説明

代謝障害を治療するための化合物

種々の代謝障害(例えば、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満症、アテローム性動脈硬化症、および動脈硬化症)の処置に有用な化合物が、開示される。生物学的に活性な薬剤は、式(I):


の化合物、または式(I)の化合物の薬学的に受容可能な塩であり得る。式(I)において、nは、1または2であり;mは、0または1であり;qは、0または1であり;tは、0または1であり;Rは、アルキルであり;Rは、アルコキシであり;Aは、フェニルであるか;あるいは、シクロアルキルであるか;あるいは、ヘテロ芳香族環であり;そしてXは−CH−であり、Qは−ORであるか;Xは−CHCR1213−または−CHCH(NHAc)−であり、QはORであるか;あるいは、Xは−CHCH−であり、QはNR1011である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
真性糖尿病は、罹患率および死亡率の主要な原因である。慢性的に上昇した血糖は、以下の消耗性の合併症を導く:ネフロパシー(しばしば透析または腎移植を必要とする);周辺神経障害;失明に導く網膜障害;脚および足の潰瘍(foot ulceration)(切断を導く);脂肪肝疾患(時折、肝硬変へと進行する);および冠状動脈疾患および心筋梗塞に対する脆弱性。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の2つの主な型が存在する。I型糖尿病、すなわち、インスリン依存性真性糖尿病(IDDM)は、ランゲルハンス島におけるインスリン生産性β細胞の自己免疫破壊に起因する。この疾患の開始は、通常、幼少期または青年期である。処置は、主に、インスリン用量の調整を導くための、頻繁な血糖量の試験と合わせられた、毎日の複数回のインスリンの投与からなる。なぜなら、過剰量のインスリンは、低血糖症を引き起こし、その結果、脳および他の機能の損傷を生じ得るからである。
【0003】
II型糖尿病、すなわち、非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)は、代表的に成人期に発生する。NIDDMは、脂肪組織、筋肉、および肝臓のようなグルコース使用組織のインスリンの作用に対する耐性に関連する。最初に、ランゲルハンス島β細胞は、過剰のインスリンを分泌することによって、代償する。結果として起こるランゲルハンス島の機能不全は、代償不全および慢性高血糖症を生じる。逆に、適度なランゲルハンス島の機能不全は、周辺インスリン抵抗性より先に、または同時に起こり得る。NIDDMの処置のために有用な、以下のいくつかのクラスの薬物が存在する:1)インスリン放出物質(これは、インスリン放出を直接刺激し、低血糖症の危険性を保持する);2)食事インスリン放出物質(これは、グルコース誘導性インスリン分泌を増強し、そして各食事前に摂取されなければならない);3)メトホルミンを含むビグアニド(biguanide)(肝臓の糖新生(これは、糖尿病において逆説的に上昇する)を減少させる);4)インスリン感作物質(例えば、チアゾリジンジオン誘導体(ロシグリタゾン(rosiglitazone)およびピオグリタゾン(pioglitazone)))(これは、インスリンに対する周辺応答を改善するが、体重増加、水腫、偶発的肝臓毒性のような副作用を有する);5)インスリン注射(ランゲルハンス島が慢性過剰刺激下で機能不全になった場合、NIDDMの末期においてしばしば必要である)。
【0004】
インスリン抵抗性はまた、顕著な高血糖症なしに生じ得、そして一般的に、アテローム性動脈硬化症、肥満、高脂質血症、および特発性高血圧と関連する。この異常性の群は、「代謝症候群」または「インスリン抵抗性症候群」を構成する。インスリン抵抗性はまた、脂肪肝(これは、慢性炎症(NASH;「非アルコール性脂肪肝炎」)に進行し得る)、線維症、および肝硬変に関連する。累積的に、インスリン抵抗性症候群(糖尿病を含むがこれに限定されない)は、罹患率および40歳を超えたヒトの死の主要な原因の多くの基礎となる。
【0005】
このような薬物の存在に関わらず、糖尿病は、主要かつ増加する大衆の健康問題のままである。糖尿病の合併症の末期は、国の健康管理財源の大部分を消費する。新規の経口活性治療剤に対する必要性が存在し、この治療剤は、インスリン抵抗性の主な欠損および現存する薬物よりもより少なくまたはより緩やかな副作用を有してランゲルハンス島機能不全を効率的に対処する。
【0006】
現在、脂肪肝疾患のための安全かつ効率的な治療薬は存在しない。従って、このような治療薬は、この状態の処置において価値がある。
【0007】
WO 02/100341(Wellstat Therapeutics Corp.)は、イオウの代わりに酸素を有する化合物(例えば、4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソ酪酸)を開示している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、下記される生物学的に活性な薬剤を提供する。本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、悪液質、高脂質血症、脂肪肝疾患、肥満、アテローム性動脈硬化症または動脈硬化症の処置のための薬物の製造において下記される生体活性因子の使用を提供する。本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、黒液質、高脂質血症、脂肪肝疾患、肥満、アテローム性動脈硬化症または動脈硬化症を罹患する哺乳類被験体を処置する方法を提供し、この方法は、下記される有効量の生体活性因子を被験体に投与する工程を包含する。本発明はまた、下記される生体活性因子および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物を提供する。
【0009】
本発明に従う生物学的に活性な薬剤は、式I:
【0010】
【化5】

の化合物、またはRが水素である場合、該化合物の薬学的に受容可能な塩であって、ここで、
nは、1または2であり;mは、0または1であり;qは、0または1であり;tは、0または1であり;Rは、1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;Rは、水素、ハロ、1〜3個の炭素原子を有するアルキル、または1〜3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
Aは、非置換フェニルであるか、または、以下:ハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される、1個もしくは2個の基で置換されたフェニルであるか;あるいは、3〜6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、該シクロアルキルは、非置換であるか、または1個もしくは2個の環炭素原子が、独立して、メチルもしくはエチルで一置換されている、シクロアルキルであるか;あるいは、N、S、およびOから選択される1個もしくは2個の環へテロ原子を有する5員もしくは6員のヘテロ芳香族環であって、該へテロ芳香族環が、式Iの化合物の残りの部分に環炭素により共有結合されている、ヘテロ芳香族環であり;そして
Xは−CH−であり、Qは−ORであり、そしてRはメチルまたはエチルであるか;Xは−CHCR1213−またはCHCH(NHAc)−であって、R12およびR13の各々が、独立して、水素またはメチルであり、QはORであり、そしてRは水素または1〜7個の炭素原子を有するアルキルであるか;あるいは、Xは−CHCH−であり、QはNR1011であって、R10およびR11の一方が水素、1〜3個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシであり、他方は水素である。上記される生体活性因子は、下記される生物学的な活性のアッセイにおいて活性を有し、このアッセイは、ヒト糖尿病およびインスリン抵抗性症候群の確立された動物モデルである。従って、このような因子は、糖尿病およびインスリン抵抗性症候群の処置において有用である。例示的化合物は、このようなアッセイにおいて活性を示す。
【0011】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書中で使用される場合、用語「アルキル」とは、直鎖または分枝鎖のアルキル基を意味する。特定数の炭素原子を有すると同定されるアルキル基は、特定数の炭素を有する任意のアルキル基を意味する。例えば、3個の炭素原子を有するアルキルは、プロピルまたはイソプロピルであり得;そして4個の炭素原子を有するアルキルは、n−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピルまたはt−ブチルであり得る。
【0012】
本明細書中で使用される場合、用語「ハロ」とは、1つ以上のフルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを指す。
【0013】
本明細書中で使用される場合、ペルフルオロメチルまたはペルフルオロメトキシにおけるような用語「ペルフルオロ」とは、当該基が、そのすべての水素原子の代わりにフッ素原子を有することを意味する。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「Ac」とは、基CHC(O)−を指す。
【0015】
特定の化学化合物は、本明細書中では、その化学名または以下に示される二文字コードによって、言及される。化合物CSは、上で示した式Iの範囲内に含まれる。
【0016】
CS 4−(4−[(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−チオ]−フェニル)−4−オキソ酪酸。
【0017】
本明細書中で使用される場合、移行部(transitional term)である「含む(comprising)」は、開放型である(open−ended)。この用語を利用する請求項は、そのような請求項に記載される要素以外の要素を含み得る。
【0018】
(本発明の化合物)
上記される薬剤、使用または薬学的組成物の実施形態において、nは、1である;qは、0である;tは、0である;Rは、水素である;Aは、非置換フェニルであるか、または、以下:ハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される、1個もしくは2個の基で置換されたフェニルである。さらに特定の実施形態において、Aは、2,6−ジメチルフェニルである。このような化合物の例には、化合物CSが挙げられる。
【0019】
本発明の生物学的に活性な薬剤の好ましい実施形態において、この薬剤は、実質的に(少なくとも98%)純粋な形態である。
【0020】
(反応スキーム)
Xが−CHCR1213−であり、qが0であり、mが0または1であり、tが0または1であり、そしてnが1または2であり、Rが水素、ハロ、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、、QがORであり、ここで、Rが水素または1〜7個の炭素原子を有するアルキルである式Iの化合物(すなわち、次式の化合物)は、反応スキーム1により、調製できる:
【0021】
【化6】

ここで、Aは、上記のとおりであり、R12およびR13は、別個に、水素またはメチルである。
【0022】
反応スキーム1では、A、t、n、R12、R13およびRは、上記のとおりである。Rは、1〜7個の炭素原子を含むアルキル基であり、そしてYは、ハロ基である。
【0023】
式IVの化合物は、適当な塩基(例えば、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジンなど)を使用することにより、工程(a)の反応を介して、式IIの化合物を式IIIの化合物でアルキル化することにより、調製できる。一般に、この反応は、不活性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミドなど)中にて、実行される。工程(a)の反応を実行するために、チオエーテルを調製する通常の任意の条件が利用できる。
【0024】
式IVの化合物は、式IVの化合物を式Vの化合物でアルキル化することにより、工程(b)の反応を介して、式VIの化合物に変換される。この反応は、アセトフェノンを3−ケトエステル(すなよち、γ−ケトエステル)に変換する通常の塩基を利用して、実行される。この反応を実行する際には、一般に、ヘキサメチルジシラザン(例えば、ビス(トリメチルシリル)アミド)のアルカリ金属塩を利用するのが好ましい。
【0025】
一般に、この反応は、不活性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン:1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(5:1))中にて、実行される。一般に、この反応は、−65℃〜25℃の温度で、実行される。その生成物は、抽出、蒸発、クロマトグラフィーおよび再結晶のような技術により、単離され精製できる。
【0026】
式VIの化合物は、Rが1〜7個の炭素原子を含むアルキル基である式Iの化合物である。式VIの化合物は、エステル加水分解により、遊離酸(すなわち、RがHである式Iの化合物)に変換できる。通常の任意のエステル加水分解方法により、RがHである式Iの化合物が生成する。
【0027】
【化7】

Xが−CHCR1213−であり、qが1であり、mが0または1であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが水素、ハロ、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、、QがORであり、ここで、Rが水素または1〜7個の炭素原子を有するアルキルであり、そしてRが1〜3個の炭素原子を有するアルキル基である式Iの化合物(すなわち、次式の化合物)は、スキーム2の反応により、調製できる:
【0028】
【化8】

ここで、Aは、上記のとおりであり、R12およびR13は、別個に、水素またはメチルである。
【0029】
スキーム2では、t、n、A、R12、R13およびRは、上記のとおりである。Rは、1〜7個の炭素原子を有するアルキル基であり、そしてYは、クロロまたはブロモである。
【0030】
スキーム2の反応では、式VIIの化合物は、工程(c)の反応を介してメシル化されて、式VIIIの化合物が得られる。メシル化反応を実行する通常の任意の条件が利用できる。次いで、式VIIIの化合物は、式IXの化合物と共に加熱されて、式Xの化合物が生成する。工程(d)の反応では、アミノアルコールを生成する通常の任意の条件が利用できる。
【0031】
式Xの化合物では、式Xの化合物を、塩化チオニル、臭素、三臭化リン、四臭化炭素などで処理することにより、アルコールは、工程(e)の反応を介して、クロロまたはブロモで置換されて、式XIの化合物が生成する。この反応を実行するために、アルコールをクロロまたはブロモで置換する通常の任意の条件が利用できる。
【0032】
式XIの化合物は、適当な塩基(例えば、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミンなど)の存在下にて、式IIの化合物と反応できる。この反応は、工程(f)の反応を介して、通常の溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンなど)中で実行され、対応する式XIIの化合物が生成する。
【0033】
式XIIの化合物は、工程(g)の反応を介して、式XIIの化合物を式Vの化合物でアルキル化することにより、式XIIIの化合物に変換できる。この反応は、ほぼモル当量の適当な塩基(例えば、リチウムヘキサメチレジシランまたはナトリウムヘキサメチレジシラン)の存在下にて、実行できる。この反応は、スキーム1の工程(b)に関連して先に記述した様式と同じ様式で、実行される。その生成物は、抽出、蒸発、クロマトグラフィーおよび再結晶のような技術により、単離され精製できる。
【0034】
式XIIIの化合物は、Rが1〜7個の炭素原子を有するアルキル基である式Iの化合物である。式XIIIの化合物は、エステル加水分解により、遊離酸(すなわち、RがHである式Iの化合物)に変換できる。通常の任意のエステル加水分解方法により、RがHである式Iの化合物が生成する。
【0035】
【化9】

Xが−CHCR1213−であり、qが0または1であり、mが0または1であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが水素、ハロ、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、QがORであり、ここで、Rが水素または1〜7個の炭素原子を有するアルキルであり、そしてRが1〜3個の炭素原子を有するアルキル基である式Iの化合物(すなわち、次式の化合物)は、スキーム3の反応により、調製できる:
【0036】
【化10】

ここで、Aは、上記のとおりである。
【0037】
スキーム3の反応では、t、n、m、A、R、RおよびRは、上記のとおりである。Rは、1〜7個の炭素原子を有するアルキル基である。式IVまたはXIIの化合物は、それぞれ、スキーム1または2の反応に関連して先に記述した様式と同じ様式で、調製される。
【0038】
式IVまたはXIIの化合物は、式IVまたはXIIの化合物をCuBr2で処理することにより、工程(h)の反応を介して、そのメチルケトン部分の選択的な臭素化によって、式XIVの化合物に変換できる。工程(h)の反応を実行するために、メチルケトンを1−ブロモケトンに変換する任意の選択的臭素化条件が利用できる。
【0039】
式XIVの化合物は、式XIVの化合物を式XVの化合物で処理することにより、工程(i)の反応を介して、式XVIの化合物に変換できる。一般に、この反応は、ほぼモル当量の適当な塩基(例えば、ナトリウムエトキシドまたはナトリウムメトキシド)の存在下にて、実行される。この反応は、通常の溶媒(例えば、エタノール、メタノールなど)中で実行され、式XVIの対応する化合物が生成する。工程(i)の反応を実行するために、のアルキル化反応のための通常の任意の条件が利用できる。
【0040】
式XVIの化合物は、4当量の水酸化ナトリウムを使用する脱エステル化により、工程(j)の反応を介して、式XVIIの化合物に変換できる。初期のモノ脱エステル化に続いて、残留しているエチルエステルのゆっくりとした加水分解が観察できる。溶媒を除去し残留物の酢酸中でのインキュベーションにより、式XVIIの化合物が生成した。式XVIIの化合物は、RがHである式Iの化合物である。
【0041】
式XVIIの化合物は、脱水縮合剤として1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドを使用してカルボン酸を式XVIIIの化合物でエステル化することにより、Rが1〜7個の炭素原子を有するアルキル鎖である式XIXの化合物に変換できる。工程(k)の反応を実行するために、この反応のための通常の任意の条件が利用できる。その生成物は、抽出、蒸発、クロマトグラフィーおよび再結晶のような技術により、単離され精製できる。
【0042】
式XIXの化合物は、Rが1〜7個の炭素原子を有するアルキルである式Iの化合物である。
【0043】
【化11】

Xが−CH−であり、qが0または1であり、mが0または1であり、tが0または1であり、nが1または2であり、Rが水素、ハロ、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、、QがORであり、ここで、Rがメチルまたはエチルであり、そしてRが1〜3個の炭素原子を有するアルキル基である式Iの化合物(すなわち、次式の化合物)は、スキーム4の反応により、調製できる:
【0044】
【化12】

ここで、Aは、上記のとおりである。スキーム4の反応では、t、n、m、A、RおよびRは、上記のとおりである。R15は、エチルまたはメチルである。
【0045】
式IVまたはXIIの化合物(これは、それぞれ、スキーム1または2に関連して先に記述した様式と同じ様式で、調製した)は、工程(1)の反応を介して、適当な溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)中で、塩基(例えば、水素化ナトリウム)で処理でき、続いて、式XXの炭酸C〜1またはC〜2アルキルが加えられて、式XXIの化合物が得られる。その生成物は、抽出、蒸発、クロマトグラフィーおよび再結晶のような技術により、単離され精製できる。式XXIの化合物は、Rがエチルまたはメチルである式Iの化合物である。
【0046】
【化13】

Xが−CHCH−であり、qが0または1であり、mが0または1であり、tが0または1であり、そしてnが1または2であり、Rが水素、ハロ、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、QがOR1011であり、ここで、R10およびR11の一方がヒドロキシルであり、そして他方が水素であり、Rが1〜3個の炭素原子を有するアルキル基である式Iの化合物(すなわち、次式の化合物)は、スキーム5の反応により、調製できる:
【0047】
【化14】

ここで、Aは、上記のとおりである。スキーム5の反応では、t、n、m、A、R、R10、R11およびRは、上記のとおりである。Rは、Hである。式IVまたはXIIIの化合物(これは、それぞれ、スキーム1または2に関連して先に記述した様式と同じ様式で、調製した)は、塩素化剤(例えば、塩化チオニルまたは塩化オキサリル)との反応により、式XXIIの化合物に変換できる。一般に、この反応は、溶媒(例えば、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、または両者の組み合わせ)中で、実行される。この反応に適当な温度は、0℃〜70℃であり得る。その中間体である酸塩化物は、工程(m)の反応を介して、溶媒(例えば、テトラヒドロフラン:水(5:1)の混合物、エタノール)の存在下にて、過剰な塩基(例えば、トリエチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)を利用することにより、ヒドラジン塩酸塩と反応でき、式XXIIの化合物が得られる。その生成物は、抽出、蒸発、クロマトグラフィーおよび再結晶のような技術により、単離され精製できる。
【0048】
Xが−CHCH−であり、qが0または1であり、mが0または1であり、tが0または1であり、そしてnが1または2であり、Rが水素、ハロ、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、QがOR1011であり、ここで、R10およびR11が水素であり、Rが1〜3個の炭素原子を有するアルキル基である式Iの化合物(すなわち、次式の化合物)は、スキーム5の反応により、調製できる:
【0049】
【化15】

ここで、Aは、上記のとおりである。
【0050】
スキーム5の反応では、t、n、m、A、R、R10、R11およびRは、上記のとおりである。Rは、Hである。
【0051】
式VIまたはXIIIの化合物(これは、それぞれ、スキーム1または2に関連して先に記述した様式と同じ様式で、調製した)は、工程(n)の反応を介して、まず、有機溶媒(例えば、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミドなど)中にて、式VIまたはXIIIの化合物を、例えば、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートなどで活性化することにより、続いて、水酸化アンモニウム水溶液またはアンモニアを加えることにより、式XXIIIの化合物に変換できる。この反応は、通常の塩基(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど)を利用して、実行される。工程(n)の反応を実行するために、アミドを合成する通常の任意の条件が利用できる。その生成物は、抽出、蒸発、クロマトグラフィーおよび再結晶のような技術により、単離され精製できる。
【0052】
Xが−CHCH−であり、qが0または1であり、mが0または1であり、tが0または1であり、そしてnが1または2であり、Rが水素、ハロ、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、QがOR1011であり、ここで、R10およびR11が、別個に、水素または1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが1〜3個の炭素原子を有するアルキル基である式Iの化合物(すなわち、次式の化合物)は、スキーム5の反応により、調製できる:
【0053】
【化16】

ここで、Aは、上記のとおりである。
【0054】
スキーム5の反応では、t、n、m、A、R、R10、R11およびRは、上記のとおりである。Rは、Hである。式VIまたはXIIIの化合物(これは、それぞれ、スキーム1または2に関連して先に記述した様式と同じ様式で、調製した)は、工程(o)の反応を介して、まず、塩素化剤(例えば、塩化チオニルまたは塩化オキサリル)との反応により、式XXIVの化合物に変換できる。一般に、この反応は、溶媒(ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、または両者の組み合わせ)中で、実行される。この反応に適当な温度は、0℃〜70℃であり得る。その中間体である酸塩化物は、通常の塩基(例えば、ピリジン、トリエチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)を利用することにより、対応するアミンで縮合できる。式VIまたはXIIIの化合物はまた、脱水縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドなど)を使用することにより、対応するアミンと縮合できる。酸をアミドに変換する通常の任意の条件が利用できる。その生成物は、抽出、蒸発、クロマトグラフィーおよび再結晶のような技術により、単離され精製できる。
【0055】
【化17】

tが0または1であり、nが1または2である式IIIの化合物(すなわち、次式の化合物)は、スキーム6の反応を介して、調製できる:
A(CHt+n−Y
ここで、Aは、上記のとおりである。
【0056】
スキーム6の反応では、Yは、ハロ基である。
【0057】
式XXVの化合物は、工程(p)の反応を介して、式XXVIの化合物に還元できる。この反応は、通常の還元剤(例えば、アルカリ金属水素化物(例えば、水素化リチウムアルミニウム))を利用して、実行される。この反応は、適当な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)中で、実行される。工程(p)の反応を実行するために、このような還元反応に通常の任意の条件が利用できる。
【0058】
式XXVIの化合物は、水酸基をハロゲン基(好ましいハロゲンは、ブロモまたはクロロである)で置換することにより、式XXVIIの化合物に変換できる。適当なハロゲン化剤には、塩化チオニル、臭素、三臭化リン、四臭化炭素などが挙げられるが、これらに限定されない。工程(q)の反応を実行するために、このようなハロゲン化に通常の任意の条件が利用できる。式XXVIIの化合物は、tが0であり、そしてnが1である式IIIの化合物である。
【0059】
式XXVIIの化合物は、XXVIIをアルカリ金属シアン化物(例えば、シアン化ナトリウムまたはカリウム)と反応させることにより、式XXVIIIの化合物に変換できる。この反応は、適当な溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド)中で、実行できる。工程(r)の反応を実行するために、ニトリルを調製するのに通常使用される任意の条件が利用できる。
【0060】
式XXVIIIの化合物は、工程(s)の反応を介して、酸または塩基加水分解により、式XXIXの化合物に変換できる。この反応を実行する際に、一般に、塩基加水分解(例えば、水酸化ナトリウム水溶液)を利用するのが好ましい。工程(s)の反応を実行するために、ニトリルの加水分解で通常使用される任意の条件が利用できる。
【0061】
式XXIXの化合物は、工程(t)の反応を介して還元でき、式XXXの化合物が得られる。この反応は、工程(p)の反応に関連して先に記述した様式と同じ様式で、実行できる。式XXXの化合物は、工程(u)の反応を介して、工程(q)の反応に関連して先に記述した様式と同じ様式で、式XXXIの化合物に変換できる。
【0062】
式XXXIの化合物は、tが1であり、そしてnが1である式IIIの化合物である。
【0063】
式XXXIの化合物は、適当な塩基(例えば、水素化ナトリウム)を利用してマロン酸ジエチルと反応でき、式XXXIIの化合物が得られる。この反応は、適当な溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなど)中で、実行される。工程(v)の反応を実行するために、このようなアルキル化反応に通常の任意の条件が利用できる。
【0064】
式XXXIIの化合物は、工程(w)の反応を介して、酸または塩基で加水分解でき、式XXXIIIの化合物が得られる。
【0065】
式XXXIIIの化合物は、工程(x)の反応を介して、工程(p)に関連して先に記述した様式と同じ様式で、式XXXIVの化合物に変換できる。
【0066】
式XXXIVの化合物は、工程(y)の反応を介して、工程(q)に関連して先に記述した様式と同じ様式で、式XXXVの化合物に変換できる。
【0067】
式XXXVの化合物は、tが1であり、そしてnが2である式IIIの化合物である。
【0068】
【化18】

mが0であり、そしてRが水素、ハロまたは1〜3個の炭素原子を有するアルキルである式IIの化合物(すなわち、次式の化合物)は、反応スキーム7を介して、調製できる:
【0069】
【化19】


【0070】
反応スキーム7では、mおよびRは、上記のとおりである。式XXXVIの化合物は、J.Org.Chem.1983,48,1550−1552で記述された方法を使用することにより、工程(z)の反応を介して、式XXXVIIの化合物に変換できる。
【0071】
式XXXVIIの化合物では、そのニトロ基は、工程(a’)の反応を介して、アミノ基に還元でき、式XXXVIIIの化合物が得られる。この反応は、従来技術で公知の通常の手順を使用して、行うことができる。
【0072】
式XXXVIIIの化合物は、工程(b’)の反応を介して、アミノ基をジアゾ化するのに続いてメルカプト基で置換することにより、式IIの化合物に変換できる。この反応は、従来技術で公知の通常の手順を使用して、行うことができる。
【0073】
【化20】

mが0であり、そしてRが1〜3個の炭素原子を有するアルコキシである式IIの化合物(すなわち、次式の化合物)は、反応スキーム8を介して、調製できる:
【0074】
【化21】


【0075】
反応スキーム8では、mおよびRは、上記のとおりである。
【0076】
式XXXIXの化合物は、J.Org.Chem.1983,48,1550−1552で記述された方法を使用することにより、工程(c’)の反応を介して、式XLの化合物に変換できる。
【0077】
式XLの化合物は、工程(d’)の反応を介して、その水酸基を、1〜3個の炭素原子を有するハロゲン化アルキルでアルキル化することにより、式XLIの化合物に変換できる。一般に、この反応は、通常の塩基(例えば、炭酸カリウム、水素化ナトリウムなど)を利用することにより、溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなど)中で、実行される。工程(d’)の反応を実行するために、このようなアルキル化反応に通常の任意の条件が利用できる。
【0078】
式XLIの化合物では、そのニトロ基は、工程(e’)の反応を介して、アミノ基に還元でき、式XLIIの化合物が得られる。この反応は、従来技術で公知の通常の手順を利用して、実行できる。
【0079】
式XLIIの化合物は、工程(f’)の反応を介して、アミノ基をジアゾ化するのに続いてメルカプト基で置換することにより、式IIの化合物に変換できる。この反応は、従来技術で公知の通常の手順を利用して、実行できる。
【0080】
【化22】

mが1であり、そしてRが水素、ハロまたは1〜3個の炭素原子を有するアルキルである式IIの化合物(すなわち、次式の化合物)は、反応スキーム9を介して、調製できる:
【0081】
【化23】


【0082】
反応スキーム9では、mおよびRは、上記のとおりである。
【0083】
式XXXVIの化合物は、工程(g’)の反応を介して、工程(p)に関連して先に記述した様式と同じ様式で、式XLIIIの化合物に還元できる。
【0084】
式XLIIIの化合物は、工程(h’)の反応を介して、工程(q)に関連して先に記述した様式と同じ様式で、式XLIVの化合物に変換できる。
【0085】
式XLIVの化合物は、工程(i’)の反応を介して、工程(r)に関連して先に記述した様式と同じ様式で、式XLVの化合物に変換できる。
【0086】
式XLVの化合物は、J.C.S.Perkin I,1980,1555で記述されたようなフェニルアセトンの合成方法を使用することにより、工程(j’)の反応を介して、式XLVIの化合物に変換できる。
【0087】
式XLVIの化合物では、そのニトロ基は、従来技術で公知の通常の手順を利用することにより、工程(k’)の反応を介して、アミノ基に還元でき、式XLVIIの化合物が得られる。
【0088】
式XLVIIの化合物は、工程(l’)の反応を介して、アミノ基をジアゾ化するのに続いてメルカプト基で置換することにより、式IIの化合物に変換できる。この反応は、従来技術で公知の通常の手順を利用して、実行できる。
【0089】
【化24】

mが1であり、そしてRが1〜3個の炭素原子を有するアルコキシである式IIの化合物(すなわち、次式の化合物)は、反応スキーム10を介して、調製できる:
【0090】
【化25】


【0091】
反応スキーム10では、mおよびRは、上記のとおりである。R14は、1〜2個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0092】
式XLVIIIの化合物は、工程(m’)の反応を介して、その水酸基を、1〜3個の炭素原子を有するハロゲン化アルキルでアルキル化することにより、式XLIXの化合物に変換できる。一般に、この反応は、通常の塩基(例えば、炭酸カリウム、水素化ナトリウムなど)を利用することにより、溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなど)中で、実行される。工程(m’)の反応を実行するために、このようなアルキル化反応に通常の任意の条件が使用できる。
【0093】
式XLIXの化合物は、工程(n’)の反応を介して、工程(p)に関連して先に記述した様式と同じ様式で、式Lの化合物に還元できる。
【0094】
式Lの化合物は、工程(o’)の反応を介して、工程(q)に関連して先に記述した様式と同じ様式で、式LIの化合物に変換できる。
【0095】
式LIの化合物は、工程(p’)の反応を介して、工程(r)に関連して先に記述した様式と同じ様式で、式LIIの化合物に変換できる。
【0096】
式LIIの化合物は、J.C.S.Perkin I,1980,1555で記述されたようなフェニルアセトンの合成方法を使用することにより、工程工程(q’)の反応を介して、式LIIIの化合物に変換できる。
【0097】
式LIIIの化合物では、そのニトロ基は、従来技術で公知の通常の手順を利用することにより、工程(r’)の反応を介して、アミノ基に還元でき、式LIVの化合物が得られる。
【0098】
式LIVの化合物は、工程(s’)の反応を介して、アミノ基をジアゾ化するのに続いてメルカプト基で置換することにより、式IIの化合物に変換できる。この反応は、従来技術で公知の通常の手順を利用して、実行できる。
【0099】
【化26】

14が1〜2個の炭素原子を有するアルキルである式XLVIIIの化合物(すなわち、次式の化合物)は、反応スキーム11を介して、調製できる:
【0100】
【化27】


【0101】
反応スキーム11では、R14は、上記のとおりである。式XXXIXの化合物は、(t’)の反応工程を介して、メタノールまたはエタノールでエステル化することにより、式XLVIIIの化合物に変換できる。この反応は、触媒(例えば、HSO、TsOHなど)を使用することにより、または脱水縮合剤としてジシクロヘキシルカルボジイミドを使用することにより、いずれかにより、実行できる。工程(t’)の反応を実行するために、このようなエステル化に通常の任意の条件が利用できる。
【0102】
【化28】

(処置方法における使用)
本発明は、インスリン抵抗性症候群および糖尿病(原発性の本態性糖尿病(例えば、I型糖尿病またはII型糖尿病)および続発性の非本態性糖尿病からなる群から選択される状態を有する哺乳動物被験体を処置するための方法を提供し、この方法は、この状態を処置するために有効な、本明細書中に記載される生物学的に活性な薬剤の量を、被験体に投与する工程を包含する。本発明の方法に従って、糖尿病の症状または糖尿病の症状の発生の機会(例えば、アテローム性動脈硬化症、肥満、高血圧、高類脂質血症、脂肪肝疾患、腎症、神経障害、網膜障害、足の潰瘍、および白内障(このような症状の各々は、糖尿病に関係する))は、軽減され得る。本発明はまた、高類脂質血症を処置するための方法を提供し、この方法は、この状態を処置するために有効な、本明細書中に記載される生物学的に活性な薬剤の量を、被験体に投与する工程を包含する。実施例に示されるように、化合物は、高類脂質血症動物における血清トリグリセリドおよび遊離の脂肪酸を減少する。本発明はまた、悪液質を処置するための方法を提供し、この方法は、悪液質を処置するために有効な、本明細書中に記載される生物学的に活性な薬剤の量を、被験体に投与する工程を包含する。本発明はまた、肥満を処置するための方法を提供し、この方法は、この状態を処置するために有効な、本明細書中に記載される生物学的に活性な薬剤の量を、被験体に投与する工程を包含する。本発明はまた、アテローム性動脈硬化症または動脈硬化症から選択される状態を処置するための方法を提供し、この方法は、この状態を処置するために有効な、本明細書中に記載される生物学的に活性な薬剤の量を、被験体に投与する工程を包含する。本発明の活性な薬剤は、被験体が糖尿病またはインスリン抵抗性症候群を有していようといまいと、高類脂質血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化症または動脈硬化症を処置するのに有効である。薬剤は、全身投与の従来の経路のいずれかによって投与され得る。好ましくは、この薬剤は経口投与される。従って、医薬を経口投与用に処方するのが好ましい。本発明に従って用いられ得る投与の他の経路としては、直腸、非経口、注射(例えば、静脈注射、皮下注射、筋肉内注射または腹腔内注射)、または経鼻が挙げられる。
【0103】
本発明の処置の使用および方法の各々のさらなる実施形態は、上記の生物学的に活性な薬剤の実施形態のいずれか1つを投与する工程を包含する。不必要な重複を避けるために、このような薬剤および薬剤の群の各々は、繰り返されないが、これらは、あたかもこれが繰り返されるように、処置の使用および方法のこの説明において援用される。
【0104】
本発明の化合物により扱われる疾患および障害の多くは、2つの広範なカテゴリーに分けられる:インスリン抵抗性症候群および慢性高類脂質血症の結果。糖尿病(持続性高血糖症)自体の非存在下で生じ得る、エネルギー源代謝(fuel metabolism)の調節不全、特に、インスリン抵抗性は、高類脂質血症、アテローム性動脈硬化症、肥満、本態性高血圧、脂肪肝疾患(NASH;非アルコール性脂肪肝炎)、および、特に、癌または全身性の炎症性疾患、悪液質の状況を含む種々の症状と関係する。悪液質はまた、I型糖尿病または後期II型糖尿病の状況で生じ得る。組織のエネルギー源代謝を改善することにより、本発明の活性な薬剤は、本実施例中で動物において実証されるように、インスリン抵抗性と関係する疾患および症状を予防または軽減するために有用である。インスリン抵抗性と関係する徴候および症状のクラスターが、個々の患者において共存し得る一方で、多くの症例において、インスリン抵抗性により影響される多くの生理学的系の脆弱性における個々の差異に起因して、唯一の症状が優性であり得る。それにもかかわらず、インスリン抵抗性は、多くの疾患状態に対する主要な寄与因子であるので、この細胞性不全および分子不全を取扱う薬物は、インスリン抵抗性に起因し得るか、またはこれにより増悪され得る任意の器官系における実際の任意の症状の予防または軽減のために有用である。
【0105】
インスリン抵抗性および膵島による不適切なインスリン同時産生が、十分に重篤である場合、II型真性糖尿病(NIDDM)の発症を規定する、慢性の高類脂質血症が生じる。上に示されるインスリン抵抗性に関係する代謝障害に加えて、高類脂質血症の次の疾患症状がまた、NIDDMを有する患者において生じる。これらとしては、腎症、末梢神経障害、網膜障害、微小血管障害、四肢の潰瘍形成、およびタンパク質の非酵素的グリコシル化の結果(例えば、コラーゲンおよび他の結合組織の損傷)が挙げられる。高血糖症の減弱は、糖尿病のこれらの結果の発症および重篤度を減少させる。本実施例において実証されるように、本発明の活性な薬剤および組成物は、糖尿病における高類脂質血症を減少することを助けるので、これらは、慢性の高類脂質血症の合併症の予防および軽減に有用である。
【0106】
ヒト被験体および非ヒト哺乳動物被験体の両方は、本発明の処置方法に従って処置され得る。特定の被験体のための本発明の特定の活性な薬剤の適切な用量は、当業者による臨床設定において実証され得る。インスリン抵抗性、糖尿病、高類脂質血症、脂肪肝疾患、悪液質、または肥満に関係する疾患の処置のための、ヒトに対する経口投与の場合、薬剤は、一般的に、1mg〜400mgの日用量で投与される(1日に一回または二回投与される)。マウスに対する経口投与の場合、薬剤は、一般的に、体重1kgあたり1〜300mgの薬剤の日用量で投与される。本発明の活性な薬剤は、糖尿病またはインスリン抵抗性症候群における単独療法としてか、またはこれらの型の糖尿病における有用性を有する他の薬物(例えば、インスリン放出薬剤、粗食事性インスリン放出剤、ビグアナイド、またはインスリン自体)の1つ以上と組合わせて、用いられる。このようなさらなる薬物は、標準的な臨床試験に従って投与される。いくつかの場合、本発明の薬剤は、薬物の他のクラスの効力を改善し、より低い(従って、毒性の低い)用量のこのような薬剤が、治療結果を満たすように、患者に投与されることを許容する。代表的な化合物についてヒトにおける確立された安全かつ有効な用量範囲は以下である:メトホルミン 500〜2550mg/日;グリブリド 1.25〜20mg/日;GLUCOVANCE(メトホルミンとグリブリドとの組み合わせ処方) 1.25〜20mg/日のグリブリドおよび250〜2000mg/日のメトホルミン;アトルバスタチン 10〜80mg/日;ロバスタチン 10〜80mg/日;プラバスタチン 10〜40mg/日;ならびにシンバスタチン 5〜80mg/日;クロフィブラート 2000mg/日;ゲムフィブロジル 1200〜2400mg/日、ロジグリタゾン(rosiglitazone) 4〜8mg/日;ピオグリタゾン 15〜45mg/日;アカルボース 75〜300mg/日;レパグリニド(repaglinide) 0.5〜16mg/日。
【0107】
I型真性糖尿病:I型糖尿病を有する患者は、インスリン投与の用量とタイミングの適切な調整を可能にするために、血糖を頻繁にモニタリングをしながら、1日あたり1〜数用量のインスリンの自己投与により、主に、疾患を管理する。慢性の高類脂質血症は、腎症、神経障害、網膜障害、足の潰瘍形成、および若死のような合併症を導き;過剰なインスリン投薬に起因する低血糖症は、認識障害または意識消失を引き起こし得る。I型糖尿病を有する患者は、錠剤形態またはカプセル形態で、単回用量または分割用量のいずれかとして、1〜400mg/日の本発明の活性な薬剤で処置される。予想される効果は、満足な範囲で血糖を維持するために必要とされるインスリンの投与の用量および頻度の減少、ならびに低血糖のエピソードの頻度および重篤度の低下である。臨床的結果は、血糖およびグリコシル化ヘモグロビン(数ヶ月の期間にわたって調整された血糖制御の妥当性の指標)の測定により、ならびに糖尿病の代表的な合併症の低下した頻度および重篤度によりモニターされる。本発明の生物学的に活性な薬剤は、島移植と組合せて投与されて、島移植の抗糖尿病効力を維持することを助ける。
【0108】
II型真性糖尿病:II型糖尿病(NIDDM)を有する代表的な患者は、ダイエットおよびエクササイズのプログラムにより、ならびにメトホルミン、グリブリド、レパグリニド、ロジグリタゾン、またはアカルボースのような医薬(これらの全ては、ある程度の患者における血糖制御において、ある程度の改善を提供するが、疾患の進行に起因する副作用または最終的処置の失敗のないものはない)の摂取により、糖尿病を維持する。島不全は、大部分の患者においてインスリン注射を必要とする、NIDDMを有する患者において長期間生じる。本発明の活性な薬剤での(抗糖尿病医薬のさらなるクラスのあり、またはなしでの)毎日の処置は、血糖制御を改善し、島不全の割合を低下し、そして糖尿病の代表的な症状の頻度および重篤度を低下することが、予想される。さらに、本発明の活性な薬剤は、上昇した血清トリグリセリドおよび脂肪酸を減少し、それにより、心血管疾患(糖尿病患者の死の主な原因)の危険性を低下する。糖尿病について全ての他の治療剤の場合、用量最適化は、要求、臨床効果、および副作用に対する感受性に従って、個々の患者においてなされる。
【0109】
高脂質血症:血液における上昇したトリグリセリドレベルおよび遊離の脂肪酸レベルは、集団の実質的な部分に影響し、そして、アテローム性動脈硬化症および心筋不全症についての重要な危険因子である。本発明の活性な薬剤は、高脂質血症患者において循環するトリグリセリドおよび遊離の脂肪酸を減少するために有用である。高脂質血症の患者はまた、しばしば、上昇した血中コレステロールレベルを有し、上昇した血中コレステロールレベルはまた、心血管疾患の危険性を増加する。HMG−CoAレダクターゼインヒビター(「スタチン」)のようなコレステロール低下薬物は、本発明の薬剤に加えて、必要に応じて、同じ薬学的組成物に組み込んで、高脂質血症の患者に投与され得る。
【0110】
脂肪肝疾患:集団の実質的部分は、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)としても知られている)に罹患しており;NASHは、しばしば、肥満および糖尿病に関係する。肝臓脂肪症(肝細胞と共にトリグリセリドの液滴が存在する)は、肝臓を、繊維症および肝硬変を導き得る慢性の炎症(炎症白血球の浸潤として、生検サンプルにおいて検出される)になりやすくする。脂肪肝疾患は、一般的に、肝細胞損傷の指標として働く、トランスアミナーゼALTおよびトランスアミナーゼASTのような肝臓特異的酵素の上昇した血清レベルの観察により、ならびに、しばしば、生検を必要とする確定診断を通じた、肝臓の領域における疲労および疼痛を含む症状の提示により、検出される。予想される利益は、肝臓炎症および脂肪含有量の低下であり、このことは、繊維症および肝硬変に対するNASHの進行の減衰、停止、または逆行を生じる。
【0111】
(薬学的組成物)
本発明は、本明細書中に記載されるような生物学的に活性な薬剤および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物のさらなる実施形態は、上記の生物学的に活性な薬剤の実施形態のいずれか1つを含む。不必要な重複を避けるために、このような薬剤および薬剤の群の各々は繰り返されないが、これらは、あたかもこれが繰り返されるように、薬学的組成物のこの説明において援用される。
【0112】
好ましくは、組成物は、例えば、錠剤、コーティングした錠剤、糖衣錠、硬質ゼラチンカプセルまたは軟質ゼラチンカプセル、溶液、エマルジョン、または懸濁液の形態で、経口投与に適用される。一般的に、経口組成物は、1mg〜400mgのこのような薬剤を含む。1日あたり1または2錠の錠剤、コーティングした錠剤、糖衣錠、またはゼラチンカプセルを嚥下することが被験体に都合が良い。しかし、組成物はまた、例えば、座剤の形態での、直腸、例えば、注射溶液の形態での、非経口、または経鼻を含む、全身投与の任意の他の従来の手段による投与に適用され得る。
【0113】
生物学的に活性な化合物は、薬学的組成物の製造のための、薬学的に不活性な、無機または有機のキャリアと共に処理され得る。ラクトース、コーンスターチもしくはそれらの誘導体、滑石、ステアリン酸もしくはその塩などが、例えば、錠剤、コーティングされた錠剤、糖衣錠、および硬質ゼラチンカプセルのためのキャリアとして、用いられ得る。軟質ゼラチンカプセルに適切なキャリアは、例えば、植物油、蝋、脂肪、半固体および液体のポリオールなどである。しかし、活性成分の性質に依存して、軟質ゼラチンカプセルの場合、軟質ゼラチン自体以外のキャリアは、通常、必要とされない。溶液およびシロップの製造に適切なキャリアは、例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油などである。座剤に適切なキャリアは、例えば、天然油または硬化油、蝋、脂肪、半固体または液体のポリオールなどである。
【0114】
さらに、薬学的組成物は、保存剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、風味料、浸透圧を変更するための塩、緩衝剤、コーティング剤、または酸化防止剤を含み得る。これらはまた、本発明の化合物の効果の基礎を成すもの以外の機構を通じて作用する、さらに他の治療的に価値のある物質(特に、抗糖尿病剤または抗高脂質血症剤)を含み得る。単一処方において本発明の化合物と優位に組合され得る薬剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ビグアニド(例えば、メトホルミン)、インスリン放出剤(例えば、スルホニルウレアインスリン放出剤であるグリブリド、および他のスルホウレアインスリン放出剤)、コレステロール低下薬物(例えば、「スタチン」)、HMG−CoAレダクターゼインヒビター(例えば、アトロバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンおよびシンバスタチン)、PPAR−αアンタゴニスト(例えば、クロフィブラートおよびゲムフィブロジル)、PPAR−γアゴニスト(例えば、チアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン))、α−グルコシダーゼインヒビター(例えば、アカルボース)(これは、デンプン消化を阻害する)、および食事性インスリン放出剤(例えば、レパグリニド)。単回処方において本発明の化合物と組み合わされた補助薬剤の量は、標準的な臨床試験において使用される用量に従う。特定の代表的な化合物について、確立された安全かつ有効な用量の範囲は、上に示される。
【0115】
本発明は、本明細書中に記載される本発明を例示するが、限定するものではない以下の実施例を参照することによってより理解される。
【実施例】
【0116】
(実施例1:4−(4−[(2,6−ジメチルベンジル)−チオ]−フェニル)−4−オキソ酪酸)
【0117】
【化29】

(工程A:4’−メルカプトアセトフェノンの調製)
WO 94/17054で記述された手順に従って、合成した。
【0118】
(工程B:塩化2,6−ジメチルベンジルの調製)
2,6−ジメチルベンジルアルコールの撹拌溶液(9.94g、73mmol)に、室温で、塩化チオニル(81.55g、685mmol)を加えた。その反応混合物を6時間撹拌し、減圧下にて濃縮し、そしてさらに精製することなく、使用した。
【0119】
(工程C:4−[(2,6−ジメチルベンジル)−チオ]アセトフェノンの調製)
NaH(オイル中で60%、1.7g、51.1mmol)の乾燥THF(20mL)および乾燥DMF(5mL)撹拌溶液に、4’−メルカプトアセトフェノン(工程A、5.18g、34mmol)を加え、続いて、塩化2,6−ジメチルベンジル(工程B、4.39g、28.4mmol)(これは、乾燥THF(5mL)で希釈した)を滴下した。その反応混合物を、室温で、12時間撹拌し、0℃で、水でゆっくりとクエンチした。その有機層を酢酸エチルで抽出し、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(これは、酢酸エチル:ヘキサン(1:4)を使用する)で精製して、表題化合物を得た。
【0120】
【化30】

(工程D:4−(4−[(2,6−ジメチルベンジル)−チオ]−フェニル)−4−オキソ酪酸エチルの調製)
4−[(2,6−ジメチルベンジル)−チオ]アセトフェノン(工程C、0.693g、2.57mmol)の乾燥THF(10mL)およびDMPU(3mL)撹拌溶液に、−60℃で、アルゴン下にて、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1.0M、3mL)を加えた。−60℃で10分間撹拌した後、ブロモ酢酸エチル(4.51g、3.8mmol)を迅速に加えた。その反応混合物をさらに10分間撹拌し、次いで、4時間にわたって、室温まで温めた。この粗混合物をEtOAcに吸収させ、そして水およびブラインで洗浄した。その水相をEtOAcでもう1回抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮し、そしてシリカゲルカラム上のフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン、1:4)で精製して、表題化合物を得た。
【0121】
【化31】

(工程E:4−(4−[(2,6−ジメチルベンジル)−チオ]−フェニル)−4−オキソ酪酸の調製)
4−(4−[(2,6−ジメチルベンジル)−チオ]−フェニル)−4−オキソ酪酸エチル(工程D、0.680g、2mmol)の無水エタノール(20mL)溶液を、室温で、1N NaOH(3mL)で処理した。その反応混合物を3時間撹拌し、1M HClで酸性化し、そして濃縮した。その残留物をクロロホルムに吸収させ、そして1M HCl、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルカラム上のフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール(95:5)、酢酸でスパイクした)で精製すると、灰白色固形物として、表題化合物が得られた。
【0122】
【化32】

(実施例2:db/dbマウスにおける化合物CSの抗糖尿病効果)
C57BL/Ksola(db/db)マウスは、摂食亢進、肥満、高トリグリセリド血症および糖尿病をもたらすレプチンシグナル伝達における欠陥を有する。さらに、C57BL/6Jバックグラウンドのob/obマウスと異なり、C57BLKSバックグラウンドのdb/dbマウスは、インスリン産生ランゲルハンス島細胞が欠損しており、高インスリン血症(末梢インスリン抵抗性を伴う)から低インスリン血症性糖尿病までの進行を生じる。
【0123】
雄性肥満(db/db同型接合体)C57BL/Ksolaマウス(約8週齢)を、Jackson Labs(Bar Harbor,ME)から入手し、そして体重(40〜45g)および血清グルコースレベル(給食状態で≧300mg/dl)が群の間で同様になるように、7匹の動物群に各動物を仕分けた。最少7日を、到着後の順応のために与えた。全ての動物を、制御温度(23℃)、相対湿度(50±5%)および照明(7:00〜19:00)下に維持し、そして標準的な餌(Formulab Diet 5008,Quality Lab Products,Elkridge,MD)および水に自由にアクセスさせた。
【0124】
マウスの群に、17日間、ビヒクル(1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)または化合物CSの経口用量を毎日与えた。処置期間の終わりに、血液試料を集め、そして血清グルコース、トリグリセリドおよび遊離脂肪酸を測定した。
【0125】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的に活性な薬剤であって、該薬剤は、以下の式:
【化1】

の化合物、またはRが水素である場合、該化合物の薬学的に受容可能な塩であって、ここで、
nは、1または2であり;
mは、0または1であり;
qは、0または1であり;
tは、0または1であり;
は、1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、ハロ、1〜3個の炭素原子を有するアルキル、または1〜3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
Aは、非置換フェニルであるか、または、以下:ハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される、1個もしくは2個の基で置換されたフェニルであるか;あるいは、3〜6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、該シクロアルキルは、非置換であるか、または1個もしくは2個の環炭素原子が、独立して、メチルもしくはエチルで一置換されている、シクロアルキルであるか;あるいは、N、SおよびOから選択される1個もしくは2個の環へテロ原子を有する5員もしくは6員のヘテロ芳香族環であって、該へテロ芳香族環が、式Iの化合物の残りの部分に環炭素により共有結合されている、ヘテロ芳香族環であり;そして
Xは−CH−であり、Qは−ORであり、そしてRはメチルまたはエチルであるか;あるいはXは−CHCR1213−またはCHCH(NHAc)−であって、R12およびR13の各々が、独立して、水素またはメチルであり、QはORであり、そしてRは水素または1〜7個の炭素原子を有するアルキルであるか;あるいは、Xは−CHCH−であり、QはNR1011であって、R10およびR11の一方が水素、1〜3個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシであり、他方は水素である、薬剤。
【請求項2】
nが、1であり;qが、0であり;tが、0であり;Rが、水素であり;Aが、非置換フェニルであるか、または、以下:ハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される、1個もしくは2個の基で置換されたフェニルである、請求項1に記載の生物学的に活性な薬剤。
【請求項3】
Aが2,6−ジメチルフェニルである、請求項2に記載の生物学的に活性な薬剤。
【請求項4】
4−(4−[(2,6−ジメチルベンジル)−チオ]−フェニル)−4−オキソ酪酸である、請求項3に記載の生物学的に活性な薬剤。
【請求項5】
インスリン抵抗性症候群、ならびにI型糖尿病およびII型糖尿病を含む糖尿病からなる群から選択される状態の処置のため;あるいはアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、肥満症、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、ネフロパシー、神経障害、網膜症、足の潰瘍または糖尿病と関連した白内障の処置または進行機会の減少のため;あるいは高脂血症、悪液質および肥満症からなる群から選択される状態の処置のための医薬の製造における、生物学的に活性な薬剤の使用であって、ここで、該薬剤は、以下の式:
【化2】

の化合物、またはRが水素である場合、該化合物の薬学的に受容可能な塩であって、ここで、
nは、1または2であり;
mは、0または1であり;
qは、0または1であり;
tは、0または1であり;
は、1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、ハロ、1〜3個の炭素原子を有するアルキル、または1〜3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
Aは、非置換フェニルであるか、または、以下:ハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される、1個もしくは2個の基で置換されたフェニルであるか;あるいは、3〜6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、該シクロアルキルは、非置換であるか、または1個もしくは2個の環炭素原子が、独立して、メチルもしくはエチルで一置換されている、シクロアルキルであるか;あるいは、N、SおよびOから選択される1個もしくは2個の環へテロ原子を有する5員もしくは6員のヘテロ芳香族環であって、該へテロ芳香族環が、式Iの化合物の残りの部分に環炭素により共有結合されている、ヘテロ芳香族環であり;そして
Xは−CH−であり、Qは−ORであり、そしてRはメチルまたはエチルであるか;あるいはXは−CHCR1213−または−CHCH(NHAc)−であって、R12およびR13の各々が、独立して、水素またはメチルであり、QはORであり、そしてRは水素または1〜7個の炭素原子を有するアルキルであるか;あるいは、Xは−CHCH−であり、QはNR1011であって、R10およびR11の一方が水素、1〜3個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシであり、他方は水素である、使用。
【請求項6】
nが、1であり;qが、0であり;tが、0であり;Rが、水素であり;Aが、非置換フェニルであるか、または、以下:ハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される、1個もしくは2個の基で置換されたフェニルである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
Aが2,6−ジメチルフェニルである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記生物学的に活性な薬剤が、4−(4−[(2,6−ジメチルベンジル)−チオ]−フェニル)−4−オキソ酪酸である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の使用であって、前記医薬が経口投与のために処方される、使用。
【請求項10】
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪質液、肥満症、アテローム性動脈硬化症および動脈硬化からなる群から選択される状態にある哺乳動物の被験体を処置するための方法であって、該方法は、ある量の生物学的に活性な薬剤を該被験体に投与する工程を包含し、ここで、該薬剤は、以下の式:
【化3】

の化合物、またはRが水素である場合、該化合物の薬学的に受容可能な塩であって、ここで、
nは、1または2であり;
mは、0または1であり;
qは、0または1であり;
tは、0または1であり;
は、1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、ハロ、1〜3個の炭素原子を有するアルキル、または1〜3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
Aは、非置換フェニルであるか、または、以下:ハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される、1個もしくは2個の基で置換されたフェニルであるか;あるいは、3〜6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、該シクロアルキルは、非置換であるか、または1個もしくは2個の環炭素原子が、独立して、メチルもしくはエチルで一置換されている、シクロアルキルであるか;あるいは、N、SおよびOから選択される1個もしくは2個の環へテロ原子を有する5員もしくは6員のヘテロ芳香族環であって、該へテロ芳香族環が、式Iの化合物の残りの部分に環炭素により共有結合されている、ヘテロ芳香族環であり;そして
Xは−CH−であり、Qは−ORであり、そしてRはメチルまたはエチルであるか;あるいはXは−CHCR1213−または−CHCH(NHAc)−であって、R12およびR13の各々が、独立して、水素またはメチルであり、QはORであり、そしてRは水素または1〜7個の炭素原子を有するアルキルであるか;あるいは、Xは−CHCH−であり、QはNR1011であって、R10およびR11の一方が水素、1〜3個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシであり、他方は水素である、方法。
【請求項11】
nが、1であり;qが、0であり;tが、0であり;Rが、水素であり;Aが、非置換フェニルであるか、または、以下:ハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される、1個もしくは2個の基で置換されたフェニルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
Aが2,6−ジメチルフェニルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記生物学的に活性な薬剤が、4−(4−[(2,6−ジメチルベンジル)−チオ]−フェニル)−4−オキソ酪酸である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法であって、前記被験体がヒトである、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、1日あたり1mgから400mgまでの量で薬剤が経口投与される、方法。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法であって、前記状態がインスリン抵抗性症候群またはII型糖尿病である、方法。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法であって、前記処置が糖尿病の症状または糖尿病の症状が進行する機会を減少させ、ここで、該症状は、糖尿病と関連した、アテローム性動脈硬化症、肥満症、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、ネフロパシー、神経障害、網膜症、足の腫瘍および白内障からなる群から選択される、方法。
【請求項18】
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化からなる群から選択された状態の処置において使用するための、経口投与に適応させた薬学的組成物であって、該薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアおよび1mgから400mgまでの生物学的に活性な薬剤を含有し、
ここで、該薬剤は、以下の式:
【化4】

の化合物、またはRが水素である場合、該化合物の薬学的に受容可能な塩であって、ここで、
nは、1または2であり;
mは、0または1であり;
qは、0または1であり;
tは、0または1であり;
は、1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、ハロ、1〜3個の炭素原子を有するアルキル、または1〜3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
Aは、非置換フェニルであるか、または、以下:ハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される、1個もしくは2個の基で置換されたフェニルであるか;あるいは、3〜6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、該シクロアルキルは、非置換であるか、または1個もしくは2個の環炭素原子が、独立して、メチルもしくはエチルで一置換されている、シクロアルキルであるか;あるいは、N、SおよびOから選択される1個もしくは2個の環へテロ原子を有する5員もしくは6員のヘテロ芳香族環であって、該へテロ芳香族環が、式Iの化合物の残りの部分に環炭素により共有結合されている、ヘテロ芳香族環であり;そして
Xは−CH−であり、Qは−ORであり、そしてRはメチルまたはエチルであるか;あるいはXは−CHCR1213−または−CHCH(NHAc)−であって、R12およびR13の各々が、独立して、水素またはメチルであり、QはORであり、そしてRは水素または1〜7個の炭素原子を有するアルキルであるか;あるいは、Xは−CHCH−であり、QはNR1011であって、R10およびR11の一方が水素、1〜3個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシであり、他方は水素である、薬学的組成物。
【請求項19】
nが、1であり;qが、0であり;tが、0であり;Rが、水素であり;Aが、非置換フェニルであるか、または、以下:ハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される、1個もしくは2個の基で置換されたフェニルである、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
Aが2,6−ジメチルフェニルである、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記生物学的に活性な薬剤が、4−(4−[(2,6−ジメチルベンジル)−チオ]−フェニル)−4−オキソ酪酸である、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
経口投薬形態である、請求項18〜21のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
本願明細書において実質的に記載されている発明。

【公表番号】特表2007−502824(P2007−502824A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523964(P2006−523964)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/026561
【国際公開番号】WO2005/018628
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(501056821)ウェルスタット セラピューティクス コーポレイション (32)
【Fターム(参考)】