説明

代謝障害の処置のための化合物

種々の代謝障害の処置のために有用な化合物が、本出願において開示される。上記の種々の代謝障害としては、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化症および動脈硬化症が挙げられる。インスリン抵抗性症候群およびI型糖尿病とII型糖尿病とを包含する糖尿病からなる群より選択される状態の処置のための医薬の製造における生理活性物質の使用が、本出願において開示される。アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足潰瘍形成、もしくは糖尿病に関係する白内障の処置またはそれらを発症する機会の減少のための医薬の製造における生理活性物質の使用が、本出願において開示される。高脂血症、悪液質、および肥満からなる群より選択される状態の処置のための医薬の製造における生理活性物質の使用が、本出願において開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
真性糖尿病は、罹病率および死亡率の主要原因である。慢性的に上昇した血中グルコースは、衰弱させる合併症(腎症(これは、しばしば透析または腎臓移植を必要とする);末梢ニューロパシー;網膜症(これは、失明をもたらす);脚および足の潰瘍形成(切断をもたらす);脂肪肝疾患(時には、肝硬変へと進行する);および冠状動脈疾患および心筋梗塞に対する脆弱性)をもたらす。
【0002】
2つの主要な型の糖尿病が存在する。I型(すなわち、インスリン依存性)糖尿病(IDDM)は、膵臓島におけるインスリン産生β細胞の自己免疫破壊に起因する。この疾患の発症は、通常は、小児または青年期に起こる。処置は、主に、インスリンを毎日複数回注射することを、インスリン用量の調節を導くための血中グルコースレベルの頻繁な試験と組み合わせることからなる。なぜなら、過剰なインスリンは、低血糖症を引き起こし得、結果的に、脳および他の機能の損傷を引き起こし得るからである。
【0003】
II型(すなわち、非インスリン依存性)糖尿病(NIDDM)は、代表的には、成人期に発症する。NIDDMは、インスリンの作用に対するグルコース利用組織(例えば、脂肪組織、筋肉、および肝臓)の抵抗性に関係する。最初に、膵臓島β細胞が、過剰なインスリンを分泌することにより補償する。最終的な島の機能不全は、代償不全および慢性高血糖症を生じる。逆に、中程度の島機能不全が、末梢インスリン抵抗性の前に生じ得るかまたは同時生じ得る。NIDDMの処置のために有用ないくつかの種類の薬物が存在する。1)インスリン放出物質(これは、インスリン放出を直接刺激し、低血糖症の危険を保有する);2)食餌インスリン放出物質(これは、グルコース誘導性インスリン分泌を増強し、各食餌の前に摂取されなければならない);3)ビグアニド(メトホルミンを含む)(これは、肝臓糖新生(これは、糖尿病において逆説的に上昇する)を減弱する);4)インスリン感作物質(例えば、チアゾリジンジオン誘導体であるロシグリタゾンおよびピオグリタゾン)(これは、インスリンに対する末梢応答性を改善するが、体重獲得、浮腫、および一時的肝臓毒性のような副作用を有する);5)インスリン注射(これは、しばしば、島が慢性過刺激下で機能不全になった場合に、NIDDMの後期段階において必要である)。
【0004】
インスリン抵抗性はまた、顕著な高脂血症を伴わずに生じ得、一般には、アテローム性動脈硬化症、肥満、高脂血症、および本態性高血圧に関係する。この異常の集団は、「代謝症候群」または「インスリン抵抗性症候群」を構成する。インスリン抵抗性はまた、脂肪肝に関係する。脂肪肝は、慢性炎症(NASH;「非アルコール性脂肪肝炎」)、線維症、および肝硬変へと進行し得る。累積的に、インスリン抵抗性症候群(糖尿病を含むが、これに限定されない)は、40歳を超える人々の罹病率および死亡の主要原因の多くの基礎をなす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような薬物の存在にも関わらず、糖尿病は、主要かつ増加中の公衆衛生問題のままである。糖尿病の後期合併症は、国内の保健医療財源の大きな割合を消費する。インスリン抵抗性の主要な欠損および島機能不全に有効に取り組み、既存の薬物よりも副作用が少ないかまたは穏やかである、新規な経口活性治療剤の需要が存在する。
【0006】
現在、脂肪肝疾患の安全かつ有効な処置は、存在しない。従って、そのような処置は、この状態を処置する際に有益である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、悪液質、高脂血症、脂肪肝疾患、肥満、アテローム性動脈硬化症、または動脈硬化症の処置のための医薬の製造における、下記に示されるような生理活性物質の使用を提供する。本発明はまた、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、悪液質、高脂血症、脂肪肝疾患、肥満、アテローム性動脈硬化症、または動脈硬化症を有する哺乳動物被験体を処置する方法を提供し、この方法は、有効量の本発明に従う生理活性物質を上記被験体に投与する工程を包含する。本発明はまた、本発明の生理活性物質および薬学的に受容可能なキャリアを含み、薬学的組成物を提供する。
【0008】
本発明の生理活性物質は、下記の生物活性アッセイのうちの1つ以上において活性を有することが、考えられ、これらのアッセイは、ヒト糖尿病およびインスリン抵抗性症候群の動物モデルを確立している。従って、そのような物質は、糖尿病およびインスリン抵抗性症候群の処置において有用である。
【0009】
(発明の詳細な説明)
本明細書中で使用される場合、接続詞「含む(包含する、含有する)(comprising)」は、解放型(oepn−ended)である。この用語を利用する請求の範囲は、そのような請求の範囲において記載される要素に加えて、要素を含み得る。
【0010】
上記の使用、処置方法および薬学的組成物に従って利用される生理活性物質は、以下の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な塩:
4−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−4−オキソブタン酸;
メチル4−(4−ベンジルオキシ−2−メトキシフェニル)−4−オキソブタノエート;
エチル4−(4−シクロヘキシルメトキシフェニル)−4−オキソブタノエート;
4−(3−クロロ−4−シクロプロピルメトキシフェニル)−4−オキソブタン酸;
エチル3−(4−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
メチル3−(3−(2,6−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(2−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(3−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;および
エチル3−(3−ベンジルオキシ−4−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート
から選択される。
【0011】
本発明は、インスリン抵抗性症候群および糖尿病(一次本態性糖尿病(例えば、I型糖尿病またはII型糖尿病)および二次非本態性糖尿病の両方)からなる群より選択される状態を有する哺乳動物被験体を処置するための方法を提供し、この方法は、被験体に、上記状態を処置するために有効な量の本明細書中に記載される生理活性物質を投与する工程を包含する。本発明の方法に従って、糖尿病の症状または糖尿病の症状(例えば、アテローム性動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎炎、ニューロパシー、網膜症、足の潰瘍形成および悪液質(このような症状各々は、糖尿病に関係している))を発症する機会は、減少され得る。本発明は、高脂血症を処置するための方法を提供し、この方法は、上記状態を処置するために有効な量の本明細書中に記載される生理活性物質を投与する工程を包含する。本発明はまた、悪液質を処置するための方法を提供し、この方法は、上記悪液質を処置するために有効な量の本明細書中に記載される生理活性物質を投与する工程を包含する。本発明はまた、肥満を処置するための方法を提供し、この方法は、上記状態を処置するために有効な量の本明細書中に記載される生理活性物質を投与する工程を包含する。本発明はまた、アテローム性動脈硬化症または動脈硬化症から選択される状態を処置するための方法を提供し、この方法は、上記状態を処置するために有効な量の本明細書中に記載される生理活性物質を投与する工程を包含する。本発明の活性物質は、その被験体が、糖尿病またはインスリン抵抗性症候群を有していようが、有していまいが関係なく、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化症または動脈硬化症を処置するために有効である。上記物質は、従来の任意の全身投与経路によって投与され得る。好ましくは、上記物質は、経口投与される。本発明に従って使用され得る他の投与経路としては、直腸経路、非経口経路、注射(例えば、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、もしくは腹腔内注射)による経路、または経鼻経路が挙げられる。
【0012】
本発明の化合物により取り組まれる疾患または障害の多くは、2つの広範なカテゴリーであるインスリン抵抗性症候群および慢性高血糖症の結果に入る。糖尿病の非存在下で生じ得る燃料代謝の調節不全(特に、インスリン抵抗性)(持続性高血糖症)自体は、種々の症状(高脂血症、アテローム性動脈硬化症、肥満、本態性高血圧、脂肪肝疾患(NASH;非アルコール性脂肪肝炎)が挙げられ、本質的に癌または全身炎症疾患の状況では、悪液質が挙げられる)に関係する。悪液質はまた、I型糖尿病または後期II型糖尿病の状況で生じ得る。組織燃料代謝を改善することにより、本発明の活性物質は、実施例において動物において実証されるように、インスリン抵抗性に関係する疾患および状態を予防または軽減するために有用である。インスリン抵抗性に関係する徴候および症状の集団は、個々の患者中に共存し得るが、多くの場合、インスリン抵抗性により影響される多くの生理系の脆弱性の個々の差異に起因して、唯一つの症状が支配し得る。それにも関わらず、インスリン抵抗性は、多くの疾患状態に対する主要な寄与因子であるので、この細胞および分子的欠損は、インスリン抵抗性に起因し得るかまたはインスリン抵抗性により憎悪され得る任意の器官系において、事実上任意の症状を予防または軽減するために有用である。
【0013】
インスリン抵抗性および同時に生じる膵臓島による不十分なインスリン産生が、十分に重篤である場合、慢性高血糖症が生じ、II型糖尿病(NIDDM)の発症を規定する。上記のインスリン抵抗性に関連する代謝障害に加えて、高血糖症に続く疾患状態もまた、NIDDMを有する患者において生じる。これらとしては、腎炎、末梢ニューロパシー、網膜症、微小血管疾患、四肢の潰瘍形成、およびタンパク質の非酵素的グリコシル化の結果(例えば、コラーゲンおよび他の結合組織に対する損傷)が挙げられる。高血糖症の減弱は、これらの糖尿病の結果の発症率および重篤度を減少する。実施例において示されるように、本発明の活性物質および組成物は、糖尿病における高血糖症を減少するのを助けるので、これらは、慢性高血糖症の合併症を予防および軽減するために有用である。
【0014】
ヒト被験体および非ヒト哺乳動物被験体の両方が、本発明の処置方法に従って処置され得る。特定の被験体のために本発明の特定の活性物質の至適用量は、当業者により臨床状況において決定され得る。インスリン抵抗性、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質または肥満に関連する障害の処置のためにヒトに経口投与される場合、上記物質は、1mg〜3000mgの日用量で一般には投与され、1日当たり1回または2回投与される。より具体的実施形態において、ヒトにおける上記日用量は、1mg〜400mg、または20mg〜200mgであり、1日当たり1回または2回投与される。マウスに対して経口投与する場合、上記物質は、一般的には、日用量において、体重1kg当たり、1〜300mgの上記物質を投与される。本発明の活性物質は、糖尿病またはインスリン抵抗性症候群において単一治療として、またはこれらの型の疾患において有用な1つ以上の他の薬物(例えば、インスリン放出因子、食餌インスリン放出因子、ビグアニド、またはインスリン自体)と組み合わせて、使用される。そのようなさらなる薬物は、標準的な臨床実施に従って投与される。いくつかの場合、本発明の物質は、他の種類の薬物の効力を改善し、それにより、より低(従って、より低毒性)用量しか患者に投与せずに満足な治療結果を伴うことを可能にする。代表的な化合物についての確率された安全かつ有効な用量範囲は、メトホルミン500〜2550mg/日;グリブリド1.25〜20mg/日;GLUCOVANCE(メトホルミンとグリブリドとの併用処方物)1.25〜20mg/日グリブリドおよび250〜2000mg/日メトホルミン;アトルバスタチン10〜80mg/日;ロバスタチン10〜80mg/日;パラバスタチン10〜40mg/日;およびシンバスタチン5〜80mg/日;クロフィブレート2000mg/日;ゲムフィブロジル1200〜2400mg/日、ロシグリタゾン4〜8mg/日;ピオグリタゾン15〜45mg/日;アカルボーズ75〜300mg/日;レパグリニド0.5〜16mg/日である。
【0015】
(I型糖尿病):I型糖尿病を有する患者は、1日当たり1用量〜数用量のインスリンを主に自己投与することによりその疾患を管理し、頻繁に血中グルコースをモニターして、インスリン投与の用量および時期を適切の調節することを可能にする。慢性高血糖症は、腎炎、ニューロパシー、網膜症、足の潰瘍形成、および早期死亡などの合併症をもたらす。過度のインスリン投与に起因しる高血糖症は、認知機能不全または意識消失を引き起こし得る。I型糖尿病を有する患者は、1〜400mg/日の本発明の活性物質を、単回投与または分割投与のいずれかとして、錠剤形態またはカプセル形態で用いて処置される。認識される効果は、血中グルコースを満足できる範囲に維持するために必要なインスリンの投与の用量および頻度の減少、ならびに高血糖症エピソードの発症および重篤度の減少である。臨床的発症は、血中グルコースおよびグリコシル化ヘモグロビン(数ヶ月間にわたって積分される血糖症コントロールの十分さの指標)の測定によって、ならびに糖尿病の代表的合併症の発生率および重篤度の減少によって、モニターされる。本発明の生理活性物質は、島移植物の抗糖尿病効力を維持するのを補助するために島移植と組み合わせて投与され得る。
【0016】
(II型糖尿病):II型糖尿病(NIDDM)を有する代表的患者は、食餌および運動によって、および薬物(例えば、メトホルミン(metformin)、グリブリド(glyburide)、レパグリニド(repaglinide)、ロシグリタゾン(rosiglitazone)またはアカルボーズ(acarbose)(これらはすべて、いくらかの患者において血糖症根とトールのいくらかの改善を提供するが、どれもが、疾患の進行に起因する副作用または最終的処置の失敗を有さない)を摂取することによって、その糖尿病を管理する。島機能不全は、NIDDMを有する患者において経時的に生じ、患者の大部分においてインスリン注射を必要とする。本発明の活性物質を用いる(さらなる種類の抗糖尿病薬物を伴うかまたは伴わない)毎日の処置は、血糖症コントロールを改善し、島機能不全の速度を減少し、そして糖尿病の代表的症状の発症および重篤度を減少する。さらに、本発明の活性物質は、上昇した血清トリグリセリドおよび脂肪酸を減少し、それにより、心血管疾患(糖尿病の患者の主要な死亡原因)の危険を減少する。他のすべての糖尿病治療剤についての場合、用量最適化は、必要性、臨床効果、および副作用に対する感受性に従って、個々の患者においてなされる。
【0017】
(高脂血症):血液中の症状したトリグリセリドレベルおよび遊離脂肪酸レベルは、その集団のかなりの部分に罹患し、それは、アテローム性動脈硬化症および心筋梗塞についての重要なリスクファクターである。本発明の活性物質は、高脂血症患者における循環中のトリグリセリドおよび遊離脂肪酸を減少するために有用である。高脂血症患者は、しばしばまた、上昇した血中コレステロールレベルも有し、これもまた、心血管疾患の危険を増加させる。コレステロール低下薬物(例えば、HMG−CoAレダクターゼインヒビター(「スタチン」)は、本発明の物質に加えて高脂血症患者に投与され得、必要に応じて、同じ薬学的組成物に組み込まれ得る。
【0018】
(脂肪肝疾患):その集団の大部分が、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝炎(NASH)としても公知である)に罹患する。NASHは、しばしば、肥満および糖尿病に関係する。肝臓脂肪症(肝細胞とのトリグリセリド液滴の存在)は、肝臓が慢性炎症(炎症白血球の浸潤として生検サンプルにおいて検出される)を受けやすくし、これは、線維症および肝硬変をもたらし得る。脂肪肝疾患は、一般的に、肝臓特異的酵素(例えば、トランスアミナーゼALTおよびAST)(これらの酵素は、肝細胞損傷の指標である)の血清レベルの上昇の観察によって、ならびに肝臓領域における疲労および疼痛を含む症状の提示によって、検出されるが、決定的しんだんは、しばしば、生検を必要とする。認識される利益は、肝臓炎症および脂肪含量の減少であり、これは、線維症および肝硬変へのNASHの進行を減少、停止または逆転する。
【0019】
本発明は、本明細書中に記載される生理活性物質と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物のさらなる実施形態は、上記の生理活性物質の実施形態のいずれか1つを含む。不必要な重複を回避する目的で、そのような各々の物質および物質群は、反復されないが、それらは、あたかも反復されたかのように、この薬学的組成物の説明中に組み込まれる。
【0020】
好ましくは、上記組成物は、経口投与用に、例えば、錠剤形態、被覆錠剤形態、硬質ゼラチンカプセルもしくは軟質ゼラチンカプセル、溶液、乳濁物または懸濁物の形態で、適合される。一般に、上記経口組成物は、1mg〜400mgのそのような物質を含む。被験体は、1日当たり1つ以上の錠剤、被覆錠剤、糖剤、またはゼラチンカプセルを飲むことが、簡便である。しかし、上記組成物はまた、他の従来の任意の全身投与手段(直腸投与手段(例えば、坐剤形態)、非経口投与手段(例えば、注射溶液形態)、または経鼻投与手段が挙げられる)によって、投与のために適合され得る。
【0021】
上記生理活性化合物は、薬学的組成物の製造のために、薬学的に不活性な、無機もしくは有機のキャリアを用いて処理され得る。ラクトース、コーススターチもしくはその誘導体、タルク、ステアリン酸もしくはその塩などが、例えば、錠剤、被覆錠剤、糖剤、および硬質ゼラチンカプセルのためのそのようなキャリアとして、使用され得る。軟質ゼラチンカプセルのために適切なキャリアは、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体ポリオールおよび液体ポリオールなどである。しかし、活性成分の性質に依存して、キャリアは、通常は、軟質ゼラチンカプセルの場合には、軟質ゼラチン自体の場合には、必要ではない。溶液およびシロップの生成のために適切なキャリアは、例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油などである。坐剤のために適切なキャリアは、例えば、天然油または硬化油、ロウ、脂肪、半液体ポリオールもしくは液体ポリオールなどである。
【0022】
さらに、薬学的組成物は、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、矯味矯臭剤、浸透圧変更用の塩、緩衝剤、コーティング剤、または抗酸化剤を含み得る。それらはまた、本発明の化合物の効果の基礎となる機構以外の機構を介して作用する、なお他の治療上価値のある物質(特に、抗糖尿病剤または低脂血症剤)を含み得る。単一処方物中で本発明の化合物と有利に合わされ得る物質としては、ビグアニド(例えば、メトホルミン)、インスリン放出物質(例えば、スルホニルウレアインスリン放出物質グリブリドおよび他のスルホニルウレアインスリン放出物質)、コレステロール低下薬物(例えば、「スタチン」HMG−CoAレダクターゼインヒビター(アトロバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、およびシンバスタチン)、PPAR−αアゴニスト(例えば、クロフィブレートおよびゲンフィブロジル)、PPAR−γアゴニスト(例えば、地アゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン))、α−グルコシダーゼインヒビター(例えば、アカルボーズ(これは、デンプン消化を阻害する)、ならびに食餌インスリン放出因子(例えば、レパグリニド)が挙げられる。単一処方物中で本発明の化合物と合わされる補完物質の量は、標準的臨床実施において使用される用量に従う。特定の代表的な化合物について確立された安全かつ有効な用量範囲は、上記に示される。
【0023】
上記に列挙された化合物は、公知の化合物である。特許文献および化学文献におけるそのような化合物に対する言及の部分的列挙は、以下の通りである:
4−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−4−オキソブタン酸:
日本国特許出願公開番号55015460。
メチル4−(4−ベンジルオキシ−2−メトキシフェニル)−4−オキソブタノエート:
Von Wacekら、Monatsh.Chem.(1996)97(3)744〜753。
【0024】
エチル4−(4−シクロヘキシルメトキシフェニル)−4−オキソブタノエート:
日本国特許出願公開番号61040270。
【0025】
4−(3−クロロ−4−シクロプロピルメトキシフェニル)−4−オキソブタン酸:
日本国特許出願公開番号55015460。
【0026】
エチル3−(4−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート:
WO 02/59077;およびWintersら、Eur.J.Med.Chem.−CHim.Ther.(1984)19(3)215〜218。
【0027】
エチル3−(3−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート:
WO 02/59077。
【0028】
エチル3−(2−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート:
Karcheら、Journal of Organic Chemistry(2001)66(19)6323〜6332;およびCharltonら、J.Heterocycl.Chem.(1980)17(3)593〜594。
【0029】
メチル3−(3−(2,6−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート:
WO 02/02119。
【0030】
エチル3−(4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート:
日本国特許出願公開番号52025734。
【0031】
エチル3−(3−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート:
WO 01/81340。
【0032】
エチル3−(2−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(2−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;および
エチル3−(2−(3−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート:
Karcheら、Journal of Organic Chemistry(2001)66(19)6323〜6332。
【0033】
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−3−オキソプロパノエート:
Fadnavisら、Tetrahedron:Asymmetry(1997)8(24)4003〜4006。
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート:
Wuら、Huaxue Yanjiu Yu Yingyong(1997)9(6)595〜599;およびHerbertら、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1(1984)(4)825〜831。
【0034】
エチル3−(3−ベンジルオキシ−4−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート:
Boseら、Phytochemistry(1991)30(7)2438〜2439;およびArnoldiら、J.Argic.Food Chem.(1986)3482)339〜344。
【0035】
さらに、これらの化合物すべては、WO 02/100341に記載されるように合成され得る。
【0036】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより理解される。以下の実施例は、本明細書に記載される発明を例示するが、本発明を限定はしない。
【実施例】
【0037】
(実施例A.インスリン依存性糖尿病における代謝異常の改善)
ストレプトゾトシン(STZ)は、インスリン産生膵β細胞を選択的に破壊する毒素であり、実験動物においてインスリン依存性糖尿病を誘導するために広範に使用される。
【0038】
雌Balb/Cマウス(8週齢;18〜20g体重)を、ストレプトゾトシン(STZ)(5日間連続する日の各々に、50mg/kgを腹腔内)で処置する。最後のSTZ投与の14日間後、血中グルコースを測定して、その動物が糖尿病性であることを検証し、それらのマウスを、各々動物5匹の2つの群に分割する。一方の群には、本発明の化合物(250mg/kg)を経口栄養により毎日与え、もう一方の群には、ビヒクル(水中0.75%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(懸濁剤)を与える)。STZを与えなかった同じコホートからの非糖尿病性マウスの群もまた、モニターする。血中グルコース濃度の決定のために、血液サンプルを定期的に採取し、体重もまた記録する。
【0039】
数週間の処置後、本発明の化合物で経口処置したマウス中の血中グルコース濃度およびビヒクル処理したコントロール動物中の血中グルコース濃度を、測定する。ベースラインに向かって減少し始める血中グルコース濃度は、正の結果とみなし、一方、ビヒクル処理コントロール動物における血中グルコースは、上昇し続けると予測する。薬物処理を開始して14週間後の体重、ならびに血中グルコース濃度、トリグリセリド濃度、およびコレステロール濃度を、測定する。
【0040】
(実施例B:致死性インスリン依存性糖尿病を有するマウスの生存改善)
雌Balb/Cマウス(14週齢)を、ストレプトゾトシン(175mg/kg腹腔内)投与による処理して、重篤なインスリン依存性糖尿病を誘導する。数日間後、マウスを3つの処理群(本発明の化合物、ピオグリタゾン、およびビヒクル)に分割する。マウスを、経口栄養を介して毎日処理し、生存を経時的にモニターする。
【0041】
(実施例C:重篤なインスリン依存性糖尿病における死亡率の減少)
雌Balb/Cマウス(実験開始時に19歳齢)に、複数回の高用量STZ(5連続日に75mg/kgを腹腔内)でチャレンジする。その後、動物を、糖尿病の重篤度について一致させた2つの群(20マウス/群)に分割する。最終STZ投与の4日間後、処理を開始する。一方の群に、ビヒクル(0.4mlの0.75% HPMCを経口投与)を与え、もう一方の群に、本発明の化合物(30mg/kg/日)を経口投与する。3週間後の毎日処理の後、2つの群における累積死亡率を、記録する。
【0042】
(実施例D:NODマウスにおける自然発生糖尿病の発症率および死亡率の減少)
NOD(「非肥満糖尿病」)マウスのかなりの部分が、膵臓島細胞の自然発生自己免疫破壊の結果として、インスリン依存性糖尿病を発症する。20匹のマウス(6週齢)の2つの群を、経口ビヒクル(水中0.75%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC))またはHPMC中に懸濁した本発明の化合物(200mg/kg/日)のいずれかで毎日処理する。重篤なインスリン依存性糖尿病の自然発症に起因する死亡率の発生を、数ヶ月間の期間にわたってモニターする。
【0043】
(実施例E.ob/ob肥満糖尿病マウスにおける高血糖症および高脂血症の減少、ならびに脂肪肝疾患の軽減)
ob/obマウスは、レプチン(食欲調節およびエネルギー代謝に関与するタンパク質)の遺伝子に欠損を有し、過食性であり、肥満であり、インスリン依存性である。それらのマウスは、高脂血症および脂肪肝を発症する。
【0044】
雄やせ(lean)(ob/+ヘテロ接合体)および肥満(ob/obホモ接合体)C57BL/6マウス(約8週齢)を、Jackson Labs(Bar Harbor,ME)から得、それらを5匹ずつの動物の群にランダムに割り当てて、体重および血中グルコース濃度が群の間で類似するようにする。すべての動物を温度(23℃)、相対湿度(50±5%)、および光(7:00〜19:00)の制御下で維持し、水および実験室飼料(Formulab Diet 5008、Quality Lab Products,Elkridge,MD)に自由にアクセス可能にする。血中グルコースを、グルコース試験片およびGlucometer Elite XLデバイス(Bayer Corporation)を用いて慣用的に決定する。選択した時点で、血中サンプル(約100μl)を、血清化学分析用の眼窩後方洞を介してヘパリン処理毛細管を用いて得る。血清化学(グルコース、トリグリセリド、コレステロール、BUN、クレアチニン、AST、ALT、SDH、CPK、および遊離脂肪酸)分析を、Hitachi 717 Analyzerにて実施する。血漿インスリンおよび膵臓インスリンを、電気化学発光イムノアッセイ(Origen Analyzer,Igen,Inc.,Gaithersburg,MD)により測定する。
【0045】
ob/obマウスの群を、下記に示すように処理コホートへと分割し、本発明の化合物(10mg、30mg、100mg、150gもしくは300mg)、ロシグリタゾン(1mg、3mg、10mgもしくは30mg)またはピオグリタゾン(30mgもしくは100mg)の一日経口用量を与える。後者の2つの化合物は、非インスリン依存性糖尿病を有するヒト患者の処置において使用されるインスリン感受性薬物であり、これらは、本発明の化合物の効力および安全性のために比較物として使用される。この実験における化合物の用量範囲。この実験において化合物の用量範囲は、至適未満の用量および潜在的に至適未満の用量の両方を含むように選択される。
【0046】
ob/obマウスは、炎症脂肪肝疾患を発症し、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)(これは、進行性肝硬変および肝臓機能不全をもたらし得る状態である)の動物モデルと見なされる。NASHにおいて、脂肪蓄積は、炎症損傷に対する肝臓の感受性を増加する。患者におけるNASHのある特徴的徴候は、ウイルス感染もアルコール症も存在しない状態で、損傷した肝細胞から放出される酵素(例えば、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、およびソルビトールデヒドロゲナーゼ(SDH))の血清レベルの増加である。これらの酵素は、脂肪肝および二次的炎症の結果として、ob/obマウスにおいて上昇する。
【0047】
(実施例F:糖尿病性マウスにおける本発明の化合物の急性低血糖症効果:実験1))
本発明の化合物は、非インスリン依存性糖尿病を有する動物における急性抗抗血糖症を示す。
【0048】
雄ob/ob糖尿病性マウスを、各々5匹の動物の群へと無作為化する。体重は、約50〜55gであり、血中グルコースは、給餌状態において約300mg/dLである。0.5%カルボキシメチルセルロースビヒクル中に懸濁した試験物質の単回経口用量を、栄養法によって投与する。血中グルコースを、剃刀を用いて尾静脈に切れ目を入れスことにより得られる血液滴において、グルコメーター試験片およびGlucometer Elite XLデバイス(Bayer)を使用して、最初の投与後0時間目、0.5時間目、2時間後、4時間目、6時間目、および18時間目に測定する。経口ビヒクルに対する血中グルコースの10%減少は、正のスクリーニング結果と見なす。血中グルコース減少は、一般的に、薬物投与後6時間目に最大であると予期される。
【0049】
(実施例G:糖尿病性マウスにおける本発明の化合物の急性低血糖症効果:実験2)
本発明の化合物は、非インスリン依存性糖尿病を有する動物において急性抗抗血糖症活性を示す。
【0050】
雄ob/obマウス(50〜55g;血中グルコース約300mg/dL)を、各々5匹の動物の群へと分割し、0.5%カルボキシメチルセルロースビヒクル中に懸濁した試験薬物の単回用量(250mg/kg)を与える。コントロール群には、経口ビヒクルのみを与える。試験薬物またはビヒクル(コントロール)の経口投与の6時間後、血液サンプルを、尾の静脈から得、グルコース含量を、グルコメーターを用いて決定する。
【0051】
(実施例H:db/dbマウスにおける本発明の化合物の抗糖尿病性硬化)
db/dbマウスは、レプチンシグナル伝達の欠損を有し、これは、過食、肥満および糖尿病をもたらす。さらに、比較的頑健な島を有するob/obマウスとは異なり、そのインスリン産生膵島細胞は、慢性高血糖症の間に機能不全になり、その結果、それらは、高インスリン血症(末梢インスリン抵抗性に関係する)から低インスリン血症糖尿病に移行する。
【0052】
雄db/dbマウスに、ビヒクル(0.75%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、本発明の化合物(150mg/kg)またはピオグリタゾン(100mg/kg)での毎日経口処理を与える。血液サンプルを、血清化学分析用に眼窩後方洞を介してか、または試験片およびグルコメーターを用いるグルコース測定用に尾静脈を介して、得る。この実験において使用したピオグリタゾンの用量は、db/dbマウスの処理のために最大限有効な用量であることが文献において報告された(Shimayaら(2000)Metabolism 49:411〜7)。;
db/dbマウスにおける第2の実験において、本発明の化合物(150mg/kg)の抗糖尿病活性を、ロシグリタゾン(20mg/kg)の抗糖尿病活性と比較する。8週間後の処理後、血液グルコースおよびトリグリセリドを、測定する。化合物BIまたはロシグリタゾンのいずれかで処理した動物において、ビヒクル処理したコントロールよりも有意に低い。この研究において使用したロシグリタゾン用量は、後期db/dbマウスについての最適用量として刊行文献において報告された(Lenhardら(1999)Diabetologia 42:545〜54)。群は、各々6〜8匹のマウスからなる。
【0053】
(実施例I:db/dbマウスにおける本発明の化合物の抗糖尿病効果)
db/dsマウスは、レプチンシグナル伝達の欠損を有し、これは、過食、肥満および糖尿病をもたらす。さらに、C57BL/6Jバックグラウンドにおけるob/obマウスとは異なり、C57BL/KSバックグラウンドにおけるdb/dbマウスは、そのインスリン産生膵島β細胞の機能不全を経験し、抗インスリン血症(末梢インスリン抵抗性に関係する)から低インスリン血症性糖尿病への進行を生じる。
【0054】
雄肥満(db/dbホモ接合体)C57BL/Ksolaマウス(8週齢)を、Jackson Labs(Bar Harbor,ME)から得、5〜7匹の動物の群に無作為に割り当てて、体重(50〜55g)および血清グルコースレベル(給餌状態において≧300mg/dl)が、群の間で同様であるようにする。雄のやせた(db/+ヘテロ接合体)マウスは、コホートコントロールとして役立つ。最低7日間が、出生後に適合のために許容される。すべての動物を、制御した温度(23℃)、相対湿度(50±5%)、および光(7:00〜19:00)の下で維持し、標準飼料(Formulab Diet 508、Quality Lab Products,Elkridge,MD)および水に自由にアクセスさせる。
【0055】
処理コホートに、(1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)または本発明の化合物(100mg/kg)の経口用量を毎日2週間与える。この処理期間の最後に、100μlの静脈血を、血清化学分析用にdb/dbマウスの眼窩後方洞からヘパリン処理毛細管中に採血する。
【0056】
非空腹時血中グルコースおよび血清トリグリセリドおよび遊離脂肪酸に対する本発明の化合物の効果を、測定する。
【0057】
(実施例J:Zucker糖尿病性脂肪(ZDF)ラットにおける本発明の化合物の白内障生成の減弱)
白内障は、加齢および糖尿病に関係する進行性の視力低下および失明の主要原因のうちの1つであり、Zucker糖尿病性脂肪(ZDF)モデルは、ヒト白内障生成を多くの類似性(水晶体における生化学的変化および酸化的ストレスを含む)を有する。しかし、これらのラットは、代表的には、14週齢〜16週齢の間に白内障形成を経験する。
【0058】
雄ZDFラットおよびその年齢が一致するZucker痩せ型(ZL)対応物(fa/+または+/+)(12週齢)を、Genetic Models,Inc.(Indianapolis,IN)から得、研究前に1週間順応させる。すべての動物を、制御された温度(23℃)、相対湿度(50±5℃)および光(7:00〜19:00)の下で維持し、標準飼料(Formulab Diet 5008、Quality Lab Products,Elkridge,MD)に自由にアクセスさせ、水道水を自由に飲ませる。処理コホートに、1日経口用量のビヒクルおよび100mg/kgの本発明の化合物を10週間与える。体重および血液グルコースを、グルコース試験片とGlucomter Elite XLデバイス(Bayer Corporation)とを用いて、尾採血から慣用的に(1週間に1回、通常は、およそ10:00AMに)決定する。処理期間の最後に、100μlの静脈血を、血清化学分析(Anilytics,Inc.,Gaithersburg,MD)用に、尾静脈から、ヘパリン処理チューブ中に(通常は10:00AMに)収集する。血清化学(グルコース(GL)、トリグリセリド(TG)、アスパルギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、ソルビトールデヒドロゲナーゼ(SDH)および遊離脂肪酸(FFA))分析を、Hitachi 717 Analyzer(Anilytics,Inc.,Gaithersburg,MD)において実施する。血漿インスリンを、電気化学発光イムノアッセイ ECL(Origen Analyzer,Igen,Inc.,Gaithersburg,MD)により測定する。動物を屠殺し、組織および/または器官(水晶体および肝臓)を摘出し、秤量(湿重量)し、そして生化学分析用に処理する。マロンジアルデヒド(MDA)(これは、脂質過酸化の主要産物である)を、Ohkawaら(1979)Analytical Biochem 95,351〜358に従って水晶体においてアッセイした。
【0059】
(実施例K:高脂肪給餌C57B1/6Jマウスにおける循環するトリグリセリド、遊離脂肪酸、インスリンおよびレプチンの低下)
高脂肪給餌マウスは、高トリグリセリド血症および高循環脂肪酸レベル、ならびに肥満、糖尿病、心血管疾患および他の障害のリスクがある人々およびそれらの障害を有する人々において見出されるインスリン抵抗性およびレプチン抵抗性についての、モデルである。約8週齢の雄C57B1/6Jマウスを、6匹の動物の群に無作為に割当てる。それらを、制御された温度(23℃)、相対湿度(50±5%)および光(7:00〜19:00)の下で維持し、食餌および水に自由にアクセスさせる。マウスに、高脂肪食餌(食餌番号D12451(カロリーの45%を脂肪として含む)(Research Diets,New Brunswick,NJ)を6週間給餌する。6週間後、マウス群に、ビヒクル(ヒドロキシメチルセルロース)、本発明の化合物(10mg/kg、30mg/kg、もしくは100mg/kg)、Wy14,643(10mg/kg、30mg/kg、もしくは100mg/kg)またはロシグリタゾン(1mg/kg、3mg/kg、10mg/kgもしくは100mg/kg)のいずれかを、さらに4週間経口栄養法によって投与し、同時に、高脂肪食餌を与え続けた。血漿化学(Anilytics,Inc.,Gaithersburg,MD)を、2週間の薬物処理後にアッセイする。血漿血清アルブミンおよびレプチンを、電気化学発光イムノアッセイ(Origen Analyzer,Igne,Inc.,Gaithersburg,MD)によって、4週間の薬物処理後に測定する。
【0060】
(実施例L:高脂肪給餌Sprague−Dawleyラットにおける循環トリグリセリド、遊離脂肪酸、インスリン、およびレプチンの低下)
高脂肪給餌ラットは、インスリン抵抗性およびレプチン抵抗性のモデルである。Sprague−Dawleyラットは、インタクトなレプチン系を有しており、高脂肪食餌に応答し、末梢組織(例えば、肝臓、脂肪組織および筋肉)における正常なインスリン応答のダウンレギュレーションに起因して高インスリン血症を有する。
【0061】
約17週齢の雄Sprague−Dawleyラットを、Jackson Labs(Bar Harbor,ME)から得、5〜7匹の動物の群に無作為に割当てる。体重は、群の間で同様である。すべての動物を、厳密な12時間の明/暗周期を有する温度制御した(25℃)施設中で維持し、水および食餌に自由にアクセスさせる。ラットに、高脂肪食餌(食餌番号D12451)(カロリーの45%を脂肪として含む)(Research Diets,New Brunswick,NJ)を、薬物処理前に1ヶ月間与える。
【0062】
6匹のSprague−Dawleyラットの群を、単回1日用量のビヒクル(ヒドロキシメチルセルロース)、本発明の化合物(10mg/kg、30mg/kgおよび100mg/kg)、またはロシグリタゾン(3mg/kg)で6週間処理しつつ、高脂肪食餌を維持する。血液サンプル(約100μl)を、血清化学分析用に尾静脈を介して得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン抵抗性症候群およびI型糖尿病とII型糖尿病とを包含する糖尿病からなる群より選択される状態の処置のため;あるいはアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足潰瘍形成、もしくは糖尿病に関係する白内障の処置またはそれらを発症する機会の減少のため;あるいは高脂血症、悪液質、および肥満からなる群より選択される状態の処置のための、医薬の製造における生理活性物質の使用であって、
該物質は、
4−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−4−オキソブタン酸;
メチル4−(4−ベンジルオキシ−2−メトキシフェニル)−4−オキソブタノエート;
エチル4−(4−シクロヘキシルメトキシフェニル)−4−オキソブタノエート;
4−(3−クロロ−4−シクロプロピルメトキシフェニル)−4−オキソブタン酸;
エチル3−(4−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
メチル3−(3−(2,6−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(2−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(3−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−ベンジルオキシ−4−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;および
それらの薬学的に受容可能な塩
からなる群より選択される、使用。
【請求項2】
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化症および動脈硬化症からなる群より選択される状態を有する哺乳動物被験体を処置するための方法であって、
該状態を処置するために有効な量の生理活性物質を、該被験体に投与する工程
を包含し、該物質は、
4−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−4−オキソブタン酸;
メチル4−(4−ベンジルオキシ−2−メトキシフェニル)−4−オキソブタノエート;
エチル4−(4−シクロヘキシルメトキシフェニル)−4−オキソブタノエート;
4−(3−クロロ−4−シクロプロピルメトキシフェニル)−4−オキソブタン酸;
エチル3−(4−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
メチル3−(3−(2,6−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(2−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(3−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−ベンジルオキシ−4−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;および
それらの薬学的に受容可能な塩
からなる群より選択される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記物質は、経口投与される、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前記被験体は、ヒトである、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記物質は、1日当たり1mg〜400mgの量で投与される、方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法であって、前記状態は、インスリン抵抗性症候群またはII型糖尿病である、方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法であって、前記状態は、1型糖尿病である、方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であって、前記処置は、糖尿病の症状または糖尿病の症状の発症機会を減少し、該症状は、アテローム性動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足潰瘍形成、および糖尿病に関係する白内障からなる群より選択される、方法。
【請求項9】
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症からなる群より選択される状態の処置において使用するための、経口投与のために適合されている、薬学的組成物であって、
1mg〜400mgの生理活性物質を含み、
該生理活性物質は、
4−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−4−オキソブタン酸;
メチル4−(4−ベンジルオキシ−2−メトキシフェニル)−4−オキソブタノエート;
エチル4−(4−シクロヘキシルメトキシフェニル)−4−オキソブタノエート;
4−(3−クロロ−4−シクロプロピルメトキシフェニル)−4−オキソブタン酸;
エチル3−(4−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
メチル3−(3−(2,6−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(2−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(3−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−ベンジルオキシ−4−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;および
それらの薬学的に受容可能な塩
からなる群より選択される、組成物。
【請求項10】
実質的に上記に記載される通りである発明。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン抵抗性症候群およびI型糖尿病とII型糖尿病とを包含する糖尿病からなる群より選択される状態の処置のため;あるいはアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足潰瘍形成、もしくは糖尿病に関係する白内障の処置またはそれらを発症する機会の減少のため;あるいは高脂血症、悪液質、および肥満からなる群より選択される状態の処置のための、医薬の製造における生理活性物質の使用であって、
該物質は、
4−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−4−オキソブタン酸;
メチル4−(4−ベンジルオキシ−2−メトキシフェニル)−4−オキソブタノエート;
エチル4−(4−シクロヘキシルメトキシフェニル)−4−オキソブタノエート;
4−(3−クロロ−4−シクロプロピルメトキシフェニル)−4−オキソブタン酸;
エチル3−(4−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
メチル3−(3−(2,6−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(2−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(3−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−ベンジルオキシ−4−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;および
それらの薬学的に受容可能な塩
からなる群より選択される、使用。
【請求項2】
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症からなる群より選択される状態の処置において使用するための、経口投与のために適合されている、薬学的組成物であって、
1mg〜400mgの生理活性物質を含み、
該生理活性物質は、
4−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−4−オキソブタン酸;
メチル4−(4−ベンジルオキシ−2−メトキシフェニル)−4−オキソブタノエート;
エチル4−(4−シクロヘキシルメトキシフェニル)−4−オキソブタノエート;
4−(3−クロロ−4−シクロプロピルメトキシフェニル)−4−オキソブタン酸;
エチル3−(4−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−ベンジルオキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
メチル3−(3−(2,6−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(2−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(2−(3−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−クロロフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;
エチル3−(3−ベンジルオキシ−4−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート;および
それらの薬学的に受容可能な塩
からなる群より選択される、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物であって、前記物質は、経口投与されるために処方されている組成物
【請求項4】
請求項2に記載の組成物であって、前記被験体は、ヒトである、組成物
【請求項5】
請求項4に記載の組成物であって、前記物質は、1日当たり1mg〜400mgの量で投与されるために処方されている組成物
【請求項6】
請求項2に記載の組成物であって、前記状態は、インスリン抵抗性症候群またはII型糖尿病である、組成物
【請求項7】
請求項2に記載の組成物であって、前記状態は、1型糖尿病である、組成物
【請求項8】
請求項2に記載の組成物であって、前記処置は、糖尿病の症状または糖尿病の症状の発症機会を減少し、該症状は、アテローム性動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足潰瘍形成、および糖尿病に関係する白内障からなる群より選択される、組成物

【公表番号】特表2006−507303(P2006−507303A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550151(P2004−550151)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2003/034185
【国際公開番号】WO2004/041165
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(501056821)ウェルスタット セラピューティクス コーポレイション (32)
【Fターム(参考)】