説明

仮想実験とそのプログラム

【課題】スプレー処理設備のノズルから噴射されるスプレー液によって、被処理物上に累積される処理液の液厚分布情報を仮想実験によって算出する。
【解決手段】スプレーノズルの仕様データ、被処理物のサイズと搬送速度についてのデータを入力し、サンプリング時点ごとに、ノズルの全体から噴射されるスプレー液が搬送される被処理物上に形成する噴射領域を計算し、所定時間の間に受ける噴射領域に対応するスプレー液の液厚分布データを算出し、この液厚分布データを仮想実験時間について累積し、実験結果とする。なお各ノズルが作る噴射領域に対応する液厚のデイジタル値は一定値とし、複数のノズルが作る噴射領域が重なる領域については液厚の重複レベルに応じてこの一定値を積算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー処理設備に設けられた複数のノズルから噴射されるスプレー液を搬送される被処理物で受け止め、この被処理物が受けるスプレー液の累積した液厚の分布情報を計算するという仮想実験を実行する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばプリント基板製造では様々なスプレー処理工程を有する。プリント基板製造工程における回路形成工程について説明する。この例ではプリント基板の2層基板(両面板)を製造するものとする。
【0003】
(1)前工程として、エポキシ樹脂やポリイミド等に代表される絶縁材の表裏に銅箔を呈する基板を用意する。
【0004】
(2)基板上の銅箔を所望の厚さにハーフエッチングするため、基板表裏にノズルから噴射するハーフエッチング液をスプレーする。
【0005】
(3)基板の清浄化およびエッチングレジストと基板の密着性を向上させるための前処理として、ノズルから基板に前処理液をスプレーし銅箔上に均一な粗化面を得る。
【0006】
(4)エッチングレジストとなるドライフィルムレジストを基板表裏にラミネートする。
【0007】
(5)フォトマスクを介して紫外光を基板に露光し、レジストの露光部を得る。
【0008】
(6)現像工程として、ノズルから現像液を基板にスプレー処理して未露光部を溶解除去し、露光部で構成されるレジストパターンを形成する。
【0009】
(7)エッチング工程として、ノズルからエッチング液を基板表裏にスプレー処理し、レジストパターンから露出している銅箔をエッチング除去し、配線形状パターンを形成する。
【0010】
(8)配線形状パターン上のドライフィルムレジストを除去するために、ノズルから剥離液を基板表裏にスプレー処理し、目的とする配線を得る。
【0011】
(9)検査工程として、基板の表裏をラインカメラにより撮像し、設計規格に基づいて不良判定を行う。
【0012】
なお(1)と(2)の間、(2)と(3)の間、(3)と(4)の間、(6)と(7)の間、(7)と(8)の間、および(8)と(9)の間では、それぞれ水洗等による基板の洗浄処理をスプレー処理によって行う。
【0013】
上記工程(1)〜(3)、(6)〜(8)および上記の洗浄工程で使用されるスプレー処理設備は、例えばプリント基板などの被処理物が搬送ロールによって表裏を支持され、所定の搬送速度で搬送される。被処理物から所定の高さでまた搬送方向に沿って所定のノズルピッチで配置された複数のノズルから所望の処理液が一定の噴角をもって噴射される。各ノズルへの処理液はノズルを取り付ける配管によって供給される。噴射された処理液が前後工程へ持ち込む、または持ち出すことを防止するため、スプレー処理設備には液切ロールやエアースリットを設ける場合が多い。
【0014】
このようなスプレー処理設備において、ノズルの揺動方式として、振り子揺動方式と水平揺動方式が用いられる。被処理物の搬送方向をx方向とし、水平面をx−y面とし、垂直方向をz方向とする。振り子揺動方式においては、各ノズルは、y−z面上を所定の揺動角で揺動するので、配管から供給される処理液は、各ノズルを介してこの角度まで振り子揺動しながら噴射される。水平揺動方式においては、各ノズルは、y方向に所定の揺動幅で移動するので、処理液は各ノズルを介してこの揺動幅までy方向に揺動されながら噴射される。
【0015】
上記のスプレー処理設備の各ノズルは、被処理物の上、すなわち移動するx−y面上に一定の振幅と揺動周期をもつ周期運動の波形をした軌跡を描く。ここで振幅は揺動角、揺動幅又はこれら両者によって決まるノズル中心線のy方向最大移動量を注目するx−y面に投影した量である。またx方向の揺動周期は、ノズル揺動の一周期の間に被処理物が移動した距離である。
【0016】
ノズルと被処理物の動きによって、各ノズルは搬送される被処理物上に周期運動の波形軌跡を描くので、設備全体のノズルが描く軌跡は、各ノズルの描く軌跡を重ね合わせたものとなる。この結果として、被処理物にはノズル軌跡の密度の高い密部と密度の低い疎部とが生じる。例えばプリント基板製造工程における回路形成工程では、このような密部と疎部により、配線幅が規格外の配線や間隙幅が規格外の配線が生じる。このようなスプレー液の密度の不均一を是正しスプレー処理を均一にするために、スプレー処理設備のノズルの軌跡解析や流体解析によるスプレー処理設備の適正化が試みられている。
【0017】
なおこの種の技術としては、例えば特開平5−59576号公報(特許文献1)に記載された技術などがある。
【0018】
【特許文献1】特開平5−59576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、従来のノズルの軌跡解析は、実際に噴射された処理液が被処理物上に描く噴射形状を無視したり、処理液が被処理物に届くのを妨げる搬送ロールの影響を無視している。また、軌跡解析結果からノズルの干渉によって被処理物上に生じる疎部および密部を視覚的に判定するしかなく、これらの不均一部を定量的に判定するのが困難である。さらに流体解析等は多くの場合、局所的な解析であり液晶基板やプラズマディスプレイ基板等に代表される大型基板上に噴射された処理液の面内分布をマクロ的に得るには困難な場合が多い。また、揺動方式が限定されること、および個々のノズルがもつ各種仕様データを正確に反映できない等の問題がある。さらに軌跡解析には蓄積された情報と専用の演算処理装置および専門の操作者が必要であった。また、これらの解析は多くの場合、エッチングや現像と言った工程に限定されており、既存のスプレー処理設備における平面内分布の解析が主であり、解析結果や検査工程の検査結果から最適な設備仕様を導出する等のフィードバックが困難である。
【0020】
本発明の目的は、被処理物上に累積される処理液の液厚分布情報を仮想実験によって算出することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、この仮想実験によりスプレーノズルの仕様を最適化することにある。
【0022】
さらに本発明の他の目的は、この仮想実験の結果と被処理物の検査工程の検査結果からスプレー処理設備の異常を推定し、不良発生ポテンシャルを予測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、計算機を用いる仮想実験であり、スプレーノズルの仕様データ、被処理物のサイズと搬送速度についてのデータを入力し、サンプリング時点ごとに、ノズルの全体から噴射されるスプレー液が搬送される被処理物上に形成する噴射領域を計算し、所定時間の間に受ける噴射領域に対応するスプレー液の液厚分布データを算出し、この液厚分布データを仮想実験時間について累積し、実験結果とする。なお各ノズルが作る噴射領域に対応する液厚のデイジタル値は一定値とし、複数のノズルが作る噴射領域が重なる領域については液厚の重複レベル(液厚レベル)に応じてこの一定値を積算する。
【0024】
また本発明は、仮想実験結果として得られた累積された液厚分布データについて、液厚レベルごとの被処理物上の単位領域の度数分布に基づいて液厚レベルの標準偏差値ならびに平均値とそのレンジを計算する。
【0025】
また本発明は、スプレー処理設備によって処理された被処理物の検査結果として被処理物上の不良個所の位置を示すデータを入力し、仮想実験の結果として得られた累積された液厚分布データから液厚レベルの密部又は疎部の位置データを抽出し、不良個所の位置を示すデータと密部又は疎部の位置データとを比較する。
【0026】
さらに本発明は、ノズルの仕様データを変更するような複数組の仕様データを入力し、これら仕様データの各組について各々の上記標準偏差値ならびに平均値とそのレンジを計算する。また、既存の設備情報を入力し既存設備における液厚レベルの平均値とそのレンジを閾値とし、計算された標準偏差値が最小となるかまたは、液厚レベルの平均値とそのレンジが閾値を満足する(あるいは標準偏差値が最小で且つ液厚レベルの平均値が閾値を満足する)仕様データの組を特定する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、この仮想実験によって、被処理物上に形成されるスプレー液の疎部と密部を定量的に把握できる。またスプレーノズルの各種仕様データの変形の各々について上記の標準偏差値ならびに平均値とそのレンジを比較することにより、スプレー処理設備を最適化することができる。さらにこの仮想実験結果と検査結果のデータを比較することにより、検査不良の原因を追求することができるとともに、この仮想実験により不良発生ポテンシャルを予測することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0029】
まず図1および図2を用いて本実施形態の仮想実験の概念について説明する。図1(a)は、スプレー処理設備に設けられたノズル3から一定時間の間に噴射された処理液が被処理物306に到達する範囲(噴射領域)を示し、図1(b)は、被処理物306上に形成される処理液の液厚分布410の垂直断面を示す。図1(b)に示すように、1個のノズル3によって被処理物306上に形成される液厚分布410は、均一の分布をもつものと仮定する。
【0030】
図2(a)は、3本のノズル3から一定時間の間に噴射された処理液が被処理物306に到達する範囲を示し、図2(b)は、被処理物306上に形成される処理液の液厚分布410を示す。3本のノズル3から噴射された処理液が干渉し、重ね合わせの原理から液厚分布410は、図2(b)に示すものとなると想定される。図2(c)は、図1(b)の液厚分布410の平面図を示し、図2(d)は、図2(b)の液厚分布410の平面図を示す。1本のノズル3が噴射する処理液の液厚分布410の直径が噴径と呼ばれる。
【0031】
図2(e)は、ノズル3が1本の場合の液厚分布410の平面図、図2(f)は、ノズル3が2本の場合の液厚分布410の平面図を示す。図2(g)は、図2(e)の液厚分布410を複数の単位領域に細分化し、一定値をもつディジタル数値で表現したもの、図2(h)は、図2(f)の液厚分布410を複数の単位領域に細分化し、ディジタル数値で表現したものである。図で白の領域、灰色の領域および黒の領域には、液厚に対応してそれぞれ0,1,2のディジタル数値が与えられる。このように仮想実験の結果として、被処理物306の水平面上には処理液の密部315と疎部316が形成され、各々の領域の液厚レベルがディジタル数値で表現される。
【0032】
実際にはノズル3が揺動し、被処理物306が移動するので、被処理物306上に噴射される処理液の液厚分布410は時間の経過に従って変化する。図3は、ノズル3および被処理物306の動きに伴ってノズル3の中心線が被処理物306の水平面上に描く軌跡を示す図である。複数のノズル3がx方向のノズルピッチ303およびy方向のノズルピッチ311で配列されている。1本のノズル3がその揺動と被処理物306の移動に伴ってx方向に移動する水平面上に描く軌跡は、振幅313と揺動周期314をもつ周期運動の軌跡となる。すべてのノズル3が移動する被処理物306の水平面上に描く軌跡は、各ノズル3の軌跡をすべて重ね合わせたものとなる。
【0033】
仮想実験装置は、CPU、メモリ、他の記憶装置、入力装置、表示装置およびプリンタを備えた計算機ハードウェアと、このメモリに格納されCPUによって実行される仮想実験プログラムによって実現される。
【0034】
図4は、仮想実験プログラムの処理手順を示すフローチャートである。まず仮想実験プログラム(以下プログラムと略称する)は、入力装置又は記憶装置から実験の基礎データとなる装置データ及び製品データを入力し、計算機のメモリに記憶する(ステップ401)。装置データは、x方向ノズルピッチ、y方向ノズルピッチ、揺動幅、ノズル高さ、搬送速度、噴射角度(噴角)、揺動周期などの項目から成る。なおノズルの仕様データというとき、ノズルの配置仕様、揺動仕様および噴射角度仕様を少なくとも含むものとする。また仮想実験条件を変更するために、1つの項目に複数のデータを与えてもよい。製品データは、被処理物306のx方向サイズ幅およびy方向サイズ幅の項目から成る。
【0035】
なお装置データとして、被処理物の搬送速度および方向、搬送ロール位置間隔、搬送ロール形状、搬送ロールサイズ、スプレーポンプ容量、被処理物搬送面からのノズル高さ、ノズル揺動方法、ノズル揺動ピッチ、ノズル揺動周期、ノズルの2次元位置、ノズル形式、ノズル噴射流量形状、ノズル流量分布、ノズル噴角、処理液物性、などを含んでもよい。また製品データとして、被処理物のサイズ、製品領域、製品割付位置、などを含んでもよい。
【0036】
次にプログラムは、入力データから仮想実験条件を作成する(ステップ402)。仮想実験条件は、装置データ及び製品データの各項目データの組合せを設定する仮想実験モデルである。仮想実験条件は、項目データのすべての組合せの数だけ作成される。
【0037】
次にプログラムは、各仮想実験条件について、仮想的に各ノズルから被処理物306上に処理液を噴射し、各ノズルが被処理物306上に形成する液厚に対応するディジタル数値を複数のノズルから噴射される処理液が重ね合わされる量だけ積算して被処理物306上の液厚分布を算出する仮想実験を行う(ステップ403)。仮想実験の詳細手順については後述する。
【0038】
次にプログラムは、算出された液厚分布情報をメモリや他の記憶装置に保存する(ステップ404)。またプログラムは、この液厚分布情報から各液厚レベルごとに被処理物306の微小領域(単位領域)の度数分布を求め、(数1)により液厚レベルの標準偏差値を計算する。また(数2)により液厚レベルの平均値を計算する。さらに、(数3)に示す通り、χの最小値と(数2)で得られた液厚レベルの平均値の差分の絶対値が、χの最大値と液厚レベルの平均値の差分の絶対値よりも大きい場合は、χの最小値と液厚レベルの平均値の差分の絶対値をレンジとする。逆の場合は、χの最大値と液厚レベルの平均値の差分の絶対値をレンジとする。平均値とそのレンジを閾値として用いる場合に、閾値は、平均値±レンジのように表現できる。
【0039】
【数1】

【0040】
【数2】

【0041】
【数3】

【0042】
ここでχはi番目の液厚レベルであり、ディジタル数値としてはiが当てられる。iは、0≦i≦最大液厚レベルの整数である。nは対象とする被処理物306領域内でいずれかの液厚レベルとなる単位領域の総数である。被処理物306上の液厚分布をカラー表示するとき、各液厚レベルを表示色の色調に対応させて表示するのが便利なため、液厚レベルを色調とも呼んでいる。
【0043】
ここで算出された標準偏差値は、液厚レベルのばらつきを示しており、この値がより小さな値をとれば被処理物306の水平面分布がより均一化されていると考えることができる。また算出された平均値は液厚レベルの平均を示しており、算出されたレンジは液厚レベルの範囲を示す。予め仮想実験で算出した既存設備のデータに基づく液厚レベルの平均値とそのレンジを閾値とし、その他の設備データに基づく仮想実験結果がこの閾値を満足すれば、仮想実験が既存設備と同レベルの機能を果たすと考えることが出来る。
【0044】
プログラムは、これら度数分布及び標準偏差値ならびに平均値とレンジを装置データ、製品データと共にメモリや他の記憶装置に保存する。
【0045】
次にプログラムは、入力データから仮想実験の目的が不良解析か装置開発かを判定し(ステップ405)、不良解析の場合にはステップ406へ行き、装置開発、装置改造の場合にはステップ407へ行く。
【0046】
ステップ406でプログラムは、入力される検査結果データと仮想実験の結果である液厚分布情報とを比較し、不良解析および不良ポテンシャルの予測を行う(ステップ406)。
【0047】
図5は、検査工程で検出された配線基板の配線不良を説明する図である。検査基板206上に配線ピッチ201で配置された配線15は、設計規格に基づいて配線幅203や間隙205が検査される。この例は、検査基板206に配線幅規格外の配線202や間隙幅規格外の配線204が生じていることを示している。
【0048】
プログラムは、検査データとして被処理物306上の不良内容とその位置を示す(x,y)座標値を入力し、仮想実験の液厚分布情報から抽出した処理液の密部又は疎部の位置を示す(x,y)座標値と比較する。製品に生じる不良は、単一のスプレー処理工程の結果とは限らず、複数のスプレー処理工程の複合した結果である可能性がある。この場合に、各スプレー処理工程について仮想実験を行って液厚分布情報を算出し、処理液の密部又は疎部の座標位置と実際の不良の座標位置との間の距離Δdを求める。このΔdが最も小さい値をとるスプレー処理工程又は装置を不良発生原因と推定することができる。また各装置のいずれかのノズルが欠落したものとして仮想実験を行って液厚分布情報を算出し、処理液の密部および疎部のデータを抽出すれば、どの装置のどのノズルが目詰まりを起こしたとき、不良のポテンシャルが高いかを特定することができる。
【0049】
ステップ407でプログラムは、仮想実験を継続するか、処理終了するかを判定する(ステップ407)。ここでの判定基準はケースによって異なる。ステップ402で設定した仮想実験条件のすべてについて仮想実験したとき、処理終了としてもよい。あるいはステップ404で求めた標準偏差値が所定値より大きい場合、または液厚レベルの平均値とそのレンジが閾値に満たない場合に、さらに実験条件を変更して仮想実験を継続してもよい。
【0050】
処理継続の場合、プログラムは、ステップ401で与えた基礎データの一部を変更する実験条件変更を行い(ステップ409)、ステップ402に戻って上記処理を繰り返す。
【0051】
処理終了の場合、プログラムは、以上の処理で得られた結果を表示装置やプリンタに出力する(ステップ408)。プログラムは、ステップ404でデータを保存した液厚分布情報、度数分布、標準偏差値、装置データ、製品データ、ステップ406で入力した検査結果データを出力する。このとき被処理物306領域の液厚分布状況を示すx−y平面図を図示し、液厚レベルを対応する色調で表示すると視覚的に分かり易い図面となる。また被処理物306の3次元立体図を作成し、各液厚レベルのディジタル数値を高さ成分として表現し、各液厚レベルを対応する色調で出力してもよい。さらにこの3次元立体図をy−z面で切断して表示するy−z断面図を出力してもよい。
【0052】
図6は、ステップ403の仮想実験の詳細処理手順を示すフローチャートである。まずプログラムは、最初の(次の)仮想実験条件を選択する(ステップ501)。次にプログラムは、仮想実験総時間を算出する(ステップ502)。仮想実験総時間は、被処理物306のx方向サイズと搬送時間、および各ノズルのx位置から計算できる。例えば被処理物306の先端が最初に出会うノズル群の噴射を受けてから被処理物306の後端が最後にノズル群の噴射を受けるまでの時間である。
【0053】
次にプログラムは、サンプリング間隔(Δt)を算出し、経過時間をΔtに設定する(ステップ503)。Δtは、仮想実験総時間、被処理物306の搬送速度、必要とする仮想実験の精度などから決定される。次にプログラムは、被処理物306の対象とする平面領域のメッシュ、すなわち単位領域の縦横サイズ(Δx,Δy)を算出する(ステップ504)。(Δx,Δy)は、被処理物306のx方向サイズ、y方向サイズ、必要とする仮想実験の精度などから決定される。なおプログラムは、メモリ上に「単位領域の総数×ディジタル数値の最大データサイズ」の大きさをもつバッファを設ける。バッファは表バッファと裏バッファの2面が設けられる。表バッファは、それまでの仮想実験の間に各単位領域が受け取った処理液の積算された液厚レベルのディジタル数値を格納する。裏バッファは、直近のΔt秒間に各単位領域が受け取った処理液の液厚レベルを格納する。表バッファの各単位領域のディジタル値の初期値は0とする。
【0054】
次にプログラムは、Δt秒後の全ノズルの中心線の座標位置(x,y)を算出し(ステップ505)、次いでΔt秒後の全ノズルの被処理物306が置かれる平面上の噴径(噴射領域)を算出する(ステップ506)。被処理物306が載る平面上の噴射領域は、ノズル高さと噴射角度から容易に計算できる。振り子揺動方式の場合には、各ノズルは、y−z面上を所定の揺動角で揺動するので、その時点の揺動角をもつノズル3が噴射する処理液の円錐体を被処理物306が載る平面で切り取った楕円領域が噴射領域となる。次にプログラムは、被処理物306の縦横サイズと搬送速度からΔt秒後の被処理物306の座標位置(x,y)を算出する(ステップ507)。
【0055】
図7は、実験時刻とともにノズル3と被処理物306が移動し、噴射領域の位置が移動する様子を説明する図である。例えば仮想実験時間が0時点で2本のノズル3と被処理物306が図7(a−1)の立体図および(a−2)の平面図が示す位置にあったものとすれば、Δt秒後にノズル3および被処理物306が移動し、ノズル3が形成する噴射領域は、図7(b−1)および(b−2)に示す位置に移動する。
【0056】
図6に戻り、次にプログラムは、ステップ506および507で算出した被処理物306の対象領域上の噴射領域の液厚データを各単位領域へのディジタル値に変換し、裏バッファに設定する(ステップ508)。被処理物306上で複数の噴射領域が重なる部分については、重なった液厚レベルに対応するディジタル値が各単位領域に設定される。次にプログラムは、表バッファに設定されている各単位領域のディジタル値に今回裏バッファに設定された対応するディジタル値を積算する(ステップ509)。
【0057】
次にプログラムは、実験の経過時間がステップ502で設定した仮想実験総時間を越えたか否か判定する(ステップ510)。総時間を越えていなければ、プログラムは、経過時間にΔt秒を加え(ステップ511)、ステップ505に戻って上記処理を繰り返す。
【0058】
仮想実験時間が2Δtとなった時点のノズル3と被処理物306の位置および噴射領域の位置は図7(c−1)および(c−2)に示すものとなる。
【0059】
図8は、表バッファおよび裏バッファの各単位領域に対応するメモリ領域に設定されるディジタル値の例を示す図である。図8(a)は、表バッファに設定される前回結果を示す。Δt秒後の液厚分布データが図8(b)のように裏バッファに設定されたものとすれば、今回結果を前回結果に積算した結果として、表バッファは図8(c)に示すように更新される。
【0060】
図6に戻り、実験の経過時間が仮想実験総時間を越えたと判定したとき、プログラムは、すべての仮想実験条件について仮想実験したか否か判定する(ステップ512)。残りの仮想実験条件があれば、プログラムはステップ501に戻り、次の仮想実験条件について上記処理を繰り返す。仮想実験条件が尽きたとき、ステップ403の処理を終了する。
【0061】
本実施形態によれば、装置データ及び製品データを定義することにより設備仕様を最適化し、且つ、検査結果と仮想実験結果とを比較することにより、スプレー処理設備の異常を推定することが可能である。本仮想実験装置の使用者がこの装置上で所望の設備装置データを各種組み合わせることによって、仮想実験装置モデルを生成することが可能となる。また、入力された装置データと製品データについて上記の仮想実験を行い、ノズルの干渉度合を液厚データとして算出することにより流体解析の代用を果たすことが可能となった。得られた液厚分布データについて液厚レベルを度数分布化して標準偏差値を求め、この標準偏差値が最小となる装置データを実験計画法により最適化する。または、予め算出した既存設備における液厚レベルの平均値とそのレンジを閾値とし、計算された液厚レベルの平均値とそのレンジがその閾値を満足するべく(あるいは標準偏差値が最小で且つ液厚レベルの平均値がその閾値を満足するべく)装置データを実験計画法により最適化し、最適解として得られた装置データと仮想実験前の装置データとの可用性を検証することにより最適な装置データを決定することができる。さらにこの仮想実験を用いて、新規製品や製品データの変更、スプレー処理設備の新規開発や改造時に既存のスプレー処理設備での不良ポテンシャルを予測可能であり、設備のメンテナンス時間や不良対策、改善時間の短縮による仕損費の低減を図ることが可能である。本仮想実験プログラムは、パソコンなどの汎用計算機上にて容易に動作可能であり、簡単な数値入力とマウスポインタ等によるモジュールの移動と表示画面上に設けられたボタンにより操作するものであり、専門性は必要無い。これにより、簡単な操作により装置設計及び不良解析を速やかに図ることが可能となり、産業上に寄与する効果は大きい。
【実施例1】
【0062】
実施例1は、エッチング装置を最適化するために本発明を適用する例を示すものである。表1に実施例1の装置データおよび製品データを示す。
【0063】
【表1】

【0064】
装置データに属するx方向ノズルピッチ70mm、y方向ノズルピッチ70mm、揺動幅は10mm、30mm、50mmの3水準を取り、ノズル高さ80mm、100mm、120mmの3水準を取り、搬送速度は毎分2m、噴角60度、揺動周期は毎分26回、揺動方式を水平揺動、製品搬送方向をx方向、スプレーポンプ容量は毎分145L、ノズル形式はフルコーンとし、搬送ロール及び、液切ロールはこのエッチング装置ではエッチングチャンバ槽外に設置されておりエッチング条件には影響しないため、条件から除外した。また製品データに属する製品サイズは、y方向に70mm、x方向に500mmである。
【0065】
スプレーポンプ容量の制限等により、図9(a−1),(b−1),(c−1)に示すようにノズル配列数を3水準、すなわち斜め方向に3列、4列、5列の千鳥配列でノズルを配置する装置構成を検討対象とした。表1に示す装置データ及び製品データを仮想実験装置へ入力し、仮想実験によって得られた標準偏差値の結果を図9(a−2),(b−2),(c−2)に示す。斜め方向ノズル3列では、揺動幅50mm、ノズル高さ80mmの時に標準偏差値は12.024で最小となる。斜め方向ノズル4列では、揺動幅50mm、ノズル高さ80mmの時に標準偏差値は13.277で最小となる。斜め方向5列では、揺動幅10mm、ノズル高さ80mmの時に9.630で最小となる。
【0066】
図9(a−3),(b−3),(c−3)は、各々標準偏差値が最小となる条件で得られた液厚分布のy−z断面図である。同一y位置に対応するz方向の液厚分布の幅は、z方向のバラツキを示す。これらの結果から、斜め方向ノズル5列で揺動幅10mm、ノズル高さ80mmの条件が3水準中では最適であった。
【0067】
しかし定量的には最適となったが、図9(c−3)に示すように、全体としてまだかなり液厚分布のバラツキが大きい。この条件をより最適とすべく、ステップ409の実験範囲変更により、y方向ノズルピッチも制御因子に加え再実験を行った。これにより、図10(a)に示すようにy方向ノズルピッチ92mmが最適という結果が得られ、標準偏差値も3.503と最小値となった。図10(b)および(c)の液厚分布のy−z断面図に示すように、y方向ノズルピッチ70mmよりもy方向ノズルピッチ92mmの方が、液厚分布が均一化されていることがわかる。この仮想実験によりエッチング装置の設計を行うことができた。
【実施例2】
【0068】
実施例2は、過硫酸ナトリウム水溶液を用いたハーフエッチング装置で発生している銅箔厚さ異常不良を対策するために本発明を適用する例を示すものである。表2に実施例2の装置データおよび製品データを示す。
【0069】
【表2】

【0070】
装置データに属する各要素は、x方向ノズルピッチ105mm、y方向ノズルピッチ105mm、揺動幅は55mm、ノズル高さ120mm、搬送速度は毎分1.7m、噴角35度、揺動周期は毎分50回、揺動方式を水平揺動、製品搬送方向をx方向、ノズル形式はフルコーンを定義した。また製品データに属する製品サイズは、y方向に600mm、x方向に400mmである。
【0071】
本装置のノズル3は、図11(a−1)にその平面図を示すような配置である。表2に示す装置データ及び製品データを仮想実験装置へ入力し、仮想実験によって得られた標準偏差値は3.701であった。
【0072】
図11(a−2)の被処理物306上の液厚分布に示す通り、この装置条件により得られた結果では密部315及び疎部316を有する。これらの座標位置は、プリント基板の銅箔厚さ異常不良の位置と相関があった。そこで、銅箔厚さ異常不良を対策するために装置改造条件の検討を行った。このハーフエッチング装置は、図11(a−1)に示す通り、第1列目ノズル位置601と第9列目ノズル位置602が干渉している、すなわち同一行に2つのノズル3が重複して配置されている。図11(b−1)は、仮想実験により最適化された設備条件のノズル位置を示したものであり、同一行についてノズル3の重複配置がなくなっている。仮想実験により得られた被処理物306上の液厚分布結果を図11(b−2)に示す。また、この液厚分布情報より算出された標準偏差値は2.425の値を示し、元のハーフエッチング装置の標準偏差値3.701を下回る値を取り、装置改造条件が決定した。
【実施例3】
【0073】
実施例3は、エッチング装置を最適化するために本発明を適用する例を示すものである。表3に実施例3の装置データおよび製品データならびに現有設備データを示す。
【0074】
【表3】

【0075】
装置データに属する各要素は、x方向ノズルピッチ100mm、y方向ノズルピッチ100mm、揺動幅は30〜50mm、ノズル高さ80〜120mm、搬送速度は毎分2.0〜2.4m、噴角60度、揺動周期は毎分55回、揺動方式を水平揺動、製品搬送方向をx方向、ノズル形式はフルコーンを定義した。また製品データに属する製品サイズは、y方向に100mm、x方向に100mmである。さらに、現有設備データに属する液厚レベル平均値は70でレンジは±2であり、これを閾値とする。
【0076】
本装置のノズル3は、図12(a)にその平面図を示すような配置である。表3に示す装置データ及び製品データを仮想実験装置へ入力し、仮想実験によって得られた標準偏差値ならびに液厚レベル平均値を図12(b)に示す。図12(c)は、全27種の組み合わせで実施した仮想実験結果から、液厚レベル平均値と標準偏差値の回帰計算式を最小二乗法にて求めたものである。
【0077】
図13(a)は、装置条件を最適化するに際し、ノズル高さ、揺動幅、搬送速度の条件範囲を示したもので、この範囲内で標準偏差値が最小となり、且つ、液厚レベル平均値が閾値内に収束するように各条件の設定値を可変させる。図13(b)は、図13(a)に示す条件にて得られた最適条件と、全27種の組み合わせで閾値を満足し、且つ最も標準偏差値が小さい実験No.23の標準偏差値と液厚レベル平均値を比較したものである。実験No.23の標準偏差値4.87に対し、最適条件による標準偏差値は3.34であり、より水平面分布が均一化されていることが分かる。また、液厚レベル平均値も69であり条件を満足している。図13(c−1)、(c−2)(c−3)は、銅箔2上に形成されたドライフィルムレジストパターン7を有する絶縁材1をエッチングした際の垂直断面図を示したものである。図13(c−1)のように液厚レベルの平均値が閾値以下の場合は、アンダーエッチングとなり配線形状パターンは形成されず不良となる。逆に図13(c−2)に示すように液厚レベルの平均値が閾値以上の場合は、オーバーエッチングとなり配線形状パターンが現状装置条件よりも細く形成され不良となる。エッチング装置において最も良い配線形状パターンの形成条件は、図13(c−3)に示す通り液厚レベルの平均値が閾値内に入ることであり、図13(b)で得られた最適条件は、現有設備で形成されている配線形状パターンと同等の品質を保ち、且つ水平面分布が均一化されたことを示している。
【0078】
本発明に利用する装置データに関連し、各社のノズル情報、例えばノズルから被処理物までのノズル高さによって異なる噴径範囲、ノズル噴径流量分布等を保存しておくことによって、新規装置開発や装置改造において適切なノズルを選択することが可能となる。また、本発明による仮想実験結果から得られた最適な条件をCAD等の装置設計図面へフィードバックすることにより設備設計時間をより短縮することが可能となる。現有設備データより得られる閾値は、基板購入時の銅箔厚ばらつきや銅めっきプロセスでのめっき厚ばらつきを考慮しレンジを決定することにより、より精度の高い最適条件が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施形態の仮想実験の概念を説明する図である。
【図2】実施形態の仮想実験の概念を説明する図(続き)である。
【図3】スプレー処理設備のノズルが一定時間に描く軌跡の一例を示す平面図である。
【図4】実施形態の仮想実験プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】検査工程で検出された配線不良の例を示す図である。
【図6】実施形態の仮想実験の詳細処理手順を示すフローチャートである。
【図7】実施形態のノズルと被処理物の移動に従って噴射領域の位置が移動する様子を説明する図である。
【図8】バッファに格納される液厚レベルのディジタル値の例を示す図である。
【図9】実施例1のノズル配置状態と仮想実験結果を示す図である。
【図10】実施例1のノズル最適配置の例を説明する図である。
【図11】実施例2のノズル配置状態と仮想実験結果を示す図である。
【図12】実施例3のノズル配置状態と仮想実験結果を示す図である。
【図13】実施例3のノズル配置状態と仮想実験結果を示す図(続き)である。
【符号の説明】
【0080】
3:ノズル、 306:被処理物、 410:液厚分布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレー処理設備に設けられた複数のノズルから噴射されるスプレー液を搬送される被処理物で受け止め、前記被処理物が受ける前記スプレー液の累積した液厚の分布情報を計算するという仮想実験を計算機に実行させるためのプログラムであって、前記計算機に、
前記複数のノズルの仕様データ並びに前記被処理物の搬送速度及び前記被処理物のサイズに関するデータを入力して前記計算機のメモリに記憶する機能、
前記仕様データ及び前記被処理物に関するデータの各項目データの組合せを、仮想実験条件として設定する機能、
前記仮想実験条件に基づき、前記仮想実験のサンプリング時点ごとに、前記搬送速度と前記被処理物のサイズに関するデータに基づいて計算される前記被処理物の平面上の位置に、前記ノズルの仕様データに基づいて揺動される前記ノズルの各々が噴射するスプレーの噴射領域を計算し、所定時間の間に前記複数のノズルが前記被処理物上に形成する前記噴射領域の重なり度合に対応する液厚分布のディジタル値を、仮想実験の経過時間の間に累積された液厚分布データに積算する機能、
計算された前記液厚分布データを前記メモリを含む記憶装置に保存する機能、および
所定の仮想実験時間の間に計算された前記液厚分布データを視覚に適した図面によって表示する機能を実現させるためのプログラム。
【請求項2】
スプレー処理設備に設けられた複数のノズルから噴射されるスプレー液を搬送される被処理物で受け止め、前記被処理物が受ける前記スプレー液の累積した液厚の分布情報を計算するという仮想実験を計算機に実行させるためのプログラムであって、前記計算機に、
入力された前記複数のノズルの仕様データ並びに前記被処理物の搬送速度及び前記被処理物のサイズに関するデータを前記計算機のメモリに記憶する機能、
前記仮想実験のサンプリング時点ごとに、揺動される前記ノズルの各々が前記被処理物の位置する平面上に噴射するスプレーの噴射領域を前記ノズルの仕様データに基づいて計算する機能、
前記サンプリング時点ごとに、搬送される前記被処理物の平面上の位置を前記搬送速度と前記被処理物のサイズに関するデータに基づいて計算する機能、
前記サンプリング時点ごとに、所定時間の間に前記被処理物上に形成される前記噴射領域に対応する液厚分布のディジタル値を計算する機能、および
前記サンプリング時点ごとに、前記所定時間の間の液厚分布データを仮想実験の経過時間の間に累積された液厚分布データに積算する機能を実現させるためのプログラムであり、
前記液厚分布のディジタル値を計算する機能において、前記ノズルの各々が作る前記噴射領域に対応する液厚のディジタル値は一定値とし、複数のノズルが作る噴射領域が重なる領域に対し液厚の重複レベル(液厚レベル)に応じて前記一定値を積算することを特徴とするプログラム。
【請求項3】
前記計算機に、前記仮想実験の結果として得られた累積された前記液厚分布データについて、前記液厚レベルごとの前記被処理物の単位領域の度数分布に基づいて液厚レベルの標準偏差値を計算する機能をさらに実現させることを特徴とする請求項2記載のプログラム。
【請求項4】
前記計算機に、前記仮想実験の結果として得られた累積された前記液厚分布データについて、前記液厚レベルごとの前記被処理物の単位領域の度数分布に基づいて液厚レベルの平均値及び前記平均値からの最大の差分を示すレンジを計算する機能をさらに実現させることを特徴とする請求項2記載のプログラム。
【請求項5】
スプレー処理設備に設けられた複数のノズルから噴射されるスプレー液を搬送される被処理物で受け止め、前記被処理物が受ける前記スプレー液の累積した液厚の分布情報を計算するという仮想実験を計算機に実行させるためのプログラムであって、
入力された前記複数のノズルの仕様データ並びに前記被処理物の搬送速度及び前記被処理物のサイズに関するデータを前記計算機のメモリに記憶する機能、
前記仮想実験のサンプリング時点ごとに、揺動される前記ノズルの各々が前記被処理物の位置する平面上に噴射するスプレーの噴射領域を前記ノズルの仕様データに基づいて計算する機能、
前記サンプリング時点ごとに、搬送される前記被処理物の平面上の位置を前記搬送速度と前記被処理物のサイズに関するデータに基づいて計算する機能、
前記サンプリング時点ごとに、所定時間の間に前記被処理物上に形成される前記噴射領域に対応する液厚分布のディジタル値を計算する機能、
前記サンプリング時点ごとに、前記所定時間の間の液厚分布データを仮想実験の経過時間の間に累積された液厚分布データに積算する機能、および
前記仮想実験の結果として得られた累積された前記液厚分布データについて、前記液厚レベルごとの前記被処理物の単位領域の度数分布に基づいて液厚レベルの標準偏差値ならびに平均値と前記平均値からの最大の差分を示すレンジを計算する機能を実現させるためのプログラムであり、
前記液厚分布のディジタル値を計算する機能において、前記ノズルの各々が作る前記噴射領域に対応する液厚のディジタル値は一定値とし、複数のノズルが作る噴射領域が重なる領域に対し液厚の重複レベル(液厚レベル)に応じて前記一定値を積算することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記計算機に、既存の設備情報を入力し既存設備における液厚レベルの平均値と前記平均値からの最大の差分を示すレンジを求めて閾値とし、前記仮想実験の結果として得られた平均値とそのレンジが前記閾値を満足するか否かにより前記仮想実験の良否判定を行う機能を更に実現させることを特徴とする請求項2又は5記載のプログラム。
【請求項7】
前記計算機に、
前記スプレー処理設備によって処理された被処理物の検査結果として前記被処理物上の不良個所の位置を示すデータを入力する機能、
前記仮想実験の結果として得られた累積された前記液厚分布データから前記液厚レベルの密部又は疎部の位置データを抽出する機能、および
前記不良個所の位置を示すデータと前記密部又は疎部の位置データとを比較する機能をさらに実現させることを特徴とする請求項2記載のプログラム。
【請求項8】
前記計算機に、
前記ノズルの仕様データを変更するような複数組の仕様データを入力し、前記メモリに記憶する機能、
前記仕様データの各組について各々前記標準偏差値を計算する機能、および
計算された前記標準偏差値が最小となる前記仕様データの組を特定する機能をさらに実現させることを特徴とする請求項3又は5記載のプログラム。
【請求項9】
前記計算機に、前記ノズルの仕様データを変更するような複数組の仕様データを入力し、前記メモリに記憶する機能、前記仕様データの各組について各々前記標準偏差値を計算する機能、前記仕様データの各組について各々液厚レベルの平均値とそのレンジを計算する機能、および既存の設備情報に基づいて計算された液厚レベルの平均値とそのレンジを閾値とし、計算された前記液厚レベルの平均値とそのレンジが前記閾値を満足する前記仕様データの組を特定する機能をさらに実現させることを特徴とする請求項4又は5記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−100212(P2007−100212A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118774(P2006−118774)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】