交通情報通信システム、移動端末装置、情報処理装置、アップリンク情報の生成方法及び処理方法、地図データ構造、アップリンク情報のデータ構造
【課題】 オフセット値の基準座標をアップリンク情報に含めなくても、路側で車両位置を特定できるようにする。
【解決手段】 本発明の交通情報通信システムは、光ビーコン6と、これにアップリンク情報ULを送信する車載装置2と、そのアップリンク情報ULを用いて情報処理を行う中央装置4とを備える。車載装置2と中央装置4は、光ビーコン6に対するアップリンク情報ULの送信位置と対応する基準座標Rをそれぞれ生成する。車載装置2は、自装置で生成された基準座標Rから始まるオフセット値によって1又は複数の車両位置を表現し、その値をアップリンク情報ULに含める。中央装置4は、自装置で生成された基準座標Rと、アップリンク情報ULに含まれるオフセット値とに基づいて車両位置を特定する。
【解決手段】 本発明の交通情報通信システムは、光ビーコン6と、これにアップリンク情報ULを送信する車載装置2と、そのアップリンク情報ULを用いて情報処理を行う中央装置4とを備える。車載装置2と中央装置4は、光ビーコン6に対するアップリンク情報ULの送信位置と対応する基準座標Rをそれぞれ生成する。車載装置2は、自装置で生成された基準座標Rから始まるオフセット値によって1又は複数の車両位置を表現し、その値をアップリンク情報ULに含める。中央装置4は、自装置で生成された基準座標Rと、アップリンク情報ULに含まれるオフセット値とに基づいて車両位置を特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報通信システムと、このシステムの構成要素となる移動端末装置及び情報処理装置と、アップリンク情報の生成方法及び処理方法と、交通情報通信システムに使用する地図データ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
警察庁が進める高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems )として、光ビーコンをキーデバイスとした新交通管理システム(UTMS:Universal Traffic Management Systems)がある。
かかるシステムでは、信号制御に未来の予測情報を用いて青時間を最適化することにより、更にリアルタイム性を高めたプロファイル制御が採用されている。このプロファイル制御の特徴は次の通りである。
【0003】
(1) 現在から1サイクル未来の交通需要の予測
(2) 車両の時間遅れの直接評価に基づいたリアルタイム制御の実現
(3) 分散型の制御意思決定:中央制御と連携するハイブリッド型または隣接交差点が強調して動作する自律型の制御モードが選択可能
【0004】
上記プロファイル制御では、車両が交差点の停止線に到着する予測交通量の時系列データである到着プロファイルを所定時間ごとに推定しており、この到着プロファイルと他の信号制御情報に基づいてシミュレーション演算を実行する。
このシミュレーション演算は、具体的には、交差点全体の待ち行列台数の変動状況である遅れ時間(信号停止待ち時間)を求め、この遅れ時間に基づく評価値が最小となる青終了タイミングを探索し、最適な青終了タイミングを決定する(非特許文献1参照)。
【0005】
また、交通管制センターの中央装置では、上記UTMSのサブシステムとして、交通情報提供システム(AMIS)、公共車両優先システム(PTPS)、車両運行管理システム(MOCS)、動的経路誘導システム(DRGS)、及び、交通公害低減システム(EPMS)などを実行する場合もある。
このサブシステムのうち、車両運行管理システム(MOCS)や動的経路誘導システム(DRGS)を行う場合には、交通指標として旅行時間と走行経路が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「次世代信号制御方式の開発と実証実験」 SEIテクニカルレビュー 2004年3月 第166号 51〜55頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記旅行時間と走行経路は、通常、路側センサである車両感知器や光ビーコンからの感知情報(定点観測情報)を利用して推定されるが、これらの路側センサの空間密度が粗い場合には、旅行時間と走行経路の精度をさほど向上することができない。
そこで、例えば、道路を走行するプローブ車両から、車両の位置や時刻等よりなる走行軌跡情報(プローブ情報)を光ビーコンにアップリンクし、このアップリンク情報に含まれるプローブ情報を用いて旅行時間や走行経路の推定精度の向上を図ることがある。
【0008】
しかし、光ビーコンのアップリンク情報のデータ量には規約上の制限(例えば、1フレームで59バイト程度)があるので、前回の光ビーコンの通過地点以降に発生したイベントとその関連情報のすべてを、1つのアップリンク情報に含められないことがある。
そこで、例えば、車両位置をある基準座標に対するオフセット値で表現し、その基準座標の値(緯度経度)とオフセット値とをアップリンク情報に含ませることにより、1地点当たりに必要なデータ量を削減することが考えられる。
【0009】
しかしながら、この方法では、車両側が認識する基準座標を路側に通知するために、その基準座標の値(緯度経度)をアップリンク情報に含める必要があるので、データ量の削減に自ずから限界がある。
例えば、日本全国を包含する範囲の緯度・経度とその範囲の東西及び南北方向の距離差は図14の表のようになるが、その東西方向と南北方向の距離差を、それぞれ16進数で表現(349D54[HEX]及び2A9C8E[HEX])した場合、各方向にそれぞれ22ビットのデータ量が必要になる。このため、位置精度を1m(アップリンク情報にデータとして含められた位置と車両が存在する真の位置との誤差が1m以内という意味)として日本全国の基準点を表現しようとすると、緯度経度よりなる基準点情報のデータ量は最大で44ビットとなるが、このデータ量は、アップリンク情報のデータ量の制限が59バイトであるとすると、その制限の約10%に相当する。
【0010】
このように、基準座標とオフセット値の双方をアップリンク情報に含める手段では、基準座標のデータ量を確保する必要があるので、その分だけアップリンク情報に含めるデータ量を制約せざるを得ず、1つのアップリンク情報で表現可能な走行経路の範囲を最大限に拡張することはできない。
本発明は、このような実情に鑑み、オフセット値の基準座標をアップリンク情報に含めなくても路側で車両位置を特定できるようにして、アップリンク情報のデータ利用効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明の交通情報通信システムは、路側に設置された狭域の無線通信装置と、この装置にアップリンク情報を送信する車両に搭載された移動端末装置と、前記無線通信装置から取得したアップリンク情報を用いて情報処理を行う路側の情報処理装置と、を備えた交通情報通信システムであって、前記移動端末装置及び前記情報処理装置は、前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段をそれぞれ有し、前記移動端末装置は、自装置で生成された前記基準座標からのオフセット値によって1又は複数の車両位置を表現して、その値を前記アップリンク情報に含める情報生成手段を有し、前記情報処理装置は、自装置で生成された前記基準座標と、前記アップリンク情報に含まれるオフセット値とに基づいて、前記車両位置を特定する位置特定手段を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の交通情報通信システム(以下、単に「システム」と略記することがある。)によれば、車側の移動端末装置と路側の情報処理装置の双方が、アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段を備えている。
その前提の上で、車側である移動端末装置の情報生成手段が、自装置で生成された基準座標からのオフセット値によって1又は複数の車両位置を表現して、その値をアップリンク情報に含め、路側である情報処理装置の位置特定手段が、自装置で生成された基準座標とアップリンク情報に含まれるオフセット値とに基づいて車両位置を特定するので、基準座標をアップリンク情報に含めなくても、車両位置を路側で特定することができる。
【0013】
(2) 本発明のシステムにおいて、アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標の生成方法としては、無線通信装置そのものの設置位置や路車間通信位置の座標を路側と車側の双方で予め記憶させておき、この位置に対応する座標を基準座標として採用する方法でもよいが、これでは、その設置位置や路車間通信位置の座標の記憶を車側に強制することになり好ましくない。
そこで、前記移動端末装置及び前記情報処理装置は、基準測地系に基づく所定長さの区画よりなる複数の基本メッシュをそと、この基本メッシュごとに予め位置が定められた基準測地系に基づく定点座標とを記憶する、記憶手段をそれぞれ有することが好ましい。
【0014】
(3) この場合、前記移動端末装置の座標生成手段は、アップリンク送信時の自車両位置を含む前記基本メッシュの定点座標を前記基準座標として採用することで、当該基準座標を生成することができる。
そこで、前記情報生成手段は、基準座標として採用された基本メッシュの定点座標(例えば、基本メッシュの四隅のいずれかの座標や中心座標等)からのオフセット値を、前記アップリンク情報に含めるようにすればよい。
【0015】
(4) また、この場合、路側の情報処理装置の座標生成手段は、前記アップリンク情報を取得した前記無線通信装置の位置(例えば、その設置位置や路車間通信位置)を含む前記基本メッシュの定点座標を前記基準座標として採用すればよい。
その理由は、上記無線通信装置の位置は、アップリンク送信時の自車両位置と概ね同じ位置と見なせるので、当該無線通信装置の位置を含む基本メッシュは、車側の移動端末装置が選択する基本メッシュと同じになり、車側と路側で同じ定点座標よりなる共通の基準座標が生成されるからである。
【0016】
(5) もっとも、隣接する基本メッシュの境界付近に無線通信装置が存在する場合には、その無線通信装置の位置がいずれの基本メッシュに属するかの判定が困難になる場合があり得る。
上記判定が困難になる理由としては主に2点ある。すなわち、1つ目の理由は、無線通信装置と移動端末装置との路車間通信領域に一定の幅があり、当該通信領域が複数の基本メッシュに跨ることがあり得るからである。
【0017】
2つ目の理由は、前記移動端末装置に備えられる位置計測手段(GPS処理部等)の計測誤差である。すなわち、無線通信装置と路車間通信を行った際に計測された自車両位置と、実際に自車両が存在する位置(≒無線通信装置の位置)との間に一定以上の誤差が生じた場合、計測された自車両位置が含まれる基本メッシュと、実際に自車両が存在する位置の含まれる基本メッシュとが異なるものになる可能性があるからである。
そこで、本発明のシステムにおいて、前記各記憶手段は、前記基本メッシュを複数部分に分割してなる複数の部分エリアと、この部分エリアを識別するための識別情報とを更に記憶していることが好ましい。
【0018】
(6)(7) この場合、前記情報生成手段が、アップリンク送信時の自車両位置に対応する前記部分エリアの識別情報を、前記アップリンク情報に含めるようにすれば、前記情報処理装置の座標生成手段において、前記アップリンク情報に含まれる前記部分エリアの識別情報に基づいて、どの前記基本メッシュの前記定点座標を前記基準座標として採用するかを判定できるようになる。
【0019】
なお、上記において、部分エリアの分割方法としては、例えば基本メッシュが通常の長方形であれば、当該長方形を東西方向と南北方向に二分する2本の直線で4つに分割する方法等が考えられる。
この場合、この部分エリアを識別するための識別情報とは、各部分エリアに割り当てた番号(例えば1乃至4)を指し、この識別情報によって基本メッシュ内のおおよそどの辺りに位置していたのか(例えば基本メッシュ内の北東あたり)を推定することができるようになる。
【0020】
(8) 本発明のシステムにおいて、空間長さに関するデータ長を可変に共通設定するための空間用フィールドを、前記アップリンク情報のフレームフォーマットに定義することが好ましい。
その理由は、データ項目ごとに個別にフィールドを定義する場合に比べて、アップリンク情報のデータ量を削減できるからである。この場合、前記情報生成手段は、例えば、前記車両位置を表すためのオフセット値と、前記アップリンク情報に含める前記車両の走行距離とに対応して、前記空間用フィールドの値を設定すればよい。
【0021】
(9) 同様の理由で、時間に関するデータ長を可変に共通設定するための時間用フィールドを、前記アップリンク情報のフレームフォーマットに定義することが好ましい。
この場合、前記情報生成手段は、例えば、オフセット値分だけ離れた隣接地点間の走行時間であるオフセット時間と、前記車両が停止した場合の停止時間とに対応して、前記時間用フィールドの値を設定すればよい。
【0022】
(10) また、同様の理由で、走行中の前記車両に生じた停止イベントの回数のデータ長を可変に共通設定するための回数用フィールドを、前記アップリンク情報のフレームフォーマットに定義してもよい。
この場合、前記情報生成手段は、例えば、非渋滞走行状態からの停止である単独停止の回数と、渋滞走行状態からの停止である反復停止の回数とに対応して、前記回数用フィールドの値を設定すればよい。
【0023】
(11) 本発明の移動端末装置は、路側に設置された狭域の無線通信装置にアップリンク情報を送信する、車両に搭載された移動端末装置であって、前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段と、生成された前記基準座標からのオフセット値によって1又は複数の車両位置を表現して、その値を前記アップリンク情報に含める情報生成手段と、を備えたものである。
この移動端末装置は、本発明のシステムの構成要素の1つとなる装置であって、本発明のシステムと同様の作用効果を奏する。
【0024】
(12) また、本発明の情報処理装置は、路側に設置された狭域の無線端末装置から取得したアップリンク情報を用いて情報処理を行う、路側の情報処理装置であって、前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段と、生成された前記基準座標と、移動通信装置が前記無線通信装置に送信した前記アップリンク情報に含まれるオフセット値とに基づいて、前記移動端末装置を搭載した車両の1又は複数の車両位置を特定する位置特定手段と、を備えたものである。
この情報処理装置は、本発明のシステムの構成要素の1つとなる装置であって、本発明のシステムと同様の作用効果を奏する。
【0025】
(13) 本発明のアップリンク情報の生成方法は、上記移動端末装置が行う生成方法であって、当該移動端末装置と同様の作用効果を奏する。
(14) 本発明のアップリンク情報の処理方法は、上記情報処理装置が行う処理方法であって、当該情報処理装置と同様の作用効果を奏する。
【0026】
(15) 本発明の地図データ構造は、本発明のシステムに使用するものであり、基準測地系に基づく所定長さの区画よりなる複数の基本メッシュと、この基本メッシュごとに予め位置が定められた基準測地系に基づく定点座標と、前記基本メッシュを複数部分に分割してなる複数の部分エリアと、この部分エリアを識別するための識別情報とを備えており、前記識別情報が、移動端末装置が狭域の無線通信装置に送信するアップリンク情報の格納情報として利用されることを特徴とする。
【0027】
本発明の地図データ構造によれば、上記識別情報がアップリンク情報の格納情報として利用されるので、そのアップリンク情報を取得したコンピュータ(例えば、路側の情報処理装置)において、アップリンク情報に含まれる部分エリアの識別情報に基づいて、どの基本メッシュの定点座標を基準座標として採用するかを判定することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上の通り、本発明によれば、オフセット値の基準座標をアップリンク情報に含めなくても路側で車両位置を特定できるので、より多くのデータ量をアップリンク情報に含めることができ、当該アップリンク情報のデータ利用効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る交通情報通信システムを示す道路平面図である。
【図2】中央装置が行う交通制御のアプリケーション、交通指標及びプローブ情報の関係を示す表である。
【図3】中央装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
【図4】車載装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
【図5】停止イベントの判定方法を示すグラフである。
【図6】方向変動イベントの例を示す道路平面図である。
【図7】地図データ構造を示す地形図である。
【図8】車載装置による位置データの生成処理の説明図である。
【図9】アップリンク情報のフレームフォーマットを示す表である。
【図10】フォーマット中のデータスケール1〜3の内容を示す表である。
【図11】フォーマット中のイベント種別とイベント値の内容を示す表である。
【図12】前回アップリンク地点から今回アップリンク地点までの経路図である。
【図13】車側と路側のデータ格納順序を示す対応表である。
【図14】日本全国を包含する範囲の緯度・経度と東西及び南北方向の距離差を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔システムの全体構成〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明が適用可能な交通情報通信システムの一例を示す道路平面図である。
図1に示すように、本実施形態の交通情報通信システムは、交通信号機1、車載装置2、車両感知器等よりなる路側センサ3、中央装置4、車載装置2を搭載したプローブ車両5(以下、単に車両5という場合がある。)、及び光ビーコン6等を含む。
【0031】
このうち、交通信号機1は、主道路RM1,RM2及び従道路RS1,RS2のそれぞれに設置された4つの信号灯器1bと、この信号灯器1bと灯器線を介して接続された交通信号制御機1aとを備えている。
交通信号制御機1aは、電話回線等の通信回線を介して交通管制センター内の中央装置4に接続されており、中央装置4は、自身の管轄エリア内にある各交差点Cの交通信号制御機1aとローカルエリアネットワーク(LAN)を構成している。
【0032】
従って、中央装置4は、交通信号制御機1aとそれぞれ双方向通信が可能であり、交通信号制御機1aは他の交差点の同制御機1aとも双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
【0033】
交通信号制御機1aは、MODERATO(Management by Origin-DEstination Related Adaptation for Traffic Optimization)制御等の結果の出力である信号制御指令S1を、中央装置4から受信し、この信号制御指令S1に基づいて、各信号灯器1bに含まれる信号灯の点灯、消灯及び点滅を制御する。
また、交通信号制御機1aは、狭域の無線通信装置の一種である光ビーコン6とも通信回線で繋がっており、中央装置4から受信した渋滞情報や旅行時間等を含む交通情報S2を光ビーコン6に送信する。
【0034】
光ビーコン6は、車載装置2を搭載したプローブ車両5と光信号での双方向通信が可能であり、上記交通情報S2をダウンリンク情報DLに含めて送信する。また、車載装置2が光ビーコン6に送信するアップリンク情報ULには、プローブ車両5の走行位置や時刻等を含むプローブ情報S3が含まれている。
この情報ULは交通信号制御機1aを介して、あるいは光ビーコン6から直接中央装置4に転送される。
【0035】
なお、中央装置4は、複数の光ビーコン6それぞれとの間に設けられた通信コネクションの識別番号等や受信時刻等に基づいてアップリンク情報ULを中央装置4に送信してきた光ビーコン6を特定したり、その光ビーコン6がアップリンク情報ULを受信したおおよその受信時刻を特定したりすることができる。
【0036】
路側センサ3は、例えば、直下を通行する車両5を超音波方式で感知する車両感知器や、インダクタンス変化で車両5を感知するループコイル、或いは、カメラの映像を画像処理して交通量や車両速度を計測する画像感知器よりなり、交差点Cに流入する車両台数や車両速度を計測する目的で、管轄エリア内の一部の道路に設置されている。
路側センサ3が検出した路側計測情報S4は、交通信号制御機1aで中継されて、あるいは路側センサ3から直接通信回線を介して中央装置4に送信される。
【0037】
〔中央装置(情報処理装置)〕
図3は、中央装置4の内部構成を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、路側の情報処理装置として機能する中央装置4は、制御部401、表示部402、通信部403、記憶部404及び操作部405を含んでいる。
中央装置4の制御部401は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなり、交通信号制御機1aからの各種の交通情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。なお、中央装置4の制御部401は、内部バスを介して上記ハードウェア各部と繋がっており、これら各部の動作も制御する。
【0038】
中央装置4の制御部401は、自身の管轄エリアに属する交通信号制御機1aに対して、同一道路上の交通信号機1群を調整する系統制御や、この系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を実行可能である。
すなわち、中央装置4の制御部401は、交通状況に応じて信号制御パラメータ(スプリット、サイクル長及びオフセット等)を設定するものであり、制御部401が行う制御には、例えば、前記MODERATO制御やプロファイル制御等を含む複数種類のものが含まれる。
【0039】
中央装置4の通信部403は、通信回線を介してLAN側と接続された通信インタフェースであり、所定時間ごとの信号灯器1bの灯色切り替えタイミング等に関する信号制御指令S1と、道路リンクの旅行時間や渋滞情報等を含む交通情報S2を、各交通信号機1を介して光ビーコン6に、あるいは光ビーコン6に直接送信している。
信号制御指令S1は、信号制御パラメータの演算周期(例えば、1.0〜2.5分)ごとに送信され、交通情報S2は例えば5分ごとに送信される。
【0040】
また、中央装置4の通信部403は、プローブ車両5が計測した走行位置及び時刻(軌跡)や車両ID等を含む移動計測情報であるプローブ情報S3を有するアップリンク情報ULと、路側センサ3で計測された路側計測情報S4とを交通信号制御器1aや光ビーコン6等から受信する。
【0041】
中央装置4の表示部402は、自身が管理するエリアの道路地図と、この道路地図上の交通信号機1や路側センサ3及び光ビーコン6の位置等が表示された表示画面により構成され、中央オペレータに渋滞や事故等の交通状況を報知するものである。
中央装置4の操作部405は、キーボードやマウス等の入力インタフェースよりなり、この操作部405によって中央オペレータが上記表示部402に対する表示切り替え操作等を行えるようになっている。
【0042】
中央装置4の記憶部404は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、上記交通信号制御のための制御プログラムや、この交通信号制御等に用いる交通指標の演算プログラムを記憶しており、制御部401が生成した信号制御指令S1や交通情報S2の一時的な記憶領域も有する。
また、中央装置4の記憶部404は、プローブ用データベースDB1、路側用データベースDB2及び地図データベースDB3を備えている。
【0043】
プローブ用データベースDB1は、アップリンク情報ULのプローブ情報S3に含まれる各種計測値(プローブ車両5の通過位置及び時刻やそのイベント種別等)と、この計測値から推定されるリンク始終端での通過時刻等が集積されている。
また、路側用データベースDB2には、路側計測情報S4の各種計測値(車両のリンクに対する通過台数等)が集積されている。
【0044】
地図データベースDB3の道路地図データには、交差点IDと交差点の位置とを対応付けた交差点データと、ビーコンIDと光ビーコン6の設置位置(あるいは、路車間通信位置でもよい。)とを対応づけたビーコンデータとが含まれている。
また、道路地図データには、リンクIDと、リンクの始点・終点・補間点(道路が折れ曲がる地点に対応)のそれぞれの位置と、リンクの始点に接続するリンクのリンクIDと、リンクの終点に接続するリンクのリンクIDとを対応付けた、リンクデータも含まれている。
【0045】
中央装置4の制御部401は、路側用データベースDB2に蓄積された路側計測情報S4に基づいて、各リンクの推定旅行時間を所定時間ごとに算出し、この推定値を地図データベースDB3に記録する。
なお、路側センサ3からの路側計測情報S4に基づいて中央装置4自体が各リンクの推定旅行時間を推定する代わりに、VICSセンター(「VICS」は登録商標)などの交通情報配信センターから各リンクの推定旅行時間(すなわち、「VICS旅行時間」)を取得することにしてもよい。
【0046】
また、各リンクの推定旅行時間は、通常、最新の路側計測情報S4に基づいて5分ごとに更新される言わば過去の推定値であるが、かかる過去の推定値だけでなく、これらから所定の予測アルゴリズムを用いて求められた、将来に向けての各リンクの旅行時間の予測値であってもよい。
【0047】
前記地図データベースDB3には、基本測地系と関連する所定長さの区画よりなる基本メッシュM(図7参照)を構成単位とした「メッシュデータ」が含まれている。
中央装置4の制御部401は、上記メッシュデータの各基本メッシュMに予め設定された定点座標(基準座標)Rと、光ビーコン6から取得したアップリンク情報ULに含まれるオフセット値とに基づいて、アップリンク情報ULの送信位置と対応する基準座標を生成する「座標生成処理」と、生成された基準座標に基づいてプローブ車両5の車両位置を特定する「位置特定処理」を実行する。なお、この「メッシュデータ」、「座標生成処理」及び「位置特定処理」の詳細については、後述する。
【0048】
〔中央装置による交通制御の種類等〕
図2は、中央装置4の制御部401が実行する交通制御のアプリケーションと、それに必要な入力情報である交通指標と、その交通指標の算出のために必要となるプローブ情報との関係を示す表である。
例えば、信号制御の高度化にために実施されるMODERATO制御やプロファイル制御に必要な交通指標(交通制御に対する入力情報)は、待ち行列台数と飽和交通流率であり、迂回路優先制御に必要な交通指標は、旅行時間と走行経路である。
【0049】
また、交通流分析のために実施されるボトルネック位置の検出に必要な交通指標は、走行中の車両5の停止回数である。
更に、MOCSで行われるCO2排出量の推定には、車両5の停止回数(なお、この場合には、後述する反復停止と単独停止の区別が必要。)が必要であり、MOCSで行われる動態管理に必要な交通指標は、車両5の走行経路である。
【0050】
〔車載装置(移動端末装置)〕
図4は、プローブ車両5の車載装置2の内部構成を示す機能ブロック図である。
プローブ車両5に搭載された移動端末装置である車載装置2は、光ビーコン6との間で双方向の光通信を行う路車間通信機能と、搭乗者が設定した目的地に案内するナビゲーション機能を有する。
図4に示すように、車載装置2は、GPS処理部201、方位センサ202、車速取得部203、光通信部204、記憶部205、操作部206、表示部207、音声出力部208及び制御部209等を含む。
【0051】
GPS処理部201は、GPS衛星からのGPS信号を受信し、GPS信号に含まれる時刻情報、GPS衛星の軌道、測位補正情報等に基づいて、走行中のプローブ車両5の、基準座標系での絶対位置である緯度、経度及び高度をリアルタイムに計測できる。
方位センサ202は、光ファイバジャイロなどで構成されており、プローブ車両5の方位及び角速度を計測する。車速取得部203は、車速センサ(図示せず)が車輪の角速度を検出することにより計測したプローブ車両5の速度データを取得する。
【0052】
車載装置2の光通信部204は、道路上の所定位置に設定された光ビーコン6の通信領域において、アップリンク情報ULとダウンリンク情報DLを送受信する。すなわち、車載装置2の光通信部204は、交差点Cを流出したプローブ車両5が光ビーコン6の通信領域に入ると、交通情報S2を含むダウンリンク情報DLを受信し、自身のプローブ情報S3を含むアップリンク情報ULを光ビーコン6に送信する。
車載装置2の記憶部205は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成され、ダウンリンク情報DLに含まれる交通情報S2や、アップリンク情報ULに含めるプローブ情報S3等の各種情報を記憶するための記憶領域を有する。
【0053】
また、記憶部205は、道路地図データも記憶している。この道路地図データには、交差点IDと交差点の位置とを対応付けた交差点データが含まれている。
道路地図データには、リンクIDと、リンクの始点・終点・補間点(道路が折れ曲がる地点に対応)それぞれの位置と、リンクの始点に接続するリンクのリンクIDと、リンクの終点に接続するリンクのリンクIDと、最適経路の特定に使用するリンクコストとを対応付けたリンクデータも含まれている。
【0054】
上記リンクコストは、例えば、リンクとその終点に接続するリンクの組み合わせの数だけ用意されており、リンクの始点に進入してから当該リンクの終点を退出し、次に接続するリンクの始点に進入するまでに要する時間が設定されている。
すなわち、リンクコストには、リンクの始点から終点までを走行するのに要するコスト(時間)と、リンクの終点から次のリンクの始点までを走行するのに要するコスト(時間)、つまり、交差点を通過するのに要するコストが含まれている。
【0055】
また、本実施形態の車載装置2の記憶部205は、中央装置4の記憶部404の場合と同様に、基準測地系と関連する所定長さの区画よりなる基本メッシュM(図7参照)を構成単位とした「メッシュデータ」を記憶している。
車載装置2の操作部206は、タッチパネルやボタン等から構成されており、ドライバを含む車両5の搭乗者が目的地の設定等を行えるようになっている。
【0056】
車載装置2の表示部207は、車両5のダッシュボード部分に取り付けられたモニタ装置(図示せず)よりなり、制御部209が後述する感応要求処理において作成した画像データを搭乗者に表示する。
また、音声出力部208は、制御部209が作成した音声データをスピーカー(図示せず)から出力する。
【0057】
車載装置2の制御部209は、マイクロコンピュータ等から構成され、GPS処理部201、方位センサ202、車速取得部203、光通信部204、記憶部205、操作部206、表示部207、音声出力部208での各処理を制御する。
また、車載装置2の制御部209は、GPS処理部201が計測した車両5の絶対位置(緯度経度)、方位センサ202が計測した車両5の方位及び角速度、車速取得部203が取得した車両5の速度の各データ、及び、記憶部205が記憶する道路地図データに基づいてマップマッチング処理を行うことで、道路リンク上でのプローブ車両5の位置を算出できる。
【0058】
更に、車載装置2の記憶部205には、プローブ車両5の走行中に生じる各種のイベントの発生を判定する「イベント判定処理」と、その各種のイベントの性質に応じて、当該イベントとその関連情報のうちのどれをプローブ情報S3に含めるかを決定し、当該プローブ情報S3をイベントごとに生成する「情報生成処理」を、制御部209に実行させるためのコンピュータプログラムが格納されている。また、車載装置2の記憶部205には、アップリンク情報ULの送信位置と対応する基準座標を生成する「座標生成処理」を制御部209に実行させるためのコンピュータプログラムも格納されている。
【0059】
車載装置2の制御部209は、上記プログラムを記憶部205から読み出して実行することにより、上記「イベント判定処理」、「情報生成処理」及び「座標生成処理」を実行する。以下、車載装置2の制御部209が行うこれらの処理について説明する。
なお、本実施形態では、インフラ側へのプローブ情報S3の送信手段として光ビーコン6を利用しているので、車載装置2の制御部209は、ある光ビーコン6とその次に通過する光ビーコン6との間の経路を走行中に生じた各種イベントとその関連情報を記載したプローブ情報S3を生成する。
【0060】
〔停止イベントに関する処理内容〕
本実施形態の制御部209が判定する停止イベントには、「単独停止」と「反復停止」とがある。
図5は、それら単独停止と反復停止との判定方法を示すグラフである。図5のグラフにおいて、横軸は車両5の走行距離であり、縦軸は速度である。
また、図5の第1閾値V1は、車両5の停止が反復停止か単独停止かを判別するための閾値であり、例えば30km/hに設定されている。第2閾値V2は、これ未満の速度の場合に実質的に停止と見なせる値であり、例えば5km/hに設定されている。
【0061】
ここで、「単独停止」とは、非渋滞走行状態からの停止のことであり、非渋滞交差点での信号待ち停止や、渋滞交差点での最初の停止がこれに該当する。また、「反復停止」とは、渋滞走行状態からの停止のことであり、渋滞のために車両5が停止と発進を繰り返す場合(Stop & Go )を想定したイベントである。
例えば、図5の点A及び点Bのように、車両5の速度が、第1閾値(渋滞判定用の速度閾値)V1を超えた状態から単調減少し、その速度が第2閾値(停止判定用の速度閾値)V2を下回って車両5が停止した場合には、「単独停止」と判定される。
【0062】
一方、図5の点Cのように、車両5の速度が、第1閾値V1未満の範囲内において増減してから、その速度が第2閾値V2を下回って当該車両5が停止した場合には、「反復停止」と判定される。以上の判定条件の下で、車載装置2の制御部209は、次の各処理(1)〜(6)を実行する。
(1) まず、制御部209は、起動時に、反復停止の回数、単独停止の回数、再発進時刻と停止位置、及び、高速走行フラグをすべてクリアする。
【0063】
(2) 次に、制御部209は、予め設定された所定時間(例えば、1秒)ごとに車両5の速度を監視しており、この速度が第1閾値V1以上になれば、高速走行フラグをオンに設定する。
(3) 次に、制御部209は、速度が第2閾値V2未満の状態が、一定秒数(定数設定:例えば5秒)継続した場合には、車両5が停止したと判定する。
【0064】
この場合、高速走行フラグがオンの場合は、車両5が図5の点A又は点Bの状態であると見なせるので、単独停止の回数をインクリメントし、高速フラグがオフの場合は、図5の点Cの状態であるとみなせるので、反復停止の回数をインクリメントする。
(4) また、制御部209は、車両5の停止を判定した後、速度が第2閾値V2を超えた場合には、車両5が再発進したと判定する。このとき、高速走行フラグがオンの場合は、単独停止の場合に該当するので、その再発進時刻、停止位置及び停止時間を記憶部205に記憶させる。
【0065】
ただし、制御部209は、停止位置付きの単独停止のイベントについて、プローブ情報S3に含めることができる限定数(定数設定:例えば5回)を予め設定している。
従って、制御部209は、前回のアップリンク情報ULからの単独停止の回数が上記限定数を超える場合には、例えば最も古いデータに上書きして、単独停止の再発進時刻、停止位置及び停止時間を更新する。また、制御部209は、最後に高速走行フラグをオフに設定する。
【0066】
(5) 制御部209は、次の光ビーコン6との通信が発生するまで、上記(2)〜(4)の処理を繰り返す。
(6) また、制御部209は、次の光ビーコン6との通信が発生するまでに、以下のイベント情報(a)を含むプローブ情報S3の生成処理を行い、その通過時に、当該プローブ情報S3をアップリンク情報ULに含めて光通信部204に送信させる。
【0067】
(a) 単独停止のイベント情報
・停止位置、再発進時刻及び停止時間
・前回のアップリンクイベントから当該単独停止の前に発生した反復停止の回数
・前回のアップリンクイベントから当該単独停止の前に発生した、データ更新によってアップリンクイベントではなくなった単独停止の回数
【0068】
なお、本明細書において、「アップリンクイベント」とは、少なくとも位置情報を有するイベントとしてプローブ情報S3に含めるイベントのことであり、停止位置を有する上記(a)の単独停止イベントの他、後述する方向変動又は一定距離走行のイベントがこれに含まれる。
なお、制御部209は、光ビーコン6へのアップリンク情報ULの送信後は、アップリンクイベントとしての単独停止のイベント情報を構成する、停止位置、再発進時刻及び停止時間をすべてクリアする。
【0069】
このように、制御部209は、停止イベントが単独停止の場合には、予め定めた限定数(例えば5回)以内のものについては、停止位置、再発進時刻及び停止時間をプローブ情報S3に含めるが、限定数を超えたためデータ更新された単独停止と、すべての反復停止について、その停止位置、再発進時刻及び停止時間をプローブ情報S3に含めない。
もっとも、単独停止と反復停止の停止回数については、次のアップリンクイベントに付随するイベント情報として、プローブ情報S3に含められる。
【0070】
本実施形態の車載装置2によれば、制御部209が、信号待ち等が原因の単独停止と、停止と発進を繰り返す反復停止とを別個のイベントとして判定し、待ち行列台数や飽和交通流率の算出に必要な単独停止については、所定の限定数以下のものが停止位置、再発進時刻及び停止時間をイベント情報として含み、反復停止については、その停止回数のみが別のアップリンクイベントのイベント情報に含められる。
【0071】
従って、プローブ情報S3の記憶や送信のためのデータ量を効率的に使用しつつ、待ち行列台数や飽和交通流率等の交通指標を算出可能なプローブ情報S3を生成することができる。
また、停止回数については、単独停止と反復停止の判別が可能となるように各アップリンクイベントのイベント情報に含められるので、車載装置2からのプローブ情報S3を取得した中央装置4は、そのアップリンクイベントに含まれる停止回数を用いて、MOCSによるCO2の排出量の推定を実行することができる。
【0072】
〔方向変動イベントに関する処理内容〕
図6は、方向変動イベントの例を示す道路平面図である。
図6(a)は、交差点での右折(ただし、左折でもよい。)に生じる方向変動イベントを示し、図6(b)は、比較的急カーブの単路で生じる方向変動イベントを示している。
車載装置2の制御部209は、図6に示すような、曲率半径が小さくて車両5の走行方向の変化が大きい「方向変動」をイベントとして抽出し、これに関するプローブ情報S3を生成するため、次の各処理(1)〜(5)を実行する。
【0073】
(1) まず、制御部209は、一定時間(定数設定:例えば1秒)ごとに、車両2の走行軌跡を監視しており、記憶部205に前回記憶させた前回軌跡から、車両5が一定距離(定数設定:例えば10m)以上走行すれば、その位置(緯度経度)及び方位(ない場合は前回との相対位置から求める。)を今回軌跡として記憶部205に記憶させる。
(2) 次に、制御部209は、前回軌跡と今回軌跡との方位差が一定(定数設定:例えば5度)以上あれば、方位変化が開始されたと見なす。
【0074】
(3) 更に、制御部209は、前回軌跡と今回軌跡との間の方位差が、一定(定数設定:例えば5度)未満の状態が一定回数(定数設定:例えば2回)になれば、方位変化が終了したとみなす。
(4) 次に、制御部209は、方位変化の開始時点の方位と、方位変化の終了時点の方位との差が一定(定数設定:例えば30度)以上であれば、「方向変動」のイベントが発生したとみなし、その方位変化の終了時点での時刻、位置及び方位を記憶部205に記憶させる。
【0075】
ただし、制御部209は、方向変動のイベントと後述する一定距離走行のイベントについては、前記単独停止とは別に、プローブ情報S3に含めることができる限定数(定数設定:例えば2回)を予め設定している。
従って、制御部209は、それらのイベントの前回のアップリンク情報ULからの合計回数がその限定数を超える場合には、最も古いデータに上書して、方位変化の終了時刻、終了位置及び絶対方位をクリアする。
【0076】
(5) 制御部209は、次の光ビーコン6との通信が発生するまで、上記(1)〜(4)の処理を繰り返す。
(6) また、制御部209は、次の光ビーコン6との通信が発生するまでに、以下のイベント情報(b)を含むプローブ情報S3の生成処理を行い、その通過時に、当該プローブ情報S3をアップリンク情報ULに含めて光通信部204に送信させる。
【0077】
(b) 方向変動のイベント情報
・方位変化の終了時刻、終了位置及び絶対方位
・前回のアップリンクイベントから当該方向変動の前に発生した反復停止の回数
・前回のアップリンクイベントから当該方向変動の前に発生した、データ更新によってアップリンクイベントではなくなった単独停止の回数
【0078】
なお、制御部209は、光ビーコン6へのアップリンク情報ULの送信後は、アップリンクイベントとしての方向変動のイベント情報を構成する、方位変化の終了時刻、終了位置及び絶対方位をすべてクリアする。
【0079】
〔一定距離走行イベントに関する処理内容〕
車載装置2の制御部209は、車両5が十分に長い一定距離だけ走行したか否か(一定距離走行)をイベントとして判定し、これに関するプローブ情報S3を生成するため、次の処理(1)〜(4)を実行する。
【0080】
(1) まず、制御部209は、前記停止イベント(単独停止及び反復停止)又は方向変動イベントのいずれかが発生した時に、累積走行距離をクリアする。また、制御部209は、累積走行距離が一定距離(定数設定:例えば500m)を越える前に、方向変動のイベントが発生した場合も累積走行距離をクリアする。
(2) 次に、制御部209は、一定時間(定数設定:例えば1秒)ごとに走行軌跡を監視し、前回のイベントからの走行距離を積算して行く。
【0081】
(3) また、制御部209は、累積走行距離が一定距離(定数設定:例えば500m)を越えれば、一定距離走行イベントが発生したと見なし、時刻、位置および方位を記憶部205に記憶させる。
ただし、前記した通り、方向変動と一定距離走行の合計数に限定数(定数設定:例えば2回)が設定されているので、それらのイベントの前回のアップリンク情報ULからの合計回数がその限定数を超える場合には、最も古いデータに上書きして、累積走行距離をクリアする。
【0082】
(4) 制御部209は、次の光ビーコン6との通信が発生するまで、上記(1)〜(3)の処理を繰り返す。
(5) また、制御部209は、次の光ビーコン6との通信が発生するまでに、以下のイベント情報(c)を含むプローブ情報S3の生成処理を行い、その通過時に、当該プローブ情報S3をアップリンク情報ULに含めて光通信部204に送信させる。
【0083】
(c) 一定距離走行のイベント情報
・一定距離走行の終了時刻、位置および累積走行距離
・前回のアップリンクイベントから当該一定距離走行の前に発生した反復停止の回数
・前回のアップリンクイベントから当該一定距離走行の前に発生した、データ更新によってアップリンクイベントではなくなった単独停止の回数
【0084】
なお、制御部209は、光ビーコン6へのアップリンク情報ULの送信後は、アップリンクイベントとしての一定距離走行のイベント情報を構成する、当該走行の終了時刻、位置および累積走行距離をすべてクリアする。
【0085】
〔停止イベントに関する例外処理〕
ところで、図6(a)の点Pは、右折時における交差点内の停止位置を示している。ここで、右折車線に先行車両がない場合には、走行中の車両5が点Pにおいて第2閾値V2未満まで減速し、当該点Pにおいて単独停止又は反復停止が生じる場合がある。
しかし、交差点内の点Pは、信号待ちとは無関係であり、前記待ち行列台数や飽和交通流率の算出には不要であるため、これを停止イベントとして採用すると、無駄なプローブ情報S3を含むアップリンク情報ULがインフラ側に送出されることになる。
【0086】
そこで、車載装置2の制御部209は、記憶部205に含まれる前記道路地図データを参照することにより、車両5の走行位置が道路地図データにおけるどの位置であるかに基づいて、方位変更中の車両5の停止イベントが、図6(a)の点Pに示すような、右折時における交差点内での停止である右折停止か否かを判定し、当該右折停止の場合には、これを前記単独停止や反復停止としては採用しない。
すなわち、制御部209は、上記右折停止については、これをアップリンクイベントとせず、プローブ情報S3に含めない停止イベントとして処理する。
【0087】
これに対して、図6(b)の点Qは、比較的急カーブの単路での方位変更中における車両5の停止位置を示している。ここで、単路の下流側にある交差点の信号が赤になっている場合には、走行中の車両5が点Qにおいて第2閾値V2未満まで減速し、当該点Qにおいて単独停止或いは反復停止が生じる場合がある。
従って、このような単路での方位変更中の点Qでの停止は、図6(a)の右折時とは異なり、待ち行列台数や飽和交通流率の算出に必要であると考えられるため、プローブ情報S3に含める停止イベントとすべきである。
【0088】
そこで、車載装置2の制御部209は、記憶部205に含まれる前記道路地図データを参照することにより、車両5の走行位置が道路地図データにおけるどの位置であるかに基づいて、方位変更中の車両5の停止イベントが、図6(b)の点Qに示すような、単路での方位変更中の停止である単路停止か否かを判定し、当該単路停止の場合には、これを単独停止又は反復停止として採用する。
すなわち、制御部209は、上記単路停止については、これをプローブ情報S3に含める停止イベントとして処理する。
【0089】
〔メッシュデータのデータ構造〕
図7は、前記メッシュデータの一例を示す地形図である。
図7に示すように、本実施形態のメッシュデータは、ある特定の座標系と関連づけられた所定長さの区画よりなる基本メッシュMを構成単位としており、中央装置4の記憶部404と車載装置2の記憶部205の双方にそれぞれ格納されている。すなわち、中央装置4と車載装置2は、同様に定義されたメッシュデータを含む地図データを共有している。
【0090】
上記基本メッシュMは、地上の平面位置を緯度と経度で表す基準測地系(例えば、世界測地系や日本測地系)に対応しており、1分四方のメッシュを4分割した大きさに設定されている。
各基本メッシュMには定点座標Rがそれぞれ設定されており、本実施形態では、各基本メッシュMの左下(西南)のコーナー点が定点座標Rとなっている。例えば、図7に拡大して示す4つの基本メッシュM1〜M4の場合には、対応する定点座標はそれぞれR1〜R4となる。
【0091】
また、基本メッシュMには、これを緯度方向と経度方向で4×4に分割してなる部分エリアDjが定義されている。この部分エリアDjには、左下から右上に向かって順に、j=0〜15の識別番号(識別情報)が付与されている。
なお、基本メッシュMの定義方法や大きさは、上記に限定されるものではなく、例えば標準地域メッシュに準拠して作成することにしてもよい。
【0092】
〔車載装置による基準座標及び位置データの生成処理〕
次に、図8を参照して、車載装置2の制御部209が実行する座標生成処理及び位置データの生成処理について説明する。
なお、図8において、黒三角の地点Uはプローブ車両5が情報送信したアップリンク位置であり、白抜きの丸印で示す地点1〜3は、プローブ車両5の走行中に前記アップリンクイベントが発生した位置である。
【0093】
まず、車載装置2の制御部209は、アップリンク情報ULを送信する際にGPS処理部201が計測した自車両5の絶対位置に基づいて、自車両5がどの基本メッシュMの部分エリアDjに含まれるかを判定し、判定した基本メッシュMに対応する定点座標Rを位置データの座標を求める際の基準座標として採用する。これが、車載装置2の制御部209による「座標生成処理」である。
また、制御部209は、判定した部分エリアDjの識別番号jを記憶部205に記憶させる。なお、図8の例では、アップリンク位置Uが部分エリアD1に含まれているので、識別番号j=1である。
【0094】
次に、車載装置2の制御部209は、アップリンク位置Uから1つ手前(直近)の地点1の位置データについては、基準座標として選択した基本メッシュMに対応する定点座標Rからのオフセット値を採用する。
このオフセット値は、GPS処理部201が計測した地点1の絶対位置(緯度経度)から定点座標Rの値を減算することによって算出される。
【0095】
また、制御部209は、地点1の1つ手前の地点2の位置データについては、地点1からのオフセット値を採用する。
このオフセット値は、GPS処理部201が計測した地点2の絶対位置(緯度経度)から地点1の絶対位置を減算することによって算出される。
このように、制御部209は、各地点n(n≧1)の位置データを、その1つ下流側の地点n−1からのオフセット値によって表現する。
【0096】
そして、車載装置2の制御部209は、これから光ビーコン6にアップリンクしようとする場合に、前回アップリンク後でかつ今回アップリンク前に生じたアップリンクイベントの各地点n(n=1,2……)の位置を上記オフセット値で表したプローブ情報S3を生成するとともに、このプローブ情報S3と、今回のアップリンク位置Uに対応する部分エリアDjの識別番号jとを含むアップリンク情報ULを生成して、光ビーコン6に送信する。
【0097】
〔中央装置による基準座標の生成処理と車両位置の特定処理〕
一方、中央装置4の制御部401は、交通信号制御機1aを中継して、あるいは光ビーコン6から直接上記アップリンク情報ULを受信すると、これに含まれているオフセット値と識別番号jを用いて、各地点nの位置を特定する処理を実行する。
すなわち、制御部401は、アップリンク情報ULの送信元の光ビーコン6を特定し、特定した光ビーコン6の設置位置あるいは光ビーコン6の路車間通信位置(以下、単に「ビーコン位置」ということがある。)を地図データベースDB3から読み出す。
【0098】
次に、制御部401は、アップリンク情報ULに含まれる識別番号jを用いて、ビーコン位置に対応する基本メッシュMを特定し、特定した基本メッシュMに対応する定点座標Rを、車両位置を特定する際の基準座標として採用する。これが、中央装置4の制御部401による「座標生成処理」である。
ここで、例えば図7に示すように、光ビーコン6が基本メッシュM1と基本メッシュM2の境界に近い場所にあり、2つの位置U1,U2のうちのいずれか一方が実際のアップリンク位置であったとする。
【0099】
この場合、実際のアップリンク位置がU1の場合には、部分エリアDjの識別番号jとしてj=7が格納され、実際のアップリンク位置がU2の場合には、部分エリアDjの識別番号jとしてj=8が格納されていることになる。
ここで、中央装置4の制御部401は、識別番号jの値を用いて基本メッシュM1,M2のいずれか一方を選択する。具体的には、制御部401は、識別番号j=7の場合は基本メッシュM1を選択し、識別番号j=8の場合は基本メッシュM2を選択する。
【0100】
そして、制御部401は、選択した基本メッシュMに対応する定点座標Rを地図データベースDB3から読み出し、この読み出した定点座標(基準座標)Rと、アップリンク情報ULに含まれる各地点nのオフセット値とに基づいて、各地点nの位置を特定する。
【0101】
このように、本実施形態の交通情報通信システムによれば、車載装置2の制御部209が、基準座標として採用した基本メッシュMの定点座標Rから始まるオフセット値により1又は複数の車両位置を表現して、その値をアップリンク情報ULに含め、中央装置4の制御部401が、基準座標として採用した同じ定点座標Rとアップリンク情報ULに含まれるオフセット値とに基づいて車両位置を特定するので、オフセット値の起点となる基準座標をアップリンク情報ULに含めなくても、車載装置2が想定する車両位置を路側の中央装置4で特定することができる。
【0102】
また、本実施形態では、車載装置2の制御部209が、アップリンク送信時に計測された車両5の絶対位置に対応する部分エリアDjの識別番号jをアップリンク情報ULに含めるので、中央装置4の制御部401が、アップリンク情報ULに含まれる部分エリアDjの識別情報jに基づき、アップリンク情報ULを取得した光ビーコン6がどの基本メッシュMに属するかを判定できる。
従って、図7に示すような、光ビーコン6が隣接する基本メッシュM1,M2の境界付近にある場合でも、光ビーコン6の設置位置に対応する基メッシュM1,M2を正確に判定でき、定点座標R1,R2の取り違えを未然に防止することができる。
【0103】
なお、この実施形態では、基本メッシュを4×4の16個の部分エリアに分割しているが、例えば2×2の4個や2×4の8個に分割するようにしても良い。また、等分する位置で区切らなくても良く、各部分エリアDjの大きさが異なっていても構わない。
また、境界付近に位置する光ビーコン6から得られたアップリンク情報ULの基準座標がどこであるかを特定できれば良いので、基本メッシュM1においてアップリンク情報ULを送信した場合と、基本メッシュM2においてアップリンク情報ULを送信した場合のそれぞれにおいて、アップリンク情報ULに格納される識別番号(識別情報)が異なるものとなる程度に分割されていれば良い。
【0104】
〔アップリンク情報のフレームフォーマット〕
図9は、車載装置2の制御部209が生成するアップリンク情報ULのフレームフォーマットを示す表である。また、図10は、上記フォーマット中のデータスケール1〜3の内容を示す表であり、図11は、上記フォーマット中のイベント種別とイベント値の内容を示す表である。以下、これらの表を参照しつつ、アップリンク情報ULのフレームフォーマットを説明する。
【0105】
なお、図9の表中の「データサイズ」には、各フィールドにおける最大のデータサイズが記載されている。
図9に示すように、アップリンク情報ULのフレームには、「ヘッダ1」、「ヘッダ2」、「データ部1」、「データ部2」……「データ部N」が含まれている。このうち、ヘッダ1は、アップリンク情報ULの共通情報を定義する領域であり、「基準メッシュ内位置」、「基準時刻」及び「予約」のフィールドを含む。
【0106】
ヘッダ1の「基準メッシュ内位置」は、前記部分エリアDjの識別番号jを格納するフィールドであり、4ビットのデータサイズになっている。なお、基本メッシュMを2×2の4個に分割したのであれば、識別番号の表現範囲は0〜3となるので、2ビットで構わない。
ヘッダ1の「基準時刻」は、アップリンク情報ULで使用する時間の、分の1桁目と秒を設定するフィールドであり、「予約」は予約ビットを格納するフィールドである。
【0107】
ヘッダ2は、前記アップリンクイベント(単独停止、方向変動又は一定距離走行イベント)以外の位置データが不要な地点のデータ内容を定義する領域である。
このヘッダ2には、「データスケール1」、「単独停止回数」及び「反復停止回数」のフィールドが含まれている。
【0108】
データN(N=1,2,……)は、前回アップリンクから今回アップリンクまでに発生したアップリンクイベント(単独停止、方向変動又は一定距離走行イベント)の内容を定義する領域である。
このデータNには、それぞれ、「データスケール1」、「データスケール2」、「データスケール3」、「単独停止回数」、「反復停止回数」、「イベント種別」、「イベント値」、「オフセット座標(緯度)」、「オフセット座標(経度)」及び「オフセット時間」が含まれている。
【0109】
上記データスケール1は、走行中の車両5に生じた停止イベントの回数のデータ長を可変に共通設定するための回数用フィールドである。図10(a)に示すように、データスケール1には0〜3の値を設定可能であり、この設定値に応じて、単独停止及び反復停止の場合の表現範囲が図示の通り定義されている。
このため、単独停止と反復停止のフィールドを個別に定義する場合に比べて、アップリンク情報ULのデータ量を削減することができる。
【0110】
車載装置2の制御部209は、実際に生じた単独停止や反復停止の回数に対応して、データスケール1の値を設定する。
例えば、制御部209は、単独停止が2回でかつ反復停止が10回である場合には、反復停止のデータを適切に表現するため、データスケール1の値を「2」に設定する。
【0111】
データスケール2は、空間長さに関するデータ長を可変に共通設定するための空間用フィールドである。図10(b)に示すように、データスケール2には0〜7の値を設定可能であり、この設定値に応じて、一定距離走行とオフセット座標の表現範囲が図示の通り定義されている。
このため、これらのデータ項目のフィールドを個別に定義する場合に比べて、アップリンク情報ULのデータ量を削減することができる。
【0112】
車載装置2の制御部209は、実際に生じた一定距離走行やオフセット座標の空間長さに対応して、データスケール2の値を設定する。
例えば、制御部209は、一定距離走行が2000mでかつオフセット値が500mである場合には、一定距離走行のデータを適切に表現するため、データスケール2の値を「4」に設定する。
【0113】
データスケール3は、時間に関するデータ長を可変に共通設定するための時間用フィールドである。図10(c)に示すように、データスケール3には0〜3の値を設定可能であり、この設定値に応じて、停止時間とオフセット時間の表現範囲が図示の通り定義されている。
このため、これらのデータ項目のフィールドを個別に定義する場合に比べて、アップリンク情報ULのデータ量を削減することができる。
【0114】
なお、オフセット時間とは、オフセット座標の値分だけ離れた隣接地点間(すなわち、アップリンクイベント間)の走行時間のことである。
車載装置2の制御部209は、実際に生じた停止時間やオフセット時間の長さに対応して、データスケール3の値を設定する。
例えば、制御部209は、停止時間が40秒でかつオフセット時間が200秒である場合には、停止時間のデータを適切に表現するため、データスケール3の値を「1」に設定する。
【0115】
〔イベント種別とイベント値〕
データ部Nの「イベント種別」は、当該データ部Nに格納するアップリンクイベントの種別を定義するためのフィールドであり、図11(a)に示すように、各イベントの種別に対応して0〜3のID値を設定することができる。
従って、車載装置2の制御部209は、例えば、あるデータ部Nに入れるアップリンクイベントが単独停止の場合には、イベント種別のID値を「1」に設定する。
【0116】
データ部Nの「イベント値」は、上記イベント種別に対応したデータ値を格納するためのフィールドである。
図11(b)に示すように、イベント種別が「単独停止」である場合には、その単独停止で発生した「停止時間」がイベント値に格納される。なお、この場合のデータ長は可変であり、その可変範囲は前記データスケール3に依存する。
【0117】
また、イベント種別が「方向変動」である場合には、その方向変動の「方向値」がイベント値に格納される。なお、この場合の方向値は、北方向を「0」とし、時計回りに22.5度だけ進むごとに1ずつインクリメントされる値である。
更に、イベント種別が「一定距離走行」である場合には、その「イベント間距離」(走行距離)がイベント値に格納される。なお、この場合のデータ長も可変であり、その可変範囲は前記データスケール2に依存する。
【0118】
このように、「データスケール」のフィールドを設けておき、そのフィールドに格納したデータスケール値に応じたデータ長で各データ値を格納していく方法を採用すれば、データスケールを使わずにデータ値を格納する場合に比べて、トータルでのデータサイズを小さくすることが期待できる。
もし、データスケールのフィールドを設けないデータ構造を採用するとすれば、アップリンク情報ULを受信した中央装置4がアップリンク情報ULのデータ内容を解読することができるようにするためには、各データ値の格納サイズを固定にする必要があるが、その場合の固定サイズは各データ値の最大値を想定して設定しなければなくなる。
【0119】
また、もし、大抵のアップリンク情報ULに含まれるデータ値が最大値よりも随分小さいのであれば、各データ値のために容易されたフィールドは冗長になってしまう。
そこで、本実施形態では、上記「データスケール」のフィールドを設けたデータ構造を採用することにした。ただし、この場合、データスケールのフィールド分だけアップリンク情報ULに含めるデータのサイズが大きくなってしまうため、データスケールのフィールド数をできるだけ少なくすることが望ましい。
【0120】
この点、本実施形態のように、同じ属性を持つ複数種類のデータ値の格納フィールドに共通したデータスケールを1つだけ設定するようにすれば、その分だけデータスケールを格納するフィールド数を削減することができるため、トータルのデータ量のより一層の削減が期待できる。
【0121】
〔データの格納順序について〕
図12は、前回アップリンク地点から今回アップリンク地点までの経路図の一例を示している。ここでは、プローブ車両5が、前回アップリンク地点Up→地点4→地点3→地点2→地点1→今回アップリンク地点Ucの順で経路を走行したと仮定している。
また、図12の地点1〜4は、地点Up〜Ucまでの経路で発生した、単独停止、方向変動又は一定距離走行イベントの位置である。
【0122】
図13は、図12の場合の車側と路側のデータ格納順序を示す対応表である。
図13に示す2つの表のうち、左側の表は車側(車載装置2)が作成するデータテーブルであり、右側の表は路側(中央装置4)が作成するデータテーブルである。
なお、図13のデータテーブル中のデータ部1〜4には、「イベント間距離」、「停止時間」及び「方向」のすべてが記載されているが、実際には、当該地点のイベント種別に応じて、これらのイベント値のうちのいずれか1つがデータ部1〜4に格納される。
【0123】
前記した通り、本実施形態では、車載装置2の制御部209は、定点座標(基準座標)R2を起点として順にオフセット値を当てはめ、地点1→地点2→地点3の順で上流側に遡って各地点1〜4の座標値を決定するようになっている。
そこで、車載装置2の制御部209は、データ変換を要せずにアップリンク情報ULを瞬時に生成するため、座標値が定まった順にデータ部Nを埋めていく。
【0124】
すなわち、図13の左側のデータテーブルに示すように、制御部209は、最初のデータ部1に、基準座標から地点1までのオフセット座標とオフセット時間を格納する。
また、制御部209は、データ部2に、地点1から地点2までのオフセット座標とオフセット時間を格納し、データ部3に、地点2から地点3までのオフセット座標とオフセット時間を格納し、データ部4に、地点3から地点4までのオフセット座標とオフセット時間を格納する。
【0125】
なお、最後の地点4(前回アップリンク位置Upの1つ後)のイベント値については、データ部5を新設して格納するとアップリンク情報ULのデータ領域が増えるので、データ部1に格納されている。
また、前回アップリンク地点Upについては位置情報が不要であるから、地点Upから地点4までに生じた停止回数については、ヘッダ2に格納されている。
【0126】
これに対して、中央装置4の制御部401は、車載装置2の制御部209が生成した図13の左側のデータテーブルの各データを、図13の右側のデータテーブルのように入れ替え、各地点1〜4のアップリンクイベントがその発生順で時系列に並ぶようにデータ変換を行い、この変換後のデータを自装置の記憶部404に記憶させる。
従って、この変換後のデータを使用すれば、旅行時間や走行経路等の交通情報を容易に生成することができる。
【0127】
〔その他の変形例〕
上記実施形態は例示であって本発明の権利範囲を制限するものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内のすべての変更が本発明に含まれる。
【0128】
例えば、上記実施形態では、走行中に発生したイベント種別(単独停止、方向変動及び一定距離走行)に対応した内容のアップリンク情報ULになっているが、これらのイベント種別を考慮しないフォーマットのアップリンク情報ULであってもよい。
すなわち、少なくとも走行中のプローブ車両5の車両位置を含むプローブ情報S3を光ビーコン6等にアップリンク送信し、その情報S3を路側で情報処理する交通情報通信システムであれば、本発明を適用することができる。
【0129】
また、上記実施形態では、1つ目の地点位置を基準座標からのオフセット値で表現し、2つ目以降の地点位置をその前に求めた地点位置からのオフセット値で表現しているが、前回アップリンクから今回アップリンクまでに得られたすべての地点位置の座標値を、基準座標を原点としたオフセット値で表現することにしてもよい。
【0130】
また、プローブ情報S3をインフラ側にアップリンクする手段は光ビーコン6に限定されるものではなく、例えば、ETC等のその他の無線通信手段を採用することもできる。
更に、本発明は、アップリンク情報ULの格納データを用いた情報処理を中央装置4が行うシステムに限定されるものではなく、LANに含まれる複数の交通信号制御機1aやその他の情報中継装置が、その情報処理を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 交通信号機
1a 交通信号制御機
2 車載装置(移動端末装置)
3 路側センサ
4 中央装置(情報処理装置)
5 プローブ車両
6 光ビーコン(無線通信装置)
201 GPS処理部(位置計測手段)
204 光通信部
205 記憶部(記憶手段)
209 制御部(座標生成手段、情報生成手段)
401 制御部(座標生成手段、位置特定手段)
403 通信部
404 記憶部(記憶手段)
M 基本メッシュ
R 定点座標(基準座標)
Dj 部分エリア
UL アップリンク情報
DL ダウンリンク情報
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報通信システムと、このシステムの構成要素となる移動端末装置及び情報処理装置と、アップリンク情報の生成方法及び処理方法と、交通情報通信システムに使用する地図データ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
警察庁が進める高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems )として、光ビーコンをキーデバイスとした新交通管理システム(UTMS:Universal Traffic Management Systems)がある。
かかるシステムでは、信号制御に未来の予測情報を用いて青時間を最適化することにより、更にリアルタイム性を高めたプロファイル制御が採用されている。このプロファイル制御の特徴は次の通りである。
【0003】
(1) 現在から1サイクル未来の交通需要の予測
(2) 車両の時間遅れの直接評価に基づいたリアルタイム制御の実現
(3) 分散型の制御意思決定:中央制御と連携するハイブリッド型または隣接交差点が強調して動作する自律型の制御モードが選択可能
【0004】
上記プロファイル制御では、車両が交差点の停止線に到着する予測交通量の時系列データである到着プロファイルを所定時間ごとに推定しており、この到着プロファイルと他の信号制御情報に基づいてシミュレーション演算を実行する。
このシミュレーション演算は、具体的には、交差点全体の待ち行列台数の変動状況である遅れ時間(信号停止待ち時間)を求め、この遅れ時間に基づく評価値が最小となる青終了タイミングを探索し、最適な青終了タイミングを決定する(非特許文献1参照)。
【0005】
また、交通管制センターの中央装置では、上記UTMSのサブシステムとして、交通情報提供システム(AMIS)、公共車両優先システム(PTPS)、車両運行管理システム(MOCS)、動的経路誘導システム(DRGS)、及び、交通公害低減システム(EPMS)などを実行する場合もある。
このサブシステムのうち、車両運行管理システム(MOCS)や動的経路誘導システム(DRGS)を行う場合には、交通指標として旅行時間と走行経路が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「次世代信号制御方式の開発と実証実験」 SEIテクニカルレビュー 2004年3月 第166号 51〜55頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記旅行時間と走行経路は、通常、路側センサである車両感知器や光ビーコンからの感知情報(定点観測情報)を利用して推定されるが、これらの路側センサの空間密度が粗い場合には、旅行時間と走行経路の精度をさほど向上することができない。
そこで、例えば、道路を走行するプローブ車両から、車両の位置や時刻等よりなる走行軌跡情報(プローブ情報)を光ビーコンにアップリンクし、このアップリンク情報に含まれるプローブ情報を用いて旅行時間や走行経路の推定精度の向上を図ることがある。
【0008】
しかし、光ビーコンのアップリンク情報のデータ量には規約上の制限(例えば、1フレームで59バイト程度)があるので、前回の光ビーコンの通過地点以降に発生したイベントとその関連情報のすべてを、1つのアップリンク情報に含められないことがある。
そこで、例えば、車両位置をある基準座標に対するオフセット値で表現し、その基準座標の値(緯度経度)とオフセット値とをアップリンク情報に含ませることにより、1地点当たりに必要なデータ量を削減することが考えられる。
【0009】
しかしながら、この方法では、車両側が認識する基準座標を路側に通知するために、その基準座標の値(緯度経度)をアップリンク情報に含める必要があるので、データ量の削減に自ずから限界がある。
例えば、日本全国を包含する範囲の緯度・経度とその範囲の東西及び南北方向の距離差は図14の表のようになるが、その東西方向と南北方向の距離差を、それぞれ16進数で表現(349D54[HEX]及び2A9C8E[HEX])した場合、各方向にそれぞれ22ビットのデータ量が必要になる。このため、位置精度を1m(アップリンク情報にデータとして含められた位置と車両が存在する真の位置との誤差が1m以内という意味)として日本全国の基準点を表現しようとすると、緯度経度よりなる基準点情報のデータ量は最大で44ビットとなるが、このデータ量は、アップリンク情報のデータ量の制限が59バイトであるとすると、その制限の約10%に相当する。
【0010】
このように、基準座標とオフセット値の双方をアップリンク情報に含める手段では、基準座標のデータ量を確保する必要があるので、その分だけアップリンク情報に含めるデータ量を制約せざるを得ず、1つのアップリンク情報で表現可能な走行経路の範囲を最大限に拡張することはできない。
本発明は、このような実情に鑑み、オフセット値の基準座標をアップリンク情報に含めなくても路側で車両位置を特定できるようにして、アップリンク情報のデータ利用効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明の交通情報通信システムは、路側に設置された狭域の無線通信装置と、この装置にアップリンク情報を送信する車両に搭載された移動端末装置と、前記無線通信装置から取得したアップリンク情報を用いて情報処理を行う路側の情報処理装置と、を備えた交通情報通信システムであって、前記移動端末装置及び前記情報処理装置は、前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段をそれぞれ有し、前記移動端末装置は、自装置で生成された前記基準座標からのオフセット値によって1又は複数の車両位置を表現して、その値を前記アップリンク情報に含める情報生成手段を有し、前記情報処理装置は、自装置で生成された前記基準座標と、前記アップリンク情報に含まれるオフセット値とに基づいて、前記車両位置を特定する位置特定手段を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の交通情報通信システム(以下、単に「システム」と略記することがある。)によれば、車側の移動端末装置と路側の情報処理装置の双方が、アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段を備えている。
その前提の上で、車側である移動端末装置の情報生成手段が、自装置で生成された基準座標からのオフセット値によって1又は複数の車両位置を表現して、その値をアップリンク情報に含め、路側である情報処理装置の位置特定手段が、自装置で生成された基準座標とアップリンク情報に含まれるオフセット値とに基づいて車両位置を特定するので、基準座標をアップリンク情報に含めなくても、車両位置を路側で特定することができる。
【0013】
(2) 本発明のシステムにおいて、アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標の生成方法としては、無線通信装置そのものの設置位置や路車間通信位置の座標を路側と車側の双方で予め記憶させておき、この位置に対応する座標を基準座標として採用する方法でもよいが、これでは、その設置位置や路車間通信位置の座標の記憶を車側に強制することになり好ましくない。
そこで、前記移動端末装置及び前記情報処理装置は、基準測地系に基づく所定長さの区画よりなる複数の基本メッシュをそと、この基本メッシュごとに予め位置が定められた基準測地系に基づく定点座標とを記憶する、記憶手段をそれぞれ有することが好ましい。
【0014】
(3) この場合、前記移動端末装置の座標生成手段は、アップリンク送信時の自車両位置を含む前記基本メッシュの定点座標を前記基準座標として採用することで、当該基準座標を生成することができる。
そこで、前記情報生成手段は、基準座標として採用された基本メッシュの定点座標(例えば、基本メッシュの四隅のいずれかの座標や中心座標等)からのオフセット値を、前記アップリンク情報に含めるようにすればよい。
【0015】
(4) また、この場合、路側の情報処理装置の座標生成手段は、前記アップリンク情報を取得した前記無線通信装置の位置(例えば、その設置位置や路車間通信位置)を含む前記基本メッシュの定点座標を前記基準座標として採用すればよい。
その理由は、上記無線通信装置の位置は、アップリンク送信時の自車両位置と概ね同じ位置と見なせるので、当該無線通信装置の位置を含む基本メッシュは、車側の移動端末装置が選択する基本メッシュと同じになり、車側と路側で同じ定点座標よりなる共通の基準座標が生成されるからである。
【0016】
(5) もっとも、隣接する基本メッシュの境界付近に無線通信装置が存在する場合には、その無線通信装置の位置がいずれの基本メッシュに属するかの判定が困難になる場合があり得る。
上記判定が困難になる理由としては主に2点ある。すなわち、1つ目の理由は、無線通信装置と移動端末装置との路車間通信領域に一定の幅があり、当該通信領域が複数の基本メッシュに跨ることがあり得るからである。
【0017】
2つ目の理由は、前記移動端末装置に備えられる位置計測手段(GPS処理部等)の計測誤差である。すなわち、無線通信装置と路車間通信を行った際に計測された自車両位置と、実際に自車両が存在する位置(≒無線通信装置の位置)との間に一定以上の誤差が生じた場合、計測された自車両位置が含まれる基本メッシュと、実際に自車両が存在する位置の含まれる基本メッシュとが異なるものになる可能性があるからである。
そこで、本発明のシステムにおいて、前記各記憶手段は、前記基本メッシュを複数部分に分割してなる複数の部分エリアと、この部分エリアを識別するための識別情報とを更に記憶していることが好ましい。
【0018】
(6)(7) この場合、前記情報生成手段が、アップリンク送信時の自車両位置に対応する前記部分エリアの識別情報を、前記アップリンク情報に含めるようにすれば、前記情報処理装置の座標生成手段において、前記アップリンク情報に含まれる前記部分エリアの識別情報に基づいて、どの前記基本メッシュの前記定点座標を前記基準座標として採用するかを判定できるようになる。
【0019】
なお、上記において、部分エリアの分割方法としては、例えば基本メッシュが通常の長方形であれば、当該長方形を東西方向と南北方向に二分する2本の直線で4つに分割する方法等が考えられる。
この場合、この部分エリアを識別するための識別情報とは、各部分エリアに割り当てた番号(例えば1乃至4)を指し、この識別情報によって基本メッシュ内のおおよそどの辺りに位置していたのか(例えば基本メッシュ内の北東あたり)を推定することができるようになる。
【0020】
(8) 本発明のシステムにおいて、空間長さに関するデータ長を可変に共通設定するための空間用フィールドを、前記アップリンク情報のフレームフォーマットに定義することが好ましい。
その理由は、データ項目ごとに個別にフィールドを定義する場合に比べて、アップリンク情報のデータ量を削減できるからである。この場合、前記情報生成手段は、例えば、前記車両位置を表すためのオフセット値と、前記アップリンク情報に含める前記車両の走行距離とに対応して、前記空間用フィールドの値を設定すればよい。
【0021】
(9) 同様の理由で、時間に関するデータ長を可変に共通設定するための時間用フィールドを、前記アップリンク情報のフレームフォーマットに定義することが好ましい。
この場合、前記情報生成手段は、例えば、オフセット値分だけ離れた隣接地点間の走行時間であるオフセット時間と、前記車両が停止した場合の停止時間とに対応して、前記時間用フィールドの値を設定すればよい。
【0022】
(10) また、同様の理由で、走行中の前記車両に生じた停止イベントの回数のデータ長を可変に共通設定するための回数用フィールドを、前記アップリンク情報のフレームフォーマットに定義してもよい。
この場合、前記情報生成手段は、例えば、非渋滞走行状態からの停止である単独停止の回数と、渋滞走行状態からの停止である反復停止の回数とに対応して、前記回数用フィールドの値を設定すればよい。
【0023】
(11) 本発明の移動端末装置は、路側に設置された狭域の無線通信装置にアップリンク情報を送信する、車両に搭載された移動端末装置であって、前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段と、生成された前記基準座標からのオフセット値によって1又は複数の車両位置を表現して、その値を前記アップリンク情報に含める情報生成手段と、を備えたものである。
この移動端末装置は、本発明のシステムの構成要素の1つとなる装置であって、本発明のシステムと同様の作用効果を奏する。
【0024】
(12) また、本発明の情報処理装置は、路側に設置された狭域の無線端末装置から取得したアップリンク情報を用いて情報処理を行う、路側の情報処理装置であって、前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段と、生成された前記基準座標と、移動通信装置が前記無線通信装置に送信した前記アップリンク情報に含まれるオフセット値とに基づいて、前記移動端末装置を搭載した車両の1又は複数の車両位置を特定する位置特定手段と、を備えたものである。
この情報処理装置は、本発明のシステムの構成要素の1つとなる装置であって、本発明のシステムと同様の作用効果を奏する。
【0025】
(13) 本発明のアップリンク情報の生成方法は、上記移動端末装置が行う生成方法であって、当該移動端末装置と同様の作用効果を奏する。
(14) 本発明のアップリンク情報の処理方法は、上記情報処理装置が行う処理方法であって、当該情報処理装置と同様の作用効果を奏する。
【0026】
(15) 本発明の地図データ構造は、本発明のシステムに使用するものであり、基準測地系に基づく所定長さの区画よりなる複数の基本メッシュと、この基本メッシュごとに予め位置が定められた基準測地系に基づく定点座標と、前記基本メッシュを複数部分に分割してなる複数の部分エリアと、この部分エリアを識別するための識別情報とを備えており、前記識別情報が、移動端末装置が狭域の無線通信装置に送信するアップリンク情報の格納情報として利用されることを特徴とする。
【0027】
本発明の地図データ構造によれば、上記識別情報がアップリンク情報の格納情報として利用されるので、そのアップリンク情報を取得したコンピュータ(例えば、路側の情報処理装置)において、アップリンク情報に含まれる部分エリアの識別情報に基づいて、どの基本メッシュの定点座標を基準座標として採用するかを判定することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上の通り、本発明によれば、オフセット値の基準座標をアップリンク情報に含めなくても路側で車両位置を特定できるので、より多くのデータ量をアップリンク情報に含めることができ、当該アップリンク情報のデータ利用効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る交通情報通信システムを示す道路平面図である。
【図2】中央装置が行う交通制御のアプリケーション、交通指標及びプローブ情報の関係を示す表である。
【図3】中央装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
【図4】車載装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
【図5】停止イベントの判定方法を示すグラフである。
【図6】方向変動イベントの例を示す道路平面図である。
【図7】地図データ構造を示す地形図である。
【図8】車載装置による位置データの生成処理の説明図である。
【図9】アップリンク情報のフレームフォーマットを示す表である。
【図10】フォーマット中のデータスケール1〜3の内容を示す表である。
【図11】フォーマット中のイベント種別とイベント値の内容を示す表である。
【図12】前回アップリンク地点から今回アップリンク地点までの経路図である。
【図13】車側と路側のデータ格納順序を示す対応表である。
【図14】日本全国を包含する範囲の緯度・経度と東西及び南北方向の距離差を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔システムの全体構成〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明が適用可能な交通情報通信システムの一例を示す道路平面図である。
図1に示すように、本実施形態の交通情報通信システムは、交通信号機1、車載装置2、車両感知器等よりなる路側センサ3、中央装置4、車載装置2を搭載したプローブ車両5(以下、単に車両5という場合がある。)、及び光ビーコン6等を含む。
【0031】
このうち、交通信号機1は、主道路RM1,RM2及び従道路RS1,RS2のそれぞれに設置された4つの信号灯器1bと、この信号灯器1bと灯器線を介して接続された交通信号制御機1aとを備えている。
交通信号制御機1aは、電話回線等の通信回線を介して交通管制センター内の中央装置4に接続されており、中央装置4は、自身の管轄エリア内にある各交差点Cの交通信号制御機1aとローカルエリアネットワーク(LAN)を構成している。
【0032】
従って、中央装置4は、交通信号制御機1aとそれぞれ双方向通信が可能であり、交通信号制御機1aは他の交差点の同制御機1aとも双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
【0033】
交通信号制御機1aは、MODERATO(Management by Origin-DEstination Related Adaptation for Traffic Optimization)制御等の結果の出力である信号制御指令S1を、中央装置4から受信し、この信号制御指令S1に基づいて、各信号灯器1bに含まれる信号灯の点灯、消灯及び点滅を制御する。
また、交通信号制御機1aは、狭域の無線通信装置の一種である光ビーコン6とも通信回線で繋がっており、中央装置4から受信した渋滞情報や旅行時間等を含む交通情報S2を光ビーコン6に送信する。
【0034】
光ビーコン6は、車載装置2を搭載したプローブ車両5と光信号での双方向通信が可能であり、上記交通情報S2をダウンリンク情報DLに含めて送信する。また、車載装置2が光ビーコン6に送信するアップリンク情報ULには、プローブ車両5の走行位置や時刻等を含むプローブ情報S3が含まれている。
この情報ULは交通信号制御機1aを介して、あるいは光ビーコン6から直接中央装置4に転送される。
【0035】
なお、中央装置4は、複数の光ビーコン6それぞれとの間に設けられた通信コネクションの識別番号等や受信時刻等に基づいてアップリンク情報ULを中央装置4に送信してきた光ビーコン6を特定したり、その光ビーコン6がアップリンク情報ULを受信したおおよその受信時刻を特定したりすることができる。
【0036】
路側センサ3は、例えば、直下を通行する車両5を超音波方式で感知する車両感知器や、インダクタンス変化で車両5を感知するループコイル、或いは、カメラの映像を画像処理して交通量や車両速度を計測する画像感知器よりなり、交差点Cに流入する車両台数や車両速度を計測する目的で、管轄エリア内の一部の道路に設置されている。
路側センサ3が検出した路側計測情報S4は、交通信号制御機1aで中継されて、あるいは路側センサ3から直接通信回線を介して中央装置4に送信される。
【0037】
〔中央装置(情報処理装置)〕
図3は、中央装置4の内部構成を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、路側の情報処理装置として機能する中央装置4は、制御部401、表示部402、通信部403、記憶部404及び操作部405を含んでいる。
中央装置4の制御部401は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなり、交通信号制御機1aからの各種の交通情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。なお、中央装置4の制御部401は、内部バスを介して上記ハードウェア各部と繋がっており、これら各部の動作も制御する。
【0038】
中央装置4の制御部401は、自身の管轄エリアに属する交通信号制御機1aに対して、同一道路上の交通信号機1群を調整する系統制御や、この系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を実行可能である。
すなわち、中央装置4の制御部401は、交通状況に応じて信号制御パラメータ(スプリット、サイクル長及びオフセット等)を設定するものであり、制御部401が行う制御には、例えば、前記MODERATO制御やプロファイル制御等を含む複数種類のものが含まれる。
【0039】
中央装置4の通信部403は、通信回線を介してLAN側と接続された通信インタフェースであり、所定時間ごとの信号灯器1bの灯色切り替えタイミング等に関する信号制御指令S1と、道路リンクの旅行時間や渋滞情報等を含む交通情報S2を、各交通信号機1を介して光ビーコン6に、あるいは光ビーコン6に直接送信している。
信号制御指令S1は、信号制御パラメータの演算周期(例えば、1.0〜2.5分)ごとに送信され、交通情報S2は例えば5分ごとに送信される。
【0040】
また、中央装置4の通信部403は、プローブ車両5が計測した走行位置及び時刻(軌跡)や車両ID等を含む移動計測情報であるプローブ情報S3を有するアップリンク情報ULと、路側センサ3で計測された路側計測情報S4とを交通信号制御器1aや光ビーコン6等から受信する。
【0041】
中央装置4の表示部402は、自身が管理するエリアの道路地図と、この道路地図上の交通信号機1や路側センサ3及び光ビーコン6の位置等が表示された表示画面により構成され、中央オペレータに渋滞や事故等の交通状況を報知するものである。
中央装置4の操作部405は、キーボードやマウス等の入力インタフェースよりなり、この操作部405によって中央オペレータが上記表示部402に対する表示切り替え操作等を行えるようになっている。
【0042】
中央装置4の記憶部404は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、上記交通信号制御のための制御プログラムや、この交通信号制御等に用いる交通指標の演算プログラムを記憶しており、制御部401が生成した信号制御指令S1や交通情報S2の一時的な記憶領域も有する。
また、中央装置4の記憶部404は、プローブ用データベースDB1、路側用データベースDB2及び地図データベースDB3を備えている。
【0043】
プローブ用データベースDB1は、アップリンク情報ULのプローブ情報S3に含まれる各種計測値(プローブ車両5の通過位置及び時刻やそのイベント種別等)と、この計測値から推定されるリンク始終端での通過時刻等が集積されている。
また、路側用データベースDB2には、路側計測情報S4の各種計測値(車両のリンクに対する通過台数等)が集積されている。
【0044】
地図データベースDB3の道路地図データには、交差点IDと交差点の位置とを対応付けた交差点データと、ビーコンIDと光ビーコン6の設置位置(あるいは、路車間通信位置でもよい。)とを対応づけたビーコンデータとが含まれている。
また、道路地図データには、リンクIDと、リンクの始点・終点・補間点(道路が折れ曲がる地点に対応)のそれぞれの位置と、リンクの始点に接続するリンクのリンクIDと、リンクの終点に接続するリンクのリンクIDとを対応付けた、リンクデータも含まれている。
【0045】
中央装置4の制御部401は、路側用データベースDB2に蓄積された路側計測情報S4に基づいて、各リンクの推定旅行時間を所定時間ごとに算出し、この推定値を地図データベースDB3に記録する。
なお、路側センサ3からの路側計測情報S4に基づいて中央装置4自体が各リンクの推定旅行時間を推定する代わりに、VICSセンター(「VICS」は登録商標)などの交通情報配信センターから各リンクの推定旅行時間(すなわち、「VICS旅行時間」)を取得することにしてもよい。
【0046】
また、各リンクの推定旅行時間は、通常、最新の路側計測情報S4に基づいて5分ごとに更新される言わば過去の推定値であるが、かかる過去の推定値だけでなく、これらから所定の予測アルゴリズムを用いて求められた、将来に向けての各リンクの旅行時間の予測値であってもよい。
【0047】
前記地図データベースDB3には、基本測地系と関連する所定長さの区画よりなる基本メッシュM(図7参照)を構成単位とした「メッシュデータ」が含まれている。
中央装置4の制御部401は、上記メッシュデータの各基本メッシュMに予め設定された定点座標(基準座標)Rと、光ビーコン6から取得したアップリンク情報ULに含まれるオフセット値とに基づいて、アップリンク情報ULの送信位置と対応する基準座標を生成する「座標生成処理」と、生成された基準座標に基づいてプローブ車両5の車両位置を特定する「位置特定処理」を実行する。なお、この「メッシュデータ」、「座標生成処理」及び「位置特定処理」の詳細については、後述する。
【0048】
〔中央装置による交通制御の種類等〕
図2は、中央装置4の制御部401が実行する交通制御のアプリケーションと、それに必要な入力情報である交通指標と、その交通指標の算出のために必要となるプローブ情報との関係を示す表である。
例えば、信号制御の高度化にために実施されるMODERATO制御やプロファイル制御に必要な交通指標(交通制御に対する入力情報)は、待ち行列台数と飽和交通流率であり、迂回路優先制御に必要な交通指標は、旅行時間と走行経路である。
【0049】
また、交通流分析のために実施されるボトルネック位置の検出に必要な交通指標は、走行中の車両5の停止回数である。
更に、MOCSで行われるCO2排出量の推定には、車両5の停止回数(なお、この場合には、後述する反復停止と単独停止の区別が必要。)が必要であり、MOCSで行われる動態管理に必要な交通指標は、車両5の走行経路である。
【0050】
〔車載装置(移動端末装置)〕
図4は、プローブ車両5の車載装置2の内部構成を示す機能ブロック図である。
プローブ車両5に搭載された移動端末装置である車載装置2は、光ビーコン6との間で双方向の光通信を行う路車間通信機能と、搭乗者が設定した目的地に案内するナビゲーション機能を有する。
図4に示すように、車載装置2は、GPS処理部201、方位センサ202、車速取得部203、光通信部204、記憶部205、操作部206、表示部207、音声出力部208及び制御部209等を含む。
【0051】
GPS処理部201は、GPS衛星からのGPS信号を受信し、GPS信号に含まれる時刻情報、GPS衛星の軌道、測位補正情報等に基づいて、走行中のプローブ車両5の、基準座標系での絶対位置である緯度、経度及び高度をリアルタイムに計測できる。
方位センサ202は、光ファイバジャイロなどで構成されており、プローブ車両5の方位及び角速度を計測する。車速取得部203は、車速センサ(図示せず)が車輪の角速度を検出することにより計測したプローブ車両5の速度データを取得する。
【0052】
車載装置2の光通信部204は、道路上の所定位置に設定された光ビーコン6の通信領域において、アップリンク情報ULとダウンリンク情報DLを送受信する。すなわち、車載装置2の光通信部204は、交差点Cを流出したプローブ車両5が光ビーコン6の通信領域に入ると、交通情報S2を含むダウンリンク情報DLを受信し、自身のプローブ情報S3を含むアップリンク情報ULを光ビーコン6に送信する。
車載装置2の記憶部205は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成され、ダウンリンク情報DLに含まれる交通情報S2や、アップリンク情報ULに含めるプローブ情報S3等の各種情報を記憶するための記憶領域を有する。
【0053】
また、記憶部205は、道路地図データも記憶している。この道路地図データには、交差点IDと交差点の位置とを対応付けた交差点データが含まれている。
道路地図データには、リンクIDと、リンクの始点・終点・補間点(道路が折れ曲がる地点に対応)それぞれの位置と、リンクの始点に接続するリンクのリンクIDと、リンクの終点に接続するリンクのリンクIDと、最適経路の特定に使用するリンクコストとを対応付けたリンクデータも含まれている。
【0054】
上記リンクコストは、例えば、リンクとその終点に接続するリンクの組み合わせの数だけ用意されており、リンクの始点に進入してから当該リンクの終点を退出し、次に接続するリンクの始点に進入するまでに要する時間が設定されている。
すなわち、リンクコストには、リンクの始点から終点までを走行するのに要するコスト(時間)と、リンクの終点から次のリンクの始点までを走行するのに要するコスト(時間)、つまり、交差点を通過するのに要するコストが含まれている。
【0055】
また、本実施形態の車載装置2の記憶部205は、中央装置4の記憶部404の場合と同様に、基準測地系と関連する所定長さの区画よりなる基本メッシュM(図7参照)を構成単位とした「メッシュデータ」を記憶している。
車載装置2の操作部206は、タッチパネルやボタン等から構成されており、ドライバを含む車両5の搭乗者が目的地の設定等を行えるようになっている。
【0056】
車載装置2の表示部207は、車両5のダッシュボード部分に取り付けられたモニタ装置(図示せず)よりなり、制御部209が後述する感応要求処理において作成した画像データを搭乗者に表示する。
また、音声出力部208は、制御部209が作成した音声データをスピーカー(図示せず)から出力する。
【0057】
車載装置2の制御部209は、マイクロコンピュータ等から構成され、GPS処理部201、方位センサ202、車速取得部203、光通信部204、記憶部205、操作部206、表示部207、音声出力部208での各処理を制御する。
また、車載装置2の制御部209は、GPS処理部201が計測した車両5の絶対位置(緯度経度)、方位センサ202が計測した車両5の方位及び角速度、車速取得部203が取得した車両5の速度の各データ、及び、記憶部205が記憶する道路地図データに基づいてマップマッチング処理を行うことで、道路リンク上でのプローブ車両5の位置を算出できる。
【0058】
更に、車載装置2の記憶部205には、プローブ車両5の走行中に生じる各種のイベントの発生を判定する「イベント判定処理」と、その各種のイベントの性質に応じて、当該イベントとその関連情報のうちのどれをプローブ情報S3に含めるかを決定し、当該プローブ情報S3をイベントごとに生成する「情報生成処理」を、制御部209に実行させるためのコンピュータプログラムが格納されている。また、車載装置2の記憶部205には、アップリンク情報ULの送信位置と対応する基準座標を生成する「座標生成処理」を制御部209に実行させるためのコンピュータプログラムも格納されている。
【0059】
車載装置2の制御部209は、上記プログラムを記憶部205から読み出して実行することにより、上記「イベント判定処理」、「情報生成処理」及び「座標生成処理」を実行する。以下、車載装置2の制御部209が行うこれらの処理について説明する。
なお、本実施形態では、インフラ側へのプローブ情報S3の送信手段として光ビーコン6を利用しているので、車載装置2の制御部209は、ある光ビーコン6とその次に通過する光ビーコン6との間の経路を走行中に生じた各種イベントとその関連情報を記載したプローブ情報S3を生成する。
【0060】
〔停止イベントに関する処理内容〕
本実施形態の制御部209が判定する停止イベントには、「単独停止」と「反復停止」とがある。
図5は、それら単独停止と反復停止との判定方法を示すグラフである。図5のグラフにおいて、横軸は車両5の走行距離であり、縦軸は速度である。
また、図5の第1閾値V1は、車両5の停止が反復停止か単独停止かを判別するための閾値であり、例えば30km/hに設定されている。第2閾値V2は、これ未満の速度の場合に実質的に停止と見なせる値であり、例えば5km/hに設定されている。
【0061】
ここで、「単独停止」とは、非渋滞走行状態からの停止のことであり、非渋滞交差点での信号待ち停止や、渋滞交差点での最初の停止がこれに該当する。また、「反復停止」とは、渋滞走行状態からの停止のことであり、渋滞のために車両5が停止と発進を繰り返す場合(Stop & Go )を想定したイベントである。
例えば、図5の点A及び点Bのように、車両5の速度が、第1閾値(渋滞判定用の速度閾値)V1を超えた状態から単調減少し、その速度が第2閾値(停止判定用の速度閾値)V2を下回って車両5が停止した場合には、「単独停止」と判定される。
【0062】
一方、図5の点Cのように、車両5の速度が、第1閾値V1未満の範囲内において増減してから、その速度が第2閾値V2を下回って当該車両5が停止した場合には、「反復停止」と判定される。以上の判定条件の下で、車載装置2の制御部209は、次の各処理(1)〜(6)を実行する。
(1) まず、制御部209は、起動時に、反復停止の回数、単独停止の回数、再発進時刻と停止位置、及び、高速走行フラグをすべてクリアする。
【0063】
(2) 次に、制御部209は、予め設定された所定時間(例えば、1秒)ごとに車両5の速度を監視しており、この速度が第1閾値V1以上になれば、高速走行フラグをオンに設定する。
(3) 次に、制御部209は、速度が第2閾値V2未満の状態が、一定秒数(定数設定:例えば5秒)継続した場合には、車両5が停止したと判定する。
【0064】
この場合、高速走行フラグがオンの場合は、車両5が図5の点A又は点Bの状態であると見なせるので、単独停止の回数をインクリメントし、高速フラグがオフの場合は、図5の点Cの状態であるとみなせるので、反復停止の回数をインクリメントする。
(4) また、制御部209は、車両5の停止を判定した後、速度が第2閾値V2を超えた場合には、車両5が再発進したと判定する。このとき、高速走行フラグがオンの場合は、単独停止の場合に該当するので、その再発進時刻、停止位置及び停止時間を記憶部205に記憶させる。
【0065】
ただし、制御部209は、停止位置付きの単独停止のイベントについて、プローブ情報S3に含めることができる限定数(定数設定:例えば5回)を予め設定している。
従って、制御部209は、前回のアップリンク情報ULからの単独停止の回数が上記限定数を超える場合には、例えば最も古いデータに上書きして、単独停止の再発進時刻、停止位置及び停止時間を更新する。また、制御部209は、最後に高速走行フラグをオフに設定する。
【0066】
(5) 制御部209は、次の光ビーコン6との通信が発生するまで、上記(2)〜(4)の処理を繰り返す。
(6) また、制御部209は、次の光ビーコン6との通信が発生するまでに、以下のイベント情報(a)を含むプローブ情報S3の生成処理を行い、その通過時に、当該プローブ情報S3をアップリンク情報ULに含めて光通信部204に送信させる。
【0067】
(a) 単独停止のイベント情報
・停止位置、再発進時刻及び停止時間
・前回のアップリンクイベントから当該単独停止の前に発生した反復停止の回数
・前回のアップリンクイベントから当該単独停止の前に発生した、データ更新によってアップリンクイベントではなくなった単独停止の回数
【0068】
なお、本明細書において、「アップリンクイベント」とは、少なくとも位置情報を有するイベントとしてプローブ情報S3に含めるイベントのことであり、停止位置を有する上記(a)の単独停止イベントの他、後述する方向変動又は一定距離走行のイベントがこれに含まれる。
なお、制御部209は、光ビーコン6へのアップリンク情報ULの送信後は、アップリンクイベントとしての単独停止のイベント情報を構成する、停止位置、再発進時刻及び停止時間をすべてクリアする。
【0069】
このように、制御部209は、停止イベントが単独停止の場合には、予め定めた限定数(例えば5回)以内のものについては、停止位置、再発進時刻及び停止時間をプローブ情報S3に含めるが、限定数を超えたためデータ更新された単独停止と、すべての反復停止について、その停止位置、再発進時刻及び停止時間をプローブ情報S3に含めない。
もっとも、単独停止と反復停止の停止回数については、次のアップリンクイベントに付随するイベント情報として、プローブ情報S3に含められる。
【0070】
本実施形態の車載装置2によれば、制御部209が、信号待ち等が原因の単独停止と、停止と発進を繰り返す反復停止とを別個のイベントとして判定し、待ち行列台数や飽和交通流率の算出に必要な単独停止については、所定の限定数以下のものが停止位置、再発進時刻及び停止時間をイベント情報として含み、反復停止については、その停止回数のみが別のアップリンクイベントのイベント情報に含められる。
【0071】
従って、プローブ情報S3の記憶や送信のためのデータ量を効率的に使用しつつ、待ち行列台数や飽和交通流率等の交通指標を算出可能なプローブ情報S3を生成することができる。
また、停止回数については、単独停止と反復停止の判別が可能となるように各アップリンクイベントのイベント情報に含められるので、車載装置2からのプローブ情報S3を取得した中央装置4は、そのアップリンクイベントに含まれる停止回数を用いて、MOCSによるCO2の排出量の推定を実行することができる。
【0072】
〔方向変動イベントに関する処理内容〕
図6は、方向変動イベントの例を示す道路平面図である。
図6(a)は、交差点での右折(ただし、左折でもよい。)に生じる方向変動イベントを示し、図6(b)は、比較的急カーブの単路で生じる方向変動イベントを示している。
車載装置2の制御部209は、図6に示すような、曲率半径が小さくて車両5の走行方向の変化が大きい「方向変動」をイベントとして抽出し、これに関するプローブ情報S3を生成するため、次の各処理(1)〜(5)を実行する。
【0073】
(1) まず、制御部209は、一定時間(定数設定:例えば1秒)ごとに、車両2の走行軌跡を監視しており、記憶部205に前回記憶させた前回軌跡から、車両5が一定距離(定数設定:例えば10m)以上走行すれば、その位置(緯度経度)及び方位(ない場合は前回との相対位置から求める。)を今回軌跡として記憶部205に記憶させる。
(2) 次に、制御部209は、前回軌跡と今回軌跡との方位差が一定(定数設定:例えば5度)以上あれば、方位変化が開始されたと見なす。
【0074】
(3) 更に、制御部209は、前回軌跡と今回軌跡との間の方位差が、一定(定数設定:例えば5度)未満の状態が一定回数(定数設定:例えば2回)になれば、方位変化が終了したとみなす。
(4) 次に、制御部209は、方位変化の開始時点の方位と、方位変化の終了時点の方位との差が一定(定数設定:例えば30度)以上であれば、「方向変動」のイベントが発生したとみなし、その方位変化の終了時点での時刻、位置及び方位を記憶部205に記憶させる。
【0075】
ただし、制御部209は、方向変動のイベントと後述する一定距離走行のイベントについては、前記単独停止とは別に、プローブ情報S3に含めることができる限定数(定数設定:例えば2回)を予め設定している。
従って、制御部209は、それらのイベントの前回のアップリンク情報ULからの合計回数がその限定数を超える場合には、最も古いデータに上書して、方位変化の終了時刻、終了位置及び絶対方位をクリアする。
【0076】
(5) 制御部209は、次の光ビーコン6との通信が発生するまで、上記(1)〜(4)の処理を繰り返す。
(6) また、制御部209は、次の光ビーコン6との通信が発生するまでに、以下のイベント情報(b)を含むプローブ情報S3の生成処理を行い、その通過時に、当該プローブ情報S3をアップリンク情報ULに含めて光通信部204に送信させる。
【0077】
(b) 方向変動のイベント情報
・方位変化の終了時刻、終了位置及び絶対方位
・前回のアップリンクイベントから当該方向変動の前に発生した反復停止の回数
・前回のアップリンクイベントから当該方向変動の前に発生した、データ更新によってアップリンクイベントではなくなった単独停止の回数
【0078】
なお、制御部209は、光ビーコン6へのアップリンク情報ULの送信後は、アップリンクイベントとしての方向変動のイベント情報を構成する、方位変化の終了時刻、終了位置及び絶対方位をすべてクリアする。
【0079】
〔一定距離走行イベントに関する処理内容〕
車載装置2の制御部209は、車両5が十分に長い一定距離だけ走行したか否か(一定距離走行)をイベントとして判定し、これに関するプローブ情報S3を生成するため、次の処理(1)〜(4)を実行する。
【0080】
(1) まず、制御部209は、前記停止イベント(単独停止及び反復停止)又は方向変動イベントのいずれかが発生した時に、累積走行距離をクリアする。また、制御部209は、累積走行距離が一定距離(定数設定:例えば500m)を越える前に、方向変動のイベントが発生した場合も累積走行距離をクリアする。
(2) 次に、制御部209は、一定時間(定数設定:例えば1秒)ごとに走行軌跡を監視し、前回のイベントからの走行距離を積算して行く。
【0081】
(3) また、制御部209は、累積走行距離が一定距離(定数設定:例えば500m)を越えれば、一定距離走行イベントが発生したと見なし、時刻、位置および方位を記憶部205に記憶させる。
ただし、前記した通り、方向変動と一定距離走行の合計数に限定数(定数設定:例えば2回)が設定されているので、それらのイベントの前回のアップリンク情報ULからの合計回数がその限定数を超える場合には、最も古いデータに上書きして、累積走行距離をクリアする。
【0082】
(4) 制御部209は、次の光ビーコン6との通信が発生するまで、上記(1)〜(3)の処理を繰り返す。
(5) また、制御部209は、次の光ビーコン6との通信が発生するまでに、以下のイベント情報(c)を含むプローブ情報S3の生成処理を行い、その通過時に、当該プローブ情報S3をアップリンク情報ULに含めて光通信部204に送信させる。
【0083】
(c) 一定距離走行のイベント情報
・一定距離走行の終了時刻、位置および累積走行距離
・前回のアップリンクイベントから当該一定距離走行の前に発生した反復停止の回数
・前回のアップリンクイベントから当該一定距離走行の前に発生した、データ更新によってアップリンクイベントではなくなった単独停止の回数
【0084】
なお、制御部209は、光ビーコン6へのアップリンク情報ULの送信後は、アップリンクイベントとしての一定距離走行のイベント情報を構成する、当該走行の終了時刻、位置および累積走行距離をすべてクリアする。
【0085】
〔停止イベントに関する例外処理〕
ところで、図6(a)の点Pは、右折時における交差点内の停止位置を示している。ここで、右折車線に先行車両がない場合には、走行中の車両5が点Pにおいて第2閾値V2未満まで減速し、当該点Pにおいて単独停止又は反復停止が生じる場合がある。
しかし、交差点内の点Pは、信号待ちとは無関係であり、前記待ち行列台数や飽和交通流率の算出には不要であるため、これを停止イベントとして採用すると、無駄なプローブ情報S3を含むアップリンク情報ULがインフラ側に送出されることになる。
【0086】
そこで、車載装置2の制御部209は、記憶部205に含まれる前記道路地図データを参照することにより、車両5の走行位置が道路地図データにおけるどの位置であるかに基づいて、方位変更中の車両5の停止イベントが、図6(a)の点Pに示すような、右折時における交差点内での停止である右折停止か否かを判定し、当該右折停止の場合には、これを前記単独停止や反復停止としては採用しない。
すなわち、制御部209は、上記右折停止については、これをアップリンクイベントとせず、プローブ情報S3に含めない停止イベントとして処理する。
【0087】
これに対して、図6(b)の点Qは、比較的急カーブの単路での方位変更中における車両5の停止位置を示している。ここで、単路の下流側にある交差点の信号が赤になっている場合には、走行中の車両5が点Qにおいて第2閾値V2未満まで減速し、当該点Qにおいて単独停止或いは反復停止が生じる場合がある。
従って、このような単路での方位変更中の点Qでの停止は、図6(a)の右折時とは異なり、待ち行列台数や飽和交通流率の算出に必要であると考えられるため、プローブ情報S3に含める停止イベントとすべきである。
【0088】
そこで、車載装置2の制御部209は、記憶部205に含まれる前記道路地図データを参照することにより、車両5の走行位置が道路地図データにおけるどの位置であるかに基づいて、方位変更中の車両5の停止イベントが、図6(b)の点Qに示すような、単路での方位変更中の停止である単路停止か否かを判定し、当該単路停止の場合には、これを単独停止又は反復停止として採用する。
すなわち、制御部209は、上記単路停止については、これをプローブ情報S3に含める停止イベントとして処理する。
【0089】
〔メッシュデータのデータ構造〕
図7は、前記メッシュデータの一例を示す地形図である。
図7に示すように、本実施形態のメッシュデータは、ある特定の座標系と関連づけられた所定長さの区画よりなる基本メッシュMを構成単位としており、中央装置4の記憶部404と車載装置2の記憶部205の双方にそれぞれ格納されている。すなわち、中央装置4と車載装置2は、同様に定義されたメッシュデータを含む地図データを共有している。
【0090】
上記基本メッシュMは、地上の平面位置を緯度と経度で表す基準測地系(例えば、世界測地系や日本測地系)に対応しており、1分四方のメッシュを4分割した大きさに設定されている。
各基本メッシュMには定点座標Rがそれぞれ設定されており、本実施形態では、各基本メッシュMの左下(西南)のコーナー点が定点座標Rとなっている。例えば、図7に拡大して示す4つの基本メッシュM1〜M4の場合には、対応する定点座標はそれぞれR1〜R4となる。
【0091】
また、基本メッシュMには、これを緯度方向と経度方向で4×4に分割してなる部分エリアDjが定義されている。この部分エリアDjには、左下から右上に向かって順に、j=0〜15の識別番号(識別情報)が付与されている。
なお、基本メッシュMの定義方法や大きさは、上記に限定されるものではなく、例えば標準地域メッシュに準拠して作成することにしてもよい。
【0092】
〔車載装置による基準座標及び位置データの生成処理〕
次に、図8を参照して、車載装置2の制御部209が実行する座標生成処理及び位置データの生成処理について説明する。
なお、図8において、黒三角の地点Uはプローブ車両5が情報送信したアップリンク位置であり、白抜きの丸印で示す地点1〜3は、プローブ車両5の走行中に前記アップリンクイベントが発生した位置である。
【0093】
まず、車載装置2の制御部209は、アップリンク情報ULを送信する際にGPS処理部201が計測した自車両5の絶対位置に基づいて、自車両5がどの基本メッシュMの部分エリアDjに含まれるかを判定し、判定した基本メッシュMに対応する定点座標Rを位置データの座標を求める際の基準座標として採用する。これが、車載装置2の制御部209による「座標生成処理」である。
また、制御部209は、判定した部分エリアDjの識別番号jを記憶部205に記憶させる。なお、図8の例では、アップリンク位置Uが部分エリアD1に含まれているので、識別番号j=1である。
【0094】
次に、車載装置2の制御部209は、アップリンク位置Uから1つ手前(直近)の地点1の位置データについては、基準座標として選択した基本メッシュMに対応する定点座標Rからのオフセット値を採用する。
このオフセット値は、GPS処理部201が計測した地点1の絶対位置(緯度経度)から定点座標Rの値を減算することによって算出される。
【0095】
また、制御部209は、地点1の1つ手前の地点2の位置データについては、地点1からのオフセット値を採用する。
このオフセット値は、GPS処理部201が計測した地点2の絶対位置(緯度経度)から地点1の絶対位置を減算することによって算出される。
このように、制御部209は、各地点n(n≧1)の位置データを、その1つ下流側の地点n−1からのオフセット値によって表現する。
【0096】
そして、車載装置2の制御部209は、これから光ビーコン6にアップリンクしようとする場合に、前回アップリンク後でかつ今回アップリンク前に生じたアップリンクイベントの各地点n(n=1,2……)の位置を上記オフセット値で表したプローブ情報S3を生成するとともに、このプローブ情報S3と、今回のアップリンク位置Uに対応する部分エリアDjの識別番号jとを含むアップリンク情報ULを生成して、光ビーコン6に送信する。
【0097】
〔中央装置による基準座標の生成処理と車両位置の特定処理〕
一方、中央装置4の制御部401は、交通信号制御機1aを中継して、あるいは光ビーコン6から直接上記アップリンク情報ULを受信すると、これに含まれているオフセット値と識別番号jを用いて、各地点nの位置を特定する処理を実行する。
すなわち、制御部401は、アップリンク情報ULの送信元の光ビーコン6を特定し、特定した光ビーコン6の設置位置あるいは光ビーコン6の路車間通信位置(以下、単に「ビーコン位置」ということがある。)を地図データベースDB3から読み出す。
【0098】
次に、制御部401は、アップリンク情報ULに含まれる識別番号jを用いて、ビーコン位置に対応する基本メッシュMを特定し、特定した基本メッシュMに対応する定点座標Rを、車両位置を特定する際の基準座標として採用する。これが、中央装置4の制御部401による「座標生成処理」である。
ここで、例えば図7に示すように、光ビーコン6が基本メッシュM1と基本メッシュM2の境界に近い場所にあり、2つの位置U1,U2のうちのいずれか一方が実際のアップリンク位置であったとする。
【0099】
この場合、実際のアップリンク位置がU1の場合には、部分エリアDjの識別番号jとしてj=7が格納され、実際のアップリンク位置がU2の場合には、部分エリアDjの識別番号jとしてj=8が格納されていることになる。
ここで、中央装置4の制御部401は、識別番号jの値を用いて基本メッシュM1,M2のいずれか一方を選択する。具体的には、制御部401は、識別番号j=7の場合は基本メッシュM1を選択し、識別番号j=8の場合は基本メッシュM2を選択する。
【0100】
そして、制御部401は、選択した基本メッシュMに対応する定点座標Rを地図データベースDB3から読み出し、この読み出した定点座標(基準座標)Rと、アップリンク情報ULに含まれる各地点nのオフセット値とに基づいて、各地点nの位置を特定する。
【0101】
このように、本実施形態の交通情報通信システムによれば、車載装置2の制御部209が、基準座標として採用した基本メッシュMの定点座標Rから始まるオフセット値により1又は複数の車両位置を表現して、その値をアップリンク情報ULに含め、中央装置4の制御部401が、基準座標として採用した同じ定点座標Rとアップリンク情報ULに含まれるオフセット値とに基づいて車両位置を特定するので、オフセット値の起点となる基準座標をアップリンク情報ULに含めなくても、車載装置2が想定する車両位置を路側の中央装置4で特定することができる。
【0102】
また、本実施形態では、車載装置2の制御部209が、アップリンク送信時に計測された車両5の絶対位置に対応する部分エリアDjの識別番号jをアップリンク情報ULに含めるので、中央装置4の制御部401が、アップリンク情報ULに含まれる部分エリアDjの識別情報jに基づき、アップリンク情報ULを取得した光ビーコン6がどの基本メッシュMに属するかを判定できる。
従って、図7に示すような、光ビーコン6が隣接する基本メッシュM1,M2の境界付近にある場合でも、光ビーコン6の設置位置に対応する基メッシュM1,M2を正確に判定でき、定点座標R1,R2の取り違えを未然に防止することができる。
【0103】
なお、この実施形態では、基本メッシュを4×4の16個の部分エリアに分割しているが、例えば2×2の4個や2×4の8個に分割するようにしても良い。また、等分する位置で区切らなくても良く、各部分エリアDjの大きさが異なっていても構わない。
また、境界付近に位置する光ビーコン6から得られたアップリンク情報ULの基準座標がどこであるかを特定できれば良いので、基本メッシュM1においてアップリンク情報ULを送信した場合と、基本メッシュM2においてアップリンク情報ULを送信した場合のそれぞれにおいて、アップリンク情報ULに格納される識別番号(識別情報)が異なるものとなる程度に分割されていれば良い。
【0104】
〔アップリンク情報のフレームフォーマット〕
図9は、車載装置2の制御部209が生成するアップリンク情報ULのフレームフォーマットを示す表である。また、図10は、上記フォーマット中のデータスケール1〜3の内容を示す表であり、図11は、上記フォーマット中のイベント種別とイベント値の内容を示す表である。以下、これらの表を参照しつつ、アップリンク情報ULのフレームフォーマットを説明する。
【0105】
なお、図9の表中の「データサイズ」には、各フィールドにおける最大のデータサイズが記載されている。
図9に示すように、アップリンク情報ULのフレームには、「ヘッダ1」、「ヘッダ2」、「データ部1」、「データ部2」……「データ部N」が含まれている。このうち、ヘッダ1は、アップリンク情報ULの共通情報を定義する領域であり、「基準メッシュ内位置」、「基準時刻」及び「予約」のフィールドを含む。
【0106】
ヘッダ1の「基準メッシュ内位置」は、前記部分エリアDjの識別番号jを格納するフィールドであり、4ビットのデータサイズになっている。なお、基本メッシュMを2×2の4個に分割したのであれば、識別番号の表現範囲は0〜3となるので、2ビットで構わない。
ヘッダ1の「基準時刻」は、アップリンク情報ULで使用する時間の、分の1桁目と秒を設定するフィールドであり、「予約」は予約ビットを格納するフィールドである。
【0107】
ヘッダ2は、前記アップリンクイベント(単独停止、方向変動又は一定距離走行イベント)以外の位置データが不要な地点のデータ内容を定義する領域である。
このヘッダ2には、「データスケール1」、「単独停止回数」及び「反復停止回数」のフィールドが含まれている。
【0108】
データN(N=1,2,……)は、前回アップリンクから今回アップリンクまでに発生したアップリンクイベント(単独停止、方向変動又は一定距離走行イベント)の内容を定義する領域である。
このデータNには、それぞれ、「データスケール1」、「データスケール2」、「データスケール3」、「単独停止回数」、「反復停止回数」、「イベント種別」、「イベント値」、「オフセット座標(緯度)」、「オフセット座標(経度)」及び「オフセット時間」が含まれている。
【0109】
上記データスケール1は、走行中の車両5に生じた停止イベントの回数のデータ長を可変に共通設定するための回数用フィールドである。図10(a)に示すように、データスケール1には0〜3の値を設定可能であり、この設定値に応じて、単独停止及び反復停止の場合の表現範囲が図示の通り定義されている。
このため、単独停止と反復停止のフィールドを個別に定義する場合に比べて、アップリンク情報ULのデータ量を削減することができる。
【0110】
車載装置2の制御部209は、実際に生じた単独停止や反復停止の回数に対応して、データスケール1の値を設定する。
例えば、制御部209は、単独停止が2回でかつ反復停止が10回である場合には、反復停止のデータを適切に表現するため、データスケール1の値を「2」に設定する。
【0111】
データスケール2は、空間長さに関するデータ長を可変に共通設定するための空間用フィールドである。図10(b)に示すように、データスケール2には0〜7の値を設定可能であり、この設定値に応じて、一定距離走行とオフセット座標の表現範囲が図示の通り定義されている。
このため、これらのデータ項目のフィールドを個別に定義する場合に比べて、アップリンク情報ULのデータ量を削減することができる。
【0112】
車載装置2の制御部209は、実際に生じた一定距離走行やオフセット座標の空間長さに対応して、データスケール2の値を設定する。
例えば、制御部209は、一定距離走行が2000mでかつオフセット値が500mである場合には、一定距離走行のデータを適切に表現するため、データスケール2の値を「4」に設定する。
【0113】
データスケール3は、時間に関するデータ長を可変に共通設定するための時間用フィールドである。図10(c)に示すように、データスケール3には0〜3の値を設定可能であり、この設定値に応じて、停止時間とオフセット時間の表現範囲が図示の通り定義されている。
このため、これらのデータ項目のフィールドを個別に定義する場合に比べて、アップリンク情報ULのデータ量を削減することができる。
【0114】
なお、オフセット時間とは、オフセット座標の値分だけ離れた隣接地点間(すなわち、アップリンクイベント間)の走行時間のことである。
車載装置2の制御部209は、実際に生じた停止時間やオフセット時間の長さに対応して、データスケール3の値を設定する。
例えば、制御部209は、停止時間が40秒でかつオフセット時間が200秒である場合には、停止時間のデータを適切に表現するため、データスケール3の値を「1」に設定する。
【0115】
〔イベント種別とイベント値〕
データ部Nの「イベント種別」は、当該データ部Nに格納するアップリンクイベントの種別を定義するためのフィールドであり、図11(a)に示すように、各イベントの種別に対応して0〜3のID値を設定することができる。
従って、車載装置2の制御部209は、例えば、あるデータ部Nに入れるアップリンクイベントが単独停止の場合には、イベント種別のID値を「1」に設定する。
【0116】
データ部Nの「イベント値」は、上記イベント種別に対応したデータ値を格納するためのフィールドである。
図11(b)に示すように、イベント種別が「単独停止」である場合には、その単独停止で発生した「停止時間」がイベント値に格納される。なお、この場合のデータ長は可変であり、その可変範囲は前記データスケール3に依存する。
【0117】
また、イベント種別が「方向変動」である場合には、その方向変動の「方向値」がイベント値に格納される。なお、この場合の方向値は、北方向を「0」とし、時計回りに22.5度だけ進むごとに1ずつインクリメントされる値である。
更に、イベント種別が「一定距離走行」である場合には、その「イベント間距離」(走行距離)がイベント値に格納される。なお、この場合のデータ長も可変であり、その可変範囲は前記データスケール2に依存する。
【0118】
このように、「データスケール」のフィールドを設けておき、そのフィールドに格納したデータスケール値に応じたデータ長で各データ値を格納していく方法を採用すれば、データスケールを使わずにデータ値を格納する場合に比べて、トータルでのデータサイズを小さくすることが期待できる。
もし、データスケールのフィールドを設けないデータ構造を採用するとすれば、アップリンク情報ULを受信した中央装置4がアップリンク情報ULのデータ内容を解読することができるようにするためには、各データ値の格納サイズを固定にする必要があるが、その場合の固定サイズは各データ値の最大値を想定して設定しなければなくなる。
【0119】
また、もし、大抵のアップリンク情報ULに含まれるデータ値が最大値よりも随分小さいのであれば、各データ値のために容易されたフィールドは冗長になってしまう。
そこで、本実施形態では、上記「データスケール」のフィールドを設けたデータ構造を採用することにした。ただし、この場合、データスケールのフィールド分だけアップリンク情報ULに含めるデータのサイズが大きくなってしまうため、データスケールのフィールド数をできるだけ少なくすることが望ましい。
【0120】
この点、本実施形態のように、同じ属性を持つ複数種類のデータ値の格納フィールドに共通したデータスケールを1つだけ設定するようにすれば、その分だけデータスケールを格納するフィールド数を削減することができるため、トータルのデータ量のより一層の削減が期待できる。
【0121】
〔データの格納順序について〕
図12は、前回アップリンク地点から今回アップリンク地点までの経路図の一例を示している。ここでは、プローブ車両5が、前回アップリンク地点Up→地点4→地点3→地点2→地点1→今回アップリンク地点Ucの順で経路を走行したと仮定している。
また、図12の地点1〜4は、地点Up〜Ucまでの経路で発生した、単独停止、方向変動又は一定距離走行イベントの位置である。
【0122】
図13は、図12の場合の車側と路側のデータ格納順序を示す対応表である。
図13に示す2つの表のうち、左側の表は車側(車載装置2)が作成するデータテーブルであり、右側の表は路側(中央装置4)が作成するデータテーブルである。
なお、図13のデータテーブル中のデータ部1〜4には、「イベント間距離」、「停止時間」及び「方向」のすべてが記載されているが、実際には、当該地点のイベント種別に応じて、これらのイベント値のうちのいずれか1つがデータ部1〜4に格納される。
【0123】
前記した通り、本実施形態では、車載装置2の制御部209は、定点座標(基準座標)R2を起点として順にオフセット値を当てはめ、地点1→地点2→地点3の順で上流側に遡って各地点1〜4の座標値を決定するようになっている。
そこで、車載装置2の制御部209は、データ変換を要せずにアップリンク情報ULを瞬時に生成するため、座標値が定まった順にデータ部Nを埋めていく。
【0124】
すなわち、図13の左側のデータテーブルに示すように、制御部209は、最初のデータ部1に、基準座標から地点1までのオフセット座標とオフセット時間を格納する。
また、制御部209は、データ部2に、地点1から地点2までのオフセット座標とオフセット時間を格納し、データ部3に、地点2から地点3までのオフセット座標とオフセット時間を格納し、データ部4に、地点3から地点4までのオフセット座標とオフセット時間を格納する。
【0125】
なお、最後の地点4(前回アップリンク位置Upの1つ後)のイベント値については、データ部5を新設して格納するとアップリンク情報ULのデータ領域が増えるので、データ部1に格納されている。
また、前回アップリンク地点Upについては位置情報が不要であるから、地点Upから地点4までに生じた停止回数については、ヘッダ2に格納されている。
【0126】
これに対して、中央装置4の制御部401は、車載装置2の制御部209が生成した図13の左側のデータテーブルの各データを、図13の右側のデータテーブルのように入れ替え、各地点1〜4のアップリンクイベントがその発生順で時系列に並ぶようにデータ変換を行い、この変換後のデータを自装置の記憶部404に記憶させる。
従って、この変換後のデータを使用すれば、旅行時間や走行経路等の交通情報を容易に生成することができる。
【0127】
〔その他の変形例〕
上記実施形態は例示であって本発明の権利範囲を制限するものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内のすべての変更が本発明に含まれる。
【0128】
例えば、上記実施形態では、走行中に発生したイベント種別(単独停止、方向変動及び一定距離走行)に対応した内容のアップリンク情報ULになっているが、これらのイベント種別を考慮しないフォーマットのアップリンク情報ULであってもよい。
すなわち、少なくとも走行中のプローブ車両5の車両位置を含むプローブ情報S3を光ビーコン6等にアップリンク送信し、その情報S3を路側で情報処理する交通情報通信システムであれば、本発明を適用することができる。
【0129】
また、上記実施形態では、1つ目の地点位置を基準座標からのオフセット値で表現し、2つ目以降の地点位置をその前に求めた地点位置からのオフセット値で表現しているが、前回アップリンクから今回アップリンクまでに得られたすべての地点位置の座標値を、基準座標を原点としたオフセット値で表現することにしてもよい。
【0130】
また、プローブ情報S3をインフラ側にアップリンクする手段は光ビーコン6に限定されるものではなく、例えば、ETC等のその他の無線通信手段を採用することもできる。
更に、本発明は、アップリンク情報ULの格納データを用いた情報処理を中央装置4が行うシステムに限定されるものではなく、LANに含まれる複数の交通信号制御機1aやその他の情報中継装置が、その情報処理を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 交通信号機
1a 交通信号制御機
2 車載装置(移動端末装置)
3 路側センサ
4 中央装置(情報処理装置)
5 プローブ車両
6 光ビーコン(無線通信装置)
201 GPS処理部(位置計測手段)
204 光通信部
205 記憶部(記憶手段)
209 制御部(座標生成手段、情報生成手段)
401 制御部(座標生成手段、位置特定手段)
403 通信部
404 記憶部(記憶手段)
M 基本メッシュ
R 定点座標(基準座標)
Dj 部分エリア
UL アップリンク情報
DL ダウンリンク情報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側に設置された狭域の無線通信装置と、この装置にアップリンク情報を送信する車両に搭載された移動端末装置と、前記無線通信装置から取得したアップリンク情報を用いて情報処理を行う路側の情報処理装置と、を備えた交通情報通信システムであって、
前記移動端末装置及び前記情報処理装置は、前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段をそれぞれ有し、
前記移動端末装置は、自装置で生成された前記基準座標からのオフセット値によって1又は複数の車両位置を表現して、その値を前記アップリンク情報に含める情報生成手段を有し、
前記情報処理装置は、自装置で生成された前記基準座標と、前記アップリンク情報に含まれるオフセット値とに基づいて、前記車両位置を特定する位置特定手段を有することを特徴とする交通情報通信システム。
【請求項2】
前記移動端末装置及び前記情報処理装置は、基準測地系に基づく所定長さの区画よりなる複数の基本メッシュと、この基本メッシュごとに予め位置が定められた基準測地系に基づく定点座標とを記憶する、記憶手段をそれぞれ有する請求項1に記載の交通情報通信システム。
【請求項3】
前記移動端末装置の座標生成手段は、アップリンク送信時の自車両位置を含む前記基本メッシュの定点座標を前記基準座標として採用する請求項2に記載の交通情報通信システム。
【請求項4】
前記情報処理装置の座標生成手段は、前記アップリンク情報を取得した前記無線通信装置の位置を含む前記基本メッシュの定点座標を前記基準座標として採用する請求項3に記載の交通情報通信システム。
【請求項5】
前記各記憶手段は、前記基本メッシュを複数部分に分割してなる複数の部分エリアと、この部分エリアを識別するための識別情報とを更に記憶している請求項2〜4のいずれか1項に記載の交通情報通信システム。
【請求項6】
前記情報生成手段は、アップリンク送信時の自車両位置に対応する前記部分エリアの識別情報を、前記アップリンク情報に含める請求項5に記載の交通情報通信システム。
【請求項7】
前記情報処理装置の座標生成手段は、前記アップリンク情報に含まれる前記部分エリアの識別情報に基づいて、どの前記基本メッシュの前記定点座標を前記基準座標として採用するかを判定する請求項6に記載の交通情報通信システム。
【請求項8】
空間長さに関するデータ長を可変に共通設定するための空間用フィールドが、前記アップリンク情報のフレームフォーマットに定義されており、
前記情報生成手段は、前記車両位置を表すためのオフセット値と、前記アップリンク情報に含める前記車両の走行距離とに対応して、前記空間用フィールドの値を設定する請求項1〜7のいずれか1項に記載の交通情報通信システム。
【請求項9】
時間に関するデータ長を可変に共通設定するための時間用フィールドが、前記アップリンク情報のフレームフォーマットに定義されており、
前記情報生成手段は、オフセット値分だけ離れた隣接地点間の走行時間であるオフセット時間と、前記車両が停止した場合の停止時間とに対応して、前記時間用フィールドの値を設定する請求項1〜8のいずれか1項に記載の交通情報通信システム。
【請求項10】
走行中の前記車両に生じた停止イベントの回数のデータ長を可変に共通設定するための回数用フィールドが、前記アップリンク情報のフレームフォーマットに定義されており、
前記情報生成手段は、非渋滞走行状態からの停止である単独停止の回数と、渋滞走行状態からの停止である反復停止の回数とに対応して、前記回数用フィールドの値を設定する請求項1〜9のいずれか1項に記載の交通情報通信システム。
【請求項11】
路側に設置された狭域の無線通信装置にアップリンク情報を送信する、車両に搭載された移動端末装置であって、
前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段と、
生成された前記基準座標からのオフセット値によって1又は複数の車両位置を表現して、その値を前記アップリンク情報に含める情報生成手段と、
を備えていることを特徴とする移動端末装置。
【請求項12】
路側に設置された狭域の無線端末装置から取得したアップリンク情報を用いて情報処理を行う、路側の情報処理装置であって、
前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段と、
生成された前記基準座標と、移動通信装置が前記無線通信装置に送信した前記アップリンク情報に含まれるオフセット値とに基づいて、前記移動端末装置を搭載した車両の1又は複数の車両位置を特定する位置特定手段と、
を備えていることを特徴とする情報処理装置。
【請求項13】
車両に搭載された移動端末装置が行うアップリンク情報の生成方法であって、
狭域の無線通信装置に対する前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成するステップと、
1又は複数の車両位置を前記基準座標からのオフセット値に変換するステップと、
変換されたオフセット値を前記アップリンク情報に含めるステップと、
を含むことを特徴とするアップリンク情報の生成方法。
【請求項14】
路側の情報処理装置が行うアップリンク情報の処理方法であって、
狭域の無線通信装置に対する前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成するステップと、
前記無線通信装置から取得した前記アップリンク情報から、前記基準座標からのオフセット値を抽出するステップと、
生成された前記基準座標と抽出されたオフセット値とに基づいて、移動端末装置を搭載した車両の1又は複数の車両位置を特定するステップと、
を含むことを特徴とするアップリンク情報の処理方法。
【請求項15】
請求項1に記載の交通情報通信システムに使用する地図データ構造であって、
基準測地系に基づく所定長さの区画よりなる複数の基本メッシュと、この基本メッシュごとに予め位置が定められた基準測地系に基づく定点座標と、前記基本メッシュを複数部分に分割してなる複数の部分エリアと、この部分エリアを識別するための識別情報とを備えており、
前記識別情報が、移動端末装置が狭域の無線通信装置に送信するアップリンク情報の格納情報として利用されることを特徴とする地図データ構造。
【請求項1】
路側に設置された狭域の無線通信装置と、この装置にアップリンク情報を送信する車両に搭載された移動端末装置と、前記無線通信装置から取得したアップリンク情報を用いて情報処理を行う路側の情報処理装置と、を備えた交通情報通信システムであって、
前記移動端末装置及び前記情報処理装置は、前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段をそれぞれ有し、
前記移動端末装置は、自装置で生成された前記基準座標からのオフセット値によって1又は複数の車両位置を表現して、その値を前記アップリンク情報に含める情報生成手段を有し、
前記情報処理装置は、自装置で生成された前記基準座標と、前記アップリンク情報に含まれるオフセット値とに基づいて、前記車両位置を特定する位置特定手段を有することを特徴とする交通情報通信システム。
【請求項2】
前記移動端末装置及び前記情報処理装置は、基準測地系に基づく所定長さの区画よりなる複数の基本メッシュと、この基本メッシュごとに予め位置が定められた基準測地系に基づく定点座標とを記憶する、記憶手段をそれぞれ有する請求項1に記載の交通情報通信システム。
【請求項3】
前記移動端末装置の座標生成手段は、アップリンク送信時の自車両位置を含む前記基本メッシュの定点座標を前記基準座標として採用する請求項2に記載の交通情報通信システム。
【請求項4】
前記情報処理装置の座標生成手段は、前記アップリンク情報を取得した前記無線通信装置の位置を含む前記基本メッシュの定点座標を前記基準座標として採用する請求項3に記載の交通情報通信システム。
【請求項5】
前記各記憶手段は、前記基本メッシュを複数部分に分割してなる複数の部分エリアと、この部分エリアを識別するための識別情報とを更に記憶している請求項2〜4のいずれか1項に記載の交通情報通信システム。
【請求項6】
前記情報生成手段は、アップリンク送信時の自車両位置に対応する前記部分エリアの識別情報を、前記アップリンク情報に含める請求項5に記載の交通情報通信システム。
【請求項7】
前記情報処理装置の座標生成手段は、前記アップリンク情報に含まれる前記部分エリアの識別情報に基づいて、どの前記基本メッシュの前記定点座標を前記基準座標として採用するかを判定する請求項6に記載の交通情報通信システム。
【請求項8】
空間長さに関するデータ長を可変に共通設定するための空間用フィールドが、前記アップリンク情報のフレームフォーマットに定義されており、
前記情報生成手段は、前記車両位置を表すためのオフセット値と、前記アップリンク情報に含める前記車両の走行距離とに対応して、前記空間用フィールドの値を設定する請求項1〜7のいずれか1項に記載の交通情報通信システム。
【請求項9】
時間に関するデータ長を可変に共通設定するための時間用フィールドが、前記アップリンク情報のフレームフォーマットに定義されており、
前記情報生成手段は、オフセット値分だけ離れた隣接地点間の走行時間であるオフセット時間と、前記車両が停止した場合の停止時間とに対応して、前記時間用フィールドの値を設定する請求項1〜8のいずれか1項に記載の交通情報通信システム。
【請求項10】
走行中の前記車両に生じた停止イベントの回数のデータ長を可変に共通設定するための回数用フィールドが、前記アップリンク情報のフレームフォーマットに定義されており、
前記情報生成手段は、非渋滞走行状態からの停止である単独停止の回数と、渋滞走行状態からの停止である反復停止の回数とに対応して、前記回数用フィールドの値を設定する請求項1〜9のいずれか1項に記載の交通情報通信システム。
【請求項11】
路側に設置された狭域の無線通信装置にアップリンク情報を送信する、車両に搭載された移動端末装置であって、
前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段と、
生成された前記基準座標からのオフセット値によって1又は複数の車両位置を表現して、その値を前記アップリンク情報に含める情報生成手段と、
を備えていることを特徴とする移動端末装置。
【請求項12】
路側に設置された狭域の無線端末装置から取得したアップリンク情報を用いて情報処理を行う、路側の情報処理装置であって、
前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成する座標生成手段と、
生成された前記基準座標と、移動通信装置が前記無線通信装置に送信した前記アップリンク情報に含まれるオフセット値とに基づいて、前記移動端末装置を搭載した車両の1又は複数の車両位置を特定する位置特定手段と、
を備えていることを特徴とする情報処理装置。
【請求項13】
車両に搭載された移動端末装置が行うアップリンク情報の生成方法であって、
狭域の無線通信装置に対する前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成するステップと、
1又は複数の車両位置を前記基準座標からのオフセット値に変換するステップと、
変換されたオフセット値を前記アップリンク情報に含めるステップと、
を含むことを特徴とするアップリンク情報の生成方法。
【請求項14】
路側の情報処理装置が行うアップリンク情報の処理方法であって、
狭域の無線通信装置に対する前記アップリンク情報の送信位置と対応する基準座標を生成するステップと、
前記無線通信装置から取得した前記アップリンク情報から、前記基準座標からのオフセット値を抽出するステップと、
生成された前記基準座標と抽出されたオフセット値とに基づいて、移動端末装置を搭載した車両の1又は複数の車両位置を特定するステップと、
を含むことを特徴とするアップリンク情報の処理方法。
【請求項15】
請求項1に記載の交通情報通信システムに使用する地図データ構造であって、
基準測地系に基づく所定長さの区画よりなる複数の基本メッシュと、この基本メッシュごとに予め位置が定められた基準測地系に基づく定点座標と、前記基本メッシュを複数部分に分割してなる複数の部分エリアと、この部分エリアを識別するための識別情報とを備えており、
前記識別情報が、移動端末装置が狭域の無線通信装置に送信するアップリンク情報の格納情報として利用されることを特徴とする地図データ構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−170627(P2011−170627A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33893(P2010−33893)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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