含有排水の排水処理設備を簡略的に表した簡略図。(b)処理水ボックス及びパイプの下面図。
【図2】亜鉛含有排水の排水処理結果を表したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る亜鉛含有排水の排水処理方法及び排水処理設備の実施形態について説明する。
【0013】
まず、本実施形態の亜鉛含有排水の排水処理設備について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態の亜鉛含有排水の排水処理設備の概略図である。
【0014】
本実施形態の亜鉛含有排水の排水処理設備1は、亜鉛を含む亜鉛含有排水Zに凝集剤を加えることにより亜鉛を含む懸濁粒子を生じさせる懸濁粒子生成手段と、前記懸濁粒子を含む亜鉛含有排水ZをpH8.0〜11.0に調整するpH調整手段と、該pH調整手段によりpH調整された前記亜鉛含有排水と加圧溶解された気体成分を含む加圧水の減圧により生じた気泡とを接触させ、該気泡を前記懸濁粒子に付着させることにより前記懸濁粒子を前記気泡とともに浮上させる加圧浮上手段と、浮上した前記懸濁粒子を除去する除去手段とを備えている。
具体的には、前記排水処理設備1は、図1(a)に示すように、排水処理される亜鉛含有排水Zを一時的に貯留するように構成された排水混合タンク2を備えている。また、該排水混合タンク2から排水が供給されるように構成された前記加圧浮上手段としての加圧浮上槽5aを備えている。
前記排水混合タンク2は、亜鉛含有排水Zを一時的に貯留すべく、外部から亜鉛含有排水Zが供給されるように構成されている。また、前記排水混合タンク2は、モータMによってタンク内で回転することにより排水を撹拌する撹拌装置2aを備えている。
【0015】
前記亜鉛含有排水Zは、様々な態様の亜鉛を含んでいる。具体的には、前記亜鉛含有排水Zは、例えば、排水中に溶解した亜鉛イオンの態様の亜鉛を含んでいる。なお、前記亜鉛含有排水Zには、亜鉛以外の金属などが含まれ得る。
【0016】
前記亜鉛含有排水Zとしては、具体的には、例えば、亜鉛メッキ工場から排出される亜鉛含有工場排水などが挙げられる。
なお、亜鉛濃度を減少させるべく排水処理する亜鉛含有排水Zの量は、特に限定されず、処理前の排水中における亜鉛濃度や前記排水混合タンク2の容量などに応じて、適宜変えることができる。
【0017】
前記懸濁粒子生成手段は、亜鉛を含む亜鉛含有排水Zに凝集剤を加えることにより亜鉛を含む懸濁粒子を生じさせるように構成されている。前記懸濁粒子生成手段は、具体的には例えば、図1(a)に示すように、凝集剤を貯留する凝集剤貯留部3aと、該凝集剤貯留部3aから前記排水混合タンク2へ凝集剤を送る凝集剤供給配管3bとを備えている。前記懸濁粒子生成手段は、凝集剤貯留部3a内で凝集剤と適量の水とを混合し、混合された混合液を凝集剤供給配管3b経由で前記排水混合タンク2に供給し、排水混合タンク2内の排水において亜鉛を含む懸濁粒子を生じさせるように構成されている。
【0018】
なお、前記懸濁粒子生成手段は、凝集剤貯留部3aから前記加圧浮上槽5aへ直接的に凝集剤を送るべく、凝集剤供給配管3bの下流側が、前記加圧浮上槽5aとつながるように構成されていてもよい(図示せず)。
また、前記懸濁粒子生成手段は、異なる凝集剤をそれぞれ前記排水混合タンク2に供給すべく、上記の凝集剤貯留部3a及び凝集剤供給配管3bをそれぞれ複数備えていてもよい。
【0019】
前記凝集剤としては、従来公知の一般的なものが挙げられ、例えば、金属を含有する無機凝集剤、高分子化合物を含む高分子凝集剤などが挙げられる。
【0020】
前記無機凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウムなどの無機金属塩が挙げられる。また、無機金属塩としては、例えば、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄(例えば、商品名「ポリテツ」)などの無機鉄塩等が挙げられる。
前記高分子凝集剤としては、例えば、アクリルアミド・アクリル酸Na共重合体などのアニオン系高分子凝集剤、アクリルアミド・2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム−クロリド共重合体などのカチオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤などが挙げられる。前記高分子凝集剤としては、凝集能に優れているという点で、アニオン系高分子凝集剤が好ましい。
前記凝集剤としては、例えば、市販されているものを用いることができる。
なお、亜鉛含有排水Zに加える前記凝集剤の量としては、特に限定されず、適宜適量が採用される。
【0021】
前記pH調整手段は、前記懸濁粒子を含む亜鉛含有排水ZをpH8.0〜11.0に調整するように構成されている。
前記pH調整手段は、具体的には、例えば、前記亜鉛含有排水ZのpHを変えるpH調整剤を前記排水混合タンク2に供給し、排水のpHを8.0〜11.0に調整するように構成されている。
【0022】
より具体的には、前記pH調整手段は、例えば、図1(a)に示すように、pH調整剤を貯留するpH調整剤貯留部4aと、該貯留部4a内のpH調整剤を前記排水混合タンク2に供給するpH調整剤供給配管4bと、該配管に取り付けられた供給ポンプPとを備えている。前記pH調整手段は、pH調整剤貯留部4a内でpH調整剤と適量の水とを混合し、pH調整剤供給配管4bを経由させて、混合された液を供給ポンプPによって前記排水混合タンク2に供給し、排水混合タンク2内における亜鉛含有排水ZのpHを8.0〜11.0に調整するように構成されている。
なお、前記pH調整手段は、pH調整剤貯留部4aから直接的に加圧浮上槽5aへpH調整剤を送るべく、前記pH調整剤供給配管4bの下流側が加圧浮上槽5aにつながるように構成されていてもよい(図示せず)。
【0023】
前記pH調整剤としては、具体的には、例えば、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。なかでも、安価であり簡便にアルカリ性側へpH調整できるという点で、水酸化ナトリウムが好ましい。また、前記pH調整剤としては、具体的には、例えば、塩酸、硫酸等が挙げられる。なかでも、安価であり簡便に酸性側へpH調整できるという点で、硫酸が好ましい。
【0024】
前記加圧浮上手段は、加圧溶解した気体成分を含む加圧水を大気圧へ減圧させることにより生じた気泡と、pH調整された前記亜鉛含有排水Zとを接触させ、該気泡を前記懸濁粒子に付着させることにより前記懸濁粒子を気泡とともに浮上させるように構成されている。
具体的には、前記加圧浮上手段は、例えば、加圧により水に溶解させた気体成分を含む加圧水を大気圧に減圧して気泡を生じさせ、該気泡を含む気泡含有水とpH調整された亜鉛含有排水Zとを接触させることにより、亜鉛を含む懸濁粒子に気泡を付着させ、懸濁粒子を気泡とともに浮上させるように構成されている。
【0025】
また、例えば、前記加圧浮上手段は、加圧により水に溶解させた気体成分を含む加圧水をpH調整された亜鉛含有排水Zと接触させることにより、加圧水を大気圧に減圧させて気体成分を気泡に変え、亜鉛を含む懸濁粒子に該気泡を付着させ、懸濁粒子を気泡とともに浮上させるように構成されていてもよい。
【0026】
より具体的には、前記加圧浮上手段は、図1(a)に示すように、例えば、前記排水混合タンク2にてpH調整された亜鉛含有排水Zを受け入れる加圧浮上槽5aと、前記排水混合タンク2にてpH調整された排水Zを加圧浮上槽5aへ供給する排水供給配管5bと、前記加圧浮上槽5aにて亜鉛濃度が減少した処理水の一部を取り出す処理水取出用配管5cと、取り出した処理水を加圧ポンプP’によって気体成分(空気A)とともに加圧することにより気体成分が水に溶解した加圧水を製造する加圧水製造機5dと、一端が加圧水製造機5dに取り付けられ他端が前記排水供給配管5bの途中に取り付けられ、加圧水製造機5dで製造された加圧水を大気圧へ減圧して気泡含有水に変え、該気泡含有水を排水供給配管5b中の排水Zに送る気泡含有水供給配管5eとを備えている。
そして、前記加圧浮上手段は、処理水取出用配管5cを経て加圧水製造機5dに取り入れた処理水と気体成分(空気A)とを用いて加圧水を製造し、加圧水の減圧により生じた気泡含有水を、気泡含有水供給配管5e及び前記排水供給配管5bを通して加圧浮上槽5aへ送りつつ、pH調整された排水Zを加圧浮上槽5aへ送り、加圧浮上槽5a内において気泡を前記懸濁粒子に付着させて、亜鉛を含む懸濁粒子を気泡とともに浮上させるように構成されている。
【0027】
なお、前記加圧浮上手段は、加圧浮上槽5aと排水供給配管5bと処理水取出用配管5cと加圧水製造機5dと気泡含有水供給配管5eとを備え、亜鉛濃度が減少した処理水の一部が加圧浮上槽5aを出て加圧浮上槽5aに戻り、循環するように構成されている。
【0028】
前記加圧浮上槽5aは、必要に応じて、図1(a)に示すように、モータM’に取り付けられ該モータM’の回転によって、前記加圧浮上槽5aの底部に沈降し得る凝集した懸濁粒子を加圧浮上槽5aの底部の中心部分に掻き寄せる底部掻寄機5fを備え得る。
【0029】
さらに具体的には、前記加圧浮上手段は、図1(a)及び(b)に示すように、例えば、中空円柱状に形成され柱軸方向が上下方向となるように配され上端が開口した流入ボックス5gを備え、流入ボックス5gの側面に前記排水供給配管5bの一端がつながり、気泡含有水とpH調整された排水との混合水が流入ボックス5gの内側に供給されるように構成されている。
斯かる加圧浮上手段によれば、pH調整された排水と加圧水由来の気泡含有水とが排水供給配管5bを経て流入ボックス5gの内側に供給されて、気泡が前記懸濁粒子に付着することにより、亜鉛を含む懸濁粒子が気泡とともに浮上できる。
【0030】
前記気体成分としては、特に限定されるものではないが、通常、空気Aが用いられる。気体成分として空気を用いると、発生する気泡は、空気を含むものとなる。
【0031】
前記除去手段は、通常、気泡の浮上により排水の液面側に移動した懸濁粒子を除去するように構成されている。具体的には、前記除去手段は、例えば図1(a)に示すように、加圧浮上槽5a内の排水の液面付近に気泡とともに浮上した亜鉛含有懸濁粒子(以下、亜鉛スカムSともいう)を掻き寄せるスカムレーキ6aと、スカムレーキ6aによって掻き寄せられた亜鉛スカムSを落とし込み一時的に滞留させるスカムボックス6bと、スカムボックス6b内の亜鉛スカムSを排出させるためのスカム排出管6cとを備え、浮上した亜鉛スカムSをスカムレーキ6aによって掻き寄せてスカムボックス6bに落とし込んで一時的に滞留させ、さらにスカム排出管6cを通して亜鉛スカムSを除去できるように構成されている。
【0032】
前記スカムレーキ6aは、一部が排水に浸かりながら前記モータM’と連動して、加圧浮上槽5aの周方向に沿って回転するように構成されており、回転によって亜鉛スカムSを掻き寄せることができるように構成されている。
【0033】
なお、前記除去手段は、例えば、加圧浮上槽5aの下方部に取り付けられたサンプリングバルブ(図示せず)を備え、排水の液面側にある亜鉛スカムSを残しつつ前記サンプリングバルブから亜鉛濃度が減少した処理水を取り出すことにより、亜鉛スカムSを除去できるように構成されていてもよい。
【0034】
また、前記除去手段は、中空円柱状に形成され柱軸方向が上下方向となるように前記流入ボックス5gの下方に配された処理水ボックス6dと、管状に形成され該処理水ボックス6dの下方部の側面から放射状に延び下側に向いた孔6fが複数形成された複数のパイプ6eと、前記加圧浮上槽5aの側方に配された処理水槽6iと、前記処理水ボックス6dの内側と連通し亜鉛濃度が低減された処理水を該処理水槽6iへ送る処理水連通管6gと、前記処理水槽6iから処理水を取り出す取出用配管6hとを備えていてもよい。
斯かる除去手段によれば、前記パイプ6eの孔6fを経て(図1(a)中の矢印で示す)、加圧浮上槽5a内の水が底部側から上向きに処理水ボックス6dの内側へ供給され得る。しかも、前記パイプ6eの孔6fが下方を向いているため、懸濁粒子の一部が凝集して沈降したとしても凝集した懸濁粒子がパイプ6e中に入り込むことを防止できる。そして、亜鉛濃度が低減された処理水を前記処理水ボックス6dの内側から処理水連通管6gを経て処理水槽6iに取り入れ、処理水槽6iに取り入れた処理水をさらに取出用配管6hを通じて取り出すことにより、浮上した亜鉛含有懸濁粒子を除去した処理水を得ることができる。
なお、前記流入ボックス5gと前記処理水ボックス6dとの間には、隔壁があり、流入ボックス5gの内側の水と処理水ボックス6dの内側の水とは、互いに直接混ざることはない。
【0035】
次に、本実施形態の亜鉛含有排水の排水処理方法について説明する。
本実施形態の亜鉛含有排水の排水処理方法において用いる装置類の概略図は、図1に示す通りである。
【0036】
本実施形態の亜鉛含有排水の排水処理方法は、亜鉛を含む亜鉛含有排水に凝集剤を加えることにより亜鉛を含む懸濁粒子を生じさせる懸濁粒子生成工程と、前記懸濁粒子を含む亜鉛含有排水をpH8.0〜11.0に調整するpH調整工程と、該pH調整工程によりpH調整された前記亜鉛含有排水と加圧により溶解した気体成分を含む加圧水とを接触させて減圧により前記気体成分から気泡を生じさせ、該気泡を前記懸濁粒子に付着させることにより前記懸濁粒子を前記気泡とともに浮上させる加圧浮上工程と、浮上した前記懸濁粒子を除去する除去工程とを実施することにより、前記亜鉛含有排水中の亜鉛を減少させるものである。
【0037】
好ましくは、前記亜鉛含有排水の排水処理方法では、前記pH調整工程の後、且つ、前記加圧浮上工程の前に、前記亜鉛含有排水に凝集剤を加えることにより前記懸濁粒子を凝集させる凝集工程を実施する。
【0038】
本実施形態の亜鉛含有排水の排水処理方法で実施する各工程について詳しく説明する。
まず、前記排水処理方法においては、図1に示すように、亜鉛を含む亜鉛含有排水Zを外部から前記排水混合タンク2に供給する。
【0039】
前記懸濁粒子生成工程では、前記凝集剤供給配管3bを経由させて、適量の水と凝集剤とが混合された液を前記凝集剤貯留部3aから排水混合タンク2へ供給し、前記撹拌装置2aの撹拌によって亜鉛含有排水Zと凝集剤とを混合することにより亜鉛を含む懸濁粒子を生じさせる。
前記懸濁粒子生成工程では、少なくとも懸濁粒子が生成する量の凝集剤を亜鉛含有排水Zと混合する。また、懸濁粒子の凝集物が沈殿することを抑制すべく、過剰量の凝集剤を用いる必要はない。
【0040】
前記懸濁粒子生成工程では、懸濁粒子が過度に大きくなって沈殿することをより確実に抑制できるという点で、前記凝集剤として前記無機金属塩を用いることが好ましく、前記無機鉄塩を用いることがより好ましい。
具体的には、前記懸濁粒子生成工程では、例えば、前記亜鉛含有排水Z中で凝集剤が1〜500mg/L(固形分)の濃度となるように、前記凝集剤と亜鉛含有排水Zとを混合することができる。より具体的には、前記懸濁粒子生成工程では、例えば、前記亜鉛含有排水Z中で凝集剤が1〜100mg/L(Fe分)の濃度となるように、前記無機鉄塩と亜鉛含有排水Zとを混合することができる。
【0041】
前記pH調整工程では、前記pH調整剤と水とを図1に示す前記pH調整剤貯留部4aで混合し、pH調整剤を含む混合水を前記pH調整剤貯留部4aから前記排水混合タンク2に供給し、前記撹拌装置2aの撹拌により、排水混合タンク2内にある亜鉛含有排水ZのpHを8.0〜11.0に調整することができる。
また、前記pH調整工程では、前記排水混合タンク2に供給された亜鉛含有排水Zに、直接pH調整剤を添加し、前記撹拌装置2aの撹拌によって亜鉛含有排水ZとpH調整剤とを混合することにより、排水混合タンク2内にある亜鉛含有排水ZのpHを8.0〜11.0に調整することができる。
【0042】
亜鉛が両性元素であることから、前記pH調整工程において亜鉛含有排水のpH調整をpH8.0未満にすると、亜鉛が亜鉛イオン(Zn2+等)の態様で溶解し、亜鉛含有排水中に比較的多く残存するおそれがある。また、亜鉛含有排水のpHが11.0を超えると、亜鉛がテトラヒドロキソ亜鉛酸イオン{[Zn(OH)42-]}の態様となって排水中に溶解し、排水中に比較的多く残存するおそれがある。
前記pH調整工程においては、亜鉛含有排水のpHを8.0〜11.0に調整することにより、亜鉛の溶解度が比較的低い状態になる。斯かる状態の亜鉛は、溶解しているより安定な状態となるべく懸濁粒子から排水中へ溶解することが抑制されている。従って、亜鉛が懸濁粒子に含まれた状態で維持され得る。
前記pH調整工程においては、処理後の水中における亜鉛濃度をより低くできるという点で、亜鉛含有排水のpHを9.0以上に調整することが好ましく、また、pHを10.5以下に調整することが好ましい。
【0043】
前記懸濁粒子生成工程及び前記pH調整工程は、同時に実施することができる。具体的には例えば、前記凝集剤貯留部3aから排水混合タンク2へ凝集剤を供給して懸濁粒子生成工程を実施しつつ、pH調整剤をpH調整剤貯留部4aから前記排水混合タンク2に供給して排水のpHを8.0〜11.0に調整してpH調整工程を実施することができる。
【0044】
前記凝集工程では、図1に示す前記排水混合タンク2内のpH調整された亜鉛含有排水Zに前記凝集剤を加え、前記排水混合タンク2における撹拌装置2aを用いた撹拌により、亜鉛含有排水Zと凝集剤とを混合し、前記懸濁粒子を凝集させることができる。
前記凝集工程では、前記懸濁粒子が連なるように凝集して大きくなり得る。このように凝集することにより、続く加圧浮上工程において発生した気泡をより多く抱え込むことができ、凝集した懸濁粒子が気泡とともに浮上しやすくなると考えられる。
【0045】
具体的には、前記凝集工程では、懸濁粒子が過度に凝集し凝集物が沈殿することをより確実に抑制すべく、例えば、前記凝集剤として前記高分子凝集剤を用い、前記亜鉛含有排水Z中で高分子凝集剤が0.1〜100mg/Lの濃度(固形分)となるように、好ましくは0.1〜10mg/Lの濃度(固形分)となるように高分子凝集剤と亜鉛含有排水Zとを混合することができる。
【0046】
前記凝集工程では、前記懸濁粒子をより凝集させることができるという点で、上述した凝集剤のうち、凝集剤として高分子凝集剤を用いることが好ましい。
該高分子凝集剤としては、アニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤等を用いることができ、好ましくは、アニオン系高分子凝集剤を用いる。
なお、前記凝集工程は、前記懸濁粒子生成工程で用いる凝集剤貯留部3a及び凝集剤供給配管3bとは別の凝集剤貯留部及び凝集剤供給配管を用いて、前記懸濁粒子生成工程と同様の方法により実施することができる。
【0047】
前記加圧浮上工程では、加圧により溶解した気体成分を含む加圧水を大気圧へ減圧させることにより前記気体成分から気泡を生じさせ、pH調整された前記亜鉛含有排水に含まれる懸濁粒子に気泡を付着させることにより前記懸濁粒子を気泡とともに浮上させる。
【0048】
具体的には、前記加圧浮上工程では、例えば、図1に示す前記加圧水製造機5dを用いて、加圧により水に気体成分を溶解させた加圧水を製造する。さらに、加圧水を図1に示す気泡含有水供給配管5eを通して送ることにより、大気圧への減圧によって気泡を発生させて気泡含有水を生じさせる。そして、該気泡含有水とpH調整された亜鉛含有排水Zとを排水供給配管5bを通して加圧浮上槽5aへ送り、気泡含有水とpH調整された亜鉛含有排水Zとを接触させ、加圧浮上槽5aにおいて懸濁粒子に気泡を付着させる。このため、加圧浮上槽5aにおいて懸濁粒子が気泡とともに比較的短時間で浮上する。このように、懸濁粒子が気泡とともに浮上して亜鉛含有排水Zの液面側へ比較的短時間で移動するため、亜鉛含有排水Zにおける下側の亜鉛濃度を効率良く低減させることができる。
【0049】
前記除去工程では、気泡とともに排水の液面側に移動した懸濁粒子を除去する。液面側に移動した懸濁粒子を除去する方法としては、一般的な方法を採用することができる。具体的には、例えば図1に示す前記スカムレーキ6a等を用いて亜鉛スカムSを除去することができる。
【0050】
また、前記除去工程では、図1に示す前記処理水槽6i内から、前記取出用配管6hを通じて、亜鉛濃度が低減された処理水を取り出すことができる。
【0051】
なお、懸濁粒子が液面側に移動した加圧浮上槽5a内において、懸濁粒子を除去すべく、加圧浮上槽5aの下方部から亜鉛濃度が低減された処理水を取り出すことにより、前記除去工程を実施することもできる。
【0052】
本実施形態の亜鉛含有排水の排水処理方法および亜鉛含有排水の排水処理設備は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の亜鉛含有排水の排水処理方法および亜鉛含有排水の排水処理設備に限定されるものではない。
また、一般の亜鉛含有排水の排水処理方法および亜鉛含有排水の排水処理設備において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明する。
【0054】
(実施例1)
中空円筒状に形成され一端に底面を有し他端が開口しているカラムを筒軸方向が上下方向となるように配置し、下方部の側面にサンプリングコックを取り付けた。また、加圧により空気が水道水中に溶解している加圧水を貯留した加圧タンクを用意した。上記のカラムの下方底面に圧力開放コックを介して加圧タンクを取り付け、圧力開放コックの開閉により加圧水がカラムに供給されるように構成された装置を組み立てた。
一方、0.631gの塩化亜鉛(ZnCl2)を純水10Lに溶解させて、人工的な亜鉛含有排水を調製した。
pH:5.8
亜鉛含量:30.8(mg/L)
上記の亜鉛含有排水(1L)をカラムに入れ、凝集剤として無機凝集剤(ポリ硫酸第二鉄含有製品 製品名「ポリテツ」日鉄鉱業社製)を100mg/L濃度(固形分40mg/L濃度 Feとして11mg/L濃度)となるように加え、カラム内にてプロペラミキサーにより500rpmで撹拌を行い、懸濁粒子を生じさせて懸濁粒子生成工程を実施した。1分間撹拌した後のpHは3.6であった。
次に、pH3.6となった排水に苛性ソーダ(NaOH)を54mg/L濃度となるように加え、カラム内にてプロペラミキサーにより500rpmで撹拌を行い、pH調整工程を実施した。8分間撹拌した後のpHは、8.0であった。
続いて、凝集剤としてのアニオン系高分子凝集剤(製品名「シンコーフロックA−2721」 アクリルアミド・アクリル酸Na共重合体含有 神鋼環境ソリューション社製)を1.0mg/L濃度(固形分0.9mg/L濃度)となるように加え、カラム内にてプロペラミキサーにより150rpmで1分間の撹拌を行い、懸濁粒子の凝集物を生じさせて凝集工程を実施した。凝集工程後の排水においては、懸濁物質(SS)濃度計によりSS濃度を測定した。
さらに、加圧圧力0.40MPaの加圧水を上記工程後の排水に供給し、大気圧に減圧させることにより気泡を発生させた。該気泡が付着した懸濁粒子を気泡とともに浮上させ、加圧浮上工程を実施した。該加圧浮上工程において加圧水を排水に送る時間は、1.5秒間であった。なお、加圧浮上工程においては、循環水としての水道水の循環率を30%とした。加圧浮上工程を実施した後の結果から、浮上速度は、20(m/時)未満であり、懸濁粒子に気泡が付着してなるもの(亜鉛スカム)の容量は、1.5(%)であった。
そして、浮上した懸濁粒子を除去すべく、カラム側面のサンプリングコックから処理水を取り出し、除去工程を実施した。
【0055】
(実施例2)
pH調整工程において、pHを9.0に調整した点以外は、実施例1と同様にして排水処理を行った。
【0056】
(実施例3)
pH調整工程において、pHを9.5に調整した点以外は、実施例1と同様にして排水処理を行った。
【0057】
(実施例4)
pH調整工程において、pHを10.0に調整した点以外は、実施例1と同様にして排水処理を行った。
【0058】
(実施例5)
pH調整工程において、pHを10.5に調整した点以外は、実施例1と同様にして排水処理を行った。
【0059】
(実施例6)
pH調整工程において、pHを11.0に調整した点以外は、実施例1と同様にして排水処理を行った。
【0060】
(比較例)
pH調整工程において、pHを7.0に調整した点以外は、実施例1と同様にして排水処理を行った。
【0061】
実施例及び比較例における排水処理後の亜鉛濃度の分析結果を表1に示す。亜鉛濃度の分析は、JIS K0102(2008)53.3 ICP発光分析法によって行った。
なお、水道水の循環率を30%とし、亜鉛濃度が減少した処理水が希釈された分、亜鉛濃度の分析値は、希釈前の値に相当するように補正した。
また、各実施例及び比較例において処理した後の排水(処理水)の亜鉛濃度をグラフ化したものを図2に示す。なお、図2(b)は、図2(a)の一部を拡大したものである。
【0062】


【表1】

【符号の説明】
【0063】
1:亜鉛含有排水の排水処理設備
2:排水混合タンク 2a:撹拌装置
3a:凝集剤貯留部 3b:凝集剤供給配管
4a:pH調整剤貯留部 4b:pH調整剤供給配管
5a:加圧浮上槽 5b:排水供給配管 5c:処理水取出用配管
5d:加圧水製造機 5e:気泡含有水供給配管
5f:底部掻寄機 5g:流入ボックス
6a:スカムレーキ 6b:スカムボックス
6c:スカム排出管 6d:処理水ボックス
Z:亜鉛含有排水 S:亜鉛スカム A:空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛を含む亜鉛含有排水に凝集剤を加えることにより亜鉛を含む懸濁粒子を生じさせる懸濁粒子生成工程と、前記懸濁粒子を含む亜鉛含有排水をpH8.0〜11.0に調整するpH調整工程と、該pH調整工程によりpH調整された前記亜鉛含有排水と加圧溶解された気体成分を含む加圧水の減圧により生じた気泡とを接触させ、該気泡を前記懸濁粒子に付着させることにより前記懸濁粒子を前記気泡とともに浮上させる加圧浮上工程と、浮上した前記懸濁粒子を除去する除去工程とを実施することを特徴とする亜鉛含有排水の排水処理方法。
【請求項2】
前記pH調整工程の後、且つ、前記加圧浮上工程の前に、前記亜鉛含有排水に凝集剤を加えることにより前記懸濁粒子を凝集させる凝集工程を実施する請求項1記載の亜鉛含有排水の排水処理方法。
【請求項3】
亜鉛を含む亜鉛含有排水に凝集剤を加えることにより亜鉛を含む懸濁粒子を生じさせる懸濁粒子生成手段と、前記懸濁粒子を含む亜鉛含有排水をpH8.0〜11.0に調整するpH調整手段と、該pH調整手段によりpH調整された前記亜鉛含有排水と加圧溶解された気体成分を含む加圧水の減圧により生じた気泡とを接触させ、該気泡を前記懸濁粒子に付着させることにより前記懸濁粒子を前記気泡とともに浮上させる加圧浮上手段と、浮上した前記懸濁粒子を除去する除去手段とを備えていることを特徴とする亜鉛含有排水の排水処理設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−31810(P2013−31810A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169377(P2011−169377)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(390015990)神鋼環境メンテナンス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】