説明

仕上材

【課題】シックハウス症候群の原因となる化学物質の吸着が十分で、吸放湿性にも優れ、しかも意匠性にも優れた仕上材を提供すること。
【解決手段】
珪藻土、バーミュキライト、石膏スラグ、ALC粉末、ケイ酸カルシウム、または消石灰の何れか少なくとも1種、あるいはこれらの混合物を主材とする基板11と、この基板11の表面側に50〜250g/m2の割合で塗布されて、当該基板11の表面の装飾を行う顔料もしくは染料を含んだ加飾層12と、この加飾層12上に貼付されて、坪量が6〜100g/m2の和紙層13と、この和紙層13の表面に10〜100g/m2の割合で塗布された保護層14とを備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井材や壁材等の仕上材に関し、特に、珪藻土、バーミュキライト、石膏スラグ、ALC(軽量気泡コンクリート)粉末、ケイ酸カルシウム、または消石灰の何れか少なくとも1種、あるいはこれらの混合物を主材とした基板と、この基板に対して一体化される和紙層とを備えた仕上材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天井や壁に採用される仕上材は、これが使用される部屋の雰囲気を決定づけるものであるため、意匠性に優れていることが必要であることは当然として、人の住空間を包み込むことになるものであるから、保湿性、一定の吸湿及び放湿性(以下では、まとめて吸放湿性ということがある)も必要である。また近年では、各種建材から発生する有害物質等を吸着する機能(吸着性)も、この種の仕上材に要求されてきており、この吸着性によって、所謂「シックハウス症候群」的な病気の発生を抑制できるようにすることが望まれている。
【0003】
さらに、この種の仕上材については、壁紙におけるような「防汚性」も要求され、上述した「吸着性」を良好にするための「通気性」も要求されてきていて、場合によっては相反する機能の要求もなされるようになってきている。
【0004】
以上のような仕上材に対する種々な要求を満足するために、例えば特許文献1や特許文献2にてその対策技術が提案されている。
【0005】
特許文献1には、「表面層に微細孔を有する樹脂フィルムを設けることにより、防汚性、及び通気性という両立させることが非常に困難な機能性を有し、さらには前記通気性により消臭機能をも有する内装材」の提供を目的とした「内装材」に関する発明が記載されている。
【0006】
この特許文献1に記載されている「内装材」は、「少なくとも一層以上からなる下層、及び表面層から形成された内装材において、表面層が通気性の微細孔を有する厚み8μm〜30μmの樹脂フィルムからなること」を特徴とするものであり、これにより、「防汚性、及び通気性という両立させることが非常に困難な機能性を有し、さらには前記通気性により消臭機能をも有する」内装材とすることができると考えられる。
【0007】
しかしながら、「通気性の微細孔を有する厚み8μm〜30μmの樹脂フィルム」を「表面層」とした場合、この樹脂フィルムに人や物が接触した場合に簡単に破れないようにすることができるか否か、疑問の残るところである。
【0008】
一方、特許文献2には、「優れた調湿機能を発揮する調湿建材を提供する」ことを目的とした「調湿建材」に関する技術が提案されており、この「調湿建材」は、図3にも示すように、「調湿建材1の空隙率は58%であり、その基材2中には多数の微細孔3と、パルプ4および珪藻土6などが散在し、基材2の片方の表面には、撥水性塗料を塗布して撥水層9が形成され、内径0.1μm〜10μmの微細孔5が撥水層9の表面から外部へ向かって開口状態で存在している。また、撥水層8と基材2との間には透湿層7が介在しており、透湿層7は繊維状フィラーであるチタン酸カリウィスカ8を含有している」といった構成を有しているものである。
【0009】
この特許文献2の調湿建材によれば、「調湿建材1の周囲が高湿条件となると、空気中の水蒸気は撥水層9の表面に開口する微細孔5を通して基材2の微細孔3に取り込まれ、逆に、乾燥状態となると、基材2の微細孔3に取り込まれている水蒸気は前記と逆のルートで空気中へ放散されることとなる。これによって、調湿建材1は、優れた調湿機能を発揮する」ものと考えられる。
【0010】
しかしながら、この特許文献2の調湿建材においては、「調湿」という機能においては十分ではあるが、それだけでは「美しさ」あるいは「意匠性」は満たされず、部屋の雰囲気を決定付ける「内装材」としては不十分なものとなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−276160号公報、要約
【特許文献2】特開2005−163474号公報、要約、代表図
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した特許文献1や2に記載されている技術は、ある特定の機能の向上を図ろうとするものであったが、前述したように天井材や壁材としての内装材あるいは仕上材には、人の住空間を形成するものであるため、種々な機能が要求されるものであり、特に意匠性についてはこれら内装材あるいは仕上材に対して大きく要求されるものである。
【0013】
「意匠性」、つまり人が美しく感じたり、その中にいると安堵感を覚えたりする雰囲気を醸し出すものは、人によって様々であるから、万人が共通して良いと思える意匠は作り出すのが不可能に近い。しかしながら、所謂自然素材に対しては、人は共通して美しいと思うものであり、天井材に木目の美しい木の板を利用したり、壁材に竹を並べたりしてきたのである。
【0014】
これらの木や竹をそのまま使用した内装材を工場生産することはそれ程簡単なことではなく、また十分な保湿性や吸放湿性を備えたものとすることも容易ではない。
【0015】
そこで、本発明者は、意匠的には自然素材を使用したものに近く、十分な吸気性や、吸放湿性を有する内装材とするにはどうしたらよいかについて種々検討を重ねてきた結果、古来より使用されてきている土の特性を有している物質として、珪藻土、バーミュキライト、石膏スラグ、ALC粉末、ケイ酸カルシウム、または消石灰の何れか少なくとも1種、あるいはこれらの混合物が吸気性や吸放湿性を十分有した素材であり、また和紙がある程度の強靱性を有していて、しかも自然素材的な意匠性を有していることを再認識して、本発明を完成したのである。
【0016】
すなわち、本発明の目的とするところは、第1に、シックハウス症候群の原因となる化学物質の吸着が十分で、吸放湿性にも優れ、しかも意匠性にも優れた仕上材を提供することにあり、第2に、この仕上材の吸放湿性や吸気性をより一層向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「珪藻土、バーミュキライト、石膏スラグ、ALC粉末、ケイ酸カルシウム、または消石灰の何れか少なくとも1種、あるいはこれらの混合物を主材とする基板11と、この基板11の表面側に50〜250g/m2の割合で塗布されて、当該基板11の表面の装飾を行う顔料もしくは染料を含んだ加飾層12と、この加飾層12上に貼付されて、坪量が6〜100g/m2の和紙層13と、この和紙層13の表面に10〜100g/m2の割合で塗布された保護層14とを備えたことを特徴とする仕上材10」
である。
【0018】
すなわち、この請求項1に係る仕上材10は、図1及び図2に示すように、吸気性及び吸放湿性に優れた、珪藻土、バーミュキライト、石膏スラグ、ALC粉末、ケイ酸カルシウム、または消石灰の何れか少なくとも1種、あるいはこれらの混合物を主材とする基板11に、材料繊維が複雑に絡みあって多数の通孔を有した、さらには、保護層14によって毛羽立ちを抑えた和紙層13を一体化したものであり、この和紙層13の通孔を通して基板11上に形成した加飾層12中の顔料もしくは染料が、図1に示すように発色するものである。
【0019】
ここで、和紙層13を形成している「和紙」について説明すると、和紙なる用語はあるいは材料や製法については、決まった定義がなされているわけではないので、本明細書中では、コウゾ(楮)、ミツマタ(椏)、ガンピ(雁皮)、マニラ麻、レーヨン、またはこれらの混合物を材料とするものと定義する。なお、「流し漉き」等の製法上の定義の仕方もあるが、ここでは、上述した材料上の定義に従い、製法は問わないものとすることとする。
【0020】
さて、珪藻土、バーミュキライト、石膏スラグ、ALC粉末、ケイ酸カルシウム、または消石灰の何れか少なくとも1種、あるいはこれらの混合物を主材とする基板11は、当然その裏面側(和紙層13とは反対側)に、保形紙が一体化されることがあるが、この保形紙は上記和紙層13よりも所謂「洋紙」である方がよい。何故なら、この珪藻土の崩れを確実に防止しながら、この珪藻土を板状に均して一体化するのに、洋紙は有利だからである。
【0021】
特に、この基板11は、珪藻土、バーミュキライト、石膏スラグ、ALC粉末、ケイ酸カルシウム、または消石灰の何れか少なくとも1種、あるいはこれらの混合物を主材とする必要があるが、その理由は、これらの珪藻土等は、ミクロ的にみれば、非常に多数の微細孔を有しているものであるから、これらの微細孔や各珪藻土等の間の隙間によって、化学物質の吸着を十分行うことができるからである。なお、この珪藻土、バーミュキライト、石膏スラグ、ALC粉末、ケイ酸カルシウム、または消石灰の何れか少なくとも1種、あるいはこれらの混合物を主材とする基板11それ自体の製法は、従来より行われている一般的なものであって良い。
【0022】
この基板11を主として構成している珪藻土それ自体は白色であるから、当該仕上材10に所定の色を付与しようとすれば、それに応じた顔料(例えば無機顔料、有機顔料等の体質顔料がある)や染料によって着色しなければならない。
【0023】
また、この基板11の表面側(前述した保形紙とは反対側)には珪藻土が露出しているから、この珪藻土の崩れを防止する必要がある。そこで、本発明の仕上材10では、その基板11の表面側に加飾層12を形成しているのである。
【0024】
この加飾層12は、例えばアクリルのエマルションと顔料とを溶剤中に分散させた言わば塗料として構成したものを、基板11の表面上に、例えばローラーによって塗布して形成したものであり、溶媒を揮発させた後には、珪藻土等にアクリル樹脂と顔料とを層状に形成するものである。これにより、基板11の表面は、加飾層12によって着色されるとともに、基板11を構成している珪藻土が崩れないように保持される。
【0025】
このアクリルエマルション系樹脂と、顔料若しくは染料とからなる加飾層12は、その塗布量が50〜250g/m2の割合である必要があるが、その理由は、まずこの加飾層12の塗布量が50g/m2未満であると、各珪藻土の一体化が十分でなくて珪藻土の崩れや剥がれを発生するし、当然のことながら発色すべき顔料や染料の量も少なくなるから、必要とする着色が十分に行えなくなるからである。一方、この加飾層12の塗布量が250g/m2を超える割合となると、顔料や染料による発色は充分になるものの、折角の珪藻土等の吸気性や吸放湿性が損なわれてしまって、望まれる機能を発揮できなくなるからであり、中でも、この加飾層12の塗布量は、50〜80g/m2程度の割合であるのが好ましい。
【0026】
この加飾層12を構成するアクリルエマルション系樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、フッ素系、あるいはエポキシ系等の、水性系組成物が適しており、その中に無機質系のものを添加することも十分可能である。また、油脂組成物としては、前述の組成物やひまし油やなたね油、デンプン粉、こんにゃく粉などの自然系組成物が適用可能である。
【0027】
以上のような加飾層12の上には、図2に示すように、和紙層13を貼付するのであるが、この和紙層13には所定の模様、あるいはこれを構成している繊維の絡みによるランダム模様が付与されている。また、この和紙層13は、各繊維の絡みがランダムであるため、多数の通孔を有したものであり、この通孔を通して、下側の加飾層12の色がランダムに透けて見えることになる。
【0028】
また、必要に応じて(調湿性、吸着性の向上のため)、加飾層12は省くことがある。
【0029】
ここで、この和紙層13の厚さは、坪量にして6〜100g/m2である必要があるが、その理由は、まず、この和紙層13の坪量が6g/m2よりも少ないと、破れやすくなって工場生産をするのに困難になるだけでなく、この和紙層13自体の繊維による模様がハッキリ出なくなるからである。一方、この和紙層13の坪量が100g/m2よりも大きくなると、その通孔が少なくなって、各珪藻土等の吸気性や吸放湿性を十分生かすことができなくなるだけでなく、加飾層12の発色を阻害するからであり、中でもこの和紙層13の坪量は、12〜45g/m2が好ましいものである。
【0030】
また、この和紙層13の加飾層12への貼付を行う接着剤としては、加飾層12中のエマルション系樹脂そのものを利用してもよく、全く別のデンプン糊、こんにゃく粉を利用しても良い。加飾層12の接着力を利用する場合には、加飾層12の形成後、短時間内に和紙層13の貼付を行うことは言うまでもない。
【0031】
勿論、上記和紙層13の表面は、そのままだと、これを構成している繊維が部分的に毛羽立った状態になっていることがあり、また人や物が触れれば、その部分の繊維が毛羽立ってくるものである。そこで、これらの繊維の毛羽立ちを抑える必要があるが、それを行うのが保護層14なのである。
【0032】
この保護層14は、所謂クリアーと呼ばれるつや消し材を含んだ透明塗料であり、ポエチレン系、シリカ系、アルキッド系などを材料もしくは全く別のデンプン糊、こんにゃく粉を利用しても良い。この保護層14は、和紙層13の通孔を埋めないで、毛羽立ちを抑えるようにするものであるから、その塗布量は、40〜50g/m2が最も好ましいものである。
【0033】
以上のように構成した本発明に係る仕上材10では、基板11を主として構成している珪藻土、バーミュキライト、石膏スラグ、ALC粉末、ケイ酸カルシウム、または消石灰の何れか少なくとも1種、あるいはこれらの混合物に、加飾層12中の顔料もしくは染料がしっかりと接着されているだけでなく、各珪藻土等自体が加飾層12によって固着し合っている。しかしながら、各珪藻土等の多孔質性は、この加飾層12によって阻害されていないものとなっている。
【0034】
また、この加飾層12上の和紙層13に付いても、保護層14にとって表面の保護がなされている(毛羽立ちにくくなっている)だけでなく、和紙層13が本来的に有している通孔もほぼそのままの状態で残有している。勿論、この和紙層13の模様も当該仕上材10の表面に現れているだけでなく、この和紙層13の各通孔を通して、加飾層12が図1に示したように発色していて、非常に美しい意匠となっているのである。
【0035】
この仕上材10を施工する際には、接着剤や両面粘着テープによって下地材上に位置決め及び仮止めしておいて、釘やネジによって留めるのであるが、この仕上材10の表面には和紙層13が存在しているため、この和紙層13が釘やネジの保持を十分行うことになる。つまりこの仕上材10は、その表面にある強靱な和紙層13によって、そのまま釘止めやネジ止めが可能なものになっているのである。しかも、仮に珪藻土等が多量の湿気を含んで柔らかくなったとしても、強靱な和紙層13によって覆われているのであるから、当該仕上材10が天井や壁から剥がれ落ちてしまうようなことはないのである。
【0036】
この仕上材10の施工後においては、珪藻土等が有している微細孔は、和紙層13を通して外気に十分触れることができるものとなっているから、仮に部屋内に気化した化学物質が飛散していたとしても、珪藻土等によって十分吸着できるものである。このことは、湿気についても言えることであり、部屋内に必要以上の湿気であれば、これが珪藻土等によって吸着されるし、逆に部屋内が大きく乾燥してくれば、珪藻土等が保持していた湿気を室内に放出するから、部屋の湿度は常に適度な状態に保たれることになるのである。
【0037】
従って、この請求項1の仕上材10は、シックハウス症候群の原因となる化学物質の吸着が十分で、吸放湿性にも優れ、しかも意匠性にも優れたものとなっているのである。
【0038】
さて、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1の仕上材10について、
「基板11、加飾層12、和紙層13または保護層14のいずれか少なくとも一層に、0.1〜1.0mmの直径を有する多数のピンホール15を、基板11の表面積の1×10-4〜1%となるように形成したこと」
である。
【0039】
すなわち、この請求項2に係る仕上材10は、ピンホール15を図2中の点線((1)〜(7)の合計7種類)にて示したように、基板11〜保護層14に対して、その厚さ方向の多数のピンホール15を積極的に形成したものであり、これらのピンホール15によって、当該仕上材10が外気と接触しやすく、吸気性や吸放湿性を更に高めるようにしたものである。
【0040】
図2中の(1)〜(7)で示したピンホール15は、それぞれ次の層を貫通したものとしたものである。+(プラス)は、これで結ばれた層にピンホール15が貫通していることを意味する。
(1)=基板11のみ
(2)=基板11+加飾層12+和紙層13
(3)=基板11+加飾層12
(4)=基板11+加飾層12+和紙層13+保護層14
(5)=加飾層12+和紙層13+保護層14
(6)=加飾層12+和紙層13
(7)=加飾層12+和紙層13+保護層14
【0041】
これらのピンホール15は、その直径が0.1〜1.0mmである必要があるが、その理由は、まず、各ピンホール15の直径が0.1mm未満であると、形成することそれ自体が困難であるだけでなく、形成した割には、十分な吸気性や吸放湿性が得られないからである。一歩、各ピンホール15の直径が1.0mmよりも大きいと、仕上材10自体の剛性を損なうだけでなく、このピンホール15の存在が和紙層13を通して見えるようになって、意匠的に良くないからである。
【0042】
なお、以上のようなピンホール15の深さについては、例えば基板11の厚さの1/10〜1/2程度であると良い。ピンホール15の深さが基板11の厚さの1/10よりの小さければ、形成した意味があまりないからであり、一方1/2を超えると、基板11の剛性を損なうことになるからである。
【0043】
また、これらのピンホール15の全開口面積は、基板11の表面積の1×10-4〜1%であることが必要であり、中でも0.5〜1%が好ましい。ピンホール15の全開口面積が1×10-4%より低いと、十分な吸気性や吸放湿性を得ることができないからであり、逆に、1%よりも多いと、基板11の剛性を損ねてしまうからである。
【0044】
以上のような多数のピンホール15の形成するには、表面に多数の針を立設したローラーもしくは板の上に針を乱立させた成形板に、和紙層13を貼付する前の基板11もしくは加飾層12を施工した後、もしくは保護層14を施工した後に通せば簡単に行えるものである。勿論、どの層にピンホール15を形成するかは、上記のようにどの段階で形成するかを選択することによって簡単に行える。
【0045】
従って、この請求項2に係る仕上材10は、上記請求項1に係るそれと同様な機能を発揮する他、その基板11、加飾層12、保護層14に多数形成したピンホール15によって、吸気性及び吸放湿性がより一層高まったものとなっているのである。
【発明の効果】
【0046】
以上説明した通り、まず、請求項1に係る発明においては、
「珪藻土、バーミュキライト、石膏スラグ、ALC粉末、ケイ酸カルシウム、または消石灰の何れか少なくとも1種、あるいはこれらの混合物を主材とする基板11と、この基板11の表面側に50〜250g/m2の割合で塗布されて、当該基板11の表面の装飾を行う顔料もしくは染料を含んだ加飾層12と、この加飾層12上に貼付されて、坪量が6〜100g/m2の和紙層13と、この和紙層13の表面に10〜100g/m2の割合で塗布された保護層14とを備えたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、シックハウス症候群の原因となる化学物質の吸着が十分で、吸放湿性にも優れ、しかも意匠性にも優れた仕上材10を提供することができるのである。
【0047】
また、請求項2に係る発明においては、上記請求項1の仕上材10について、
「基板11、加飾層12、和紙層13または保護層14のいずれか少なくとも一層に、0.1〜1.0mmの直径を有する多数のピンホール15を、基板11の表面積の1×10-4〜1%となるように形成したこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、上記請求項1のそれと同様な効果を発揮する他、仕上材10につてその吸放湿性や吸気性をより一層向上させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に下係る仕上材の斜視図である。
【図2】同仕上材の部分拡大断面図である。
【図3】従来の技術を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
次に、上記のように構成した各請求項1に係る発明を図面に示した最良の形態である仕上材10について説明するが、この最良形態に係る仕上材10は、上記各請求項に係る発明の全てを実質的に含むものである。
【0050】
さて、図1には、本発明に係る仕上材10の表面側から見た斜視図が示してあるが、この図1仕上材10では、和紙層13自体の模様と、この和紙層13を透かして見える加飾層12の色が見えている。この仕上材10は、図2に示したように、珪藻土を主材とする基板11と、この基板11の表面に形成した加飾層12と、この加飾層12に対して貼付した和紙層13と、この和紙層13に塗布した保護層14とを備えているものである。
【0051】
本最良形態における基板11は、珪藻土を主材とするものではあるが、この珪藻土に、パルプ繊維や石膏を加えて形成しても良いものである。勿論、この基板11は、その裏面に図示しない保形紙を貼付する場合もあり、この保形紙や混入したパルプ繊維によって、ある程度の剛性を有したものである。
【0052】
本最良形態の基板11は、厚さが3〜15mmのものであり、図2中の点線にて示したように、深さが5×1/3mmである多数のピンホール15を、仕上材10の厚さ方向に形成したものである。これらのピンホール15は太さ0.5mmで長さ5×1/3mmの針をグリット上に植設したローラーもしくは板の上に針を乱立させた成形板を使用して形成したものであり、この場合の格子幅は5mmであった。
【0053】
以上のような基板11の表面に対して、アクリルエマルション系樹脂と顔料とを有する塗料をローラーによって塗布することにより、加飾層12を形成した。この場合の塗布量は、80g/m2の割合であり、加飾層12の厚さが50μm〜100μm程度となるように設定した。
【0054】
このように形成した加飾層12上に対しては、コウゾとレーヨンをそれぞれ半分宛材料として形成した和紙を貼付することにより和紙層13とした。この和紙層13は、坪量が18g/m2である。
【0055】
そして、この和紙層13の表面に、接着、保護を目的としたアクリル系エマルション樹脂を主材としたクリアー塗料を自動塗布機(ロールーコーター)によって塗布することにより保護層14を形成した。
【0056】
JIS A 14710−1に基いた実験(23℃恒温、90%r.h雰囲気状態)の結果、ブランクの珪藻土基板の375.55g/m2、加飾層12を省いた仕上材10は、256.87g/m2、全工程施工の仕上材10は、213.10g/m2であった。
【0057】
以上の結果、和紙層13の自然素材的な美しさが現出した仕上材10となっただけでなく、和紙草13の各繊維を透かしながら、基板11上の加飾層12の装飾が、図1にも示したように、微妙な状態で現出した。
【符号の説明】
【0058】
10 仕上材
11 基板
12 加飾層
13 和紙層
14 保護層
15 ピンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪藻土、バーミュキライト、石膏スラグ、ALC粉末、ケイ酸カルシウム、または消石灰の何れか少なくとも1種、あるいはこれらの混合物を主材とする基板と、この基板の表面側に50〜250g/m2の割合で塗布されて、当該基板の表面の装飾を行う顔料もしくは染料を含んだ加飾層と、この加飾層上に貼付されて、坪量が6〜100g/m2の和紙層と、この和紙層の表面に10〜100g/m2の割合で塗布された保護層とを備えたことを特徴とする仕上材。
【請求項2】
前記基板、加飾層、和紙層または保護層のいずれか少なくとも一層に、0.1〜1.0mmの直径を有する多数のピンホールを、前記基板の表面積の1×10-4〜1%となるように形成したことを特徴とする請求項1に記載の仕上材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−197577(P2009−197577A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11559(P2009−11559)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(599043127)石原製紙株式会社 (2)
【Fターム(参考)】