説明

代掻き作業機

【課題】トラクタの後輪で形成される轍溝を均平化するための整地部での負担を軽減し、その走行部の轍跡に影響されることがない均平性能を有する取扱性のよい代掻き装置を提供する。
【解決手段】トラクタ後輪10と代掻き作業機の砕土部20との間に、トラクタ後輪10により形成される轍溝へ土壌を埋め戻すための均平補助手段を設け、均平補助手段は、代掻き作業機をトラクタから外した非作業時に使用するスタンドのスタンド取り付けブラケット30に取付け取り外し可能に設けられ、また、中央作業部204と左右の延長作業部205,205´の境界部207,207´に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに装着されて使用される代掻き作業機の均平装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の代掻き装置の従来技術として実開昭54−97406号公報(従来技術1)または、実公昭49−7139号公報(従来技術2)が開示されている。
【0003】
実開昭54−97406号公報(従来技術1)には、「トラクタでけん引する砕土整地機のロータカバーの前縁部における上記トラクタの後輪に対応する左右部分にブラケットを取付け、上記ブラケットには土寄せ板を正面略ハ状に固着し、上記土寄せ板は、後部は進行方向に対して適当角度の勾配をつけ基部をせばめ傾斜誘導壁体を形成し、前部は進行方向に対してやや外方に開き気味に形成されていることを特徴とする砕土整地機におけるトラクタ車輪跡除去装置」また、前記トラクタ車輪跡除去装置において「ブラケットと土寄せ板とにおいて、当該土寄せ板を上記ブラケットに対して上下調整自在に構成した」技術の記載がある。
【0004】
また、実公昭49−7139号公報(従来技術2)には、「下端に土寄板14を軸着した支持棒15の上部を止金17の凹部に係合して支持棒15を主桁13に固定し、1対の土寄板14,14をトラクタaのゴム車輪1の接地面後方においてゴム車輪1の中心線の両側に配置するようにした農耕用4輪トラクタに連結する水田代掻機におけるゴム車輪の跡を消す装置」の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭54−97406号公報(従来技術1)
【特許文献2】実公昭49−7139号公報(従来技術2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
代掻き砕土装置による砕土部や整地部の技術の向上により代掻き作業時の均平技術は向上してきているが、近年トラクタが4輪駆動となったことや圃場条件が良くなったこともあり、代掻き時に後輪に補助車輪を装着せずに作業が行われるようになってきている。このため、トラクタ後輪による轍溝が深く形成されやすくなり、代掻き作業による均平作業では轍が形成されて移動した土壌を轍溝に戻しきれずにトラクタ後輪の走行跡が低く筋状に残る場合がある。また、トラクタが大型化することでタイヤ幅も広くなってきたことや、クローラ型の走行部を有するトラクタが使用されるようになってきて、走行部により移動される土量も増加し均平作業には不利な条件となってきている。
【0007】
従来技術1に開示される「砕土整地機におけるトラクタ車輪跡除去装置」は、ロータカバーの前縁部にブラケットを取り付け土寄せ板を固着した構成となっているが、大量に移動された土壌を戻すことや、大型化するトラクタによるけん引作業には強度上十分とはいえない構成となっている。また、従来技術2に開示される「農耕用4輪トラクタに連結する水田代掻機におけるゴム車輪の跡を消す装置」は、調整時の取扱性や大量に移動された土壌を戻す場合に十分な構成とはいえない問題がある。
【0008】
このため本発明の目的は、トラクタの後輪部で形成される轍溝を均平化するための整地部での負担を軽減し、特に大型トラクタやクローラ型のトラクタ等で代掻き作業を行う場合に、その走行部の轍跡に影響されることがない均平性能を有する簡易で取扱性のよい代掻き装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、進行方向と直行する方向に長い砕土部と、その後方に砕土部により砕土された土壌を押圧して均平作業を行う均平板を設けたトラクタの後方に装着されて使用される代掻き作業機において、トラクタ後輪と代掻き作業機の砕土部との間に、トラクタ後輪により形成される轍溝へ土壌を埋め戻すための均平補助手段が設けられていて、均平補助手段は、代掻き作業機をトラクタから外した非作業時に使用するスタンドの取り付けブラケットに取付け取り外し可能に設けられていることを特徴とする代掻き作業機を提案する。
【0010】
また、均平補助手段は、平面視トラクタの進行方向に対し斜めにトラクタ後輪の轍溝へ向けて設けた土寄せ板を有し、代掻き作業機をトラクタから外した非作業時に使用するスタンドの取り付けブラケットに取付け取り外し可能に設けられているとともに、上下取付け位置調節可能に設けられて、平面視または後面視においてトラクタ中心に対し左右対称に取り付け可能となっていることを特徴とする0009欄記載の代掻き作業機を提案する。
【0011】
さらに、進行方向と直行する方向に長い砕土部と、その後方に砕土部により砕土された土壌を押圧して均平作業を行う均平板を設け、トラクタの後方に装着されて使用される代掻き作業機において、代掻き作業機は、中央作業部と左右の延長作業部とで構成され、左右の延長作業部はそれぞれ中央作業部側に非作業状態に折畳み可能に構成されていて、トラクタ後輪と代掻き作業機の砕土部との間に、トラクタ後輪により形成される轍溝へ土壌を埋め戻すための均平補助手段を設け、均平補助手段は、平面視トラクタの進行方向に対し斜めにトラクタ後輪の轍溝へ向けて設けた土寄せ板を有し、代掻き作業機をトラクタから外した非作業時に使用するスタンドの取り付けブラケットに取付け取り外し可能に設けられているとともに、土寄せ板は中央作業部と左右の延長作業部とを有する代掻き作業機の境界部前方に配置されていることを特徴とする代掻き作業機を提案する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、トラクタ後輪と代掻き作業機の砕土部との間にトラクタ後輪により形成される轍溝へ土壌を埋め戻すための均平補助手段を、代掻き作業機をトラクタから外した非作業時に使用するスタンドの取り付けブラケットに取付け取り外し可能に設けたことにより、均平補助手段の為の専用部品が最小限で構成可能であり簡易な構造を実現可能で、製造コストを低く抑えることが可能であり、代掻き作業機の最前方に設けているため上下方向の調整が容易にできる。
【0013】
さらに、中央作業部と左右の延長作業部とで構成された代掻き機の場合、砕土部は砕土駆動部を支持するための軸受部や駆動用のチェーンケース等により折畳み境界部に十分に砕土用や土移動用の爪を配置できないため、折畳み境界部は他の部分に比較して砕土均平性能が十分とはいえない部分である。このため、この部分にトラクタ後輪により盛り上げられた大量の土壌が位置した場合や深い轍溝が位置した場合、砕土均平能力が不十分となり代掻きによる均平が不良となる。本発明は中央作業部と左右の延長作業部との境界部前方に均平補助手段を配置してあるため、砕土部前方位置でトラクタ後輪で形成された轍溝に、その側方に盛り上がった土壌を均平補助手段により埋め戻し、後方の砕土均平部の折畳み境界部に大量の土壌が位置することや深い轍溝が位置することを回避できることで代掻き機の均平性を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を実施した代掻き作業機のトラクタに装着した状態の側面図
【図2】本発明を実施した代掻き作業機のトラクタに装着した状態の平面図
【図3】本発明を実施した代掻き作業機の正面図
【図4】本発明を実施した代掻き作業機の均平補助手段の要部側面図
【図5】本発明を実施した代掻き作業機のトラクタから外してスタンドを装着した状態の側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を以下の図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した代掻き作業機のトラクタに装着した状態の側面図、図2は同じくトラクタに装着した状態の平面図、図3は本発明を実施した代掻き作業機の正面図、図4は本発明を実施した代掻き作業機の均平補助手段の要部側面図、図5は本発明を実施した代掻き作業機のトラクタから外してスタンドを装着した状態の側面図を示したものである。
【0016】
本例に示す代掻き作業機2は、トラクタ1に装着されて代掻きや砕土作業を行う装置である。トラクタ1の後方に設けた左右一対のロワーリンク12とその中央上方に設けたトップリンク11とからなる3点リンクヒッチ機構に、これらを定型化する連結枠25(クイックカプラー又はオートヒッチと称される)を前記ロワーリンク12に水平方向に設けたロワーリンクピン251と前記トップリンク11に同じく水平方向に設けたトップリンクピン252をそれぞれ挿入して取り付け、代掻き作業機2の前方フレームに設けた左右一対のロワーピン254と該中央上方に設けたトップマスト26の前端部に設けたアッパーピン253に前記連結枠25の係合部を係合させ連結される。
【0017】
連結手順は、先ず連結枠25上方のフック255を前記トップマスト26のアッパーピン253に係合させ、トラクタの3点リンク機構を上昇させ連結された連結枠25を上昇させると、前記代掻き作業機2側のロワーピン254が連結枠25側に引き寄せられ連結枠25の下部の係合部と係合し連結される。下部の係合部は、連結枠25に設けたピン固定フック256をロワーピン254に引掛けて外れ防止をする。
【0018】
代掻き作業機2前方中央水平方向に突設させて設けた入力軸27は、トラクタ1の図示していないPTO軸とユニバーサルジョイントで連結され、トラクタ1の回転動力を代掻き作業機2側に入力するためのものである。入力軸27に入力された回転動力は、入力軸27を突設して設けた左右中央部のギヤボックス28に入力され、ギヤボックス28内のベベルギヤを介してギヤボックス28から左右水平方向に延設したメインフレーム22内の駆動軸により左右方向いずれか側方に設けた伝動チェーンケースに伝達され、該伝動チェーンケースに内装されているスプロケットに伝動され、これに巻架される伝動ローラーチェーンにより、下方に設けた砕土部20のローター軸202に固着されたスプロケットを駆動しローター軸202を回転駆動する。砕土部20は、機幅方向に長いローター軸202に放射状に砕土爪201を固着させて設けてあり、回転する砕土爪201により土を砕土するとともに左右方向に移動するように構成されていて、ローター軸202上方部はローターカバー203で覆われて砕土された土の飛散を防止する。
【0019】
ローターカバー203の後方部には、整地部21が設けてあり、ローターカバー203の後端を支点に上下方向に回動する第1整地板21aと、その後端部を支点に上下方向に回動自在に連結された第2整地板21bとで構成する均平板210が設けられていて、砕土部20で砕土され飛散する土を受け止めるとともに後方部で整地する。
【0020】
トラクタ後輪10と代掻き作業機2の砕土部20との間には、トラクタ後輪10により形成される轍溝へ土壌を埋め戻すための均平補助手段3が設けられている。均平補助手段3は、代掻き作業機2をトラクタ1から外した非作業時に使用するスタンド4のスタンド取り付けブラケット30下方に取付けられていて、スタンド取り付けブラケット30は、スタンド4を取り付けるための開放部を前方に向けた平面視コ字状部31を有していて、コ字状部31の側面板の一方を下方に延出し、下方部に設けた取り付け孔にボルト・ナットにより土寄せ板33が固定され設けられている。
【0021】
土寄せ板33は、トラクタ後輪10により形成される轍溝の側方の土壌が盛り上がった部分に位置するように設けられ、トラクタ1の進行により平面視斜設して設けた土寄せ板33によって盛り上がった土壌を轍溝に誘導し埋め戻す。土寄せ板33は、側方に平面部の取付け面を有するスタンド取り付けブラケット30に一端が取り付けられ、平面視進行方向外側前方に斜めに端面を向け設けられるとともに、前方に板状平面を向けた形状となっていて、スタンド取り付けブラケット30に設けた複数の取り付け孔32により取り付けられ、複数設けた取り付け孔32を選択して取り付けることで上下位置を調整する。
【0022】
本例においては、図4に示す(a)が下方位置で、(b)が上方に取り付けた状態となる。上下方向の調節は、砕土部20の耕深量や土質または轍溝の深さや大きさ等により最適位置が異なる為調整可能となっている。均平補助手段3は、トラクタ後輪10により形成される凹部轍溝やその側方に盛り上げられた土壌を均平化して、後方に位置する砕土部20や整地部21の負担を軽減し代掻き均平性を補助する。
【0023】
本例において、砕土部20及び整地部21は、中央作業部204と左右の延長作業部205,205´とで構成されていて、左右の延長作業部205,205´はそれぞれ中央作業部204側上方部に折畳み回動支点206を中心に折畳みできるように構成されている。このため、砕土部20はそれぞれ砕土駆動部を支持するための軸受部や駆動用のチェーンケース等を両端部に配置する必要があり、折畳み境界部207,207´には十分に砕土用や土移動用の砕土爪201を配置できない構成となっていて、折畳み境界部207,207´は他の部分に比較して砕土均平性能が十分とはいえない部分となっている。このため、この部分にトラクタ後輪10により盛り上げられた大量の土壌が位置した場合や深い轍溝が位置した場合、砕土均平能力が不十分となり代掻きによる均平が不良となる。このため、中央作業部204と左右の延長作業部205,205´との境界部207,207´前方に均平補助手段3を配置可能にスタンド取り付けブラケット30を設けてあり、砕土部20前方位置のトラクタ後輪10で形成された轍溝に、その側方に盛り上がった土壌を均平補助手段3により埋め戻し、後方の砕土均平部の折畳み境界部207,207´に大量の土壌が位置することや深い轍溝が位置することを回避可能としている。
【0024】
図5は、スタンド4を装着してトラクタ1から外した状態の代掻き作業機2を示した側面図で、スタンド4は水平に設けた前後方向の角部材に、前後端部下方に移動用のキャスター輪を設け、前端側に上方に突設させた角部材による代掻き作業機2への取付け部を有していて、代掻き作業機2の幅方向に2箇所設けられている。スタンド4の取付け部は、代掻き作業機2の砕土部20の前方部の中央作業部204左右端部近傍に設けられていて、スタンド取り付けブラケット30のコ字状部31に、前記スタンド4の角部材による取付け部を係合させ固定ピンで取り付ける。土寄せ板33はコ字状部31の側方に取り付けられ、さらに前方外側に向かって設けてあるため、スタンド4の取り付けには支障がなく干渉もしない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明は、トラクタ等の走行機後方に装着されて使用される代掻き作業機や砕土作業機等の均平作業を目的とした農業用機械に利用される。
【符号の説明】
【0026】
1 トラクタ
10 トラクタ後輪
11 トップリンク
12 ロワーリンク
2 代掻き作業機
20 砕土部
201 砕土爪
202 ローター軸
203 ローターカバー
204 中央作業部
205,205´ 延長作業部
206 折畳回動支点
207,207´ 境界部
21 整地部
210 均平板
21a 第1整地板
21b 第2整地板
25 連結枠
251 ロワーリンクピン
252 トップリンクピン
253 アッパーピン
254 ロワーピン
255 フック
26 トップマスト
27 入力軸
28 ギヤボックス
3 均平補助手段
30 スタンド取り付けブラケット
31 コ字状部
32 取り付け孔
33 土寄せ板
4 スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向と直行する方向に長い砕土部と、その後方に砕土部により砕土された土壌を押圧して均平作業を行う均平板を設けたトラクタの後方に装着されて使用される代掻き作業機において、
トラクタ後輪と代掻き作業機の砕土部との間に、トラクタ後輪により形成される轍溝へ土壌を埋め戻すための均平補助手段が設けられていて、均平補助手段は、代掻き作業機をトラクタから外した非作業時に使用するスタンドの取り付けブラケットに取付け取り外し可能に設けられていることを特徴とする代掻き作業機。
【請求項2】
均平補助手段は、平面視トラクタの進行方向に対し斜めにトラクタ後輪の轍溝へ向けて設けた土寄せ板を有し、代掻き作業機をトラクタから外した非作業時に使用するスタンドの取り付けブラケットに取付け取り外し可能に設けられているとともに、上下取付け位置調節可能に設けられて、平面視または後面視においてトラクタ中心に対し左右対称に取り付け可能となっていることを特徴とする請求項1記載の代掻き作業機。
【請求項3】
進行方向と直行する方向に長い砕土部と、その後方に砕土部により砕土された土壌を押圧して均平作業を行う均平板を設け、トラクタの後方に装着されて使用される代掻き作業機において、代掻き作業機は、中央作業部と左右の延長作業部とで構成され、左右の延長作業部はそれぞれ中央作業部側に非作業状態に折畳み可能に構成されていて、トラクタ後輪と代掻き作業機の砕土部との間に、トラクタ後輪により形成される轍溝へ土壌を埋め戻すための均平補助手段を設け、均平補助手段は、平面視トラクタの進行方向に対し斜めにトラクタ後輪の轍溝へ向けて設けた土寄せ板を有し、代掻き作業機をトラクタから外した非作業時に使用するスタンドの取り付けブラケットに取付け取り外し可能に設けられているとともに、土寄せ板は中央作業部と左右の延長作業部とを有する代掻き作業機の境界部前方に配置されていることを特徴とする代掻き作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−87508(P2011−87508A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243306(P2009−243306)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】