説明

介護用入浴システム

【課題】 車椅子からリフター椅子に移乗することによって被介護者が着座したまま入浴できる介護用入浴システムにおいて、被介護者が痛みや不快感、姿勢の不安定さを感じずに快適に入浴でき、かつ、介護者の負担も軽減できる介護用入浴システムを提供すること。
【解決手段】 車椅子10及びリフター椅子11の座面を櫛歯状の固定座面構成材と可動座面構成材とを交互に配置し、車椅子10の座面とリフター椅子11の座面とを交差させる直前に、車椅子10の可動座面構成材38等を座面用レバー87で固定座面構成材34等の直下に回転移動させると共にリフター椅子11の可動座面構成材99等を座面用レバー138で固定座面構成材95等の直下に回転移動させたら、座面同士を交差させて被介護者が移乗し、さらに被介護者が着座している側の可動座面構成材を固定座面構成材と同じ高さまで戻して座り心地を良くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護用入浴システムに関し、特に被介護者が着座したままの姿勢で入浴するのに好適な構造を有する介護用入浴システムに関する。
【背景技術】
【0002】
介護用入浴システムにおいては、被介護者の負担を軽減するために身体的負担が少ない姿勢で浴槽又は浴室まで移動し、さらにほぼそのままの姿勢で入浴できるようにしたものが多い。また、被介護者の身体的負担をさらに軽減するために、あるいは介護者の介護負担をさらに軽減するために、被介護者の車椅子からリフター椅子への移乗に係る部分に対して様々な改良が加えられている。
【0003】
このような介護用入浴システムの従来例として特開2002−58724公報に開示されているものが挙げられる。図21は、従来技術に係る介護用入浴システムを示し、(A)は移動ベッド及び入浴ベッドの斜視図、(B)は移動ベッド及び入浴ベッドの平面図である。図21において、200は移動ベッド、201は入浴ベッド、202は寝板、203は昇降用支柱、204は浴槽である。図21の介護用入浴システムは、被介護者を移送するための寝板202を設けた移動ベッド200と入浴ベッド201を組み合わせたものである。移動ベッド200と入浴ベッド201とは、櫛歯状に形成されていて、両者を対向させた状態において上下方向に交差できるように構成されている。また、入浴ベッド201は2本の昇降用支柱203に昇降可能に支持されている。
【0004】
このシステムの使用方法は、まず移動ベッド200に被介護者が乗り、次に被介護者が浴槽204の上方の所定位置に来るように移動ベッド200を移動する。そして、入浴ベッド201を移動ベッド200と交差するところまで上昇させる。両者の櫛歯状の部分が交差すると、被介護者は移動ベッド200から入浴ベッド201へ移乗する。次に、移動ベッド200を浴槽204から離間させ、さらに入浴ベッド201を浴槽204内へ降下させる。以上の手順によって被介護者を入浴させることができる。また、以上の手順を逆に実行すれば、被介護者を浴室から居室へ戻すことが可能である。くわえて、介護者の負担も軽減できる利点がある。
【0005】
ところで、このシステムでは、移動ベッド200と入浴ベッド201との櫛歯状の部分は、互いに交差させる必要があるので、一定の間隔で配置する必要がある。図21に示すような間隔で配置すると、入浴中は被介護者の背中側の櫛歯状の部分に接している少数の領域だけで体重を支えることになる。したがって、当該部位への圧迫が大きくなり、被介護者が痛みや不快感、さらには姿勢の不安定さを感じる要因となる。もちろん、これらの櫛歯状の部分の幅を狭くし、さらに隣接する櫛歯状の部分同士の間隙も狭くして櫛歯状の部分の数を増加させれば、被介護者の体重を支える領域の数が増えるので、被介護者が痛みや不快感、姿勢の不安定さを感じにくくなる。しかしながら、このようにすると、入浴ベッド201を移動ベッド200と交差させようとするときに互いの櫛歯状の部分が接触して、これらの交差が妨げられる可能性が高くなる。したがって、移動ベッド200を停止させる際には、交差が妨げられない位置に相当に高い精度で停止させる必要がある。また、隣接する櫛歯状の部分同士の間隙を狭くすることによって被介護者の皮膚を挟み込むおそれも出てくるので、適当な解決策とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−58724公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、車椅子からリフター椅子に移乗することによって被介護者が着座したまま入浴できる介護用入浴システムにおいて、被介護者が痛みや不快感、姿勢の不安定さをあまり感じることなく快適に入浴でき、かつ、介護者の負担も軽減できる介護用入浴システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、前後方向に延在する支持材と、前記支持材に一端部が固定されると共に互いに平行になるように配置された複数本の略棒状の固定座面構成材と、いずれかの前記固定座面構成材の下方の位置又は前記固定座面構成材同士の間の位置に選択的に移動可能で、かつ、当該位置に保持可能な複数本の略棒状の可動座面構成材を有する車椅子と、前後方向に延在すると共に昇降可能に設けられた支持材と、前記支持材に一端部が固定されると共に互いに平行になるように配置された複数本の略棒状の固定座面構成材と、いずれかの前記固定座面構成材の下方の位置又は前記固定座面構成材同士の間の位置に選択的に移動可能で、かつ、当該位置に保持可能な複数本の略棒状の可動座面構成材を有するリフター椅子とを備え、前記車椅子の前記可動座面構成材を前記車椅子の前記固定座面構成材の下方に位置させ、かつ、前記リフター椅子の前記可動座面構成材を前記リフター椅子の前記固定座面構成材の下方に位置させているときに、前記リフター椅子の前記支持材を昇降し、前記車椅子の前記固定座面構成材と前記リフター椅子の前記固定座面構成材とを交差させることによって被介護者が移乗するようにしていることを特徴とする介護用入浴システムである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記車椅子は、一端部がいずれかの前記固定座面構成材を軸として回転可能に設けられ、他端部が前記可動座面構成材を支持している軸受をさらに備え、前記軸受を回転させることによって前記可動座面構成材がいずれかの前記固定座面構成材の下方の位置又は前記固定座面構成材同士の間の位置に選択的に移動可能で、かつ、当該位置に保持可能になされていることを特徴とする介護用入浴システムである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記車椅子は、前記可動座面構成材を複数本有し、第1の前記可動座面構成材が第1の前記軸受に自転可能に支持され、第2の前記可動座面構成材が第2の前記軸受に自転可能に支持されていて、一端部が第1の前記可動座面構成材に固定され、他端部が第2の前記可動座面構成材に固定されている連結支持材をさらに備えていることを特徴とする介護用入浴システムである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記リフター椅子は、一端部がいずれかの前記固定座面構成材を軸として回転可能に設けられ、他端部が前記可動座面構成材を支持している軸受をさらに備え、前記軸受を回転させることによって前記可動座面構成材がいずれかの前記固定座面構成材の下方の位置又は前記固定座面構成材同士の間の位置に選択的に移動可能で、かつ、当該位置に保持可能になされていることを特徴とする介護用入浴システムである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記リフター椅子は、前記可動座面構成材を複数本有し、第1の前記可動座面構成材が第1の前記軸受に自転可能に支持され、第2の前記可動座面構成材が第2の前記軸受に自転可能に支持されていて、一端部が第1の前記可動座面構成材に固定され、他端部が第2の前記可動座面構成材に固定されている連結支持材をさらに備えていることを特徴とする介護用入浴システムである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記車椅子は、前記固定座面構成材及び前記可動座面構成材の着座した被介護者の股間近傍となる部分を下方に湾曲又は屈曲させていることを特徴とする介護用入浴システムである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記リフター椅子は、前記固定座面構成材及び前記可動座面構成材の着座した被介護者の股間近傍となる部分を下方に湾曲又は屈曲させていることを特徴とする介護用入浴システムである。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記車椅子は、前記可動座面構成材を隔てて隣り合う前記固定座面構成材同士の外周面の互いに対向する部位又はその近傍にそれぞれ設けられたガイド部材をさらに備え、これらのガイド部材の間隙が前記リフター椅子の前記固定座面構成材の前後方向における幅と同じ、又は当該幅よりもわずかに広くなるように設けていることを特徴とする介護用入浴システムである。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の発明において、前記リフター椅子は、前記可動座面構成材を隔てて隣り合う前記固定座面構成材同士の外周面の互いに対向する部位又はその近傍にそれぞれ設けられたガイド部材をさらに備え、これらのガイド部材の間隙が前記車椅子の前記固定座面構成材の前後方向における幅と同じ、又は当該幅よりもわずかに広くなるように設けていることを特徴とする介護用入浴システムである。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の発明において、前記リフター椅子は、最前の前記固定座面構成材の前記支持材側の端部近傍から前方斜め下へ延び、途中で屈曲して最前の前記固定座面構成材と平行に延びるように設けられたフットレスト支持材と、前記フットレスト支持材の最前の前記固定座面構成材と平行に延びた部分に設けられたフットレストと、略棒状に形成されると共に、最前の前記固定座面構成材の前記支持材と反対側の端部近傍から前方斜め下へ延びるように設けられた被挟持材と、略棒状に形成されたフットサポート支持棒と、前記フットサポート支持棒の上端部近傍に設けられると共に、前記被挟持材又は前記フットレスト支持材の前方斜め下へ延びた部分を挟持可能な挟持具と、略帯状に形成されると共に、一端部が前記フットレスト支持材の前方斜め下へ延びた部分に固定され、他端部が前記フットサポート支持棒に固定されたフットサポートとをさらに備え、最前の前記固定座面構成材は、角度変更可能に設けられていることを特徴とする介護用入浴システムである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、車椅子とリフター椅子とのそれぞれにおいて、被介護者が移乗するときにのみ可動座面構成材を固定座面構成材の下方に位置させ、さらに両者の座面構成材を交差させることによって移乗し、移乗した後は可動座面構成材を固定座面構成材同士の間に位置させることが可能になる。したがって、入浴中又は移動中は、被介護者の体重を可動座面構成材と固定座面構成材とで支持することができ、被介護者が痛みや不快感、姿勢の不安定さをあまり感じることなく快適に入浴又は移動できる。さらに、介護者は、車椅子とリフター椅子とを操作するだけでよいので、被介護者を抱え上げるなどの大きな身体的負担がなくなる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、車椅子の可動座面構成材の回転を支持する軸受を固定座面構成材に設けたので、可動座面構成材を回転させることによって可動座面構成材の位置を簡単に変更することができる。したがって、介護者は被介護者が移乗するための準備を短時間で終えることができ、被介護者をほとんど待たせることがなく、さらに介護者の作業負担も非常に小さい。また、入浴後、リフター椅子から車椅子へ移乗するとき、車椅子の座面にあらかじめタオル等を敷くことによって、車椅子への移乗後に被介護者を抱え上げずに臀部等を拭くことができ、介護者の作業負担も非常に小さい。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、車椅子のすべての可動座面構成材が連結支持材に対して接続されているので、リフター椅子のすべての可動座面構成材が連結支持材に対して接続されているので、第1の可動座面構成材又は第2の可動座面構成材に操作用レバー取り付け、このレバーによって取り付けた可動座面構成材を動かせばもう一方の可動座面構成材も移動できる。したがって、介護者は1本の操作用レバーを動かすだけですべての可動座面構成材を操作でき、介護者の作業負担がさらに小さくなる。なお、第3の可動座面構成材又はこれ以降の可動座面構成材を連結支持材に対して接続すれば、1本の操作用レバーを動かすだけでこれらの可動座面構成材もすべて操作できる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、リフター椅子の可動座面構成材の回転を支持する軸受を固定座面構成材に設けたので、可動座面構成材を回転させることによって可動座面構成材の位置を簡単に変更することができる。したがって、介護者は被介護者が移乗するための準備を短時間で終えることができ、被介護者をほとんど待たせることがなく、さらに介護者の作業負担も非常に小さい。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、リフター椅子のすべての可動座面構成材が連結支持材に対して接続されているので、第1の可動座面構成材又は第2の可動座面構成材に操作用レバーを取り付け、このレバーによってどちらかの可動座面構成材を動かせばもう一方の可動座面構成材も移動できる。したがって、介護者は1本の操作用レバーを動かすだけですべての可動座面構成材を操作でき、介護者の作業負担がさらに小さくなる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、車椅子に座った被介護者の股間部の下方に空間ができるので、入浴を終えた被介護者は車椅子に座ったままで股間部を拭いてもらうことができる。したがって、被介護者は、不安定な姿勢で拭いてもらう必要がなく、身体的負担が軽減される。介護者は、被介護者を支えながら股間部を拭く必要がなく、作業負担がさらに軽減される。また、被介護者の股間部の下方に空間ができるので、車椅子からリフター椅子へ、又は、リフター椅子から車椅子へ被介護者が移乗する際に、被介護者の股間部を隣接する座面構成材の間隙に挟むおそれがない。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、リフター椅子に座った被介護者の股間部の下方に空間ができるので、入浴中に被介護者はリフター椅子に座ったままで股間部を洗ってもらうことができる。したがって、被介護者は、股間部を洗う際に姿勢を変える必要がなく、身体的負担が軽減される。介護者は、被介護者の腰部を支えながら股間部を洗う必要がなく、作業負担がさらに軽減される。また、被介護者の股間部の下方に空間ができるので、車椅子からリフター椅子へ、又は、リフター椅子から車椅子へ被介護者が移乗する際に、被介護者の股間部を隣接する座面構成材の間隙に挟むおそれがない。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、リフター椅子の支持材を昇降し、車椅子の固定座面構成材とリフター椅子の固定座面構成材とを交差させる際に、車椅子の相対的位置が多少前後にずれていても、車椅子のガイド部材がリフター椅子の固定座面構成材を案内して車椅子の相対的位置を修正するので、両者をそのまま交差させることができる。したがって、介護者は、車椅子を高い精度で停止させる必要がなく、作業負担がさらに軽減される。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、リフター椅子の支持材を昇降し、車椅子の固定座面構成材とリフター椅子の固定座面構成材とを交差させる際に、車椅子の相対的位置が多少前後にずれていても、リフター椅子のガイド部材が車椅子の固定座面構成材を案内して車椅子の相対的位置を修正するので、両者をそのまま交差させることができる。したがって、介護者は、車椅子を高い精度で停止させる必要がなく、作業負担がさらに軽減される。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、フットサポート支持棒の挟持具が被挟持材とフットレスト支持材の前方斜め下へ延びた部分とのどちらを挟持させるかによってフットサポートを拡げたり又は延ばしたり、閉じたりできるので、車椅子とリフター椅子とを交差させるときに被介護者の脚部の乗せ換えが簡単にでき、作業負担がさらに軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施の形態で被介護者が車椅子からリフター椅子へ移乗した状態を示す左側面図である。
【図2】第1の実施の形態の車椅子の左側面図である。
【図3】第1の実施の形態の車椅子の右側面図である。
【図4】第1の実施の形態の車椅子の正面図である。
【図5】第1の実施の形態の車椅子の平面図である。
【図6】第1の実施の形態の車椅子における座面構成材の操作説明図であり、(A)は可動座面構成材の動作を示す左側面図、(B)はストッパ機構の動作を示す正面図である。
【図7】第1の実施の形態のカートを取り付けたリフター椅子の左側面図である。
【図8】第1の実施の形態のカートを取り付けたリフター椅子の右側面図である。
【図9】第1の実施の形態のカートを取り付けたリフター椅子の正面図である。
【図10】第1の実施の形態のカートを取り付けたリフター椅子の正面図である。
【図11】第1の実施の形態のカートを取りはずしたリフター椅子の平面図である。
【図12】第1の実施の形態のリフター椅子用カートの説明図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図である。
【図13】第1の実施の形態の車椅子の座面とリフター椅子との交差状態を示す平面図である。
【図14】第1の実施の形態の本発明に係る介護用入浴システムの使用状態を示す説明図(1)であり、(A)は被介護者が車椅子に着座した状態、(B)は車椅子にリフター椅子を接近させた状態を示す。
【図15】第1の実施の形態の介護用入浴システムの使用状態を示す説明図(2)であり、(C)は車椅子の下方にリフター椅子を移動させた状態、(D)は被介護者が車椅子からリフター椅子へ移乗した状態を示す。
【図16】第1の実施の形態の介護用入浴システムの使用状態を示す説明図(3)であり、(E)は被介護者が乗ったリフター椅子と車椅子とが離れた状態を示す。
【図17】第2の実施の形態の車椅子の左側面図である。
【図18】第2の実施の形態の車椅子の説明図であり、(A)は部分省略した平面図、(B)は正面図である。
【図19】第2の実施の形態のリフター椅子の説明図であり、(A)は平面図、(B)は右側面図である。
【図20】第2の実施の形態のリフター椅子の説明図であり、(A)はフットレスト周辺の正面図、(B)は図19(B)のa−a線断面図である。
【図21】従来技術に係る介護用入浴システムを示し、(A)は移動ベッド及び入浴ベッドの斜視図、(B)は移動ベッド及び入浴ベッドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の実施の形態に係る第1の実施の形態の介護用入浴システムを図面に基づいて説明する。なお、本発明においては、浴槽又は浴室の構成、リフターの設置構造、あるいは、被介護者が車椅子からリフター椅子へ移乗した後に、どのような経路でリフター椅子を移動させるか、例えばリフター椅子を水平に直線的に移動した後に浴槽内に垂直に降下させる、リフター椅子を回転移動しつつ徐々に降下させるなどについては特に限定されるものではないので、これらの構成等については記載を省略している。また、リフター椅子を昇降させる動力源や動力の伝達機構も、ポンプ、サーボモータ、リニアモータ、油圧回路、水圧回路、各種バルブ、手動式ウインチなど様々なものを適用することができるので、動力源や動力の伝達機構についても記載を省略している。すなわち、本発明は、車椅子及びリフター椅子以外の構成については、以下の実施の形態の説明内容や図面の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、種々の構成を採用できる。
【0030】
まず、この実施の形態に係る介護用入浴システムの車椅子について説明する。図2は、 第1の実施の形態の車椅子の左側面図である。図2において、10は車椅子、19及び20は座面支持材、22及び24は脚部支柱材、27は脚部梁材、29はブレーキ支持材、30、31、32は固定座面構成材、32aは湾曲部、33は固定座面構成材、33aは湾曲部、34は固定座面構成材、35及び36は可動座面構成材、36aは湾曲部、37は可動座面構成材、37aは湾曲部、38は可動座面構成材、39は連結支持材、40及び42は軸受、46はロック解除用ハンドル、46aはハンドル台座、48はストッパ支持板、63はフットレスト支持材、65はフットレスト、67はブレーキ、68はゴムシート、69はブレーキ用ペダル、70及び72はキャスタ、74は背もたれ支柱材、74aは傾姿部、76は背もたれ、79はアームレスト支持材、81はアームレスト、83はアームレスト用無段階調整機構、85は手押し用ハンドル、87は座面用レバーを示す。また、図3は、第1の実施の形態の車椅子の右側面図である。図3において、21は座面支持材、21aは構成材固定台座、23及び25は脚部支柱材、26は挿入可能領域、41及び43は軸受、64はフットレスト支持材、66はフットレスト、71及び73はキャスタ、75は背もたれ支柱材、80はアームレスト支持材、82はアームレスト、84はアームレスト用無段階調整機構、86は手押し用ハンドルを示す。また、図4は、第1の実施の形態の車椅子の正面図である。図4において、28は脚部梁材、49はストッパ部材、53、56a及び56bはクッション材、77及び78は背もたれ支持材である。さらに、図5は、第1の実施の形態の車椅子の平面図である。図5において、44及び45はガイドリング、53,54、55、57a、57b、58a、58b、59a、59b、60、61はクッション材、62は凹部形成領域、88a、88b、88c及び88dは無給油ブッシュである。なお、以上の各図を含む図面において、図形が重なり合って煩雑になる部分については、説明に差し障りがない場合には重要性が相対的に低い部分の記載を省略している。
【0031】
図2、図3及び図4に示すように、車椅子10は、脚部支柱材22、23、24及び25の上部に座面を設け、下端部にキャスタ70、71、72及び73を設けている。また、左側面側の脚部支柱材22と脚部支柱材24との上端部には、これらを架け渡すように座面支持材20を設けている。さらに、右側面側の脚部支柱材23と脚部支柱材25の中央部よりもやや上方の部位には、これらを架け渡すように座面支持材21を設けている。したがって、座面支持材20及び21は、車椅子10の前後方向に延びている。また、車椅子10の前方側となる脚部支柱材22と脚部支柱材23は、脚部梁材28を設けた部位の下からフットレスト支持材63とフットレスト支持材64とがそれぞれ分岐しており、さらにフットレスト支持材63とフットレスト支持材64との先端側にはフットレスト65とフットレスト66をそれぞれ設けている。なお、フットレスト65及び66は、従来の車椅子と同様に、上方外側に向かって(観音開きとなるように)約90度回転することができる。この実施の形態では、車椅子に座っている者が足を降ろすためだけではなく、車椅子10の座面とリフター椅子の座面との交差時に、リフター椅子との接触を避けるためにこの回転機能を利用している。車椅子10の後方側となる脚部支柱材24と脚部支柱材25との間には、ブレーキ支持材29を設けている。ブレーキ支持材29にはブレーキ67を取り付けているが、ブレーキ67の取り付けを容易にするためにブレーキ支持材29は、幅方向の中央付近を前方に向けて取り付けている。また、ブレーキ67は、床面に接離可能な部分にゴムシート68を設けている。さらに、ブレーキ用ペダル69を踏むことによってゴムシート68を昇降できる。もちろん、ブレーキ付のキャスタを採用することも可能であるが、ブレーキ付のキャスタの場合にはブレーキが4個になるので、ブレーキ67又はこれに類するブレーキの方が介護者のブレーキ操作の負担が軽いという利点がある。なお、フットレスト支持材63及び64とフットレスト65及び66との構造は、車椅子10の座面とリフター椅子の座面とを交差できれば別のものを採用してもよい。
【0032】
さらに、脚部支柱材24と脚部支柱材25とには、これらの上端部から連続して延びるように背もたれ支柱材74と背もたれ支柱材75とをそれぞれ設けている。背もたれ支柱材74と背もたれ支柱材75は、車椅子10の座面とリフター椅子の座面とを交差時にリフター椅子の背もたれなどとの干渉することを防止するために、それぞれ傾姿部74aと傾姿部75aにおいて後方に向かって緩やかに傾いている。背もたれ支柱材74と背もたれ支柱材75との間には、図4に示すように、背もたれ支持材77及び78を横架するように設けており、さらに背もたれ支持材77と背もたれ支持材78との間に背もたれ76を設けている。さらに、背もたれ支柱材74と支柱材75の上端部には、手押し用ハンドル85と手押し用ハンドル86をそれぞれ設けている。手押し用ハンドル85及び86は、車椅子10を押すときにはこれらの先端部を後方に向けて使用するが、車椅子10の座面とリフター椅子の座面との交差時には、リフター椅子との接触を避けるためにこれらの先端部同士が対向するようにそれぞれ約90度回転させる。また、背もたれ支柱材74と背もたれ支柱材75との上部には、アームレスト用無段階調整機構83とアームレスト用無段階調整機構84とに支持されたアームレスト支持材79とアームレスト支持材80とをそれぞれ設けている。また、アームレスト支持材79とアームレスト支持材80との上には、アームレスト81とアームレスト82と設けており、前述の無段階調整機構によってこれらのアームレストの傾きを任意の角度に設定でき、さらにその角度を保持できる。
【0033】
車椅子10の座面は、図5に示すように、車椅子10の左右側方に平行に位置する 座面支持材20と座面支持材21との間を架け渡すように、前方から後方に向かって棒状の固定座面構成材30、31、32、33及び34、座面支持材19をこの順序で設けている。固定座面構成材30、31、32、33及び34は、車椅子10の左側面側の座面支持材20の側面から水平方向に延び、車椅子10の座面とリフター椅子の座面との交差を可能にするために座面支持材21の上方で湾曲(又は屈曲)するように垂下しており、端部は座面支持材21上の構成材固定台座21aに固定されている。ただし、固定座面構成材31及び34は、後述するように、軸受40、41、42及び43の近傍の部分が回転可能に設けられている。これらの固定座面構成材の垂下している部分は図3の挿入可能領域26に相当するが、後述するように、車椅子10の座面とリフター椅子の座面とを交差させるときには、これらを交差させる前にリフター椅子の固定座面構成材及び可動座面構成材を挿入可能領域26内に挿入する必要がある。また、これらの固定座面構成材の端部は、座面支持材21の上面に設けた構成材固定台座21aに固定されている。座面支持材19は、座面支持材20及び21と脚部支柱材24及び25とに接続されており、車椅子10の背面側の構造全体を支持している。さらに、固定座面構成材30、31、32、33及び34のそれぞれの間隙には、前方から後方に向かって棒状の可動座面構成材35、36、37及び38をこの順序で1本ずつ配置している。なお、これらの座面構成材は中空の円筒状の構造となっているが、これらの一部又は全部を楕円筒状、又は多角形筒状、あるいは定規のような薄い平板状の形状などにしても良い。
【0034】
ところで、図2及び図3に示すように、固定座面構成材32及び33、可動座面構成材36及び37は、それぞれの中間部分を下方に大きく湾曲させ、湾曲部32a、33a、36a及び37aを形成している。図5に示すように、湾曲部32a、33a、36a及び37aは、全体として車椅子10の座面の中央に凹部形成領域62を構成している。凹部形成領域62は、入浴を終えた被介護者がリフター椅子から車椅子10へ移乗した後に、被介護者の股間部をタオル等で拭くことを容易にすることを第1の目的として設けている。さらに、車椅子10の座面とリフター椅子の座面とを交差させるときに、座面構成材同士の間隙に被介護者の股間部が挟まれることを防止することを第2の目的としている。なお、後述するように、リフター椅子の座面の中央にも同様の凹部形成領域を設けており、被介護者の股間部が挟まれることをより確実に防止できるようにしている。また、固定座面構成材32と固定座面構成材33との座面支持材20側の端部近傍には、円板状の44 ガイドリングとガイドリング45がこれらの固定座面構成材が挿入された状態で設けられているが、これらのガイドリングの機能については別途説明する。
【0035】
また、固定座面構成材30の周側面にはクッション材53を設けており、同様に、固定座面構成材31にクッション材55、固定座面構成材32にクッション材57a及び57b、固定座面構成材33にクッション材59a及び59b、固定座面構成材34にクッション材61、可動座面構成材35にクッション材54、可動座面構成材36にクッション材56a及び56b、可動座面構成材37にクッション材58a及び58b、可動座面構成材38にクッション材60を設けている。したがって、これらの座面構成材がステンレス鋼などの、被介護者にとって堅く、滑りやすく、さらに触れたときに冷たく感じる材質であっても、被介護者の肌に直接触れることがないので、車椅子10に座ったときに痛みや不快感、不安定さを感じることがない。なお、クッション材は、それぞれの座面構成材の被介護者の肌に触れる部分にのみ貼り付けてもよい。さらに、固定座面構成材30、31、32、33及び34のクッション材のみをこれらの固定座面構成材の周側面に沿って回転するようにし、被介護者の臀部の下に敷いたタオルを座ったまま抜き取れるようにするなどの構成を採用してもよい。
【0036】
また、可動座面構成材35と可動座面構成材38とは、軸受40及び41と軸受42及び43を介して固定座面構成材31と固定座面構成材34とにそれぞれ接続されている。軸受40、41、42及び43は、大きさ及び構造がすべて同じものであり、平行な2つ回転軸をそれぞれ有するように無給油ブッシュを4つずつ内蔵している。図5の無給油ブッシュ88a、88b、88c及び88dに示すように、これらの固定座面構成材の両端部近傍に無給油ブッシュを2つずつ設けてあるので、これらの固定座面構成材の両端部近傍の部分は固定されておらず左右に回転自在な構造となっている。また、可動座面構成材35と可動座面構成材38には、同様の無給油ブッシュを2つずつ設けてある。したがって、可動座面構成材35と可動座面構成材38とは、固定座面構成材31と固定座面構成材34とを中心として公転するように支持されており、さらに自転することもそれぞれ可能である。また、無給油ブッシュを採用しているのでマシン油を給油する必要がなく、車椅子10の管理が容易である上に、マシン油で被介護者の体やタオルなどを汚すことがない。さらに、可動座面構成材35と可動座面構成材38との座面支持材20側には、連結支持材39が接続されている。連結支持材39は、車椅子10の前後方向に延びる板状の支持材であり、可動座面構成材35と可動座面構成材38との接続部位の間において可動座面構成材36及び37の端部も接続している。したがって、可動座面構成材35、36、37及び38は、連結支持材39を介して互いに連結されており、固定座面構成材31の軸受40及び41近傍の部分と、又は固定座面構成材34の軸受42及び43の近傍の部分とを回転させれば、可動座面構成材35、36、37及び38はこの部分の回転に連動して動くことになる。なお、無給油ブッシュの個数や配置は、この実施の形態のものに限定されるものではなく、回転を支持する構成に応じて適宜増減できる。また、マシン油の給油が必要ないものであれば無給油ブッシュ以外のものを採用してもよい。
【0037】
さらに、可動座面構成材35、36、37及び38の動作について詳しく説明する。図6は、第1の実施の形態の車椅子における座面構成材の操作説明図であり、(A)は可動座面構成材の動作を示す左側面図、(B)はストッパ機構の動作を示す正面図を示す正面図である。図6において、39a、39b及び39cは凹部、47はロック連結材、50はロック機構、51はバネ、52は案内材、89a広ピッチ部分、89bは狭ピッチ部分である。
【0038】
図6(A)に示すように、座面用レバー87の基端部は、固定座面構成材31の軸受40を設けた部分に固定されている。前述のように、固定座面構成材31は、中央寄りの部分が固定されているのに対し、軸受40及び41近傍の部分は回転可能に設けられている。したがって、座面用レバー87を矢印の方向に約90度回転すれば、軸受40も固定座面構成材31に対して同じ角度右回転し、可動座面構成材35は固定座面構成材31を中心として同じ角度だけ右方向へ公転する。図6(A)に示すように、可動座面構成材35が固定座面構成材31と同じ高さにあるときには、約90度右方向へ公転すると可動座面構成材35は固定座面構成材31の直下に移動する。可動座面構成材38は、可動座面構成材35に連結支持材39を介して連結されているので、固定座面構成材34を中心として約90度右方向へ公転して固定座面構成材34の直下に移動する。可動座面構成材36と可動座面構成材37とも、可動座面構成材35に連結支持材39を介して連結されているので、それぞれ固定座面構成材32と固定座面構成材33との直下に移動する。なお、可動座面構成材35及び可動座面構成材38の軸受近傍は自転可能であるので、動座面構成材35及び可動座面構成材38が公転するときでも連結支持材39は水平状態のまま移動する。
【0039】
次に、座面用レバー87を左方向に約90度回転すれば、可動座面構成材35、36、37及び38は以上の説明と逆方向に移動するので、固定座面構成材30、31、32、33及び34の間隙に移動する。なお、連結支持材39には、凹部39a、39b及び39cを形成してあり、連結支持材39が固定座面構成材31、32及び33と干渉しないようにしてある。したがって、座面用レバー87を左方向に約90度回転すると、可動座面構成材35、36、37及び38は固定座面構成材30、31、32、33及び34と同じ高さまで移動する。なお、隣接する座面構成材の間隔は、座り心地が良く、かつ、隣接するクッション材同士が接触して、可動座面構成材35、36、37及び38の移動が阻害されないことなどを考慮すると、30mm〜50mmとすることが望ましい。なお、可動座面構成材35、36、37及び38を下方に移動した状態における各固定座面構成材の間隔は、広ピッチ部分89aに示すように広い間隔となっているが、固定座面構成材34と座面支持材19との間隔のみは、狭ピッチ部分89bに示すように狭くなっている。これは、後述するように、車椅子10の座面構成材とリフター椅子の座面構成材とを交差させるときに、前方又は後方に1ピッチずれた状態で交差させることを防止するために、このように異なる間隔としている。なお、軸受を可動座面構成材36又は可動座面構成材37についても軸受を設けて固定座面構成材32又は固定座面構成材33に接続し、さらに連結支持材39を設けずに各可動座面構成材を別個に移動するようにしてもよい。
【0040】
ところで、被介護者が座っているときに可動座面構成材35が自由に移動するようになっていると事故の原因となるので、介護者が可動座面構成材35、36、37及び38を操作しているとき以外は、これらの可動座面構成材が常時ロックされるようにしている。ロック機構50は、可動座面構成材35、36、37及び38が固定座面構成材30、31、32、33及び34の間隙に位置しているときには、図6(B)の(a)に示すように、ストッパ部材49が連結支持材39の下端部に接するように位置している。また、座面支持材20に固定されたストッパ支持板48とストッパ部材49との間には、バネ51が押し縮められた状態で設けられている。したがって、ストッパ部材49には座面支持材21側への押圧力が常時加わっており、ストッパ部材49に多少の衝撃が加わっても座面支持材20側に動くことはない。したがって、連結支持材39は図6(B)の(a)に示した位置から下方へ動かないので、可動座面構成材35、36、37及び38も下方へ動くことはない。介護者がロック解除用ハンドル46を手前に強く引くと、ロック解除用ハンドル46に接続されたロック連結材47を介してストッパ部材49も案内材52に沿って手前に引かれ、ハンドル台座46aも手前に動く。このままの状態で座面用レバー87を右方向に約90度回転すれば、可動座面構成材35、36、37及び38が回転して、連結支持材39はストッパ部材49に妨げられずに下方へ移動する。介護者が座面用レバー87を操作する前にロック解除用ハンドル46から手を放すと、バネ51の弾発力によってストッパ部材49が座面支持材21側へ瞬時に動くので、何らかの理由によって介護者が作業を中断しても、可動座面構成材35、36、37及び38が自由に動く状態で、かつ、ロック状態が解除されている状態にはならない。
【0041】
次に、リフター椅子について説明する。図7は、第1の実施の形態のカートを取り付けたリフター椅子の左側面図である。図7において、11はリフター椅子、12はリフター椅子用カート、15は椅子支持材、91は座面支持材、92は固定座面構成材兼フットレスト支持材、93、94及び95は固定座面構成材、95aは湾曲部、96は固定座面構成材、96aは湾曲部、97、98及び99は可動座面構成材、99aは湾曲部、100は可動座面構成材、100aは湾曲部、101は可動座面構成材、104及び106は軸受、120はフットレスト支持材、121はフットレスト、122はフットレスト用ラチェット、122aはラチェット用レバー、128は背もたれ枠材、129は背もたれ、131は背もたれ用ラチェット、131aはラチェット用レバー、132はアームレスト、134はアームレスト用無段階調整機構、136ヘッドレスト枠材、137はヘッドレスト、138座面用レバー、141及び143はカート支柱材、147、150及び152はカート梁材、154はカート取付板、158、159、160及び163はキャスタであり、その他の符号は図2と同じものを示す。また、図8は、第1の実施の形態のカートを取り付けたリフター椅子の右側面図である。図8において、16、17及び18は補強材、90は座面支持材、103は連結支持材、133はアームレスト、135はアームレスト用無段階調整機構、142及び144はカート支柱材、148及び151はカート梁材、157カート固定キー、162及び164はキャスタであり、その他の符号は図7と同じものを示す。さらに、図9は、第1の実施の形態のカートを取り付けたリフター椅子の正面図である。図9において、13はリフター支柱、110はクッション材、130は背もたれ支持材、145はカート梁材、155及び156は連結レールであり、その他の符号は図7及び図8と同じものを示す。また、図10は、第1の実施の形態のカートを取り付けたリフター椅子の正面図である。図10において、123及び124は被挟持材、125はフットサポート支持棒、126はフットサポート、127a及び127bは挟持具であり、その他の符号は図7及び図8と同じものを示す。くわえて、図11は、第1の実施の形態のカートを取りはずしたリフター椅子の平面図である。図11において、102aは狭ピッチ部分、102bは広ピッチ部分、105及び107は軸受、108及び109はガイドリング、111、112、113、114、115a、115b、116a、116b、117a、117b、118a、118b及び119はクッション材、139a、139b、139c及び139dは無給油ブッシュ、140は凹部形成領域であり、その他の符号は図7及び図8と同じものを示す。また、図12は、第1の実施の形態のリフター椅子用カートの説明図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図である。図12において、146はカート梁材、149はカート梁材、154はカート取付板であり、その他の符号は図7及び図8と同じものを示す。
【0042】
図10に示すように、リフター椅子11は、右側面側の座面支持材90が椅子支持材15に固定されており、さらに椅子支持材15はリフター椅子11の昇降を支持するリフター支柱13に固定されている。前述のように、この実施の形態に係る介護用入浴システムでは、リフター椅子を昇降させる動力源や動力の伝達機構は垂直方向の昇降が可能であればその構造や動力源は種々のものを採用できるので、リフター支柱13の形状又は構造は図10に示したものと全く異なるものであってもよい。また、リフター椅子11は、水没させて使用することを前提としているので、シャワー等で濡れてもまったく問題がない。そこで、この実施の形態に係る介護用入浴システムでは、リフター椅子11を耐水性の車椅子として利用できるようにしている。すなわち、リフター支柱13から取りはずしてリフター椅子用カート12に固定することによって、車椅子と同様に被介護者を乗せて移動できるようにしている。例えば、浴槽で体を温めた後にリフター椅子11に座ってシャワー室へ移動する、病室や居室のベッドからシャワー室へそのまま移動してシャワーのみを浴びて病室へ戻る、病室や居室のベッドからプールサイドへ移動してリフター椅子11に座ったままプール内へ入る、などの利用が可能である。もちろん、リフター椅子11をリフター椅子用カート12の取り付けを前提としない形状又は構造にしてもよい。
【0043】
図7、図8及び図11に示すように、リフター椅子11の座面は、座面支持材90に対して、リフター椅子11の前方から後方にも向かって、固定座面構成材兼フットレスト支持材92、固定座面構成材93、94、95及び96、座面支持材91の順に固定されており、これらの先端部はリフター椅子11の左側面側へ向かって水平に延びている。なお、車椅子10とは、これらがすべて片持ちの状態で固定されている点で異なっている。固定座面構成材兼フットレスト支持材92は、座面支持材90側からフットレスト支持材120が分岐するように前方に延びており、途中の部分でリフター椅子11の左側面側へ屈曲している。屈曲した部分にはフットレスト121を設けている。なお、固定座面構成材兼フットレスト支持材92は、座面の一部でもある。また、フットレスト支持材92は、フットレスト用ラチェット122を介して座面支持材90に支持されており、フットレスト用ラチェット122のラチェット用レバー122aを操作することによって固定座面構成材兼フットレスト支持材92自体を回転させて角度を適宜変更し、これによってフットレスト121の角度も適宜変更できるようにしている。また、この実施の形態では、図10に示すように、固定座面構成材兼フットレスト支持材92と及びフットレスト支持材120との先端部近傍に被挟持材123と被挟持材124とを設けている。被挟持材123と被挟持材124とは、互いの先端部同士が対向するように配置されており、フットサポート支持棒125の挟持具127a及び127b 挟持具によって挟持できるようにしている。フットサポート支持棒125とフットレスト支持材120の前方に延びている部分には、ポリ塩化ビニル製のフットサポート126の両端部を取り付けている。フットサポート126は、フットレスト121に足が届かない被介護者や脚力が弱っている被介護者の脚部をサポートするものである。リフター椅子11の座面と車椅子10の座面とを交差させるときや、被介護者が必要としないときには、挟持具127a及び127bをフットレスト支持材120の前方に延びている部分に挟持させておく。なお、フットサポート126は、アコーデオン状に伸縮する構造にしてもよい。また、フットサポート126の材質は、エラストマーや撥水加工した布などでもよい。さらに、複数の短冊状のプラスチック板材を屏風のように繋げることによって折り畳み式の構造にしてもよい。また、座面支持材90の下面には連結レール155を固定している。また、フットレスト支持材92とフットレスト121との構造は、車椅子10の座面とリフター椅子11の座面とを交差できれば別のものを採用してもよい。
【0044】
また、座面支持材91には、上方へ向かって立ち上がるように背もたれ枠材128を設けている。背もたれ枠材128は逆U字状に形成されており、左右の立ち上がり部分を横架するように背もたれ支持材130を設けている。さらに、背もたれ枠材128と背もたれ支持材130とに囲まれた領域に背もたれ129を設けている。また、背もたれ枠材128の右側面側の立ち上がり部分の基端部には、背もたれ用ラチェット131を設けており、ラチェット用レバー131aを操作することによって背もたれ枠材128の角度を適宜変更できるようにしている。さらに、背もたれ枠材128の上端部の水平部分には、上方へ向かって立ち上がるようにヘッドレスト枠材136を設けている。くわえて、背もたれ枠材128とヘッドレスト枠材136とに囲まれた領域にヘッドレスト137を設けている。また、背もたれ枠材128の左右の立ち上がり部分の中段には、アームレスト用無段階調整機構134とアームレスト用無段階調整機構135とを介してアームレスト132とアームレスト133とをそれぞれ設けている。アームレスト132及び133の角度は、図7及び図8に示すように、アームレスト用無段階調整機構134及び135によって無段階に変更できる。なお、図示していないが、被介護者の胴体部をサポートするために背もたれ枠材128にサポート用ベルトを設けてもよい。
【0045】
リフター椅子11の座面は、車椅子10と座面同士を交差させるために、車椅子10の座面とほぼ同じ構成となっている。すなわち、可動座面構成材97と可動座面構成材101とは、軸受104及び105と軸受106及び107を介して固定座面構成材93と座面支持材91とにそれぞれ接続されている。軸受40、41、42及び43は、平行な2つ回転軸をそれぞれ有し、無給油ブッシュ139a、139b、139c及び139dはに示すように、固定座面構成材93と座面支持材91との両端部近傍に2つずつの無給油ブッシュを設けているので、これらの固定座面構成材の両端部近傍の部分は固定されておらず左右に回転自在な構造となっている。また、可動座面構成材97と可動座面構成材101とには、同様の無給油ブッシュを2つずつ設けてある。したがって、可動座面構成材97と可動座面構成材101とは、固定座面構成材93と座面支持材91とを中心として公転するように支持されており、さらに自転することもそれぞれ可能である。また、無給油ブッシュを採用しているのでマシン油を給油する必要がなく、車椅子10の管理が容易である上に、マシン油で被介護者の体やタオル、浴槽の湯などを汚すことがない。さらに、可動座面構成材97と可動座面構成材101の座面支持材90側には、連結支持材103が接続されている。連結支持材103は、可動座面構成材97と可動座面構成材101との接続部位の間において可動座面構成材98、99及び100の端部も接続している。したがって、可動座面構成材97、98、99、100及び101は、連結支持材103を介して互いに連結されており、固定座面構成材93の軸受104及び105近傍の部分と、又は座面支持材91の軸受106及び107の近傍の部分を回転させれば、可動座面構成材97、98、99、100及び101はこの部分の回転に連動して動くことになる。なお、無給油ブッシュの個数や配置は、この実施の形態のものに限定されるものではなく、回転を支持する構成に応じて適宜増減できる。また、マシン油の給油が必要なく、水没しても問題ないものであれば無給油ブッシュ以外のものを採用してもよい。
【0046】
図11に示すように、座面用レバー138の基端部は、座面支持材91の軸受106を設けた部分に固定されているので、座面用レバー87を左方向に約90度回転すれば、可動座面構成材97、98、99、100及び101は、それぞれ固定座面構成材93、94、95、96及び座面支持材91の直下に移動する。逆に、座面用レバー138を左方向に約90度回転すれば、可動座面構成材97、98、99、100及び101は、それぞれ固定座面構成材93、94、95、96及び座面支持材91の間隙に移動する。なお、これらの可動座面構成材に対しても、車椅子10と全く同じロック機構を設けているが、その説明と図面への記載は省略する。また、固定座面構成材兼フットレスト支持材92の周側面にはクッション材110を設けており、同様に、可動座面構成材97にクッション材111、固定座面構成材93にクッション材112、可動座面構成材98にクッション材113、固定座面構成材94にクッション材114、可動座面構成材99にクッション材115a及び115b、固定座面構成材95にクッション材116a及び116b、可動座面構成材100にクッション材117a及び117b、固定座面構成材96にクッション材118a及び118b、可動座面構成材101にクッション材119をそれぞれ設けている。さらに、リフター椅子11の固定座面構成材のすべてが座面支持材90による片持ちになっているので、固定座面構成材94、95及び96の座面支持材90側の端部近傍に、補強材16、17及び18の端部を接続している。なお、補強材16、17及び18の他方の端部は、図10に示すように、椅子支持材15に接続されている。また、固定座面構成材95と固定座面構成材96との座面支持材90側の端部近傍には、円板状のガイドリング108とガイドリング109がこれらの固定座面構成材が挿入された状態で設けられているが、これらのガイドリングの機能については後述する。
【0047】
また、図7に示すように、可動座面構成材99、固定座面構成材95、可動座面構成材100及び固定座面構成材96は、それぞれの中間部分を下方に大きく湾曲させ、湾曲部99a、95a、100a及び96aを形成している。そして、図11に示すように、湾曲部99a、95a、100a及び96aは、全体としてリフター椅子11の座面の中央に凹部形成領域140を構成している。凹部形成領域140は、入浴中の被介護者の股間部を洗うことを容易にすることを第1の目的として設けている。さらに、リフター椅子11と車椅子10の座面とを交差させるときに、座面構成材同士の間隙に被介護者の股間部が挟まれることを防止することを第2の目的としている。また、可動座面構成材97、98、99、100及び101を下方に移動した状態における固定座面構成材兼フットレスト支持材92及び93、94、95及び96の間隔は、狭ピッチ部分102aに示すように狭い間隔となっているが、固定座面構成材96と座面支持材91との間隔のみは、広ピッチ部分102bに示すように広くなっている。これは、前述した車椅子10の場合と同様に、リフター椅子11の座面構成材と車椅子10の座面構成材とを交差させるときに、前方又は後方に1ピッチずれた状態で交差させることを防止するために、このように異なる間隔としている。すなわち、リフター椅子11の座面と車椅子10と座面とを交差させるために、図3の挿入可能領域26にリフター椅子11の固定座面構成材及び可動座面構成材を挿入可能領域26内に挿入する必要がある。このとき、リフター椅子11が前方に1ピッチずれていると、リフター椅子11を少し上昇させた段階で、座面支持材91に車椅子10の固定座面構成材34が干渉する。また、リフター椅子11が後方に1ピッチずれていると、フットレスト支持材92が脚部支柱材23に干渉するので、挿入すること自体ができない。フットレスト支持材92がこの実施の形態と別の構成を採用していて脚部支柱材23に干渉しないとしても、リフター椅子11を少し上昇させた段階で、固定座面構成材96に車椅子10の座面支持材19が干渉する。したがって、介護者は作業ミスにすぐに気付くことになる。
【0048】
次に、リフター椅子用カートについて説明する。図12に示すように、リフター椅子用カート12は、カート支柱材141、142、143及び144の下端部にそれぞれキャスタ158、159、160及び161を設けている。また、前方のカート支柱材141とカート支柱材142との間にはカート梁材145及び149を横架するように設け、後方のカート支柱材143とカート支柱材144との間にはカート梁材146及びカート梁材152を横架するように設けている。なお、カート梁材145及び146は、後述するように、連結レール156を連結レール155にスライドさせながら挿入するときに、湾曲部99a、95a、100a及び96aと干渉することを避けるために、中央寄りの部分を下方に大きく湾曲させている。さらに、左側面側のカート支柱材141とカート支柱材143との間にはカート梁材147及び150を横架するように設け、右側面側のカート支柱材142とカート支柱材144との間にはカート梁材148及び151を横架するように設けている。くわえて、カート取付板154も固定されている。リフター椅子用カート12上にリフター椅子11を固定するときには、カート取付板154と一体のレール取付板153の上面に固定された連結レール156をリフター椅子11の連結レール155の溝にスライドさせながら挿入する。さらに、挿入を完了したら、カート固定キー157を連結レール155と連結レール156との貫通孔に貫通させるによって連結レール156が抜けないように固定する。なお、リフター椅子用カート12にも車椅子10と同様のブレーキを設けてもよい。また、1つ又は2つのキャスタにブレーキを設けてもよい。
【0049】
続けて、車椅子の座面とリフター椅子の座面の交差状態について説明する図13は、第1の実施の形態の車椅子の座面とリフター椅子との交差状態を示す平面図である。図13において用いた符号は、図2等と同じものを示す。車椅子10の座面とリフター椅子11の座面とを交差させるときには、互いの固定座面構成材及び可動座面構成材が対向するように位置させた後、それぞれの可動座面構成材を固定座面構成材等の下方へ移動させる。そして、図3の挿入可能領域26にリフター椅子11の固定座面構成材及び可動座面構成材を挿入すると、図13に示した状態にする。すなわち、リフター椅子11の固定座面構成材兼フットレスト支持材92が最も前方に位置するようにし、かつ、それぞれの固定座面構成材が交互に平面的に見て重なり合わないように位置させる。この状態においてリフター椅子11を上昇させると、車椅子11に干渉することなく両者の座面が交差させることができる。また、両者の座面が交差するときに被介護者の移乗が直ちに完了する。なお、ガイドリング44とガイドリング45との間隙を固定座面構成材95の先端部分の車椅子11及びリフター椅子11の前後方向における径(幅)と同じ、又はこの径よりもわずかに広くなるように設けてあり、ガイドリング108とガイドリング109との間隙も固定座面構成材33に対して同様に設けている。したがって、車椅子10とリフター椅子11の位置が前後方向に相対的に多少ずれている場合は、リフター椅子11を上昇させて、ガイドリング44とガイドリング45との間を固定座面構成材95がすり抜け、同時にガイドリング108とガイドリング109との間を固定座面構成材33がすり抜ける時点において、車椅子10とリフター椅子11とのいずれか一方又は両方が動くので、車椅子10とリフター椅子11の相対的位置が修正されて両者がスムーズに交差する。なお、ガイドリング44及45はそれぞれ固定座面構成材を貫通させるために円環状に形成しているが、ガイド部材は、必ずしも円環状に形成する必要はない。すなわち、可動座面構成材を隔てて隣り合う前記固定座面構成材同士の外周面の互いに対向する部位又はその近傍にガイド部材を設け、これらのガイド部材の間隙を固定座面構成材95の先端部分の車椅子11及びリフター椅子11の前後方向における径(幅)と同じ、又はこの径よりもわずかに広くなるように設けてあれば形状を問わない。例えば、略C字状のリングや、略コ字状のものであってもよく、あるいは略円丘状や略直方体状などの形状にしてもよい。ガイドリング108及び109の形状についても同様である。
【0050】
さらに、この実施の形態に係る介護用入浴システムの被介護者の移乗動作について説明する。図1は、第1の実施の形態で被介護者が車椅子からリフター椅子へ移乗した状態を示す左側面図である。図14は、第1の実施の形態の介護用入浴システムの使用状態を示す説明図(1)であり、(A)は被介護者が車椅子に着座した状態、(B)は車椅子にリフター椅子を接近させた状態を示す。図15は、第1の実施の形態の介護用入浴システムの使用状態を示す説明図(2)であり、(C)は車椅子の下方にリフター椅子を移動させた状態、(D)は被介護者が車椅子からリフター椅子へ移乗した状態を示す。図16は、第1の実施の形態の介護用入浴システムの使用状態を示す説明図(3)であり、(E)は被介護者が乗ったリフター椅子と車椅子とが離れた状態を示す。図1、図14、図15、図16及び図1において、14は被介護者であり、その他の符号は、図2等と同じものを示す。
【0051】
まず、図14(A)に示すように、被介護者14を車椅子10に乗せてリフター椅子11の近傍まで運ぶ。次に、図14(B)に示すように、車椅子10の座面用レバー87を操作して可動座面構成材35、36、37及び38を下方へ移動させると共に、車椅子10のフットレスト65及び66を両者が上方に開くように回転させる。また、リフター椅子11の座面用レバー138を操作して可動座面構成材97、98、99、100及び101を下方へ移動させると共に、リフター椅子11の固定座面構成材及び可動座面構成材を車椅子10の挿入可能領域26に挿入できるようにリフター椅子11の高さと前後方向の位置を調整しておく。次に、図15(C)に示すように、車椅子10をリフター椅子11に近づけて、又はリフター椅子11を車椅子10に近づけて、両者の座面が平面的に重なり合うようにする。そして、図15(D)に示すように、リフター椅子11を上昇させて車椅子10の座面とリフター椅子11の座面を交差させて、リフター椅子11に被介護者14を移乗させる。さらに、リフター椅子11を上昇させて図1に示す状態にする。次に、図16(E)に示すように、リフター椅子11の座面用レバー138を操作して可動座面構成材97、98、99、100及び101を上方へ移動させてリフター椅子11の座り心地を良くした上で、リフター椅子11を浴槽に向かって移動させる。
【0052】
以上説明したように、この実施の形態に係る介護用入浴システムにおいては、車椅子10とリフター椅子11との両方に可動座面構成材を設け、車椅子10の座面とリフター椅子11の座面とを交差させる直前にこれらの可動座面構成材を下方に移動し、両者を交差させたら直ちに可動座面構成材を上方に移動させるようにしているので、被介護者が痛みや不快感、姿勢の不安定さをあまり感じることなく快適に入浴できる。また、可動座面構成材の移動はレバーとロック機構の操作で簡単に実行できるので、介護者の作業負担も軽減できる。また、車椅子10の座面とリフター椅子11の座面とを交差させるときに、車椅子10の座面の前後方向の位置に相対的な位置ずれがあっても、ガイドリング44、45、108及び109によってその位置が修正されるので、車椅子10の停止位置の調整に手間取ることがほとんどない。さらに、車椅子10の座面構成材とリフター椅子11の座面構成材とに1ピッチのずれがあると両者を交差できないので、介護者は両者の位置の間違いにすぐ気がつく。また、被介護者の臀部の下にタオルやマットを敷いている場合には、そのタオルやマットごと移乗できる。くわえて、リフター椅子用カート12を設けているので、被介護者14を入浴させた後にシャワー室でシャワーを浴びるなど、従来システムにない使い方ができる。
【0053】
さらに、本発明の実施の形態に係る第2の実施の形態の介護用入浴システムを図面に基づいて説明する。なお、第1の実施の形態の介護用入浴システムと同じ構成となる部分は、第1の実施の形態と同じ符号で示し、その部分の説明を省略する。また、図示していない部分については、以下の説明で特に触れるものを除いて第1の実施の形態の介護用入浴システムで図示しているものと同じ構成となる。まず、この実施の形態に係る介護用入浴システムの車椅子について説明する。図17は、第2の実施の形態の車椅子の左側面図である。図17において、32b、33b、36b及び37bは屈曲部であり、その他の符号は、第1の実施の形態の車椅子と同じものを示す。また、図18は、第2の実施の形態の車椅子の説明図であり、(A)は部分省略した平面図、(B)は正面図である。図18において用いた符号は、すべて図17及び第1の実施の形態の車椅子と同じものを示す。
【0054】
この実施の形態の車椅子10は、可動座面構成材36、固定座面構成材32、可動座面構成材37及び固定座面構成材33で構成される座面中央の凹部を、図17及び図18(B)の屈曲部36b、32b、37b及び33bで示しているように、下方に向けて略V字状に折れ曲がっているような状態に形成している。また、屈曲部36b、32b、37b及び33bの左右端部も第1の実施の形態の緩やかなカーブとは異なり、明確に折れ曲がった状態になっている。このように形成することによって、屈曲部36b、32b、37b及び33bの左右方向の幅を第1の実施の形態における幅よりも若干狭くして凹部空間をやや小さくしている。したがって、この空間による被介護者の座り心地への影響は、第1の実施の形態よりも小さいと言える。なお、可動座面構成材36、固定座面構成材32、可動座面構成材37及び固定座面構成材33で構成される座面中央の凹部については、被介護者の体格や、四肢の状態、股間部を洗うのか洗わないのか、浴槽に比較的長く浸かることが目的なのか、シャワーだけで済ますことが目的なのかなど製品の使用目的等によって適宜選択できる。また、図18(A)のアームレスト支持材79に示すように、この実施の形態ではアームレスト支持材79及び80が背もたれ支柱材74及び75よりも外側に出た、つまり背もたれ支柱材74及び75よりもさらに左右側方に位置するようにしている。したがって、第1の実施の形態の車椅子10よりも左右の幅が相対的に広くなるが、リフター椅子11と交差させるときにアームレスト81及び82とリフター椅子11が触れにくくなり、交差が容易になる利点がある。
【0055】
次に、リフター椅子及びリフター椅子用カートについて説明する。図19は、第2の実施の形態のリフター椅子の説明図であり、(A)は平面図、(B)は右側面図である。図19において、162はフック、167はロック解除用ハンドル、168はリング、169はカート梁材、170はバックル、171はフック、172はレバーであり、その他の符号は、第1の実施の形態のリフター椅子と同じものを示す。図20は、第2の実施の形態のリフター椅子の説明図であり、(A)はフットレスト周辺の正面図、(B)は図19(B)のa−a線断面図である。図20において、163はバックル、164はフック、165 はレバー、166はロック機構であり、その他の符号は、図19及び第1の実施の形態のリフター椅子と同じものを示す。
【0056】
リフター椅子11においても、図19の可動座面構成材99、固定座面構成材95、可動座面構成材100及び固定座面構成材96の凹部形成領域140を形成する部分は、図20(B)の屈曲部95b及び99bに示すように、下方に向けて略V字状に折れ曲がっているように形成している。さらに、図19に示すように、アームレスト132及び133も、車椅子10と同様に背もたれ枠材128よりもさらに左右側方に位置するようにしている。また、図19(B)及び図20(B)に示すように、リフター椅子11とリフター椅子用カート12とは、バックル163及び168によって接続している。すなわち、リフター椅子11とリフター椅子用カート12との位置合わせをした後に、固定座面構成材95の先端部に設けたフック162に対して、バックル163のフック164を掛け、同様に座面支持材90に接続されたリング168に対してバックル170のフック171を掛ける。そして、バックル163のレバー165とバックル170のレバー172を下側に倒して図20(B)に示す状態にする。リフター椅子11とリフター椅子用カート12との位置合わせが正確にできるのならば、2つのバックルを使用するこの実施の形態の方がレールを利用する第1の実施の形態よりも作業負担が軽いと言える。ところで、この実施の形態のフットサポート支持棒125は、被挟持材123又はフットレスト支持材120を挟持する挟持具125のみで支持されており、挟持具127a及び127bを使用する第1の実施の形態よりも挟持具の個数を減らしている。このように、挟持具125の挟持力や被挟持材123の太さ等によっては挟持具の個数を適宜変更することも可能である。なお、挟持具を1個とする場合には、滑り止めのゴムを設けた被挟持部120aに示すように、挟持具を補助するものを設けることが望ましい。また、リフター椅子11の可動座面構成材97、98、99、100及び101のロックには、ロック機構166を利用している。ロック機構166のロック解除用ハンドル167を手前に引くだけで簡単にロックを解除できるが、第1の実施の形態の車椅子10のロック機構50と同様に、ロックを解除したまま放置されることを防止できる構造となっている。第1の実施の形態のリフター椅子11にもロック機構166と同様のものを設けている。
【0057】
なお、本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、可動座面構成材を固定座面構成材の下方に移動させる構造などについては、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形を加えることが可能である。例えば、可動座面構成材を下降させた後に水平方向に移動させる、具体的には、略L字状のレールを設け、可動座面構成材をこのレールに沿って移動させることによって固定座面構成材の下方に移動させるなどの構造を採用してもよい。また、車椅子の固定座面構成材を片持ちにしてもよい。さらに、車椅子とリフター椅子の座面構造を逆のものにしてもよい。車椅子に昇降機能を付加し、リフター椅子の座面と同様の構造にしたシャワー椅子やその他の椅子と車椅子との間で移乗できるようにしてもよい。また、被介護者の臀部の下に敷いたタオル等を下方に抜き取りやすくするために、一部の座面構成材又はクッション材の高さ又は材質を他のものと異なるようにしてもよい。くわえて、第1の実施の形態の構成と第2の実施の形態の構成とを組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 車椅子
11 リフター椅子
12 リフター椅子用カート
13 リフター支柱
14 被介護者
15 椅子支持材
16 補強材
17 補強材
18 補強材
19 座面支持材
20 座面支持材
21 座面支持材
21a 構成材固定台座
22 脚部支柱材
23 脚部支柱材
24 脚部支柱材
25 脚部支柱材
26 挿入可能領域
27 脚部梁材
28 脚部梁材
29 ブレーキ支持材
30 固定座面構成材
31 固定座面構成材
32 固定座面構成材
32a 湾曲部
32b 屈曲部
33 固定座面構成材
33a 湾曲部
33b 屈曲部
34 固定座面構成材
35 可動座面構成材
36 可動座面構成材
36a 湾曲部
36b 屈曲部
37 可動座面構成材
37a 湾曲部
37b 屈曲部
38 可動座面構成材
39 連結支持材
39a 凹部
39b 凹部
39c 凹部
40 軸受
41 軸受
42 軸受
43 軸受
44 ガイドリング
45 ガイドリング
46 ロック解除用ハンドル
46a ハンドル台座
47 ロック連結材
48 ストッパ支持板
49 ストッパ部材
50 ロック機構
51 バネ
52 案内材
53 クッション材
54 クッション材
55 クッション材
56a クッション材
56b クッション材
57a クッション材
57b クッション材
58a クッション材
58b クッション材
59a クッション材
59b クッション材
60 クッション材
61 クッション材
62 凹部形成領域
63 フットレスト支持材
64 フットレスト支持材
65 フットレスト
66 フットレスト
67 ブレーキ
68 ゴムシート
69 ブレーキ用ペダル
70 キャスタ
71 キャスタ
72 キャスタ
73 キャスタ
74 背もたれ支柱材
74a 傾姿部
75 背もたれ支柱材
75a 傾姿部
76 背もたれ
77 背もたれ支持材
78 背もたれ支持材
79 アームレスト支持材
80 アームレスト支持材
81 アームレスト
82 アームレスト
83 アームレスト用無段階調整機構
84 アームレスト用無段階調整機構
85 手押し用ハンドル
86 手押し用ハンドル
87 座面用レバー
88a 無給油ブッシュ
88b 無給油ブッシュ
88c 無給油ブッシュ
88d 無給油ブッシュ
89a 広ピッチ部分
89b 狭ピッチ部分
90 座面支持材
91 座面支持材
92 固定座面構成材兼フットレスト支持材
93 固定座面構成材
94 固定座面構成材
95 固定座面構成材
95a 湾曲部
95b 屈曲部
96 固定座面構成材
96a 湾曲部
97 可動座面構成材
98 可動座面構成材
99 可動座面構成材
99a 湾曲部
99b 屈曲部
100 可動座面構成材
100a 湾曲部
101 可動座面構成材
102a 狭ピッチ部分
102b 広ピッチ部分
103 連結支持材
104 軸受
105 軸受
106 軸受
107 軸受
108 ガイドリング
109 ガイドリング
110 クッション材
111 クッション材
112 クッション材
113 クッション材
114 クッション材
115a クッション材
115b クッション材
116a クッション材
116b クッション材
117a クッション材
117b クッション材
118a クッション材
118b クッション材
119 クッション材
120 フットレスト支持材
120a 被挟持部
121 フットレスト
122 フットレスト用ラチェット
122a ラチェット用レバー
123 被挟持材
124 被挟持材
125 フットサポート支持棒
126 フットサポート
127 挟持具
127a 挟持具
127b 挟持具
128 背もたれ枠材
129 背もたれ
130 背もたれ支持材
131 背もたれ用ラチェット
131a ラチェット用レバー
132 アームレスト
133 アームレスト
134 アームレスト用無段階調整機構
135 アームレスト用無段階調整機構
136 ヘッドレスト枠材
137 ヘッドレスト
138 座面用レバー
139a 無給油ブッシュ
139b 無給油ブッシュ
139c 無給油ブッシュ
139d 無給油ブッシュ
140 凹部形成領域
141 カート支柱材
142 カート支柱材
143 カート支柱材
144 カート支柱材
145 カート梁材
146 カート梁材
147 カート梁材
148 カート梁材
149 カート梁材
150 カート梁材
151 カート梁材
152 カート梁材
153 レール取付板
154 カート取付板
155 連結レール
156 連結レール
157 カート固定キー
158 キャスタ
159 キャスタ
160 キャスタ
161 キャスタ
162 フック
163 バックル
164 フック
165 レバー
166 ロック機構
167 ロック解除用ハンドル
168 リング
169 カート梁材
170 バックル
171 フック
172 レバー
200 移動ベッド
201 入浴ベッド
202 寝板
203 昇降用支柱
204 浴槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延在する支持材と、前記支持材に一端部が固定されると共に互いに平行になるように配置された複数本の略棒状の固定座面構成材と、いずれかの前記固定座面構成材の下方の位置又は前記固定座面構成材同士の間の位置に選択的に移動可能で、かつ、当該位置に保持可能な複数本の略棒状の可動座面構成材を有する車椅子と、
前後方向に延在すると共に昇降可能に設けられた支持材と、前記支持材に一端部が固定されると共に互いに平行になるように配置された複数本の略棒状の固定座面構成材と、いずれかの前記固定座面構成材の下方の位置又は前記固定座面構成材同士の間の位置に選択的に移動可能で、かつ、当該位置に保持可能な複数本の略棒状の可動座面構成材を有するリフター椅子とを備え、
前記車椅子の前記可動座面構成材を前記車椅子の前記固定座面構成材の下方に位置させ、かつ、前記リフター椅子の前記可動座面構成材を前記リフター椅子の前記固定座面構成材の下方に位置させているときに、前記リフター椅子の前記支持材を昇降し、前記車椅子の前記固定座面構成材と前記リフター椅子の前記固定座面構成材とを交差させることによって被介護者が移乗するようにしていることを特徴とする介護用入浴システム。
【請求項2】
前記車椅子は、一端部がいずれかの前記固定座面構成材を軸として回転可能に設けられ、他端部が前記可動座面構成材を支持している軸受をさらに備え、
前記軸受を回転させることによって前記可動座面構成材がいずれかの前記固定座面構成材の下方の位置又は前記固定座面構成材同士の間の位置に選択的に移動可能で、かつ、当該位置に保持可能になされていることを特徴とする請求項1に記載の介護用入浴システム。
【請求項3】
前記車椅子は、前記可動座面構成材を複数本有し、第1の前記可動座面構成材が第1の前記軸受に自転可能に支持され、第2の前記可動座面構成材が第2の前記軸受に自転可能に支持されていて、
一端部が第1の前記可動座面構成材に固定され、他端部が第2の前記可動座面構成材に固定されている連結支持材をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の介護用入浴システム。
【請求項4】
前記リフター椅子は、一端部がいずれかの前記固定座面構成材を軸として回転可能に設けられ、他端部が前記可動座面構成材を支持している軸受をさらに備え、
前記軸受を回転させることによって前記可動座面構成材がいずれかの前記固定座面構成材の下方の位置又は前記固定座面構成材同士の間の位置に選択的に移動可能で、かつ、当該位置に保持可能になされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の介護用入浴システム。
【請求項5】
前記リフター椅子は、前記可動座面構成材を複数本有し、第1の前記可動座面構成材が第1の前記軸受に自転可能に支持され、第2の前記可動座面構成材が第2の前記軸受に自転可能に支持されていて、
一端部が第1の前記可動座面構成材に固定され、他端部が第2の前記可動座面構成材に固定されている連結支持材をさらに備えていることを特徴とする請求項4に記載の介護用入浴システム。
【請求項6】
前記車椅子は、前記固定座面構成材及び前記可動座面構成材の着座した被介護者の股間近傍となる部分を下方に湾曲又は屈曲させていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の介護用入浴システム。
【請求項7】
前記リフター椅子は、前記固定座面構成材及び前記可動座面構成材の着座した被介護者の股間近傍となる部分を下方に湾曲又は屈曲させていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の介護用入浴システム。
【請求項8】
前記車椅子は、前記可動座面構成材を隔てて隣り合う前記固定座面構成材同士の外周面の互いに対向する部位又はその近傍にそれぞれ設けられたガイド部材をさらに備え、これらのガイド部材の間隙が前記リフター椅子の前記固定座面構成材の前後方向における幅と同じ、又は当該幅よりもわずかに広くなるように設けていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の介護用入浴システム。
【請求項9】
前記リフター椅子は、前記可動座面構成材を隔てて隣り合う前記固定座面構成材同士の外周面の互いに対向する部位又はその近傍にそれぞれ設けられたガイド部材をさらに備え、これらのガイド部材の間隙が前記車椅子の前記固定座面構成材の前後方向における幅と同じ、又は当該幅よりもわずかに広くなるように設けていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の介護用入浴システム。
【請求項10】
前記リフター椅子は、最前の前記固定座面構成材の前記支持材側の端部近傍から前方斜め下へ延び、途中で屈曲して最前の前記固定座面構成材と平行に延びるように設けられたフットレスト支持材と、前記フットレスト支持材の最前の前記固定座面構成材と平行に延びた部分に設けられたフットレストと、略棒状に形成されると共に、最前の前記固定座面構成材の前記支持材と反対側の端部近傍から前方斜め下へ延びるように設けられた被挟持材と、略棒状に形成されたフットサポート支持棒と、前記フットサポート支持棒の上端部近傍に設けられると共に、前記被挟持材又は前記フットレスト支持材の前方斜め下へ延びた部分を挟持可能な挟持具と、略帯状に形成されると共に、一端部が前記フットレスト支持材の前方斜め下へ延びた部分に固定され、他端部が前記フットサポート支持棒に固定されたフットサポートとをさらに備え、
最前の前記固定座面構成材は、角度変更可能に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の介護用入浴システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−172657(P2011−172657A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37574(P2010−37574)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(502379491)富士商工株式会社 (5)
【Fターム(参考)】