説明

仮設用手摺

【課題】作業者が型枠上で作業する間は、手摺の無い状況を可及的に少なくして作業者の開口への落下を防止する。また手摺の盛り替えに要する手間とコストを最小限に抑える。
【解決手段】この仮設用手摺1では、支柱2はそれぞれ、略逆L字形に形成された一対の支柱本体3と、各支柱本体3を相互に水平方向に回動可能に連結する枢支部材4と、手摺杆8を保持する保持部材5と、各支柱本体2を差し筋11に着脱可能に固定する固定部材7とを備え、各支柱2が型枠端部に沿って配設された差し筋11を介して設置され、各支柱2間に手摺杆8が架け渡される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠が組み立てられ、型枠の端部又は側部に沿って複数の差し筋が垂直方向に向けて配設される建設工事現場で使用する仮設用手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートの建物の建築工事では、床スラブなどの型枠が組み立てられると、型枠に鉄筋を配筋し、コンクリートを打設するが、床スラブの型枠端部に階段などが設置される場合には、型枠端部に開口が形成されるため、型枠に鉄筋を配筋する作業中や型枠にコンクリートを打設する作業中に、作業者が開口に落下する危険がある。従前は、床スラブの型枠端部に沿って垂直方向に配設される差し筋に危険表示板付きのロープを張ったり、型枠端部の近傍の型枠の上に危険を回避するための障害物を設置したりして対応していたが、これらのロープや障害物は開口などの危険箇所を表示する役目にすぎず、作業者の開口への落下を防止する有効な対策にはなっていないものであった。
【0003】
そこで従来は、型枠端部から開口への作業者の落下を防止するために、型枠端部に単管パイプとクランプで組み立てられた仮設用手摺を設置することが提案され、この種の仮設用手摺が特許文献1に開示されている。この文献1の仮設用手摺は、基板、支柱、横パイプからなり、支柱が基板を介して型枠の底面上に固定され、支柱上部にクランプが取り付けられて、この支柱上にクランプを介してパイプが架け渡されるようになっている。このようにして型枠端部に仮設用手摺が設置されることで、従来のような鉄筋などにロープなどを引掛ける対応策に比べて、安全性を一段と向上させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−331433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の仮設用手摺では、支柱が型枠内に設置されるため、通常、型枠にコンクリートを打つ前に手摺の盛り替えが必要で、コンクリートの打設時に手摺が撤去されてしまうと、コンクリートの打設作業中は作業者の開口への落下を防止することができないという問題があり、また、この手摺の場合は、型枠にコンクリートを打ち、コンクリートの養生後に盛り替えを行うとしているが、手摺をコンクリート打ちの前後を通して設置しておくと、盛り替えの際に、コンクリートに穴が明いて、その補修が必要となり、その分だけ手間とコストが増大する、という問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、この種の仮設用手摺において、型枠の端部又は側部に沿って配設される複数の差し筋を利用して、型枠の端部又は側部に沿って簡易に設置し、作業者が型枠上で作業する間は、手摺の無い状況を可及的に少なくして作業者の開口への落下を防止すること、併せて手摺の盛り替えに要する手間とコストを最小限に抑えることなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の仮設用手摺は、複数の支柱とこれらの支柱に支持される手摺杆とにより構成され、型枠が組み立てられ、前記型枠の端部又は側部に沿って複数の差し筋が垂直方向に向けて配設された建設工事現場に、前記型枠の端部又は側部に沿って仮設される仮設用手摺において、前記支柱はそれぞれ、略逆L字形に形成され、略垂直方向に延びる支持脚、及びこの支持脚の上部から略水平方向に延びる連結部を有する一対の支柱本体と、前記各連結部を相互に水平方向に回動可能に連結する枢支部材と、前記各支柱本体の連結部に設けられて、前記手摺杆を保持する保持部材と、前記各支柱本体に設けられて、前記各支柱本体を前記差し筋に着脱可能に固定する固定部材とを備え、前記各支柱が前記差し筋を介して前記型枠の端部又は側部に沿って設置され、前記各支柱間に前記手摺杆が架け渡される、ことを要旨とする。
【0008】
そして、本発明の仮設用手摺は、各部に次のような構成が採用されることが好ましい。
(1)一対の支柱本体の一方の連結部と他方の連結部は長さが異なる。
(2)枢支部材はボルト及びナットからなり、一対の支柱本体は各連結部の突出端が相互に重ねられて前記ボルト及びナットにより枢支される。
(3)手摺杆は単管パイプからなり、保持部材に自在クランプが採用される。
(4)固定部材は差し筋の周囲に弾性的に嵌合可能に弾性を有する材料により断面略U字形又は断面略C字形に形成されて、各支柱本体の周囲に固着される。
(5)固定部材は異なる径の差し筋に適合可能に少なくとも2種類の大きさの固定部材を対にして備え、大きい径の差し筋に適合する一対の固定部材は各支柱本体の外側に固着され、小さい径の差し筋に適合する一対の固定部材は各支柱本体の内側に固着される。
(6)支柱と型枠との間に斜めに設けられて、差し筋に固定された支柱を位置決め保持する控え部材を備え、前記控え部材は伸縮可能に構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の仮設用手摺は、上記の構成により、型枠の端部又は側部に沿って配設される複数の差し筋を利用して、型枠の端部又は側部に沿って簡易に設置することができ、作業者が型枠上で作業する間は、手摺の無い状況を可及的に少なくして作業者の開口への落下を防止することができ、併せて手摺の盛り替えに要する費用を最小限に抑えることができる、という効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、この発明を実施するための最良の形態について図1乃至図10を用いて説明する。図1に示すように、仮設用手摺1は、支柱2と、手摺杆8と、控え部材9とを備える。この手摺1の場合、1ユニットが、2本の支柱2、2と、1本の手摺杆8と、2本1組で2組の控え部材9,9、9,9とにより構成されるが、図1には支柱2、手摺杆8、控え部材9を1本ずつ例示してある。
【0011】
支柱2はそれぞれ、一対の支柱本体3、3と、これらの支柱本体3、3を連結する枢支部材4と、各支柱本体3、3の連結部32に設けられて、手摺杆8を保持する保持部材5と、各支柱本体3、3の連結部32に設けられて、控え部材9に係止される係合部材6と、各支柱本体3、3に設けられて、各支柱本体3、3を差し筋に着脱可能に固定する固定部材7,7、7,7とを備える。
【0012】
一対の支柱本体3、3はそれぞれ、細長い金属板により略逆L字形に形成されて、略垂直方向に延びる所定の長さの支持脚31と、この支持脚31の上部から略水平方向に延びる支持脚31よりも短い所定の長さの連結部32とを有する。この場合、各支柱本体3、3の支持脚31、31は同じ長さになっているが、各支柱本体31、31の連結部32、32は長さが異なり、一方の支柱本体31の連結部32は他方の支柱本体31の連結部32よりも少し長くなっている。なお、ここでは支柱本体31を金属製の板材を用いて形成したが、金属製の棒材で形成することもできる。
【0013】
枢支部材4は各支柱本体3、3の連結部32、32を相互に水平方向に回動可能に連結するもので、この場合、ボルト及びナットが採用される。一対の支柱本体3、3は各連結部32、32の突出端が相互に重ねられてこれらボルト及びナットにより枢支される。また、この場合、ボルトには後述する自在クランプ(保持部材)5に突設された取付ボルト55が利用され、ナットには後述するリング(係合部材)6に突設されたナット61が利用される(図2(b)参照)。この枢支部材4により、各支柱本体3、3の各連結部32、32が回動可能に連結されて、図3に示すように、各連結部32、32の間隔、すなわち各支柱本体3、3の間隔を広げたり狭めたり任意に調整することができる。なお、この枢支部材4は各支柱本体3の連結部32を相互に水平方向に回動可能に連結する軸状の部材であればよく、特にボルト及びナットに限定するものではない。
【0014】
保持部材5は自在クランプが採用される。この場合、自在クランプ5は、図2(b)に示すように、略L形の本体51と、本体51の一端に軸支される留め具52と、本体51の他端に取り付けられるボルト(スイングボルト)53及びナット54と、本体51の取付面に突設された取付ボルト55とにより構成される。なお、保持部材5は手摺杆8を保持できるものであれば、筒状のものや半筒状のものに代えることができる。
【0015】
係合部材6はリング形状の部材(以下、単にリング6という。)が使用される。この場合、リング6の外周面に、図2(b)に示すように、ナット61が一体に設けられる。この係合部材6にはアイナットなどを用いることができる。なお、この係合部材6は後述する控え部材9(の係止部90)が係合可能な形状を有していればよく、特にリングに限定されるものではない。
【0016】
固定部材7は、差し筋の周囲に弾性的に嵌合可能に弾性(ばね性)を有する金属材料により断面略U字形又は断面略C字形に形成されたクリップで、各支柱本体3の周囲に固着される。この場合、固定部材7は異なる径の差し筋に適合可能に少なくとも2種類の大きさ(内径)のクリップを対にして備え、大きい径の差し筋に適合する(内径を有する)一対のクリップ7が各支柱本体3の外側に固着され、小さい径の差し筋に適合する(内径を有する)一対のクリップ7が各支柱本体3の内側に固着される。なお、これらクリップ7の固着位置は特に限定されるものではなく、上記とは反対に、大きい径の差し筋に適合する一対のクリップ7が各支柱本体3の内側に固着され、小さい径の差し筋に適合する一対のクリップ7が各支柱本体3の外側に固着されてもよく、これらクリップ7は差し筋との関係で、各支柱本体3において最適な位置に固着される。
【0017】
手摺杆8は所定の長さを有する単管パイプが採用される。
【0018】
控え部材9は、先端に係止部90を有し、全体が伸縮可能に構成されて、支柱2を支持する支軸91と、この支軸91の基端を控え部材9の設置位置に固定するための固定部材96とを備える。この場合、支軸91はパイプ92と軸94とにより構成される。パイプ92は所定の長さを有する直状のパイプからなり、先端の内周にねじ部93が形成される。軸94はパイプ92よりも長い所定の長さを有し、パイプ92内に挿入可能に所定の径を有する直状の軸からなり、先端に鉤形形状の係止部90が形成され、中間から基端までパイプ92のねじ部93に螺合可能なねじ部95が形成される。このようにして軸94がパイプ92内に両者間のねじ部95、93を螺合して挿入され、軸94を正転方向に回転させることにより軸94がパイプ92から突出して支軸91全体が伸長し、軸94を逆転方向に回転させることにより軸94がパイプ92内に挿入されて支軸91全体が収縮する伸縮構造に構成される。また、固定部材96は釘などが挿通可能な穴を有する板材で、支軸91、この場合、パイプ92の基端にピン97を介して回動可能に取り付けられる。なお、控え部材9の伸縮構造は任意であり、ねじ形式に限定されるものではない。また、控え部材9先端の係止部90は支柱2側の係合部材6との関係で適宜の形状が決定され、特に鉤形形状に限定されるものではない。さらに、固定部材96は釘止め、ビス止めの他、固定部材96に楔形形状部を一体的に設けてこの楔形形状部で固定するようにしてもよい。
【0019】
このようにして仮設用手摺1が構成され、この手摺1は、図4に示すように、型枠10が組み立てられ、型枠10の端部又は側部に沿って複数の差し筋11が垂直方向に向けて配設された建設工事現場に、差し筋11を利用して、型枠10の端部又は側部に沿って設置され、各支柱2、2の保持部材(自在クランプ)5、5間に手摺杆(単管パイプ)8が架け渡されて組み立てられ、各支柱2、2と型枠10との間に控え部材9が斜めに設置されて、差し筋11、11上で手摺1が位置決め保持される。この手摺1の設置手順及び使用形態について、図5乃至図10を用いて、さらに詳しく説明する。
【0020】
図5は鉄筋コンクリートの建物の建設工事現場で、床スラブなどの型枠10が組み立てられ、型枠端部に開口12が設けられて、開口12の縁部で型枠端部に沿って複数の差し筋11,11、…が2本ずつ並列に所定の間隔で配設された状態を示している。この型枠端部に配設された差し筋11,11、11,11を利用して、手摺1を組み立てる。ここではまず、2本1組の支柱2、2を、各支柱2、2のクリップ7,7、7,7を使って、所定の間隔をおいた2箇所の2本並列の各差し筋11,11、11,11に固定する。この場合、差し筋11のサイズ(径)に応じて、各支柱本体3、3の外側又は内側のクリップ7を選択し、大きい径の差し筋の場合は各支柱本体3の外側の一対のクリップ7,7を選び、小さい径の差し筋の場合は各支柱本体3の内側の一対のクリップ7,7を選ぶ。そして、各箇所の差し筋11、11の間隔に合せて、図3に示すように、各支柱本体3、3の間隔を調整しながら、各支柱本体3、3の各クリップ7,7、7,7に各箇所の差し筋11,11、11,11を嵌め込めば、各クリップ7,7、7,7の弾性作用(ばね作用)により、各クリップ7,7、7,7が差し筋11,11、11,11を抱持して、各支柱本体3、3が各箇所の差し筋11,11、11,11に固定される。これにより、2本の支柱2、2が型枠端部に沿って設置される。
【0021】
次に、図6に示すように、これら2本の支柱2、2間に単管パイプ8を架け渡す。この場合、単管パイプ8を各支柱2、2上の各自在クランプ5、5の本体51、51に載せて留め具52、52で挟み、留め具52、52をボルト53、53に係合させナット54、54で締め付ける。これにより、単管パイプ8が各支柱2、2上に支持固定される。
【0022】
続いて、図7に示すように、2本1組で2組の控え部材9,9、9,9を各支柱2、2と型枠10との間に斜めに設置する。この場合、2本1組の控え部材9,9、9,9をそれぞれ、先端の係止部90を支柱2のリング6に係止し、固定部材96を型枠10上面の型枠端部に近接する位置と型枠縁部から少し離れた位置に並列に固定するので、各控え部材9,9、9,9の長さを適宜調整する。既述のとおり、軸94を正転方向に回転させることにより軸94がパイプ92から突出して支軸91全体が伸長し、軸94を逆転方向に回転させることにより軸94がパイプ92内に挿入されて支軸91全体が収縮する。各控え部材9,9、9,9の長さが決まったところで、2箇所の各固定部材96,96、96,96に釘を打ち込んで固定する。これにより、1組2本で2組の控え部材9,9、9,9がそれぞれ2本の支柱2、2と型枠10との間に斜めに設けられ、各組2本の控え部材9,9の3点支持により、差し筋11,11、11,11に固定された支柱2、2が確実に位置決め保持される。
【0023】
このように型枠端部に沿って手摺1が設置されることで、作業者の開口12への落下が防止され、この段階で、図8に示すように、型枠10に鉄筋13を配筋する作業が行われる。そして、この時点で型枠端部に配設された差し筋11,11、…の開口12側に型枠14が組み立てられると、手摺1の控え部材9,9、9,9のみの盛り替えを行い、2箇所の控え部材9,9、9,9を当初の型枠10の固定位置から取り外し、開口12側の型枠14上面に移動して、同様にして設置固定する。
【0024】
このようにして手摺1が型枠端部に沿って引き続き設置されて、作業者の開口12への落下が防止され、この段階で、図9に示すように、型枠10にコンクリート15を打つ作業が行われる。そして、コンクリート15の養生後、図10に示すように、型枠10、14の脱型とともに、控え部材9,9、9,9を取り外し、手摺1を撤去する。なお、手摺1の撤去手順は手摺1の設置の場合とは逆の手順となる。この手摺1は次の作業工程に転用される。また、この手摺1を使用しない場合は、図2(a)に示すように、支柱2を折り畳むことができる。この場合、各支柱本体3、3の連結部32、32は長さが異なるので、(短い連結部32の)一方の支柱本体3の外側に(長い連結部32の)他方の支柱本体3を重ねて折り畳むことができ、極めてコンパクトに収納することができる。さらに、自在クランプ5及びリング6は連結部32の枢支部材4を兼ねているので、図2(b)に示すように、支柱本体3から取り外し可能で、自在クランプ5及びリング6の部品管理が容易である。
【0025】
以上説明したように、この仮設用手摺1では、支柱2、2がそれぞれ、略逆L字形に形成され、略垂直方向に延びる支持脚31、及びこの支持脚31の上部から略水平方向に延びる連結部32を有する一対の支柱本体3、3と、各連結部32、32を相互に水平方向に回動可能に連結する枢支部材4と、各支柱本体3、3の連結部32に設けられて、手摺杆8を保持する保持部材5と、各支柱本体3、3に設けられて、各支柱本体3、3を差し筋11、11に着脱可能に固定する固定部材7,7、7,7とを備え、各支柱2、2が型枠端部に沿って配設された差し筋11,11、11,11を介して型枠端部に沿って設置され、各支柱2、2間に手摺杆8が架け渡されるので、手摺1を型枠端部に沿って簡易に設置することができ、作業者が型枠10上で作業する間は、手摺の無い状況を可及的に少なくして作業者の開口12への落下を防止することができ、併せて手摺1の盛り替えを容易に行えるので、盛り替えに要する手間及び費用を最小限に抑えることができる。
【0026】
そして、この手摺1の場合、一対の支柱本体3、3の一方の連結部32と他方の連結部32は長さが異なるので。一方の支柱本体3の外側又は内側に他方の支柱本体3を重ねて折り畳むことができ、コンパクトに収納することができる。また、一対の支柱本体3、3は各連結部32、32の突出端が相互に重ねられてボルト55及びナット61により枢支されるので、支柱本体3、3の間隔を差し筋11、11の間隔に合せて簡単に調整することができ、支柱2の差し筋11、11への取り付けを容易にすることができる。さらに、手摺杆8は単管パイプからなり、保持部材5に自在クランプが採用されるので、手摺杆8を簡易な取付作業で構成することができる。またさらに、固定部材7は差し筋11の周囲に弾性的に嵌合可能に弾性を有する材料により断面略U字形又は断面略C字形のクリップに形成されて、各支柱本体3の周囲に固着されるので、差し筋11をクリップ7に嵌め込むだけの簡単な取付作業で、支柱2を差し筋11、11に確実に固定することができる。そして、固定部材7は異なる径の差し筋に適合可能に2種類の大きさの固定部材を対にして備え、大きい径の差し筋に適合する一対の固定部材7は各支柱本体3の外側に固着され、小さい径の差し筋に適合する一対の固定部材7は各支柱本体3の内側に固着されるので、支柱2を異なるサイズの差し筋11、11に合せて容易に固定することができる。またさらに、控え部材9が支柱2と型枠10との間に設置されるので、差し筋11、11に固定された支柱2を確実に位置決め保持することができる。また、この控え部材9は伸縮可能に構成されるので、控え部材9の長さを簡単に調整することができ、支柱2と型枠10との間に確実かつ容易に固定することができる。
【0027】
なお、この実施の形態では、型枠端部に開口12が形成された場合に、開口12縁部で型枠端部に沿って配設された差し筋11,11、…を利用して設置する仮設用手摺について例示したが、本発明の仮設用手摺は、型枠の端部又は側部に関わらず、また開口の有無に関わらず、手摺が必要な各所に適用することができる。また、この実施の形態では、手摺1の1ユニットが、2本の支柱2、2と、1本の手摺杆8と、2本1組で2組の控え部材9,9、9,9とにより構成されるが、この1ユニットを複数組組み合わせることで、型枠の端部又は側部に沿って直線的に長い手摺を構成したり、型枠上に形成された開口を取り囲むような環状の手摺を構成したりすることもできる。
【0028】
また、この実施の形態では、手摺1が1組2本で2組の控え部材9,9、9,9で保持されているが、これは手摺1のぐらつきをより確実に止めるためのもので、1組1本で2組の控え部材でも手摺1のぐらつきを十分に抑えることができる。さらには、多少のぐらつきを受忍するのであれば、控え部材9はなくてもかまわない。さらに、この実施の形態では、一対の支柱本体3、3の一方の連結部32と他方の連結部32は長さが異なるものとしたが、各連結部32、32は同じ長さであってもよく、この場合は、上記実施の形態のものに比べて支柱2の収納性の点で若干劣後することになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態における仮設用手摺の構成を示す図
【図2】(a)同手摺を折り畳んで収納する状態を示す図(b)同手摺から自在クランプを取り外した状態を示す図
【図3】(a)(b)(c)同手摺の一対の支柱本体の間隔を調整する状態を示す図
【図4】同手摺が、型枠が組み立てられ、型枠の端部又は側部に沿って複数の差し筋が垂直方向に向けて配設された建設工事現場に、差し筋を利用して、型枠の端部又は側部に沿って設置され、各支柱の保持部材間に手摺杆架け渡されて組み立てられ、さらに各支柱と型枠との間に控え部材が斜めに設置されて、差し筋上で手摺が位置決め保持された状態を示す図
【図5】同手摺の詳しい設置手順及び使用形態を示すもので、特に、2本1組の支柱を、各支柱のクリップを使って、所定の間隔をおいた2箇所の2本並列の各差し筋に固定する状態を示す図
【図6】同手摺の詳しい設置手順及び使用形態を示すもので、特に、2本の支柱間に単管パイプを架け渡す状態を示す図
【図7】同手摺の詳しい設置手順及び使用形態を示すもので、特に、2本1組で2組の控え部材を各支柱と型枠との間に斜めに設置する状態を示す図
【図8】同手摺の詳しい設置手順及び使用形態を示すもので、特に、型枠端部に沿って手摺が設置されて、作業者の開口への落下が防止され、型枠に鉄筋を配筋する作業が行われる状態を示す図
【図9】同手摺の詳しい設置手順及び使用形態を示すもので、特に、型枠端部に沿って手摺が設置されて、作業者の開口への落下が防止され、型枠にコンクリートを打つ作業が行われる状態を示す図
【図10】同手摺の詳しい設置手順及び使用形態を示すもので、特に、コンクリートの養生後、型枠の脱型とともに、控え部材を取り外し、手摺を撤去する状態を示す図
【符号の説明】
【0030】
1 仮設用手摺
2 支柱
3 支柱本体
31 支持脚
32 連結部
4 枢支部材(ボルト及びナット)
5 保持部材(自在クランプ)
51 本体
52 留め具
53 ボルト
54 ナット
55 取付ボルト
6 係合部材(リング)
61 ナット
7 固定部材(クリップ)
8 手摺杆(単管パイプ)
9 控え部材
90 係止部
91 支軸
92 パイプ
93 ねじ部
94 軸
95 ねじ部
96 固定部材
97 ピン
10 型枠
11 差し筋
12 開口
13 鉄筋
14 型枠
15 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱とこれらの支柱に支持される手摺杆とにより構成され、型枠が組み立てられ、前記型枠の端部又は側部に沿って複数の差し筋が垂直方向に向けて配設された建設工事現場に、前記型枠の端部又は側部に沿って仮設される仮設用手摺において、
前記支柱はそれぞれ、
略逆L字形に形成され、略垂直方向に延びる支持脚、及びこの支持脚の上部から略水平方向に延びる連結部を有する一対の支柱本体と、
前記各連結部を相互に水平方向に回動可能に連結する枢支部材と、
前記各支柱本体の連結部に設けられて、前記手摺杆を保持する保持部材と、
前記各支柱本体に設けられて、前記各支柱本体を前記差し筋に着脱可能に固定する固定部材と、
を備え、
前記各支柱が前記差し筋を介して前記型枠の端部又は側部に沿って設置され、前記各支柱間に前記手摺杆が架け渡される、
ことを特徴とする仮設用手摺。
【請求項2】
一対の支柱本体の一方の連結部と他方の連結部は長さが異なる請求項1に記載の仮設用手摺。
【請求項3】
枢支部材はボルト及びナットからなり、一対の支柱本体は各連結部の突出端が相互に重ねられて前記ボルト及びナットにより枢支される請求項1又は2に記載の仮設用手摺。
【請求項4】
手摺杆は単管パイプからなり、保持部材に自在クランプが採用される請求項1乃至3のいずれかに記載の仮設用手摺。
【請求項5】
固定部材は差し筋の周囲に弾性的に嵌合可能に弾性を有する材料により断面略U字形又は断面略C字形に形成されて、各支柱本体の周囲に固着される請求項1乃至4のいずれかに記載の仮設用手摺。
【請求項6】
固定部材は異なる径の差し筋に適合可能に少なくとも2種類の大きさの固定部材を対にして備え、大きい径の差し筋に適合する一対の固定部材は各支柱本体の外側に固着され、小さい径の差し筋に適合する一対の固定部材は各支柱本体の内側に固着される請求項5に記載の仮設用手摺。
【請求項7】
支柱と型枠との間に斜めに設けられて、差し筋に固定された支柱を位置決め保持する控え部材を備え、前記控え部材は伸縮可能に構成される請求項1乃至6のいずれかに記載の仮設用手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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