説明

人工石材およびその製造方法

【課題】材料として浚渫土などの泥土を多量に使用し、準硬石以上の強度を有し且つコンクリートよりも軽量な人工石材を提供する。
【解決手段】泥土、結合材および粉粒状の製鋼スラグを含む混合材料の混練物を水和硬化させて得られた水和硬化体であって、単位容積当たりの質量が2000〜2200kg/mである。材料として浚渫土などの泥土を多量に使用するため、それらの有効利用を図ることができ、しかも準硬石以上の強度を有し且つコンクリートよりも軽量であるため、強度・耐久性と軽量性とが求められる石材用途に特に有用なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫土などの泥土を結合材で固化させ得られる人工石材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浚渫土に代表される軟弱な泥土は、航路浚渫や各種土木建設に伴って発生する。そのなかで、砂質のように土木資材として有用なものは、浅場造成や埋め戻しなどにそのまま利用することが可能であるが、シルト分の比率が高い泥土の場合は含水状態のものが多く、また、土としての強度もほとんど期待できないため、廃棄物になることが多い。
泥土を有効利用するために、従来から様々な技術が提案、実施されている。その最も代表的なものが、土としての特性を改善し、良質な土と同じように利用するための技術である。例えば、日本石灰協会による「石灰による軟弱地盤の安定処理工法」(鹿島出版会)では、セメントや石灰を泥土に添加して、地盤としての特性を改善する様々な技術が示されている。
【0003】
また、特許文献1には、浚渫土に鉄鋼スラグを混合して強度の改善を行う技術が示されており、この技術では、主に鉄鋼スラグのCaO分と浚渫土のSi、Al等とのポゾラン反応により、浚渫土の強度改質を行うものである。また、特許文献2には、軟弱土に遊離CaOを含有する転炉スラグと高炉セメントを添加して固化処理(強度の改善)を行う技術が開示されている。
しかしながら、これらの方法は土質材料としての特性改善であり、強度が発現するとはいえ、あくまでも土としての用途に限定されるものである。
【0004】
一方、特許文献3には、浚渫土に高炉スラグ、生石灰、フライアッシュなどからなる固化材を混合し、固化させてブロック材(固化体)を得る方法が示されている。この方法では、含水分を含めた浚渫土100(質量部)に対して、40〜60(質量部)程度の固化材を添加し、混練したものを固化させてブロック材を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−121167号公報
【特許文献2】特開2006−231208号公報
【特許文献3】特開2008−182898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンクリート材(ブロック)は比重が大きいため、安定性が要求される海洋ブロック等に適した資材であるが、一方で、軟弱地盤に設置するブロック等に適用した場合には、地盤に沈下してしまい、役目を果たさなくなるという問題がある。また、コンクリートの裏込め材などは、比重が小さいほど壁にかかる圧力が小さくなるため、施工体全体としての経済性が高くなることから、できるだけ軽いものが望まれる。
【0007】
その点、特許文献3の方法では、見かけ密度が1.45〜1.65g/cm程度の軽量なブロック材が製造できるとしている。しかし、骨材を全く使用していないため、長期的な耐久性や容積安定性はあまり期待できず、使用中に破損する可能性が高い。また、特許文献3の方法で得られるブロック材の強度は、平均で6N/mm程度であり、最大でも8N/mm程度に過ぎない。石材やコンクリート材の代替として利用するには、JIS−A−5006:1995(割ぐり石)に規定される準硬石以上の強度(9.8N/mm以上)が必要であるが、特許文献3で得られるブロック材の強度は、最も低品質の軟石のレベル(9.8N/mm未満)であり、土質材料の改善レベルに比べると相当程度高いものの、石材やコンクリート材の代替として様々な用途に利用するためには、十分な強度ではない。
【0008】
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、材料として浚渫土などの泥土を多量に使用できるとともに、準硬石以上の強度を有し且つコンクリートよりも軽量な人工石材を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、そのような人工石材を安定して製造することができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、浚渫土などの泥土の軽量性に着目しつつ、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、泥土と結合材に対して、さらに製鋼スラグを骨材として添加した混合材料を用いることにより、準硬石以上の強度を有し且つコンクリートよりも軽量な石材(水和硬化体)が得られることを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]泥土、結合材および粉粒状の製鋼スラグを含む混合材料の混練物を水和硬化させて得られた水和硬化体であって、単位容積当たりの質量が2000〜2200kg/mであることを特徴とする軽量人工石材。
【0010】
[2]上記[1]の軽量人工石材において、28日養生後の一軸圧縮強度が15N/mm以上であることを特徴とする軽量人工石材。
[3]上記[1]または[2]の軽量人工石材において、結合材が、高炉スラグ微粉末を80〜95質量%含有し、残部が普通ポルトランドセメント、石灰粉、消石灰、高炉セメントの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする軽量人工石材。
[4]上記[1]または[2]の軽量人工石材において、結合材が、高炉スラグ微粉末とフライアッシュを合計で80〜95質量%含有し、残部が普通ポルトランドセメント、石灰粉、消石灰、高炉セメントの中から選ばれる1種以上であり、フライアッシュが高炉スラグ微粉末の30質量%以下であることを特徴とする軽量人工石材。
【0011】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの軽量人工石材において、製鋼スラグが、遊離CaOを0.5質量%以上含有するスラグをエージングして粉化率2.5%以下としたスラグであることを特徴とする軽量人工石材。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの軽量人工石材を製造する方法であって、含水比が180〜250%である泥土、結合材および粉粒状の製鋼スラグを含み、泥土の割合が40〜55容積%、製鋼スラグの配合量が750kg/m以上である混合材料を混練し、この混練物を水和硬化させることを特徴とする軽量人工石材の製造方法。
[7]上記[6]の製造方法において、浚渫工事で発生した浚渫土であって、一旦浚渫土置場に貯泥された浚渫土を泥土として用いることを特徴とする軽量人工石材の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の人工石材は、材料として浚渫土などの泥土を多量に使用できるため、それらの有効利用を図ることができ、しかも準硬石以上の強度を有し且つコンクリートよりも軽量であるため、強度・耐久性と軽量性とが求められる石材用途に特に有用なものである。また、本発明の製造方法によれば、そのような人工石材を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】浚渫土と結合材(高炉スラグ微粉末+アルカリ刺激剤)と骨材である天然砕石および天然砂からなる混合材料で得られた水和硬化体について、混合材料中の浚渫土の割合と水和硬化体の単位容積当たりの質量との関係を示すグラフ
【図2】浚渫土、結合材(高炉スラグ微粉末+アルカリ刺激剤)および骨材からなる混合材料で得られた水和硬化体であって、骨材として天然砕石・天然砂と製鋼スラグをそれぞれ使用した水和硬化体の強度を示すグラフ
【図3】本発明において、浚渫土置場に貯泥された浚渫土を泥土として用いる場合の一実施形態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の人工石材は、泥土、結合材および粉粒状の製鋼スラグを含む混合材料の混練物を水和硬化させて得られた水和硬化体であり、単位容積当たりの質量を2000〜2200kg/mとしたものである。
本発明者らは、浚渫土の軽量性に着目するとともに、材料として浚渫土を多量に用いる水和硬化体(以下、「固化体」という場合がある)の強度を発現させる配合条件を検討した。まず、浚渫土に結合材として高炉スラグ微粉末+アルカリ刺激剤だけを添加した固化体を製造したが、比重が小さくしかも衝撃で割れ易い、脆い固化体しか得られなかった。特に浚渫土の割合が多くなると、全体が粉状物質の塊となり、脆くなるうえに磨耗等にも弱くなり、また、軽くすぎるために石材としての安定性等も期待できないことが判った。
【0015】
そこで、さらに骨材として天然砕石と天然砂を加えた固化体を製造した。しかし、この条件で単位容積当たりの質量が2000kg/m以上であって、強度が準硬石相当のものを作ろうとすると、混合材料中の浚渫土の割合を35容積%未満にまで低下させる必要性があることが判った。図1に、浚渫土と結合材(高炉スラグ微粉末+アルカリ刺激剤)と骨材である天然砕石および天然砂からなる混合材料により得られる固化体について、混合材料中の浚渫土の割合と固化体の単位容積当たりの質量との関係を示す。勿論、このような固化体(人工石材)も、それなりに資材としての有用性はあると言えるが、浚渫土の有効利用の観点から考えると浚渫土の使用量は十分ではない。
【0016】
以上の点を解決する方策をさらに検討し、比重が大きい骨材をいくつか検討し、さらに試作を重ねた。ところがその検討の中で、固化体の強度は、添加した高炉スラグ微粉末とアルカリ刺激剤から想定していた強度に比べると、やや低くなる傾向があることが判明した。すなわち、単純に比重が大きい材料(骨材)を配合しても、予想したほど強度が発現しないことが判った。そこで、この原因について検討を進めた結果、浚渫土にはアルカリ分を吸着する作用があるため、セメントや高炉スラグ微粉末の固化の基本反応であるポゾラン反応を阻害している可能性があることが判った。
【0017】
この点を解決すれば安定した強度と比重を有する固化体を製造できると考え、さらに検討を進めた結果、製鋼スラグを骨材として配合すればよいことが判った。図2に、骨材として天然砕石・天然砂と製鋼スラグをそれぞれ使用して製造した固化体の強度を示す。この製造試験では、混合材料は浚渫土の割合を50容積%、骨材の配合量を25容積%(天然砕石・天然砂:約660kg/m、製鋼スラグ:約800kg/m)とし、結合材としては高炉スラグ微粉末とともにアルカリ刺激剤(普通ポルトランドセメント)を用いた。また、製鋼スラグとしては、転炉脱炭スラグを蒸気エージングして安定化させたものを用いた。図2によれば、骨材に製鋼スラグを用いた固化体は、骨材に天然砕石・天然砂を用いた固化体に較べて高い強度が発現している。この理由は必ずしも明確ではないが、次のように考えられる。すなわち、製鋼スラグは多量のCa分を含有する酸化物であるため、水と接触したときにCaイオン、OHイオンを供給する。これが、上述したような浚渫土による反応阻害要因を緩和する結果、高い強度の固化体が得られるものと考えられる。
したがって、泥土に対して粉粒状の製鋼スラグと結合材を配合した混合材料を混練して水和硬化させることにより、泥土を多量に使用しつつ、適度な比重を有し且つ高い強度を有する水和硬化体を得ることができる。
【0018】
人工石材の単位容積当たりの質量が2000kg/m未満では、JIS−A−5006:1995に記載された準硬石の目安となる比重を下回る。これでは、軟弱地盤等に適用するのには適するものの、波浪によって流され易くなるなど、本来担うべき役割に対する安定性が低下することになる。一方、2200kg/mを超えると、準硬石の平均的な重量レベルとなり、軽量が望まれる用途に適用する場合において、通常の石材を使用する場合との有意差がなくなる。また、浚渫土の十分な使用量の確保も難しくなる。このため単位容積当たりの質量を2000〜2200kg/mとする。
また、人工石材の強度は、JIS−A−5006:1995で規定する準硬石相当以上であること、すなわち28日養生後の一軸圧縮強度で9.8N/mm以上であればよい。また、天然石材は強度が安定しているが、固化体の場合には配合条件によってバラツキなどが発生するため、28日養生後の一軸圧縮強度で15N/mm以上であることがより好ましい。
【0019】
本発明で用いられる泥土は、浚渫土が代表的なものであるが、それ以外に、例えば、掘削工事から生じる泥、建設汚泥などが挙げられる。ここで、泥土とは、一般的には山積みができず、その上を人が歩けないような流動性を示すものを言う。おおよその強度としては、JIS−A−1228:2009(締固めた土のコーン指数試験方法)で規定されるコーン指数が200N/mm以下のものである。
浚渫土に代表される泥土は、シルト分が多いほどそのイオン(アルカリ分)吸着効果が大きくなり、従来技術では適正な強度の固化体が得られにくくなるため、本発明が特に有用である。具体的には、本発明は、粒径0.075mm以下の土粒子(シルト分)を70容積%以上含有するような泥土を対象とする場合に、特に有用であると言える。
後述するように、泥土は混合材料中で40容積%以上の割合で使用することができる。
【0020】
結合材としては、高炉スラグ微粉末、アルカリ刺激剤を添加した高炉スラグ微粉末、高炉セメント、普通ポルトランドセメントなどが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
また、天然資材をできるだけ使用せずに環境負荷を軽減するという観点、さらには固化体の強度確保および製造コストの観点からは、結合材として、高炉スラグ微粉末にアルカリ刺激剤を添加したものが望ましい。結合材として、高炉スラグ微粉末とともにアルカリ刺激剤を用いることにより、アルカリ環境を作り出すことで、高炉スラグ微粉末の水硬性を発揮させることができる。つまり、高炉スラグ微粉末の水和反応を促進し、固化体の強度を確保することができる。また、普通ポルトランドセメントを結合材に使用した場合には、固化体を水に浸漬したときのpH上昇が、高炉スラグ微粉末とともにアルカリ刺激剤を使用した場合に較べて大きくなる。したがって、周辺環境への負荷を考えた場合には、高炉スラグ微粉末とともにアルカリ刺激剤を用いることが適している。
【0021】
アルカリ刺激剤としては、例えば、石灰粉、消石灰、普通ポルトランドセメント、高炉セメントなどの1種以上を用いることができる。この場合、高炉スラグ微粉末を80〜95質量%含有し、残部が石灰粉、消石灰、普通ポルトランドセメント、高炉セメントの中から選ばれる1種以上であることが好ましい。結合材として高炉スラグ微粉末とともにアルカリ刺激剤を用いる場合、高炉スラグ微粉末の割合が80質量%以上であれば、余剰のアルカリ成分が固化体中に残存することがないため、固化体を海中などで使用する際に、海水環境に対するアルカリの負荷が小さい。また、経済的にも有利となる。一方、高炉スラグ微粉末の割合が95質量%を超えても混練・固化させることは可能である。しかし、95質量%以下であれば安定して分散させることが容易であること、浚渫土のアルカリ抑制効果のために刺激剤の効果が小さくなることなどから、高炉スラグ微粉末を添加する効果が高く、多様な原料を使用する必要がなく、設備負荷とならないため、経済的な妥当性を有する。
【0022】
骨材である製鋼スラグの種類は、特に限定するものではないが、溶銑予備処理スラグ(脱燐スラグ、脱珪スラグ、脱硫スラグなど)、転炉脱炭スラグ、電気炉スラグなどが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。製鋼スラグは、最大粒径が25mm以下の粒度のものが好ましい。粒度がこれよりも大きいものも使用可能であるが、製鋼スラグは遊離CaOを含んでおり、蒸気エージング等で安定化処理をした場合においても、スラグ粒径が大きい場合には遊離CaOが内部に残存する可能性が高くなり、長期的に使用する際に膨張して欠陥要因となる可能性がある。また、細かい粉ばかりでは、骨材としての役割、すなわち容積安定性や耐久性が低下してしまうため、粒径0.15mm以上の粒子の割合が製鋼スラグ全体の80質量%以上であることがより望ましい。
【0023】
また、製鋼スラグの組成にも特別な制限はない。但し、塩基度(CaO/SiO)が高い方が強度を高める効果が大きくなるため望ましいが、高すぎると後述するように遊離CaOの残存量が大きくなりやすい。また、蒸気エージング等によって事前に製鋼スラグの安定化処理を施せば基本的な問題はなくなるものの、高塩基度すぎる場合には、エージング処理で粉状になる傾向となるため、骨材としての役割を担う粒度を確保することが難しい。さらに、遊離CaO量の内在量も増えるため、エージング時間を通常より長くする必要が生じたり、内部に遊離CaOが残存して体積安定性のバラツキが大きくなる場合もあるため塩基度(CaO/SiO)は2.0〜5.0程度が好ましい。
【0024】
また、製鋼プロセスで生成したスラグが遊離CaOを0.5質量%以上含有するものである場合には、その製鋼スラグをエージングして粉化率2.5%以下とした上で、本発明の材料(骨材)として用いることが好ましい。塩基度が比較的高いスラグについては、遊離CaOが残留することが多い。遊離CaOは、水と接触することによって速やかにCa(OH)となり、イオン化して反応に関与し易いというメリットがあるが、一方で、スラグ粒子の内部に残存した遊離CaOは、浸透してきた水と接触した場合に膨張し、粒子内部で割れが起こり、固化体の内部に欠陥が生じる恐れがある。そのため、遊離CaOを0.5質量%以上含有するような製鋼スラグについては、事前にエージング(通常、蒸気エージングなど)して遊離CaOをCa(OH)に水和させておけば、骨材として使用した際に体積変化が生じないため好ましい。エージングはスラグの粉化率が2.5%以下となる程度まで行えばよい。
【0025】
ここで、泥土の固体粒子を構成する鉱物相は、浚渫地域や発生履歴によって全く異なるため、浚渫土の種類によっては製鋼スラグから供給されるCa分が過剰となる場合があり、混練物の反応性の不安定化や硬化体に接触した水のpHの上昇が起こるケースがある。その場合、製鋼スラグの配合量を少なくしてCa分の供給を減少させることも考えられるが、その場合には硬化体の重量が軽くなり、体積安定性も低下してしまうため、このような場合には、結合材として、高炉スラグ微粉末に加えてフライアッシュを配合することが好ましい。
【0026】
フライアッシュは、非晶質のSiO,Alを主体としているため、過剰のアルカリ分が発生した場合には、結晶質の材料に較べて速やかにポゾラン反応が起こることが期待できる。但し、フライアッシュを過剰に配合すると、結合材中のCa量が少なくなり過ぎ、本来の浚渫土、製鋼スラグ、結合材の反応の安定性が損なわれるおそれがある。このため、フライアッシュを配合する場合、その配合量は高炉スラグ微粉末に対して30質量%以下とすることが好ましい。
したがって、結合材として高炉スラグ微粉末とともにアルカリ刺激剤を用いる場合には、さきに述べたと同様の理由から、高炉スラグ微粉末とフライアッシュの合計含有量を80〜95質量%とし、残部が普通ポルトランドセメント、石灰粉、消石灰、高炉セメントの中から選ばれる1種以上からなり、且つフライアッシュを高炉スラグ微粉末の30質量%以下とすることが好ましい。
【0027】
以上のように本発明の人工石材は、浚渫土を多量に使用することができるとともに、産業副産物である製鋼スラグも有効利用することができ、しかも準硬石相当以上の高い強度を有し且つコンクリートよりも軽量であるという性能を有する。このため軟弱地盤等に設置する石材として非常に有用なものである。
【0028】
次に、本発明の人工石材の製造方法について説明する。
本発明の人工石材の製造方法では、泥土、結合材および骨材である製鋼スラグを配合し、必要に応じて水を添加した混合材料を混練し、この混練物を水和硬化させて人工石材を得る。
本発明は、浚渫土に代表される泥土を有効利用することが目的であるので、混合材料中の泥土の割合が可能な限り多いことが好ましく、このため混合材料中の泥土の割合(元々泥土に含まれている水分を含む割合)は40容積%以上が好ましい。一方、泥土の割合が60容積%以下であれば、単位容積当たりの質量を2000kg/m以上とすることが容易となり、また、骨材の比率が低くならないため、固化体が脆くならず、十分な耐久性の確保が容易になる。このため混合材料中の泥土の割合は40〜60容積%が好ましい。
【0029】
また、より好ましい製造条件では、含水比が180〜250%である泥土、結合材および粉粒状の製鋼スラグを含み、泥土の割合が40〜60容積%、製鋼スラグの配合量が750kg/m以上である混合材料を混練し、この混練物を水和硬化させる。ここで、浚渫土の含水比とは、浚渫土に含まれる水分量をA(質量%)、固形分量をB(質量%)としたとき、含水比=(A/B)×100で求められる。
このような好ましい製造条件によれば、単位容積当たりの質量が2000〜2200kg/m、28日養生後の一軸圧縮強度が15N/mm以上であり、しかも特性のバラツキが少ない水和硬化体を安定して製造することができる。
【0030】
浚渫土の割合が50容積%、製鋼スラグの配合量が1000kg/mである混合材料を混練し、この混練物を水和硬化させて固化体を得る際に、異なる含水比の浚渫土を用い、混合材料のスランプと固化体の特性を調べた。その結果を表1に示す。なお、固化体の強度は、実施例と同じ方法で測定した28日間養生後の一軸圧縮強度である。表1によれば、浚渫土の含水比が180%を下回ると、固化体の特性は十分であるものの、混合材料に流動性がないため(スランプがでない)工業的な生産は困難であり、製造できたとしても特性のバラツキが大きくなる。一方、浚渫土の含水比が240%では強度が減少し始め、260%では強度が大きく低下している。したがって、浚渫土の含水比は180〜250%が望ましく、240%以下がより望ましい。
【0031】
【表1】

【0032】
また、製鋼スラグは、上述したようなCaイオン、OHイオンを供給する効果の観点から、また、固化体の容積安定性を確保する上でも、混合材料中に一定量以上配合する必要があり、特にこれらの観点から、750kg/m以上配合することが好ましく、1000kg/m以上がより好ましい。但し、配合量が1450kg/m以下であれば、固化体の単位容積質量が過剰にならず、また多量に水を使用して軽量化する必要もなく、十分な強度が得られるので、配合量は1450kg/m以下が好ましい。
【0033】
浚渫土などの泥土は、必要に応じて、篩などにより異物を除去する。混合材料の混練手段としては、例えば、通常のフレッシュコンクリート用の混練設備を利用してもよいが、ショベルなどの土木工事用の重機を用いて屋外などのヤードで行ってもよい。
混練物を固化させるには、例えば、適当な型枠に流し込んで固化・養生(水和硬化)させてもよいし、屋外などのヤードに層状に打設して固化・養生(水和硬化)させてもよい。特に、石材を大量に製造する場合には、ヤードに層状に打設することが好ましい。
固化・養生の期間は、目標とする圧縮強度が得られるまでであり、一般には7日程度以上である。
【0034】
得られた石材は、必要に応じて適当な大きさに破砕処理する。この破砕処理は、破砕機を用いて行ってもよいし、また、上記のように混練物をヤードに層状に打設した場合には、ヤードの固化体をブレーカーで粗破砕し、次いで、破砕機で破砕処理してもよい。また、通常は、破砕処理された固化体(塊状物)を篩で分級し、所定のサイズの塊状物を得る。例えば、潜堤材などとして用いる場合には、150〜500mm程度の大きさの塊状物を得る。
【0035】
浚渫工事で発生する浚渫土は、浚渫場所などによって含水比にバラツキがある。また、浚渫工事を行う付近において水産物(海苔、牡蠣など)の養殖などを行っている場合には、浚渫工事による海水の汚濁が水産物に影響を与える恐れがあるので、浚渫工事は年間を通じて行える訳ではなく、工事時期に制限がある(季節性がある)。このような状況において本発明を実施する場合、浚渫工事で発生した浚渫土を、一旦浚渫土置場に貯泥し、この浚渫土置場に貯泥された浚渫土を用いて固化体を製造することが好ましい。これにより、(i)浚渫場所などによって浚渫土の含水比にバラツキある場合でも、一旦浚渫土置場に貯泥することにより、浚渫土の含水比を平均化することができる、(ii)浚渫の工事時期に制限があり、年間で浚渫土を採取できない時期があるような場合でも、浚渫土置場に貯泥しておくことにより、浚渫土を固化体製造プロセスに安定供給することができる、(iii)浚渫土を浚渫土置場に貯泥することにより、含水比の評価、管理・調整を容易に行うことができる、などの効果が得られる。
【0036】
図3は、浚渫土置場を利用した本発明の一実施形態を示すものであり、浚渫工事で発生した浚渫土は、一旦浚渫土置場に貯泥される。この浚渫土置場の形態や構造は任意であるが、例えば、ヤードに土砂やスラグなどを積み上げて環状の土手を作り、その内側に浚渫土を貯泥するようなものでもよい。浚渫工事で発生した浚渫土は、その含水比やその他の性状を問わず、浚渫土置場に運び込まれて貯泥される。この浚渫土置場から、固化体(人工石材)製造プロセスに泥土として適宜供給され、さきに述べた製造方法により軽量人工石材が得られる。
【実施例】
【0037】
表2および表3に示すような配合条件で材料を配合して混練(0.75m練りのプラントで5分間混合し、所定時間経過後に排出)し、この混合材料の混練物を直径100mm×高さ200mmのサイズのモールドに成型して固化させ、固化体(人工石材)を製造した。浚渫土は、瀬戸内海の水底から採取したシルト分が90容積%のものを用い、必要に応じて水を加えて水分調整を行った。また、骨材である製鋼スラグとしては、遊離CaOを3.5質量%含有する転炉スラグに蒸気エージングを施して粉化率を1.5%としたもの(粒径0−25mm;粒径0.15mm以上が80質量%以上)であって、表乾密度の異なる製鋼スラグAと製鋼スラグBを用いた。28日間養生後の固化体の一軸圧縮強度を、圧縮試験(JIS−A−1108:2006)により測定した。その結果を、固化体の単位容積質量等とともに表2および表3に示す。
【0038】
表2および表3によれば、本発明例の固化体は、適度な単位容積質量(2000〜2200kg/m)と高い強度が得られている。これに対してNo.10〜14、No.33の比較例の固化体は、浚渫土の含水比が低すぎる、製鋼スラグの使用量が多すぎる、浚渫土の割合が多すぎる、製鋼スラグを使用していないなどの理由から、
単位容積質量が不適である。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
泥土、結合材および粉粒状の製鋼スラグを含む混合材料の混練物を水和硬化させて得られた水和硬化体であって、単位容積当たりの質量が2000〜2200kg/mであることを特徴とする軽量人工石材。
【請求項2】
28日養生後の一軸圧縮強度が15N/mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の軽量人工石材。
【請求項3】
結合材が、高炉スラグ微粉末を80〜95質量%含有し、残部が普通ポルトランドセメント、石灰粉、消石灰、高炉セメントの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の軽量人工石材。
【請求項4】
結合材が、高炉スラグ微粉末とフライアッシュを合計で80〜95質量%含有し、残部が普通ポルトランドセメント、石灰粉、消石灰、高炉セメントの中から選ばれる1種以上であり、フライアッシュが高炉スラグ微粉末の30質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の軽量人工石材。
【請求項5】
製鋼スラグが、遊離CaOを0.5質量%以上含有するスラグをエージングして粉化率2.5%以下としたスラグであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の軽量人工石材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の軽量人工石材を製造する方法であって、
含水比が180〜250%である泥土、結合材および粉粒状の製鋼スラグを含み、泥土の割合が40〜55容積%、製鋼スラグの配合量が750kg/m以上である混合材料を混練し、この混練物を水和硬化させることを特徴とする軽量人工石材の製造方法。
【請求項7】
浚渫工事で発生した浚渫土であって、一旦浚渫土置場に貯泥された浚渫土を泥土として用いることを特徴とする請求項6に記載の軽量人工石材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−12287(P2012−12287A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93826(P2011−93826)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】