説明

交流成分予測方法及び画像処理装置

【課題】 各段の予測精度を向上させ、圧縮率及び画質を向上させる。
【解決手段】 複数のブロックで構成された画像情報から得られた各ブロックの直流成分で構成された直流成分画像データから、各ブロックについての交流成分を予測する交流成分予測方法に関する。まず、注目ブロックの直流成分Sと、その左右のブロックの直流成分L,Rとに基づき、注目ブロックの左右方向の交流成分V,Vを予測する処理を、全ブロックについて繰り返す。次に、予測された注目ブロックの交流成分V,Vと、その上下のブロックの予測された交流成分U,U,B,Bとに基づき、注目ブロックの上下方向の交流成分VUL,VBL,VUR,VBRを予測する処理を、全ブロックについて繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データの直流成分からその交流成分を予測する交流成分予測方法及びその方法を採用した画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像情報、例えば遊技機で表示される画像情報、の符号化処理においては、直交変換等により、画像情報をその直流成分と交流成分に分離し、直流成分のみを活用することにより情報量を減らし、また、交流成分を利用する場合にも、直流成分から低次の交流成分を予測(ACP:AC Component Prediction)することによって、交流成分の情報量を減らすことが行われている。
【0003】
つまり、交流成分の情報量の削減においては、直流成分が求められた段階で、交流成分の予測ができれば、その予測誤差のみについて交流成分の符号化を行えばよいため、情報量が削減されることとなる。
【0004】
上述の直流成分からの交流成分の予測の手法の1つとして、二次元的な直流成分画像データの個々の画像データについての交流成分を、注目する直流成分画像データとその周辺の直流成分画像データから求める手法がある。さらに、このとき、その処理を段階的、又は階層的に繰り返すことにより、予測精度を向上させていくことができる。かかる手法の一例は、特許文献1に開示されている。
【0005】
図4は、特許文献1に開示された手法における、交流成分の予測の方法を説明するための図である。なお、以下の説明において、便宜上、画像のブロック(サブブロック)の呼称と、そのブロックの画像データの値を区別しないで説明する。
【0006】
図4(a)は、直流成分画像データを示しており、それは複数のブロックで構成され、各ブロックが算出された直流成分データを有している。
【0007】
そこで、例えば図4(a)に示したブロックSについての交流成分予測は、同図(b)に示すように、当該ブロックSの直流成分値と、その上下左右のブロック(上側ブロックU、下側ブロックB、左側ブロックL、右側ブロックR)の直流成分値により、ブロックSの内部の4つのサブブロック(VUL,VUR,VBL,VBR)についての疑似的な直流成分を求めることにより行われる。このときの具体的な計算式は、以下の式(1)〜(4)である。
【0008】
UL=S+(U+L−B−R)/8 …(1)
UR=S+(U−L−B+R)/8 …(2)
BL=S+(−U+L+B−R)/8 …(3)
BR=S+(−U−L+B+R)/8 …(4)
この各サブブロックVUL,VUR,VBL,VBRの直流成分値の変化量がブロックSの交流成分を表していることになる。
【0009】
そして、上述のブロックSについての処理が、すべてのブロックについて図4(c)に示すように順次行われることにより、すべてのブロックについて交流成分が予測される。そして、更に、それを段階的、又は階層的にサブブロックに対して繰り返せば、その分、予測精度を向上させていくということになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3700976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、図4に示した従来の手法では、上述のように、任意のブロックについて、その各サブブロックの直流成分値を、互いに同等に一括して求めている。しかしながら、この手法では、局所的な構造を的確に反映しているとはいえず(例えば、上記VULは、比較的遠い下側ブロックB及び右側ブロックRを参照)、階層的な各段での予測精度は低く、圧縮率も上げられず、対応して画質も比較的低くなってしまうという課題があった。
【0012】
本発明は上述のような事情から為されたものであり、本発明の目的は、予測精度が向上し、圧縮率及び画質を向上させることができる交流成分予測方法及びその方法を採用した画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の交流成分予測方法は、複数のブロックで構成された画像情報から得られた各ブロックの直流成分で構成された直流成分画像データから、各ブロックについての交流成分を予測する交流成分予測方法であって、注目ブロックの直流成分と、その左右のブロック及び上下のブロックの一方の直流成分とに基づき、注目ブロックの左右方向及び上下方向の一方の交流成分を予測する処理を、全ブロックについて繰り返す第1ステップと、上記ステップにより予測された注目ブロックの交流成分と、その左右のブロック及び上下のブロックの他方の予測された交流成分とに基づき、注目ブロックの左右方向及び上下方向の他方の交流成分を予測する処理を、全ブロックについて繰り返す第2ステップと、を備えたことを要旨とする。
【0014】
具体的には、第1ステップにおいて、注目ブロックの直流成分をSとし、左右のブロックの直流成分をそれぞれL及びRとすると、注目ブロックの左右方向の交流成分を示す値V,Vは、以下の式で求められ、
=S+(L−R)/8
=S+(−L+R)/8
第2ステップにおいて、注目ブロックの上のブロックについて得られた交流成分を示す値をU,Uとし、注目ブロックの下のブロックについて得られた交流成分を示す値をB,Bとすると、ブロックVについての上下方向の交流成分を示す値VUL,VBLと、ブロックVについての上下方向の交流成分を示す値VUR,VBRは、以下の式で求められることを要旨とする。
UL=V+(U−B)/8
UR=V+(U−B)/8
BL=V+(−U+B)/8
BR=V+(−U+B)/8
【0015】
あるいは、第1ステップにおいて、注目ブロックの直流成分をSとし、上下のブロックの直流成分をそれぞれU及びBとすると、注目ブロックの上下方向の交流成分を示す値V,Vは、以下の式で求められ、
=S+(U−B)/8
=S+(−U+B)/8
第2ステップにおいて、注目ブロックの左のブロックについて得られた交流成分を示す値をL,Lとし、注目ブロックの右のブロックについて得られた交流成分を示す値をR,Rとすると、ブロックVについての左右方向の交流成分を示す値VLU,VRUと、ブロックVについての左右方向の交流成分を示す値VLB,VRBは、以下の式で求められることを要旨とする。
LU=V+(L−R)/8
LB=V+(L−R)/8
RU=V+(−L+R)/8
RB=V+(−L+R)/8
【0016】
好適には、各ブロックについて予測された交流成分を示す値を、各ブロック内のサブブロックとしての直流成分とみなして、前記第1ステップ及び第2ステップを繰り返す。
【0017】
また、好適には、前記画像情報は、遊技機で表示される画像に係る情報である。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明の画像処理装置は、複数のブロックで構成された画像情報を直流成分と交流成分に分けて符号化する画像処理装置であって、各ブロックの直流成分を算出する直流成分算出部と、注目ブロックの直流成分と、その左右のブロック及び上下のブロックの一方の直流成分とに基づき、注目ブロックの左右方向及び上下方向の一方の交流成分を予測する処理を、全ブロックについて繰り返し、予測された注目ブロックの交流成分と、その左右のブロック及び上下のブロックの他方の予測された交流成分とに基づき、注目ブロックの左右方向及び上下方向の他方の交流成分を予測する処理を、全ブロックについて繰り返す交流成分予測部と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の交流成分予測方法及びその方法を採用した画像処理装置によれば、交流成分予測処理を2段階に分けることにより、2ステップ目の処理では、より元画像に近い情報をもとに予測でき、予測精度が向上し、更に階層的に行えば、各段の予測精度は累積的に向上するので、圧縮率及び画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の画像情報の交流成分予測方法おける一実施形態を説明するための図である。
【図2】本発明の画像情報の交流成分予測方法おける一実施形態を説明するための図である。
【図3】本発明の交流成分予測方法の一実施形態を採用した画像処理装置の概略構成ブロック図である。
【図4】従来における交流成分の予測の方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の画像情報(好適には遊技機で表示される画像情報)の交流成分予測方法おける一実施形態を説明するための図である。
【0022】
本発明においては、基本的には、従来のように任意の直流成分データについての交流成分をその上下左右の直流成分画像データから一括して求めるのではなく、上下(縦)方向の直流成分画像データの利用と左右(横)方向のそれらの利用を分離して処理する。
【0023】
そこで、図1(a)に示したブロックSについての交流成分を予測は、同図(b)に示すように、まず、当該ブロックSの直流成分値と、その左右のブロック(左側ブロックL、右側ブロックR)の直流成分値により、ブロックSの内部の2つのサブブロック(V,V)についての疑似的な直流成分を求めることにより行われる。このときの具体的な計算式は、以下の式(5)及び(6)である。
【0024】
=S+(L−R)/8 …(5)
=S+(−L+R)/8 …(6)
この各サブブロックV,Vの直流成分値の変化量がブロックSの暫定的な交流成分、すなわち左右(ラスタースキャン)方向の交流成分、を表していることになる。
【0025】
そして、上述のブロックSについての処理が、すべてのブロックについて図1(c)に示すように順次行われることにより、すべてのブロックについて、暫定的な交流成分、すなわち左右(ラスタースキャン)方向の交流成分が予測される。
【0026】
次に、上下方向の直流成分画像データの利用した処理を行う。
上述の処理で図2(a)に示したように左右(ラスタースキャン)方向についてすべてのブロックの交流成分が求められている状態で、ブロックSについての上下方向についての交流成分を求めることを考える。この場合、同図(b)に示すように、当該ブロックSについて上述のように求められた交流成分を示す値V,Vと、その上下のブロックについて得られた交流成分を示す値(上側ブロックU,U、下側ブロックB,B)により、ブロックVについての上下方向の交流成分を示す値VUL,VBLと、ブロックVについての上下方向の交流成分を示す値VUR,VBRを求める。このときの具体的な計算式は、以下の式(7)〜(10)である。
【0027】
UL=V+(U−B)/8 …(7)
UR=V+(U−B)/8 …(8)
BL=V+(−U+B)/8 …(9)
BR=V+(−U+B)/8 …(10)
この各値VUL,VUR,VBL,VBRの変化量がブロックSについて予測された交流成分を表していることになる。
【0028】
そして、上述のブロックSについての処理が、すべてのブロックについて図2(c)に示すように順次行われることにより、すべてのブロックについて交流成分が予測される。
【0029】
そして、更に、上述した左右方向と上下方向に関する一連の処理を、段階的、又は階層的にサブブロックに対して繰り返せば、その分、予測精度が向上することとなる。
【0030】
以上で説明した交流成分予測方法の一実施形態によれば、交流成分予測処理を2段階に分けることにより、2ステップ目の処理では、より元画像に近い情報をもとに予測でき、予測精度が向上し、更に階層的に行えば、各段の予測精度は累積的に向上するので、圧縮率及び画質を向上させることができる。
【0031】
なお、上述の説明においては、左右(ラスタースキャン)方向について先に処理をしたが、上下方向を先に処理してもよい。つまり、上下方向を先に処理する場合、上記の式(5)及び(6)に対応する式は、以下の式(11)及び(12)であり、上記の式(7)〜(10)に対応する式は、以下の式(13)〜(16)である。
【0032】
=S+(U−B)/8 …(11)
=S+(−U+B)/8 …(12)
【0033】
LU=V+(L−R)/8 …(13)
LB=V+(L−R)/8 …(14)
RU=V+(−L+R)/8 …(15)
RB=V+(−L+R)/8 …(16)
【0034】
但し、先に処理するのが、左右と上下の場合で結果が同じであるというわけではない。つまり、第1ステップ処理後のデータを記憶するのに、例えばSRAM(Static Random Access Memory)などを使ってハードウェア実装した場合には、メモリコントロールの関係で、使用されるメモリ容量が異なることを確認しており、その意味からは上下を先に処理した方がメモリ消費をより低く抑えることができた。
【0035】
次に、上述の交流成分予測方法を採用した画像処理装置について説明する。
図3は、本発明の交流成分予測方法の一実施形態を採用した画像処理装置の概略構成ブロック図である。
【0036】
同図に示す画像処理装置1は、直流成分算出部11と、第1量子化部12と、第1可変長符号化部13と、交流成分予測部14と、減算器15と、直交変換部16と、第2量子化部17と、第2可変長符号化部18とを備えている。
【0037】
直流成分算出部11は、入力される原画像データについて、直流成分を算出する(図1(a)に示したデータ)。第1量子化部12は、直流成分算出部11により算出された直流成分データに対して量子化を行う。第1可変長符号化部13は、第1量子化部12により得られた量子化データに対してハフマン符号化や算術符号化等の可変長符号化処理を行い、直流成分についての符号化データとして外部に出力する。
【0038】
交流成分予測部14は、直流成分算出部11により得られた直流成分データを入力し、前述のような交流成分予測方法に基づき、交流成分を予測する。減算器15は、原画像データの対応するサブブロックの平均値と、交流成分予測部14により求められた予測値との差分を求める。直交変換部16は、減算器15により得られた差分値に対して、離散コサイン変換(DCT:Discrete Cosine Transform)やアダマール変換(Hadamard Transform)等の直交変換を施す。第2量子化部17は、直交変換部16により得られた交流成分データに対して量子化を行う。第2可変長符号化部18は、第2量子化部17により得られた量子化データに対してハフマン符号化や算術符号化等の可変長符号化処理を行い、交流成分についての符号化データとして外部に出力する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の交流成分予測方法は、例えば遊技機で表示される画像情報の圧縮処理に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 画像処理装置
11 直流成分算出部
12 第1量子化部
13 第1可変長符号化部
14 交流成分予測部
15 減算器
16 直交変換部
17 第2量子化部
18 第2可変長符号化部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロックで構成された画像情報から得られた各ブロックの直流成分で構成された直流成分画像データから、各ブロックについての交流成分を予測する交流成分予測方法であって、
注目ブロックの直流成分と、その左右のブロック及び上下のブロックの一方の直流成分とに基づき、注目ブロックの左右方向及び上下方向の一方の交流成分を予測する処理を、全ブロックについて繰り返す第1ステップと、
上記ステップにより予測された注目ブロックの交流成分と、その左右のブロック及び上下のブロックの他方の予測された交流成分とに基づき、注目ブロックの左右方向及び上下方向の他方の交流成分を予測する処理を、全ブロックについて繰り返す第2ステップと、
を備えたことを特徴とする交流成分予測方法。
【請求項2】
第1ステップにおいて、注目ブロックの直流成分をSとし、左右のブロックの直流成分をそれぞれL及びRとすると、注目ブロックの左右方向の交流成分を示す値V,Vは、以下の式で求められ、
=S+(L−R)/8
=S+(−L+R)/8
第2ステップにおいて、注目ブロックの上のブロックについて得られた交流成分を示す値をU,Uとし、注目ブロックの下のブロックについて得られた交流成分を示す値をB,Bとすると、ブロックVについての上下方向の交流成分を示す値VUL,VBLと、ブロックVについての上下方向の交流成分を示す値VUR,VBRは、以下の式で求められることを特徴とする請求項1に記載の交流成分予測方法。
UL=V+(U−B)/8
UR=V+(U−B)/8
BL=V+(−U+B)/8
BR=V+(−U+B)/8
【請求項3】
第1ステップにおいて、注目ブロックの直流成分をSとし、上下のブロックの直流成分をそれぞれU及びBとすると、注目ブロックの上下方向の交流成分を示す値V,Vは、以下の式で求められ、
=S+(U−B)/8
=S+(−U+B)/8
第2ステップにおいて、注目ブロックの左のブロックについて得られた交流成分を示す値をL,Lとし、注目ブロックの右のブロックについて得られた交流成分を示す値をR,Rとすると、ブロックVについての左右方向の交流成分を示す値VLU,VRUと、ブロックVについての左右方向の交流成分を示す値VLB,VRBは、以下の式で求められることを特徴とする請求項1に記載の交流成分予測方法。
LU=V+(L−R)/8
LB=V+(L−R)/8
RU=V+(−L+R)/8
RB=V+(−L+R)/8
【請求項4】
各ブロックについて予測された交流成分を示す値を、各ブロック内のサブブロックとしての直流成分とみなして、前記第1ステップ及び第2ステップを繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の交流成分予測方法。
【請求項5】
前記画像情報は、遊技機で表示される画像に係る情報であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の交流成分予測方法。
【請求項6】
複数のブロックで構成された画像情報を直流成分と交流成分に分けて符号化する画像処理装置であって、
各ブロックの直流成分を算出する直流成分算出部と、
注目ブロックの直流成分と、その左右のブロック及び上下のブロックの一方の直流成分とに基づき、注目ブロックの左右方向及び上下方向の一方の交流成分を予測する処理を、全ブロックについて繰り返し、予測された注目ブロックの交流成分と、その左右のブロック及び上下のブロックの他方の予測された交流成分とに基づき、注目ブロックの左右方向及び上下方向の他方の交流成分を予測する処理を、全ブロックについて繰り返す交流成分予測部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−51609(P2013−51609A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189414(P2011−189414)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(398034168)株式会社アクセル (80)
【Fターム(参考)】