説明

人工透析用水の供給装置

【課題】人工透析用水を循環供給する場合において、細菌の発生を防止でき、殺菌洗浄も容易であり、採水量の変動があっても必要な採水量を安定供給することができる、人工透析用水の供給装置を提供する。
【解決手段】RO処理装置10と、RO水を供給するための送水管21と、送水管21から供給されたRO水を装置10に送る回収管22と、送水管21と回収管22に両端が接続されたRO水の取出管31、32、33とを有している。取出管31、32、33の内径は、送水管21と回収管22の内径よりも小さくなるように設定されており、取出管31、32、33は両端側にバルブを有し、2つのバルブ間にRO水の採水口を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析用水を安定に循環供給するための人工透析用水の供給装置と、前記装置を用いた人工透析液の供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3には、半導体の製造工程等において洗浄水として使用するための超純水を循環供給する装置が記載されている。いずれの発明の装置も、細菌の発生を防止するとの技術的思想は開示されている。
【0003】
しかし、いずれの発明の装置も、異なる各採水ポイントで異なる量の超純水を採水するときであっても、各採水ポイントにおいて必要量を採水できるように安定供給することについては全く記載されていない。
【0004】
さらに、超純水の循環ラインから各洗浄装置を繋ぐ採水ラインは、いずれの発明も、開閉バルブ等を設置するために長めの管が使用されている。このため、装置内の循環ラインを殺菌洗浄するときには、各採水ラインにおいて洗浄液が滞留し易くなって殺菌洗浄がし難くなり、十分な殺菌洗浄ができないことが考えられる。
【0005】
特許文献1の第1図には、往路管405、406と復路管409の間に接続路管407、408が設けられており、接続路管407の内径が20mmで、接続路管408の内径が15mmであることが記載されている。しかし、第1図から明らかなとおり、採水ポイントは接続路管407に接続されており、管径の大小と安定量を採水することとの技術的関連性も記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2661946号公報
【特許文献2】特開平1−307487号公報
【特許文献3】特開平10−22250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、人工透析用水を循環供給する場合において、細菌の発生を防止でき、殺菌洗浄も容易であり、採水量の変動があっても必要な採水量を安定供給することができる、人工透析用水の供給装置を提供することを課題とする。
【0008】
また本発明は、上記の人工透析用水の供給装置を用いた人工透析液の供給装置を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題の解決手段として、
RO水を供給するRO処理装置と、
前記RO処理装置からRO水を供給するための送水管と、
前記送水管から供給されたRO水を回収して前記RO処理装置に送る回収管と、
前記送水管の2以上の箇所に一端側が接続され、前記回収管の2以上の箇所に他端側が接続された2本以上のRO水の取出管とを有しており、
前記取出管の内径が、前記送水管と前記回収管の内径よりも小さくなるように設定されており、
前記取出管が、前記一端側に取出バルブを有し、前記他端側に回収バルブを有し、前記取出バルブと前記回収バルブの間にRO水の採水口を有している、人工透析用水の供給装置と、その洗浄方法を提供する。
【0010】
本発明において、RO処理装置は「逆浸透膜処理装置」の略であり、RO水は、「逆浸透膜処理装置で処理された水」の略であり、RO水が人工透析用水となる。
【0011】
本発明の人工透析用水の供給装置では、RO水の取出管の両端側に取出バルブと回収バルブを設けており、取出管の途中にRO水の採水口を設けることにより、RO水の取出管内におけるRO水の滞留が防止されるので、細菌の発生も抑制される。さらに装置内に液体が滞留し難くなっているので、薬液や熱水等の洗浄水を使用した洗浄方法を適用した場合における殺菌洗浄効果も高い。
【0012】
また本発明の人工透析用水の供給装置では、RO水の取出管の内径が送水管と回収管の内径よりも小さくなるように設定されているため、RO水の取出管ごとにRO水の採水量が増減する場合でも、各取出管に対して必要量を安定供給できる。
【0013】
また本発明は、他の課題の解決手段として、
請求項1〜4のいずれか1項記載の人工透析用水の供給装置を人工透析装置に接続した人工透析液の供給装置であり、
前記取出バルブと前記回収バルブの間に設けられたRO水の採水口に人工透析装置が接続されたものである、人工透析液の供給装置を提供する。
【0014】
さらに本発明は、他の課題の解決手段として、
請求項1〜4のいずれか1項記載の人工透析用水の供給装置を人工透析装置に接続した人工透析液の供給装置であり、
前記取出バルブと前記回収バルブの間に設けられたRO水の採水口に人工透析装置が接続されており、
さらに送水管と回収管に人工透析液の調製装置が接続され、前記人工透析液の調製装置と接続された複数の透析監視装置を備えている、人工透析液の供給装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の人工透析用水の供給装置及び人工透析液の供給装置は、RO水や透析液が滞留することがないので、細菌の発生が抑制されると共に、薬液や熱水等による殺菌が容易であり、医学的観点からの高い安全性を維持することができる。
【0016】
さらに本発明の人工透析用水の供給装置及び人工透析液の供給装置は、本発明の供給装置により人工透析用水が供給される人工透析装置が複数ある場合で、各人工透析装置における採水量が異なる場合であっても、必要量を安定供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における人工透析用水の供給装置及び人工透析液の供給装置の一実施形態を示す概念図。
【図2】本発明における人工透析用水の供給装置及び人工透析液の供給装置の他実施形態を示す概念図。
【図3】本発明における人工透析用水の供給装置及び人工透析液の供給装置の他実施形態を示す概念図。
【図4】図1の供給装置の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)図1に示す人工透析用水の供給装置と、それを用いた人工透析液の供給装置
図1により、本発明の人工透析用水の供給装置(人工透析液の供給装置)の一実施形態を説明する。図1は、本発明の人工透析用水の供給装置(人工透析液の供給装置)の概念図である。
【0019】
RO処理装置10の液出口には、RO水を供給するための送水管21が接続されており、RO処理装置10の液戻り口には、回収されたRO水を送るための回収管22が接続されている。図1では、送水管21と回収管22が平行配置されている。送水管21と回収管22は、ポリ塩化ビニル等のプラスチック製、あるいは薬液洗浄や熱水洗浄が可能なフッ素樹脂やシリコーン樹脂材料からなるもの、ステンレス等の金属製のものが使用される。
【0020】
RO処理装置10は、逆浸透膜モジュール(図示せず)と、逆浸透膜により処理されたRO水を貯水するためのタンク11、ポンプ(図中のP)とを備えている。
【0021】
RO処理装置10近傍の回収管22には、圧力調整バルブ45が取り付けられている。送水管21と回収管22は、それらの管内径が同一であることが好ましい。
【0022】
送水管21の3カ所には、RO水の取出管31、32、33の一端側開口部が接続され、回収管22の3カ所には、RO水の取出管31、32、33の他端側開口部が接続されている。
【0023】
取出管31、32、33は、プラスチックやゴム等の可撓性のある材料や金属製の材料などから選択されるが、薬液洗浄や熱水洗浄ができるようにすることを考慮すると、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等からなるもの、ステンレス等の金属製からなるものが好ましい。さらに、送水管21と回収管22に接続される部分は金属製の接続手段を有していてもよい。取出管31、32、33は、ネジや圧入(必要に応じてシール材を使用してもよい)等の手段により、送水管21と回収管22に対して着脱自在に取り付けられていることが好ましい。また、アダプタを介して、着脱自在に取り付けられていてもよい。
【0024】
取出管31の送水管21側には取出バルブ41aが設けられており、取出バルブ41aを開閉することで、送水管21から取出管31への液体の出入りを制御することができる。
【0025】
取出管31の回収管22側には回収バルブ41bが設けられており、回収バルブ41bを開閉することで、取出管31から回収管22への液体の出入りを制御することができる。
【0026】
取出管32にも、取出管31と同様に、取出バルブ42aと回収バルブ42bが設けられており、取出管33にも、取出管31と同様に、取出バルブ43aと回収バルブ43bが設けられている。
【0027】
取出管31、32、33の内径は、それぞれが同一でもよいし、異なっていてもよいが、取出管31、32、33の内径は、送水管21と回収管22の内径よりも小さくなるように設定されている。取出管31、32、33の内径と、送水管21と回収管22の内径(送水管21の内径=回収管22の内径)との比率は限定されるものではないが、本発明の課題を解決する観点からは、取出管31、32、33の内径(内径が異なる場合は最大径)が、送水管21と回収管22の内径よりも少なくとも3〜10%小さいことが好ましい。
【0028】
取出管31、32、33の途中(例えば中間位置であるが、これに限定されない)には、それぞれ金属製の三つ又管を使用した採水口31a、32a、33aが設けられている。
【0029】
採水口31a、32a、33aを形成する部分の長さは、図4に示す部分の長さ(L)であり、この長さ(L)は10cm未満で充分であり、好ましくは1〜5cmの長さである。これらの採水口31a、32a、33aを形成する管には、バルブは全く設置されていない。
【0030】
図1では、採水口31a、32a、33aは、それぞれ人工透析装置11、12、13に接続されている。人工透析装置11、12、13を設置したときは、前記装置内に設けたバルブにより、採水口31a、32a、33aからのRO水の流入を制御できる。また、人工透析装置11、12、13の人工透析液の供給能力は、同一であっても、異なっていてもよく、例えば、人工透析装置11により10人の患者に透析を行い、人工透析装置12により5人の患者に透析を行い、人工透析装置13により1人の患者に透析を行うような場合であってもよい。
【0031】
取出管31、32、33の内径の大きさは、採水口31a、32a、33aからのRO水の採水量(人工透析装置11〜13へのRO水の供給量)に応じて適宜調整することができる。
【0032】
RO水の採水量が採水口31a>採水口32a>採水口33aの関係であれば、取出管31の内径>取出管32の内径>取出管33の内径の関係にする。また、RO水の採水量が同量であれば、取出管31の内径=取出管32の内径=取出管33の内径の関係にする。その他、RO水の採水量に応じて、適宜、取出管31の内径=取出管32の内径>取出管33の内径のような関係にすることもできる。
【0033】
取出管31、32、33が、送水管21と回収管22に対してアダプタを介して着脱自在に接続されている場合には、RO水の採水量の増減に応じて、異なる内径の取出管に交換することができるので好ましい。
【0034】
次に、図1に示す人工透析用水の供給装置の動作(運転方法)について説明する。
【0035】
RO処理装置10にて製造したRO水は、一旦タンク11に貯水され、そこからポンプを作動させて、送水管21に流す。
【0036】
人工透析装置11、12、13の全てが使用中であれば、取出管31、32、33の取出バルブ41a、42a、43aと回収バルブ41b、42b、43bを開けておくが、一部不使用であれば、その取出管の取出バルブと回収バルブは閉じていてもよいし、開放していてもよい。
【0037】
送水管21から供給されたRO水は、取出バルブ41a、42a、43aと回収バルブ41b、42b、43bの開放により、取出管31、32、33内に流入し、採水口31a、32a、33aから、人工透析装置11、12、13における必要量が採水される。なお、患者に供給する人工透析液は、各人工透析装置11、12、13において調製される。
【0038】
このとき、送水管21及び回収管22の内径よりも取出管31、32、33の内径が小さくなるように設定されているので、送水管21と取出管31、32、33との間に圧力差が生じる。このため、人工透析装置11、12、13におけるRO水の使用量が異なる場合(採水口31a、32a、33aからの採水量が異なる場合)であっても、各装置に必要量のRO水を安定に供給することができる。なお、運転時における装置全体のRO水を流す圧力は、圧力調整バルブ45により調節する。
【0039】
採水されなかった分のRO水は、取出管31、32、33から回収管22に入り、貯水タンク15に送られて、循環再利用される。RO水の循環再利用のために、回収管22から貯水タンク15に戻る回収管22の途中に微粒子等の除去のために限外濾過膜装置を設けてもよい。
【0040】
本発明の装置では、このようにしてRO水を人工透析用水として循環させるものであるが、本発明の装置では、採水口31a、32a、33aを形成する管の長さが非常に短いので、長時間使用を継続しても、RO水が滞留する箇所がなく、細菌の発生が抑制される。
【0041】
本発明の装置では、人工透析用水を供給するものであるため、医学的観点からの安全性を維持するため、使用終了後又は使用開始前において、装置内を殺菌洗浄することが望ましい。装置内の殺菌洗浄方法としては、タンク11内に薬液(例えば、低濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液、過酢酸水溶液等)を入れ、それを循環させる方法、タンク11にヒーターを付設して熱水を生成させ、それを循環させる方法、あるいは前記2つの方法を組み合わせる方法等を適用することができる。
【0042】
次に、図1に示す供給装置において、薬液を使用した殺菌洗浄方法を説明する。例えば貯水タンク11内に薬液(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)を添加する場合、貯水タンク11内の次亜塩素酸ナトリウム濃度は1〜1000ppmの範囲が好ましく、30〜500ppmがより好ましい。なお、貯水タンク11とは別に設けた薬液タンクを使用してもよいし、その場合には、RO水に代えて、水道水等で希釈してもよい。また、薬液を使用する場合は、タンクを使用しないで、送水管21又は回収管22に直接薬液を注入するようにしてもよい。
【0043】
次に、全てのバルブを開いた状態にてポンプを作動させて、貯水タンク11、送水管21、取出管31〜33、回収管22、貯水タンク11の循環ラインにて循環運転する。なお、人工透析装置11〜13は各装置内に設けられたバルブで薬液の流入を制御する。
【0044】
この薬液による循環運転を5〜90分間程度行うことにより、医学的観点から十分な程度の殺菌洗浄ができる。殺菌洗浄後、貯水タンク11内の薬液をRO水に入れ替え、今度はRO水を循環運転して、供給装置内に残る薬液を洗浄除去する。
【0045】
本発明の装置では、薬液や熱水で循環洗浄する場合においても、洗浄水が滞留する部分がないため、上記した特許文献1〜3の発明と比べると高いレベルでの殺菌洗浄処理ができるようになり、医学的観点からの装置自体の安全性を高めることができる。
【0046】
(2)図2に示す人工透析用水の供給装置と、それを用いた人工透析液の供給装置
図2により、本発明の人工透析用水の供給装置(人工透析液の供給装置)の他実施形態を説明する。図2は、本発明の人工透析用水の供給装置(人工透析液の供給装置)の概念図である。
【0047】
RO処理装置110の液出口には、RO水を供給するための送水管121が接続されており、RO処理装置110の液戻り口には、RO水を回収するための回収管122が接続されている。図2では、外側に送水管121が配置され、内側に回収管122が配置されている。送水管121と回収管122は、ポリ塩化ビニル等のプラスチック製、あるいは薬液洗浄や熱水洗浄が可能なフッ素樹脂やシリコーン樹脂材料からなるもの、ステンレス等の金属製のものが使用される。
【0048】
RO処理装置110近傍の回収管122には、圧力調整バルブ145が取り付けられている。送水管121と回収管122は、それらの管内径が同一であることが好ましい。
【0049】
送水管121の4カ所には、RO水の取出管131、132、133、134の一端側開口部が接続され、回収管122の4カ所には、RO水の取出管131、132、133、134の他端側開口部が接続されている。
【0050】
取出管131、132、133は、プラスチックやゴム等の可撓性のある材料や金属製の材料などから選択されるが、薬液洗浄や熱水洗浄ができるようにすることを考慮すると、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等からなるもの、ステンレス等の金属製からなるものが好ましい。さらに、送水管121と回収管122に接続される部分は金属製の接続手段を有していてもよい。取出管131〜134は、ネジや圧入(必要に応じてシール材を使用してもよい)等の手段により、送水管121と回収管122に対して着脱自在に取り付けられていることが好ましい。また、アダプタを介して、着脱自在に取り付けられていてもよい。
【0051】
取出管131の送水管121側には取出バルブ141aが設けられており、取出バルブ141aを開閉することで、送水管121から取出管131へのRO水の出入りを制御することができる。
【0052】
取出管131の回収管122側には回収バルブ141bが設けられており、回収バルブ141bを開閉することで、取出管131から回収管122へのRO水の出入りを制御することができる。
【0053】
取出管132にも、取出管131と同様に、取出バルブ142aと回収バルブ142bが設けられており、取出管133にも、取出管131と同様に、取出バルブ143aと回収バルブ143bが設けられており、取出管134にも、取出管131と同様に、取出バルブ144aと回収バルブ144bが設けられている。
【0054】
RO水の取出管131〜134の内径は、それぞれが同一でもよいし、異なっていてもよいが、取出管131〜134の内径は、送水管121と回収管122の内径よりも小さくなるように設定されている。
【0055】
取出管131〜134の途中(例えば中間位置であるが、これに限定されない)には、それぞれ金属製の三つ又管を使用したからなるRO水の採水口131a、132a、133a、134aが設けられている。採水口131a〜134aを形成する部分の長さは10cm未満で充分であり、好ましくは1〜5cmの長さである。これらの採水口131a〜134aを形成する管には、バルブは全く設置されていない。
【0056】
図2では、採水口131a〜134aは、それぞれ人工透析装置111、112、113、114に接続されている。人工透析装置111〜114を設置したときは、前記装置内に設けたバルブにより、採水口131a〜134aからのRO水の流入を制御する。また、人工透析装置111〜114の供給能力は、同一であっても、異なっていてもよく、例えば、人工透析装置111により10人の患者に透析を行い、人工透析装置112により5人の患者に透析を行い、人工透析装置113、114により1人の患者に透析を行うような場合であってもよい。
【0057】
取出管131〜134の内径は、採水口131a〜134aからのRO水の採水量(人工透析装置111〜114へのRO水の供給量)に応じて適宜調整することができる。
【0058】
RO水の採水量が採水口131a>採水口132a>採水口133a>採水口134aの関係であれば、取出管131の内径>取出管132の内径>取出管133の内径>取出管134の内径の関係にする。また、採水量が同量であれば、取出管131の内径=取出管132の内径=取出管133の内径=取出管134の内径の関係にする。その他、RO水の採水量に応じて、適宜、取出管131の内径>取出管132の内径>取出管133の内径=取出管134の内径のような関係にすることもできる。
【0059】
取出管131〜134が、送水管121と回収管122に対してアダプタを介して着脱自在に接続されている場合には、取出量の増減に応じて、異なる内径の液取出管に交換することができるので好ましい。
【0060】
次に、図2に示す人工透析用水の供給装置の動作(運転方法)について説明する。RO処理装置110にて製造したRO水を送水管121に流す。このとき、人工透析装置111〜114の全てが使用中であれば、取出管131〜134の取出バルブ141a〜144aと回収バルブ141b〜144bを開けておくが、一部不使用であれば、その取出管の取出バルブと回収バルブは閉じておいてもよいし、開放していてもよい。
【0061】
送水管121及び回収管122の内径よりも取出管131〜134の内径が小さくなるように設定されているので、送水管121と取出管131〜134との間に圧力差が生じる。このため、人工透析装置111〜114におけるRO水の使用量が異なる場合(採水口131a〜134aからの採水量が異なる場合)であっても、各装置にRO水を安定に供給することができる。なお、運転時における装置全体のRO水を流す圧力は、圧力調整バルブ145により調節する。
【0062】
図2に示す装置においても、図1に示す装置と同様に、細菌の発生抑制と殺菌洗浄性が優れているとの効果を得ることができる。
【0063】
(3)図3に示す人工透析用水の供給装置と、それを用いた人工透析液の供給装置
図3により、本発明の人工透析用水の供給装置(人工透析液の供給装置)の他実施形態を説明する。図3は、本発明の人工透析用水の供給装置(人工透析液の供給装置)のより具体的な設置状態を示す概念図である。
【0064】
RO処理装置10は、貯水タンク15、RO膜モジュール16、原水タンク17、ポンプ(図中のP)とを備えている。原水タンク17は、外部の水源(水道水等)と接続されている。
【0065】
図3では、個人用透析装置11、12、13とは別に、多人数用透析装置にも供給できるようになっている。
【0066】
個人用の人工透析装置11、12、13の全てが使用中であれば、取出管31、32、33の取出バルブ41a、42a、43aと回収バルブ41b、42b、43bを開けておくが、一部不使用であれば、その取出管の取出バルブと回収バルブは閉じておくが、開放していてもよい。
【0067】
送水管21から供給されたRO水は、取出バルブ41a、42a、43aと回収バルブ41b、42b、43bの開放により、取出管31、32、33内に流入し、人工透析装置11、12、13における必要量が採水される。なお、患者に供給する人工透析液は、各人工透析装置11、12、13において調製される。
【0068】
採水されなかった分のRO水は、取出管31、32、33から回収管22に入り、RO処理装置10に送られる。そして、再びRO処理装置10にて処理され、RO水としてタンク15に貯水され、再度、送水管21に供給される。
【0069】
RO処理装置10から送水管21に送られたRO水は、透析液供給装置本体60、A原液調製装置61、B原液調整装置62にも供給することができるようになっており、各装置において必要量のRO水が採水され、採水されなかったRO水は回収管22に流される。透析液供給装置本体60、A原液調製装置61、B原液調整装置62の各装置内に設けたバルブにより、各採水口からのRO水の流入を制御できる。
【0070】
透析液供給装置本体60には、A原液調製装置61とB原液調整装置62が接続されている。ここでA原液調製装置61とB原液調整装置62は、人工透析液に必要なA原液とB原液をそれぞれ供給するための装置である。A原液調製装置61とB原液調整装置62から透析液供給装置本体60にA原液とB原液が送られ、そこで人工透析液が調製される。
【0071】
透析液供給装置本体60にて調製された人工透析液は、人工透析液の送液管71から透析監視装置51、52、53に送られ、各監視装置から複数床の透析患者に供給される。
【0072】
図3に示す装置の場合も、図1、図2の装置と同様に、透析液供給装置本体60、A原液調製装置61、B原液調整装置62の各装置における採水口60a、61a、62aは、採水口31a、32a、33aと同様に短い管(1〜5cm)からなるものである。これらの採水口31a、32a、33aを形成する管には、バルブは全く設置されていない。
【0073】
図3に示す装置においても、図1、図2の装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0074】
次に、図3に示す供給装置において、薬液を使用した殺菌洗浄方法を説明する。例えば貯水タンク15内に薬液(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)を添加する場合、貯水タンク15内の次亜塩素酸ナトリウム濃度は1〜1000ppmの範囲が好ましく、30〜500ppmの範囲がより好ましい。なお、貯水タンク15とは別に設けた薬液タンクを使用してもよい。
【0075】
次に、全てのバルブを開いた状態にてポンプを作動させて、貯水タンク15、送水管21、取出管31〜33、回収管22、貯水タンク15の循環ラインにて循環運転する。但し、人工透析装置11〜13及び透析液供給装置本体60、A原液調製装置61、B原液調整装置62は各装置内に設けられたバルブで薬液の流入を制御する。
【0076】
この薬液による循環運転を5〜90分間程度行うことにより、医学的観点から十分な程度の殺菌洗浄ができる。殺菌洗浄後、貯水タンク15内の薬液をRO水に入れ替え、今度はRO水を循環運転して、供給装置内に残る薬液を洗浄除去する。
【0077】
また図3の装置では、透析監視装置51、52、53側への供給ラインも、上記の個人用透析装置11、12、13の場合と同様に貯水タンク15に戻す管を設けることで循環ラインにして、上記と同様の薬液洗浄あるいは熱水洗浄をすることができる。この場合、貯水タンク15とは別に設けた薬液タンクを使用してもよいし、その場合には、RO水に代えて、水道水等で希釈してもよい。また、薬液を使用する場合は、タンクを使用しないで、送水管121又は回収管122に直接薬液を注入するようにしてもよい。
【実施例】
【0078】
実施例1
図1で示す供給装置を用いて、人工透析用水の供給を行った。装置の詳細は、以下のとおりである。なお、送水管と回収管は硬質ポリ塩化ビニル製であり、取出管はポリ塩化ビニル製のチューブであり、採水口はステンレス製からなるものである。
【0079】
RO処理装置10:VCR−SU(ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)
貯水タンク15:容量150L
送水管21の内径:20mm
回収管22の内径:20mm
取出管31の内径:19mm
取出管32の内径:12mm
取出管33の内径:8mm
採水口31aの管長さ(図4のL):30mm
採水口32aの管長さ(図4のL):25mm
採水口33aの管長さ(図4のL):15mm
人工透析装置11のRO水の最大使用量:900L/h
人工透析装置12のRO水の最大使用量:600L/h
人工透析装置12のRO水の最大使用量:100L/h
【0080】
ポンプを作動し、圧力調整バルブ45で圧力を調整しながら、表1に示す流量にてRO水(人工透析用水)を循環供給した。なお、取出バルブ41a、42a、43a、回収バルブ41b、42b、43bは全て開放した。
【0081】
表1に示す流量と圧力の測定位置は、送水管21は、RO処理装置10に近接した位置であり、装置11、12、13は、採水口31a、32a、33aであり、回収管22は、圧力調整バルブ45に近接した位置である。
【0082】
【表1】

装置11、12で採水した場合(装置11/12)、装置11、13で採水した場合(装置11/13)、装置12、13で採水した場合(装置12/13)は、取出管31、32、33の内径が異なり、採水量が異なるにも拘わらず、同じ圧力にて、必要量を採水することができた。
【0083】
さらに装置11、12、13で同時に採水した場合(装置11/12/13)においても、同様の結果が得られた。
【0084】
また、図1において、人工透析装置11、取出管31と人工透析装置13と取出管33の位置を入れ替えた場合(即ち、図1にて、左側から順に、取出管33と装置13の組み合わせ、取出管32と装置12の組み合わせ、取出管31と装置11の組み合わせになっており、取出管33と装置13の組み合わせが最もRO処理装置に10に近い位置にある)であっても、上記表1と同じ結果が得られた。
【符号の説明】
【0085】
10 RO処理装置
11、12、13 人工透析装置
21 送水管
22 回収管
31、32、33 RO水の取出管
31a、32a、33a RO水の採水口
41a、42a、43a RO水の取出バルブ
41b、42b、43b RO水の回収バルブ
45 圧力調整バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RO水を供給するRO処理装置と、
前記RO処理装置からRO水を供給するための送水管と、
前記送水管から供給されたRO水を回収して前記RO処理装置に送る回収管と、
前記送水管の2以上の箇所に一端側が接続され、前記回収管の2以上の箇所に他端側が接続された2本以上のRO水の取出管とを有しており、
前記取出管の内径が、前記送水管と前記回収管の内径よりも小さくなるように設定されており、
前記取出管が、前記一端側に取出バルブを有し、前記他端側に回収バルブを有し、前記取出バルブと前記回収バルブの間にRO水の採水口を有している、人工透析用水の供給装置。
【請求項2】
前記採水口が、前記取出管に接続された短い管からなるものであり、前記採水口を形成する短い管の長さが10cm未満の長さである、請求項1記載の人工透析用水の供給装置。
【請求項3】
前記2本以上のRO水の取出管が同一又は異なる内径のものである、請求項1又は2記載の人工透析用水の供給装置。
【請求項4】
前記2本以上のRO水の取出管が、前記採水口からの取出量が同量の場合は同じ内径の組み合わせにされ、前記採水口からの取出量が異なる量の場合は異なる内径の組み合わせにされている、請求項1〜3のいずれか1項記載の人工透析用水の供給装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の人工透析用水の供給装置の洗浄方法であって、
RO処理装置で製造されたRO水又は外部水源から供給された水からなる洗浄用水に対して薬液を添加する段階、
或いはRO処理装置により製造されたRO水又は外部水源から供給された水からなる洗浄用水を加熱する段階、
次に、前記薬液を含有する洗浄水又は加熱された洗浄水を、送水管、取出管、採水口を形成する管、回収管の順に循環させる工程、
を有している人工透析用水の供給装置の洗浄方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載の人工透析用水の供給装置を人工透析装置に接続した人工透析液の供給装置であり、
前記取出バルブと前記回収バルブの間に設けられたRO水の採水口に人工透析装置が接続されたものである、人工透析液の供給装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項記載の人工透析用水の供給装置を人工透析装置に接続した人工透析液の供給装置であり、
前記取出バルブと前記回収バルブの間に設けられたRO水の採水口に人工透析装置が接続されており、
さらに送水管と回収管に人工透析液の調製装置が接続され、前記人工透析液の調製装置と接続された複数の透析監視装置を備えている、人工透析液の供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−187721(P2010−187721A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32165(P2009−32165)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】