説明

付加反応硬化型シリコーンゴム組成物

【課題】 硬化阻害物質の存在下でも硬化でき、シリコーン接着剤として有用な自己接着性付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】 (A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも二個含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン 全組成物中のアルケニル基1モルに対する、本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.4〜10.0モルとなる量、
(C)白金系触媒 有効量、
(D)硬化制御剤、および
(E)接着性付与剤
を含み組成物であって、
前記(D)成分の硬化制御剤の配合量が、組成物の調製から80℃における180分経過後のトルク値を100%としたとき、トルク値が90%となる時間が120分以下となる量である付加反応硬化型シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体を構成するプラスチックなどに由来する硬化阻害物質の影響を受けにくく、優れた接着性を有する自己接着性付加反応硬化型シリコーンゴム組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
白金化合物を硬化触媒としたシリコーンゴム組成物は、その優れた硬化性から様々な用途に使用されており、ミラブル型シリコーンゴムおよび液状シリコーンゴムのいずれにも適用することができる。特に、液状シリコーンゴムに適用される場合には、接着剤、型取り材、LIMS材料等として使用されている。いずれのシリコーンゴムにおいても、当該シリコーンゴム組成物を混合および/または加熱することで架橋反応を促進し、ゴム硬化物を生成することができる。使用時の作業性を考えた場合、一液型の組成物(フルコンパウンド)であることが好ましい。
【0003】
一液型の組成物では、使用するまでの保存性を確保するために、硬化制御剤が使用されるので、一液型の組成物を硬化させるためには加熱が必要である。一液型の組成物を付加反応硬化型シリコーン接着剤として使用する場合、加熱硬化時には、金属、樹脂類、部品類等の被着体も加熱される。樹脂類の中にはシリコーン接着剤、特に付加反応硬化型シリコーン接着剤に対して硬化阻害作用を及ぼすものがある。そのため、シリコーン接着剤の接触界面または全体が硬化しない場合がある。この現象は特に接着剤層の厚みが0.5mmよりも薄くなると顕著に現れる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、被着体を構成するプラスチックなどに由来する硬化阻害物質の存在下でも硬化でき、電気部品、電子部品、車載用部品等に使用するシリコーン接着剤として有用な自己接着性付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決する手段として、
(A)下記平均組成式(1):
R1aR2bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は脂肪族不飽和結合を含まない同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R2はアルケニル基であり、aは0.96〜2.00の数であり、bは0.0001〜0.5の数である。ただし、a+bは1.90〜2.04の数である。)
で表される、ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも二個含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)下記平均組成式(2):
R3cHdSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R3は脂肪族不飽和結合を含まない同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、cは0.70〜2.00の数であり、dは0.01〜1.2の数である。ただし、c+dは1〜3の数である。)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 全組成物中のアルケニル基1モルに対する、本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.4〜10.0モルとなる量、
(C)白金系触媒 有効量、
(D)硬化制御剤、および
(E)接着性付与剤
を含む組成物であって、
前記(D)成分の硬化制御剤の配合量が、組成物の調製から80℃における180分経過後のトルク値を100%としたとき、トルク値が90%となる時間が120分以下となる量である付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の付加反応硬化型シリコーン組成物は、例えば、被着体由来の硬化阻害物質の存在下でも良好に硬化でき、また、高い硬化性を保つ一方で優れた保存性を有する。更に、本発明の組成物をプラスチック上で加熱硬化させた場合にボイド(当該組成物または当該プラスチックから発生するガスに由来する泡)の発生が低く抑えられている。よって、本発明の付加反応硬化型シリコーン組成物は電気部品、電子部品、車載用部品等に使用する高信頼性の接着剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
【0008】
[(A)成分]
(A)成分は本発明組成物の主剤(ベースポリマー)であり、下記平均組成式(1):
R1aR2bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は脂肪族不飽和結合を含まない同一または異種の非置換もしくは置換の、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、R2は好ましくは炭素原子数2〜8、より好ましくは炭素原子数2〜4のアルケニル基であり、aは0.96〜2.00、好ましくは1.5〜2.00、より好ましくは1.9〜2.00の数であり、bは0.0001〜0.5、好ましくは0.001〜0.2、より好ましくは0.001〜0.1の数である。ただし、a+bは1.90〜2.04、好ましくは1.98〜2.03、より好ましくは2.00〜2.02の数である。)で表される、ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも二個含有するオルガノポリシロキサンである。前記(A)成分の分子構造は、特に制限されず、直鎖状、分岐状、環状および網状のいずれであってもよいが、通常、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。また、前記(A)成分は、単一のシロキサン単位からなる重合体であっても、二種以上のシロキサン単位からなる共重合体であってもよい。
【0009】
前記R1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、またはこれらの炭化水素基の一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、ニトリル基等で置換された基、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロメチル基、シアノエチル基等が挙げられる。前記(A)成分の中でも、その化学的安定性および合成の容易さから、すべてのR1がメチル基であるものが好ましい。この場合、必要に応じて、一部のメチル基がフェニル基またはトリフルオロプロピル基で置換されていてもよい。
【0010】
前記R2としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。R2は、好ましくはビニル基またはアリル基である。前記(A)成分の中でも、その合成の容易さおよび化学的安定性から、すべてのR2がビニル基であるものが最も好ましい。
【0011】
前記(A)成分のオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は10〜5,000,000mm2/secの範囲内であることが好ましいが、より好ましくは50〜5,000,000mm2/secの範囲内である。この粘度がこの範囲内にあると、以下の点で好ましい。硬化前は、作業性を十分に確保できる程度に組成物の粘度を低く抑えることができる。硬化後は、硬化物が脆くなるのを十分に防ぐことができるので、基材の変形とともに硬化物をより容易に変形させることができる。なお、前記(A)成分としては、混合後の粘度が上記範囲内にあれば、二種以上のオルガノポリシロキサンを組合せて使用してもよい。
【0012】
[(B)成分]
(B)成分は架橋剤として作用するものであり、平均組成式(2):
R3cHdSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R3は脂肪族不飽和結合を含まない同一または異種の非置換もしくは置換の、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、cは0.70〜2.00、好ましくは1.00〜2.00、より好ましくは1.50〜1.95の数であり、dは0.01〜1.2、好ましくは0.02〜1.0、より好ましくは0.05〜0.95の数である。ただし、c+dは1〜3、好ましくは1.5〜2.7、より好ましくは1.9〜2.5の数である。)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。この(B)成分は、後述する(C)成分の白金系触媒の存在下に、組成物中のアルケニル基、特に(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基と反応して、三次元網目構造を与える架橋剤として作用するものであることから、1分子中に少なくとも2個(通常、2〜200個)、好ましくは3個以上、より好ましくは3〜100個程度の、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有するものである。
【0013】
前記(B)成分の分子構造は、特に制限されず、直鎖状、分岐状、環状および網状のいずれであってもよい。また、前記(B)成分は、少なくとも1つのケイ素−水素結合を有するシロキサン単位(例えば、(H)(RSiO1/2単位、(H)(R)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位)のみからなるオルガノハイドロジェンポリシロキサンでも、かかるシロキサン単位とトリオルガノシロキサン単位((RSiO1/2単位)、ジオルガノシロキサン単位((RSiO2/2単位)、モノオルガノシロキサン単位((R)SiO3/2単位)およびSiO2単位のうち一種または二種以上との共重合体でもよい。(B)成分の重合度は、(A)成分との相溶性および合成の容易さ等の点から、ケイ素原子の数が2〜300個、特に4〜150個となる重合度であることが好ましい。
【0014】
前記R3としては、例えば、前記R1について例示した一価炭化水素基が挙げられる。前記(B)成分の中でも、その合成の容易さおよび化学的安定性からすべてのR3がメチル基であるものが好ましい。この場合、必要に応じて、一部のメチル基がフェニル基またはトリフルオロプロピル基で置換されていてもよい。
【0015】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン環状重合体、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位と(CHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0016】
なお、前記(B)成分としては、上述したオルガノハイドロジェンポリシロキサンを一種単独で、または二種以上組合せて使用してもよい。
【0017】
(B)成分の配合量は、全組成物中のアルケニル基(特には、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基)1モルに対する、(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.4〜10.0モル、好ましくは1.2〜5.0モルとなる量である。当該水素原子の量が0.4モル未満だと、組成物の硬化が不十分となり易く、必要な強度を有する硬化物が得にくい。当該水素原子の量が10モルを超えると、組成物が硬化時に発泡したり、硬化物の物性が経時的に変化したりする場合がある。
【0018】
[(C)成分]
(C)成分の白金系触媒としては白金または白金化合物が挙げられる。該(C)成分は、前記(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと前記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応(ヒドロシリル化反応)を促進させる作用を有する。前記(C)成分としては、従来から公知のヒドロシリル化反応触媒を使用することができる。その具体例としては、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、アセチレンアルコール類等との錯体などが挙げられる。
【0019】
塩素イオンが本発明の組成物に混入するのを低く抑える必要がある場合には、実質的に塩素イオンを含まない白金系触媒を用いることができる。その具体例としては、塩素イオンが5ppm以下の0価の白金錯体が挙げられる。より具体的には、例えば、米国特許3,715,334号、3,775,452号、3,814,730号等に記載されたビニルシロキサン−白金錯体が挙げられる。
【0020】
(C)成分の添加量はヒドロシリル化反応触媒として有効量でよいが、希望する硬化速度に応じて適宜増減することができる。通常は全組成物に対して白金原子換算で質量基準で0.1〜2,000ppm、好ましくは0.5〜500ppm、より好ましくは1〜200ppmの範囲内となる量である。
【0021】
[(D)成分]
(D)成分は、本発明の組成物を一液型または二液型の組成物として成立させるのに必要な保存性を当該組成物に与える硬化制御剤である。所望の硬化条件以外で本発明の組成物が硬化するのを抑制することができる限り、前記(D)成分の構造に特に制限はない。その具体例としては、アセチレンアルコール系化合物、トリアリルイソシアヌレート系化合物、ビニル基含有ポリシロキサン、アルキルマレエート類、ハイドロパーオキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールまたはこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、本発明組成物の硬化性を損なうことなく、特に優れた保存性を本発明組成物に与えることができるので、アセチレンアルコール系化合物およびトリアリルイソシアヌレート系化合物が好ましい。
【0022】
アセチレンアルコール系化合物としては、アセチレンアルコール、並びに例えばそのシラン変性物およびシロキサン変性物が挙げられる。
アセチレンアルコールとしては、特にエチニル基と水酸基は同一の炭素原子に結合しているものが好ましい。その具体例としては下記の化合物が挙げられる。
【0023】
【化1】

【0024】
また、アセチレンアルコールのシラン変性物とは、アセチレンアルコールの水酸基が例えばアルコキシシランまたはアルコキシシロキサンによりシリル化されてSi−O−C結合に転換された化合物である。その具体例としては下記の化合物が挙げられる。
【0025】
【化2】

(式中、nは0〜50の整数であり、mは1〜50、好ましくは3〜50の整数である。)
【0026】
また、トリアリルイソシアヌレート系化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、並びにそのアリル基に1〜3個のトリメトキシシリル基等のアルコキシシリル基が付加したアルコキシシリル置換・トリアリルイソシアヌレートや、該アルコキシシリル基同士が加水分解縮合したシロキサン変性物(誘導体)が挙げられる。
トリアリルイソシアヌレートは、下記式で示されるものである。
【0027】
【化3】


トリアリルイソシアヌレートのアルコキシシリル置換体としては、例えば、次の化合物や、これらの化合物のメトキシ基が、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等で置換されたものなどが挙げられる。
【0028】
【化4】

【0029】
(D)成分の配合量は、組成物の調製から80℃における180分経過後のトルク値を100%としたとき、トルク値が90%となる時間(以下、「T90」とする。)が120分以下、好ましくは100分以下となる量であるように調整される。T90が120分を超えると、組成物が硬化阻害物質の存在下では硬化しにくくなる。
この硬化性の測定に用いられるトルク検知式硬化性評価機は、レオメータの一種であり、JIS K 6300に規定されている。市販品としては、例えばアルファテクノロジー製のMDR2000(商品名)を挙げることができる。
【0030】
また、(D)成分の配合量は、組成物が十分な保存性を確保できるように、40℃における未硬化時間が168時間以上となる量であることが好ましく、180時間以上となる量であることがより好ましい。ここで、「未硬化時間」とは、組成物が自己流動性または塑性変形が可能な状態を保持する時間を意味し、「硬化の完了」とは、組成物の上記のトルク値が90%以上の状態になった時を意味する。
【0031】
[(E)成分]
(E)成分は、本発明の組成物に自己接着性を与える接着性付与剤である。当該自己接着性は、特に、金属および有機樹脂に対して良好であることが好ましい。前記(E)成分としては、例えば、ビニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロキシ基、ヒドロシリル基(SiH基)、エポキシ基、アルコキシシリル基、カルボニル基、およびフェニル基からなる群から選択される少なくとも1種、好ましくは2種以上の官能基を有するシラン、ケイ素原子数が2〜30個、好ましくは4〜20個程度の、環状または直鎖状のシロキサン等の有機ケイ素化合物、および1〜4価、好ましくは2〜4価のフェニレン構造等の芳香環を1分子中に1〜4個、好ましくは1〜2個含有し、かつ、ヒドロシリル化付加反応に寄与しうる官能基(例えば、アルケニル基、(メタ)アクリロキシ基)を1分子中に少なくとも1個、好ましくは2〜4個含有する、分子中に酸素原子を含んでもよい、非ケイ素系(即ち、分子中にケイ素原子を含有しない)有機化合物を挙げることができる。前記(E)成分の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

【0035】
(E)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができるが、基材への接着性の点から、有機ケイ素化合物と、非ケイ素系有機化合物とを組み合わせて使用することが好ましい。
【0036】
(E)成分の配合量は、本発明の組成物が被着体、特に金属および有機樹脂に対する良好な自己接着性を得ることができる量であり、(A)成分100質量部当り、例えば、0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜5質量部である。
【0037】
[その他の成分]
更に、本発明の組成物には、その効果を妨げない量の補強性シリカ充填剤、石英粉末、ケイ藻土、炭酸カルシウム等の非補強性充填剤、コバルトブルー等の無機顔料、有機染料等の着色剤、酸化セリウム、炭酸亜鉛、炭酸マンガン、ベンガラ、酸化チタン、カーボンブラック等の耐熱性・難燃性向上剤等を添加することもできる。更に、導電安定性を向上させる目的で本発明の組成物に粉状、ウイスカー状、またはストラクチャーの発達したカーボンブラック、グラファイト等を添加してもよい。更に、硬化速度を向上させるために触媒作用補助剤等を添加することもできる。
【0038】
本発明の組成物の形態は特に制限されず、例えば、一液型でも二液型でもよいが、使用時の作業性の点から一液型であることが好ましい
[組成物の用途]
【0039】
本発明の組成物は用途に応じて所定の基材に塗布した後、加熱することにより硬化させることができる。本発明組成物の硬化条件は、その量により異なり、特に制限されない。硬化温度は好ましくは20〜120℃、より好ましくは60〜100℃である。通常、硬化時間は0.5〜360分程度である。
【0040】
本発明の組成物は接着剤として用いることができる。本発明の組成物を含む接着剤の被着体には特に制限はなく、例えば、金属、有機樹脂等を挙げることができるが、好ましくはプラスチックを当該被着体として用いることができる。当該プラスチックとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ナイロン6、ナイロン66、ポリフタルアミド(PPA)等が挙げられる。本発明の組成物を120℃以下、好ましくは20〜120℃、より好ましくは60〜100℃の温度においてプラスチック基材上で硬化させることによりプラスチック基材とシリコーンゴムとを接着させることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
下記の(A)〜(F)成分を表1に従って混合した。
(A)オルガノポリシロキサン:
【0042】
【化8】


(式中、nは該オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が10000mm2/secとなる整数であり、具体的には約500の整数である。)

(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン:
【0043】
【化9】


(C)白金系触媒:
白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体/トルエン溶液
(D)硬化制御剤:
エチニル−シクロヘキサノール/50%トルエン溶液
(E−1)接着性付与剤1:
【0044】
【化10】


(式中、Meはメチル基を示す。)
(E−2)接着性付与剤2:
【0045】
【化11】


(F)シリカ:
煙霧性シリカ(デグッサ製、R8200)
【0046】
【表1】


(注)白金化合物の添加量は全組成物に対して白金原子換算で質量基準で示した。
【0047】
[80℃におけるT90の測定]
レオメータ(アルファテクノロジーズ製、MDR2000)にて、80℃における組成物の硬化特性を測定し、180分後のトルク値を100%としたとき、トルク値が90%になる時間をT90(分)とした。
【0048】
[40℃における未硬化時間の測定]
組成物を100mlのガラス瓶に入れて密閉し、40℃で恒温炉中に保存した。組成物が自己流動性または塑性変形可能な状態を保持する時間を未硬化時間とした。
【0049】
[PPS貼り合わせ試験]
表1に示した厚みを持つスペーサーを二枚のPPS板(東ソー製、サスティールGS−40)の間に挟み込むことによって生じたすき間に組成物を流し込んで、表1に示した条件で加熱した。○は組成物全体が硬化した場合を、△はPPSとの界面の組成物が未硬化の場合を、×は組成物全体が未硬化の場合を示す。
【0050】
また、硬化温度が120℃、硬化時間が30分、接着剤厚みが0.3mmの場合にはボイドが発生するかどうかについても観察した。ボイドが全く発生しない場合を−、最も高い密度でボイドが発生する場合を++で表す。両者の中間の密度でボイドが発生する場合を+で表す。
【0051】
[評価]
実施例の組成物は比較例の組成物に比べて、PPS貼り合わせ試験において良好な硬化性を示した。また、組成物の硬化が速いほどボイドの発生が低いことが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(1):
R1aR2bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は脂肪族不飽和結合を含まない同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R2はアルケニル基であり、aは0.96〜2.00の数であり、bは0.0001〜0.5の数である。ただし、a+bは1.90〜2.04の数である。)
で表される、ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも二個含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)下記平均組成式(2):
R3cHdSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R3は脂肪族不飽和結合を含まない同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、cは0.70〜2.00の数であり、dは0.01〜1.2の数である。ただし、c+dは1〜3の数である。)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 全組成物中のアルケニル基1モルに対する、本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.4〜10.0モルとなる量、
(C)白金系触媒 有効量、
(D)硬化制御剤、および
(E)接着性付与剤
を含む組成物であって、
前記(D)成分の硬化制御剤の配合量が、組成物の調製から80℃における180分経過後のトルク値を100%としたとき、トルク値が90%となる時間が120分以下となる量である付加反応硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
一液型の組成物である請求項1に記載の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
40℃における未硬化時間が168時間以上である請求項1または2に記載の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
前記(D)成分がアセチレンアルコール系化合物、またはトリアリルイソシアヌレート系化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
前記(E)成分の接着性付与剤が有機ケイ素化合物と非ケイ素系有機化合物とを併用したものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を含む接着剤。
【請求項7】
プラスチックを接着させるために用いる請求項6に記載の接着剤。
【請求項8】
該プラスチックが、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ナイロン6、ナイロン66、またはポリフタルアミドである請求項7に記載の接着剤。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を120℃以下の温度においてプラスチック基材上で硬化させることを特徴とするプラスチック基材とシリコーンゴムとの接着方法。

【公開番号】特開2006−22284(P2006−22284A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203872(P2004−203872)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】