説明

人体に埋め込み可能な電気接続装置

本発明は、動物の体内に埋め込まれるように構成され、複数の電線間の電気的接続を可能にする電気接続装置(1)に関し、該装置は、
−ハウジング(10)内部に形成された少なくとも1の空洞の端部かつ該ハウジング(10)の表面に形成された、少なくとも1の開口(11)をそなえたハウジング(10)であって、該空洞は該開口(11)を介して第1の電線を収容するように構成されるハウジング(10)と、
−前記第1の電線と少なくとも1の第2の電線との間に、電気的接続を確立するための電気相互接続手段(8)と、
−前記第1の電線を対応する前記空洞内の位置に保持するための位置保持手段であって、前記ハウジング内に回転可能に設置されたカム(13)をそなえ、該カム(13)は、該第1の電線を対応する前記空洞の内側へと押し込む方向へ該カム(13)を回転させることにより、該第1の電線を該空洞の内壁に対して圧迫(圧縮変形)するように構成される位置保持手段とをそなえることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野における電気的接続に関し、特に動物の体内に埋め込み可能な電気接続装置、さらに特定すると人間の体内に埋め込み可能な電気接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者の体内に設置されるように構成された電気機器において大きな進歩が見うけられる。例えば非制限的な例として、心臓等の自然臓器の欠陥を補うために埋め込まれた医療機器、生理的パラメータのモニタリング装置、あるいは特定量の特定の治療剤を、所定の時間に、人体における特定の部分に対して供給する目的に適した装置が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした電気機器における発展においては、同一の患者の体内に電気医療機器が複数埋め込まれることは珍しくない。例えばこの場合においては、複数の別々の箇所に対して特定の治療を行うため、埋め込まれた1の電気機器が他の埋め込まれた機器を管理する、あるいは埋め込まれた1の電気機器が他の埋め込まれた機器に対して電力供給を行う必要がある。
【0004】
例えば電源供給システムを一元化するため、あるいは埋め込まれた複数の機器間でデータをやり取りするため、患者の体内に埋め込まれた様々な医療機器同士を電気的に接続する必要が頻繁に生じる。
【0005】
したがって、上記の様々な医療機器同士間の電気的接続を容易化する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、上記の様々な電気機器同士を電気的に接続するために、人間を含む動物の体内に埋め込まれるように構成された電気接続装置を提供することである。
【0007】
特に、本発明の目的は、人間を含む動物の体内に埋め込み可能な電気接続装置を提供することであり、それにより夫々の電気機器間における「較正された」出力をともなう確実な電気的接続を提供するとともに、使用の容易性、特に複数の電線同士の接続における容易性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、動物の体内に埋め込まれるように構成され、複数の電線間に電気的接続を提供する電気接続装置を提案する。該電気接続装置は以下の構成要素をそなえる。
−ハウジング内部に形成された少なくとも1の空洞の端部かつ該ハウジングの表面に形成された少なくとも1の開口をそなえるハウジング。該空洞は該開口を介して第1の電線を収容するように構成される。
−前記第1の電線と少なくとも1の第2の電線との間に、電気的接続を確立するための電気相互接続手段。
−前記第1の電線を対応する空洞内の位置に保持するための位置保持手段。該位置保持手段は、該ハウジング内に回転可能に設置されたカムをそなえ、該カムは、該第1の電線を対応する空洞の内側へと押し込む方向へ該カムを回転させることにより、該第1の電線を該空洞の内壁に対して圧迫する(圧縮変形される)ように構成される。
【0009】
前記電気接続装置における好ましい、しかしながら非制限的な側面単体、あるいは該側面の組み合わせを以下に挙げる。
−前記カムは、前記第1の電線を前記空洞の内壁に対して(半径方向に)圧迫するように構成された圧迫(圧縮変形)部を有する輪郭をそなえ、該圧迫部は該第1の電線と機械的に係合するように構成される。
−前記圧迫部は、例えば鋸歯状あるいは歯付きでかつ/あるいは起伏を有する。
−前記位置保持手段は、前記カムを回転させるための作動手段(actuator means)をそなえる。
−前記位置保持手段は、前記カムが前記第1の電線を前記空洞の内壁に対して圧迫する位置にある時に該カムをロックするロック手段をそなえる。
−前記ロック手段は、前記ハウジング内部でスライド可能なように設置されたロック部材をそなえ、前記カムの回転動作を防止するために、該ロック部材は該カム内に設けられた相補レールに対して(沿って)挿入可能なように構成される。
−前記ロック手段はさらに、前記ロック部材が前記カムにおける前記相補レールの軌道端部に位置する時に該ロック部材を自動的にロックするばね機構をそなえる。
−前記電気接続装置はさらに、前記ハウジングにおける前記空洞の端部に形成された前記開口の位置に設置されたシール手段をそなえ、該シール手段は該空洞の内側と該ハウジングの外側とを絶縁する。
−前記ハウジングの表面は、前記開口の周囲に陥凹をそなえ、該陥凹は前記第1の電線に設けられた突起と協働することにより、該第1の電線が前記空洞内に位置する時に、該空洞の内側と前記ハウジングの外側との間におけるガスケットを形成する。
−前記陥凹は円筒形状、先端を切り取った形状あるいは半球形状を有する。
−前記電気接続装置は、以下の特徴をそなえる。
・前記ハウジングは、該ハウジング内部に形成された前記空洞の端部かつ該ハウジングの表面に形成された複数の開口をそなえ、該夫々の空洞は少なくとも1の前記第1の電線を受け入れるように構成される。
・複数の電線間における電気的接続を確立するために、前記電気相互接続手段が設置される。
・前記電気接続装置はさらに、前記ハウジング表面の前記開口の位置に設けられた位置保持手段をそなえ、該位置保持手段は同一の構造及び機能を有する夫々の該開口と関連づけられる。
−前記空洞は、長手状に形成され、かつ軸方向に向かって延在し、複数の該空洞における複数の軸は空洞平面と呼ばれる同一かつ単一の平面に含まれる。前記夫々のカムは、前記ハウジング内部において該空洞平面の垂直軸を軸として回転可能なように設置される。
【0010】
本発明の別の側面によると、電気接続アセンブリが提案される。該電気接続アセンブリは以下の構成要素をそなえる。
−前述したような電気接続装置。
−前記電気接続装置のハウジング表面に形成された前記開口に挿入されるように構成された少なくとも1の電線。該電線の外周全体を覆うシース部が突起をそなえ、該突起は該電線の特定の位置に設置されることにより、該電線が前記空洞内に収容された時に該突起が該ハウジング表面の該開口の位置に係合する。
【0011】
前記電気接続アセンブリにおける好ましい、しかしながら非制限的な側面を以下に挙げる。
−前記突起は、円筒形状、円錐形状あるいは半球形状を有する。
−前記突起は、前記電線を囲繞するように構成されたスリーブ上に形成される。
−前記突起は、前記ハウジングの表面における前記開口の位置に設置された前記陥凹を補完するような形状を有し、前記第1の電線が前記空洞内に収容された時に空洞の内側とハウジングの外側との間にガスケットを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の別の特徴及び利点は以下の説明から導き出すことが出来るが、該説明は実施の際の例に過ぎず、非限定的なものであり、以下に挙げる添付の図面を参照して理解されるべきである。
【図1】前記提案された電気接続システムを示す概略図である。
【図2】本発明の電気接続装置における1実施形態を示す概略図である。
【図3】図2に示す電気接続装置に用いられるシール手段の1実施形態を示す概略図である。
【図4】図2に示す電気接続装置に用いられるシール手段の別の実施形態を示す概略図である。
【図5】図2に示す電気接続装置に用いられるシール手段のさらに別の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記のように、電気接続ケーブルを用いた継続的な電力供給を必要とする埋め込み型医療機器が増加している。該電気接続ケーブルは、電源ケーブルとして機能し、経皮的に設置されるように構成されているため、経皮貫通する際に感染した場合、該感染が埋め込まれた医療機器にまで拡散するおそれがあるという欠点を伴う。該欠点は避けられるべきものである。
【0014】
患者の生命が脅かされるため、感染した電力供給ケーブルを交換可能な程度長い間停止させることが出来ない医療機器が一定数存在する。その一方で、電力供給ケーブル自体を独立して交換することができない医療機器もまた一定数存在する。この場合、感染の拡大を阻止するためには、埋め込まれた医療機器を構成する医療アセンブリ全体及び経皮電源ケーブルの交換が必要となるが、該交換には、交換する装置自体の費用及び外科的処理の費用の両方の観点から費用が極めて高くつく。
【0015】
この課題を解決するために、埋め込まれた医療機器から取り外し可能であるという特徴を有する、新規な電気接続システムを提案する。該電気接続システムはメイン電源と並列接続されたバックアップ電源をそなえ、接続システムにおける感染したメイン電力供給ケーブルが、交換のために取り外される際に、該バックアップ電源により埋め込まれた医療機器へと電力を供給することが出来る。
【0016】
図1に概略的に示すように、提案された電気接続システムは、人体の外部に設置された電力供給装置3と人体内部に埋め込まれた電気医療機器2との間の電流通過を可能とする一定数の電線を含むメイン電力供給ケーブル4をそなえる。該メイン電力供給ケーブル4は、好ましくは従来の電力供給ケーブルと同じいくつかの特性を有する。特に、該メイン電力供給ケーブル4は、人体外部の電力供給装置3と埋め込まれた医療機器2とを電気的に接続するために、経皮的に設置される。
【0017】
メイン電力供給ケーブル4と埋め込まれた医療機器2との間の電気的接続が、前記提案された電気接続システムの特徴である。具体的には、埋め込まれた医療機器3と接続されるように構成されたメイン電力供給ケーブル4の端部は、特定の接続装置1をそなえる。該接続装置1は、メイン電力供給ケーブル4及び埋め込まれた電気医療機器の双方における等電位(same electrical phase)を有する電線間の電気的接続を可能にし、該接続は特定のコネクタあるいは相互接続手段によってなされる。該接続装置1はさらに付加的コネクタを有し、該付加的コネクタにより、埋め込まれた医療機器2の電線と、メイン電力供給ケーブル外部の電線との間の電気的接続が可能となる。
【0018】
接続装置1はメイン電力供給ケーブル4の埋め込まれた端部に位置するが、該構成に関しては本明細書において後述の実施形態を示す。該接続装置1は、例えば第2の電力供給ケーブル6内に集合された第2の電線アセンブリを、埋め込まれた医療機器2へと接続させる。したがって、特に提案された電気接続システムは、第1の電源と並列接続された第2の電源をそなえることが可能であり、必要が生じた場合には該第2の電源から埋め込まれた医療機器2へと電力を供給することが出来る。
【0019】
該埋め込まれた医療機器が、埋め込まれた左心補助循環装置(LVAD:left ventricular assist device)心臓ポンプである場合の非限定的例を以下に挙げる。該LVADには通常、ポンプに取り外し不可能な状態で接続された電気ケーブルを介して継続的に電力が供給され、該電気ケーブルは患者の体外にある電源に経皮接続されている。
【0020】
このような心臓補助ポンプは、一般的には一時的に患者の体内に埋め込まれているものの、今日該埋め込みの持続期間は次第に長くなっているため、電力供給ケーブルが経皮貫通により断線あるいは(体外の感染源より)感染することは珍しくない。該経費貫通の際に感染するとすぐに、該感染が電源ケーブルに沿って心臓補助ポンプの方向へと拡散するため、ポンプに到達する前に該感染の拡散を阻止することは、患者の生命を守るために不可欠である。
【0021】
提案された電気接続システムの形式をとった電力供給システムに接続された心臓補助ポンプを使用することで、メイン電力供給ケーブルを比較的簡易かつ安価な方法で交換することにより感染の拡大を防ぐことが可能になる。
【0022】
上記の場合には、具体的には、埋め込まれた電気医療機器2、すなわち心臓補助ポンプは、特定の電気接続装置1によってメイン電力供給ケーブル4と接続しており、該接続装置1により第2の電力供給ケーブル6をメイン電力供給ケーブル4と並列接続することが可能となる。したがって、メイン電力供給ケーブル4が感染した場合は、電気接続装置1に接続された第2の電力供給ケーブル6を介して、第2の電力供給源を埋め込まれた電気医療機器に接続することが出来る。上記のような接続システムを用いれば、電源に接続された第2の電力供給ケーブル6を介して心臓補助ポンプに対して継続的に電力を供給することでポンプの継続的な作動を保証しながら、メインの電力供給を遮断することが可能となる。
【0023】
心臓補助ポンプが第2の電源から電力供給されるとすぐに、メイン電力供給ケーブル4が接続装置1から取り外し可能となり、それにより患者から該メイン電力供給ケーブル4が除去されることにより感染源を断つことが出来る。したがって、埋め込まれた医療機器は電気接続装置1に接続された第2の電力供給ケーブル6による電力供給を継続的に受けることが出来るため、該医療機器を停止して患者の生命を危険にさらすことなく、メイン電力供給ケーブル4を簡単に交換することが可能となる。感染したメイン電力供給ケーブル4が一旦取り外されると、無菌の状態で新しいケーブルが挿入され、該新しいケーブルの一端は電気接続装置1に接続され、他端は外部電力供給源3に接続されることにより、再びメイン電力供給ケーブル4を介した心臓補助ポンプへの電力供給が可能になる。この場合、メイン電力供給ケーブル4の交換の目的のために設置された非常電力供給ケーブル6は取り外し可能となり、メイン電力供給ケーブル4のための経皮貫通路は再度閉路され、埋め込まれた医療機器2は、外部電力供給源3に接続されたメイン電力供給ケーブル4を介して電力供給を行う通常作動に戻る。
【0024】
成功のための最適条件下において作業を行うために、メイン電力供給ケーブル4の交換には以下のいくつかの要求を満たす厳密な外科的手順が必要となる。
−第1に、埋め込まれた電気医療機器2に接続された接続装置1に対して第1の外科的滅菌処理を行うことにより、非常電力供給ケーブル6を無菌状態で接続する。
−第2に、感染したメイン電力供給ケーブル4を接続装置1から断絶することにより取り外し、該メイン電力供給ケーブル4を体外に引き出すことにより、根絶すべき感染が広がるのを防ぐ。
このように、今日の抗生物質学では例外的に対応しえない細菌に感染した部位の近傍においては、極めて厳密な滅菌をともなう外科的処理を実行することが重要である。
【0025】
本発明の別の実施形態によると、提案された電気接続システムは、該電気接続システムの一端が埋め込まれた医療機器2に、他端が外部電源供給装置3に、提案された接続装置1に接続されたメイン電力供給ケーブル4を介して接続された状態で埋め込まれる。該電気接続システムはさらに、非常電源ケーブル6をそなえ、該非常電源ケーブル6の複数の電線は接続装置1の付加的コネクタに接続されており、該複数の電線は、埋め込まれた電気医療機器2における等電位を有する複数の電線と相互接続される。
【0026】
上記の場合、非常電力供給ケーブル6の一端は接続装置1に、他端は特定の接続手段7に接続され、該特定の接続手段7を介して、非常電力供給ケーブル6は患者体外の電源へと接続される。
【0027】
非常電力供給ケーブル6を含む上記アセンブリは、付加的な電気接続手段7を介して本発明の接続装置1と組み合わされることにより、付加的な非常電気接続(AEEC:Additional Emergency Electrical Connection)を構成する。
【0028】
非常電力供給ケーブル6の自由端に接続された付加的な電気接続手段7は、多様な形状をとることが出来る。該接続手段7は、好ましくは患者の体外から施術者が容易に接触可能なように、すなわち特定の切開を必要としないように経皮的に設置されるように構成される。
【0029】
例えば、経皮的に設置され、雌ソケット形状のコネクタを有するソケットを用いることが出来、その際外部電力供給源に接続された複数のピンを埋め込むことにより非常電力供給ケーブル6に電気を供給することが出来る。
【0030】
好ましくは、上記の経皮接続手段7は、外部から容易かつ確実に接触可能なように患者体内に設置あるいは位置される。
【0031】
経皮コネクタ7は、例えば互いに電気的に絶縁した数個の内部区画を有する開口ハウジングとして形成可能であり、導電材料で満たされた該区画内に、電気接続プラグが挿入される。該区画内の導電材料はさらに非常電力供給ケーブル6の電線へ接続される。さらに、シール膜が該ハウジングを密閉し、該シール膜は絶縁性かつ柔軟性の素材で形成されており、それによりハウジング外部から該シール膜を通じて、区画内の導電材料へと電気接続プラグが挿入可能となる。
【0032】
接続システムにおける上記のような実施形態は、電力供給ケーブルが経皮貫通により感染した場合に該ケーブルを交換する際に生じる課題を解決するのみならず、原位置(in situ)非常電力供給ケーブル6をそなえることにより、メイン電力供給源3が使用できない場合、あるいは例えばメイン電力供給ケーブル4が損傷して、埋め込まれた電気医療機器2に対してもはや電力を供給できない場合に、該メイン電力供給源3を速やかに第2の電力供給源により代替可能なように構成される。
【0033】
上述したように、提案された電気接続システムは、あらゆる形式の埋め込まれた医療機器に対して適用可能であり、好ましくは継続的な電力供給を必要とする医療機器に対して適用可能である。
【0034】
提案された電気接続システムは、欠陥を有する臓器の機能確保のために用いられる電気医療機器、例えば、本発明の心臓補助ポンプに対して電力を供給することに特に適している。
【0035】
提案された電気接続システムは他の形式の埋め込まれた医療機器、例えば薬剤を制御した状態で人体内に直接供給することを目的とする装置に対しても使用可能である。
【0036】
上記のような特定の電気接続システムは、埋め込まれた発電装置に対して電力供給を行う際にも使用可能であり、該発電装置は患者体内の埋め込まれた他の数個の医療機器に接続されるのが一般的である。
【0037】
さらに、提案された電気接続システムは、あらゆる形式の内部電気装置、すなわち患者体内に埋め込まれた電気装置と、患者体内で計測されたデータを収集する装置を含むあらゆる形式の外部電気装置とを電気的に接続する目的で使用可能である。
【0038】
提案された電気接続装置1は特別な電気相互接続手段8をそなえ、該電気相互接続手段8は、メインケーブル4の複数の電線と、該複数の電線と等電位を有する埋め込まれた電気医療機器2の複数の電線とを一端において接続し、他端においては、非常電力供給ケーブルが接続された場合には該非常電力供給ケーブルの複数の電線と、該複数の電線と等電位を有する埋め込まれた電気医療機器2の複数の電線とを接続する。該相互接続手段8は程度の差こそあれ複雑な構造を有する。
【0039】
最も簡素な形式によると、異なるコネクタ同士がはんだ付けされた複数の電線によって接続される。より複雑な実施形態によると、相互接続手段は、コネクタ同士を一体に関連付けるプリント回路によって形成され、特定のダイアグラムに沿って、必要に応じて等電位の複数の電線を接続するものである。
【0040】
ある特定の実施形態によると、相互接続手段8は、電気接続を変更して例えばメイン電力供給ケーブル4及び非常電力供給ケーブル6のうちいずれかを、埋め込まれた電気医療機器2に接続するためのセレクタにより有効化される。この場合、例えばダイオード等によりどの電気ポートが操作可能(operational)であるかが示される。
【0041】
提案された電気接続システムにおいて使用される電気接続装置1において、電気接続装置1が人体内への埋め込みに適している限りは、さらにそれにより様々な装置から派生した複数の電線間の電気的な接続を確実なものとしつつ、該異なる複数の電線の接続が取り外し可能に構成される限りにおいては、メイン電力供給ケーブル4の端部は多様な形状をとることが出来る。
【0042】
具体的には、上記の電気接続システムについては、メイン電力供給ケーブル4の確実かつ取り外し可能な接続を可能にするとともに、非常ケーブルあるいはバックアップケーブルと呼ばれる第2の電力供給ケーブル6の同様に確実かつ取り外し可能な接続を可能にする接続装置1を設けることが不可欠である。
【0043】
図2に示すある特定の実施形態によると、一定数の内部空洞をそなえるハウジング10として形成された電気接続装置1が提案される。該内部空洞に対しては、ハウジング10の表面に設けられた開口11を介して複数の電線12が挿入可能である。さらに、電気接続装置1に挿入された異なる種類の複数の電線12間に電気的接続を確立し、特に電力供給のために設けられた等電位の複数の電線同士を接続する相互接続手段(不図示)が、電気接続装置1にそなえられる。
【0044】
ハウジング10はいずれの形状をとってもよく、例えば長方形あるいは楕円形であってもよい。さらに好ましくは、ハウジングは患者の体内部と接触しても支障のない材料からなる生体適合性材料で形成される。
【0045】
上述したように、本発明の電気接続装置1に関しては、複数の電線12が取り外し可能に接続されていること、また同時に電気接続装置1から電線12を断絶すべきでない場合においては、電線12が対応する空洞内に確実に保持されるように保証することが重要である。
【0046】
この目的のために、ハウジング10は好ましくは夫々の開口に位置保持手段13を一体的にそなえ、該位置保持手段13により、電線12が対応する開口11を介してしかるべき位置に挿入された状態が維持される。さらに詳しくは、位置保持手段は、ハウジング10内で回転可能なように設置されたカム13をそなえ、電線12が対応の開口11から挿入された際に、該カム13により電線12が空洞の内壁に対して圧迫される。
【0047】
ハウジング10内で回転可能なように設置されたカム13は、したがって電線12を対応する空洞の内壁に対して圧迫するための圧迫部を有し、カム13が特定の位置にある場合、すなわち電線12がカムの中立面に対向している場合には、電線12に対して圧力は付加されない。
【0048】
好ましくは、カム13はハウジング10内で回転可能なように設置され、電線12を空洞の内側に押し込む方向へとカム13を回転させた場合には、カム13の圧迫(圧縮変形)面が電線12に接するように移動し、対応する空洞の内壁に向かって電線12が圧迫(圧縮変形)される。
【0049】
したがって、カム13の回転動作が有効化し、対応する電線を圧迫(圧縮変形)した場合、カム13の回転動作は電線をハウジング10に対して押し込む傾向を有する。該傾向は電気接続装置1内での電気的接続の確実性を高めるという観点から好ましいものである。
【0050】
好ましくは、カム13の圧迫面は、圧迫されるように構成された電線12と機械的に係合するように構成される。したがって、カム13の圧迫部は、例えば鋸歯状あるいは歯付きかつ/あるいは起伏を有しており、それにより電線12を囲繞するシース(絶縁被覆管)の内周側と圧迫(圧縮変形)面とが係合可能となる。カム13の上記のような鋸歯状あるいは歯付き圧迫面により、カムがハウジング10の空洞内の電線12とよりよく係合するだけでなく、わずかに大きさが異なる複数の電線を位置13に維持することが出来る。具体的には、電線の直径における差異は、電線12を囲繞するシース内周側の溝あるいは歯における挿入深度によって補足される。
【0051】
好ましい実施形態によると、位置保持手段はさらに、カム13が電線12に対して圧迫位置にある時にカム13をロックするロック手段14、15をそなえる。該ロック手段14、15はしたがって電線12がハウジング10から意図せず脱落するのを防ぐ。
【0052】
ロック手段14、15はさらに、例えばハウジング10内部でスライド可能なように設置されたロック部材14をそなえ、該ロック部材14はカム13内に設けられた相補レール15と協動し、位置保持を行う。カム13の圧迫部が空洞の内壁に対して電線12を圧迫するようにカム13が回転すると、ロック部材14はカム13内に設けられた相補レール15の内側に挿入される。すなわち、ロック部材14はカム13内に設けられた相補レール15の内側でスライドし、ロック部材14のためのロック機構が設けられた相補レール15における閉鎖端部の位置で、ロック部材14が停止する。例えば本機構は、ロック部材14が相補レール15の内側における特定の位置にある場合に、すなわち例えば相補レール15の閉鎖端部の位置でロック部材14が停止した場合に、自動的に有効化するばね機構であってもよい。
【0053】
したがって、カム13が電線12を空洞の内壁に対して圧迫する位置にある場合に、該カム13は前記ロック手段14、15によって所定の位置にロックされる。これにより、電線12が接続装置1から脱落し、各種電線12間での確実な電気的接続が失われるのを防ぐ。電線12を取り外す必要が生じた場合には、ロック手段14、15を例えばばね機構を作動させることによって無効化するだけで十分である。
【0054】
さらに、電気接続装置1は電線12をハウジング10へと密閉状態にて挿入可能なように調節されている。具体的には、電線12が所定の位置にある場合、すなわち電気接続装置1に接続されている場合には、ハウジング10内に形成された空洞内部はハウジング10の外部環境と絶縁状態にある。この目的において、ハウジング10に形成された夫々の開口11の位置にシーリングを形成することが好ましい。
【0055】
ハウジング10は、例えば開口11の周囲に陥凹111を有し、該陥凹は電線12に設けられた突起121と協動する。電線12が所定の位置にある場合、すなわち空洞内側に接続されている場合に、該陥凹111と突起121とが空洞内側とハウジング10外側との間におけるガスケットを形成する。
【0056】
図3、4及び5は、開口11に挿入されるように構成された電線12に設けられた突起121と、ハウジング10の開口11に形成された陥凹111とが協動することにより生じる上記シール構造における特定の実施形態を示す。
【0057】
図3に示すように、陥凹111は円筒形状を有し、電線12の周囲に設けられた突起121もまた、電線を囲むような円筒形状を有し、該突起111はハウジングの開口11の周囲に形成された円筒状陥凹111と相互補完的に機能する。
【0058】
図4に示す別の実施形態によると、開口11の位置に形成された陥凹111は、(先端を切り取った軸方向断面矩形の)切頭形状を有し、該形状により陥凹111は、電線12を囲むように形成され同様に切頭形状を有する突起121と協動可能に構成されている。
【0059】
陥凹111はさらに、半球形状を有する開口11の位置に形成され、該形状により陥凹111は、電線12を囲むように形成され同様に半球形状を有する突起121と協動可能に構成されている。
【0060】
陥凹111がハウジングに、かつ/あるいは突起121が電線12に設けられた際に欠落部(部分的非シール部)が生じていたとしても、空洞内側とハウジング外側との間のシールを確実なものとするという目的において、上記後者2つの実施形態は特に効果的である。
【0061】
ハウジング10におけるどの表面上で開口11の位置に陥凹を設けないのかという点、あるいはどういった場合に、電線12に独立して設けられて開口11に接する突起121によりもたらされる一定のシール効果によって、空洞内側とハウジング10の外側との間のシールが保証されるのかという点について、さらなる別の実施形態を考案することが出来る。この場合、突起121はいかなる形状であってもよいが、好ましくは半球状、先端を切り取った形状あるいは円筒形状に形成される。
【0062】
電線12における突起121は、電線12を囲繞する絶縁シース管に直接形成することが出来る。好ましい実施形態によると、電線12を囲むように設けられる突起121は、電線12の絶縁シースを囲繞するように構成されたスリーブ内に形成される。該構成により、接続装置1に接続しようとする電線12の端部であればどこにでも突起121を設置することが出来る。空洞内側とハウジング10の外側との間のシールを可能な限り効率的に行うためには、開口11に対する突起121の位置が重要であるため、上記構成はなおさら有利である。さらに好ましくは、電線12を空洞内側位置に保持するように構成されたカム13は、電線12を囲繞するスリーブ状軸受突起121と協動するように構成され、該構成によりカム13が電線12だけでなく、該電線12に対応する突起121をも所定の位置に保持することが可能となる。
【0063】
さらに、カム13は、例えば電線12をハウジング10内部に固定するための、あるいは電線12を解放するための望ましい位置へと該カム13をもたらす作動手段16(actuator means)を有する。該作動手段16は、例えば特定の溝状に形成され、ハウジング10の外部から、例えばスクリュードライバー等の工具を該溝に滑入させることにより、ハウジング10内部において施術者の手によりカム13を機械的に回転させることが出来る。これにより、本発明の電気接続装置1のより高い確実性が保証される。
【0064】
本発明の電気接続装置1は上述の電気接続システムに準拠しているものの、該電気接続装置の使用は、明らかに上述の電気接続システムに限定されるものではない。特に、電気接続装置1は患者体内に埋め込まれた複数の電気医療機器同士の接続に用いることが出来、あるいは埋め込まれた電源と1以上の埋め込まれた電気医療機器との間の電気的接続にも用いることが出来る。
【0065】
さらに、本発明の電気接続装置1は単一の電線の接続のために設けられた単一の空洞及び単一の開口に準拠しているものの、対応する技術的教示は数個の空洞、数個の開口、該夫々の開口に挿入されるように構成された数個の電線位置保持手段、及び電気接続装置1内に設けられ、該電気接続装置1を用いて電気接続を生じさせる必要性の有無に応じて調節可能な相互接続手段とをそなえる電気接続装置1に対しても明らかに適用可能である。
【0066】
同様に、本発明の電気接続システムは埋め込まれた電気医療機器への電力供給という単一の主題に準拠しているものの、他の目的、例えば埋め込まれた電気医療機器から発信されたデータを確実かつ継続的に伝送する目的、あるいは埋め込まれた医療機器のデータ制御の目的にも適応可能である。好ましくは、本発明の電気接続システムは、継続的な電力供給の確保のためだけでなく、特定のデータの確実な伝送のためにも用いられ、該データ伝送のためには、多様なケーブルに内蔵される電線の数、及び接続装置のコネクタ数を調節するだけでよい。
【0067】
上述した新規な教示及び利点の範囲から実質的に逸脱することなく、本発明に多くの修正を適用することが出来ることは明らかである。したがって、この種のあらゆる修正は本発明の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間を含む動物の体内に埋め込まれるように構成され、複数の電線間の電気的接続を可能にする電気接続装置(1)であって、
該装置は、
−ハウジング(10)内部に形成された少なくとも1の空洞の端部かつ該ハウジング(10)の表面に形成された、少なくとも1の開口(11)をそなえたハウジング(10)であって、該空洞は該開口(11)を介して第1の電線を収容するように構成されるハウジング(10)と、
−前記第1の電線と少なくとも1の第2の電線との間に、電気的接続を確立するための電気相互接続手段(8)と、
−前記第1の電線を対応する前記空洞内の位置に保持するための位置保持手段であって、前記ハウジング内に回転可能に設置されたカム(13)をそなえ、該カム(13)は、該第1の電線を対応する前記空洞の内側へと押し込む方向へ該カム(13)を回転させることにより、該第1の電線を該空洞の内壁に対して圧迫するように構成される位置保持手段と
をそなえることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記カム(13)が、前記第1の電線を前記空洞の内壁に対して圧迫するように構成された圧迫部を有する輪郭をそなえ、該圧迫部は該第1の電線と機械的に係合するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記圧迫部は、例えば鋸歯状あるいは歯付きかつ/あるいは起伏を有することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記位置保持手段は、前記カムを回転させるための作動手段(16)をそなえることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の装置。
【請求項5】
前記位置保持手段は、前記カム(13)が前記第1の電線を前記空洞の内壁に対して圧迫する位置にある時に該カム(13)をロックするロック手段(14、15)をそなえることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の装置。
【請求項6】
前記ロック手段は、前記ハウジング内部でスライド可能なように設置されたロック部材(14)をそなえ、前記カム(13)の回転動作を防止するために、該ロック部材は該カム(13)内に設けられた相補レール(15)に対して挿入可能なように構成されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ロック手段(14、15)はさらに、前記ロック部材(14、15)が前記カム(13)における前記相補レール(15)の軌道端部に位置する時に該ロック部材を自動的にロックするばね機構をそなえることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記電気接続装置はさらに、前記ハウジングにおける前記空洞の端部に形成された前記開口の位置に設置されたシール手段をそなえ、該シール手段は該空洞の内側と該ハウジングの外側とを絶縁することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の装置。
【請求項9】
前記ハウジングの表面は、前記開口の周囲に陥凹(111)をそなえ、該陥凹(111)は前記第1の電線に設けられた突起(121)と協働することにより、該第1の電線が前記空洞内に位置する時に、該空洞の内側と前記ハウジング(10)の外側との間におけるシーリング目地を形成することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記陥凹(111)は円筒形状、先端を切り取った形状あるいは半球形状を有することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
−前記ハウジング(10)は、該ハウジング(10)内部に形成された前記空洞の端部かつ該ハウジング(10)の表面に形成された複数の開口(11)をそなえ、該夫々の空洞は少なくとも1の前記第1の電線を受け入れるように構成され、
−複数の電線間における電気的接続を確立するために、前記電気相互接続手段(8)が設置され、
−前記電気接続装置はさらに、前記ハウジング(10)表面の前記開口(11)の位置に設けられた位置保持手段をそなえ、該位置保持手段は同一の構造及び機能を有する該夫々の開口と関連づけられる
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載の装置。
【請求項12】
前記空洞は、長手状に形成され、かつ軸方向に向かって延在し、複数の該空洞における複数の該軸は空洞平面と呼ばれる同一かつ単一の平面に含まれ、前記夫々のカム(13)は、前記ハウジング(10)内部において該空洞平面の垂直軸を軸として回転可能なように設置されることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
−請求項1乃至12のいずれか1に記載の電気接続装置(1)と、
−該電気接続装置のハウジング表面に形成された前記開口に挿入されるように構成された少なくとも1の電線であって、該電線の外周全体を覆うシース部に突起(121)が設けられ、該突起(121)は、該電線が前記空洞内に収容された時に該突起が該ハウジング(10)表面の該開口(11)の位置に係合するように、該電線における特定の位置に設置されるように構成される少なくとも1の電線と
をそなえる電気接続アセンブリ。
【請求項14】
前記陥凹(111)は円筒形状、先端を切り取った軸方向断面矩形の切頭形状あるいは半球形状を有することを特徴とする請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記突起(121)は、前記電線を囲繞するように構成されたスリーブ上に形成されることを特徴とする請求項13又は14に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記突起(121)は、前記ハウジングの表面における前記開口(11)の位置に設置された前記陥凹(111)を補完するような形状を有し、前記第1の電線が前記空洞内に収容された時に空洞の内側とハウジング(10)の外側との間にシーリング目地を形成することを特徴とする請求項9との組み合わせにおける請求項13に記載のアセンブリ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−524575(P2012−524575A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506515(P2012−506515)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055426
【国際公開番号】WO2010/122140
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511256912)セントレ オスピタリエ ユニヴェルシテール ド ルーアン (3)
【Fターム(参考)】