説明

人力発蓄電装置

【課題】 従来のペダルをこいで発電する装置は、サドル、ハンドル、ペダル、発電機が一体となった構成であるため大きさや重量が大きく、ペダルから発電機までを構成するギヤ比は固定されておりペダルの回転軸の回転数に対する発電機の回転数も容易に変更できず、体力の異なる人間に対して広く負荷を合わせることが困難であり、体力の無い者にとってはペダルを踏む負荷が大きく長時間発電することはできないものであった。
【解決手段】 人力発蓄電装置1は、発電装置2及び蓄電装置3から構成されている。発電装置2は、機台4上に並列に支持用ローラ5並びに発電用ローラ6が回動自在に軸支され、発電用ローラ6には発電用ローラ6の直径より大径のローラ側プーリ7が発電用ローラ6と同軸に軸支され、また、機台4上には発電機8が配置され、発電機8の回転軸には発電側プーリ9が軸支され、ローラ側プーリ7と発電側プーリ9にベルト10が捲装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小型で持ち運びが容易で、駆動源を市販の自転車を利用した人力蓄発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来例を図5及び図6を基に説明する。従来は特開2003−206854号公報に示されるように、自転車のペダル22、サドル28、ハンドル27、発電装置21が一体となった構造となっていた(図5)。この発電装置の発電は次のようにして行われる。図6に発電装置21の構造を示す。人間が、ペダル22を足の力で踏んで、自転車をこぐようにしてペダル22の回転軸23を回転させる。回転軸23は主ギヤ24、副ギヤ25を介して発電機26とつながっており、実登第3089392号公報にもあるように、人間がペダル22を踏む力が発電機26に伝わって発電が行われる。
【特許文献1】 特開2003−206854号公報
【特許文献2】 実登第3089392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来例に示されるものは、ペダル、サドル、ハンドル、発電機は分解しなければ分離できず、その大きさは通常の自転車型トレーニングマシンと同じであるためスペースをとり、重量に関しては発電機能を組み込んだだけ重いもので保管、運搬には不便なものであった。
【0004】
また、従来例に示されるものは、サドル、ハンドル、ペダル、発電機が一体となった構成であるため、ペダルから発電機までを構成するギヤ比は固定されておりペダルの回転軸の回転数に対する発電機の回転数も容易に変更できず、体力の異なる人間に対して広く負荷を合わせることが困難であり、体力の無い者にとってはペダルを踏む負荷が大きく長時間発電することはできないものであった。
また、従来例の人力発電機は、電力を蓄えて、非常時にその電力を利用して緊急用の電源にするという考えもなかった。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的とするところは、発電機の駆動部を別体にした小型軽量の人力蓄発電装置を提供するものである。また、本発明の目的とするところは、駆動側の回転数と発電機側の回転数の比を変えられるようにする人力蓄発電装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の記載の人力蓄発電装置は、機台と、この機台上に所定間隔を設け回動自在に並列に配置される支持用ローラ並びに発電用ローラと、この発電用ローラに同軸に軸支されるローラ側プーリと、前記機台上に配置される発電機と、この発電機の回転軸に軸支される発電側プーリと、この発電側プーリと前記ローラ側プーリをベルトで捲装される発電装置と、この発電機からの電力を変換する充電制御装置と、蓄電池と、この蓄電池に蓄えられた電力並びに前記発電機からの電力を変換するDC/AC変換器とから構成されるものである。
【0007】
また、請求項2に記載の人力蓄発電装置は、請求項1記載の発明に加え、発電用ローラに同軸に軸支されるローラ側プーリまたは発電機の回転軸に軸支される発電側プーリに径の異なるプーリを軸支したものである。
【発明の効果】
【0008】
(イ)本発明の人力発蓄電装置は自転車の車輪の回転力による運動エネルギを電気エネルギに変換する部分のみで構成されているので、小型軽量である。
(ロ)自転車は容易に入手できるので、自転車が故障しても、かわりの自転車を用意すればよい。本発明の人力発蓄電装置には自転車の機能の部分がないので、部品が少ない分だけ故障しにくい。
(ハ)ローラの回転数と発電機の回転数の比を変えられるようにすることで、発電にかかる負荷を重くも軽くもできるので、自転車をこぐ人の体力にあわせて調整ができる。
(ニ)発電した電力は蓄電池に蓄えられ、DC/AC変換器により交流の100Vに変換される。災害などの非常時に自転車と、それをこぐ人がいれば、交流の電源により照明や機器を駆動させることができ、燃料などがなくても電気を使うことができるようになる。すなわち非常時用の電源として最適の性質をもっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の第一実施例を図1及び図2を用いて説明する。図1は装置と自転車を載置した状態を表した図である。
図中1は人力発蓄電装置で、発電装置2及び蓄電装置3から構成されている。発電装置2は、機台4上に並列に支持用ローラ5並びに発電用ローラ6が回動自在に軸支され、発電用ローラ6の表面は滑り止め加工が施されている。発電用ローラ6には発電用ローラ6の直径より大径のローラ側プーリ7が発電用ローラ6と同軸に軸支されている。また、機台4上には発電機8が配置され、発電機8の回転軸には発電側プーリ9が軸支され、ローラ側プーリ7と発電側プーリ9にベルト10が捲装されている。
蓄電装置3は、充電制御装置11、蓄電池12、DC/AC変換器13から構成され、発電機8とケーブル14で接続されている。
【0010】
この人力発蓄電装置1の使用方法は、発電装置2の支持用ローラ5と発電用ローラ6上に自転車15の後輪16を載置する。
自転車15は市販のどのような自転車でもよい。自転車15をこぐと自転車15の後輪16が回転して、その回転力が発電装置2に伝わって発電機8を回転させる。自転車15の後輪16の回転力が発電機8に伝わる仕組みを、図2を用いて詳しく解説する。自転車15の後輪16は支持用ローラ5と発電用ローラ6の上に載置される。人力により自転車15の後輪16が回転すると支持用ローラ5、発電用ローラ6はともに回転する。発電用ローラ6の表面は滑り止め加工が施されているので自転車15の後輪16の回転力がロスなく発電用ローラ6に伝達される。発電用ローラ6にはローラ側プーリ7が同軸に取りつけられており、発電用ローラ6が回転するとローラ側プーリ7も回転する。ローラ側プーリ7の回転はベルト10を介して発電側プーリ9に伝わる。発電側プーリ9は発電機8の軸に取りつけられているので、発電側プーリ9の回転により発電機8の軸が回転し、発電機8は発電を行う。
【0011】
図1を用いて発電された電力がどのように利用されるかを説明する。発電機8で発電された電力はケーブル14を通じてまず充電制御装置11により充電に適した形に変換される。その電力は蓄電池12に蓄えられる。蓄えられた電力及び発電機8が回転中の電力はDC/AC変換器13により交流のAC100Vに変換される。AC100Vにより通常の電気機器を作動させることができる
【0012】
自転車は日常使用している市販の自転車を使うことができる。よって発電装置には自転車の構成要素である、ハンドル、ペダル、サドルがない。ゆえに装置を保管したり移動することが従来にくらべ容易である。
発電は人間の脚力のみででき、自転車は一般に入手が容易である。そのため家庭では災害時などに電灯やテレビ等を見るのに必要な電力を燃料や複雑な装置なしで供給できる。また、公共施設では複数台設置して来場者に交互に自転車をこいでもらえば災害時に備えた電力の備蓄をすることができる。
小型なので大型の装置に比べ地震にも強く、運搬も容易である。
【0013】
なお、この実施例では自転車の回転力の伝達はプーリ及びベルトで行うと説明したが、チェーン、ギヤ等を用いても同様に実現できる。また、支持用ローラと発電用ローラに同径のプーリを設けベルトを捲装することで、支持用ローラの回転力を発電用ローラに伝達することができ、発電用ローラが軽い力で回転するため、さらに軽い力で発電することが可能となる。
また、人力発蓄電装置1は発電装置2と蓄電装置3を別体のもので示したが、発電装置2の機台4上に蓄電装置3を一体に設けても良い。
【0014】
本発明の第二実施例について図3及び図4を用いて説明する。第一実施例と共通の部分には同一符合を付し詳細な説明を省略する。
図3において、人力発蓄電装置1は、発電装置2及び蓄電装置3から構成されている。発電装置2は、機台4上に並列に支持用ローラ5並びに発電用ローラ6が回動自在に軸支され、発電用ローラ6の表面は滑り止め加工が施されている。発電用ローラ6には図4に示すように径の異なるプーリ17、すなわちプーリ大18、プーリ小19が発電用ローラ6と同軸に軸支されている。また、機台4上には発電機8が配置され、発電機8の回転軸には発電側プーリ9が軸支され、プーリ17と発電側プーリ9にベルト10が捲装されている。
【0015】
本実施例は発電用ローラ6に、図4に示す径の異なるプーリ、すなわちプーリ大18、プーリ小19を同軸状に取りつけたもので、プーリ17のベルト10を巻きつけるプーリを例えばプーリ大18からプーリ小19変更することにより、自転車15の後輪16の回転数と発電機8の回転数の比を変更できるようになる。発電の仕組みは実施例1と同様であるが、回転数の比を変えることにより、自転車をこぐのに必要な力を変えることができる。
このため、脚力が違う人に対しても最適な負荷で自転車をこぐことができるようになるため、長時間発電することが可能となり、蓄電することができる。
【0016】
なお、本実施例は径の異なるプーリを2個用いる方法で説明したが、必要に応じて、それ以上の数のプーリを取りつけることも可能である。
さらにプーリではなく、自転車のチェーンのようにギヤとチェーンにしてもよいし、ギヤ比が変えられるギヤとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施例の使用状態を示す説明図である。
【図2】本発明の第一実施例の動作原理を示す断面図である。
【図3】本発明の第二実施例の使用状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第二実施例の同心円上に複数(2個)の径の異なるプーリが取りつけられたプーリの斜視図である。
【図5】従来例の装置全体を示す参考図である。
【図6】従来例の発電原理を示す参考図である。
【符号の説明】
1 人力発蓄電装置
2 発電装置
3 蓄電装置
4 機台
5 支持用ローラ
6 発電用ローラ
7 ローラ側プーリ
8 発電機
9 発電側プーリ
10 ベルト
11 充電制御装置
12 蓄電池
13 DC/AC変換器
14 ケーブル
15 自転車
16 後輪
17 プーリ
18 プーリ大
19 プーリ小
21 発電装置
22 ペダル
23 回転軸
24 主ギヤ
25 副ギヤ
26 発電機
27 ハンドル
28 サドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機台と、この機台上に所定間隔を設け回動自在に並列に配置される支持用ローラ並びに発電用ローラと、この発電用ローラに同軸に軸支されるローラ側プーリと、前記機台上に配置される発電機と、この発電機の回転軸に軸支される発電側プーリと、この発電側プーリと前記ローラ側プーリをベルトで捲装される発電装置と、この発電機からの電力を変換する充電制御装置と、蓄電池と、この蓄電池に蓄えられた電力並びに前記発電機からの電力を変換するDC/AC変換器とから構成されることを特徴とする人力発蓄電装置。
【請求項2】
発電用ローラに同軸に軸支されるローラ側プーリまたは発電機の回転軸に軸支される発電側プーリに径の異なるプーリを軸支したことを特徴とする請求項1記載の人力発蓄電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−24025(P2007−24025A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236128(P2005−236128)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(301054553)有限会社原技研 (6)
【Fターム(参考)】