説明

伝動ベルトの製造方法と伝動ベルト

【課題】 ベルト伝動面に短繊維を植毛して露出し、抜けにくくしてベルト走行時の騒音を軽減し、そしてベルト伸びを低減した伝動ベルトの製造方法と伝動ベルトを提供する。
【解決手段】ゴムスリーブ24を焼付け処理して得られた表面層23に短繊維26を植毛する工程、ゴムスリーブ24を可撓性ジャケット42を装着した内型41と、内周面にリブ型からなる型部45を刻印した外型46との間に配置する工程、可撓性ジャケット42を膨張させてゴムスリーブ24を型部45に密着するように予備成型体21を作製する工程、外型46から離脱した内型41の可撓性ジャケット42面に少なくとも心線を巻き付けた別のスリーブ25を作製する工程、上記内型41を外型45内に設置し、可撓性ジャケット42を膨張させて別のスリーブ25を予備成型体21と一体的に加硫する工程、そして脱型して型付部を形成したベルトスリーブ51を作製する工程らなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝動ベルトの製造方法と伝動ベルトに係り、詳しくはリブ部等の伝動面に短繊維を植毛して露出し、抜けにくくしてベルト走行時の騒音を軽減し、そしてベルトの伸びを小さくした伝動ベルトの製造方法と伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、ベルト長手方向に延びるリブ部を備え、かつ短繊維を幅方向に配向した圧縮ゴム層とを積層してなる伝動ベルトが知られている。
【0003】
この伝動ベルトは、一般に、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、接着ゴム層に隣接してリブ部を形成するフラットな圧縮ゴム層とを積層してなるスリーブを加硫缶に装着し、リブ部のない状態のフラットなスリーブを加硫成形し、この圧縮ゴム層を研削してリブ部を削りだし、必要なリブ部の数に合わせて輪切りにして製造していた。
【0004】
しかしながら、スリーブの圧縮ゴム層を研削してリブ部を形成することにより、相当な量の材料ロスが発生していた。そこて、研削しないでリブ部を形成する方法が提案されている。
【0005】
これを改善する方法として、短繊維含有ゴム組成物を拡張ダイによってシート化したものを伝動ベルトに使用することである。例えば、特許文献1には、Vリブ部成形溝を有する拡張ダイを出口部分に備えた押出機によって円筒状リブゴムチューブを押出し、このリブゴムチューブを切開したシート用いて金型上でVリブドベルト成形体を成形して、加硫し、そしてベルト成形体のVリブ部のリブ表面を研削して短繊維をリブ部表面に露出させ、走行時の騒音を軽減したVリブドベルトを作製することが開示されている。
【0006】
一方、このような研削方法によって短繊維をリブ部表面に露出させる以外に、特許文献2には静電植毛によって動力伝動側及び被伝達面の少なくとも一方の伝達部接触表面に立毛を設け、走行時の騒音を軽減した動力伝動用部材が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、ベルト表面にフロック加工されたファブリックを装着し、摩擦係数を増加させた駆動面を設けた伝動ベルトが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平8−74936号公報
【特許文献2】特開平9−14361号公報
【特許文献3】特開2001−82549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、リブ部を有する伝動ベルトの製造方法では、静電植毛によって直接リブ部の表面に付着させると、V形状のリブ溝の入口付近では充分な植毛が出来ても、リブ溝に奥深い個所では植毛しにくいといった問題があり、新たな製造方法の開発が望まれていた。一方、フロック加工されたファブリックを用いる場合には、不織布のようなファブリック(基体)に接着剤を塗布し、この上に短繊維フロックを機械的に、また静電気的に付着したものをベルトの製造に使用するものであり、フロック加工されたファブリックの端部をラップ接合し、あるいは突合せ接合するために、ベルト成形後にはファブリックの接合部から剥離が起こる可能性があった。
【0010】
本発明はかかる問題に着目し、鋭意研究した結果、ベルト伝動面に短繊維を植毛して露出し、抜けにくくしてベルト走行時の騒音を軽減し、そしてベルト伸びを低減した伝動ベルトの製造方法と伝動ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成すべく本願請求項1記載の発明は、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部を有する圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトの製造方法において、
未加硫のゴムスリーブを焼付け処理して得られた表面層に短繊維を植毛し、
該ゴムスリーブを、可撓性ジャケットを装着した内型と、内周面にリブ型もしくはコグ型からなる型部を刻印した外型との間に配置し、
上記可撓性ジャケットを膨張させて上記ゴムスリーブを外型の刻印した型部に密着するように予備成型体を作製し、
外型から離脱した内型の可撓性ジャケット面に少なくとも心線を巻き付けた別のスリーブを作製し、
再度、上記内型を外型内に設置し、可撓性ジャケットを膨張させて別のスリーブを外型に装着した予備成型体と一体的に加硫し、
脱型して型付部を形成した加硫ベルトスリーブを作製する、伝動ベルトの製造方法にある。
【0012】
また、本願請求項記載の発明は、ゴムスリーブを焼付け処理して得られた表面層に接着剤を塗付して短繊維の付着力を高めたり、焼付け処理した表面層が完全に加硫していない状態としてゴム流れを抑制したり、短繊維がパイル糸を静電植毛したものを含んでいる。
【0013】
更に、本願請求項記載の発明は、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルト長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部を有する圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトにおいて、ゴムを波形状に流動させた内層と、植毛した短繊維を露出させるようにゴムに固着させた表面層からなる型付部を有している伝動ベルトにあり、また短繊維がパイル糸を静電植毛したものを含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によると、未加硫のゴムスリーブを焼付け処理して得られた表面層に短繊維を植毛し、その後に加硫することによって加硫時における表面層のゴム流れを抑制し、短繊維のゴム中への埋設を防いて常時短繊維を露出させ、また短繊維を抜けにくくして、ベルト走行時の騒音を長時間軽減することができる。
【0015】
また、予備成型体と別のスリーブとを一体的に加硫するものであって、特に別のスリーブの径方向への変形が少ないために、伸びの小さなベルトを成形することができ、更には焼付け処理して得られた表面層を形成してもリブ部等の型付部の形状が正確に成形できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施例を説明する。
本発明では、圧縮ゴム層を形成する短繊維を幅方向に配向させたゴム材を作製するが、その製造方法として押出方法やカレンダーによる圧延方法がある。無論、短繊維を含有させないゴム材も使用することができる。
【0017】
以下では、その一例として、繊維を幅方向に配向させたシート状のゴム材を押出方法で作製する場合には、予めオープンロールによってポリマー100質量部に10〜40質量部の短繊維を投入して混練した後、混練したマスターバッチをいったん放出し、これを20〜50°Cまで冷却してゴムのスコーチを防止する。
【0018】
1〜10質量部の軟化剤を投入すると、短繊維とゴムのなじみが良くなり、ゴム中への分散が良くなるばかりか、短繊維自体が絡み合って綿状になるのを防ぐ効果がある。即ち、軟化剤が短繊維に浸透し、素繊維同士の絡み合いがほぐれるための潤滑剤としての役割をはたし、短繊維が綿状になるのを阻止し、かつ短繊維とゴムのなじみが良くなって短繊維の分散が良くなる
【0019】
続いて、マスターバッチを押出機におけるシリンダーの押出スクリューで通常40〜100℃に温度調節された状態で混練りした後、短繊維混入ゴムをスムーズに環境拡張ダイからなるゴム通路へ流し、そしてゴム通路の中を通過させながら短繊維を円周方向に配向させた筒状成形体に押出成形する。その後、筒状成形体は短繊維が内層から外層にかけて円周方向に均一に配向した厚さ1〜10mmのものであり、切断手段によって1個所切開しながら一枚のシート状のゴム材にし、続いて該ゴム材を所定間隔で切断する。
【0020】
ここで使用するゴム材の原料ゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー、エチレン−プロピレンゴム(EPR)やエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)からなるエチレン−α−オレフィンエラストマー等のゴム材の単独、またはこれらの混合物が使用される。ジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどが挙げることができる。
【0021】
上記ゴム材には、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿等の繊維からなり繊維の長さは繊維の種類によって異なるが、1〜10mm程度の短繊維が用いられ、例えばアラミド繊維であると3〜5mm程度、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿であると5〜10mm程度のものが用いられる。その添加量はゴム100質量部に対して10〜40質量部である。
【0022】
更に、上記ゴム材には、軟化剤、カーボンブラックからなる補強剤、充填剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫剤等が添加される。
【0023】
上記軟化剤としては、一般的なゴム用の可塑剤、例えばジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタレート系、ジオクチルアジペート(DOA)等のアジペート系、ジオクチルセバケート(DOS)等のセバケート系、トリクレジルホスフェート等のホスフェートなど、あるいは一般的な石油系の軟化剤が含まれる。
【0024】
続いて、内型41に装着された加硫ゴム製の可撓性ジャケット42の外周面に、離型紙あるいは樹脂フィルムからなる離型シート(図示せず)を巻き付けた後、短繊維を配向させたシートのゴム材22を巻き付けて、ラップジョイントして未加硫のゴムスリーブ24を作製する。
【0025】
そして、図1に示すように上記内型41を回転テーブル30に設置して回転しながら、ヒーター31によりゴムスリーブ24を焼付け処理して表面層23を形成する。表面層23は350〜500℃で1〜4秒程度加熱し、部分的に加硫したスキン層になり、その後加硫してもゴム流れが抑制され、植毛糸26がゴム中に埋設することがない。表面層23の厚みは0.1〜1mm程度である。
【0026】
次いで、内型41を回転させながらゴムスリーブ24の表面層23に接着剤をスプレー法、ディップ法等の公知の方法で塗布する。接着剤としては、トルエン、メチルエチルケトン等のゴムシート22を溶かすことができる有機溶剤、ゴム系接着剤、RFL(レゾリシン−ホルムアルデド−ラテックス)接着剤、ウレタン系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン系エマルジョン等がある。RFL液はレゾルシンとホルムアルデドとの初期縮合体をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリル、NBR、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体ゴムラテックスである。また、RFL液にイソシアネート化合物も添加することができる。
尚、接着剤を塗布する前に、ゴムスリーブ24の表面をアルコール拭きなどのクリーニング処理、プライマー処理等の前処理を行うこともできる。
【0027】
接着剤の厚みは、特に限定されるものではないが、短繊維を良好にさせるためにも約0.05〜1mm、好ましくは0.05mm〜0.5mmである。しかし、本発明では、接着剤を必ず塗付する必要はないが、塗付した方が好ましい。
【0028】
続いて、図2に示すように公知の静電植毛機を用いて、ゴムスリーブ24の表面層23に静電植毛を行う。植毛処理としては、内型41をアースとし、静電植毛機の電極に電圧を印加することにより電界を形成し、この電界内にレーヨン、綿、ポリエステル、ナイロン、アラミド、ビニロン、炭素繊維、ポリテトラフルオロエチレン等などからなる表面を電着処理したパイルを供給し、飛翔させてゴムスリーブ24の表面層23に向けて突き刺すことにより植毛糸26を設け、植毛後のゴムスリーブ24を自然または加熱乾燥する。
【0029】
上記パイルの長さは0.1〜5.0mmが好ましく、アスペクト比(長さLmm/太さ直径Dmmは30〜300である。また、植毛糸の密度は摩擦係数や走行時の音に寄与するものであり、今日使用されている伝動ベルトに近時するもので、10,000〜500,000本/cmである。
【0030】
次いで、図3に示すように上記植毛したゴムスリーブ24を装着した内型41を外型46の内側に一定の空隙を設けて基台上に載置する。内型41は別の成形工程より移動してくる関係上、媒体流通口Aと媒体送入排出路Bとは分離しており、内型41を基台に載置後、媒体流通口AをジョイントJでパイプと連結する。
【0031】
媒体送入機を作動して高圧空気もしくは高圧蒸気を媒体送入排出路B、媒体流通口Aを経て、可撓性ジャケット42の内部に送入する。可撓性ジャケット42は、その上下部が内型41上に密閉固定されているため、可撓性ジャケット42の内面と内型41の外面の間に空気が充満し、可撓性ジャケット42は次第に膨張する。そして、その外周面に装着されている植毛した第1のスリーブ24を半径方向に均一に膨張させ、加熱ヒーター若しくは高温蒸気で100〜160℃に加熱した外型46のリブ型である型部45と30〜120秒間接触せしめる。
【0032】
このとき、可撓性ジャケット42の膨張押圧力により、上記植毛したゴムスリーブ24が外型46の型部45に押圧され、図4のような表面に複数のV型突起の型付部27を有する未加硫の予備成型体21を形成するに至る。そして、植毛した短繊維はゴム流れによってゴム中に埋設せずに表面に露出して表面層23に強固に接合する。
【0033】
その後は、バルブを真空ポンプの方へ切替えて、可撓性ジャケット42内に充満している空気を排気し、次いで吸引作用で可撓性ジャケット42を元の位置に収縮復帰せしめる。
【0034】
そして、内型41を外型46から抜き取り、内型41の可撓性ジャケット42の外周面に補強布47、接着ゴム49、およびコードからなる心線48を順次に捲き付けて第2のスリーブ25を形成する。その後、図5に示すようにこの内型41を外型46内へ設置した後、図6に示すように可撓性ジャケット42を膨張させ、第2のスリーブ25を半径方向に均一に膨張させ、加熱ヒーター若しくは高温蒸気で100〜180℃に加熱した外型46の型部45に装着した予備成型体21に密着して一体的に加硫し、ベルトスリーブ51を作製する。
【0035】
上記製造方法のように未加硫の予備成型体21を成型することにより、成形時に可撓性ジャケット42の膨張による第2のスリーブ25の伸張量を抑え、また心線48を平坦に配置することができ、寸法安定性に優れたVリブドベルトを作製することができる。
【0036】
加硫後は、図7に示すように可撓性ジャケット42を収縮させ、内型41を外型46から脱型した後、外型46に装着した加硫済みベルトスリーブ51を抜き取る。加硫済みベルトスリーブ51の型付部27の表面では、短繊維(植毛糸26)が型付部27の表面層23に固着して種々の角度で起毛し、露出した状態になっている。
【0037】
更に、上記加硫済みベルトスリーブ51を他の1軸もしくは2軸ドラムに挿入して回転させながら、円周方向に所定幅に切断し、ドラムより取出し反転することにより、周長が一定で、V形リブが正確に型付形成されたVリブドベルト1を得た。尚、外型46を分割式モールドにした場合、未加硫スリーブの挿入ならびに加硫スリーブの取り外しが容易になり、かつこの分割面が一種の空気抜きの機能を果し、V型リブをより一層正確に形成することができる。
【0038】
図8は得られたVリブドベルトの断面図である。Vリブドベルト100は、高強度で低伸度のコードよりなる心線102を接着ゴム層103中に埋設し、その下側に弾性体層である圧縮ゴム層104を有している。この圧縮ゴム層104にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブ部106(型付部)が設けれ、リブ部の内層110に短繊維109が波状に配置してベルトの耐側圧性を向上させ、更にリブ部の表面層111に植毛短繊維108が固着して露出している。尚、表面層111は接着層107を含んでいる。
【0039】
接着ゴム層103に使用されるゴムとしては、短繊維を除いた圧縮ゴム層104のゴム配合物に類似している。無論、短繊維を含めてもよい。
【0040】
心線102としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維が使用され、中でもエチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維フィラメント群を撚り合わせた総デニール数が4,000〜8,000の接着処理したコードが、ベルトスリップ率を低く抑えることができ、ベルト寿命を延長させるために好ましい。また、心線102にはゴムとの接着性を改善する目的で接着処理が施される。このような接着処理としては繊維をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液に浸漬後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成するのが一般的である。しかし、これに限ることなくエポキシ又はイソシアネート化合物で前処理を行った後に、RFL液で処理する方法等もある。
【0041】
心線102は、スピニングピッチ、即ち心線の巻き付けピッチを0.9〜1.3mmにすることで、モジュラスの高いベルトに仕上げることができる。0.9mm未満になると、コードが隣接するコードに乗り上げて巻き付けができず、一方1.3mmを越えると、ベルトのモジュラスが徐々に低くなる。
【0042】
背面補強材105は、織物、編物、不織布の繊維材料あるいはゴム材料から選択されるが、より好ましいものは不織布である。構成する繊維素材としては、例えば綿、麻、レーヨン等の天然繊維や、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。上記帆布は公知技術に従ってレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)に浸漬後、未加硫ゴムを背面補強材105に擦り込むフリクションを行ったり、またRFL液に浸漬後にゴムを溶剤に溶かしたソーキング液に浸漬処理する。
【0043】
このようなVリブドベルトは、リブ部表面に均一に付着した短繊維108がベルト走行時の騒音を軽減し、更にリブ部表面からの亀裂も発生を阻止する。
【0044】
尚、以上説明した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
【0045】
まず、上記実施形態では、圧縮ゴム層が幅方向に配向した短繊維を含有しているタイプにより説明したが、コスト低減のために短繊維を含ませない圧縮ゴム層であってもよい。短繊維を含まない圧縮ゴム層であっても、リブ部に沿った圧縮ゴム層の流動を確保しつつ、心線の整列状態を良好なものに維持したまま、スリーブを積層して加硫成形をすることができる。
【0046】
短繊維を入れない代わりに、圧縮ゴム層には固体潤滑材を配合することができる。この固体潤滑材は六方晶系又は鱗片状のグラファイト、二流化モリブデン、そしてポリテトラフルオロエチレンから選ばれたものであり、その添加量は原料ゴム100質量部に対して10〜100質量部、好ましくは10〜60質量部であり、10質量部未満の場合にはベルト質量部を超えると、ゴム物性の伸びが小さくなり、ベルト寿命が短くなる。
【0047】
ゴムスリーブ24を圧縮ゴム層だけとし、スリーブ25を接着ゴム層の第1部分と心線と接着ゴム層の第2部分との積層体とすることができる。この場合、リブに沿った流動は圧縮ゴム層だけとなり、接着ゴム層の全体がこの流動から隔離された状態となり、心線48の整列状態がより確実となる。ただし、圧縮ゴム層と接着ゴム層との加熱加圧状態での加硫接合が確実に行われるように適宜な材料選択を行う。
【0048】
伝動ベルトの背面補強材について、場合により背面補強材を積層しない形式の伝動ベルトとすることもできる。
【0049】
また、上述した型装置を用いた伝動ベルトの製造方法により、ローエッジコグベルトも成形することができる。このベルトは、接着ゴム層内にベルト長手方向に沿ってスパイラル状に埋設した心線と、該心線の上側(ベルト外周側)に積層した伸張ゴム層と、前記心線の下側(ベルト内周側)に積層した圧縮ゴム層からなり、圧縮ゴム層は所定間隔で設けた凹部と凸部とを交互に有するコグ部を有している。また伸張ゴム層の背面及び圧縮ゴム層のコグ部表面には補強布を設けている。
【0050】
このベルトを成形する場合には、外型46は本体内周方向に沿って所定間隔で外型46の長手方向の延びるコグ型に相当する型部45を設けたものを使用することができる。その他の型装置の構造は変わらない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の伝動ベルトの製造方法と伝動ベルトは、ベルト走行時の騒音を軽減し、そしてベルトの伸びを小さくしたVリブドベルト、ローエッジVベルト等の伝動ベルトに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】内型に装着したゴムスリーブを焼付け処理している状態を示す断面図である。
【図2】ゴムスリーブの表面層に短繊維を植毛した状態を示す図である。
【図3】予備成型体を成形している状態の縦断図である。
【図4】予備成型体を作製した後状態の断面図である。
【図5】スリーブを作製する前状態の断面図である。
【図6】スリーブを加硫している状態の断面図である。
【図7】スリーブを加硫した後状態の断面図である。
【図8】本発明の製造方法で得られたVリブドベルトの断面図である。
【符号の説明】
【0053】
21 予備成型体
22 ゴム材
23 表面層
24 ゴムスリーブ
25 別のスリーブ
26 植毛糸
27 型付部
41 内型
42 可撓性ジャケット
45 型部
46 外型
51 ベルトスリーブ
100 Vリブドベルト
102 心線102
103 接着ゴム層
104 圧縮ゴム層
106 リブ部
107 接着層
108 植毛短繊維
110 内層
111 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルトの長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部を有する圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトの製造方法において、
未加硫のゴムスリーブを焼付け処理した表面層に短繊維を植毛し、
該ゴムスリーブを、可撓性ジャケットを装着した内型と、内周面にリブ型もしくはコグ型からなる型部を刻印した外型との間に配置し、
上記可撓性ジャケットを膨張させて上記ゴムスリーブを外型の刻印した型部に密着するように予備成型体を作製し、
外型から離脱した内型の可撓性ジャケット面に少なくとも心線を巻き付けた別のスリーブを作製し、
上記内型を外型内に設置し、可撓性ジャケットを膨張させて別のスリーブを予備成型体と一体的に加硫し、
脱型して型付部を形成した加硫ベルトスリーブを作製する、
ことを特徴とする伝動ベルトの製造方法。
【請求項2】
未加硫のゴムスリーブを焼付け処理した表面層に接着剤を塗付する請求項1記載の伝動ベルトの製造方法。
【請求項3】
焼付け処理した表面層が完全に加硫していない状態である請求項1または2記載の伝動ベルトの製造方法。
【請求項4】
短繊維はパイル糸を静電植毛したものである請求項1〜3に何れかに記載の伝動ベルトの製造方法。
【請求項5】
ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層と、該ゴム層に隣接してベルト長手方向に延びるリブ部もしくはベルト長手方向に所定間隔で設けたコグ部からなる型付部を有する圧縮ゴム層とを積層した伝動ベルトにおいて、ゴムを波形状に流動させた内層と、植毛した短繊維を露出させるようにゴムに固着させた表面層からなる型付部を有していることを特徴とする伝動ベルト。
【請求項6】
短繊維がパイル糸を静電植毛したものである請求項5記載の伝動ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−7450(P2006−7450A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184347(P2004−184347)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】