説明

仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムおよび揚重管理方法

【課題】揚重管理の合理化を図ることで、作業手間を大幅に低減することができる。
【解決手段】資材3に取り付けられるとともに資材3を特定する資材情報T1が組み込まれた電子タグ4と、仮設エレベータ2に設けられていて電子タグ4の資材情報T1を無線で受信可能とされる通信アンテナ5と、通信アンテナ5から資材情報T1を入力し、エレベータ運転制御部7に向けて資材情報T1を送信する機能、所定の停止階において資材情報T1をスピーカ61に出力させる機能、および通信アンテナ5で仮設エレベータ2内で電子タグ4を認識しなくなったときを荷下ろし完了とした資材揚重実績情報T4を蓄積する機能を有するタグ管理装置6と、タグ管理装置6から資材揚重実績情報T4を受信し、その資材揚重実績情報T4を資材管理者が管理する端末へ送信する情報発信部10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムおよび揚重管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築工事における仕上げ階段において、仮設エレベータによって資材の揚重作業が行われている。このような資材の搬入現場では、資材管理者が資材毎に手書きの行き先表示や資材の送り状を確認し、仮設エレベータのオペレータに対して資材の停止階を伝達し、さらに、所定の停止階に資材を積んだ仮設エレベータが停止した後、その停止階で待ち受ける運搬作業者が荷下ろし作業を行い、各停止階の工区または住戸への運搬作業を行っている。
【0003】
ところで、従来の揚重方法では、例えば荷積みを行う階に資材管理者が不在となる場合には、仮設エレベータのオペレータが荷下ろし階を判断することができないことから、揚重作業を停止せざるを得ないといった現状がある。
これに対して、予め停止階情報を電子タグに組み込ませておくことで、その電子タグをエレベータに載せることで自動的に所定の停止階に停止させるようにした技術が、例えば特許文献1に開示されている。例えば、特許文献1のような管理方法を上述した建築工事の揚重作業に採用し、資材に対応した停止階情報を電子タグに組み込んでおき、その電子タグをオペレータが持って資材とともに仮設エレベータに乗れば自動的に資材を所定の停止階に揚重することができることになる。
【特許文献1】特開2006−96505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の揚重運搬の管理方法では以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1の管理方法では、仮設エレベータを資材に対応した停止階に自動で移動させることができるが、仮設エレベータから卸した後に、その資材の停止階における運搬先などの情報を運搬作業者に間違いなく伝達する必要があった。
また、とくに集合住宅のように資材運搬比率の高い場合には、運搬した資材名、依頼した業者名、日時、行き先などの揚重実績データを作業日報として残すケースがあり、その場合には手書きやパソコンによる入力作業が生じることから、それらの作業手間がかかるうえ、それらの入力作業が作業日の全作業終了後に行われる場合が多く、資材管理者がリアルタイムで揚重作業の進行状態を把握できなく、作業効率が悪いという欠点があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、揚重管理の合理化を図ることで、作業手間を大幅に低減することができる仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムおよび揚重管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムでは、仮設エレベータを用いた資材の揚重作業を管理するための資材揚重管理システムであって、資材、資材運搬用パレット、または台車に取り付けられるとともに資材を特定する資材情報が組み込まれた電子タグと、仮設エレベータに設けられていて、電子タグの資材情報を無線で受信可能とされる通信アンテナと、通信アンテナから資材情報を入力し、その資材情報に応じた停止階に仮設エレベータを移動させるためのエレベータ運転制御部に向けて資材情報を送信する機能、所定の停止階において資材情報を人に認識させるための出力部に出力させる機能、および通信アンテナで仮設エレベータ内で電子タグを認識しなくなったときを荷下ろし完了とした資材揚重実績情報を蓄積する機能を有するタグ管理手段と、タグ管理手段から資材揚重実績情報を受信し、その資材揚重実績情報を無線によって資材管理者が管理する端末へ送信する情報発信手段とを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る揚重管理方法では、資材を特定する資材情報を組み込んだ電子タグを資材、資材運搬用パレット、または台車に取り付け、その資材を仮設エレベータ内に積み込み、電子タグの資材情報を仮設エレベータに設けた通信アンテナで受信する工程と、資材情報を通信アンテナからタグ管理手段へ入力する工程と、タグ管理手段から資材情報を、仮設エレベータを運転制御するためのエレベータ運転制御部に送信し、仮設エレベータを所定の停止階に移動させる工程と、所定の停止階において、タグ管理手段によって資材情報を人に認識させるための出力部に出力する工程と、タグ管理手段において、通信アンテナで仮設エレベータ内で電子タグを認識しなくなったときを荷下ろし完了とした資材揚重実績情報を蓄積する工程と、タグ管理手段から資材揚重実績情報を情報発信手段で受信し、その資材揚重実績情報を無線によって資材管理者が管理する端末へ送信する工程とを有していることを特徴としている。
【0008】
本発明では、仮設エレベータに搭載した資材の資材情報に基づいて、自動的に仮設エレベータを所定の停止階に揚重するとともに、その資材の資材名や運搬先等の資材情報を停止階に待機している運搬作業者に対して例えば音声や表示などの出力部によって知らせることができる。そのため、資材の運搬先を間違えることなく確実に搬送することができ、従来のように手書きで運搬先を書くといった手間を省くことが可能となる。そのうえ、そして、荷下ろし完了の資材揚重実績情報のデータとしてタグ管理手段に蓄積し、その資材揚重実績情報を情報発信手段で受信するとともに、インターネット回線や電話回線といった無線を使用して携帯電話やパソコンなどの管理者のもつ端末にリアルタイムで通知することで、例えば揚重作業現場から離れた場所に居る揚重作業の管理者が揚重作業状況を確認することができ、適宜必要なときに資材揚重実績を確認することができるので、揚重管理者が逐次チェックする作業手間が不要となり、その揚重管理者が不在の場合でも、次の作業に取り掛かることができるので、待ち時間をなくすことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0009】
また、本発明に係る仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムでは、仮設エレベータには、複数の資材が積み込み可能とされ、複数の資材のそれぞれに対応する複数の通信アンテナが設けられ、タグ管理手段は、資材情報と、その資材情報を受信した通信アンテナを認識することにより仮設エレベータ内の資材の位置を特定する資材位置情報を得て、資材位置情報を出力部に出力するように構成されていることが好ましい。
本発明では、複数の資材が仮設エレベータに積み込まれているときに、所定の停止階において、運搬作業者が出力部で出力される資材位置情報を確認し、複数の資材のうちどの資材を仮設エレベータから卸すべきものかを認識することができるので、異なる資材を仮設エレベータから卸すといった間違いを防止することができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係る仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムでは、資材情報には当該資材の停止階情報が組み込まれ、エレベータ運転制御部では、タグ管理手段より停止階情報を受信し、その停止階情報に基づいて仮設エレベータを制御することが好ましい。
本発明では、エレベータ運転制御部でタグ管理手段から資材の停止階情報を受信し、その停止階情報に基づいて仮設エレベータを所定の停止階に自動的に移動させる制御を行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムでは、出力部は、音声、及び表示の少なくとも一方であることが好ましい。
本発明では、タグ管理手段において通信アンテナから受信した資材情報を音声、及び表示の少なくとも一方で出力することで、所定の停止階において仮設エレベータから資材を卸して搬送作業を行う運搬作業者に対して資材の種類や運搬先といった情報を確実に伝えることができる。
【0012】
また、本発明に係る仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムでは、情報発信手段は、揚重作業終了時に、その作業終了情報を運搬依頼者へ自動発信する機能を有していることが好ましい。
本発明では、情報発信部において、揚重作業完了時にその作業完了情報が運搬依頼者へ自動発信され、リアルタイムな資材管理を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムおよび揚重管理方法によれば、仮設エレベータに積み込んだ資材の資材情報を通信アンテナによって電子タグから自動的に読み込み、行き先階から運搬先の指示までの一連の作業を自動的に行うことができるので、自動的に仮設エレベータを所定の停止階に移動させ、停止階で待機している運搬作業者に対して資材情報を出力部に出力して確認させることが可能となり、資材の運搬先を間違えることなく確実に搬送することができ、資材情報を手書きで記録するといった手間を大幅に低減することができる。そして、資材管理者が作業現場に不在であっても揚重作業を継続して行うことができることから、作業効率の向上を図ることができる。しかも、荷下ろしが完了したことの資材揚重実績情報を無線で資材管理者に通知することができ、資材管理者が揚重作業の進行状態をリアルタイムで確認することができるので、揚重管理の合理化が図れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態による仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムおよび揚重管理方法について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムの全体概要を示す図、図2は開閉扉が開いた状態の仮設エレベータを示す正面図、図3は図2に示すA−A線断面図、図4は資材揚重実績情報の流れを示す概略図である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態による資材揚重管理システム1は、仮設エレベータ2を使用した建物などの建設工事に適用され、その仮設エレベータ2に載せた資材3を管理するためのシステムである。
【0016】
すなわち、仮設エレベータ2を用いた資材揚重管理システム1は、資材3に取り付けられるとともに資材3を特定する資材情報T1が組み込まれた電子タグ4と、仮設エレベータ2に設けられていて、電子タグ4の資材情報T1を無線で受信可能とされる通信アンテナ5と、通信アンテナ5から資材情報T1を入力し、その資材情報T1に応じた停止階に仮設エレベータ2を移動させるためのエレベータ運転制御部7に向けて資材情報T1を送信する機能、所定の停止階において資材情報T1を人に認識させるための出力部(後述するスピーカ61)に出力させる機能、および通信アンテナ5で仮設エレベータ2内で電子タグ4を認識しなくなったときを荷下ろし完了とした資材揚重実績情報T4を蓄積する機能を有するタグ管理装置6(タグ管理手段)と、タグ管理装置6から資材揚重実績情報T4を受信し、その資材揚重実績情報T4を無線によって資材管理者が管理する端末12(図4参照)へ送信する情報発信部10(情報発信手段)とを備えている。
【0017】
図2に示すように、仮設エレベータ2は、資材3を積み込む基準階F1(例えば1階)から各階の間を移動する周知のエレベータであり、正面視で横長のケージを有するロングスパンエレベータが採用されている。つまり、本仮設エレベータ2は、正面側において上下方向で略中間部から上下両方に開く開閉扉2Aを有し、背面2B、側面2C、2D、上面2E、下面2Fから構成されている。開閉扉2A(ここで、下側に位置する開閉扉)、および各面2B〜2Fには、それぞれ通信アンテナ5が設けられている。そして、仮設エレベータ2には、3台の台車9、9、9が横方向(ケージの長手方向)に並んで搭載可能となっている。
【0018】
ここで、搬送される資材3は、台車9に載せられ、その台車9ごと仮設エレベータ2に積み込まれる。なお、本実施の形態でいう資材3とは、1台の台車9上に搭載可能な大きさ、重量などにまとまった複数の資材(資材群)を「資材3」と称する。
【0019】
電子タグ4は、ひとまとまりの資材3を特定するID(資材情報T1)を記録したICチップを組み込ませたものであり、非接触方式で通信アンテナ5の通信範囲内に入ると、その通信アンテナ5によってIDが認識できるようになっている。具体的に電子タグ4には、資材名称、業者名、行き先階(停止階情報T3)、行き先階での運搬先(例えば、部屋番号、工区名)等の資材情報T1が記録されている。
【0020】
通信アンテナ5は、例えばシート状に形成されたアンテナを採用することができ、電子タグ4との非接触距離(交信可能な距離)として、例えば1cm〜200cm程度のものを適宜な交信距離に設定して使用することができる。この通信アンテナ5は、所定の通信範囲内に入った電子タグ4の資材情報T1を無線で受信するとともに、その資材情報T1をタグ管理装置6へ無線で送信する機能を有している。
【0021】
タグ管理装置6は、仮設エレベータ2内(とくに限定されないが、本実施の形態では側面2C)に設けられ、上述したように通信アンテナ5からの信号(資材情報T1)を入力し、その資材3に対応する仮設エレベータ2の行き先階(停止階情報T3)をエレベータ運転制御部7に送信する機能と、積載した資材情報T1を蓄積し、各停止階に設けられている情報発信部10に向けて送信する機能と、資材情報T1及びその資材情報T1を受信した通信アンテナ5を認識することにより仮設エレベータ2内の資材3の位置を特定する資材位置情報T2を得る機能とを有している。そして、タグ管理装置6には、仮設エレベータ2が所定の停止階で停止したときに、資材情報T1及び資材位置情報T2に基づいて音声を出力するためのスピーカ61(出力部)が内蔵されている。
【0022】
エレベータ運転制御部7は、タグ管理装置6で受信された資材3の停止階情報T3を受信し、その停止階情報T3に基づいて仮設エレベータ2のエレベータ制御盤8に所定の停止階で停止するよう指令を送るものである。また、仮設エレベータ2が所定の停止階に停止したときに、その情報をタグ管理装置6に返信する機能を有している。つまり、仮設エレベータ2が停止した信号を受けたときに、その停止階においてタグ管理装置6のスピーカ61より資材情報T1や資材位置情報T2を出力することができる。
【0023】
また、図4に示すように、本資材揚重管理システム1には、資材3の積み込み作業を行う基準階F1のエレベータ前(着床位置)に情報発信部10が設けられている。この情報発信部10では、タグ管理装置6より資材揚重実績情報T4を非接触で受信するとともに、その資材揚重実績情報T4を携帯電話網Pを介してインターネット回線に無線で飛ばす機能を有し、揚重作業終了時においてその作業終了情報を運搬依頼者へ自動発信する機能を有していることが好まている。そして、資材管理者Mが管理する携帯電話やパソコン等の端末12に、揚重完了のデータ(すなわち、資材揚重実績情報T4)のメールが自動的に発信される構成となっている。さらに、インターネット回線を通じて資材揚重実績情報T4を例えば揚重管理センター(図示省略)などの管理サーバー11に送信し、自動的にデータが蓄積される構成になっている。そのため、例えば、管理サーバー11に蓄積された資材揚重実績情報T4は、揚重管理センターの管理者がパソコン上で集計、分析処理を行うことができ、さらに揚重を委託した業者や現場管理者などがWEB画面として随時閲覧できる。
【0024】
次に、上述した資材揚重管理システム1を使用した揚重管理方法および動作フローについて図面を用いて説明する。
図1乃至図4に示すように、本揚重管理方法は、先ず、資材3を特定する資材情報T1を組み込んだ電子タグ4を資材3に取り付け、基準階F1(図3参照)において、その資材3を台車9に搭載して仮設エレベータ2内に積み込む。
【0025】
そして、各通信アンテナ5の通信可能範囲内に電子タグ4が入ったとき、その電子タグ4の資材情報T1が通信アンテナ5によって受信される。ここでは、資材3が積み込まれた3台の台車9、9、9が仮設エレベータ2に搭載されているので、複数の通信アンテナ5、5、…がそれぞれに対応する資材3の資材情報T1を受信した状態となっている。
【0026】
次に、資材情報T1が通信アンテナ5からタグ管理装置6に入力され、さらに、その資材情報T1を受信した通信アンテナ5を認識することによって、仮設エレベータ2内に積み込まれている資材3の搭載位置(図2に示す右側位置H1、中央位置H2、左側位置H3)を示す資材位置情報T2が蓄積される。
【0027】
また、タグ管理装置6に入力された資材情報T1にはその資材3の行き先階(停止階情報T3)が組み込まれているので、その停止階情報T3がエレベータ運転制御部7に送信される。そして、エレベータ運転制御部7では、停止階情報T3に基づいてエレベータ制御盤8に対して所定の停止階で停止するように指令を出力し、仮設エレベータ2を資材3に対応した所定の停止階に向けて移動させる。
【0028】
次いで、仮設エレベータ2が所定の停止階に停止すると、エレベータ制御盤8からエレベータ運転制御部7を介して停止信号がタグ管理装置6に送信され、その信号を受けて、その停止階において、タグ管理装置6のスピーカ61からどの資材3を卸し、どこに運搬するかといった資材情報T1と仮設エレベータ2から卸す資材3を示す資材位置情報T2が音声により出力される。つまり、運搬作業者は、スピーカ61から出力される音声指示に従って搬送作業を行うことができ、資材の運搬先を間違えることなく確実に搬送することができ、従来のように手書きで運搬先を書くといった手間を省くことが可能となる。とくに、運搬作業者は、資材位置情報T2を確認し、複数の資材3のうちどの資材3を仮設エレベータ2から卸すべきものかを認識することができるので、異なる資材を仮設エレベータ2から卸すといった間違いを防止することができ、作業効率の向上を図ることができる。
なお、仮設エレベータ2内に積み込まれた複数の資材3の荷下ろし順は任意とされ、例えば予め資材情報T1に荷下ろしの順を組み込ませておくことができる。
【0029】
そして、所定の停止階で荷下ろし作業を行うことで、資材3が仮設エレベータ2内から搬出されるので、その電子タグ4も通信アンテナ5の通信可能範囲から外れ、通信アンテナ5は電子タグ4の信号が途絶えることになる。つまり、タグ管理装置6では、信号が途絶えた電子タグ4の資材3に対して荷下ろし完了とした資材揚重実績情報T4が例えば内部時計の時刻と合わせて蓄積されることになる。
【0030】
最後に、積み込んだ資材3の揚重作業が完了して仮設エレベータ2内の資材3の荷下ろしされたときには、仮設エレベータ2が基準階F1に戻るように制御され、基準階F1に着床した時点で、上述した資材揚重実績情報T4を情報発信部10に送信する。そして、情報発信部10から資材揚重実績情報T4がインターネット回線などの携帯電話網Pを介して資材管理者Mが管理する携帯電話やパソコン等の端末12に自動的に発信される。これによって、資材管理者Mは、現場にいなくてもリアルタイムで揚重作業の進行状態を確認することができ、検収や次工程の作業指示などを行うことができる。さらに、情報発信部10において、揚重作業完了時にその作業完了情報が運搬依頼者(資材管理者Mも含む)へ自動発信され、リアルタイムな資材管理を行うことができる。
【0031】
上述した本実施の形態による仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムおよび揚重管理方法では、仮設エレベータ2に積み込んだ資材3の資材情報T1を通信アンテナ5によって電子タグ4から自動的に読み込み、行き先階から運搬先の指示までの一連の作業を自動的に行うことができるので、自動的に仮設エレベータ2を所定の停止階に移動させ、停止階で待機している運搬作業者に対して資材情報T1をスピーカ61に出力して確認させることが可能となり、資材3の運搬先を間違えることなく確実に搬送することができ、従来のような資材情報を手書きで記録するといった手間を省くことができる。そして、資材管理者Mが作業現場に不在であっても揚重作業を継続して行うことができることから、作業効率の向上を図ることができる。しかも、荷下ろしが完了したことの資材揚重実績情報T4を無線で資材管理者Mに通知することができるので、資材管理者Mが揚重作業の進行状態をリアルタイムで確認することができる。
【0032】
以上、本発明による仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムおよび揚重管理方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では電子タグ4を資材3に取り付けているが、これに限定されることはなく、資材運搬用のパレットや台車9に取り付けるようにしてもかまわない。
また、本実施の形態では、仮設エレベータ1のケージ2を形成する6面のうち一部または全ての面において、複数の電子タグ読み取り用の通信アンテナ5を備えているが、これに限定されることはない。そして、本実施の形態では、資材3の積み込み位置(資材位置情報T2)として3箇所(右側位置H1、中央位置H2、左側位置H3)を識別することができる構成としているが、3箇所であることに限定されることはなく、例えば2箇所、或いは4箇所以上であってもよく、仮設エレベータ2の大きさ、台車9の大きさ、1まとまりの資材3の数量、形状などに応じて適宜設定することができる。
【0033】
なお、本資材揚重管理システム1では、例えば、荷下ろし階のフロアー内を無人走行可能な無人搬送車を設置しておき、その無人搬送車に具備させた電子タグの読取装置により、無人搬送車がフロアー内の運搬先を読み取り、自動運転により運搬するような構成とすることも可能である。
そして、本実施の形態ではタグ管理装置6にスピーカ61を設けた構成としているが、出力部が音声出力であることに制限されることはなく、例えば電子表示板のように文字情報(表示)、或いは音声と表示の両方によって各停止階にいる運搬作業者に対して資材情報T1や資材位置情報T2を知らせる構成であってもかまわない。
【0034】
また、電子タグ4の取り付け位置、通信アンテナ5の取り付け位置は任意であり、ひとまとまりとなる資材3の大きさ、形状等に対応して、任意の箇所に取り付けることができる。要は、電子タグ3と通信アンテナ5とが、仮設エレベータ2内に資材3を積み込んだときに、その資材3の電子タグ4を通信アンテナ5で受信できるように配置されていればよいのである。
そして、本実施の形態では、台車9上に資材3を載せた状態で仮設エレベータ2内に積み込んでいるが、台車9を使用しない方法、つまり、資材3を直接、仮設エレベータ2内に積み込むようにしてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態による仮設エレベータを用いた資材揚重管理システムの全体概要を示す図である。
【図2】開閉扉が開いた状態の仮設エレベータを示す正面図である。
【図3】図2に示すA−A線断面図である。
【図4】資材揚重実績情報の流れを示す概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1 資材揚重管理システム
2 仮設エレベータ
3 資材
4 電子タグ
5 通信アンテナ
6 タグ管理装置(タグ管理手段)
61 スピーカ(出力部)
7 エレベータ運転制御部
8 エレベータ制御盤
9 台車
10 情報発信部(情報発信手段)
T1 資材情報
T2 資材位置情報
T3 停止階情報
T4 資材揚重実績情報
F1 基準階

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設エレベータを用いた資材の揚重作業を管理するための資材揚重管理システムであって、
資材、資材運搬用パレット、または台車に取り付けられるとともに資材を特定する資材情報が組み込まれた電子タグと、
前記仮設エレベータに設けられていて、前記電子タグの資材情報を無線で受信可能とされる通信アンテナと、
前記通信アンテナから前記資材情報を入力し、その資材情報に応じた停止階に前記仮設エレベータを移動させるためのエレベータ運転制御部に向けて前記資材情報を送信する機能、所定の停止階において前記資材情報を人に認識させるための出力部に出力させる機能、および前記通信アンテナで前記仮設エレベータ内で前記電子タグを認識しなくなったときを荷下ろし完了とした資材揚重実績情報を蓄積する機能を有するタグ管理手段と、
前記タグ管理手段から前記資材揚重実績情報を受信し、その資材揚重実績情報を無線によって資材管理者が管理する端末へ送信する情報発信手段と、
を備えていることを特徴とする仮設エレベータを用いた資材揚重管理システム。
【請求項2】
前記仮設エレベータには、複数の資材が積み込み可能とされ、
複数の前記資材のそれぞれに対応する複数の通信アンテナが設けられ、
前記タグ管理手段は、資材情報と、その資材情報を受信した通信アンテナを認識することにより前記仮設エレベータ内の資材の位置を特定する資材位置情報を得て、該資材位置情報を前記出力部に出力するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の仮設エレベータを用いた資材揚重管理システム。
【請求項3】
前記資材情報には当該資材の停止階情報が組み込まれ、
前記エレベータ運転制御部では、前記タグ管理手段より前記停止階情報を受信し、その停止階情報に基づいて前記仮設エレベータを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の仮設エレベータを用いた資材揚重管理システム。
【請求項4】
前記出力部は、音声、及び表示の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の仮設エレベータを用いた資材揚重管理システム。
【請求項5】
前記情報発信手段は、揚重作業終了時に、その作業終了情報を運搬依頼者へ自動発信する機能を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の仮設エレベータを用いた資材揚重管理システム。
【請求項6】
資材を特定する資材情報を組み込んだ電子タグを資材、資材運搬用パレット、または台車に取り付け、その資材を仮設エレベータ内に積み込み、前記電子タグの前記資材情報を前記仮設エレベータに設けた通信アンテナで受信する工程と、
前記資材情報を前記通信アンテナからタグ管理手段へ入力する工程と、
前記タグ管理手段から資材情報を、前記仮設エレベータを運転制御するためのエレベータ運転制御部に送信し、前記仮設エレベータを所定の停止階に移動させる工程と、
前記所定の停止階において、前記タグ管理手段によって前記資材情報を人に認識させるための出力部に出力する工程と、
前記タグ管理手段において、前記通信アンテナで前記仮設エレベータ内で電子タグを認識しなくなったときを荷下ろし完了とした資材揚重実績情報を蓄積する工程と、
前記タグ管理手段から前記資材揚重実績情報を情報発信手段で受信し、その資材揚重実績情報を無線によって資材管理者が管理する端末へ送信する工程と、
を有していることを特徴とする資材揚重管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−208878(P2009−208878A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52440(P2008−52440)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】