説明

交通情報収集装置及び交通情報収集提供システム

【課題】事故等の突発事象が生じても、交通情報のリアルタイム性を確保する。
【解決手段】交通情報収集装置20において、データ受信部21は車両Cから走行履歴情報を含むプローブ計測情報を受信する。交通情報集計処理部24は、最新の所定台数の車両のプローブ計測情報と、当該最新のプローブ計測情報より前に取得したプローブ計測情報を比較することにより車両の走行履歴に急激な変化が起こったか否かを判別する。さらに交通情報集計処理部24は、車両の走行履歴に急激な変化が生じたと判別した場合、最新のプローブ計測情報を集計処理し、交通情報を生成する。交通情報送信部25は、交通情報を交通情報提供システムや経路計算システムなど外部の機器へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両から走行位置などの種種の情報を収集し、渋滞情報や旅行時間などの他の情報に加工する交通情報収集装置に関する。特に交通流の急激な変化があった場合も、情報の精度と情報の鮮度とのバランスを保ちながら、提供する情報の更新周期を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路交通情報通信システム(VICS)では、FM多重放送や電波ビーコン、光ビーコンを通じて、渋滞や事故などの交通情報、あるいは、リンク(交差点等の間の道路)の通過に要する区間旅行時間の情報などを走行車両に提供している。車両に搭載されたVICS対応のナビゲーション機能を持つ車載機は、この交通情報を受信し、それを活用して、より早く目的地に到達できる経路を自動探索し、ドライバに提示することができる。
【0003】
また、VICSシステムでは、光ビーコンを通じて車載機から位置や通行時間、さらにそれらを加工した走行速度の情報などを収集し、区間旅行時間の算出などに利用している。走行車両から収集するデータは、プローブカーデータまたはフローティング・カーデータ(FCD)と呼ばれている。なお本願では、プローブカーデータとFCDを同一のものとして表記するまた、近年は、FCDを携帯電話や無線機器などを利用して収集するシステムも開発されている。
【0004】
一般に交通情報は、精度が高く、かつ、リアルタイム性が高い(情報遅れが少ない/鮮度が高い)ほど、望ましいとされている。また一般には、多数のプローブデータのサンプリング台数が多いほど、交通情報の精度は上がる。
【0005】
しかしながらプローブカーデータから交通情報を生成する場合、通常プローブカーの混入率は全走行車両の数%程度であるため、精度とリアルタイム性は次のようにトレードオフの関係を持つ。
【0006】
・集計する時間間隔を、長くすればする(例:30分)ほど、該当時間間隔でサンプリングできるプローブカー数は増え、精度は高まる。しかしながら、古いプローブデータもサンプリング対象となるため、リアルタイム性は劣化する(先の集計間隔30分の例では、平均15分の遅れが発生)。
・集計する時間間隔を、短くすればする(例:5分)ほど、リアルタイム性は向上するが、短い集計期間内でサンプリングできるプローブカー数は減るため、従って精度は劣化する。
【0007】
一般的には、精度を保つために、データ数として5サンプル程度が必要とされている。
【0008】
ところで、交通情報の利用可能な車載機を搭載する車両が増加すると、“交通集中(アナウンス効果による一時的で不安定な交通集中)”と云う現象が発生することが知られている。これは、交通情報で空いている経路が案内されると、多くのドライバが、この交通情報に従って車両の走行経路を変更するため、返ってその経路が混雑してしまう現象を云う。
【0009】
この交通集中は、交通情報の更新周期を短くすることによって防止できることが知られている。
【0010】
しかし、従来の交通情報提供システムでは、提供する交通情報の内容があらかじめ決められた一定の周期で更新されるが、FCDを収集し、統計処理してリンク旅行時間などの交通情報を提供する場合には、前述のように、交通情報の更新周期を余りに短く設定すると、その間に収集できるFCDのデータ数が減少し、精度の高い交通情報が提供できないと云う問題が発生する。
【0011】
一方、交通情報の更新周期を長く取ると、その間に収集できるFCDのデータ数は増加し、精度は向上するが、前述するように交通集中の発生が懸念され、また、情報の鮮度(即時性)が低下すると云う問題点がある。
【0012】
上記問題に対応するため、特許文献1記載の交通情報収集装置では、走行車両からアップリンクされたデータの受信頻度により、提供する交通情報の更新周期を変更している。そのため、交通情報の精度とリアルタイム性のバランスが取れた交通情報が、生成可能となる。
【0013】
また、アナウンス効果に伴う交通集中の問題については、車載機を搭載した車両が多数走行しているリンクでは、プローブカーデータが多く集まるので交通情報が短い周期で更新され、交通集中の発生が防止できる。一方、プローブカーデータの集まりが少ないリンクの交通情報の更新周期は長くなるが、このリンクを走行する、車載機を搭載した車両の台数が元々少ないため、交通集中は発生しない。
【0014】
【特許文献1】特開2002−208094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、渋滞が発生した直後、ないしは、渋滞が増加する過程においては、ある道路区間を走行する車両の旅行時間が時間を追うごとに順次増加していくため、該当区間の交通流量は総じて減少する(図6参照)。特に、事故や落下物発生等のごとき突発事象が発生した場合においては、道路が閉塞されるために、急激に旅行時間が増える(渋滞が延びる)一方で、交通流量は極端に少なくなる。この影響で情報が欠損したり、リアルタイム性が乏しくなったりするなどの問題が生じる恐れがある。また、このように、渋滞が増加していく過程においては、多少精度は犠牲にしたとしても、リアルタイム性を高める方が、利用者にとっては情報価値が高いものとなる。
【0016】
本発明は、こうした従来の問題点を解決するものであり、渋滞増加時や突発事象が生じた場合であっても、トレードオフの関係にある計測精度と情報の鮮度とのバランスを保ちながら、また、交通集中を発生させることなく、交通情報を提示する交通情報装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、車両から当該車両の走行履歴情報を含むプローブ計測情報を受信し、交通情報を生成する交通情報収集装置を提供し、当該交通情報収集装置は、車両からプローブ計測情報を受信する受信部と、最新の所定台数の車両のプローブ計測情報と、当該最新のプローブ計測情報より前に取得したプローブ計測情報を比較することにより車両の走行履歴に急激な変化が起こったか否かを判別し、車両の走行履歴に急激な変化が生じたと判別した場合、前記最新のプローブ計測情報を集計処理し、交通情報を生成する集計処理部と、前記交通情報を外部の機器へ送信する送信部と、を備えるものである。
【0018】
上記構成により、事故や落下物発生等のごとき突発事象が発生し、車両の挙動が急激に変化した場合であっても、急激な変化を反映した最新のデータを外部機器に送られる交通情報の更新の対象とするため、交通情報のリアルタイム性が確保される。
【0019】
また、本発明の交通情報収集装置は、同一の道路区間を走行する車両から前記受信部が受信したプローブ計測情報のうち、所定数を順次更新して記憶する第1の記憶部をさらに備え、前記集計処理部は、当該第1の記憶部に記憶されたプローブ計測情報を集計処理の対象とするものである。
【0020】
上記構成により、所定数の最新のプローブ計測情報のみを記憶するため、構成を簡易なものとすることができる。
【0021】
また、本発明の交通情報収集装置は、前記第1の記憶部がリングバッファより構成されるものである。
【0022】
上記構成により、容易に第1の記憶部を構成することができる。
【0023】
また、本発明の交通情報収集装置は、前記集計処理部が、前記第1の記憶部に記憶されたプローブ計測情報のうち、受信時刻が所定時間以上経過したものを削除するものである。
【0024】
上記構成により、古いプローブ計測情報を削除することが可能となり、交通情報のリアルタイム性が確保される。
【0025】
また、本発明の交通情報収集装置は、前記最新のプローブ計測情報に基づき生成された交通情報を記憶する第2の記憶部をさらに備え、前記送信部は、当該第2の記憶部に記憶された交通情報を前記外部の機器へ送信するものである。
【0026】
上記構成により、集計処理対象のプローブ計測情報に基づく交通情報を記憶することが可能となり、更新対象となる交通情報を容易に送信部を介して外部の機器へ送ることが可能となる。
【0027】
また、本発明の交通情報収集装置は、前記集計処理部が、生成した道路区間各々の交通情報に対して、リアルタイム性を付加するものである。
【0028】
上記構成により、外部機器をさらに介して交通情報を受け取るカーナビゲーションなどのユーザは、交通情報をリアルタイム性を容易に把握することが可能となる。
【0029】
また、本発明の交通情報収集装置は、前記集計処理部が、前記所定台数を、車両の走行履歴の変化状況に応じて変更するものである。
【0030】
上記構成により、状況に応じて最適な所定台数を設定することが可能となる。
【0031】
本発明は、前記交通情報収集装置と、交通情報提供システムや経路計算システムなどの外部の機器より構成される交通情報収集提供システムをも含むものである。
【発明の効果】
【0032】
以上述べたように、本発明によれば、突発事象が発生した場合でも、当該事象を反映した交通情報が送られるため、交通情報のリアルタイム性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の実施形態の交通情報収集提供システムは、図1に示すように、車両からプローブ計測情報を含むFCD(Floating Car Data)を収集して、旅行時間情報を含む交通情報を出力する交通情報収集装置20と、交通情報提供システムや経路計算システムのごとき外部の機器より構成される。交通情報収集装置20から出力された交通情報(判定区間旅行時間など)は、交通情報提供システムのごとき外部の機器を通じて車両に提供され、あるいは、経路計算システムのごとき外部の機器で経路情報に加工されて車両に提供される。
【0034】
特に本実施形態における交通情報収集装置20は、最近収集した所定数のデータだけを格納するリングバッファを用いてプローブ計測情報(FCD計測旅行時間など)を蓄積する。
【0035】
交通情報収集装置20は、図3に示すように、データ受信部21と、交通情報判定区間判定部22と、車両毎プローブ計測情報リングバッファ(第1の記憶部)23と、交通情報集計処理部(集計処理部)24と、交通情報ファイル(第2の記憶部)26と、交通情報送信部25とを備えている。
【0036】
データ受信部21は走行する車両C(プローブ車両)からプローブ計測情報を含むFCDを受信する受信部として機能する。交通情報判定区間判定部22は、データ受信部21が受信したFCDがどのリンクのデータであるか、すなわちどの道路区間のデータであるかを判定する。車両毎プローブ計測情報リングバッファ(リングバッファ)23は、各道路区間の最近受信した所定数のプローブ計測情報を、受信時刻と対応させて蓄積する。プローブ計測情報には、旅行時間、走行速度、停止回数などのような車両の走行履歴情報(挙動情報)が含まれる。
【0037】
車両毎プローブ計測情報リングバッファ23は、同一の道路判定区間を走行するプローブ車両から受信したプローブ計測情報のうち、所定数を順次更新して記憶する第1の記憶部として機能する。すなわち、本実施形態における車両毎プローブ計測情報リングバッファ23においては、所定数の最新のプローブ計測情報が記憶され、プローブ計測情報は古いものから順に、更新のたびに削除されていく構成となっている。
【0038】
交通情報集計処理部24は、車両毎プローブ計測情報リングバッファ23に蓄積されたプローブ計測情報を統計処理(集計処理)して、交通情報を算出するとともに、当該交通情報に付加されるリアルタイム性情報、精度評価用情報を算出する。
【0039】
後述するように、交通情報集計処理部24は、最新の所定台数のプローブ車両のプローブ計測情報と、当該最新のプローブ計測情報より前に取得したプローブ計測情報を比較することにより車両の挙動に急激な変化が起こったか否かを判別する。さらに交通情報集計処理部24は、プローブ車両の挙動に急激な変化が生じたと判別した場合、最新のプローブ計測情報を集計処理し、交通情報を生成する。
【0040】
交通情報ファイル26は、判定区間毎の交通情報について、交通情報集計処理部24で算出された交通情報、リアルタイム性情報、精度評価用情報を格納する第2の記憶部として機能する。交通情報送信部25は、交通情報ファイル26から、交通情報(リアルタイム性情報、精度評価用情報を含む)を定期的に読み出し、交通情報提供システムまたは経路計算システムなどの外部の機器へ送信する。
【0041】
交通情報集計処理部24で算出されるリアルタイム性情報は、集計時間や平均遅れ時間など、現在の交通状況に時間的にどれだけ近いかの指標を示す交通情報の鮮度に関する情報である。同じく交通情報集計処理部24で算出される精度評価用情報は、車両Cの台数など、交通状況をどれだけの精度をもって示しているかの指標を示す交通情報の精度に関する情報である。交通情報集計処理部24は、リアルタイム性情報、精度評価用情報を交通情報に付加し、交通情報ファイル26に記憶する。
【0042】
ただし、リアルタイム性情報、精度評価用情報等は必ずしも交通情報ファイル26に記憶させる必要はない。後に説明する交通情報送信部25による外部への送信前に、交通情報集計処理部24は、交通情報のメタデータとしてリアルタイム性情報、精度評価用情報等を付加して、交通情報送信部25が外部へ送信するような構成にしても良い。また、リアルタイム性情報、精度評価用情報等を、交通情報のメタデータとして、図示せぬ交通情報収集装置20の表示ディスプレイに表示しても良い。
【0043】
図2のフロー図は、交通情報収集装置20における受信データであるプローブ計測情報の車両毎プローブ計測情報リングバッファ23への記憶動作を示している。
【0044】
まず、データ受信部21が、車両CからFCD情報を受信する(ステップS10)。FCD情報には、時刻、位置、プローブ計測情報、その他の車載センサ情報などが含まれている。プローブ計測情報は、判定区間旅行時間情報(リンク旅行時間情報)、旅行時間、走行速度、停止回数などのような車両の走行履歴情報に対応する。なお、FCD情報にリンク旅行時間情報が含まれていない場合には、交通情報収集装置20がプローブ計測情報の走行速度情報から算出する。
【0045】
続いて、交通情報判定区間判定部22が、受信したFCD情報の位置情報から、このFCD情報がどのリンク、すなわちどの道路区間のデータであるかを判定する。すなわち、交通情報判定区間判定部22は、FCD情報の該当する交通情報判定区間を検索する(ステップS11)。
【0046】
次いで、交通情報判定区間判定部22の判定結果である交通情報判定区間を受けて、交通情報集計処理部24が、車両毎プローブ計測情報リングバッファ23の該当する交通情報判定区間のリングバッファに未記入のエリアが存在するかどうかを識別する(ステップS12)。未記入のエリアが存在するときは(ステップS12;YES)、交通情報集計処理部24は未記入のエリアに、受信時刻に対応させてプローブ計測情報を追加記入する(ステップS14)。
【0047】
また、ステップS12において、未記入のエリアが存在しないときは(ステップS12;NO)、交通情報集計処理部24は、車両毎プローブ計測情報リングバッファ23の該当するリンクのリングバッファに記録された最も古いプローブ計測情報を削除し(ステップS13)、そこに、新たに受信した受信時刻とプローブ計測情報を追加記入する。
【0048】
こうして、車両毎プローブ計測情報リングバッファ23の各交通情報判定区間のリングバッファには、最近受信した所定数のプローブ計測情報が蓄積されることになる。
【0049】
図3のフロー図は、交通情報収集装置20における車両毎プローブ計測情報リングバッファ23に記憶されたデータの処理動作を示している。
【0050】
交通情報集計処理部24は、まず、交通情報判定区間番号L=1(リンク番号L=1)を対象として(ステップS20)、車両毎プローブ計測情報リングバッファ23の該当する交通情報判定区間のリングバッファに蓄積されているプローブ計測情報の受信時刻を現在時刻と比較し、受信時刻から規定時間Tが経過しているプローブ計測情報を削除する(ステップS21)。規定時間Tは、情報鮮度を保つ目的で設定される時間であり、古い受信情報を強制的に削除するあらかじめ規定した時間である。通常、規定時間Tは、30分から45分程度に設定される。すなわち、交通情報集計処理部24は、車両毎プローブ計測情報リングバッファ23に記憶されたプローブ計測情報のうち、受信時刻が所定時間以上経過したものを削除する。
【0051】
さらに交通情報集計処理部24は、直近P台のプローブ車両Cの挙動と、それ以前のプローブ車両Cの挙動の傾向を分析する(ステップS22)。この分析結果から、交通情報集計処理部24は、プローブ車両Cの挙動に急激な変化が生じているか否かを判別する(ステップS23)。ステップS23においてプローブ車両Cの挙動に急激な変化が生じていると判別した場合(ステップS23;YES)、後述するように交通情報集計処理部24は、ステップS25の処理を行う。
【0052】
すなわち、交通情報集計処理部24は、最新の所定台数Pの車両のプローブ計測情報と、当該P台分の最新のプローブ計測情報より前に取得したプローブ計測情報を比較する(車両毎プローブ計測情報リングバッファ23に記憶されている)ことにより車両の挙動に急激な変化が起こったか否かを判別する。一般的にPは2台に設定されることが多い。また、ここでいうプローブ車両Cの「挙動の急激な変化」の判定指標としては、次のようなものがある。
【0053】
・あらかじめ指定した区間または単位区間当りの旅行時間、平均走行速度。
・停止回数・停止時間の発生状況(プローブデータで停止状況が判別できる場合)。
・急減速の発生状況(カーナビゲーションの速度パルス、ジャイロ、ブレーキ等で判別)。
・避走の発生状況(カーナビゲーションのジャイロ、ハンドル切れ角等で判別)。
【0054】
ステップS23においてプローブ車両Cの挙動に急激な変化が生じていないと判別した場合(ステップS23;NO)、交通情報集計処理部24は、残るサンプル数(プローブ計測情報数)が規定数量N以上かどうかを判別する(ステップS24)。規定数量Nは、情報鮮度と情報精度とのトレードオフから決定した、リンク旅行時間を求めるための受信データ数量である。アップリンク頻度にもよるが、規定数量Nは、通常7〜12(台)程度に設定される。
【0055】
ステップS24においてサンプル数がN以上であると判別した場合(ステップS24;YES)、交通情報集計処理部24は、最近受信したN個のプローブ計測情報を取得し、集計処理を行い、交通情報を生成し、交通情報ファイル26に格納する(ステップS26)。
【0056】
また、ステップS24においてサンプル数がN以上でないと判別した場合(ステップS24;NO)、交通情報集計処理部24は、プローブ計測情報の数が最低規定数量M以上かどうかを判別する(ステップS27)。最低規定数量Mは、平均判定区間旅行時間を求めるために最低限必要な受信データ数量であり、通常5(台)程度に設定される。
【0057】
ステップS27において、プローブ計測情報の数が最低規定数量M以上と判別した場合(ステップS27;YES)、交通情報集計処理部24は、最新のM個のプローブ計測情報を取得し、集計処理を行い、交通情報を生成し、交通情報ファイル26に出力し、格納する(ステップS28)。
【0058】
また、ステップS27において、プローブ計測情報の数が最低規定数量M以上と判別しなかった場合(ステップS27;NO)、交通情報集計処理部24は、代替方式(他のセンサや統計情報からの推定等)により値を決定し、交通情報を生成し、交通情報ファイル26に出力し、格納する(ステップS29)。
【0059】
また、先述したようにステップS23においてプローブ車両Cの挙動に急激な変化が生じていると判別した場合(ステップS23;YES)、交通情報集計処理部24は、最新のP台のプローブ車両Cのプローブ計測情報を取得し、集計処理を行い、交通情報を生成し、交通情報ファイル26に出力し、格納する(ステップS25)。
【0060】
なお前記P台は、直近の旅行時間の増加状況、渋滞長の増加状況、プローブカー流量の低下状況や、ないしは外部から入手した事故等の車両の走行履歴の変化状況に関する情報により、動的に変化させても良い。
【0061】
図5は、取得するプローブ計測情報のプローブ車両の台数Pを、車両の走行履歴の変化状況に応じて変更する手順を示すフロー図である。まず、交通情報集計処理部24は、直近の交通状況(旅行時間、渋滞長)の変化率を算出し(ステップS50)、直近のプローブ車両の流量(台/分)の変化率を算出する(ステップS51)。さらに交通情報集計処理部24は、外部情報(事故の発生状況等)の有無を判定し(ステップS52)、交通状況変化率、プローブカー流量変化率、外部情報の有無から規定台数Pを決定する(ステップS53)。このような構成により、状況に応じて最適な所定台数を設定することが可能となる。
【0062】
ステップS26、S28、S29、S25の後、交通情報集計処理部24は、対象とする交通情報判定区間の番号を1つ増やす(ステップS30)。ステップS30のカウントにより全判定区間について処理が終了したと判別した場合(ステップS31;YES)、交通情報集計処理部24は本処理を終える。ステップS30のカウントによっても全判定区間について未だ処理が終了していないと判別した場合(ステップS31;NO)、交通情報集計処理部24は、全部の判定区間について処理が終了するまで、ステップS21以降の処理を繰り返す。
【0063】
尚、交通情報送信部25は、図4に示すように、一定周期で、または相手側装置(交通情報提供システム、経路計算システム)の要求発生時に、交通情報ファイル26から、交通情報を読み出して送信する(ステップS40)。
【0064】
このように、交通情報収集装置20では、リングバッファに蓄積されたプローブ計測情報を用いて判定区間旅行時間が更新される。そのため、プローブ計測情報が多く集まるリンクのリングバッファでは、プローブ計測情報が短期間で更新され、プローブ計測情報の集まりが少ないリンクのリングバッファでは、プローブ計測情報の更新が遅くなる。従って、交通情報集計処理部24が、各判定区間のリングバッファに蓄積されたプローブ計測情報から同一周期で各判定区間の判定区間旅行時間を集計処理した場合でも、交通情報ファイル26に格納される判定区間旅行時間は、プローブ計測情報が多く集まる判定区間では、短期間でデータが更新され、プローブ計測情報の集まりが少ないリンクでは、データ更新が遅くなる。また、交通情報送信部25が、交通情報ファイル26に格納された各判定区間のリンク旅行時間を同一周期で送信する場合でも、データ内容の更新に関しては同様であり、プローブ計測情報が多く集まる判定区間の判定区間旅行時間は、データが頻繁に更新されて送信され、プローブ計測情報の集まりが少ない判定区間の判定区間旅行時間は、データ内容が更新されないまま同一周期で送信される。
【0065】
そのため、車載機を搭載した車両が多数走行している判定区間の交通情報の内容は短い周期で更新されるため、交通集中の発生が防止できる。
【0066】
また、車載機を搭載した車両の走行台数が少ない判定区間の交通情報の更新周期は長くなるが、台数が少ないため、交通集中は発生しない。また、この判定区間においても、受信時点から規定時間Tが経過したデータは削除され、また、最低規定数量M以上のデータの使用が保証されるため、情報の精度及び情報鮮度が保たれる。
【0067】
さらに本発明においては、交通情報集計処理部24が、車両の挙動に急激な変化が起こったか否かを、最新プローブ計測情報と、以前のプローブ計測情報に基づき判別し、車両の挙動に急激な変化が生じたと判別した場合、最新のプローブ計測情報を集計処理して交通情報を生成することにしている。従って、事故や落下物発生等のごとき突発事象が発生し、車両の挙動が急激に変化した場合であっても、急激な変化を反映した最新のデータを外部機器に送られる交通情報の更新の対象とするため、交通情報のリアルタイム性が確保される。
【0068】
また、本実施形態の交通情報収集装置20は、外部の機器に送信される判定区間各々の交通情報に対して、平均遅れ時間や集計時間などのリアルタイム性を示す情報を付加する。交通情報提供システムを介して交通情報を受け取る端末(カーナビゲーション等)に、このようなリアルタイム性を示す情報を表示、提供する構成を付加することにより、運転者にとって、運転の利便性を向上させることができる。
【0069】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上の説明から明らかなように、本発明の交通情報収集装置、交通情報収集提供システムによれば、何らかの突発事象が生じても、リアルタイム性を損なうことなく交通情報の提供が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態における交通情報収集提供システム、特に交通情報提供装置の構成を示すブロック図
【図2】FCD受信時の交通情報収集装置の動作を示すフロー図
【図3】交通情報収集装置の情報集計処理手順を示すフロー図
【図4】交通情報収集装置の情報送信処理手順を示すフロー図
【図5】車両の走行履歴の変化状況に応じて、取得するプローブ計測情報のプローブ車両の台数Pを変化させる手順を示すフロー図
【図6】渋滞により、交通流量が減少する状態を示す概念図
【符号の説明】
【0072】
20 交通情報収集装置
21 データ受信部
22 交通情報判定区間判定部
23 車両毎プローブ計測情報リングバッファ
24 交通情報集計処理部
25 交通情報送信部
26 交通情報ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両から当該車両の走行履歴情報を含むプローブ計測情報を受信し、交通情報を生成する交通情報収集装置であって、
車両からプローブ計測情報を受信する受信部と、
最新の所定台数の車両のプローブ計測情報と、当該最新のプローブ計測情報より前に取得したプローブ計測情報を比較することにより車両の走行履歴に急激な変化が起こったか否かを判別し、車両の走行履歴に急激な変化が生じたと判別した場合、前記最新のプローブ計測情報を集計処理し、交通情報を生成する集計処理部と、
前記交通情報を外部の機器へ送信する送信部と、
を備える交通情報収集装置。
【請求項2】
請求項1に記載の交通情報収集装置であって、
同一の道路区間を走行する車両から前記受信部が受信したプローブ計測情報のうち、所定数を順次更新して記憶する第1の記憶部をさらに備え、前記集計処理部は、当該第1の記憶部に記憶されたプローブ計測情報を集計処理の対象とする交通情報収集装置。
【請求項3】
請求項2に記載の交通情報収集装置であって、
前記第1の記憶部がリングバッファより構成される交通情報収集装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の交通情報収集装置であって、
前記集計処理部は、前記第1の記憶部に記憶されたプローブ計測情報のうち、受信時刻が所定時間以上経過したものを削除する交通情報収集装置。
【請求項5】
請求項1に記載の交通情報収集装置であって、
前記最新のプローブ計測情報に基づき生成された交通情報を記憶する第2の記憶部をさらに備え、前記送信部は、当該第2の記憶部に記憶された交通情報を前記外部の機器へ送信する交通情報収集装置。
【請求項6】
請求項5に記載の交通情報収集装置であって、
前記集計処理部は、生成した道路区間各々の交通情報に対して、リアルタイム性を示すリアルタイム性情報を付加する交通情報収集装置。
【請求項7】
請求項1に記載の交通情報収集装置であって、
前記集計処理部は、前記所定台数を、車両の走行履歴の変化状況に応じて変更する交通情報収集装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の交通情報収集装置と、前記外部の機器より構成される交通情報収集提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−37537(P2009−37537A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203169(P2007−203169)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】