説明

人間母乳から分離したプロバイオティック活性、及び体重増加抑制活性を有する乳酸菌

本発明は、人間の母乳から分離した乳酸菌に関し、より詳しくは、韓国女性の母乳から分離され、耐酸性、耐胆汁性及び抗菌活性等のプロバイオティック活性と体重増加抑制の効果を有するラクトバチルス・ガッセリー(Lactobacillus gasseri)BNR17菌株に関する。本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17は、耐酸性、耐胆汁性、及び腸細胞に対する付着活性と、細菌性微生物に対する高い抗菌活性を有し、人間が摂取する食べ物中の単糖類成分を、消化酵素が分解することができない多糖類に合成して体外へ排出させることにより、体重増加抑制の効果を有する。このような幾多の有益な機能により、本発明の菌株は発酵乳及び多様な発酵製品、動物の飼料添加剤だけでなく、体重増加を防止するための生菌製剤及び食品補助添加剤にも有効に用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロバイオティック乳酸菌に関し、より詳しくは、人間の母乳から分離されたものであって、耐酸性及び耐胆汁性、抗菌力などのプロバイオティック活性に優れ、体重増加抑制の効果を現わすラクトバチルス属の新規の乳酸菌に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌は、人間とその歴史を共にしてきており、人間の健康に非常に有益な影響を及ぼす微生物であってその有用性が益々増加している。最近は、乳酸菌に対する研究が活発に進められ、一般の食品だけでなく、健康食品及び薬品として開発されるなど、その応用範囲が拡大されている。乳酸菌に属する細菌等としては、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、レウコノストック(Leuconostoc)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、スポロラクトバチルス(Sporolactobacillus)属及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の微生物等がある。
【0003】
このような乳酸菌等は、動物の腸内に棲息しながら動物が摂取した栄養分及び繊維素などを分解させてエネルギー源に用い、乳酸及び抗生物質などを生産して腸内有害菌の発育を抑制することにより、腸内健康の維持に重要な役割を果たす。さらに、乳酸菌は動物の成長促進及び飼料利用率の改善、病に対する抵抗力の増加、有害細菌の増殖抑制、斃死率の減少、腐敗毒性物質の産生抑制及び各種ビタミンの産生にも利用されている。
【0004】
しかし、前記のような効能を発揮するためには、外部から流入される乳酸菌が何らの障害なく腸内に到達して腸の粘膜に付着したあと、その機能を現さなければならない。そのためには、直接腸に付着され得る菌株でなければならず、経口投与時に胃酸による破壊が少なくなければならず、胆汁酸に対する耐性が強くなければならず、病原菌に対する抗菌能力が強くなければならないなどの条件を基本的に満たすことができなければならない。
【0005】
さらに、人間のための食品や医薬品に用いられる乳酸菌の場合、その分離源が人間の場合に効果が最もよく現われ、特に女性の母乳から分離された乳酸菌はその効能がより広範囲で安全性も高いものと評価されている。しかし、現在まで発見された人間来由の乳酸菌等は大部分が成人の糞便、または母乳を食べて育つ新生児の糞便から分離されたものであって、母乳から分離された乳酸菌等もラクトバチルス・ロイテリ種が大部分であり、他種に属する乳酸菌等は殆ど報告されたことがない。
【0006】
一方、肥満は原因が正確に明かされていない幾多の要因等により複合的に発生する慢性的な疾患であって、高血圧、糖尿、心血管疾患、胆石、骨関節炎、睡眠無呼吸症、呼吸障害、前立腺癌、乳房癌、大腸癌などを誘発する要因に作用し得る。このような肥満の予防または治療方法には大きく、食餌-運動療法、 手術療法、薬物療法がある。食餌-運動療法は、低カロリー-低脂肪摂取と、酸素を消費する肉体活動を介した治療方法であるが、これは忍耐心を持って反復的、持続的に行なわなければならないので、大衆的な効果を見るのは困難である。手術療法は、外科的手術を介し体脂肪を物理的に除去する方法であって、短期間に効果を見ることができる利点があるが、手術しなければならない点、 効果の持続性がないとの点、費用が多くかかるとの点等により制限的に活用されている。薬物療法は、幾多の副作用を惹起させ得るので、使用上の注意が求められる。
【0007】
最近、乳酸菌が生産する多糖類に対する研究が活発に進められている。乳酸菌が細胞外多糖類を作る機作は非常に複雑なものと知られており、乳酸菌種に従いその生産量と構造にも多くの差を見せる。乳酸菌が生産する多糖類は、抗癌効果、免疫増進効果などがあることが報告されており(Kitazawa, H. Int. J. Food Microbiol., 1998. 40. 169-175, Hosono, A. Biosci. Biotechnol. Biochem., 1997. 61. 312-316, Chabot, S. Lait. 2001. 81. 683-697)、GRAS(Generally Recognized As Safe)に分類される乳酸菌の特性上、この乳酸菌が生産する多糖類もまた摂取時に安全なものとみなされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、人間の母乳から分離された乳酸菌に関するものであって、酸性pH及び胆汁酸に対する抵抗性と腸付着能が強いので、腸内に棲息しながら消化酵素により分解された低糖類炭水化物を体内に吸収されない高分子多糖物質に切り換えて排出させることにより、体重増加抑制の効果などを現わすことができる乳酸菌を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、人間の母乳から分離した乳酸菌であるラクトバチルス・ガッセリー BNR17を提供する。
【0010】
本発明の乳酸菌菌株は、下記のような菌学的特性を有する。
【0011】
(1) 菌の形態 - ラクトバチリエムアールエス(Lactobacilli MRS)寒天平板培地で37℃、24時間培養したときの形態:
i.菌集落(colony)の形態、大きさ及び色合い: 円形、0.5 mm×2 mm、乳白色、表面円滑。
ii.グラム(Gram)染色:陽性。
iii.菌の形態:棒状(桿菌)。
iv.胞子形成能:無し。
v.運動性:無し。
【0012】
(2) 生理的性質
i.生育温度範囲:25〜45℃
ii.生育pH範囲:pH 4.0〜10.0
iii.最適生育温度:37〜40℃
iv.最適生育pH:pH 6.0〜8.0
【0013】
(3) 酸素の影響:通性嫌気性。
【0014】
(4) 糖利用性:
グリセロール(Glycerol)-、リボース(Ribose)-、アドニトール(Adonitol)-、ガラクトース(Galactose)+、D-グルコース(Glucose)+、D-フルクトース(Fructose)+、D-マンノース(Mannose)+、マンニトール(Mannitol)-、ソルビトール(Sorbitol)-、N-アセチルグルコシド(Acetylglucoside)+、エスクリン(Esculin)+、サリシン(Salicin)+、セロビオース(Cellobiose)+、マルトース(Maltose)+、ラクトース(Lactose)+、メリビオース(Melibiose)-、サッカロース(Saccharose)+、トレハロース(Trehalose)+、 イヌリン(Inulin)-、メレジトース(Melezitose)-、ラフィノース(Raffinose)-、澱粉(Starch)-、β-ゲンチオビオース(Gentiobiose)-、D-ツラノース(Turanose)+、D-タガトース(Tagatose)+
【0015】
(5) 耐酸性:pH 2.0で生存。
【0016】
(6) 耐胆汁性:0.3%の胆汁濃度で生存。
【0017】
(7) 腸内付着能:人体腸上皮細胞のCaco-2細胞株に付着。
【0018】
(8) 抗生剤耐性:ゲンタマイシン(Gentamicin)、カナマイシン(Kanamycin)、ストレプトマイシン(Streptomycin)、バシトラシン(Bacitracin)、ネオマイシン(Neomycin)、ナリジクス酸(Nalidixic acid)、シプロフロキサシン(Ciprofloxacin)、ポリミキシン B(Polymixcin B)、トリメトプリム(Trimethoprim)に対し耐性。
エリスロマイシン(Erythromycin)、ペニシリン(Penicillin)、テトラサイクリン(Tetracycline)、アンピシリン(Ampicillin)、クロラムフェニコール(Chloramphenicol)、バンコマイシン(Vancomycin)、セフォキシチン(Cefoxitin)、リファンピン(Rifampin)に対し感受性。
【0019】
(9) 病原性細菌に対する抗菌性:大腸菌(E. coli)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、サルモネラ菌(S. typhimurium)、バチルス菌(B. cereus)、リステリア菌(L. monocytogenes)、プロテウス菌(P. mirabilis)に対し抗菌性を有する。
【0020】
(10) 抗菌性ペプチドの存在:乳酸菌の抗菌性ペプチド成分であるバクテリオシンのうちガセリシン(gassericin)Tに該当する遺伝子が重合酵素連鎖反応(PCR)により検出される。
【0021】
(11) 多糖類の産生:本発明の乳酸菌は、グルコースが2%含まれているMRS培地で培養24時間目に約520mg/Lの多糖類産生能を現わしており、その構造を分析した結果、グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース(fucose)、アラビノース(arabinose)、D-グルコサミン(glucosamine)が主成分であるものと表われる。さらに、本乳酸菌の生産する多糖類は、α-アミラーゼ(amylase)、パンクレアチン(pancreatine)などの消化酵素により分解されない。
【0022】
韓国は西洋とは食生活が非常に異なるので、韓国人から分離した乳酸菌が韓国人に最も適するのは自明である。本発明の、韓国女性の母乳で分離した乳酸菌であるラクトバチルス・ガッセリー BNR17は、プロバイオティック乳酸菌が有しなければならない基本的な条件を全て満たしており、このような特性は韓国人に最も好適な健康増進の効果を現わすことができる。本発明者らは、前記のような特性を有する本発明の乳酸菌菌株をラクトバチルス・ガッセリー BNR17と名付け、2006年1月23日付で韓国生命工学研究院の遺伝子銀行に寄託した(寄託番号:KCTC 10902BP)。
【0023】
さらに、本発明は前記乳酸菌を有効量含む組成物を提供する。本発明の組成物は食品、食品用添加剤、動物飼料または動物飼料用添加剤のような多様な形態に提供され得る。
【0024】
本発明に係る新規の乳酸菌であるラクトバチルス・ガッセリー BNR17(寄託番号:KCTC 10902BP)は、耐酸性と耐胆汁性及び抗菌活性に優れるので、多様な乳酸菌発酵乳及び発酵製品を生産するための種菌に用いることができる。このとき、前記発酵乳食品にはヨーグルト、カルピス、チーズ、バターなどを挙げることができ、発酵製品には豆腐、みそ、清麹醤(韓国式納豆)、ゼリー、キムチなどを挙げることができるが、必ずこれに限定されるものではない。前記発酵乳及び発酵製品は、通常の製造方法で菌株のみを本発明の乳酸菌菌株に取り替えることにより容易に製造することができる。
【0025】
本発明の好ましい実施例によれば、本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17を摂取させた実験群ラット(rat)の場合、乳酸菌株の代わりにPBS(Phosphate-Buffered Saline)を摂取させた対照群ラット(rat)に比べ約7.7%の体重増加抑制の効果を有する(表6を参照)。さらに、実験群の場合、体重増加と食餌効率においても対照群に比べ有意的な減少を表わし、実験群と対照群の糞便中に含まれている多糖類の含量を測定した結果、実験群の糞便における多糖類の含量が対照群より高いものと表われた(図6を参照)。このような結果は、ラクトバチルス・ガッセリー BNR17の難消化性多糖類の産生能が体重の調節に影響を及ぼし得るとのことを意味する。一方、ラクトバチルス・ガッセリー BNR17を摂取した実験群の場合、外見上の副作用は観察されず、各臓器の重量も対照群のそれと有意的な差を見せなかった(表7及び表8を参照)。さらに、 微生物の人体摂取時に問題になり得る菌の転移現象も観察されないので、本発明の乳酸菌は人間が摂取するに安全なものと現われた(図7を参照)。
【0026】
本発明の乳酸菌食品は、前記ラクトバチルス・ガッセリー BNR17を独立的に、または許容可能な担体に添加するか、人間または動物が摂取するに適した組成物の形態に製造され得る。即ち、本発明の乳酸菌は、他のプロバイオティック細菌を含まない食品、及び既に何種類かのプロバイオティック細菌を含んでいる食品に添加されて用いられ得る。例えば、本発明の乳酸菌食品の製造において、本発明の乳酸菌とともに使用可能な他の微生物等は人間や動物が摂取するに適し、摂取時に病原性有害細菌を抑制するか、哺乳動物の腸管内の微生物の均衡を改善させることができるプロバイオティック活性を有するもの等であり、特に制限されない。そのようなプロバイオティック微生物の例には、サッカロミセス(Saccharomyces)、カンジダ(Candida)、ピキア(Pichia)及びトルロプシス(Torulopsis)を含む酵母(yeast)、アスペルギルス(Aspergillus)、リゾプス(Rhizopus)、ムコール(Mucor)、ペニシリン(Penicillium)等のようなカビ、及びラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、レウコノストック(Leuconostoc)、ラクトコッカス(Lactococcus)、バチルス(Bacillus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)属に属する細菌などがある。適当なプロバイオティック微生物の具体的な例には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・デルブリッキ(Lactobacillus delbruckii)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ファルシミナス(Lactobacillus farciminus)、ラクトバチルス・ガッセリー(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)などを挙げることができる。好ましくは、優れたプロバイオティック活性を有すると共に免疫活性の増強及び抗癌作用に優れたプロバイオティック微生物混合菌を本発明の乳酸菌食品に更に含むことにより、その効果を一層増進させることができる。本発明の乳酸菌食品に用いられ得る担体の例には、増量剤、高纎維添加剤、カプセル化剤、脂質などがあり得、このような担体等の例は当業界に十分公知されている。本発明の乳酸菌であるラクトバチルス・ガッセリー BNR17は、凍結乾燥またはカプセル化された形態、または培養懸濁液や乾燥粉末の形態であり得る。
【0027】
さらに、本発明の組成物は、前記乳酸菌を含む動物飼料用添加剤、またはこれを含む動物飼料の形態で提供され得る。
【0028】
本発明の動物飼料用添加剤は、乾燥または液状の製剤形態であり得、前記ラクトバチルス・ガッセリー BNR17 以外に非病原性の他の微生物をさらに含むこともできる。添加することができる微生物には、例えば、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素及び糖転化酵素を生産することができるバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)のような枯草菌、牛の胃のような嫌気的条件で生理的活性及び有機物分解能のあるラクトバチルス菌株、家畜の体重を増加させて牛乳の産乳量を増加させ、飼料の消化吸収率を向上させる効果を呈するアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)のような糸状菌(Slyter, L. L. J. Animal Sci.1976, 43. 910-926)及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のような酵母(Johnson, D. E et al. J. Anim. Sci.,1983, 56, 735-739 ; Williams, P. E. V. et al,1990, 211)などが用いられ得る。
【0029】
さらに、本発明の動物飼料用添加剤は、前記ラクトバチルス・ガッセリー BNR17 以外に1つ以上の酵素製剤をさらに含むこともできる。添加される酵素製剤は、乾燥または液体状態が全て可能であり、酵素製剤にはリパーゼ(lipase)のような脂肪分解酵素、フィチン酸(phytic acid)を分解してリン酸塩とイノシトールリン酸塩を作るフィターゼ(phytase)、澱粉とグリコーゲン(glycogen)などに含まれているα-1,4-グリコシド結合(glycoside bond)を加水分解する酵素のアミラーゼ(amylase)、有機リン酸エステルを加水分解する酵素のフォスファターゼ(phosphatase)、セルロース(cellulose)を分解するカルボキシメチルセルラーゼ(carboxymethylcellulase)、キシロース(xylose)を分解するキシラーゼ(xylase)、マルトース(maltose)を二分子のグルコース(glucose)に加水分解するマルターゼ(maltase)、及びサッカロース(saccharose)を加水分解してグルコース-フルクトース(glucose-fructose)混合物を作る転化酵素(invertase)などのような糖産生酵素などが用いられ得る。
【0030】
本発明の乳酸菌を動物飼料用添加剤に使用するのにおいて、飼料用原料には各種穀物及び大豆蛋白を始めとしたピーナッツ、グリンピース、砂糖大根、パルプ、穀物副産物、動物内臓の粉末及び魚粉パウダーなどが使用可能であり、これらは加工されないか、加工されているものを制限なく使用することができる。 加工の過程は、必ずこれに限定されるものではないが、例えば、飼料の原料が充填された状態で押圧下で一定の排出口に圧縮される工程で、タンパク質の場合は変性され利用性が増加する押出成形(extrusion)を用いるのが好ましい。 押出成形(extrusion)は、熱処理過程を介してタンパク質を変性させ、抗酵素因子を破壊させるなどの利点を有する。さらに、大豆タンパク質のような場合は、押出成形を介してタンパク質の消化率を向上させ、大豆に存在するタンパク質分解酵素の阻害剤中の1つであるトリプシン阻害剤(trypsin inhibitor)のような抗栄養因子等を不活性化させ、タンパク質分解酵素による消化率の向上を増加させて大豆蛋白の栄養的価値を増加させることができる。
【0031】
さらに、本発明は前記ラクトバチルス・ガッセリー BNR17(寄託番号:KCTC 10902BP)を有効量含む肥満予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0032】
本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17 乳酸菌は通常、投与経路に従って選択される薬学的担体及び賦形剤、または補助有効成分などとの混合により得られる錠剤またはカプセルのような単位形態で投与される。
【0033】
本発明の薬学的組成物に適した担体、賦形剤及び希釈剤には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカントゴム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱油などが含まれる。本発明の微生物組成物はさらに、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、防腐剤、甘味剤または香味剤をさらに含むことができる。本発明の組成物は、当業界に公知の方法を用いて、胃腸を通過したあと小腸に到逹して活性成分である微生物が速かに腸内に放出されるよう腸溶コーティング製剤に製造され得る。
【0034】
さらに、本発明の微生物組成物は、通常のカプセル化方法を用いてカプセル形態の組成物に製造され得る。例えば、標準担体を用いて凍結乾燥させた本発明の微生物を含むペレット(pellet)を製造した後、これを硬質のゼラチンカプセル内に充填させることができる。或いは、本発明の微生物と、任意の適切な薬剤学的担体、例えば、水性ガム、セルロース、ケイ酸塩またはオイルを用いて懸濁液、分散液を製造した後、このような分散液または懸濁液を軟質のゼラチンカプセル内に充填させることもできる。
【0035】
本発明の薬学的組成物は特に、経口用単位剤形として腸溶コーティングされた腸溶性製剤に提供され得る。本明細書における「腸溶コーティング」とは、胃酸によっては分解されずコーティングが維持されるが、小腸では十分分解され活性成分が小腸内に放出され得るようにする、薬剤学上許容可能な全ての種類の公知のコーティングを含む。本発明の「腸溶コーティング」とは、pH 1のHCl溶液のような人工胃液を36℃〜38℃で接触させるとき、2時間以上の間そのまま維持され、好ましくは以後pH 6.8のKH2PO4緩衝溶液のような人工腸液で30分以内に分解されるコーティングを指す。
【0036】
本発明の腸溶コーティングは、1つのコア(core)に約16〜30、好ましくは16〜20または25mg 以下の量でコーティングされる。本発明の腸溶コーティングの厚さが5〜100μm、好ましくは20〜80μmの場合が腸溶コーティングとして満足な結果を現わす。腸溶コーティングの材料は、公知の高分子物質等の中から適宜選択される。適宜な高分子物質は、多数の公知文献(L. Lachman外、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy, 3版、1986, pp. 365〜373; H. Sucker外、Pharmazeutische Technologie, Thieme, 1991, pp. 355〜359; Hagers Handbuch der pharmazeutischen Praxis, 4版、Vol. 7, pp. 739〜742、及び766〜778, (SpringerVerlag, 1971); 及びRemington's Pharmaceutical Sciences, 13版、pp. 1689〜1691 (Mack Publ., Co., 1970))に列挙されており、セルロースエステル誘導体、セルロースエーテル、アクリル樹脂のメチルアクリレート共重合体及びマレイン酸及びフタル酸誘導体の共重合体がこれらに含まれ得る。
【0037】
本発明の腸溶コーティングは、腸溶コーティング溶液をコアに噴霧する通常の腸溶コーティング法を用いて製造され得る。腸溶コーティング工程に用いられる適宜な溶媒には、エタノールのようなアルコール、アセトンのようなケトン、CH2Cl2のようなハロゲン化炭化水素溶媒があり、これらの溶媒の混合溶媒が用いられてもよい。ジ(di)-n-ブチルフタレートまたはトリアセチンのような軟化剤を1対約0.05〜約0.3(コーティング材料対軟化剤)の比率でコーティング溶液に添加する。噴霧過程を連続的に行なうのが適切であり、コーティングの条件を考慮して噴霧量を調節するのが可能である。噴霧圧は多様に調節することができ、一般に約1〜約1.5バー(bar)の噴霧圧で満足するほどの結果が得られる。
【0038】
本明細書の「薬学的有効量」とは、哺乳動物の腸内から体内に吸収される低糖類の量を減少させることができる本発明の微生物の最少量を意味し、本発明の組成物により体内に投与される微生物の量は、投与経路、投与対象を考慮して適宜調整可能である。
【0039】
本発明の組成物は、対象個体に毎日一回以上投与可能である。単位投与量とは、人間被験者及び他の哺乳動物のための単位投与に適するよう物理的に分離された単位を意味し、各単位は適切な薬剤学的担体を含み、治療効果を呈する本発明の微生物の予定された量を含む。成人患者の経口投与用の投与単位は本発明の微生物0.1g 以上を含むのが好ましく、本発明の組成物の経口投与量は一回に0.1〜10g、好ましくは0.5〜5gである。本発明の微生物の薬学的有効量は0.1〜10g/1日である。しかし、投与量は患者の体重、肥満症状の深刻度及び用いられる微生物と補助有効成分に従い可変的である。さらに、一日総投与量を幾多の回数に分割し、必要に応じて連続的に投与することができる。したがって、前記投与量の範囲は如何なる方式でも本発明の範囲を制限しない。
【0040】
本発明の組成物を周期的に服用する場合、腸内に本発明の微生物等が菌叢をなしながら人体が糖類を吸収することを競争的に妨げるだけでなく、単糖類形態の炭水化物を多糖類形態に転化させてこれらが体内に吸収されるのを防止し、微生物が生産した非消化性食餌繊維が腸内有用菌の生育条件を良好にして膓運動を刺激することにより、結果的に本発明の組成物が肥満の予防及び治療剤として機能することになる。
【0041】
一方、医薬的組成物の体重減少効果または肥満防止効果を最大化するため、従来の当業者に公知されている任意の体重減少剤を適切な含量で含むことができ、このとき添加剤の含量範囲は反復実験等を介し当業者が容易に決めることができる。添加剤に有効な成分の好ましい例には、共役リノール酸(conjugated linoleic acid)、ポリデキストロース(polydextrose)、イヌリン(inulin)、グアーガム(guar gum)、アラビアガム(arabic gum)、L-カルニチン(carnitine)、ブドウの種抽出物、フラクトオリゴ糖(fructooligosaccharide)、キシロオリゴ糖(xylooligosaccharide)、ラフィノース(raffinose)、グルコン酸(gluconic acid)、シャンピニオン(champignon)、ポリアントシアニジン(polyanthocyanidine)、ラクツロース(lactulose)、ラクチトール(lactitol)、ラクトスクロース(lactosucrose)、トウキ抽出物、ケンポナシ抽出物、蜜柑皮抽出物などがあるが、これに限定されるものではない。
【0042】
さらに、本発明は前記ラクトバチルス・ガッセリー BNR17(寄託番号:KCTC 10902BP)を培養することにより製造される培養液を提供する。本発明の培養液の製造に用いられる培地は特定の種類に限定されるものではなく、例えば通常の微生物培養用の培地を含む任意の培地を制限なく用いることができる。さらに、本発明の培養液は、特定の用途に応じて任意の添加物を更に含んでも差し支えない。例えば、本発明の培養液の体重減少効果を最大化するため、従来の当業者に公知されている任意の体重減少剤を適切な含量で含むことができ、このとき有効薬物の具体的な含量範囲は、反復実験等を介し当業者が容易に決めることができるのが自明である。
【0043】
さらに、本発明は前記乳酸菌が生産するバクテリオシン・ペプチド及びこれをコーディングする遺伝子を提供する。本発明は、本発明のバクテリオシン・ペプチドを「ガセリシン BNR17」と名付け、配列番号5に記載される塩基配列を有する。本発明のバクテリオシンであるガセリシン BNR17と、従来に報告されている抗菌性ペプチドであるガセリシン T(NCBI Blast Search No. AB029612、配列番号6)の塩基配列を比較した結果、約98%の相同性があることが分かる。
【0044】
さらに、本発明は前記ガセリシン BNR17遺伝子を含む組み換えベクターを提供する。
【0045】
本発明の組み換えベクターは、一般的な大腸菌菌株発現用ベクターに、配列番号5に記載される塩基配列を有する遺伝子を挿入することにより製造され得る。本発明の組み換えベクターの製造に使用可能な親ベクターは特定の種類に限定されるものではなく、一般に使用可能な全ての微生物発現用ベクター、好ましくは大腸菌発現用ベクターが制限なく用いられ得る。
【0046】
さらに、本発明は前記組み換えベクターで形質転換された形質転換体を提供する。
【0047】
前記形質転換体は、前記組み換えベクターを任意の宿主細胞に導入させることにより容易に製造され得る。前記宿主細胞には任意の真核または原核生物、多細胞動物由来の細胞株等が制限なく使用可能であるのは当業者において自明である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17とラクトバチルス・ガッセリー KC26(米国国立生物情報センタージェンバンク(GENBANK)寄託番号:AF243156)の16S rRNA配列を比較したものである。
【図2】本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17の腸内付着活性を示す顕微鏡写真である。
【図3】本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17が幾多の病原性細菌に対する抗菌力があることを示す写真である。
【図4】本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17の増殖に伴う葡萄糖の消費速度と多糖類の産生を示すグラフである。 ■; 細胞成長、 ◆; 葡萄糖濃度、 ▲; EPS(多糖類)濃度
【図5】ラクトバチルス・ガッセリー BNR17を摂取させたラットの糞便量を示したグラフである。
【図6】ラクトバチルス・ガッセリー BNR17摂取させたラットの糞便中のEPS(多糖類)濃度を示したグラフである。
【図7】本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17を摂取させたラットの小腸以外の臓器から分離されたコロニー等のRAPD-PCRプロファイル(profile)を示す電気泳動写真であって、それぞれ配列番号7(A)、配列番号8(B)及び配列番号9(C)に記載されるプライマーを利用して実験した結果である。
【0049】
レーン1;Lb. gasseri BNR17、レーン2-5;Lb. gasseri BNR17を摂取したラットの小腸以外の臓器から分離されたコロニー等。
【0050】
M;DNAサイズマーカー
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づき詳しく説明する。
【0052】
但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の内容が下記実施例により限定されるものではない。
【0053】
実施例 1. 母乳からの乳酸菌の分離
赤ん坊を出産してから2週以内の女性の母乳を採取し、リン酸緩衝溶液を利用して適切に希釈したあと、原液と希釈液をラクトバチルス選択培地に塗抹した。 37℃で2〜3日間培養して現われたコロニー等を形態及び色相別に区別し、さらに純粋分離した。分離されたコロニーに対しグラム染色及び顕微鏡観察を行なってグラム陽性であるとともに棒状の形態を有するコロニーだけを選別し、これらをpH 6.8のMRS液体培地で37℃、24時間培養しながら培養液のpHが4.5以下に減少するコロニーを再選別した。以後、pH 2.0のMRS培地で2時間培養したあと、さらに0.3%のoxgallが添加されたMRS培地内で9時間培養した場合に生存可能な耐酸性、耐胆汁性ラクトバチルス菌株を分離し、16S rRNAシークエンシング(sequencing)で同定してラクトバチルス・ガッセリー種に属する菌株であることを確認し(配列番号1、図1を参照)、これを「ラクトバチルス・ガッセリー BNR17」と名付けた。
【0054】
実施例 2. 分離された乳酸菌の糖利用性確認実験
前記で分離された本発明の乳酸菌株であるラクトバチルス・ガッセリー BNR17の糖利用性を、API50CHLキット(Biomerieux、France)を利用して他の標準菌株等と比較した結果を下記の表1に示した。表1で、5314はラクトバチルス・ガッセリー CECT5714;5315はラクトバチルス・ガッセリー CECT5715;11413はラクトバチルス・ガッセリー LMG11413;18194はラクトバチルス・ガッセリー LMG18194;4479はラクトバチルス・ガッセリー CECT4479;18176はラクトバチルス・ガッセリー LMG18176;13047はラクトバチルス・ガッセリー LMG13047を表わす。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から分かるように、本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17菌株はラクトバチルス・ガッセリー種の他の菌株等と比較するとき、幾つかの糖の利用において確かな差があることを確認した(太字の斜体で表示)。
【0057】
実施例 3. 分離された乳酸菌の酵素活性
前記で分離された本発明の乳酸菌株であるラクトバチルス・ガッセリー BNR17の酵素活性を、APIZYMキット(Biomerieux、France)を利用して他の標準菌株等と比較した結果を下記の表2に示した。13134は、ラクトバチルス・ガッセリー LMG13134を表わす。
【0058】
【表2】

【0059】
表2に示されているように、本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17菌株は、ラクトバチルス・ガッセリー種の他の菌株等と比較するとき、幾つかの酵素活性において差があることを確認した(太字の斜体で表示)。
【0060】
実施例 4. 耐酸性及び耐胆汁性の確認
本発明の菌株の耐酸性及び耐胆汁性を確認するため、ラクトバチルス・ガッセリー BNR17をMRS液体培地4 mlに接種して37℃、18〜20時間培養したあと、この培養液の一定量をpH 2.0に調節したMRS液体培地に初期菌数107CFU/mlになるよう再び接種し、37℃で2時間培養したあとMRS寒天平板培地を利用して生菌数を測定した。さらに、耐酸性実験を行なった培養液をそのまま遠心分離して菌体だけを回収したあと、0.3%の雄牛の胆汁(oxgall)が添加されたMRS液体培地(pH 6.8)に接種し、37℃で9時間培養したあと、さらにMRS寒天平板培地を利用して生菌数を測定した。その結果を表3に示した。
【0061】
【表3】

【0062】
その結果、本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17はpH 2.0の強い酸性処理にも拘わらず生存率が高いものと確認され、0.3%の雄牛の胆汁含有の培地でも生存が高く表われた。
【0063】
実施例 5. 腸内付着能の確認
RPMI1640培地(Gibco)を利用して、人間の腸上皮細胞であるCaCo-2細胞株を培養したプレートに本発明の菌株を一定の菌数(約107CFU/ml)になるよう接種した。これを37℃で1時間培養したあと、リン酸緩衝溶液で3回洗浄して非付着細胞を除去したあと、メタノールで検体を固定した。以後、クリスタルバイオレット(crystal violet)で染色して顕微鏡で細胞を観察した。その結果、本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17がCaCo-2細胞によく付着することを確認した(図2)。
【0064】
実施例 6. 病原性細菌に対する抗菌力の確認
BHI液体培地(Difco)で37℃、18時間培養した大腸菌(E. coli)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、サルモネラ菌(S. typhimurium)、バチルス菌(B. cereus)、リステリア菌(L. monocytogenes)、プロテウス菌(P. mirabilis)を初期菌数105CFU/mlになるよう5mlのBHI寒天培地(寒天を0.7%含有)6つにそれぞれ接種したあと、これを、BHI寒天培地(1.5%の寒天を含有)を注いで固めた6つの平板培地上にそれぞれ重ねて注いだ。6つの培地を固めたあと、各培地に直径が約4mmあるウェル(well)を空け、その上に37℃、24時間培養した本発明の乳酸菌の培養上層液(2倍濃縮液)40μlを添加して37℃、5時間培養した。
【0065】
その結果、ウェル周りに明らかな生育阻害帯を観察することができ、よって本発明の菌株は幾多の病原性細菌に対する抗菌力があることを確認した(表4及び図3)。
【0066】
【表4】

【0067】
実施例 7. 抗生剤耐性の確認
MRS寒天平板培地に綿棒でラクトバチルス・ガッセリー BNR17の培養液を塗抹したあと、エリスロマイシン(Erythromycin)、ペニシリン(Penicillin)、ゲンタマイシン(Gentamicin)、カナマイシン(Kanamycin)、ストレプトマイシン(Streptomycin)、バシトラシン(Bacitracin)、クロラムフェニコール(Chloramphenicol)、バンコマイシン(Vancomycin)、テトラサイクリン(Tetracycline)、アンピシリン(Ampicillin)、セフォキシチン(Cefoxitin)、リファンピン(Rifampin)、ネオマイシン(Neomycin)、ナリジクス酸(Nalidixic acid)、シプロフロキサシン(Ciprofloxacin)、ポリミキシン B(Polymixcin B)、トリメトプリム(Trimethoprim)が添加されている円形のディスクを載置したあと、37℃、24時間培養した。
【0068】
その結果、本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17はゲンタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン及びバシトラシン、ネオマイシン、ナリジクス酸、シプロフロキサシン、ポリミキシン B、トリメトプリムに対し耐性を示した。
【0069】
実施例 8. 抗菌ペプチド遺伝子の検出
ラクトバチルス・ガッセリー種が生産するものと知られている抗菌ペプチドのバクテリオシン遺伝子の塩基配列に、特異な配列番号3及び配列番号4に記載されるプライマー(primer)を作り、本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17のゲノムDNAを鋳型(template)に利用する重合酵素連鎖反応(PCR)法でバクテリオシン遺伝子の有無を調査した。
【0070】
その結果、ラクトバチルス・ガッセリー BNR17からバクテリオシンであるガセリシン(gassericin)に該当するPCR産物を確認し、その塩基配列を配列番号 5に記載した。前記塩基配列は、従来に報告されている配列番号6に記載されるガセリシンT(NCBI Blast Search No. AB029612)の塩基配列を比較した結果、約98%の相同性を示した。
【0071】
実施例 9. β-グルクロニダーゼ(glucuronidase)活性の測定
腸内細菌が生産するβ-グルクロニダーゼは発癌酵素の1つに知られているので、この酵素の活性を表わす菌株は有害な菌株とみなされる。本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17のβ-グルクロニダーゼ活性の有無を確認するため、エー・ピー・アイザイムキット(API ZYM kit)(Biomerieux、France)を使用して酵素活性を調査した。
【0072】
その結果、本発明の菌株はβ-グルクロニダーゼ活性を示さない安全な菌株であるのを確認した(表5)。
【0073】
【表5】

【0074】
実施例 10. 葡萄糖の消費と多糖類の産生
葡萄糖を2%(w/v)直接添加して製造したMRS培地(Difco)を製造し、ラクトバチルス・ガッセリー BNR17を最終菌数106cfu/mlになるよう接種したあと、96時間培養しながら菌数の変化を測定し、同時に葡萄糖の消費と多糖類(extracellular polysaccharide、EPS)の産生態様を調査した。
【0075】
その結果、ラクトバチルス・ガッセリー BNR17は培養12時間ぶりに最高菌数に到逹し、その以後は生菌数が減少した。このとき、葡萄糖の濃度は培養7時間以後急激に減少し、36時間以後には大きな差を見せないので、殆どの葡萄糖が36時間内に消費されるものと表われた。EPSの産生は、培養24時間目に最大濃度の520mg/lに到逹してから36時間目に僅かに減少したものの、以後再び増加する様相を示したが、これは菌体が死滅期に進入しながら自己分解(autolysis)現象が現われ、菌体内部の幾種の多糖類成分が培養液内に流出されたためであると思われる(図4)。
【0076】
実施例 11. ラクトバチルス・ガッセリー BNR17が産生する多糖類の消化酵素による分解可否の確認
先ず、α-アミラーゼ(amylase、Sigma)とパンクレアチン(pancreatin、Sigma)100mgをそれぞれ0.05Mのフォスフェートバッファー(pH 7.0)に溶解させた。ラクトバチルス・ガッセリー BNR17の培養上層液から抽出した多糖類(EPS)溶液200μlに、前記酵素液50μlと0.05Mのフォスフェートバッファー(pH 7.0)150μlを添加したあと、37℃、1時間反応させた。酵素の不活性化のため100℃、15分間加熱したあと、室温で冷却させてから葡萄糖キット(Sigma)を利用して葡萄糖の濃度を測定した。
【0077】
その結果、各消化酵素を処理する前のBNR17の多糖類溶液内では葡萄糖が検出されず、パンクレアチンとα-アミラーゼで処理した場合はそれぞれ3.70mg/l、19.1mg/lが検出された。前記結果は、BNR17が産生する多糖類が消化酵素により殆ど分解されないことを表わす。
【0078】
実施例 12. ラクトバチルス・ガッセリー BNR17の体重増加抑制効果の確認
8週齢の雄SDラット(rat)を2つのグループに分け、1つのグループにはPBS(pH 7.4)を、そして他のグループにはラクトバチルス・ガッセリー BNR17を最終菌数109CFU/mlになるように懸濁させたPBS液を8週間毎日経口投与しながら、一週に一回ずつ体重及び給餌量、コレステロールなどの血液化学値の変化を測定した。さらに、糞便量と、糞便中のEPS量を測定することにより、BNR17の多糖類産生能が実際に体重増加抑制に及ぼす影響を調査した。8週後には全ての実験動物を解剖し、肝臓、腎臓、脾臓、MLN(Mesenteric Lymph Node)を摘出してそれぞれその重量を測定した。これと同時に、摘出した各組職の一部を均質化したあと、ラクトバチルス属の選択培地であるLBSアガー(agar)に塗抹、培養して現われたコロニー等のRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)-PCRプロファイルを調査し、これをラクトバチルス・ガッセリー BNR17菌株のRAPD-PCRプロファイルと比較することにより、投与群の他の臓器への転移の可否を調査した。
【0079】
その結果、PBS液を経口投与した対照群の場合、8週間約179.1%の体重増加を見せたが、ラクトバチルス・ガッセリー BNR17を経口投与した実験群は約171.6%の体重増加を見せた(表6)。さらに、1日体重増加度と食餌効率においても対照群に比べ有意的に低い数値を示した。
【0080】
【表6】

【0081】
前記で、食餌効率の比率(Food Efficiency Ratio、FER)は体重増加(g/day)/摂取した食べ物(g/day)を表わし、*P<0.05、**P<0.05である。
【0082】
対照群と実験群の糞便量と糞便中EPSの量を測定した結果は、図5及び図6に示した。糞便量においては2つのグループの間に大きな差を見せなかったが、糞便中に含まれているEPSの量はBNR17を摂取させた実験群の方が大きく増加するものと表われた。したがって、ラクトバチルス・ガッセリー BNR17が体内に摂取される糖成分を消化され難い多糖類成分に転化させ、体外に排出させて体内吸収率を低下させることにより、体重増加抑制を誘導することができることを確認した。
【0083】
一方、菌株の人体摂取時に求められる安全性を調べるために血液化学値と臓器の重量を測定した結果、対照群と実験群の2つのグループの間に有意的な差を見せないので、副作用を誘発しないものと表われた(表7及び表8)。
【0084】
【表7】

【0085】
【表8】

【0086】
前記表8で、各数値は臓器の重量(g)/ラット(rat)の体重(g)で表わす。
【0087】
さらに、投与した菌が小腸以外の臓器に転移されるか否かを調査するため、配列番号7〜配列番号9に記載される塩基配列を有するプライマーp1、p2及びOPL5を利用して、各臓器別にLBSアガープレート(agar plate)で育ったコロニー等のRAPD-PCRプロファイルを調査した。前記PCR条件は、プライマーp1とp2の場合、94℃(2分)、36℃(5分)、72℃(5分)- 4cycles/94℃(1分)、36℃(1分)、72℃(2分)- 36cyclesであり、OPL5の場合、94℃(2分)- 1cycle/94℃(40秒)、45℃(1分)、72℃(1分)- 2cycles/94℃(40秒)、52℃(1分)、72℃(3分)- 30cycles/70℃(5分)- 1cycleであった。
【0088】
その結果、BNR17のようなプロファイルを示すコロニーはなかった(図7)。したがって、BNR17は人体摂取時に小腸以外の他の臓器に転移されない安全な菌であるものと表われた。
【0089】
製造例 1. 発酵乳の製造
脱脂粉乳を利用して無脂乳固形粉含量を8〜20重量%に調整した原料乳を72〜75℃で15秒間殺菌した。殺菌された原料乳を一定温度まで冷却させたあと、本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17菌株を106cfu/mlの濃度で接種してpH 4〜5になるまで培養した。培養完了後、培養液を冷却させた。一方、果汁濃縮液0.1〜50重量%、食餌繊維0.1〜20重量%、葡萄糖0.5〜30重量%、オリゴ糖0.1〜15重量%、カルシウム0.001〜10重量%、ビタミン0.0001〜5重量%を溶解させてシロップを製造した。このように製造されたシロップを殺菌したあと冷却し、前記培養液と一定比率で混合・撹拌して均質化させたあと、容器に包装して発酵乳を製造した。このように製造された発酵乳は、官能検査の結果、風味、物性、全体的な味において良好な結果を見せた。
【0090】
製造例 2. 乳酸菌菌末の製造
本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17をMRS液体培地に106cfu/mlの濃度で接種し、37℃で18〜24時間のあいだpH-調節発酵(pH-control fermentation)を行なった。pH調節(control)は、30体積%のNaOHを中和剤にしてpH 5.7±0.2で行なった。培養完了後、4℃で10,000×gで遠心分離して菌体を回収した。全体の組成物に対し5重量%の脱脂乳、2.5重量%の乳漿(whey)、5重量%のスクロース(sucrose)が含まれた保護剤を用意し、前記で回収した菌体を保護剤と同量に混合したあと、凍結乾燥器を介し粉末化した。このように製造されたラクトバチルス・ガッセリー BNR17の乾燥菌末は、全て1×1011cfu/g以上の生菌数を示した。前記保護剤は、10重量%のトレハロース(trehalose)、10重量%のマルトデキストリン(maltodextrine)、7.5重量%のラクトース(lactose)を更に含んでいても差し支えない。
【0091】
製造例 3. 乳酸菌製剤の製造
製造例2で製造した乳酸菌菌末を利用して乳酸菌食品、整腸剤などの乳酸菌製剤を製造した。このため、ラクトバチルス・ガッセリー BNR17の乾燥菌末20重量%にオリゴ糖10重量%、無水葡萄糖20重量%、結晶果糖5重量%、ビタミンC 2重量%、果物粉香5重量%、アロエ 5重量%、食餌繊維15重量%、オオバコ外皮18重量%を混合し、スティックまたは瓶に一定量分注して包装した。このように製造された乳酸菌製剤は5×108cfu/g以上の生菌数を維持した。
【0092】
製造例 4. 飼料添加用組成物の製造
ラクトバチルス・ガッセリー BNR17を含む本発明の飼料添加用組成物を下記表9の組成で製造した。
【0093】
【表9】

【0094】
前記で、酵素製剤はフィターゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、マルターゼ及び転化酵素の混合製剤を用い、非病原性微生物にはアスペルギルス・オリザエ用いた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
前記で検討してみたように、本発明のラクトバチルス・ガッセリー BNR17は広い生育温度及びpH範囲を有し、耐酸性、耐胆汁性、及び腸細胞に対する付着活性に優れるだけでなく、細菌性微生物に対する高い抗菌活性を有して体重増加抑制の効果を有するので、発酵乳及び多様な発酵製品だけでなく、動物の飼料を製造するための添加剤にも有効に用いられ得る。
【受託番号】
【0096】
KCTC 10902BP
【配列表フリーテキスト】
【0097】
配列番号3 gaT-950 フォワードプライマー
配列番号4 gaT-1075 リバースプライマー
配列番号5 ラクトバチルス・ガッセリーBNR17に由来するガセリシンBNR17遺伝子
配列番号6 NCBI Blast Search No. AB029612に開示されるガセリシンT遺伝子
配列番号7 プライマー p1
配列番号8 プライマー p2
配列番号9 プライマー OPL5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・ガッセリー BNR17(寄託番号:KCTC 10902BP)。
【請求項2】
配列番号1に記載される16S rRNA配列を含むことを特徴とする請求項1に記載のラクトバチルス・ガッセリー BNR17(寄託番号:KCTC 10902BP)。
【請求項3】
請求項1に記載のラクトバチルス・ガッセリー BNR17(寄託番号:KCTC 10902BP)を有効量で含む組成物。
【請求項4】
前記組成物は食品、食品用添加剤、動物飼料及び動物飼料用添加剤で構成されている群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記動物飼料用添加剤は、非病原性の他の微生物、酵素及びこれらの組合せのうち1つ以上を含むことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のラクトバチルス・ガッセリー BNR17(寄託番号:KCTC 10902BP)を有効量で含む肥満予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の菌株が生産するバクテリオシン・ペプチド。
【請求項8】
請求項7に記載のバクテリオシン・ペプチドをコーディングする遺伝子。
【請求項9】
前記遺伝子は、配列番号5に記載される塩基配列を有することを特徴とする請求項8に記載の遺伝子。
【請求項10】
前記バクテリオシン・ペプチドは、配列番号5から暗証化されることを特徴とする請求項7に記載のバクテリオシン・ペプチド。
【請求項11】
請求項8または請求項9に記載の遺伝子を含む組み換えベクター。
【請求項12】
請求項11に記載の組み換えベクターで形質転換された形質転換体。
【請求項13】
請求項1に記載のラクトバチルス・ガッセリー BNR17(寄託番号:KCTC 10902BP)の培養液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−545311(P2009−545311A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522699(P2009−522699)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002363
【国際公開番号】WO2008/016214
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(505140373)バイオニア コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】