説明

亜鉛粉末を用いるメロペネムの改善された製造方法

本発明は、新規なカルバペネム系抗生物質である、メロペネム三水和物[(1R,5S,6S)−2−[((2’S,4’S)−2’−ジメチルアミノカルボジル)ピロリジン−4'−イルチオ]−6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチルカルバペン−2−エム−3−カルボン酸、三水和物]の改善された合成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた効能と安全性により、カルバペネム系で最も優れた抗生物質として認められているメロペネム三水和物の新しい製造方法に関するものである。具体的に、本発明は、亜鉛粉末を用いた温和な反応条件下で脱保護反応を遂行して、高純度及び高収率でメロペネム三水和物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メロペネム三水和物(Meropenem・3HO)[化学名:(4R,5S,6S)−3−((3S,5S)−5−(ジメチルカルバモイル)ピロリジン−3−イルチオ)−6−((R)−1−ヒドロキシエチル)−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−2−カルボン酸・三水和物]は、下記式(1)の構造を有する化合物である。
【0003】
【化1】

【0004】
メロペネムの合成に関する従来技術として、特許文献1は、下記反応式1に示されるように、MAPを側鎖物質とカップリング反応して、カルボキシル基がp−メトキシベンジル基またはp−ニトロベンジル基で保護されたメロペネム−PNBを製造し、これを適当量のテトラヒドロフランとエタノールとの混合溶媒に溶解した後、重量比120%の10%パラジウム−炭素の存在下で、モルホリノプロパンスルホン酸緩衝溶液中、室温で3時間、水素化し、触媒をろ過し、テトラヒドロフランとエタノールを真空蒸留し、残留溶液を酢酸エチルで洗浄し、水溶液中の溶媒を真空蒸留し、CHP−20Pを利用するカラム・クロマトグラフィーで単離し、凍結乾燥して、非結晶形メロペネムを得る方法を開示している。
【0005】
【化2】

【0006】
また、特許文献2では、メロペネム−PNBをテトラヒドロフラン(THF)と水との混合溶媒に溶解し、そこに10%パラジウム−炭素を添加し、水素雰囲気下(4.8atm)室温で5時間反応した後、触媒をろ過し、テトラヒドロフランを真空蒸留し、残留溶液をジクロロメタンで洗浄し、水溶液中の溶媒を真空蒸留し、逆浸透濃縮装置を利用して濃縮した後、結晶化を経て、メロペネム三水和物を得る方法が紹介されている。特許文献2の方法は、特許文献1の方法と比較して、モルホリノプロパンスルホン酸緩衝液を用いることなく、水とテトラヒドロフランとの混合溶媒中で触媒水素化反応を行っているので、カラム・クロマトグラフィー、凍結乾燥、単離及び回収工程なしに、水性濃縮液から直ちに水和物を収得できるという長所がある。
【0007】
一方、特許文献3では、メロペネム−PNBを合成するために、従来の方法と比較して、製造工程を短縮して、容易に実施できる新しい工程を導入することによって、最終目的化合物の収率を向上している。しかし、この方法もまた特許文献1のメロペネム−PNBの脱保護工程を適用しているので、メロペネムを非結晶形で得た後、より安定した三水和物を得るための結晶化工程をさらに行い、55.3%(脱保護反応収率69.1%、結晶化収率80%)の収率でメロペネム三水和物を得ている。
【0008】
前記方法は工程が複雑であって、非常に高価な装置を用いる。特に、高価なパラジウム−炭素を多量使用しなければならない。また、爆発性が高い水素ガスを使用することから、工業化することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,943,569号
【特許文献2】米国特許第4,888,344号
【特許文献3】韓国特許公開公報第1994−14399号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
メロペネムを製造するための従来方法が前述のような問題を抱えており、特に、p−ニトロベンジル基を除去する条件が工業化に適していないと考えられる。従って、本発明者らは、より温和な条件下で実施され、工業的な適用が容易であり、そして収率、品質面でも改善された方法を開発しようと鋭意研究を行なった。このような努力の結果、本発明者らは、脱保護工程に亜鉛粉末を用いることによりこのような目的を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、式(1)のメロペネム三水和物を製造する方法を提供し、方法は下記式(2)のメロペネム−PNB[(4R,5S,6S)−3−((3S,5S)−5−(ジメチルカルバモイル)−1−((4−ニトロベンジルオキシ)カルボニル)ピロリジン−3−イルチオ)−6−((R)−1−ヒドロキシエチル)−4-メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−2−カルボン酸 4−ニトロベンジル]を、有機溶媒とリン酸塩水溶液の混合溶媒中で亜鉛粉末と反応すること、得られた混合物からリン酸塩を除去すること、そして結晶化用混合溶媒でメロペネム三水和物を結晶化することを特徴としている。
【0012】
【化3】

【発明の効果】
【0013】
本発明は、高圧の水素を用いる反応を径由してp−ニトロベンジル基を除去する従来技術の問題点を補完するために、カルバペネム系イミン(アミン)化合物のカルボキシル基の保護基であるp−ニトロベンジル基を、亜鉛粉末を用いる温和な条件下で除去することによる、工業的に安全な方法を提供する。また、安価なイオン樹脂を使用することによるコスト削減効果、及び反応後に不純物のリン酸塩を効率的に除去することによる品質改良効果を発揮する。本発明は、また、メロペネム−PNBを合成するカップリング工程とp−ニトロベンジル基を除去する脱保護工程をその場で(in situ)実施することによって、簡便さと生産性向上の追加的な効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
式(2)のメロペネム−PNBからメロペネム三水和物を製造する工程は、保護基であるp−ニトロベンジル基の脱保護工程である。反応は、メロペネム−PNBを溶解することができる有機溶媒とリン酸塩水溶液との混合溶媒中、20〜50℃で0.5〜5時間、好ましくは1〜1.5時間行う。
【0015】
メロペネム−PNBを溶解することができる有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルムなどから選択される。メロペネム−PNBの有機溶媒溶液に、0.5〜1.6M、好ましくは1.5Mのリン酸塩水溶液を加え、約25℃に温度をセットして、そこに亜鉛粉末をゆっくり加える。この時、有機溶媒:リン酸塩水溶液の混合比は、メロペネム−PNBの重量に対して5:5〜15:30の容量、好ましくは10:20の容量である。リン酸塩は、KHPO、KHPO、HPO、NaHPO及びNaHPOの中から選択され、好ましくはKHPOを使用する。メロペネム−PNB溶液を加えてその濃度がほぼ飽和状態になることが好ましい。リン酸塩の濃度が低いと、反応は保護基のニトロ部分だけがアミンに還元される中間体で止まり、目的化合物を最大収率で得ることできない。リン酸塩緩衝液を使用する場合には、リン酸塩を単独で使用する場合に比べて、目的化合物の相当量が分解され、不純物を多量生成して、収率低下及び含量低下の原因になる。亜鉛粉末は重量ベースで、メロペネム−PNBより4〜8倍多い量を加える。急激な発熱による目的化合物の分解を避けるために、亜鉛粉末を少量ずつ加えると、急激な発熱現象が最小化できる。脱保護反応温度を20℃未満にすると、反応は1次還元アミン中間体までのみしか進まず、反応が完結されない。50℃を超える温度では、反応速度及び完結度が増大する反面、目的化合物が多量分解されて、収率及び純度の低下をもたらす。
【0016】
反応が完結すると、ろ過して亜鉛粉末を除去する。この時、フィルター上に残存している亜鉛粉末を、テトラヒドロフラン、アルコールなどのような極性有機溶媒と水との混合液で洗浄して、亜鉛粉末に多量に吸着している目的化合物を完全に単離する。次いで、ろ液を層分離して、水層を単離した後、反応溶媒または洗浄液として用いた有機溶媒を除去するために、非極性有機溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタンなどで数回洗浄する。残っている有機溶媒を濃縮によって除去すると、弱酸性の反応液中で目的化合物が次第に分解されて、収率及び含量の損失を引き起こす。特に、抽出または濃縮工程で水層に親水性有機溶媒が残っている場合、有機溶媒は吸着樹脂への目的化合物の吸着を阻止して、目的化合物を直接溶出することによって、収率の低下を招く。従って、それを除去することが好ましい。
【0017】
かくして得られた結果混合物からリン酸塩を除去する。
第1回目のリン酸塩の除去は結晶化を介して行うことができる。即ち、メロペネムを溶解するがリン酸塩を溶解しない溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリルなどの水混和性溶媒、好ましくはメタノールを加えて、結晶形態で多量のリン酸塩を第1回目に除去する。
【0018】
本発明の好ましい実施態様によると、抽出工程が終了した後、目的化合物を含有している水層を冷却し、予め冷却したメタノールを加えて、第1回目のリン酸塩を除去する。メタノールはメロペネム−PNBより10倍〜80倍多い総容量で加える。この時、冷却したメタノール添加時の温度が高すぎると不純物が大量に発生するため、20℃以下で添加することが好ましい。添加の後、リン酸塩結晶が生育したら、結晶をろ過して除去する。
【0019】
好ましくは、前述のように結晶化及びろ過による第1回目のリン酸塩の除去が終わった生成物にカチオン樹脂を通過させて、更にリン酸塩を除去できる。
【0020】
本発明の好ましい実施態様によると、結晶化及びろ過による第1回目のリン酸塩の除去が終わると、目的化合物を含有している水層を冷却して、次いでこれを予めリンス処理し冷却したカチオン樹脂、例えば、BCMB50、BC108、NM60G、Lewit up 1213、Lewit up 1243、IRC86RF、S8227など、好ましくはBCMB50を通過させて、更にリン酸塩を除去する。即ち、目的化合物を含有している水層はカチオン樹脂を通過させることによって、リン酸塩を更に除去して、目的物を精製する。樹脂を通過する目的化合物のpHを上げ、通過が完全に終わった目的化合物をpH5.0〜7.0に調節し、随意に1N−メチルモルホリン/酢酸緩衝溶液(pH6.5〜7.0)を加えた後、メロペネム−PNBの重量に対して、3〜20倍大きい容量になるまで濃縮する。メチルモルホリン/酢酸緩衝溶液は、濃縮時、目的化合物の分解を抑制する役割を果たし、それにより最終収率を更に5%又はそれ以上高める。溶出液を濃縮する工程で、熱による分解を最小化するために、低温で濃縮を行うべきで、そのために逆浸透装置を用いて低温で短時間で濃縮を行う。
【0021】
或いは、リン酸塩の第1回目の除去は吸着樹脂を用いて行ってもよい。
本発明の別の実施態様によれば、抽出が終わった後、目的化合物を含有している水層を冷却して、予め冷却した吸着樹脂、例えば、SP−207、Amberlite(登録商標)、XAD4、XAD7、Diaion HP−20、HP−40など、好ましくはSP−207を用いてリン酸塩を除去する。即ち、目的化合物を含有している水層を樹脂に吸着し、水層に対して50〜100倍多い量の水をそこに加え、反応に用いたリン酸塩と極性の高い不純物を除去する。リン酸塩を除去した後、20〜80%濃度で水と混合した極性溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリルなど、好ましくはメタノールまたはエタノールで展開して目的化合物を溶出する。
【0022】
極性有機溶媒を含有している水溶液を吸着樹脂に展開すると、極性が変わり、次いで、相当な熱が発生し、これにより目的化合物が分解されることがある。従って、目的化合物の分解を最小にするために、用いる展開液を最大限冷却しなければならない。目的化合物を含有している溶出液の画分を合わせて、随意に1N−メチルモルホリン/酢酸緩衝溶液(pH6.5〜7.0)を加えた後、メロペネム−PNB重量に対して3〜20倍大きい容量になるまで濃縮する。1N−メチルモルホリン/酢酸緩衝溶液は、濃縮時、目的化合物の分解を抑制する役割を果たし、それにより最終収率を更に5%又はそれ以上高める。溶出液を濃縮する工程で、熱による分解を最小化するために、低温で濃縮を行わなければならず、そのために、逆浸透装置を用いて低温で短時間で濃縮を行う。
【0023】
前述したカチオン樹脂または吸着樹脂の溶出液の濃縮液には、メロペネム溶解性溶媒が既に含まれているので、ここにメロペネム不溶性溶媒、例えば、アセトン、イソプロピルアルコール、及びテトラヒドロフラン、好ましくはアセトンをメロペネム−PNB重量に対して、10〜110倍多い容量で加え、1時間室温で結晶を生成させる。0〜5℃に冷却し、2時間撹拌することによって、結晶を生育させて、ろ過し、アセトンで洗浄して、25℃で真空乾燥する。本発明の実施態様において、NMRスペクトルを使用して測定した結果、本発明の工程に従って合成した目的化合物がメロペネムのUSP標準物質と同等な物質であることを確認した。
【0024】
本発明の別の実施態様によると、第1回目のリン酸塩の除去が終了した後に得られた液は、樹脂を通過させることなく、メロペネム−PNB重量に対して、3〜20倍大きい容量になるまで濃縮することができる。この時、好ましくは前述したメチルモルホリン/酢酸緩衝溶液を用いてもよい。この濃縮工程でも、熱による分解を最小化するため、低温で濃縮を行わなければならない。そのために、逆浸透装置を用いて低温で短時間で濃縮を行う。また、この濃縮液にもメロペネム溶解性溶媒が既に含まれているので、ここにメロペネム不溶性溶媒、例えば、アセトン、イソプロピルアルコール、及びテトラヒドロフラン、好ましくはアセトンをメロペネム−PNB重量に対して、10〜110倍多い容量で加え、1時間室温で結晶を生成させる。0〜5℃に冷却し、2時間撹拌することによって少量のリン酸塩を含むメロペネムの1次結晶を生育させて、ろ過し、アセトンで洗浄し、25℃で真空乾燥する。次いで、リン酸塩を含有するメロペネムの1次結晶を、予め冷却したメロペネム低溶解性溶媒、例えば、水にスラリー化し、残っているリン酸塩をさらに除去する。メロペネムの収率損失を最小化しながら残留したリン酸塩を效率的に除去するために、イソプロパノール:水の容量比1:2〜3:1の冷却した混合液で結晶を洗浄し、得られたメロペネムの2次結晶を25℃で真空乾燥する。
【0025】
このようなメロペネムの2次結晶化を介するリン酸塩の追加的除去方法は、前述したカチオン樹脂または吸着樹脂の溶出液の濃縮液から得られたメロペネムの結晶についても適用可能である。
【0026】
本発明で用いられる式(2)のメロペネム−PNBは、下記式(3)のMAP[(4R,5R,6S)−3−(ジフェノキシホスホリルオキシ)−6−((R)−1−ヒドロキシエチル)−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−2−カルボン酸]4−ニトロベンジルと、下記式(4)の側鎖化合物[(2S,4S)−2−(ジメチルカルバモイル)−4−メルカプトピロリジン−1−カルボン酸]4−ニトロベンジルとをカップリング反応して、得られる。
【0027】
【化4】

【0028】
式(2)のメロペネム−PNBを得るカップリング工程に続く、カルボキシル保護基であるp−ニトロベンジル基を除去する脱保護工程を実施する上で、この脱保護工程は、カップリング工程の後のメロペネム−PNBの結晶化後に実施することができ、また、結晶化を経ずに抽出溶媒中で単離及び精製せずにその場(in situ)で行うことできる。カップリング工程後メロペネムは水層に溶解して副産物は有機層に溶解して、1次的な精製が抽出工程によるものだけで可能であるため、このようなその場(in situ)工程が可能である。脱保護工程をその場(in situ)で行うと、反応時間が短縮され、収率が改善されるので、生産性を大きく改善することができる。
【0029】
更に具体的には、式(3)のMAPと式(4)の側鎖化合物のカップリング反応は極性の高い有機溶媒、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどを反応溶媒として用いて、塩基、例えば、ジイソプロピルエチルアミンの存在下で実施できる。反応は−20℃〜室温で1〜5時間行う。反応が完結した後、有機溶媒で反応液を抽出し、0.1〜6NのHCl、飽和塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムと活性炭で処理する。ろ過後、溶媒濃縮工程を行うことなく、酢酸エチル中で直接に結晶化してメロペネム−PNBを合成する。或いは、前述のように、結晶化工程を行うことなく、抽出液状態をそのまま(in situ)、後続の脱保護反応で用いることができる。
【0030】
概して、本発明に係る方法は以下のような数多くの利点を有している。
【0031】
第1に、脱保護反応で安価の亜鉛粉末を使用するので、非常に経済的であり、そして室温、常圧の温和な条件で反応を実施するので、爆発の危険がなく、工業的な適用が容易である。
【0032】
第2に、従来方法では脱保護水素反応のために高価な特別な装置を必要としていたが、本発明に係る方法では一般的な反応設備を使用することができる。さらに、安価のカチオン樹脂を使用することができ、反応規模を自由自在に調節できるので、費用節減の効果がある。
【0033】
第3に、メロペネム−PNBを製造した後、単離及び精製工程なしに、その場で(in situ)脱保護反応を実施することによって、収率損失を最小化できる。
【0034】
第4に、リン酸塩が效率的に除去されるので、不純物の減少に伴い、含量を増大して、品質が向上される。
【0035】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を説明するためだけのものであり、本発明の範囲はこれらにより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
実施例1:
1−1)メロペネム−PNBの製造
MAP(20g)をジメチルアセトアミド(80mL)に溶解して、側鎖化合物(12.5g)を加えた。0〜5℃に冷却した後、ジイソプロピルエチルアミン(6.5mL)を滴下した。0〜5℃で5時間撹拌した後、酢酸エチル(120mL)と水(200mL)を加えて、反応混合液を撹拌して層分離した。酢酸エチル層に0.5NのHCl(80mL)を加え、残留する塩基を除去して、得られた混合物を飽和塩水(200mL)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムと活性炭を用いて残っている水と着色を除去した。ろ液の酢酸エチル溶液を撹拌して結晶を生成した。室温で8時間撹拌した後、0〜5℃に冷却し、2時間撹拌し、ろ過して、メロペネム−PNB(18.78g)を得た。
【0037】
1−2)メロペネム三水和物の製造
メロペネム−PNB(20g)をテトラヒドロフラン(200mL)に溶解した。そこに、水(400mL)に溶解したリン酸二水素カリウム(KHPO)(60g)を加えて、27℃に加温した。亜鉛粉末(80g)を少しずつゆっくり加えて、25〜35℃ で1時間撹拌した。反応の完了を確認した後、塩化メチレン(220mL)を加え、10分間撹拌し、次いで、ろ過して亜鉛粉末を除去した。水層を分離し、塩化メチレン(100mL)で2回洗浄して、水層に存在するテトラヒドロフランを完全に除去した。水層を冷却して、吸着樹脂SP−207を充填したカラムに展開して吸着させた。樹脂カラムを水(2L)で洗浄し、反応に用いたリン酸カリウム塩と不純物を除去し、60%メタノール(2L)で展開してメロペネムを完全に溶出した。メロペネムを含有している画分を合わせ、そこに、N−メチルモルホリン/酢酸緩衝溶液(pH6.5)を加えて、メロペネム−PNBの重量に対して10倍大きい容量になるまで濃縮した。アセトン(1100mL)を加えて結晶を生成して、室温で1時間撹拌した。ろ過及び乾燥して、メロペネム三水和物(9.78g)を得た.
【0038】
HNMR(CDCl,400MHz)δ5.5(1H),5.20(2H),4.75(1H),4.26(2H),3.4〜3.8(4H),3.3(2H),3.0(6H),2.62(1H),1.2〜1.3(8H)
【0039】
実施例2:
メロペネム三水和物の製造
実施例1−1)の方法で得られたメロペネム−PNB(20g)を酢酸エチル(200mL)に溶解した。そこに、水(400mL)に溶解したリン酸二水素カリウム(KHPO)(60g)を加えて、30℃に加温した。酢酸エチル/リン酸二水素カリウムの溶液に亜鉛粉末(80g)を加え、25〜35℃で1時間撹拌した。反応が完了した後、亜鉛粉末をろ過して、ろ液をテトラヒドロフラン/水の混合溶液(60mL)で洗浄した。水層を分離し、塩化メチレン(200mL)で洗浄して、吸着樹脂SP−207を充填したカラムに展開して吸着させた。樹脂カラムを水(2L)で洗浄し、反応に用いたリン酸二水素カリウムと不純物を除去して、60%メタノール(2L)で展開して、メロペネムを完全に溶出した。メロペネムを含有している画分を合わせ、そこに、N−メチルモルホリン/酢酸緩衝溶液(pH6.5)を加え、メロペネム−PNBの重量に対して10倍大きい容量になるまで濃縮した。アセトン(1100mL)を加えて結晶を生成し、室温で1時間撹拌した。ろ過及び乾燥して、メロペネム三水和物(9.66g)を得た。
【0040】
実施例3:
メロペネム三水和物の製造
実施例1−1)の方法で得られたメロペネム−PNB(20g)を塩化メチレン(200mL)に溶解した。そこに、水(400mL)に溶解したリン酸二水素カリウム(KHPO)(60g)を加えて、30℃に加温した。塩化メチレン/リン酸二水素カリウムの溶液に亜鉛粉末(80g)を加えて、25〜35℃で1時間撹拌した。反応が完了した後、亜鉛粉末をろ過して、ろ液をテトラヒドロフラン/水の混合溶液(60mL)で洗浄した。水層を分離し、塩化メチレン(200mL)で洗浄し、吸着樹脂SP−207を充填したカラムに展開して吸着させた。樹脂カラムを水(2L)で洗浄し、反応に用いたリン酸二水素カリウムと不純物を除去し、60%メタノール(2L)で展開して、メロペネムを完全に溶出した。メロペネムを含有している画分を合わせ、そこに、N−メチルモルホリン/酢酸緩衝溶液(pH6.5)を加え、メロペネム−PNBの重量に対して10倍大きい容量になるまで濃縮した。アセトン(1100mL)を加えて結晶を生成し、室温で1時間撹拌した。ろ過及び乾燥して、メロペネム三水和物(9.84g)を得た。
【0041】
実施例4:
メロペネム三水和物の合成(in situ工程)
MAP(20g)をジメチルアセトアミド(80mL)に溶解して、そこに、側鎖化合物(12.5g)を加えた。0〜5℃に冷却した後、ジイソプロピルエチルアミン(6.5mL)を滴下した。5時間撹拌した後、酢酸エチル(120mL)と水(200mL)を加え、反応混合物を撹拌して、次いで層分離した。酢酸エチル層に0.5NのHCl(80mL)を加え、残留する塩基を除去し、得られた混合物を飽和塩水(200mL)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムと活性炭を用いて残っている水と着色を除去した。ろ過後の溶媒濃縮工程なしに、酢酸エチル溶液の状態で直接に次の工程を実施した。酢酸エチル溶液に、水(400mL)に溶解したリン酸二水素カリウム(KHPO)(60g)を加え、30℃又はそれ以上に加温した。そこに、亜鉛粉末(80g)を加えて、25〜35℃で1時間撹拌した。反応が完了した後、亜鉛粉末をろ過して、ろ液をテトラヒドロフラン/水の混合溶液で洗浄した。水層を分離し、塩化メチレン(100mL)で4回洗浄し、吸着樹脂SP−207を充填したカラムに展開して吸着させた。樹脂カラムを水(2L)で洗浄し、反応に用いたリン酸二水素カリウムと不純物を除去し、60%メタノール(2L)で展開して、メロペネムを完全に溶出した。メロペネムを含有している画分を合わせ、そこに、N−メチルモルホリン/酢酸緩衝溶液(pH6.5)を加え、メロペネム−PNBの重量に対して10倍大きい容量になるまで濃縮した。アセトン(1100mL)を加えて結晶を生成し、室温で1時間撹拌した。ろ過及び乾燥して、メロペネム三水和物(10.30g)を得た。
【0042】
実施例5:
メロペネム三水和物の製造
実施例1−1)の方法で得られたメロペネム−PNB(20g)をテトラヒドロフラン(200mL)に溶解した。そこに、1.6Mのリン酸二水素ナトリウム(NaHPO)(400mL)を加えて、27℃に加温した。亜鉛粉末(80g)をゆっくり加えて、25〜35℃で1時間撹拌した。反応が完了した後、塩化メチレン(220mL)を加え、10分間撹拌し、次いで、ろ過して亜鉛粉末を除去した。水層を分離し、塩化メチレン(100mL)で2回洗浄して、水層に存在するテトラヒドロフランを完全に除去した。水層を冷却し、吸着樹脂SP−207を充填したカラムに展開して吸着させた。樹脂カラムを水(2L)で洗浄し、反応に用いたリン酸二水素ナトリウムと不純物を除去し、60%メタノール(2L)で展開してメロペネムを完全に溶出した。メロペネムを含有している画分を合わせ、そこに、N−メチルモルホリン/酢酸緩衝溶液(pH6.5)を加え、メロペネム−PNBの重量に対して10倍大きい容量になるまで濃縮した。アセトン(1100mL)を加えて結晶を生成し、室温で1時間撹拌した。ろ過及び乾燥して、メロペネム三水和物(8.53g)を得た。
【0043】
実施例6:
メロペネム三水和物の製造
メロペネム−PNB(20g)をテトラヒドロフラン(200mL)に溶解した。そこに、水(400mL)に溶解したリン酸二水素カリウム(KHPO)(60g)を加えて、27℃に加温した。亜鉛粉末(80g)を少しずつゆっくり加えて、25〜35℃で1時間撹拌した。反応が完了した後、ろ過して、亜鉛粉末を除去した。塩化メチレン(220mL)を加え、撹拌して、層を分離した。水層を単離し、塩化メチレン(100mL)で2回洗浄して、水層に存在するテトラヒドロフランを完全に除去した。水層を冷却した後、冷却したメタノール(800mL)を滴下して、リン酸カリウム結晶を析出した。結晶をろ過した後、ろ液は、リンス処理したカチオン樹脂BCMB50を充填したカラムを通過させて、残留するリン酸塩を除去した。そこに、N−メチルモルホリン/酢酸緩衝溶液(pH6.5)を加え、メロペネム−PNBの重量に対して10倍大きい容量になるまで濃縮した。アセトン(1100mL)を加えて結晶を生成し、室温で1時間撹拌した。ろ過及び乾燥して、メロペネム三水和物(10.15g)を得た。
【0044】
NMRスペクトルを使用して測定した結果、本発明の実施例に従って合成した目的化合物がメロペネムのUSP標準物質と同等の物質であることを確認した。
【0045】
実施例7:
メロペネム三水和物の製造
メロペネム−PNB(20g)をテトラヒドロフラン(200mL)に溶解した。そこに、水(400mL)に溶解したリン酸二水素カリウム(KHPO)(60g)を加えて、27℃に加温した。亜鉛粉末(80g)を少しずつゆっくり加えて、25〜35℃で1時間撹拌した。反応が完了した後、ろ過して亜鉛粉末を除去した。塩化メチレン(220mL)を加え、撹拌して、層を分離した。水層を単離し、塩化メチレン(100mL)で2回洗浄して、水層に存在するテトラヒドロフランを完全に除去した。水層を冷却した後、冷却したメタノール(800mL)を滴下して、リン酸カリウム結晶を析出した。結晶をろ過した後、ろ液をメロペネム−PNBの重量に対して10倍大きい容量になるまで濃縮した。アセトン(1100mL)を加えて、結晶を生成し、室温で1時間撹拌した。ろ過後、メロペネム三水和物及びリン酸塩を含有している結晶(12.2g)を得た。この結晶(12.2g)を水(48mL)に添加して、30分間撹拌した。ろ過及び乾燥して、メロペネム三水和物(9.9g)を得た。
【0046】
NMRスペクトルを使用して測定した結果、本発明の実施例に従って合成した目的化合物がメロペネムのUSP標準物質と同等の物質であることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法が、
式(2)のメロペネム−PNBを、有機溶媒とリン酸塩水溶液との混合溶媒中で、亜鉛粉末と反応して、p−ニトロベンジル基を除去すること、
得られた混合物からリン酸塩を除去すること、及び
結晶化用混合溶媒でメロペネム三水和物を結晶化すること、
を特徴としている、式(1)のメロペネム三水和物を製造する方法。
【化5】

【請求項2】
亜鉛粉末を、重量ベースでメロペネム−PNBより4〜8倍多い量で加える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リン酸塩が、KHPO、KHPO、HPO、NaHPO及びNaHPOから1つ又はそれ以上選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
有機溶媒が、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレン及びクロロホルムから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
反応を20〜50℃の温度で、0.5〜5時間行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
p−ニトロベンジル基を除去した後、得られた混合物を樹脂カラムで精製し、濃縮して、次いでメロペネム不溶性溶媒とメロペネム溶解性溶媒を含む結晶化用混合溶媒中で結晶化する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
メロペネム不溶性溶媒が、アセトン、イソプロピルアルコール及びテトラヒドロフランから選択され、そして、結晶化のためのメロペネム−溶解性溶媒として水を用いる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
吸着樹脂カラムを精製に用いる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
樹脂による精製において、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル及びテトラヒドロフランから選択される極性溶媒と水との混合溶媒を、メロペネムを溶出するために用いる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
カラムからの溶出液をメロペネム−PNBの重量に対して3〜20倍大きい容量まで濃縮して、そして結晶化のために、そこにメロペネム不溶性溶媒をメロペネム−PNBの重量に対して10〜110倍大きい容量で加える、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
式(2)のメロペネム−PNBが、式(3)のMAPと式(4)の側鎖化合物とをカップリング反応して製造される、請求項1に記載の方法。
【化6】

【請求項12】
カップリング反応生成物を抽出液そのままの状態で、結晶化せずに、in-situ 脱保護反応に用いる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
リン酸塩の除去が、メロペネムを溶解するがリン酸塩を溶解しない溶媒中での結晶化によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
メロペネムを溶解するがリン酸塩を溶解しない溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリルまたはそれらの組合せである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
結晶化したリン酸塩をろ過して得られた生成物が、カチオン樹脂を通過してリン酸塩を更に除去する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
メロペネム三水和物が、結晶化したリン酸塩をろ過して得られて且つリン酸塩を含有する生成物から1次結晶化される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
メロペネム三水和物の1次結晶化が、アセトン、イソプロピルアルコール及びテトラヒドロフランから選択されるメロペネム不溶性溶媒、及びメロペネム溶解性溶媒としての水を用いて行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
メロペネム三水和物の1次結晶を、メロペネム低溶解性溶媒中にスラリー化して、リン酸塩を更に除去する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
メロペネム低溶解性溶媒が水である、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2012−520293(P2012−520293A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553952(P2011−553952)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001516
【国際公開番号】WO2010/104336
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(500409840)ダエウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (13)
【出願人】(509092960)ダエウォン バイオ インク. (3)
【Fターム(参考)】