説明

付加反応硬化型シリコーンゴム組成物及びその製造方法

【課題】金属粉あるいは金属メッキされた微粉末粒子を配合した付加反応硬化型シリコーンゴム組成物において、硬化時に発泡することなく、保存安定性を改善した付加反応硬化型シリコーンゴム組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有する直鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)式:R1abSiO(4-a-b)/2 (1)
(R1は独立に脂肪族不飽和結合を含まない1価炭化水素基、0.7≦a≦2.1、0.001≦b≦1.0、0.8≦a+b≦3.0を満たす数)
で表され、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金族金属系触媒、
(D)金属粉又は金属メッキされた微粉末粒子、
(E)脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪酸金属塩から選ばれる1種又は2種以上
を含有してなる付加反応硬化型シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉あるいは金属メッキされた微粉末粒子を配合した付加反応硬化型シリコーンゴム組成物において、保存安定性を改善した付加反応硬化型シリコーンゴム組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銅や銀などの金属粉あるいは金属メッキされた微粉末粒子を配合した付加硬化型シリコーンゴム組成物は、導電用途や、電子部品の腐食防止/遅延用途に用いられる接着剤やシール材、ガスケット材料等として使用されている。しかしながら、銅や銀などの金属粉あるいは金属メッキされた微粉末粒子などは、付加硬化型シリコーンゴム組成物の触媒である白金族金属触媒に作用し、触媒能力が低減し、保存後、硬化性が低下するという問題があった。
【0003】
一方、金属粉の分散性向上のために、脂肪酸や脂肪酸エステルで処理された金属粉を使用する方法は知られているが、このような脂肪酸処理された金属粉を使用しても、白金触媒の触媒能力の低減を抑えることができず、更に、過剰の量の脂肪酸で処理された金属粉を使用すると、付加硬化型シリコーンゴム組成物の架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと反応し、脱水素反応による発泡や硬化不良を生じるという問題があった。
【0004】
なお、本発明に関連する従来技術として、下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−96301号公報
【特許文献2】特開平5−230373号公報
【特許文献3】特開2004−83905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属粉あるいは金属メッキされた微粉末粒子を配合した付加反応硬化型シリコーンゴム組成物において、硬化時に発泡することなく、保存安定性を改善した付加反応硬化型シリコーンゴム組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、金属粉あるいは金属メッキされた微粉末粒子を配合した付加反応硬化型シリコーンゴム組成物に、脂肪酸、脂肪酸誘導体あるいは脂肪酸金属塩を添加することにより、硬化性が安定することを知見した。また、脂肪酸、脂肪酸誘導体あるいは脂肪酸金属塩を事前に白金属金属系触媒と混合することにより、更に硬化性が安定することを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記付加反応硬化型シリコーンゴム組成物及びその製造方法を提供する。
〔請求項1〕
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有する直鎖状オルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)下記平均組成式(1):
1abSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基を表し、aは0.7≦a≦2.1、bは0.001≦b≦1.0を満たす数であり、但し、a+bは0.8≦a+b≦3.0を満たす数である。)
で表され、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: (A)成分中の全ケイ素原子結合アルケニル基に対して(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.5〜5.0倍モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒: 触媒有効量、
(D)金属粉又は金属メッキされた微粉末粒子: 0.5〜1,500質量部、
(E)脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪酸金属塩から選ばれる1種又は2種以上:
0.05〜10質量部
を含有してなることを特徴とする付加反応硬化型シリコーンゴム組成物。
〔請求項2〕
(D)金属粉又は金属メッキされた微粉末粒子が、銅粉、銀粉、又は銅メッキもしくは銀メッキされた微粉末粒子である請求項1記載の組成物。
〔請求項3〕
更に、(F)微粉末シリカを含有する請求項1又は2記載の組成物。
〔請求項4〕
請求項1〜3のいずれか1項に記載の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を製造するに際し、(C)成分と(E)成分を予め混合したものを使用することを特徴とする付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属粉あるいは金属メッキされた微粉末粒子を配合した付加反応硬化型シリコーンゴム組成物に、脂肪酸、脂肪酸誘導体あるいは脂肪酸金属塩を添加することにより、白金属系触媒の活性が低下せず、硬化性が安定した付加反応硬化型シリコーンゴム組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられる付加反応硬化型シリコーンゴム組成物は、下記(A)〜(E)成分を含有するものである。
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有する直鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)下記平均組成式(1):
1abSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基を表し、aは0.7≦a≦2.1、bは0.001≦b≦1.0を満たす数であり、但し、a+bは0.8≦a+b≦3.0を満たす数である。)
で表され、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金族金属系触媒、
(D)金属粉又は金属メッキされた微粉末粒子、
(E)脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪酸金属塩から選ばれる1種又は2種以上。
【0011】
以下、上記組成物の各成分について詳細に説明する。なお、本明細書において、「Me」はメチル基を表し、「Vi」はビニル基を表す。
【0012】
<(A)成分>
(A)成分は、組成物の硬化後にゴム弾性をもたらすためのベース成分である。(A)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜5個有するものである。(A)成分は、液状でもガム状(シリコーン生ゴム)でもよいが、液状であることが好ましく、特に25℃における粘度が好ましくは100,000mPa・s以下、より好ましくは100〜50,000mPa・sの、通常、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、基本的に直鎖状の分子構造を有するオルガノポリシロキサンであることが好ましいが、硬化物のゴム弾性を損なわない範囲において分岐構造を有していてもよい。粘度が高すぎると、液状シリコーンゴム材料として適用する場合、作業性が低下するおそれがある。
なお、本発明において、粘度は回転粘度計により測定した値である(以下、同じ)。
【0013】
前記ケイ素原子に結合したアルケニル基は、炭素原子数が、通常、2〜8、好ましくは2〜4のものである。その具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。
【0014】
このケイ素原子に結合したアルケニル基は、(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子中において、分子鎖末端及び分子鎖非末端(即ち、分子鎖側鎖)のいずれかに存在しても、あるいはこれらの両方に存在してもよいが、少なくとも分子鎖両末端に存在することが好ましい。
【0015】
(A)成分のオルガノポリシロキサン分子中において、前記アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基は、脂肪族不飽和結合を有しないものであれば特に限定されず、例えば、非置換又は置換の、炭素原子数が、通常、1〜12、好ましくは1〜10の1価炭化水素基である。この非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0016】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、例えば、下記平均組成式(2)で表される。
2c3dSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R2は独立に脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R3は独立にアルケニル基であり、cは1.9〜2.1の数、dは0.005〜1.0の数であり、但し、c+dは1.95〜3.0を満たす。)
【0017】
上記平均組成式(2)中、R2で表される脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基は、前記アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基として例示したものと同種のものである。また、R3で表されるアルケニル基は、前記ケイ素原子に結合したアルケニル基として例示したものと同種のものである。
【0018】
cは1.95〜2.00の数であることが好ましく、dは0.01〜0.5の数であることが好ましく、c+dは1.98〜2.5を満たすことが好ましい。
【0019】
(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(3)〜(9)で表されるもの等が例示される。
ViR42SiO(R42SiO)eSiR42Vi (3)
ViR42SiO(R4ViSiO)f(R42SiO)gSiR42Vi (4)
Vi24SiO(R42SiO)eSiR4Vi2 (5)
Vi3SiO(R42SiO)eSiVi3 (6)
Vi24SiO(R4ViSiO)f(R42SiO)gSiR4Vi2 (7)
Vi3SiO(R4ViSiO)f(R42SiO)gSiVi3 (8)
43SiO(R4ViSiO)f'(R42SiO)gSiR43 (9)
(式中、R4は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基を表し、e、f、gは0又は1以上の整数、f’は2以上の整数であり、10≦e≦10,000を満たす整数であるのが望ましく、より好ましくは50≦e≦2,000である。また、10≦f(f’)+g≦10,000を満たす整数であるのが望ましく、より好ましくは50≦f(f’)+g≦2,000であり、かつ0≦f(f’)/(f(f’)+g)≦0.20を満足する整数である。)
【0020】
上記一般式(3)〜(9)中、R4で表される非置換又は置換の1価炭化水素基は、炭素原子数が、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のものである。その具体例としては、好ましくは前記アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基として例示した中でアリール基、アラルキル基以外のものと同種のものが挙げられるが、硬化物の耐光性及び耐熱性が優れるので、より好ましくはアルキル基、特に好ましくはメチル基である。
(A)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
<(B)成分>
(B)成分は、(A)成分中のアルケニル基とヒドロシリル化反応により架橋する架橋剤として働くと共に、組成物を希釈して使用用途に適した粘度にする反応性希釈剤としても働く成分である。(B)成分は、下記平均組成式(1)で表され、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を1分子中に少なくとも2個(通常、2〜200個)、好ましくは3個以上(例えば、3〜100個程度)有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0022】
1abSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基を表し、aは0.7≦a≦2.1、bは0.001≦b≦1.0を満たす数であり、但し、a+bは0.8≦a+b≦3.0を満たす数である。)
【0023】
上記平均組成式(1)中、R1で表される脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基は、(A)成分においてアルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基として例示したものと同種のものである。
aは1.0〜2.0、bは0.01〜1.0、a+bは1.1〜2.6の数であることが好ましい。
【0024】
(B)成分中、前記ケイ素原子に結合した水素原子の含有量は、(A)成分1g当たり、0.001〜0.02molの範囲であることが好ましく、0.002〜0.017molの範囲であることがより好ましい。
【0025】
1分子中に2個以上、好ましくは3個以上含有されるケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、通常、2〜400個、好ましくは3〜200個、より好ましくは4〜100個程度のものが望ましい。
【0026】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃における粘度が、好ましくは1,000mPa・s以下(通常、1〜1,000mPa・s)、より好ましくは5〜200mPa・sである。
【0027】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO1/2単位とからなる共重合体等が挙げられるほか、下記一般式(10),(11):
13SiO[SiR1(H)O]tSiR13 (10)
環状の[SiR1(H)O]u (11)
(式中、R1は前記のとおりであり、tは2〜30、好ましくは2〜25の整数であり、uは4〜8の整数である。)
で表されるもの、下記一般式で表されるもの等が例示される。
【0028】
【化1】

(式中、R1は前記のとおりであり、hは5〜40の整数、iは5〜20の整数、jは2〜30の整数である。)
【0029】
(B)成分の具体例としては、下記一般式(12):
Me3SiO[SiMe(H)O]tSiMe3 (12)
(式中、tは前記のとおりである。)
で表されるもの、下記平均構造式で表されるもの等が挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
【化3】

(B)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
(B)成分の配合量は、(A)成分中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基に対して(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.5〜5.0倍モルとなる量であることが好ましく、より好ましくは0.7〜3.0倍モルとなる量である。かかる配合量が0.5〜5.0倍モルとなる量を満たさない場合には、架橋のバランスが不適切なものとなることがある。
【0033】
好ましい実施形態では、この(B)成分の配合量が、更に、組成物中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基に対して(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.6〜3.0倍モルとなる量であることが好ましく、0.7〜2.5倍モルとなる量であることがより好ましい。かかる範囲を満たすと、使用に適した粘度範囲の組成物で、かつ、目的とする高硬度の硬化物を得ることができる。
【0034】
<(C)成分>
(C)成分である白金族金属系触媒は、前記(A)成分、(B)成分のヒドロシリル化反応を進行及び促進させるための成分である。
白金族金属系触媒は特に限定されず、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属;塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物等の白金化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物等が挙げられるが、(A)成分、(B)成分との相溶性が良好であり、クロル不純物をほとんど含有しないので、好ましくは塩化白金酸をシリコーン変性したものである。
(C)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
(C)成分の配合量は、触媒としての有効量であればよいが、通常、(A)成分、(B)成分の合計に対して、白金族金属元素の質量換算で1〜500ppm、好ましくは3〜100ppm、より好ましくは5〜40ppmである。この配合量を適切なものとすると、ヒドロシリル化反応をより効果的に促進させることができる。
【0036】
<(D)成分>
(D)成分は、金属粉あるいは金属メッキされた微粉末粒子であり、金属粉としては、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、錫、亜鉛などが例示される。特に、硫黄含有ガスによって硫化されることにより、硫黄含有ガスの電気・電子部品への到達を防止もしくは遅延する効果があるものとして、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、錫、亜鉛などが好ましい。これらの中でも組成物中での金属粉の安定性・価格的な面から、銅粉が好ましい。一方、特に導電性を付与する効果のある金属粉としては、一般には、銀、銅が好ましい。
【0037】
また、金属メッキされた微粉末粒子として、金属メッキされる担体としては、シリカなどの金属酸化物微粉末粒子や銅粉等の無機粉末や有機樹脂粉末が挙げられ、無機粉末が好ましい。金属メッキする金属としては、上記した金属が例示され、金、銀、銅が好ましく、特に銀、銅が好ましい。
【0038】
金属粉あるいは金属メッキされた微粉末粒子の製造方法、精製方法、ならびにその形状・性質は、効果を得るためには制限はなく、また、表面処理しない金属粉あるいは金属メッキされた微粉末粒子であってもよいし、脂肪酸、脂肪酸誘導体あるいは脂肪酸金属塩で処理された金属粉あるいは金属メッキされた微粉末粒子であってもよい。なお、金属粉あるいは金属メッキされた微粉末粒子を予め表面処理した脂肪酸、脂肪酸誘導体あるいは脂肪酸金属塩は、後述する(E)成分としての作用効果は奏さないものである。
【0039】
(D)成分の添加量は、求める効果により異なるが、通常、(A)成分100質量部に対して、0.5〜1,500質量部、好ましくは1〜1,200質量部、より好ましくは5〜1,000質量部である。(D)成分の添加量が0.5質量部未満であると(D)成分の配合目的が十分ではなく、1,500質量部を超えると組成物の作業性が低下する。
【0040】
<(E)成分>
(E)成分である脂肪酸、脂肪酸誘導体あるいは脂肪酸金属塩は、組成物の硬化性の安定化を図るために配合される成分である。なお、(D)成分の表面処理に用いた脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪酸金属塩は、(E)成分としての効果はなく、(E)成分に含まれない。
【0041】
脂肪酸の具体的な例としては、カプリル酸、ウンデシレン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラギン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが例示される。
【0042】
脂肪族誘導体の例としては、脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのエステルなどが挙げられる。脂肪族エステルとしては、上記脂肪酸等とC1〜C5の低級アルコールエステル、ソルビタンエステル、グリセリンエステル等の多価アルコールエステルが例示される。脂肪族アルコールのエステルとしては、カプリリルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミスチルアルコール、ステアリルアルコール等の飽和アルコールなどの脂肪酸アルコールのグルタル酸エステルやスペリン酸エステルのような2塩基酸エステル、クエン酸エステルのような3塩基酸エステルが例示される。
【0043】
脂肪酸金属塩における脂肪酸の例としては、カプリル酸、ウンデシレン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラギン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられ、金属としては、例えば、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等が挙げられる。
【0044】
脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪酸金属塩の好ましい炭素原子数は8以上である。炭素原子数の上限は特に制限されないが、通常50程度であり、好ましくは35である。これらは市販のものも使用できる。(E)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。これら脂肪酸、脂肪酸誘導体あるいは脂肪酸金属塩の中でも、特にステアリン酸が好ましい。
【0045】
(E)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部である。0.05質量部未満であると保存性の安定化が不十分であり、10質量部を超えると得られるシリコーンゴムの耐熱性等のゴム物性が悪くなる。
【0046】
<(F)成分>
本発明においては、更に(F)成分の微粉末シリカを配合することが好ましい。(F)成分の微粉末シリカは、本発明の組成物の硬化物に適度の機械的強度を付与すると共に電気特性を安定化させるために有用である。(D)成分は、シリコーンゴム硬化物の導電性を上げる(体積抵抗率を小さくする)効果があるため、(D)成分を多量に添加すると、シール剤として必要な電気特性が不満足となる。この組成物に、微粉末シリカを添加すると、微粉末シリカが金属又は金属メッキ粉末表面に結合し、金属又は金属メッキ粉末同士の結合を防ぎ、結果的にシリコーンゴム硬化物の体積抵抗率を維持する(体積抵抗率:1×109Ω・cm以上を保つ)ことができる。
【0047】
微粉末シリカには、結晶性シリカ、溶融性シリカ、煙霧性シリカ、沈降性シリカ及びこれらの表面を有機ケイ素化合物で疎水化処理したシリカが例示され、上記の目標を達成するためには、煙霧性シリカ及びこれらの表面を有機ケイ素化合物で疎水化処理した煙霧性シリカが好ましい。
【0048】
また、(F)成分の添加量は、上記の目標を達成するためには、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対し、(F)微粉末シリカ0.2質量部以上であることが好ましく、組成物使用時の使いやすさを考えると、0.5〜30質量部であることがより好ましい。
【0049】
<その他の成分>
また、本発明の組成物には、硬化物に接着性が必要な場合は、接着性付与剤を配合することが好ましい。接着性付与剤は、シランカップリング剤やエポキシ基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリル基等のカルボニル基等の反応性基を有するシロキサンが例示され、エポキシ基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリル基等のカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、シラン、シロキサンから選ばれる接着性付与剤が好ましい。接着性付与剤を配合することにより、金属や有機樹脂に対して自己接着性を付与することができる。
【0050】
接着性付与剤として具体的には、下記のものが挙げられる。
【化4】

【0051】
接着性付与剤を配合する場合の添加量としては、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、ゴム弾性、接着性を考慮すると、0.5〜10質量部であることが好ましい。
【0052】
本発明の組成物には、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分以外に、必要に応じて、例えば、炭酸カルシウム;炭酸亜鉛;ヒュームド二酸化チタン等の補強性無機充填剤;補強性のシリコーンレジン;珪酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック等の非補強性無機充填剤、エチニルシクロヘキサノール等の反応制御剤、着色剤等のシリコーンゴム組成物の公知の添加剤や充填剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0053】
本発明の組成物は、公知の方法で(A)〜(D)成分を混合することにより得ることができる。本発明のより好ましい実施態様としては、(C)成分と(E)成分を事前に混合してから他の成分と混合することが好ましい。(C)成分と(E)成分を事前に混合してから他の成分と混合することにより保存安定性(硬化不良防止特性)をより優れたものとすることができる。
【0054】
本発明の組成物は、通常の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物と同様に、2液に分け、使用時にこの2液を混合して硬化させる所謂二液型の組成物でもよいが、組成物を使用する際の作業性等の点から一液型とすることが好ましい。
【0055】
このようにして得られる本発明の組成物は、使用条件に合わせて、適宜、流動性のあるものや、チキソトロピック性のあるものなどに調製することが可能である。
【0056】
本発明の上記付加反応硬化型シリコーンゴム組成物は、公知の硬化型シリコーンゴム組成物と同様の方法、条件で硬化し得、例えば常温でも十分硬化し得るが、必要に応じて加熱してもよい。加熱する場合、通常加熱温度60〜200℃、特に80〜170℃で硬化させることが好ましい。硬化時間は、硬化温度や成形方法等により異なるが、通常1分〜24時間程度である。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0058】
[実施例、比較例]
下記原料を使用し、表1に示す組成の一液型付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を調製した。
このゴム組成物を120℃、1時間の硬化条件にて硬化し、その硬さ、発泡の有無を確認し、また組成物の保存性を確認した。結果を表1,2に示す。
【0059】
原料
(A)オルガノポリシロキサン(ポリシロキサン)
下記式で表されるビニル基含有の直鎖状オルガノポリシロキサン
【化5】

(式中、nは該シロキサンの25℃における粘度が1,000mPa・sとなるような数である。)
【0060】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン(ハイドロシロキサン)
下記式で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化6】

【0061】
(C)白金族金属系触媒
(C−1)白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(白金化合物)
白金元素含有量0.5質量%
(C−2)(C−1)を0.15質量部とステアリン酸0.10質量部の混合物
【0062】
(D)金属粉
(D−1)銅粉末(福田金属箔粉工業(株)製FCC−SP−99、アトマイズ粉、ス
テアリン酸処理)
(D−2)銅粉末(D−1(市販品)のステアリン酸処理量を10倍としたもの)
(D−3)銀粉末(福田金属箔粉工業(株)製シルコートAgC1542、表面未処理

(D−4)銀メッキシリカ(ポッターズ・バロティーニ(株)製S−5000−S3
、銀表面未処理)
【0063】
(E)脂肪酸、脂肪酸金属塩
(E−1)ステアリン酸
(E−2)ステアリン酸亜鉛
【0064】
(F)シリカ
煙霧性シリカ:デグッサ製 R8200
【0065】
(G)接着性付与剤
下記式で表される化合物
【化7】

(但し、Meはメチル基を示す。)
【0066】
(H)硬化制御剤
エチニルシクロヘキサノール
【0067】
【表1】

【0068】
〔測定方法〕
硬さ:JIS K6249に準じて測定を行った。
発泡の有無:硬化物の発泡の有無を目視にて観察した。
保存性:5℃以下の冷蔵1ヶ月放置後の100℃における硬化性をレオメーター(ALPHA RHEOMETER MDR 2000)で確認し、下記基準で評価した。
◎:T10が15分以内でT90が30分以内
○:T10が15分を超えて30分以内でT90が30分を超えて60分以内
(T10が15分以内、T90が30分以内の一方のみを満足するものを含む)
×:硬化しない、T10が30分を超えるあるいはT90が60分を超える

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有する直鎖状オルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)下記平均組成式(1):
1abSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基を表し、aは0.7≦a≦2.1、bは0.001≦b≦1.0を満たす数であり、但し、a+bは0.8≦a+b≦3.0を満たす数である。)
で表され、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: (A)成分中の全ケイ素原子結合アルケニル基に対して(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.5〜5.0倍モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒: 触媒有効量、
(D)金属粉又は金属メッキされた微粉末粒子: 0.5〜1,500質量部、
(E)脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪酸金属塩から選ばれる1種又は2種以上:
0.05〜10質量部
を含有してなることを特徴とする付加反応硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(D)金属粉又は金属メッキされた微粉末粒子が、銅粉、銀粉、又は銅メッキもしくは銀メッキされた微粉末粒子である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
更に、(F)微粉末シリカを含有する請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を製造するに際し、(C)成分と(E)成分を予め混合したものを使用することを特徴とする付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−201934(P2011−201934A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67718(P2010−67718)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】