説明

代謝障害を処置するための化合物

インシュリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝、悪液質、肥満、アテローム硬化症および動脈硬化症等の様々な代謝障害の治療に有用な因子を開示する


(式中、nは、1または2であり;mは、0、1、2、3または4であり;qは、0または1であり;tは、0または1であり;Rは、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり;Rは、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルキルまたは1個から3個の炭素原子を有するアルコキシであり;RおよびRの一方は水素またはヒドロキシであり、他方は水素である等)。あるいは、因子は、式Iの化合物の医薬として許容し得る塩であり得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
真性糖尿病は、罹患および死亡の主たる原因である。慢性的な高血糖は、衰弱させる合併症、すなわち透析または腎移植をしばしば必要とする腎臓病;末梢神経病;失明に至る網膜疾患;切断に至る脚および足の潰瘍;肝硬変に進行することもある脂肪肝;ならびに冠状動脈疾患および心筋梗塞の危険性をもたらす。
【0002】
糖尿病には主に2つの型がある。I型またはインシュリン依存真性糖尿病(IDDM)は、膵島におけるインシュリン産生ベータ細胞の自己免疫破壊による。この疾患は、通常小児期または思春期に発症する。過剰のインシュリンは、低血糖症を引き起こし、その結果として脳および他の機能の障害をもたらし得るため、治療は、主として、インシュリンを毎日複数回注射しながら、インシュリン用量の調整を手引きするための血糖値の試験を頻繁に行うことからなる。
【0003】
II型または非インシュリン依存真性糖尿病(NIDDM)は、典型的には成人期に発生する。NIDDMは、脂肪組織のような糖利用組織、筋肉および肝臓のインシュリンの作用に対する抵抗に関連する。最初は、膵島ベータ細胞が、過剰のインシュリンを分泌することによって補償する。最終的な島の機能停止は、代償障害および慢性的な低血糖症をもたらす。逆に、中程度の島不足は、末梢インシュリン抵抗性に先行して、または末梢インシュリン抵抗性と同時に起こり得る。NIDDMの治療に有用ないくつかの種類の薬物、すなわち1)インシュリン放出を直接刺激し、低血糖症の危険性を排除するインシュリン遊離薬(releaser);2)糖誘発インシュリン分泌を増強し、毎食前に服用しなければならない食事性(prandial)インシュリン遊離薬;3)(糖尿病で逆説的に上昇する)肝臓糖新生を減衰させるメトホルミンを含むビグアナイド;4)インシュリンに対する末梢応答を向上させるが、体重増加、水腫および一時的な肝臓毒性を有するインシュリン増感剤、例えばチアゾリジンジオン誘導体、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン;5)慢性過剰刺激により島が破壊されたNIDDMの後の段階でしばしば必要であるインシュリン注射がある。
【0004】
インシュリン抵抗性は、顕著な高血糖症を伴わずに生じることも可能であり、一般には、アテローム硬化症、肥満、高脂血症および本態性高血圧症に関連する。この一群の異常は、「代謝症候群」または「インシュリン抵抗性症候群」を構成する。インシュリン抵抗性は、慢性炎症(NASH;「非アルコール脂肪肝炎」)、線維症および肝硬変に進行し得る脂肪肝にも関連する。漸増的に、糖尿病を含むが、それに限定されないインシュリン抵抗性症候群は、40歳以上の人間の罹患および死亡の主要原因の多くの根源となっている。
【0005】
当該薬物が存在するにもかかわらず、糖尿病は、益々拡大しつつある大きな公衆衛生問題になっている。糖尿病の後期合併症は、国家の保健介護源の大きな部分を消費する。インシュリン抵抗性または島不全という主たる欠陥に効果的に対処し、既存の薬物より副作用が少ない、または軽い新規の経口活性治療薬が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在のところ、脂肪肝に対する安全かつ効果的な治療薬が存在しない。したがって、当該治療薬は、この状態を治療する上で価値あるものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
本発明は、以下に記載の生物学的に活性な因子を提供する。本発明は、インシュリン抵抗性症候群、糖尿病、悪液質、高脂血症、脂肪肝、肥満、アテローム性硬化症または動脈硬化を治療するための医薬品の製造における以下に記載の生物学的に活性な因子の使用を提供する。本発明は、インシュリン抵抗性症候群、糖尿病、悪液質、高脂血症、脂肪肝、肥満、アテローム性硬化症または動脈硬化を有する哺乳動物被験体を治療する方法であって、有効量の以下に記載の生物学的に活性な因子を被験体に投与することを含む方法を提供する。本発明は、以下に記載の生物学的に活性な因子および医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0008】
本発明による生物学的に活性な因子は、式Iの化合物である
【0009】
【化5】

(式中、nは、1または2であり;mは、0、1、2、3または4であり;qは、0または1であり;tは、0または1であり;Rは、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり;Rは、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルキルまたは1個から3個の炭素原子を有するアルコキシであり;RおよびRの一方は水素またはヒドロキシであり、他方は水素であり;またはRおよびRは一緒になって=Oとなる。Aは、無置換であるか、ハロ、ヒドロキシ、1個または2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個または2個の炭素原子を有するアルコキシおよびペルフルオロメトキシから選択される1個または2個の基で置換されたフェニル;または3個から6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、無置換であるか、1個または2個の環炭素がメチルまたはエチルで独立に一置換されたシクロアルキル;またはN、SおよびOから選択される1個または2個の環ヘテロ原子を有する5員または6員のヘテロ芳香族環であって、環炭素によって式Iの化合物の残りと共有結合しているヘテロ芳香族環である)。あるいは、生物学的に活性な因子は、式Iの化合物の医薬として許容し得る塩であり得る。
【0010】
本発明の生物学的に活性な因子は、ヒト糖尿病およびインシュリン抵抗性症候群の確立された動物モデルである以下に記載の生物活性アッセイの1つまたは複数において活性を有すると考えられる。したがって、このような薬物は、糖尿病およびインシュリン抵抗性症候群の治療に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
定義
本明細書に用いられているように、「アルキル」という用語は、直鎖または分枝鎖アルキル基を意味する。一定数の炭素原子を有することが認められるアルキル基は、指定数の炭素原子を有する任意のアルキル基を意味する。例えば、3個の炭素原子を有するアルキルは、プロピルまたはイソプロピルであり得る。4個の炭素原子を有するアルキルは、n−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピルまたはt−ブチルであり得る。
【0012】
本明細書に用いられているように、「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードの1つまたは複数を指す。
【0013】
本明細書に用いられているように、ペルフルオロメチルまたはペルフルオロメトキシにあるような「ペルフルオロ」という用語は、問題の基がすべての水素原子の代わりにフッ素原子を有することを意味する。
【0014】
本明細書に用いられているように、「Ac」は、CHC(O)−基を指す。
【0015】
特定の化合物は、本明細書では、それらの化学名または以下に示す2文字符号で示される。化合物DK、DLおよびDMは、以上に示した式Iの範囲内に含まれる。
【0016】
DK 4,4−ジメチル−2−[(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−メチル]−2−オキサゾリン
【0017】
【化6】

DL 4,4−ジメチル−2−[(3−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−3−ヒドロキシ)−プロピル]−2−オキサゾリン
【0018】
【化7】

DM 4,4−ジメチル−2−[(3−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソ)−プロピル]−2−オキサゾリン
【0019】
【化8】

本明細書に用いられているように、「含む(comprising)」という慣用句は、無制限である。この用語を利用する請求項は、当該請求項に記載の要素以外の要素を含むことができる。
【0020】
発明の化合物
上記式Iの描写における星印は、可能なキラル中心を示し、その炭素は、RおよびRの一方がヒドロキシであり、他方が水素である場合にキラルである。そのような場合は、本発明は、いずれも活性であると考えられる式Iの化合物のラセミ体、(R)鏡像異性体および(S)鏡像異性体を提供する。例えば、Chirality 第11巻:420〜425頁(1999年)に記載されているように、HPLCを使用することによって、これらの鏡像異性体の混合物を分離することができる。
【0021】
上記の要旨に記載した因子、使用、方法または医薬組成物の一実施形態において、mは、0、1または3である。本発明のより具体的な実施形態において、nは1であり;qは0であり;tは0であり;Rは水素であり;mは、0、1または3であり;Aは、無置換であるか、ハロ、ヒドロキシ、1個または2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個または2個の炭素原子を有するアルコキシおよびペルフルオロメトキシから選択される1個または2個の基で置換されたフェニルである。本発明のさらにより具体的な実施形態において、Aは、2,6−ジメチルフェニルである。
【0022】
上記の因子、使用、方法または医薬組成物の一実施形態において、Rは水素であり、Rは水素である。当該化合物の例としては、化合物DKが挙げられる。別の実施形態において、RおよびRの一方はヒドロキシであり、他方は水素である。当該化合物の例としては、化合物DLが挙げられる。別の実施形態において、RおよびRは、一緒になって=Oとなる。当該化合物の例としては、化合物DMが挙げられる。
【0023】
本発明の生物活性剤の一実施形態において、該因子は、実質的に(少なくとも98%)純粋の形である。
【0024】
反応スキーム
mが0から4であり、qが0または1であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rが、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびRの一方が水素またはヒドロキシであり、他方が水素であり、またはRおよびRが一緒になって=Oとなる式Iの化合物、すなわち式:
【0025】
【化9】

(式中、Aは、上記の通りである)の化合物を、スキーム1の反応を介して調製することができる。スキーム1の反応において、A、t、m、n、q、R、R、RおよびRは、上記の通りである。Yは、クロロまたはブロモである。
【0026】
式IIの化合物を塩化チオニル、塩化オキサリル、三臭化リン(phosphorous tribromide)および四臭化炭素等でアシル化することにより、工程(a)の反応を介して式IIの化合物を式IIIの化合物に変換することができる。カルボン酸をハロゲン化アシルに変換する際の従来の任意の条件を利用して、工程(a)の反応を実施することができる。式IIIの化合物と式IVの化合物とを塩化チオニルの存在下で反応させることにより、工程(b)の反応を介して式IIIの化合物を式Vの化合物に変換することができる。該反応を好適な溶媒、例えばジクロロメタン中で実施する。当該反応に従来用いられている条件のいずれかを利用して、工程(b)の反応を実施することができる。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。
【0027】
式Vの化合物は、mが0から4であり、qが0または1である式Iの化合物である。
【0028】
Aが、1個または2個のヒドロキシル基で置換されているフェニルである場合は、ヒドロキシル基を保護することが一般に好ましい。好適な保護基は、T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されている。
【0029】
T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されているもののような好適な脱保護試薬を利用して、工程(b)の反応の後に保護基を脱保護することができる。
【0030】
反応スキーム1
【0031】
【化10】

mが0から1であり、qが0であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rが、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびRが水素である式IIの化合物、すなわち式:
【0032】
【化11】

(式中、Aは、上記の通りである)の化合物を、スキーム2の反応を介して調製することができる。スキーム2の反応において、A、t、m、n、R、RおよびRは、上記の通りである。Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキルであり、Yは、ハロゲン化物または脱離基である。RはHである。
【0033】
トリフェニルホスフィンおよびアゾジカルボン酸ジエチルまたはアゾジカルボン酸ジイソプロピルを使用するVIIとVIとのミツノブ縮合を用いて、工程(c)の反応を介して式VIの化合物を式IXの化合物に変換することができる。該反応を好適な溶媒、例えばテトラヒドロフラン中で実施する。ミツノブ反応に従来用いられている条件のいずれかを利用して工程(c)の反応を実施することができる。
【0034】
工程(c)の反応のように式VIの化合物を式VIIIの化合物でエーテル化またはアルキル化することによって式IXの化合物を調製することもできる。式VIIIの化合物において、Yは、メシルオキシ、トシルオキシ、クロロ、ブロモおよびヨード等を含むが、それらに限定されない。ハロゲン化物または脱離基との反応によってヒドロキシル基をエーテル化する任意の従来の方法を利用して、工程(c)の反応を実施することができる。
【0035】
エステル加水分解によって式IXの化合物を式IIの化合物に変換することができる。任意の従来のエステル加水分解法によって、RがHである式IIの化合物が生成される。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。
【0036】
Aが、1個または2個のヒドロキシル基で置換されているフェニルである場合は、式VIIの化合物または式VIIIの化合物のヒドロキシル基を保護することが一般に好ましい。好適な保護基は、T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されている。T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されているもののような好適な脱保護試薬を利用して、エステル加水分解後に保護基を脱保護することができる。
【0037】
反応スキーム2
【0038】
【化12】

mが2から4であり、qが0であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rが、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびRが水素であり、またはRおよびRが一緒になって=Oとなる式IIの化合物、すなわち式:
【0039】
【化13】

(式中、Aは、上記の通りである)の化合物を、スキーム3の反応を介して調製することができる。
【0040】
スキーム3の反応において、A、t、n、R、RおよびRは、上記の通りである。Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびR10は、一緒になって=Oとなる。Yは、ハロゲン化物または脱離基であり、pは、1から3である。工程(c)の反応に関して先述したのと同様にして、ミツノブ縮合を用いて、工程(e)の反応を介して、式Xの化合物を式XIの化合物に変換することができる。
【0041】
炭酸カリウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミンおよびピリジン等の好適な塩基を使用することにより、工程(f)の反応を介して式Xの化合物を式VIIIの化合物でエーテル化またはアルキル化することによって式XIの化合物を調製することもできる。式XIIIの化合物において、Yは、メシルオキシ、トシルオキシ、クロロ、ブロモおよびヨード等を含むが、それらに限定されない。ヒドロキシル基をハロゲン化物または脱離基でアルキル化するための任意の従来の条件を利用して、工程(f)の反応を実施することができる。式VIIIの化合物が容易に入手可能であれば、工程(f)の反応は、工程(e)の反応よりも好ましい。
【0042】
式XIの化合物を式XIIの化合物でアルキル化することにより、工程(g)の反応を介して式XIの化合物を式XIIIの化合物に変換することができる。アセトフェノンを3−ケトエステル(すなわちガンマ−ケトエステル)に変換する約1モル当量の従来の塩基の存在下でこの反応を実施することができる。この反応を実施する上で、リチウムビス−(トリメチルシリル)アミド等のヘキサメチルジシランのアルカリ金属塩を利用するのが一般に好ましいが、その限りではない。一般には、該反応をテトラヒドロフラン:1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノンのような不活性溶媒中で実施する。一般に、該反応を−65℃から25℃の温度で実施する。当該アルキル化反応における従来の条件のいずれかを利用して、工程(g)の反応を実施することができる。
【0043】
エステル加水分解によって式XIIIの化合物を式XIVの化合物に変換することができる。エステル加水分解の任意の従来の方法により、工程(h)の反応を介して式XIVの化合物が生成されることになる。
【0044】
式XIVの化合物は、mが2から4であり、qが0であり、R=RおよびR10=Rが一緒になって=Oとなる式IIの化合物である。
【0045】
ケトン基をCH基に還元することにより、工程(i)の反応を介して、式XIVの化合物を、mが2から4であり、qが0であり、RおよびRが水素であるIIの化合物に変換することができる。式XIVをヒドラジン水化物およびKOHまたはNaOHのような塩基とともにエチレングリコールのような好適な溶媒中で加熱することによって該反応を実施する。この反応を実施する上で、KOHを塩基として利用することが一般に好ましいが、その限りではない。ウォルフ・キッシュナー還元反応に従来用いられている条件のいずれかを利用して、工程(i)の反応を実施することができる。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。
【0046】
Aが、1個または2個のヒドロキシル基で置換されているフェニルである場合は、式VIIの化合物または式VIIIの化合物のヒドロキシル基を保護することが一般に好ましい。好適な保護基は、T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されている。T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されているもののような好適な脱保護試薬を利用して、ウォルフ・キッシュナー還元反応の後に保護基を脱保護することができる。
【0047】
反応スキーム3
【0048】
【化14】

mが2から4であり、qが1であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rが、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびRが水素であり、またはRおよびRが一緒になって=Oとなる式IIの化合物、すなわち式:
【0049】
【化15】

(式中、Aは、上記の通りである)の化合物を、スキーム4の反応を介して調製することができる。
【0050】
スキーム4の反応において、A、t、n、q、R、R、RおよびRは、上記の通りである。Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキルである。RおよびR10は、一緒になって=Oとなる。Yは、クロロまたはブロモであり、pは、1から3である。工程(j)の反応を介して、式XVの化合物をメシル化して、式XVIの化合物を得ることができる。ヒドロキシル基のメシル化反応を実施するための任意の従来の条件を利用して、工程(j)の反応を実施することができる。式XVIの化合物を式XVIIの化合物とともに加熱して、式XVIIIの化合物を生成することができる。アミノアルコールを生成するための従来の条件のいずれかを利用して、工程(k)の反応を実施することができる。
【0051】
式XVIIIの化合物において、式XVIIIの化合物を塩化チオニル、塩化オキサリル、臭素および三臭化リン等で処理することによってアルコールをクロロまたはブロモで置換して、式XIXの化合物を生成することができる。アルコールをクロロまたはブロモで置換するための任意の従来の方法を利用して、工程(l)の反応を実施することができる。
【0052】
炭酸カリウム、ピリジン、水素化ナトリウムおよびトリエチルアミン等の好適な塩基の存在下で、工程(m)の反応を介して、式XIXの化合物を式Xの化合物と反応させることができる。該反応をジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランおよびジクロロメタン等の従来の溶媒中で実施して、式XXの対応する化合物を生成する。クロロまたはブロモにより塩基(好ましい塩基は炭酸カリウムである)の存在下でヒドロキシル基をエーテル化する任意の従来の方法を利用して、工程(m)の反応を実施することができる。
【0053】
式XXの化合物を式XIIの化合物でアルキル化することにより、工程(n)の反応を介して式XXの化合物を式XXIの化合物に変換することができる。この反応をリチウムヘキサメチルジシランのような約1モル当量の好適な塩基の存在下で実施する。工程(g)の反応に関して、先述したのと同様にして、この反応を実施する。
【0054】
式XXIの化合物をエステル加水分解によって式XXIIの化合物に変換することができる。エステル加水分解の任意の従来の方法は、工程(o)の反応を介して式XXIIの化合物を生成する。
【0055】
式XXIIの化合物は、mが2から4であり、qが1であり、R=RおよびR10=Rが一緒になって=Oとなる式IIの化合物である。
【0056】
ケトン基をCH基に還元することにより、工程(p)の反応を介して、式XXIIの化合物を、mが2から4であり、qが1であり、RおよびRが水素である式IIの化合物に変換することができる。工程(i)の反応に関して、先述したのと同様にしてこの反応を実施する。
【0057】
抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。
【0058】
Aが、1個または2個のヒドロキシル基で置換されているフェニルである場合は、式XVの化合物のヒドロキシル基を保護することが一般に好ましい。好適な保護基は、T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されている。
【0059】
T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されているもののような好適な脱保護試薬を利用して、ウォルフ・キッシュナー還元の後に保護基を脱保護することができる。
【0060】
反応スキーム4
【0061】
【化16】

mが0または1であり、qが1であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rが、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびRが水素である式IIの化合物、すなわち式:
【0062】
【化17】

(式中、Aは、上記の通りである)の化合物を、スキーム5の反応を介して調製することができる。スキーム5の反応において、A、t、n、m、q、R、R、RおよびRは、上記の通りである。Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキルである。Yは、クロロまたはブロモである。
【0063】
炭酸カリウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミンおよびピリジン等の好適な塩基の存在下で、工程(q)の反応を介して、(スキーム4の反応に関して先述したのと同様にして調製された)式XIXの化合物を式VIの化合物と反応させることができる。該反応をジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランおよびジクロロメタン等の従来の溶媒中で実施して、式XXIIIの対応する化合物を生成することができる。ヒドロキシル基を塩基(好ましい塩基は炭酸カリウムである)の存在下でクロロまたはブロモでエーテル化する任意の従来の条件を利用して、工程(q)の反応を実施することができる。
【0064】
エステル加水分解によって、式XXIIIの化合物を、mが0または1であり、qが1であり、RおよびRが水素である式IIの化合物に変換することができる。任意のエステル加水分解方法により、工程(r)の反応を介して式IIの化合物が生成される。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。
【0065】
Aが、1個または2個のヒドロキシル基で置換されているフェニルである場合は、ヒドロキシル基を保護することが一般に好ましい。好適な保護基は、T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されている。T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されているもののような好適な脱保護試薬を利用して、エステル加水分解後に保護基を脱保護することができる。
【0066】
反応スキーム5
【0067】
【化18】

mが0であり、qが0または1であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rが、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびRが一緒になって=Oとなる式IIの化合物、すなわち式:
【0068】
【化19】

(式中、Aは、上記の通りである)の化合物を、スキーム6の反応を介して調製することができる。スキーム6の反応において、A、t、n、q、RおよびRは、上記の通りである。RおよびR10は、一緒になって=Oとなる。
【0069】
ピリジンの存在下でケトメチル基を二酸化セレンで酸化することにより、工程(s)の反応を介して(スキーム3の反応に関して先述したのと同様にして調製された)式XIの化合物または(スキーム4の反応に関して先述したのと同様にして調製された)式XXの化合物を式XXIVの化合物に変換することができる。一般に、該反応を25℃〜100℃の温度で実施する。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。
【0070】
式XXIVの化合物は、mが0であり、qが0または1であり、R=RおよびR10=Rが一緒になって=Oとなる式IIの化合物である。
【0071】
Aが、1個または2個のヒドロキシル基で置換されているフェニルである場合は、ヒドロキシル基を保護することが一般に好ましい。好適な保護基は、T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されている。T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されているもののような好適な脱保護試薬を利用して、酸化後に保護基を脱保護することができる。
【0072】
反応スキーム6
【0073】
【化20】

mが1であり、qが0または1であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rが、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびRが一緒になって=Oとなる式IIの化合物、すなわち式:
【0074】
【化21】

(式中、Aは、上記の通りである)の化合物を、スキーム7の反応を介して調製することができる。
【0075】
スキーム7の反応において、A、t、m、n、q、RおよびRは、上記の通りである。RおよびR10は、一緒になって=Oとなる。Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキルである。
【0076】
水素化ナトリウム等の好適な塩基の存在下で、工程(t)の反応を介して、(スキーム3の反応に関して先述したのと同様にして調製された)式XIの化合物または(スキーム4の反応に関して先述したのと同様にして調製された)式XXの化合物を炭酸ジアルキルと反応させることができる。該反応をジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランおよびジクロロメタン等の従来の溶媒中で実施した後に、炭酸ジメチルまたは炭酸ジエチルのような炭酸ジアルキルを添加して、式XXVの対応する化合物を生成することができる。当該アルキル化反応における従来の任意の条件を利用して、工程(t)の反応を実施することができる。エステル加水分解により、式XXVの化合物を式XXVIの化合物に変換することができる。任意の従来のエステル加水分解方法により、工程(u)の反応を介して式XXVIの化合物が生成される。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。
【0077】
式XXVIの化合物は、mが1であり、qが0または1であり、R=RおよびR10=Rが一緒になって=Oとなる式IIの化合物である。
【0078】
Aが、1個または2個のヒドロキシル基で置換されているフェニルである場合は、ヒドロキシル基を保護することが一般に好ましい。好適な保護基は、T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されている。T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されているもののような好適な脱保護試薬を利用して、エステル加水分解後に保護基を脱保護することができる。
【0079】
反応スキーム7
【0080】
【化22】

mが2から4であり、qが0または1であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rが、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびRの一方がヒドロキシルであり、他方が水素である式IIの化合物、すなわち式:
【0081】
【化23】

(式中、Aは、上記の通りである)の化合物を、スキーム8の反応を介して調製することができる。スキーム8の反応において、A、t、n、q、R、R、RおよびRは、上記の通りである。RおよびR10は、一緒になって=Oとなり、pは、1から3である。
【0082】
ケトン基をアルコール基に還元することにより、工程(v)の反応を介して(スキーム3の反応に関して先述したのと同様にして調製された)式XIVの化合物または(スキーム4の反応に関して先述したのと同様にして調製された)式XXIIの化合物を式XXVIIの化合物に変換することができる。ケトンをアルコールに変換する従来の還元剤を利用することによって該反応を実施することができる。この反応を実施する上で、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを利用することが一般に好ましいが、その限りではない。一般に、該反応をメタノールおよびエタノール等の溶媒中で実施する。一般に、該反応を0℃から25℃の温度で実施する。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。HPLCを用いることによって式XXVIIのラセミ混合物を分離することができる(Chirality 11:420〜425頁(1999年))。
【0083】
式XXVIIの化合物は、mが1から4であり、qが0または1であり、RおよびRの一方がヒドロキシルであり、他方が水素である式IIの化合物である。
【0084】
反応スキーム8
【0085】
【化24】

mが1であり、qが0または1であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rが、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびRの一方がヒドロキシルであり、他方が水素である式IIの化合物、すなわち式:
【0086】
【化25】

(式中、Aは、上記の通りである)の化合物を、スキーム9の反応を介して調製することができる。スキーム9の反応において、A、t、m、n、q、R、R、RおよびRは、上記の通りである。RおよびR10は、一緒になって=Oとなる。
【0087】
ベータ−ケト基をアルコール基に還元することにより、工程(w)の反応を介して、(スキーム7の反応に関して先述したのと同様にして調製された)式XXVIの化合物を式XXVIIIの化合物に変換することができる。ケトンをアルコールに変換する従来の還元剤を利用することによって該反応を実施することができる。酒石酸で処理されたラネーニッケル触媒を使用する水素化(Harada, T.;Izumi, Y.Chem.Lett.1978年、1195〜1196頁)またはキラル均質性ルテニウム触媒による水素化(Akutagawa, S.;Kitamura, M.;Kumobayashi, H.;Noyori, R.;Ohkuma, T.;Sayo, N.;Takaya, M.J.Am.Chem.Soc.1987年、109、5856〜5858頁)によって該反応を実施することができる。該還元を0℃から25℃の温度で実施することができる。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。HPLCを用いることによって式XXVIIIのラセミ混合物を分離することができる(Chirality 11:420〜425頁(1999年))。
【0088】
式XXVIIIの化合物は、mが1であり、qが0または1であり、RおよびRの一方がヒドロキシルであり、他方が水素である式IIの化合物である。
【0089】
反応スキーム9
【0090】
【化26】

mが0であり、qが0または1であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rが、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびRの一方がヒドロキシルであり、他方が水素である式IIの化合物、すなわち式:
【0091】
【化27】

(式中、Aは、上記の通りである)の化合物を、スキーム10の反応を介して調製することができる。
【0092】
スキーム10の反応において、A、t、n、q、R、R、RおよびRは、上記の通りである。RおよびR10は、一緒になって=Oとなる。
【0093】
触媒、例えば、ロジウム−{アミドホスフィン−ホスフィナイト}(Tetrahedron:Asymmetry、第8巻、第7号、1083〜1099頁、1997年)および[RuCl(BINAP)](NEt)(EP−A−0295890)等を使用してアルファ−ケト酸の水素化により、工程(x)の反応を介して、(スキーム6の反応に関して先述したのと同様にして調製された)式XXIVの化合物を式XXIXの化合物に変換することができる。当該水素化における従来の任意の条件を利用して、工程(x)の反応を実施することができる。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。HPLCを用いることによって式XXIXのラセミ混合物を分離することができる(Chirality 11:420〜425頁(1999年))。
【0094】
式XXIXの化合物は、mが0であり、qが0または1であり、RおよびRの一方がヒドロキシルであり、他方が水素である式IIの化合物である。
【0095】
反応スキーム10
【0096】
【化28】

tが0または1であり、nが1または2である式VIIの化合物、すなわち式:
A−(CHt+n−OH
の化合物、およびtが0または1であり、nが1または2である式VIIIの化合物、すなわち式:
A−(CHt+n−Y
の化合物を、スキーム11の反応を介して調製することができる。
【0097】
スキーム11の反応において、Aは、上記の通りである。Yはハロゲン化物である。
【0098】
工程(y)の反応を介して、式XXXの化合物を式XXXIの化合物に還元することができる。従来の還元剤、例えば、水素化アルミニウムリチウムのようなアルカリ金属水素化物を利用して該反応を実施する。該反応をテトラヒドロフランのような好適な溶媒中で実施する。当該還元反応における従来の条件のいずれかを利用して、工程(y)の反応を実施することができる。式XXXIの化合物は、tが0であり、nが1である式VIIの化合物である。
【0099】
ヒドロキシル基をハロゲン基で置換することによって、式XXXIの化合物を式XXXIIの化合物に変換することができ、好ましいハロゲンはブロモまたはクロロである。適切なハロゲン化試薬としては、塩化チオニル、塩化オキサリル、臭素、三臭化リンおよび四臭化炭素等が挙げられるが、それらに限定されない。当該ハロゲン化反応における従来の任意の条件を利用して、工程(z)の反応を実施することができる。式XXXIIの化合物は、tが0であり、nが1である式VIIIの化合物である。
【0100】
式XXXIIの化合物をアルカリ金属シアン化物、例えばシアン化ナトリウムまたはシアン化カリウムと反応させることによって、式XXXIIの化合物を式XXIIIの化合物に変換することができる。該反応を好適な溶媒、例えば、エタノール、ジメチルスルホキシド中で実施する。ニトリルの調製に従来用いられている条件のいずれかを利用して、工程(a’)の反応を実施することができる。
【0101】
酸または塩基加水分解により、反応工程(b’)を介して式XXXIIIの化合物を式XXXIVの化合物に変換することができる。この反応を実施する上で、塩基加水分解、例えば水酸化ナトリウム水溶液を利用することが一般に好ましい。ニトリルの加水分解に従来用いられている条件のいずれかを利用して、工程(b’)の反応を実施することができる。
【0102】
工程(c’)の反応を介して、式XXXIVの化合物を還元して、式XXXVの化合物を得ることができる。この反応を、工程(y)の反応において先述したのと同様にして実施することができる。式XXXVの化合物は、tが1であり、nが1である式VIIの化合物である。
【0103】
工程(z)の反応に関して先述したのと同様にして、工程(d’)の反応を介して式XXXVの化合物を式XXXVIの化合物に変換することができる。式XXXVIの化合物は、tが1であり、nが1である式VIIIの化合物である。
【0104】
好適な塩基、例えば水素化ナトリウムを利用して式XXXIIの化合物をマロン酸ジエチルと反応させて、式XXXVIIの化合物を得ることができる。該反応をジメチルホルムアミドおよびテトラヒドロフランのような好適な溶媒中で実施する。当該アルキル化反応における従来の条件のいずれかを利用して、工程(e’)の反応を実施することができる。
【0105】
エタノール−水のような好適な溶媒中で水酸化ナトリウムを利用して、式XXXVIIの化合物の加水分解および脱炭酸を行い、式XXXVIIIの化合物を得ることができる。当該反応における従来の条件のいずれかを利用して、工程(f’)の反応を実施することができる。
【0106】
工程(y)の反応に関して先述したのと同様にして、工程(g’)の反応を介して式XXXVIIIの化合物を式XXXIXの化合物に変換することができる。式XXXIXの化合物は、tが1であり、nが2である式VIIの化合物である。
【0107】
工程(z)の反応に関して先述したのと同様にして、工程(h’)の反応を介して式XXXIXの化合物を式XLの化合物に変換することができる。式XLの化合物は、tが1であり、nが2である式VIIIの化合物である。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。
【0108】
Aが、1個または2個のヒドロキシル基で置換されているフェニルである場合は、式XXXの化合物のヒドロキシル基を保護することが一般に好ましい。好適な保護基は、T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されている。
【0109】
反応スキーム11
【0110】
【化29】

mが0から1であり、Rが、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびRが水素であり、Rが1個から2個の炭素原子を有するアルキル基である式VIの化合物、すなわち式:
【0111】
【化30】

の化合物を、スキーム12の反応を介して調製することができる。スキーム12の反応において、RおよびRは、上記の通りである。Rは、ヒドロキシ保護基である、Yはハロゲン化物である。
【0112】
T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されているもののような好適な保護基を利用することによって最初にヒドロキシ基を保護し、次いでエステル加水分解によってエステル基を加水分解することにより、工程(i’)の反応を介して式XLIの化合物を式XLIIの化合物に変換することができる。
【0113】
工程(j’)の反応を介して、酸をアルコールに変換する従来の還元試薬を利用することによって、式XLIIの化合物を式XLIIIの化合物に還元することができる。この反応を実施する上で、水素化アルミニウムリチウムを利用することが一般に好ましいが、その限りではない。該反応をテトラヒドロフラン等の好適な溶媒中で実施する。当該還元反応における従来の条件のいずれかを利用して、工程(j’)の反応を実施することができる。
【0114】
ヒドロキシ基をハロゲンで置換することによって、式XLIIIの化合物を式XLIVの化合物に変換することができ、好ましいハロゲンはブロモまたはクロロである。適切なハロゲン化試薬としては、塩化チオニル、塩化オキサリル、臭素、三臭化リンおよび四臭化炭素等が挙げられるが、それらに限定されない。当該ハロゲン化反応における従来の任意の条件を利用して、工程(k’)の反応を実施することができる。
【0115】
式XLIVの化合物をアルカリ金属シアン化物、例えばシアン化ナトリウムまたはシアン化カリウムと反応させることによって、式XLIVの化合物を式XLVの化合物に変換することができる。該反応をジメチルスルホキシドのような好適な溶媒中で実施する。ニトリルの調製に従来用いられている条件のいずれかを利用して、工程(l’)の反応を実施することができる。
【0116】
酸または塩基加水分解により、反応工程(m’)を介して式XLVの化合物を式XLVIの化合物に変換することができる。この反応を実施する上で、塩基加水分解、例えば水酸化ナトリウム水溶液を利用することが一般に好ましい。ニトリルの加水分解の従来の条件のいずれかを利用して、工程(m’)の反応を実施することができる。
【0117】
T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されているもののような好適な脱保護試薬を利用して、ヒドロキシ保護基を除去することにより、工程(n’)の反応を介して式XLVIの化合物を式XLVIIの化合物に変換することができる。
【0118】
式XLVIIの化合物をメタノールまたはエタノールでエステル化することによって、式XLVIIの化合物を式XLVIIIの化合物に変換することができる。触媒、例えばHSO、TsOH等を使用すること、または脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド等を使用することによって該反応を実施することができる。当該エステル化反応における従来の条件のいずれかを利用して、工程(o’)の反応を実施することができる。
【0119】
式XLVIIIの化合物は、mが0であり、Rが1個または2個の炭素原子を有するアルキル基である式VIの化合物である。
【0120】
好適な塩基、例えば水素化ナトリウムを利用して式XLIVの化合物をマロン酸ジエチルと反応させて、式XLIXの化合物を得ることができる。該反応をジメチルホルムアミドおよびテトラヒドロフラン等の好適な溶媒中で実施する。当該アルキル化反応における従来の条件のいずれかを利用して、工程(p’)の反応を実施することができる。
【0121】
工程(q’)の反応を介して、酸または塩基、およびT.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されているもののような好適な脱保護試薬を利用したヒドロキシ保護基の除去によって、式XLIXの化合物を加水分解して、式Lの化合物を得ることができる。
【0122】
式Lの化合物をメタノールまたはエタノールでエステル化することによって、式Lの化合物を式LIの化合物に変換することができる。触媒、例えばHSO、TsOH等を使用すること、または脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド等を使用することによって該反応を実施することができる。当該エステル化反応における従来の条件のいずれかを利用して、工程(r’)の反応を実施することができる。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。
【0123】
式LIの化合物は、mが1であり、Rが1個または2個の炭素原子を有するアルキル基である式VIの化合物である。
【0124】
反応スキーム12
【0125】
【化31】

が、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、RおよびR10が一緒になって=Oとなる式Xの化合物、すなわち式:
【0126】
【化32】

の化合物を、スキーム13の反応を介して調製することができる。スキーム13の反応において、R、RおよびR10は、上記の通りである。George M Rubottomら、J.Org.Chem、1983年、48、1550〜1552頁の方法に従って式Xの化合物を合成することができる。
【0127】
反応スキーム13
【0128】
【化33】

がハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素を有するアルキルであり、Rが1個から2個の炭素原子を有するアルキル基である式XLIの化合物、すなわち式:
【0129】
【化34】

の化合物を、スキーム14の反応を介して調製することができる。スキーム14の反応において、RおよびRは、上記の通りである。
【0130】
式LIIの化合物をメタノールまたはエタノールでエステル化することにより、工程(t’)の反応を介して式LIIの化合物を式XLIの化合物に変換することができる。触媒、例えばHSOおよびTsOH等を使用することによって、あるいは脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド等を使用することによって、該反応を実施することができる。当該エステル化反応における従来の条件のいずれかを利用して、工程(t’)の反応を実施することができる。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。
【0131】
反応スキーム14
【0132】
【化35】

がハロである式LIIの化合物、すなわち式:
【0133】
【化36】

の化合物は、商業的に入手可能であるか、あるいは以下の文献に記載されている方法に従って調製することが可能である。
1.3−BrまたはF−2−OHCCO
Canadian Journal of Chemistry(2001年)、第79巻(11)、1541〜1545頁。
2.4−Br−2−OHCCO
WO9916747またはJP04154773。
3.2−Br−6−OHCCO
JP47039101。
4.2−Br−3−OHCCO
WO9628423。
5.4−Br−3−OHCCO
WO2001002388。
6.3−Br−5−OHCCO
Journal of labelled Compounds and Radiopharmaceuticals(1992年)、第31巻(3)、175〜82頁。
7.2−Br−5−OHCCOHおよび3−Cl−4−OHCCO
WO9405153およびUS5519133。
8.2−Br−4−OHCCOHおよび3−Br−4−OHCCO
WO20022018323
9.2−Cl−6−OHCCO
JP06293700
10.2−Cl−3−OHCCO
Proceedings of the Indiana Academy of Science(1983年)、刊行日1982年、1992年、145〜51頁。
11.3−Cl−5−OHCCO
WO2002000633およびWO2002044145。
12.2−Cl−5−OHCCO
WO9745400。
13.5−I−2−OHCCOHおよび3−I,2−OHCCO
Z.Chem.(1976年)、第16巻(8)、319〜320頁。
14.4−I−2−OHCCO
Journal of Chemical Research, Synopses(1994年)、(11)、405頁。
15.6−I−2−OHCCO
US4932999。
16.2−I−3−OHCCOHおよび4−I−3−OHCCO
WO9912928。
17.5−I−3−OHCCO
J.Med.Chem.(1973年)、第16巻(6)、684〜7頁。
18.2−I−4−OHCCO
Collection of Czechoslovak Chemical Communications、(1991年)、第56巻(2)、459〜77頁。
19.3−I−4−OHCCO
J.O.C.(1990年)、第55巻(18)、5287〜91頁。
【0134】
が1個から3個の炭素原子を有するアルコキシである、式LIIの化合物、すなわち式:
【0135】
【化37】

の化合物を、スキーム15の反応を介して合成することができる。
【0136】
スキーム15の反応において、Rは、上記の通りであり、Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキル基である。アルデヒドを一級アルコールに還元することによって、式LIIIの化合物を式LIVの化合物に変換することができる。この反応を実施する上で、還元試薬として水素化ホウ素ナトリウムを使用することが一般に好ましいが、その限りではない。当該還元反応における好適な条件のいずれかを利用して、工程(u’)の反応を実施することができる。
【0137】
1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサンを使用することによって1−3ジオールを保護することにより、工程(v’)の反応を介して式LIVの化合物を式LVの化合物に変換することができる。この保護基のための好適な条件は、T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されている。
【0138】
臭化ベンジルを使用することによってフェノール基を保護することにより、工程(w’)の反応を介して式LVの化合物を式LVIの化合物に変換することができる。この保護基のための好適な条件は、T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されている。
【0139】
工程(x’)の反応を介して、フッ化テトラブチルアンモニウムを使用して脱保護することにより、式LVIの化合物を式LVIIの化合物に変換することができる。脱保護のための好適な条件は、T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されている。
【0140】
酸化により、工程(y’)の反応を介して式LVIIの化合物を式LVIIIの化合物に変換することができる。一級アルコールを酸に変換する任意の従来の酸化基、例えば酸化クロム等を利用して、工程(y’)の反応を実施することができる。
【0141】
式LVIIIの化合物をメタノールまたはエタノールでエステル化することによって、式LVIIIの化合物を式LIXの化合物に変換することができる。触媒、例えばHSO、TsOH等を使用すること、または脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド等を使用することによって該反応を実施することができる。当該エステル化反応における従来の条件のいずれかを利用して、工程(z’)の反応を実施することができる。
【0142】
好適な塩基、例えば、炭酸カリウムおよび水素化ナトリウム、ピリジン等を使用することにより、式LIXの化合物をハロゲン化メチルまたはハロゲン化エチルまたはハロゲン化プロピルでエーテル化またはアルキル化することによって、式LIXの化合物を式LXの化合物に変換することができる。該反応をテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドおよびジクロロメタン等の従来の溶媒中で実施する。該反応を一般には0℃から40℃の温度で実施する。当該アルキル化反応において好適な条件のいずれかを利用して、工程(a”)の反応を実施することができる。
【0143】
エステル基およびベンジル基の脱保護により、工程(b”)の反応を介して式LXの化合物を式LXIの化合物に変換することができる。好適な脱保護条件は、T.GreeneによるProtective Groups in Organic Synthesisに記載されている。抽出、蒸発、クロマトグラフィおよび再結晶のような技術によって生成物を単離および精製することができる。
【0144】
反応スキーム15
【0145】
【化38】

が1個から3個の炭素原子を有するアルコキシである式LIIの化合物、すなわち式:
【0146】
【化39】

の化合物は、商業的に入手可能であるか、あるいは以下の文献に記載されている方法に従って調製することが可能である。
1.2−OMe−4−OHCCO
US2001034343またはWO9725992。
2.5−OMe−3−OHCCO
J.O.C(2001年)、第66巻(23)、7883〜88頁。
3.2−OMe−5−OHCCO
US6194406(96頁)およびJournal of the American Chemical Society(1985年)、第107巻(8)、2571〜3頁。
4.3−OEt−5−OHCCO
Taiwan Kexue(1996年)、第49巻(1)、51〜56頁。
5.4−OEt−3−OHCCO
WO9626176
6.2−OEt−4−OHCCO
Takeda Kenkyusho Nempo(1965年)、第24巻、221〜8頁。
JP07070025。
7.3−OEt−4−OHCCO
WO9626176。
8.3−OPr−2−OHCCO
JP07206658、DE2749518。
9.4−OPr−2−OHCCO
Farmacia(Bucharest)(1970年)、第18巻(8)、461〜6頁。
JP08119959。
10.2−OPr−5−OHCCOHおよび2−OEt−5−OHCCO
ヨウ化プロピルおよびヨウ化エチルを使用することによるUS6194406(96頁)の合成を採用。
11.4−−OPr−3−OHCCO
WO9626176の合成を採用
12.2−OPr−4−OHCCO
ハロゲン化プロピルを使用することによるTakeda Kenkyusho Nempo(1965年)、第24巻、221〜8頁の合成を採用。
13.4−OEt−3−OHCCO
Biomedical Mass Spectrometry(1985年)、第12巻(4)、163〜9頁。
14.3−OPr−5−OHCCO
ハロゲン化プロピルを使用することによるTaiwan Kexue(1966年)、第49巻(1)、51〜56頁の合成を採用。
【0147】
が1個から3個の炭素原子を有するアルキルである式LIIの化合物、すなわち式:
【0148】
【化40】

の化合物は、商業的に入手可能であるか、あるいは以下の文献に記載されている方法に従って調製することが可能である。
1.5−Me−3−OHCCOHおよび2−Me−5−OHCCO
WO9619437。
J.O.C.、2001年、第66巻、7883〜88頁。
2.2−Me−4−OHCCO
WO8503701。
3.3−Et−2−OHCCOHおよび5−Et−2−OHCCO
J.Med.Chem.、(1971年)、第14巻(3)、265頁。
4.4−Et−2−OHCCO
Yaoxue Xuebao(1998年)、第33巻(1)、67〜71頁。
5.2−Et−6−OHCCOHおよび2−n−Pr−6−OHCCO
J.Chem.Soc.、Perkin Trans 1(1979年)、(8)、2069〜78頁。
6.2−Et−3−OHCCO
JP10087489およびWO9628423。
7.4−Et−3−OHCCO
J.O.C.2001年、第66巻、7883〜88頁。
WO9504046。
8.2−Et−5−OHCCO
J.A.C.S(1974年)、第96巻(7)、2121〜9頁。
9.2−Et−4−OHCCOHおよび3−Et−4−OHCCO
JP04282345。
10.3−n−Pr−2−OHCCO
J.O.C(1991年)、第56巻(14)、4525〜29頁。
11.4−n−Pr−2−OHCCO
EP279630。
12.5−n−Pr−2−OHCCO
J.Med.Chem(1981年)、第24巻(10)、1245〜49頁。
13.2−n−Pr−3−OHCCO
WO9509843およびWO9628423。
14.4−n−Pr−3−OHCCO
WO9504046。
15.2−n−Pr−5−OHCCO
アルファホルミル吉草酸エチルを使用することによるJ.A.C.S(1974年)、第96巻(7)、2121〜9頁の合成を採用することができる。
16.3−n−Pr−4−OHCCO
Polymer(1991年)、第32(11)巻、2096〜2105頁。
17.2−n−Pr−4−OHCCO
3−プロピルフェノールをメチル化して3−プロピルアニソールとすることができ、次いでそれをホルミル化して4−メトキシ−3−ベンズアルデヒドとした。このアルデヒドをジョーンズ試薬によって酸化して、対応する酸を得ることができ、BBrによってメチル基を脱保護すると、表題の化合物が得られる。
18.1.3−Et−5−OHCCOHおよび3−Pr−n−5−OHCCOH。
【0149】
治療方法における使用
本発明は、インシュリン抵抗性症候群、糖尿病(I型糖尿病またはII型糖尿病のような一次本態性糖尿病および二次非本態性糖尿病)ならびに多嚢胞性卵巣症候群からなる群より選択される状態を有する哺乳動物被験体を治療するための方法であって、該状態を治療するのに有効な量の本明細書に記載の生物学的に活性な因子を被験体に投与することを含む方法を提供する。本発明の方法によれば、糖尿病の症状、あるいはいずれも糖尿病に関連するアテローム硬化症、肥満、高血圧症、高脂血症、脂肪肝、腎症、神経障害、網膜障害、足潰瘍および白内障のような糖尿病の症状を発生させる可能性を軽減することができる。本発明は、また、高脂血症を治療するための方法であって、該状態を治療するのに有効な量の本明細書に記載の生物学的に活性な因子を被験体に投与することを含む方法を提供する。化合物は、高脂血症の動物における血清トリグリセリドおよび遊離脂肪酸を減少させる。本発明は、また、悪液質を治療するための方法であって、悪液質を治療するのに有効な量の本明細書に記載の生物学的に活性な因子を被験体に投与することを含む方法を提供する。本発明は、また、肥満を治療するための方法であって、該状態を治療するのに有効な量の本明細書に記載の生物学的に活性な因子を被験体に投与することを含む方法を提供する。本発明は、また、アテローム硬化症または動脈硬化症から選択される状態を治療するための方法であって、該状態を治療するのに有効な量の本明細書に記載の生物学的に活性な因子を被験体に投与することを含む方法を提供する。本発明の活性な因子は、被験体が糖尿病またはインシュリン抵抗性症候群を有するか否かにかかわらず、高脂血症、脂肪肝、悪液質、肥満、アテローム硬化症または動脈硬化症を治療するのに有効である。該因子を任意の従来の全身投与経路によって投与することができる。好ましくは、該因子を経口投与する。よって、医薬品を経口投与のために処方することが好ましい。本発明に従って使用できる他の投与経路としては、直腸投与、非経口投与、注射(例えば、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射または腹膜内注射)による投与または鼻投与が挙げられる。
【0150】
本発明の使用および治療方法の各々のさらなる実施形態は、上記生物学的に活性な因子の実施形態のいずれか1つを投与することを含む。不必要な重複を避けるために、各当該因子および因子群を繰り返して記載しないが、それらは、繰り返して説明されているように、使用および治療方法の本記載に組み込まれている。
【0151】
本発明の化合物によって対処される疾患または障害の多くは、2つの広い範疇、インシュリン抵抗性症候群および慢性高血糖症の結果に分類される。糖尿病(持続性高血糖症)が存在しなくても自ら発生し得る燃料代謝の調節不全、特にインシュリン抵抗性は、高脂血症、アテローム硬化症、肥満、本態性高血圧症、脂肪肝(NASH;非アルコール性脂肪性肝炎)、および特に癌または全身性炎症の状況で悪液質を含む様々な症状に関連する。悪液質は、I型糖尿病または後期II型糖尿病の状況でも発生し得る。本発明の活性な因子は、組織燃料代謝を向上させることによって、インシュリン抵抗性に関連する疾患および症状を予防または改善するのに有用である。インシュリン抵抗性に関連する徴候および症状群は、個々の患者に共存することができるが、多くの場合には、インシュリン抵抗性の影響を受ける多くの生理的系の脆弱性の個別的な差により、ただ1つの症状が支配的になり得る。しかしながら、インシュリン抵抗性は、多くの疾患状態の主な原因になるため、この細胞および分子の欠陥に対処する薬物は、インシュリン抵抗性に起因し得る、またはインシュリン抵抗性によって悪化し得る任意の器官系における実質的に任意の症状の予防または改善に有用である。
【0152】
インシュリン抵抗性、およびそれと同時に起こる膵島による不十分なインシュリン生成が十分に重篤である場合は、慢性高血糖症が発生し、II型真性糖尿病(NIDDM)の発症を規定する。以上に示したインシュリン抵抗性に関連する代謝疾患に加えて、NIDDMの患者において、高血糖症に対して二次的な疾患症状も発生する。これらは、腎症、末梢神経障害、網膜障害、微小血管病、肢の潰瘍、ならびにタンパク質の非酵素的グリコシル化の結果、例えばコラーゲンおよび他の結合組織の損傷を含む。高血糖症の減衰は、糖尿病のこれらの結果の発症率および重症度を低減する。本発明の活性な因子および組成物は、糖尿病における高血糖症を低減するのに役立つため、慢性高血糖症の合併症の予防および改善に有用である。
【0153】
ヒトおよびヒト以外の哺乳動物被験体の双方を本発明の治療方法に従って治療することができる。特定の被験体に対する本発明の特定の活性な因子の最適な用量は、臨床環境において臨床医が決定できる。インシュリン抵抗性、糖尿病、高血糖症、脂肪肝、悪液質または肥満に関連する疾患の治療のためにヒトに経口投与する場合は、該因子を一般には1mgから400mgの日用量で、1日当たり1回または2回投与する。マウスに経口投与する場合は、因子を一般には体重1kg当たり1から300mgの日用量で投与する。本発明の活性な因子を糖尿病またはインシュリン抵抗性症候群の単独療法として、あるいはこれらのタイプの疾患に効能を有する1つまたは複数の他の因子、例えば、インシュリン放出剤、食事インシュリン放出剤、ビグアナイドまたはインシュリンそのものと組み合わせて使用する。当該追加的な薬物を標準的な臨床実務に従って投与する。場合によっては、本発明の因子は、他の薬物類の効果を向上させ、より小さい用量(したがって、より毒性の低い用量)の当該因子を患者に投与して、良好な治療結果をもたらすことを可能にする。代表的な化合物についてのヒトにおける確定された安全かつ有効な用量範囲は、メトホルミンが500から2550mg/日;グリブリドが1.25から20mg/日;GLUCOVANCE(メトホルミンとグリブリドの混合処方)が1.25から20mg/日(グリブリド)および250から2000mg/日(メトホルミン);アトルバスタチンが10から80mg/日;ロバスタチンが10から80mg/日;プラバスタチンが10から40mg/日;シムバスタチンが5〜80mg/日;クロフィブレートが2000mg/日;ゲムフィブロジルが1200から2400mg/日;ロシグリタゾンが4から8mg/日;ピオグリタゾンが15から45mg/日;アカルボースが75〜300mg/日;レパグリニドが0.5から16mg/日である。
【0154】
I型真性糖尿病:I型糖尿病患者は、主に、1日当たり1回から数回の用量のインシュリンを自己投与しながら、インシュリン投与の用量およびタイミングの適切な調節を可能にするように血糖を頻繁に監視することによって、彼らの疾患を管理する。慢性高血糖症は、腎症、神経障害、網膜障害、足潰瘍および早期死亡のような合併症をもたらし、過度のインシュリン投与による低血糖症は、認知障害または意識喪失を引き起こし得る。I型糖尿病の患者を単一または分割用量しての錠剤またはカプセル剤の形態の1〜400mg/日の本発明の活性な因子で治療する。予想される効果は、血糖を良好な範囲に維持するのに必要なインシュリンの用量または投与頻度の低減、および低血糖のエピソードの発生率および重症度の低下である。血糖およびグリコシル化ヘモグロビン(数カ月の期間に集中された血糖調節の妥当性の指数)の測定ならびに糖尿病の典型的な合併症の発生率および重症度の低下によって臨床成果を監視する。本発明の生物学的に活性な因子を島移植と組み合わせて投与して、島移植物の抗糖尿病効果を維持するのに役立てることができる。
【0155】
II型真性糖尿病:典型的なII型糖尿病(NIDDM)患者は、食事および運動計画、ならびにいずれもある患者における血糖調節に何らかの向上をもたらすメトホルミン、グリブリド、レパグリニド、ロシグリタゾンまたはアカルボースのような医薬品の服用によって彼らの疾患を管理するが、いずれも副作用および疾患の進行による究極的な治療の失敗から逃れられない。NIDDMの患者において経時的に島不全が生じ、多くの患者にインシュリン注射が必要になる。本発明の活性な因子による毎日の治療(追加的な抗糖尿病医薬品を使用する、または使用しない)は、血糖調節を向上させ、島不全の速度を低下させ、糖尿病の典型的な症状の発生率および重症度を低下させることが予想される。加えて、本発明の活性な因子は、血清トリグリセリドおよび脂肪酸の増加を抑えることによって、糖尿病患者の主な死亡原因である心臓血管疾患の危険性を低減することになる。糖尿病に対するすべての他の治療薬の場合のように、必要性、臨床効果および副作用に対する感受性に応じて個々の患者における用量を最適化する。
【0156】
高脂血症:血液におけるトリグリセリドおよび脂肪酸レベルの増加は、集団の実質的な割合に影響を与え、アテローム硬化症および心筋梗塞の重要な危険性要因になっている。本発明の活性な因子は、高脂血症患者における循環トリグリセリドおよび遊離脂肪酸を減少させるのに有用である。高脂血症患者は、また、血液コレステロールレベルがしばしば上昇し、心臓血管疾患の危険性も高くなる。本発明の因子に加えて、HMC−CoA還元酵素阻害剤(「スタチン」)のようなコレステロール低下薬を、同じ医薬組成物に所望により組み込んで高脂血症患者に投与することができる。
【0157】
脂肪肝:集団の実質的な割合は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)としても知られる脂肪肝に影響されている。NASHは、肥満および糖尿病にしばしば付随する。肝臓脂肪症、すなわち肝細胞を伴うトリグリセリドの小滴の存在は、肝臓を慢性炎症(炎症性白血球の浸透として生検サンプルで検出される)にかかりやすくし、線維症および肝硬変に至る可能性がある。脂肪肝は、肝細胞傷害の指標として機能するアミノ基転移酵素ALTおよびASTのような肝臓に特異的な酵素の血清レベルの上昇の観察、ならびに疲労および肝臓の領域の疼痛を含む症状の発生によって一般に検出されるが、確定的な診断にはしばしば生検が必要である。予想される利点は、肝臓炎症および脂肪含有量の減少によるNASHの線維症および肝硬変への進行の減衰、停止または逆転である。
【0158】
医薬組成物
本発明は、本明細書に記載されている生物学的に活性な因子および医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物のさらなる実施形態は、上記の生物学的に活性な因子の実施形態のいずれか1つを含む。不必要な重複を避けるために、各当該因子および因子群を繰り返して記載しないが、それらは、繰り返して説明されているように、医薬組成物のこの説明に組み込まれている。
【0159】
好ましくは、該組成物は、例えば、錠剤、被覆錠剤、糖剤、硬質もしくは軟質ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤または懸濁剤の形の経口投与に合わせて構成される。概して、経口組成物は、1mgから400mgの当該因子を含む。被験体が、1日当たり1個または2個の錠剤、被覆錠剤、糖剤またはゼラチンカプセル剤を飲むのが便利である。しかし、例えば坐薬の形の直腸投与、例えば注射液の形の非経口投与、または鼻投与を含む全身投与の任意の他の従来の手段による投与に合わせて該組成物を構成することもできる。
【0160】
生物活性化合物を、医薬組成物の製造のための医薬として不活性な無機または有機担体で処理することができる。錠剤、被覆錠剤、糖剤および硬質ゼラチンカプセル剤のための当該担体として、例えば、ラクトース、トウモロコシデンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩等を使用することができる。軟質ゼラチンカプセル剤のための好適な担体は、例えば、植物油、蝋、脂肪、ならびに半固体および液体ポリオール等である。しかし、活性成分の性質に応じて、軟質ゼラチンカプセル剤の場合は、軟質ゼラチンそのもの以外に担体を通常必要としない。液剤およびシロップ剤の製造に好適な担体は、例えば、水、ポリオール、グリセロールおよび植物油等である。坐薬のための好適な担体は、例えば、天然または硬化油、蝋、脂肪および半液体または液体ポリオール等である。
【0161】
医薬組成物は、さらに、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香料、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、被覆剤または酸化防止剤を含有することができる。それらは、さらに他の治療価値を有する物質、特に、本発明の化合物の効果を支えるもの以外の機構を通じて作用する抗糖尿病剤または抗高脂血症剤を含有することもできる。単一の製剤で本発明の組成物と有利に組み合わせることができる因子としては、メトホルミンのようなビグアニド、スルホニル尿素インシュリン放出剤グリブリドおよび他のスルホニル尿素インシュリン放出剤のようなインシュリン放出剤、アトロバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンおよびシムバスタチン等の「スタチン」HMG−CoA還元酵素阻害剤のようなコレステロール低下薬、クロフィブレートおよびゲムフィブロジルのようなPPAR−アルファアゴニスト、チアゾリジンジオン(例えばロシグリタゾンおよびピオグリタゾン)のようなPPAR−ガンマアゴニスト、(デンプン消化を阻害する)アカルボースのようなアルファ−グルコシダーゼ阻害剤ならびにレパグリニドのような食事インシュリン放出剤が挙げられるが、それらに限定されない。単一製剤で本発明の化合物と組み合わされる相補的薬剤の量は、標準的な臨床実務に用いられる用量に従う。一定の代表的な化合物の確定された安全かつ有効な用量範囲は、以上に記載されている。
【0162】
本発明は、本明細書に記載されている発明を例示するが、限定しない以下の実施例を参照することによってより深く理解されるであろう。
【実施例】
【0163】
(実施例A.インシュリン依存性糖尿病における代謝異常の改善)
ストレプトゾトシン(STZ)は、インシュリン産性膵臓ベータ細胞を選択的に破壊し、実験動物においてインシュリン依存性糖尿病を誘発するのに広く使用される毒物である。
【0164】
雌のBalb/Cマウス(生後8週間;体重18〜20グラム)をストレプトゾトシン(STZ)で治療する(連続する5日間の各々に50mg/kgを腹腔内投与する)。STZの最後の投与から14日後に、血糖を測定して、動物が糖尿病であることを確認し、マウスを、それぞれ5匹の動物を含む2つのグループ、すなわち本発明の化合物(250mg/kg)を経口胃管栄養法で毎日受容するグループと、ビヒクル(水中0.75%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、懸濁剤)を受容するグループとに分ける。STZを受容しなかった同一コホートからの、糖尿病にかかっていないマウスのグループも監視する。血糖濃度を測定するために血液サンプルを定期的に採取し、体重も記録する。
【0165】
数週間の治療の後に、本発明の化合物で経口治療されたマウスおよびビヒクルで治療された対照動物の血糖濃度を測定する。血糖濃度が基準まで低下し始める場合は陽性の結果と見なし、ビヒクルで治療された対照動物の血糖は、上昇し続けると予想される。薬物治療の開始から14週間後に、体重、ならびに血糖濃度、トリグリセリド濃度およびコレステロール濃度を測定する。
【0166】
(実施例B:致死的なインシュリン依存性糖尿病のマウスの生存率の改善)
雌のBalb/Cマウス(生後14週間)を単回用量のストレプトゾトシン(175mg/kg、腹腔内投与)で治療して、重度のインシュリン依存性糖尿病を誘発する。7日後に、マウスを3つの治療グループ、すなわち本発明の化合物、ピオグリタゾンおよびビヒクルによる治療グループに分ける。マウスを経口胃管栄養法で毎日治療し、生存率を経時的に監視する。
【0167】
(実施例C:重度インシュリン依存性糖尿病における死亡率の低減)
雌のbalb/Cマウス(実験開始時は生後19週間)を高用量のSTZで複数回投与する(連続する5日間に75mg/kgを腹腔内投与する)。次いで、動物を糖尿病の重度に応じて2つのグループ(20匹/グループ)に分ける。STSの最後の投与から4日後に治療を開始する。一方のグループにはビヒクル(0.4mlの0.75%HPMC、経口投与)を投与し、他方のグループには本発明の化合物(30mg/kg/日)を経口投与する。3週間の毎日の治療の後に、2つのグループにおける累積的な死亡率を記録する。
【0168】
(実施例D:NODマウスにおける自然性糖尿病の発生率および死亡率の減少)
NOD(「非肥満性糖尿病」)マウスの実質的な割合が、膵島細胞の自然性自己免疫破壊の結果としてインシュリン依存性糖尿病になる。20匹のNODマウス(生後6週間)を含む2つのグループを経口ビヒクル(水中0.4mlの0.75%ヒドロキシプロピルメチルセルロース;HPMC)またはHPMCに懸濁させた本発明の化合物(200mg/kg/日)で毎日治療する。重度インシュリン依存性糖尿病の自然発症による死亡の発生を7カ月の期間にわたって監視する。
【0169】
(実施例E:高血糖症および高脂血症の減少、およびob/ob肥満性糖尿病マウスにおける脂肪肝の改善)
ob/obマウスは、食欲調節およびエネルギー代謝に関与するタンパク質であるレプチンに関する遺伝子に欠陥を有し、過食症、肥満およびインシュリン抵抗性である。それらは、高血糖症および脂肪肝を発症する。
【0170】
生後約8週間の雄の痩型(ob/+ヘテロ接合体)および肥満型(ob/obホモ接合体)C57BL/6マウスをJackson Labs(メイン州Bar Harbor)から入手し、体重および血糖濃度がグループ間で類似するように5匹の動物を含むグループに無作為に割り当てる。すべての動物を温度(23℃)、相対湿度(50±5%)および照明(7:00〜19:00)の管理下に維持し、水および実験室飼料(Formulab Diet5008、Quality Lab Products、メリーランド州Elkridge)を自由に摂取できるようにする。糖試験紙およびGlucometer Elite XL装置(Bayer Corporation)によって血糖を慣例的に測定する。選択された時点において、血液サンプル(約100マイクロリットル)を血清化学分析のために後部眼窩洞(retro−orbital sinus)を介してヘパリン処理した毛細管で採取する。血清化学(糖、トリグリセリド、コレステロール、BUN、クレアチニン、AST、ALT、SDH、CPKおよび遊離脂肪酸)分析をHitachi717 Analyzerで実施し、血漿インシュリンおよび膵臓インシュリンを電子化学発光免疫検定(Origen Analyzer,Igen,Inc.、メリーランド州Gaithersburg)によって測定する。
【0171】
ob/obマウスのグループを以下に示す治療コホートに分け、毎日経口用量の本発明の化合物(10、30、100、150または300mg)、ロシグリタゾン(1、3、10または30mg)またはピオグリタゾン(30または100mg)を与える。後者の2つの化合物は、非インシュリン依存性真性糖尿病のヒト患者を治療するのに使用されるインシュリン増感薬であり、本発明の化合物の効果および安全性に対する比較物として使用される。この実験における化合物の用量範囲は、最適以下の用量および潜在的に最適以上の用量を含むように選択される。
【0172】
ob/obマウスは、慢性炎症性脂肪肝を発症し、進行性肝硬変および肝機能不全に至る可能性がある状態である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の動物モデルであると見なされる。NASHにおいて、脂肪蓄積は、肝臓が炎症性傷害を受ける可能性を高める。患者におけるNASHの1つの特徴的な徴候は、ウィルス感染またはアルコール症がない場合は、損傷肝細胞から放出される酵素、例えば、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびソルビトールデヒドロゲナーゼ(SDH)の血清におけるレベルの上昇である。これらの酵素は、ob/obマウスにおいて、脂肪肝および二次炎症の結果として増加する。
【0173】
(実施例F:糖尿病マウスにおける本発明の化合物の急性低血糖効果:実験1)
本発明の化合物は、非インシュリン依存性糖尿病の動物における急性抗高血糖症活性を示す。
【0174】
雄のob/ob糖尿病マウスを、それぞれ5匹の動物を含むグループに無作為に分ける。体重は、約50〜55gであり、血糖は、給餌状態で約300mg/dLである。0.5%カルボキシメチルセルロースビヒクルに懸濁した試験物質の単一経口用量を胃管栄養法によって投与する。最初の投与から0、0.5、2、4、6および18時間後に、グルコメータ試験紙およびGlucometer Elite XL装置(Bayer)を使用して、尾静脈をかみそりで切り込むことによって得られた血液滴において血糖を測定する。経口ビヒクルに対して血糖が10%減少したものを陽性の選別結果と見なす。血糖の減少は、一般には、薬物投与の6時間後に最大になることが期待される。
【0175】
(実施例G:糖尿病マウスにおける本発明の化合物の急性低血糖効果:実験2)
本発明の化合物は、非インシュリン依存性糖尿病の動物における急性抗高血糖症活性を示す。
【0176】
雄のob/obマウス(50〜55グラム;血糖約300mg/dL)を、それぞれ5匹の動物を含むグループに分け、0.5%カルボキシメチルセルロースビヒクルに懸濁した試験薬(250mg/kg)の単回経口用量を与える。対照グループには経口ビヒクルのみを与える。試験薬またはビヒクル(対照)の経口投与の6時間後に、血液サンプルを尾静脈から得て、糖含有量をグルコメータで測定する。
【0177】
(実施例H:db/dbマウスにおける本発明の化合物の抗糖尿病効果)
db/dbマウスは、過食症、肥満および糖尿病に至るレプチンシグナル伝達の欠陥を有する。さらに、比較的強固な島を有するob/obマウスと異なり、それらのインシュリン産生膵島細胞は、慢性高血糖症を通じて不全になるため、(末梢インシュリン抵抗性に関連する)高インシュリン血症から低インシュリン血症性糖尿病に移行する。
【0178】
雄のdb/dbマウスにビヒクル(0.75%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、本発明の化合物(150mg/kg)またはピオグリタゾン(100mg/kg)による毎日の経口治療を施す。血清化学分析のために後部眼窩洞を介して、あるいは試験紙およびグルコメータによる糖測定のために尾静脈を介して血液サンプルを採取する。この実験に使用されたピオグリタゾンの用量は、db/dbマウスの治療に最大の有効用量であることが文献に報告された(Shimayaら、(2000年)、Metabolism、第49巻:411〜7頁)。
【0179】
db/dbマウスにおける第2の実験において、本発明の化合物(150mg/kg)の抗糖尿病活性をロシグリタゾン(20mg/kg)の抗糖尿病活性と比較する。8週間の治療の後に、血糖およびトリグリセリドを測定する。化合物BIまたはロシグリタゾンで治療された動物は、ビヒクルで治療された対照と比べて有意に低い。この試験に使用されたロシグリタゾン用量は、後期db/dbマウスに対する最適用量として公開文献に報告された(Lenhardら、(1999年)Diabetologia、第42巻:545〜54頁)。グループは、それぞれ6〜8匹のマウスからなる。
【0180】
(実施例I:db/dbマウスにおける本発明の化合物の抗糖尿病効果)
db/dbマウスは、過食症、肥満および糖尿病に至るレプチンシグナル伝達の欠陥を有する。さらに、C57BL/6Jバックグラウンドのob/obマウスと異なり、C57BL/KSバックグラウンドのdb/dbマウスは、それらのインシュリン産性膵島β細胞が不全となり、(末梢インシュリン抵抗性に関連する)高インシュリン血症から低インシュリン血症性糖尿病に進行する。
【0181】
生後約8週間の雄の肥満型(db/dbホモ接合体)C57BL/KsolaマウスをJackson Labs(メイン州Bar Harbor)から入手し、体重(50〜55g)および血清グルコースレベル(給餌状態で300mg/dl以上)がグループ間で類似するように、5〜7匹の動物を含むグループに無作為に割り当てる。雄の痩型(db/+ヘテロ接合体)マウスは、コホート対照としての役割を果たす。到着後、最低7日間順応させる。すべての動物を管理温度(23℃)、相対湿度(50±5%)および照明(7:00〜19:00)に維持し、標準飼料(Formulab Diet5008、Quality Lab Products、メリーランド州Elkridge)および水を自由に摂取できるようにする。
【0182】
治療コホートには、(1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)または本発明の化合物(100mg/kg)の経口用量を2週間にわたって毎日与える。治療期間の最後に、100μlの静脈血を血清化学分析のためにdb/dbマウスの後部眼窩洞からヘパリン処理した毛細管に引く。
【0183】
本発明の化合物の非絶食状態の血糖ならびに血清トリグリセリドおよび遊離脂肪酸に対する影響を測定する。
【0184】
(実施例J:Zucker糖尿病性脂肪過多(Zucker diabetic fatty)(ZDF)ラットにおける本発明の化合物の白内障発生の減衰)
白内障は、加齢および糖尿病に関連する進行性視力低下および失明の主な原因の1つであり、Zucker糖尿病性脂肪過多(ZDF)モデルは、水晶体における生化学的変化および酸化ストレスを含めてヒト白内障発生と多くの類似点がある。しかし、これらのラットは、典型的には生後14〜16週間で白内障が発生する。
【0185】
生後12週間の雄のZDFラットおよびそれらと年齢が対応したZucker痩型(ZL)ラット(fa/+または+/+)をGenetic Models,Inc.(インディアナ州Indianapolis)から入手し、試験前に1週間順応させる。すべての動物を管理温度(23℃)、相対湿度(50±5%)および照明(7:00〜19:00)に維持し、標準飼料(Formulab Diet5008、Quality Lab Products、メリーランド州Elkridge)および水道水を随意に摂取できるようにする。ビヒクルおよび100mg/kgの本発明の化合物の毎日の経口用量を10週間にわたって治療コホートに与える。体重、ならびに糖試験紙およびGlucometer Elite XL装置(Bayer Corporation)を用いた尾の血液の血糖の測定を慣例的に行う(1週間に1回、通常は午前10:00付近)。治療期間の終了時に、100μlの静脈血を血清化学分析(Anilytics,Inc.、メリーランド州Gaithersburg)のために尾静脈からヘパリン処理した管に回収する(通常は午前10:00)。血清化学(糖(GL)、トリグリセリド(TG)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、ソルビトールデヒドロゲナーゼ(SDH)および遊離脂肪酸(FFA))分析をHitachi717 Analyzerで実施する(Anilytics,Inc.、メリーランド州Gaithersburg)。血漿インシュリンを電子化学発光免疫検定、ECL(Origen Analyzer,Igen,Inc.、メリーランド州Gaithersburg)によって測定する。動物を屠殺し、組織および/または器官(水晶体および肝臓)を摘出し、計量(湿重量)し、生化学分析のために処理する。脂質過酸化の主要生成物であるマロンジアルデヒド(MDA)をOhkawaら、(1979年)、Analytical Biochem、第95巻、351〜358頁に従って水晶体においてアッセイする。
【0186】
(実施例K:高脂肪給餌C57Bl/6Jマウスにおける循環トリグリセリド、遊離脂肪酸、インシュリンおよびレプチンの低下)
高脂肪給餌マウスは、肥満、糖尿病、心臓血管疾患および他の障害の危険性を有する人および当該障害にかかっている人に見られる高トリグリセリド血症および高循環脂肪酸レベルならびにインシュリンおよびレプチン抵抗性に対するモデルである。生後約8週間の雄のC57Bl/6Jマウスを、6匹の動物を含むグループに無作為に割り当てる。それらを管理温度(23℃)、相対湿度(50±5%)および照明(7:00〜19:00)に維持し、食物および水を随意に摂取できるようにする。6週間にわたって、高脂肪食(食餌番号D12451、脂肪として45%のカロリーを含む(Research Diets、ニュージャージ州Brunswick))をマウスに給餌する。6週間後に、各グループのマウスにビヒクル(ヒドロキシメチルセルロース)、本発明の化合物(10mg/kg、30mg/kgまたは100mg/kg)、Wy14,643(10mg/kg、30mg/kgまたは100mg/kg)あるいはロシグリタゾン(1mg/kg、3mg/kg、10mg/kgまたは100mg/kg)を経口胃管栄養法によってさらに4週間与えながら、高脂肪食の給餌を続ける。2週間の薬物治療の後に、血漿化学(Anilytics,Inc.、メリーランド州Gaithersburg)をアッセイする。4週間の薬物治療の後に、血漿血清インシュリンおよびレプチンを電子化学発光免疫検定(Origen Analyzer,Igen,Inc.、メリーランド州Gaithersburg)によって測定する。
【0187】
(実施例L:高脂肪給餌Sprague Dawleyラットにおける循環トリグリセリド、遊離脂肪酸、インシュリンおよびレプチンの低下)
高脂肪給餌ラットは、インシュリンおよびレプチン抵抗性に対するモデルである。Sprague Dawleyラットは、無傷のレプチン系を有し、肝臓、脂肪組織および筋肉のような末梢組織における正常なインシュリン応答の下方制御による高インシュリン血症によって高脂肪食に応答する。
【0188】
生後約17週間の雄のSprague DawleyラットをJackson Labs(メイン州Bar Harbor)から入手し、5〜7匹の動物を含むグループに無作為に割り当てる。体重は、グループ間で類似している。12時間毎の厳密な明/暗サイクルを有する(25℃に)温度調節された施設にすべての動物を維持し、水および食物が自由に摂取できるようにする。薬物治療の前に1カ月間にわたって、ラットに高脂肪食(食餌番号D12451(脂肪として45%のカロリーを含む)、Research Diets、ニュージャージー州Brunswick)を給餌する。
【0189】
6匹のSprague Dawleyラットを含む各グループをビヒクル(ヒドロキシメチルセルロース)、本発明の化合物(10、30および100mg/kg)またはロシグリタゾン(3mg/kg)の単回の毎日用量で6週間治療しながら、高脂肪食の給餌を維持する。血清化学分析のために、尾静脈を介して血液サンプル(約100μl)を採取する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

の化合物または該化合物の医薬として許容し得る塩であって、式中、
nは、1または2であり;
mは、0、1、2、3または4であり;
qは、0または1であり;
tは、0または1であり;
は、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルキルまたは1個から3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
およびRの一方は水素またはヒドロキシであり、他方は水素であり;またはRおよびRは一緒になって=Oとなり、
Aは、無置換であるか、ハロ、ヒドロキシ、1個または2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個または2個の炭素原子を有するアルコキシおよびペルフルオロメトキシから選択される1個または2個の基で置換されたフェニル;または
3個から6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、無置換であるか、1個または2個の環炭素がメチルまたはエチルで独立に一置換されたシクロアルキル;または
N、SおよびOから選択される1個または2個の環ヘテロ原子を有する5員または6員のヘテロ芳香族環であって、環炭素によって式Iの化合物の残りと共有結合しているヘテロ芳香族環である、
化合物または該化合物の医薬として許容し得る塩。
【請求項2】
nは1であり;qは0であり;tは0であり;Rは水素であり;mは0、1または3であり;
Aは、無置換であるか、ハロ、ヒドロキシ、1個または2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個または2個の炭素原子を有するアルコキシおよびペルフルオロメトキシから選択される1個または2個の基で置換されたフェニルである、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項3】
Aは2,6−ジメチルフェニルである、請求項2に記載の化合物または塩。
【請求項4】
が水素であり、Rが水素である、請求項3に記載の化合物または塩。
【請求項5】
前記化合物は4,4−ジメチル−2−[(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−メチル]−2−オキサゾリンである、請求項4に記載の化合物または塩。
【請求項6】
およびRの一方はヒドロキシであり、他方は水素である、請求項3に記載の化合物または塩。
【請求項7】
前記化合物は4,4−ジメチル−2−[(3−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−3−ヒドロキシ)−プロピル]−2−オキサゾリンである、請求項6に記載の化合物または塩。
【請求項8】
およびRは一緒になって=Oとなる、請求項3に記載の化合物または塩。
【請求項9】
前記化合物は4,4−ジメチル−2−[(3−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソ)−プロピル]−2−オキサゾリンである、請求項8に記載の化合物または塩。
【請求項10】
インシュリン抵抗性症候群、I型糖尿病およびII型糖尿病を含む糖尿病ならびに多嚢胞性卵巣症候群からなる群より選択される状態の治療;または糖尿病に関連するアテローム硬化症、動脈硬化症、肥満、高血圧症、高脂血症、脂肪肝、腎症、神経障害、網膜障害、足潰瘍もしくは白内障の治療またはそれを発生させる可能性の低減;または高脂血症、悪液質および肥満からなる群より選択される状態の治療のための医薬品の製造における生物学的に活性な因子の使用であって、
該因子は、式:
【化2】

の化合物または該化合物の医薬として許容し得る塩であって、式中、
nは、1または2であり;
mは、0、1、2、3または4であり;
qは、0または1であり;
tは、0または1であり;
は、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルキルまたは1個から3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
およびRの一方は水素またはヒドロキシであり、他方は水素であり;またはRおよびRは一緒になって=Oとなり、
Aは、無置換であるか、ハロ、ヒドロキシ、1個または2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個または2個の炭素原子を有するアルコキシおよびペルフルオロメトキシから選択される1個または2個の基で置換されたフェニル;または
3個から6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、無置換であるか、1個または2個の環炭素がメチルまたはエチルで独立に一置換されたシクロアルキル;または
N、SおよびOから選択される1個または2個の環ヘテロ原子を有する5員または6員のヘテロ芳香族環であって、環炭素によって式Iの化合物の残りと共有結合しているヘテロ芳香族環である、
使用。
【請求項11】
nは1であり;qは0であり;tは0であり;Rは水素であり;mは0、1または3であり;
Aは、無置換であるか、ハロ、ヒドロキシ、1個または2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個または2個の炭素原子を有するアルコキシおよびペルフルオロメトキシから選択される1個または2個の基で置換されたフェニルである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
Aは2,6−ジメチルフェニルである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
が水素であり、Rが水素である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記化合物は4,4−ジメチル−2−[(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−メチル]−2−オキサゾリンである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
およびRの一方はヒドロキシであり、他方は水素である、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
前記化合物は4,4−ジメチル−2−[(3−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−3−ヒドロキシ)−プロピル]−2−オキサゾリンである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
およびRは一緒になって=Oとなる、請求項12に記載の使用。
【請求項18】
前記化合物は4,4−ジメチル−2−[(3−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソ)−プロピル]−2−オキサゾリンである、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記医薬品は経口投与用に処方される、請求項10から18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
インシュリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝、悪液質、肥満、アテローム硬化症および動脈硬化症からなる群から選択される状態を有する哺乳動物被験体を治療するための方法であって、ある量の生物学的に活性な因子を該被験体に投与することを含み、
該因子は、式:
【化3】

の化合物または該化合物の医薬として許容し得る塩であって、式中、
nは、1または2であり;
mは、0、1、2、3または4であり;
qは、0または1であり;
tは、0または1であり;
は、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルキルまたは1個から3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
およびRの一方は水素またはヒドロキシであり、他方は水素であり;またはRおよびRは一緒になって=Oとなり、
Aは、無置換であるか、ハロ、ヒドロキシ、1個または2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個または2個の炭素原子を有するアルコキシおよびペルフルオロメトキシから選択される1個または2個の基で置換されたフェニル;または
3個から6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、無置換であるか、1個または2個の環炭素がメチルまたはエチルで独立に一置換されたシクロアルキル;または
N、SおよびOから選択される1個または2個の環ヘテロ原子を有する5員または6員のヘテロ芳香族環であって、環炭素によって式Iの化合物の残りと共有結合しているヘテロ芳香族環である、
方法。
【請求項21】
nは1であり;qは0であり;tは0であり;Rは水素であり;mは0、1または3であり;
Aは、無置換であるか、ハロ、ヒドロキシ、1個または2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個または2個の炭素原子を有するアルコキシおよびペルフルオロメトキシから選択される1個または2個の基で置換されたフェニルである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
Aは2,6−ジメチルフェニルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
が水素であり、Rが水素である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物は4,4−ジメチル−2−[(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−メチル]−2−オキサゾリンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
およびRの一方はヒドロキシであり、他方は水素である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記化合物は4,4−ジメチル−2−[(3−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−3−ヒドロキシ)−プロピル]−2−オキサゾリンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
およびRは一緒になって=Oとなる、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物は4,4−ジメチル−2−[(3−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソ)−プロピル]−2−オキサゾリンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記被験体はヒトである、請求項20から28いずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記因子は1日当たり1ミリグラムから400ミリグラムの量で経口投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記状態はインシュリン抵抗性症候群またはII型糖尿病である、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
前記治療は、糖尿病に関連するアテローム硬化症、肥満、高血圧症、高脂血症、脂肪肝、腎症、神経障害、網膜障害、足潰瘍および白内障からなる群より選択される糖尿病の症状、または糖尿病の症状を発生させる可能性を低減する、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
インシュリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝、悪液質、肥満、アテローム硬化症、動脈硬化症からなる群より選択される状態の治療に使用され、経口投与用に適合された医薬組成物であって、医薬として許容し得る担体および1ミリグラムから400ミリグラムの生物学的に活性な因子を含み、
該因子は、式:
【化4】

の化合物または該化合物の医薬として許容し得る塩であって、式中、
nは、1または2であり;
mは、0、1、2、3または4であり;
qは、0または1であり;
tは、0または1であり;
は、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルキルまたは1個から3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
およびRの一方は水素またはヒドロキシであり、他方は水素であり;またはRおよびRは一緒になって=Oとなり、
Aは、無置換であるか、ハロ、ヒドロキシ、1個または2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個または2個の炭素原子を有するアルコキシおよびペルフルオロメトキシから選択される1個または2個の基で置換されたフェニル;または
3個から6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、無置換であるか、1個または2個の環炭素がメチルまたはエチルで独立に一置換されたシクロアルキル;または
N、SおよびOから選択される1個または2個の環ヘテロ原子を有する5員または6員のヘテロ芳香族環であって、環炭素によって式Iの化合物の残りと共有結合しているヘテロ芳香族環である、
医薬組成物。
【請求項34】
nは1であり;qは0であり;tは0であり;Rは水素であり;mは0、1または3であり;
Aは、無置換であるか、ハロ、ヒドロキシ、1個または2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個または2個の炭素原子を有するアルコキシおよびペルフルオロメトキシから選択される1個または2個の基で置換されたフェニルである、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
Aは2,6−ジメチルフェニルである、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
が水素であり、Rが水素である、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記化合物は4,4−ジメチル−2−[(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−メチル]−2−オキサゾリンである、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
およびRの一方はヒドロキシであり、他方は水素である、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記化合物は4,4−ジメチル−2−[(3−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−3−ヒドロキシ)−プロピル]−2−オキサゾリンである、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
およびRは一緒になって=Oとなる、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記化合物は4,4−ジメチル−2−[(3−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソ)−プロピル]−2−オキサゾリンである、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
経口剤形である、請求項33から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2009−528375(P2009−528375A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557453(P2008−557453)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/062574
【国際公開番号】WO2007/101060
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(501056821)ウェルスタット セラピューティクス コーポレイション (32)
【Fターム(参考)】