説明

仮支承コンクリートの撤去方法

【課題】撤去時の騒音および振動を低減し、周辺環境への影響を抑制できる仮支承コンクリートの撤去方法を提供すること。
【解決手段】橋脚1の天端3にビニールシート15aを敷設し、複数のブロック5a、ブロック5bからなる仮支承コンクリート5を設置する。また、仮支承コンクリート5の上面25にビニールシート15bを敷設する。隣接するブロック5a、ブロック5bの間には、目地材17を設置する。次に、桁7を、仮支承コンクリート5で支持しつつ張出し架設する。桁7の完成後、仮受けジャッキ21の設置予定位置に設置したブロック5aをコアドリル等で分割して撤去し、ブロック5aを撤去した空間19に仮受けジャッキ21を設置し、仮受けジャッキ21で上載荷重を受け替える。そして、残りのブロック5bを、ブロック5aと同様に分割して撤去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮支承コンクリートの撤去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁の桁を張出し架設する際には、下部構造の天端に仮支承コンクリートを設置して一時的に桁の荷重を受ける。そして、桁の張出し架設終了後に仮支承コンクリートを取り壊し、仮支承コンクリートで受けていた上載荷重を本支承で受けかえる。仮支承コンクリートは、人力によりブレーカで破砕して取り壊される。また、境界面がテーパ部となった2つの部材を固定具で固定して仮支承として用いた後、2つの部材の固定を解除することにより、仮支承を破壊せずに分解して撤去する方法(例えば、特許文献1参照)や、仮支承の内部に複数の孔を設けておき、使用後に孔に力を作用させて仮支承を破壊する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭−49−65629号公報
【特許文献2】特開昭59−170307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仮支承コンクリートをブレーカで取り壊すと、撤去の際に過大な騒音や振動が発生する。騒音の少ないコアドリルやワイヤソー等で取り壊す場合、仮支承コンクリートが破砕され、本支承に上部工の荷重を受け替えた時に支承が弾性変形して沈むため、コアドリル等がコンクリートに挟まって動かなくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、撤去時の騒音および振動を低減し、周辺環境への影響を抑制できる仮支承コンクリートの撤去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために本発明は、橋梁の下部構造の天端に、複数のブロックからなる仮支承コンクリートを設置する工程(a)と、桁を前記仮支承コンクリートで支持しつつ張出し架設する工程(b)と、前記下部構造の天端に仮受けジャッキを設置し、上載荷重を受け替える工程(c)と、前記複数のブロックを撤去する工程(d)と、を具備することを特徴とする仮支承コンクリートの撤去方法である。
【0007】
工程(b)と工程(c)との間には、必要に応じて、桁の完成後、複数のブロックのうち仮受けジャッキの設置予定位置に設置したブロックを撤去する工程(e)がさらに設けられる。この場合、工程(c)で、工程(e)でブロックを撤去した箇所に仮受けジャッキを設置し、工程(d)で、複数のブロックのうち残りのブロックを撤去する。
【0008】
工程(e)を設ける場合、工程(a)で設置されるブロックの数および大きさは、工程(e)で、仮受けジャッキの設置予定位置に設置したブロックを撤去した後に残りのブロックで上載荷重を受けることができ、工程(c)で、工程(e)でブロックを撤去した箇所に仮受けジャッキが設置できるように決定される。
【0009】
工程(a)では、必要に応じて、仮支承コンクリートの上面および下面に縁切り用の部材を設置する。また、工程(a)では、隣接するブロックの間に目地材を設けることが望ましい。
【0010】
工程(d)、工程(e)では、コアドリル等を用いて、撤去するブロックを搬出可能な大きさに分割する。工程(c)で設置する仮受けジャッキは、例えば、ロック機能付きの油圧ジャッキであり、工程(c)で上載荷重を受け替えた後にロックする。
【0011】
本発明では、仮支承コンクリートを複数のブロックで構成する。そして、桁を張出し架設した後、仮支承コンクリートを構成する所定のブロックを撤去して仮受けジャッキを設置し、上載荷重を受け替えて残りのブロックを撤去する。これにより、仮支承コンクリートを、ブレーカを用いることなく、コアドリル等の低騒音工法で分割して容易に搬出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撤去時の騒音および振動を低減し、周辺環境への影響を抑制できる仮支承コンクリートの撤去方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】橋脚1と桁7との接合部付近の側面図
【図2】本支承13および仮支承コンクリート5の水平断面図
【図3】橋脚1と桁7との接合部付近の垂直断面図
【図4】仮支承コンクリート5のブロック5aを撤去する工程を示す図
【図5】仮受けジャッキ21を設置する工程を示す図
【図6】仮支承コンクリート5のブロック5bを撤去する工程を示す図
【図7】仮受けジャッキ21を撤去する工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、橋脚1と桁7との接合部付近の側面図、図2は、本支承13および仮支承コンクリート5の水平断面図である。図2は、図1に示す矢印A−Aによる断面図である。図3は、橋脚1と桁7との接合部付近の垂直断面図である。図3は、図1に示す矢印B−Bによる断面図である。
【0015】
図1から図3に示すように、橋梁2は、橋脚1、本支承13、桁7等からなる。桁7は、下部構造である橋脚1の天端3に設けられた本支承13に支持される。橋梁2を構築する際には、橋脚1の天端3に仮支承コンクリート5が設置される。また、橋脚1と仮支承コンクリート5と桁7とを貫通するPC鋼棒9が設置される。
【0016】
仮支承コンクリート5は、図2、図3に示すように、例えば、本支承13の両側方に設置される。仮支承コンクリート5は、ブロック5a、ブロック5b、ビニールシート15a、ビニールシート15b、目地材17等からなる。
【0017】
ブロック5a、ブロック5bは、直方体のコンクリート塊である。隣接するブロック5、ブロック5bの間には、目地材17が設置される。ブロック5aには、鉛直方向のシース10が設けられる。シース10には、PC鋼棒9が挿通される。
【0018】
ビニールシート15a、ビニールシート15bは、縁切り用の部材である。ビニールシート15aは、仮支承コンクリート5の下面27と橋脚1の天端3との間に配置される。ビニールシート15bは、仮支承コンクリート5の上面25と桁7の下面11との間に配置される。ビニールシート15a、ビニールシート15bは、仮支承コンクリート5の下面27、上面25の全面に敷設される。
【0019】
橋梁2を構築するには、まず、橋脚1を形成し、橋脚1の天端3に本支承13を設置する。また、橋脚1にPC鋼棒9を設置する。さらに、本支承13の設置と前後して、橋脚1の天端3にビニールシート15aを敷設し、ビニールシート15aの上方に仮支承コンクリート5を設置する。
【0020】
仮支承コンクリート5は、コンクリートを複数のブロック5a、ブロック5bに分割して打設して形成する。ブロック5aのコンクリートを打設する際には、あらかじめPC鋼棒9をシース10に挿通しておくのが望ましい。隣接するブロック5a、ブロック5bの間には、目地材17を配置する。仮支承コンクリート5の形成後、仮支承コンクリート5の上面25にビニールシート15bを敷設する。
【0021】
次に、桁7の一部を仮支承コンクリート5上に設置し、仮固定用のPC鋼棒9を用いて橋脚1と桁7とを仮固定する。そして、桁7を張出し架設する。このとき、桁7による鉛直方向の荷重は仮支承コンクリート5で支持される。また、水平方向の荷重は、桁7と橋脚1とにまたがるように埋め込んだH鋼12で支持される。仮支承コンクリート5は、桁7の最大重量が載ってもつぶれないものとする。桁7の張出し架設が終了した後、PC鋼棒9による橋脚1と桁7との仮固定を解放し、PC鋼棒9を撤去する。
【0022】
PC鋼棒9を撤去した後、仮支承コンクリート5を撤去する。図4は、仮支承コンクリート5のブロック5aを撤去する工程を示す図である。仮支承コンクリート5を撤去するには、まず、コアドリルを用いて、図4に示すように、ブロック5aからコア23を抜く。ブロック5aは、水平方向のコア23を連続して抜くことにより、上下に2分割される。そして、分割したブロック5aを撤去する。
【0023】
ブロック5aは、ビニールシート15aによって橋脚1と縁切りされ、ビニールシート15bにより桁7と縁切りされている。そのため、ブロック5aは、橋脚1や桁7との間の摩擦が少なく、容易に撤去できる。ブロック5aは、防音対策を十分に施した場所に運搬した後、破砕する。
【0024】
図5は、仮受けジャッキ21を設置する工程を示す図である。ブロック5aを撤去した後、図5に示すように、ブロック5aを撤去した箇所の空間19に仮受けジャッキ21を設置する。そして、桁7の上載荷重を仮受けジャッキ21で受け替える。仮受けジャッキ21は、例えば、ロック機能付きの油圧ジャッキとする。仮受けジャッキ21は、上載荷重の受け替え完了後、ロックされる。
【0025】
図6は、仮支承コンクリート5のブロック5bを撤去する工程を示す図である。図6に示す工程では、仮支承コンクリート5の残りのブロック5bを、図4に示すブロック5aと同様に、コアドリルでコア抜きをして分割し、撤去する。
【0026】
ブロック5bは、ブロック5aと同様に、ビニールシート15aによって橋脚1と縁切りされ、ビニールシート15bにより桁7と縁切りされている。そのため、ブロック5bは、橋脚1や桁7との間の摩擦が少なく、容易に撤去できる。ブロック5bは、ブロック5aと同様に、防音対策を十分に施した場所に運搬した後、破砕する。
【0027】
図7は、仮受けジャッキ21を撤去する工程を示す図である。図7に示す工程では、仮受けジャッキ21をジャッキダウンして上載荷重を本支承13で受け替え、仮受けジャッキ21を撤去する。また、ビニールシート15a、ビニールシート15bを撤去する。
【0028】
なお、仮支承コンクリート5の数および大きさは、桁7の張出し架設中にPC鋼棒9の機能を損なわず、ブロック5aを撤去した際に残りのブロック5bで桁7の上載荷重を受けることができ、ブロック5aを撤去した後に仮受けジャッキ21を設置して荷重を受け替えるための空間19が確保できるように決定する。
【0029】
このように、本実施の形態では、仮支承コンクリート5を複数のブロック5a、ブロック5bで構成し、ブロック5aを撤去して設置した仮受けジャッキ21で桁7の上載荷重を受け替えた後、残りのブロック5bを撤去する。ブロック5a、ブロック5bをコアドリル等で分割して撤去することにより、大規模な仮支承コンクリートをブレーカを用いて破壊する場合と比較して、撤去時の騒音や振動を低減し、周辺環境への影響を抑制できる。
【0030】
本実施の形態では、ブロック5a、ブロック5bをコアドリルを用いて分割したが、ワイヤソーやコンクリートバースタ、静的破砕材等の低騒音工法を用いて分割してもよい。本実施の形態では、ブロック5a、ブロック5bを上下に2分割して撤去したが、分割数や分割位置はこれに限らない。ブロック5a、ブロック5bは、必要に応じて搬出可能な大きさに分割し、撤去する。
【0031】
本実施の形態では、桁7の張出し架設時の水平荷重をH鋼12で受けたが、水平力の大きさによっては、仮支承コンクリート5と橋脚1との摩擦で受けてもよい。この場合は、仮支承コンクリート5と橋脚1との摩擦係数を確保するため、ビニールシート15a、ビニールシート15bを設置しない。
【0032】
桁7の張出し架設時には、鉛直荷重を仮支承コンクリート5で受け、水平荷重を本支承13で受けてもよい。この場合、図2に示すH鋼12は設置されない。
【0033】
本実施の形態では、縁切り用部材であるビニールシート15a、ビニールシート15bを仮支承コンクリート5の下面27、上面25の全面に敷設したが、目地材17の部分には縁切り用部材を敷設しなくてもよい。縁切り用部材は、ブロック5aおよびブロック5bと橋脚1や桁7との縁切りができるように敷設すればよい。縁切り用部材として、ビニールシート以外に、薄い鉄板や目地材等を用いてもよい。
【0034】
図5に示す工程では、ブロック5aを撤去する際、ブロック5aの下面27のビニールシート15aおよび上面25のビニールシート15bを残置したが、ビニールシート15aおよびビニールシート15bをブロック5aと同時に撤去してもよい。この場合、仮受けジャッキ21を橋脚1の天端3に直接設置する。
【0035】
本実施の形態では、仮支承コンクリート5の一部のブロック5aにシース10を設け、PC鋼棒9を挿通したが、橋脚1の断面積が大きく、必要な面積の仮支承コンクリートを配置しても、なおスペースがあり、かつ、仮支承コンクリートの外にPC鋼棒を配置してもPC鋼棒が桁の内部で干渉しない場合には、PC鋼棒を避けて仮支承コンクリートを設置してもよい。
【0036】
仮支承コンクリートを構成するブロックの数や形状は、上述したものに限らない。仮支承コンクリートを構成するブロックの数や形状は、桁の張出し架設中にPC鋼棒の機能を損なわず、ブロックの一部を撤去した際に残りのブロックで桁の上載荷重を受けることができ、ブロックの一部を撤去した後に仮受けジャッキで荷重を受け替えるための空間が確保できるものであればよい。
【0037】
本実施の形態では、仮支承コンクリート5を構成するブロックのうち一部のブロック5aを撤去した空間19に仮受けジャッキ21を設置して荷重を受け替えた後、残りのブロック5bを撤去したが、橋脚1の断面積が大きく、必要な面積の仮支承コンクリートを配置してもなおスペースがある場合には、ブロックを撤去することなく仮受けジャッキを設置して荷重を受け替えた後、全てのブロックを撤去してもよい。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる仮支承コンクリートの撤去方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0039】
1………橋脚
3………天端
5………仮支承コンクリート
7………桁
11、27………下面
13………本支承
15a、15b………ビニールシート
17………目地材
21………仮受けジャッキ
25………上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の下部構造の天端に、複数のブロックからなる仮支承コンクリートを設置する工程(a)と、
桁を前記仮支承コンクリートで支持しつつ張出し架設する工程(b)と、
前記下部構造の天端に仮受けジャッキを設置し、上載荷重を受け替える工程(c)と、
前記複数のブロックを撤去する工程(d)と、
を具備することを特徴とする仮支承コンクリートの撤去方法。
【請求項2】
前記工程(b)と前記工程(c)との間に、前記桁の完成後、前記複数のブロックのうち仮受けジャッキの設置予定位置に設置したブロックを撤去する工程(e)をさらに具備し、
前記工程(c)で、前記工程(e)でブロックを撤去した箇所に前記仮受けジャッキを設置し、
前記工程(d)で、前記複数のブロックのうち残りのブロックを撤去することを特徴とする請求項1記載の仮支承コンクリートの撤去方法。
【請求項3】
前記工程(a)で設置されるブロックの数および大きさは、
前記工程(e)で、仮受けジャッキの設置予定位置に設置したブロックを撤去した後に、残りのブロックで上載荷重を受けることができ、
前記工程(c)で、前記工程(e)でブロックを撤去した箇所に前記仮受けジャッキが設置できるように決定されることを特徴とする請求項2記載の仮支承コンクリートの撤去方法。
【請求項4】
前記工程(a)で、前記仮支承コンクリートの上面および下面に縁切り用の部材を設置することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の仮支承コンクリートの撤去方法。
【請求項5】
前記工程(a)で、隣接する前記ブロックの間に目地材を設けることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の仮支承コンクリートの撤去方法。
【請求項6】
前記工程(d)、前記工程(e)で、撤去するブロックを搬出可能な大きさに分割することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の仮支承コンクリートの撤去方法。
【請求項7】
前記仮受けジャッキは、ロック機能付きの油圧ジャッキであり、前記工程(c)で上載荷重を受け替えた後にロックすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の仮支承コンクリートの撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−241582(P2011−241582A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113859(P2010−113859)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】