説明

人形の骨格構造及び該人形

【課題】 人形の腕部位或いは脚部位を関節位置で深く屈曲させても屈曲姿勢を維持することができる人形の骨格構造を提供する。
【解決手段】 人体の腕又は脚を構成する両端部に関節を有する骨格を模した人形の骨格構造において、前記人形の骨格中間部に該骨格を屈曲させて分割する前記人体の腕及び脚には無い中間関節部を設け、当該中間関節部を骨格の分割面に形成された相対して当接する関節面部と当該両関節面部を接触・離反させる枢軸部と当該両関節面部の離反を所定角度で停止させる当該枢軸部に回動可能に軸着された係止部とからなる構成とした人形の骨格構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の腕又は脚を構成する両端部に関節を有する上腕骨や大腿骨等の骨格を模した人形の骨格構造及び該人形に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、人体の体形様に組み立てられた骨格部材と当該骨格部材に被覆されて人体の外形を形作る外装部材とから構成され、各部関節を屈曲させて人体と同様の姿勢を採らせる人形が多種汎用されている。
【0003】
また、前記人形と同様に伸縮性を有する素材によって人形の体形に形成された外皮部材と、該外皮部材の内部に配置された骨格部材と、外皮部材の内部に充填される流動部材とから形成され、上記骨格部材には人体が有する関節を模した折り曲げ可能な関節部を設けた人形や(例えば、特許文献1参照)、硬質骨格を軟質外皮で被覆して当該硬質骨格に人体が有する関節を模した動く関節部材を設けて当該関節部材がニュートラルポジションに位置するように当該軟質外皮を成形したフィギュア人形が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−221369号公報
【特許文献2】特開2000−185180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の人形の腕部位や脚部位における骨格は、いずれも人体の腕や脚を構成する上腕骨や大腿骨等を模した両端部に関節を有する骨格構造と同様に形成されており、人形の腕部位や脚部位は、人体における腕や脚の外形を模した軟質樹脂製の外装部材が被覆された状態となっているので、人形の腕部位において人体の肘関節に当たる人形の肘関節部位を屈曲させた場合、或いは、人形の脚部位において人体の膝関節に当たる人形の膝関節部位を屈曲させた場合、肘関節部位を挟む形で形成された上腕部位と前腕部位とにおいては、肘関節部位が屈曲されるに連れて上腕部位と前腕部位との肘関節部位近傍位置の外装部材同士が互いに干渉しあって当該外装部材に皺が発生すると共に、反発しあって腕を深く屈曲させた状態を維持させることができず、また、膝関節部位を挟む形で形成された大腿部位と脛部位とにおいては、膝関節部位が屈曲されるに連れて大腿部位と脛部位との膝関節部位近傍位置の外装部材同士が互いに干渉しあって当該外装部材に皺が発生すると共に、反発しあって正座等の深く屈曲させた状態の姿勢を維持させることができないという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明者は、人形の腕部位或いは脚部位を関節位置で深く屈曲させても屈曲姿勢を維持することができる人形の骨格構造を得ることを技術的課題として、その具現化をはかるべく多数試作模型を製作して研究・実験を重ねた結果、人体の腕や脚を構成する例えば上腕骨や大腿骨等を模した両端部に関節を有する人形の骨格部位の中間部に人体には存在しない中間関節部を設ければ、肘・膝関節部位の屈曲動作に追随して中間関節部が屈曲して外装部材同士の干渉が和らげられて深く屈曲させた状態の姿勢を維持させることができるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0008】
即ち、本発明に係る人形の骨格構造は、人体の腕又は脚を構成する両端部に関節を有する骨格を模した人形の骨格構造において、前記人形の骨格中間部に該骨格を屈曲させて分割する前記人体の腕及び脚には無い中間関節部を設けたものである。
【0009】
また、本発明は、前記人形の骨格構造において、骨格が人体の上腕骨又は大腿骨を模したものである。
【0010】
また、本発明は、前記いずれかの人形の骨格構造において、中間関節部が、骨格の分割面に形成された相対して当接する関節面部と当該両関節面部を接触・離反させる枢軸部と当該両関節面部の離反を所定角度で停止させる当該枢軸部に回動可能に軸着された係止部とからなるものである。
【0011】
さらに、本発明に係る人形は、前記いずれかの人形の骨格構造を構成する骨格部を硬質樹脂材料により成型し、当該骨格部を軟質樹脂材料により人形の体形に成型した外皮部材によって被覆したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、人体の上腕骨や大腿骨等を模した両端部に関節を有する人形の骨格部位の中間部に人体には存在しない中間関節部を設けたので、肘・膝関節部位の屈曲動作に追随して中間関節部が屈曲するから、外装部材同士の干渉が和らげられ、深く屈曲させた状態の姿勢を維持させることができる。
【0013】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0015】
実施の形態
【0016】
図1は本発明の実施の形態に係る人形の骨格構造を備えた人形玩具の正面図であり、左側腕部位及び左側脚部位の腕部位外装部材及び脚部位外装部材は縦断面にて示されて内部の骨格部位は露出している。図2は図1に図示する左側腕部位における腕部位外装部材の縦断面側面図、図3は図1に図示する左側脚部位における脚部位外装部材の縦断面側面図、図4は図1に図示する左側腕部位における骨格構造の組立展開図、図5は図1に図示する左側脚部位における骨格構造の組立展開図、図6は図1に図示する左側腕部位における屈曲状態を説明する正面図、図7は図6に図示する腕部位外装部材を縦断面にて示して骨格構造の屈曲状態を説明する正面図、図8は図1に図示する左側腕部位における屈曲状態を説明する正面図、図9は図8に図示する腕部位外装部材を縦断面にて示して骨格構造の屈曲状態を説明する正面図、図10は図7及び図9に図示する上腕骨格部に設けられた副関節部の動作を説明する説明図、図11は図1に図示する左側脚部位における屈曲状態を説明する側面図、図12は図11に図示する脚部位外装部材を縦断面にて示して骨格構造の屈曲状態を説明する側面図、図13は図1に図示する左側脚部位における屈曲状態を説明する側面図、図14は図13に図示する脚部位外装部材を縦断面にて示して骨格構造の屈曲状態を説明する側面図、図15は図12及び図14に図示する大腿骨格部に設けられた副関節部の動作を説明する説明図である。これらの図において、1は、人体の外形を模した頭部位2、上胴部位3と下胴部位4とからなる胴体部位5、肩関節部6と上腕部位7と肘関節部8と前腕部位9と手首関節部10と手部位11とからなる腕部位12、及び、股関節部13と大腿部位14と膝関節部15(図3参照)と脛部位16と足首関節部17と足部位18とからなる脚部位19によって構成されている人形玩具であり、前記各部位は軟質樹脂にて中空状に成型した各外装部材と当該各部位における骨格部材とにより成り、前記各関節部を屈曲させることによって、人体と同様の姿勢を採らせることができるようになっている。
【0017】
前記腕部位12における上腕部位7は、図2に示すように、人体の上腕外形を模した上腕外装部材20と上腕骨を模した上腕骨格部21とからなり、前腕部位9は、人体の前腕外形を模した前腕外装部材22と人体の撓骨と尺骨とを一本の骨で模した前腕骨格部23とからなる。そして、上腕骨格部21はその両端部に肩関節部6と肘関節部8とを有し、前腕骨格部23はその両端部に肘関節部8と手首関節部10とを有している。また、前記脚部位19における大腿部位14は、図3に示すように、人体の大腿外形を模した大腿外装部材24と大腿骨を模した大腿骨格部25とからなり、脛部位16は、人体の脛外形を模した脛外装部材26と人体の脛骨と腓骨とを一本の骨で模した脛骨格部27とからなる。そして、大腿骨格部25はその両端部に股関節部13と膝関節部15とを有し、脛骨格部27はその両端部に膝関節部15と足首関節部17とを有している。
【0018】
前記腕部位12の骨格は以下のように組み立てられている。即ち、図4に示すように、上胴部位3に位置する胸部の骨格を形成する胸椎部28の両側方に突出して設けられた円筒状の肩軸受け部29に円柱状の胴側肩関節軸30が回動自在に挿着されて当該肩関節軸30の先端には中心に肩側軸受け穴31が開口する扁平円盤状の胴側軸受け部32が形成されている。胴側軸受け部32は、上胴部位3側と腕部位12側とにそれぞれ納まるように大小の半球体を地球軸に似た傾きで上下に一周する溝部33を介して一体に結合した形状の球体部と該球体部の下部に当たる位置の小半球体より下方に突出して設けられた円柱状の腕側肩関節軸34とを当該溝部33を交差するように縦割りに二分して対称に形成された一対の縦割り半球関節部35,35によって連結材36を介して前後から挟んでタッピングビッス37によって前記軸受け穴31は遊貫状態で螺着されている。従って、肩関節部6は前記胴側肩関節軸30と前記胴側軸受け部32と前記腕側肩関節軸34を有する前記一対の縦割り半球関節部35,35とにより構成されて上胴部位3に対して上下左右に回動自在に取り付けられている。
【0019】
前記腕側肩関節軸34は、上腕補強リング38を挿通して上腕骨格部21を形成する円筒状上腕部骨格39に回動自在に挿着されている。当該上腕部骨格39の下端には、該下端に一体的に設けられた天井台座40と該天井台座40の両側から間隔を有して下向きに平行に突出して設けられて副関節側軸受け穴41,41が開口した軸受け板42,42とからなる下向き角U字状副関節枢軸部43が設けられている。そして、前記天井台座40の下面(関節面部)44(図10参照)に相対して当接する関節面部45が上端部に形成されていると共に、該関節面部45が天井台座40の関節面部44に接触して当接した状態の前記軸受け穴41,41位置に上腕部兼副関節側軸受け穴46が設けられて当該軸受け穴46を中心として前記関節面部45を天井台座40の関節面部44から離反する方向へ回転させた際に両関節面部44,45の離反を所定角度で停止させる口ばし状の係止部47が当該軸受け穴46を挟んで前記関節面部45とは反対側の当該軸受け穴46より下方位置に突出して設けられ、下端部には中心に上腕側軸受け穴48が開口して上向きに当該軸受け穴48に挿着される軸が通る幅の切欠部49を有する扁平円盤状の上腕側軸受け部50が形成されている扁平状上腕部兼副関節部51の当該軸受け穴46が当該枢軸部43の軸受け穴41,41に位置付けられてタッピングビス52によって当該軸受け穴46は遊貫状態で螺着されている。従って、上腕骨格部21は前記上腕部骨格39と前記副関節枢軸部43と前記上腕部兼副関節部51とにより構成され、当該上腕骨格部21の骨格中間位置に設けられて上腕骨格部21を屈曲させて分割する副関節部(中間関節部)53(図10参照)は、骨格の分割面に形成された相対して当接する前記関節面部44及び前記関節面部45と、当該両関節面部44,45を接触・離反させる前記副関節枢軸部43と当該両関節面部44,45の離反を所定角度で停止させる、枢軸部43にタッピングビス52によって回動可能に軸着されている前記係止部47とから構成されている。
【0020】
前記上腕側軸受け部50は、肘関節を形成する球体を縦割りに二分するリング状縦溝部54を設けて中心に腕部位12の長手方向に対して直角方向に走る円柱状中心軸部55を形成した球状関節部56の当該中心軸部55に上腕側軸受け部50の上腕側軸受け穴48を通して当該球状関節部56に対して回動自在に装着されており、前記球状関節部56の下部には前記縦溝部54によって二分された半球体をそれぞれ立設させる形態に縦割り半円柱が設けられていると共に、台座を介して下方に向かって円柱状の肘関節軸57が設けられており、当該肘関節軸57は前腕骨格部23を形成する円筒状前腕部骨格58に回動自在に挿着されている。当該前腕部骨格58は下方から円柱状前腕軸59が回動自在に挿着されて当該前腕軸59は下方に向かって伸びる下端部59’が設けられ、中心に前腕側軸受け穴60が開口して上向きに当該軸受け穴60に挿着される軸が通る幅の切欠部61を有する扁平円盤状の前腕側軸受け部62が形成されている。そして、前記前腕側軸受け部62は、手首関節を形成する球体を縦割りに二分するリング状縦溝部63を設けて中心に腕部位12の長手方向に対して直角方向に走る円柱状中心軸部64を設けた球状関節部65の当該中心軸部64に前腕側軸受け部62の前腕側軸受け穴60を通して当該球状関節部65に対して回動自在に装着されている。そして、前記関節部65の下部には手骨格66が形成されている。従って、前腕骨格部23は前記前腕部骨格58と前記前腕軸59から下方に向かって伸びる下端部59’とにより構成され、肘関節部8は前記上腕側軸受け部50と前記球状関節部56とにより構成され、手首関節部10は前記前腕側軸受け部62と球状関節部65とにより構成されている。なお、67は頭部位2の頭蓋骨部を装着する頸椎部である。
【0021】
前記脚部位19の骨格は以下のように組み立てられている。即ち、図5に示すように、下胴部位4に位置する骨盤を形成する骨盤部68の下部にて両側方に突出して設けられた円柱状の胴側股関節軸69に円筒状の股軸受け部70が回動自在に挿着されており、当該股軸受け部70は球体の中心部を所望幅残して両側をドーム状に切除した球面状周面を有する扁平円盤部71の当該周面位置から突出して設けられ、前記切除面の円形側面には二段に突出した円柱状股側関節軸72,72が形成されて、当該股側関節軸72,72は、下胴部位4側と脚部位19側とにそれぞれ納まる球体を地球軸に似た傾きの中心軸を含んで前記股軸受け部70が通る幅で上向きに切除して形成された帯状溝部73を有する球体部と該球体部の下部より下方に突出して設けられた円筒状の脚側股関節軸74とを当該溝部73の溝幅中央に沿うように縦割り二分して対称に形成された一対の縦割り半球関節部75,75によって前後から挟んで当該半球関節部75,75内部に形成された横向き筒状軸受76に回動可能に挿着され、当該半球関節部75,75はタッピングビス77によって一体に固定されている。従って、股関節部13は股軸受け部70と扁平円盤部71と股側関節軸72,72と半球関節部75,75とにより構成されて下胴部位4に対して上下左右に回動自在に取り付けられている。
【0022】
前記脚側股関節軸74は大腿補強リング78を挿通して大腿骨格部25を構成する円柱状大腿部骨格79が回動可能に挿着されている。当該大腿部骨格79は上方が開口した茶筒状大腿部骨格受部80に挿着され、当該大腿部骨格受部80の側壁には脚部位19の長手方向に対して直角方向に副関節側軸受け穴81が開口して走るように樽状軸受を間隔を有して並べた副関節枢軸部82が横設されている。そして、当該大腿部骨格受部80の下面(関節面部)83に相対して当接する関節面部84が上端部に形成されていると共に、該関節面部84が前記関節面部83に接触して当接した状態の前記軸受け穴81,81位置に大腿部兼副関節側軸受け穴85が設けられて当該軸受け穴85を中心として前記関節面部84を前記関節面部83から離反する方向へ回転させた際に両関節面部83,84の離反を所定角度で停止させる剣山状係止部86が側方から突出して前記関節面部84より飛び出して設けられ、下端部に中心に大腿側軸受け穴87を設けて当該軸受け穴87を中心とする扁平円板を当該軸受け穴87の近傍位置まで残して上下方向に切除した円欠け形状の大腿側膝関節軸受け部88が形成されている、くの字状に屈曲した大腿部兼副関節部89が当該係止部86の軸受け穴85を前記枢軸部82の軸受け穴81,81に位置付けてボルト・ナット90によって当該軸受け穴85は遊貫状態で枢軸部82に軸着されており、人形玩具1が起立した際の前記大腿側軸受け穴87の下方には起立を保持するための膝関節屈曲止ピン部91が突出している。従って、大腿骨格部25は前記大腿部骨格79と前記大腿部骨格受部80と前記副関節枢軸部82と前記大腿部兼副関節部89とより構成され、当該大腿骨格部25の骨格中間位置に設けられて大腿骨格部25を屈曲させて分割する副関節部(中間関節部)92(図15参照)は、骨格の分割面に形成された相対して当接する前記関節面部83及び前記関節面部84と、当該両関節面部83,84を接触・離反させる前記副関節枢軸部82と当該両関節面部83,84の離反を所定角度で停止させる、枢軸部82にボルト・ナット90によって回動可能に軸着された前記係止部86とから構成されている。
【0023】
前記大腿側膝関節軸受け部88は、当該軸受け部88の形状を縦断面に持つ球体を縦割り二分して当該球体の円の中心を通って脚部位19の長手方向に対して直角方向に走るビス受け円筒状中心軸93を内部に設けた左右対称の縦欠け半球状関節部94,94によって左右から挟んでタッピングビス95によって前記大腿側軸受け穴87は遊貫状態で円筒状中心軸93,93に螺着されており、前記関節部94,94の下部にはそれぞれ左右対称に縦割りにした膝関節軸片部96,96が下方に向かって突出して形成されてタッピングビス95の螺着により左右対称の膝関節軸片部96,96が一体となって下向きに開口する筒状の膝関節軸97が形成されている。従って、膝関節部15は前記膝関節軸受け部88と縦欠け半球状関節部94,94とにより構成されている。
【0024】
前記膝関節軸97は脛補強リング96を挿通して脛骨格部27を構成する円柱状脛部骨格99が回動可能に挿着されている。そして、脛部骨格99は円筒状足首関節軸受け部100 に挿着され、足首関節軸受け部100 の下部は足首関節部17に回動可能に装着されている。従って、脛骨格部27は前記脛部骨格99と前記足首関節軸受け部100 とにより構成されている。
【0025】
前記腕部位12においては、図6に示すように、人形玩具1の肘関節部8を屈曲すれば、図7に示すように、肘関節部8を挟む形で形成された上腕部位7と前腕部位9とにおいて、上腕部位7と前腕部位9との肘関節部近傍位置の上腕外装部材20と前腕外装部材22とが互いに干渉し合う位置までは、人体と同様の屈曲動作をさせることができ、図8に示すように、上腕外装部材20と前腕外装部材22とが互いに干渉し合った位置よりさらに肘関節部8を屈曲すれば、図9に示すように、人体には無い副関節部53が肘関節部8の屈曲動作に追随して屈曲する。即ち、図10に示すように、天井台座40の下面に位置付けられた関節面部44と上腕部兼副関節部51側の関節面部45とが接触して当接した状態から枢軸部43の副関節側軸受け穴41を中心として関節面部44と関節面部45とが離反する方向である矢印A方向へ上腕部兼副関節部51が屈曲して上腕部兼副関節部51に形成された係止部47が関節面部44に当接して両関節面部44,45の離反を所定角度で停止させるようになっているので、前腕部位9に対して上腕部位7を深く屈曲させることができ、しかも、肘関節部近傍位置の上腕外装部材20と前腕外装部材22とがお互いを押圧することはない。
【0026】
前記脚部位19においては、図11に示すように、人形玩具1の膝関節部15を屈曲すれば、図12に示すように、膝関節部15を挟む形で形成された大腿部位14と脛部位16とにおいて、大腿部位14と脛部位16との膝関節部近傍位置の大腿外装部材24と脛外装部材26とが互いに干渉し合う位置までは、人体と同様の屈曲動作をさせることができ、図13に示すように、大腿外装部材24と脛外装部材26とが互いに干渉し合った位置よりさらに膝関節部15を屈曲すれば、図14に示すように、人体には無い副関節部92が膝関節部15の屈曲動作に追随して屈曲する。即ち、図15に示すように、大腿部骨格受部80の下面に位置付けられた関節面部83と大腿部兼副関節部89側の関節面部84とが接触して当接した状態から枢軸部82の副関節側軸受け穴81を中心として関節面部83と関節面部84とが離反する方向である矢印B方向へ大腿部兼副関節部89が屈曲して大腿部兼副関節部89に形成された係止部86が大腿部骨格受部80の側壁に当接して両関節面部83,84の離反を所定角度で停止させるようになっているので、脛部位16に対して大腿部位14を深く屈曲させることができ、しかも、膝関節部近傍位置の大腿外装部材24と脛外装部材26とがお互いを押圧することはない。
【0027】
なお、腕部位12の副関節部53が前腕部位9に形成されていてもよく、脚部位19の副関節部92が脛部位16に形成されていてもよい。また、人形玩具1の腕部位12を構成する上腕部位7又は前腕部位9、或いは、脚部位19を構成する大腿部位14又は脛部位16のいずれか一つの部位に副関節部が形成されていてもよい。
【0028】
また、各骨格部はアルミニウム、真鍮、ステンレス鋼等の金属やウレタン樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチロール樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂、ポリスチレン樹脂、FRP樹脂等の硬質樹脂材料を使用して成型すればよく、各外装部材は、ポリ塩化ビニール樹脂、ウレタン樹脂、エラストマー、合成ゴム等の軟質樹脂材料を使用して成型すればよい。なお、前記軟質樹脂材料はJIS K6301 準拠の硬度37〜54のものが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、肘・膝関節部位の屈曲動作に追随して中間関節部が屈曲するから、外装部材同士の干渉が和らげられて皺の発生を抑えることができるので、肘部位或いは膝部位を深く屈曲させた状態の姿勢を採らせても外観上の美観が損なわれない人形を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る人形の骨格構造を備えた人形玩具の正面図である。
【図2】図1に図示する左側腕部位における腕部位外装部材の縦断面側面図である。
【図3】図1に図示する左側脚部位における脚部位外装部材の縦断面側面図である。
【図4】図1に図示する左側腕部位における骨格構造の組立展開図である。
【図5】図1に図示する左側脚部位における骨格構造の組立展開図である。
【図6】図1に図示する左側腕部位における屈曲状態を説明する正面図である。
【図7】図6に図示する腕部位外装部材を縦断面にて示して骨格構造の屈曲状態を説明する正面図である。
【図8】図1に図示する左側腕部位における屈曲状態を説明する正面図である。
【図9】図8に図示する腕部位外装部材を縦断面にて示して骨格構造の屈曲状態を説明する正面図である。
【図10】図7及び図9に図示する上腕骨格部に設けられた副関節部の動作を説明する説明図である。
【図11】図1に図示する左側脚部位における屈曲状態を説明する側面図である。
【図12】図11に図示する脚部位外装部材を縦断面にて示して骨格構造の屈曲状態を説明する側面図である。
【図13】図1に図示する左側脚部位における屈曲状態を説明する側面図である。
【図14】図13に図示する脚部位外装部材を縦断面にて示して骨格構造の屈曲状態を説明する側面図である。
【図15】図12及び図14に図示する大腿骨格部に設けられた副関節部の動作を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 人形玩具
5 胴体部位
6 肩関節部
7 上腕部位
8 肘関節部
9 前腕部位
10 手首関節部
12 腕部位
13 股関節部
14 大腿部位
15 膝関節部
16 脛関節部
17 足首関節部
19 脚関節部
20 上腕外装部材
21 上腕骨格部
22 前腕外装部材
23 前腕骨格部
24 大腿外装部材
25 大腿骨格部
26 脛外装部材
27 脛骨格部
43 副関節枢軸部
44 天井台座の下面(関節面部)
45 関節面部
47 係止部
53 副関節部(中間関節部)
82 副関節枢軸部
83 大腿部骨格受部の下面(関節面部)
84 関節面部
86 係止部
92 副関節部(中間関節部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の腕又は脚を構成する両端部に関節を有する骨格を模した人形の骨格構造において、前記人形の骨格中間部に該骨格を屈曲させて分割する前記人体の腕及び脚には無い中間関節部を設けたことを特徴とする人形の骨格構造。
【請求項2】
骨格が人体の上腕骨又は大腿骨を模したものである請求項1記載の人形の骨格構造。
【請求項3】
中間関節部が、骨格の分割面に形成された相対して当接する関節面部と当該両関節面部を接触・離反させる枢軸部と当該両関節面部の離反を所定角度で停止させる当該枢軸部に回動可能に軸着された係止部とからなる請求項1又は2記載の人形の骨格構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の人形の骨格構造を構成する骨格部が硬質樹脂材料により成型されており、当該骨格部が軟質樹脂材料により人形の体形に成型された外皮部材によって被覆されていることを特徴とする人形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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