説明

伝導性フィルムを調製するためのプロセスおよびそのプロセスを用いて調製した物品

自立型のフィルムは、i)対向する表面を有するマトリクス層と、ii)ナノロッドのアレイであって、前記ナノロッドは前記マトリクス層を通過して、前記マトリクス層の一方または両方の表面に少なくとも1マイクロメートルの平均距離を突出するように配向されているナノロッドのアレイとを含む。この自立型のフィルムを調製する方法は、(a)基板上にナノロッドのアレイを提供する工程と、任意に(b)犠牲的層をアレイに浸透させる工程と、(c)マトリクス層を前記アレイに浸透させて、これにより浸透したアレイを生成する工程と、任意に(d)工程(b)が存在する場合、前記マトリクス層を取り除くことなく前記犠牲的層を取り除く工程と、(e)前記浸透したアレイを前記基板から取り除いて自立型のフィルムを形成する工程とを含む。選択されるナノロッドの種類および密度に応じて、この自立型のフィルムは、光学フィルタ、ACFまたはTIMとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条第(e)項に基づいて、2007年2月22日出願の米国仮特許出願第60/902,804号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/902,804号は、参照により本願明細書に引用したものとする。
【0002】
(連邦政府による資金援助に基づく研究開発に関する陳述)
なし。
【0003】
ナノチューブを含む自立型のフィルムが、本願明細書に記載されるプロセスにより調製される。ナノチューブの種類に応じて、この自立型のフィルムは、光学フィルタとして、異方性導電フィルム(ACF)として、または、放熱材料(TIM)として有用である。
【背景技術】
【0004】
半導体、トランジスタ、集積回路(IC)、個別素子および当該技術分野で公知の他のものなどの電子回路構成要素は、通常の動作温度で、または通常の動作温度範囲内で動作するように設計されている。しかしながら、電子回路構成要素の動作は、熱を発生させる。充分な熱が取り除かれない場合、電子回路構成要素はその通常の動作温度を著しく越える温度で動作する。過度に高い温度は、電子回路構成要素の性能およびそれに関連するデバイスの動作に悪影響を与える可能性があり、平均故障間隔に悪影響を与える可能性がある。
【0005】
これらの課題を回避するために、熱は、電子回路構成要素から熱管理補助機構(thermal management aid)(例えばヒートシンク)への熱伝導により除去することができる。その後ヒートシンクは、任意の好都合な手段(例えば対流または輻射技術)によって冷却され得る。熱伝導の間、熱は、電子回路構成要素とヒートシンクとの間の表層接触により、または電子回路構成要素およびヒートシンクのTIMへの接触により電子回路構成要素からヒートシンクへ移ることができる。TIMの熱インピーダンスがより低いほど、電子回路構成要素からヒートシンクへの熱の流れは、より大きい。
【0006】
電子回路構成要素およびヒートシンクの表面は、典型的には、完全に滑らかでなく、それゆえ表面間の完全な接触を成し遂げることは困難である。劣った熱伝導体である空気スペースが、表面間に現れ、インピーダンスを上昇させる。これらの空間は、表面の間にTIMを嵌入することにより満たすことができる。製造業者がよりますます小型のデバイスを製造するにつれて、薄くて、電子構成要素から熱管理補助機構へ能率的に熱を移すために改良された熱伝導率を有するTIMについての継続するニーズがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マトリクスでランダムに分布するナノチューブを含む複合材料は、当該技術分野においてTIMとしての使用されることが知られている。しかしながら、ナノチューブがランダムに分布される代わりに、アレイとして配置されるとき、そのアレイは改良された特性(例えば熱伝導率)を呈し得る。かかるアレイを含むTIMを生成することは、困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの方法は、マトリクス層に突出するナノロッドを有する自立型のフィルムを製作するために有用である。この方法は、
(a)基板上にナノロッドのアレイを提供する工程と、
任意に(b)犠牲的層をアレイに浸透させる工程と、
(c)マトリクス層をアレイに浸透させて、これにより浸透したアレイを生成する工程と、
任意に(d)工程(b)が存在する場合、このマトリクス層を取り除くことなく犠牲的層を取り除く工程と、
(e)浸透したアレイを基板から取り除いて自立型のフィルムを形成する工程であって、上記マトリクス層は対向する表面を有し、かつ上記ナノロッドはマトリクス層を通過して、マトリクス層の対向する表面の一方または両方に少なくとも1マイクロメートルの距離を突出するように配向される工程と
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1a】シリコンウエハ上のMWNTのアレイを示す図である。このアレイは、実施例1で使用される。
【図1b】実施例1で調製された自立型のフィルムの断面を、ある倍率で示す図である。このフィルムは、マトリクスの表面に突出するMWNTのアレイを有するマトリクス層を含む。
【図1c】実施例1で調製された自立型のフィルムの断面を、異なる倍率で示す図である。
【図1d】実施例2で調製される自立型のフィルムの断面を示す図である。
【図2】本願明細書に記載される自立型のフィルムを含む電子デバイスの一部分の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(用語の定義および使用法)
すべての量、比率および割合(%)は、特に明記しない限り重量によるものである。本願の目的のために、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、各々1つ以上を指す。本願明細書中の式において、「Et」はエチル基を表し、「Me」はメチル基を表し、「Ph」はフェニル基を表し、「Vi」はビニル基を表す。「MWNT」は、多層カーボンナノチューブを意味する。「SWNT」は、単層カーボンナノチューブを意味する。「TEOS」は、テトラエトキシシランを意味する。
【0011】
「ナノロッド」は、0.5マイクロメートル以下の幅および10より大きい、あるいは100より大きいアスペクト比を有する熱伝導性の構造体を意味する。ナノロッドは、中空ナノチューブでもよい。ナノロッドは、円筒形状でもよく、この場合、幅(直径)は0.5マイクロメートル以下である。あるいは、ナノロッドは、異なる形状を有することができる。用語ナノロッドは、単層カーボンナノチューブ、MWNTおよび窒化ホウ素ナノチューブを含むが、これらに限定されない。
【0012】
「ナノロッドのアレイ」は、存在する複数のナノロッドが、平面基板の表面と交差するある角度でかつ互いに平行に配向された相当な数のロッドと整列していることを意味する。MWNTのアレイとしては、図1aに示されているアレイが挙げられる。
【0013】
「犠牲的層」は、マトリクス層を取り除かずに、かつマトリクスからナノロッドを取り除かずに選択的に除去することができるあらゆるフィルム形成材料を意味する。
【0014】
(方法)
1つの方法は、マトリクス層に突出するナノロッドを有する自立型のフィルムを製作するために有用である。この方法は、
(a)平面基板上にナノロッドのアレイを提供する工程と、
任意に(b)犠牲的層をアレイに浸透させる工程と、
(c)マトリクス層をアレイに浸透させて、これにより浸透したアレイを生成する工程と、
任意に(d)工程(b)が存在する場合、このマトリクス層を取り除くことなく犠牲的層を取り除区工程と、
(e)浸透したアレイを平面基板から取り除いて自立型のフィルムを形成する工程であって、上記マトリクス層は対向する表面を有し、かつ上記ナノロッドはマトリクス層を通過して、マトリクス層の対向する表面の一方または両方に少なくとも1マイクロメートルの距離を突出するように配向される工程と
を含む。
【0015】
このマトリクス層は、ナノロッドの中央にあってもよいし、なくてもよい。1つ以上のマトリクス層が、上記方法で浸透できる。第2のマトリクス層は、上記方法で種々の時期に加えることが可能である。例えば、工程(d)が存在する場合、上記方法は、工程(d)の前、その間またはその後に第2のマトリクス層をアレイに浸透させる工程を、任意にさらに含むことができる。この犠牲的層を取り除くことによって残ったスペースは、第2のマトリクス層によって浸透できる。
【0016】
ナノロッドのアレイは、プラズマ化学気相成長プロセスによって準備することができる。ナノロッドのアレイは、任意に、工程(a)の前に黒鉛化工程に供されてもよい。理論に束縛されることを望まないが、カーボンナノチューブがアレイを形成するために使用される場合、この黒鉛化工程は、本願明細書に記載される方法により調製される自立型のフィルムの熱伝導率を高めると考えられる。平面基板上のナノロッドのアレイは、当該技術分野で周知であり、ナノラボ(NanoLab)、02458 マサチューセッツ州、ニュートン、チャペル通り55から市販されている。
【0017】
工程(b)および(d)は、マトリクス層の両方の対向する表面を越えて突出するナノチューブを有する自立型のフィルムを提供するために、上記方法に含まれてもよい。工程(b)で使用される犠牲的層は、熱可塑性物質(例えば、高粘度非硬化性シリコーン流体またはシリコーンガム、フルオロシリコーン、光硬化性シリコーン(photo definable silicone)、シリカまたはワックス)であってよい。工程(b)は任意の好都合な手段によって実施さてよく、正確な手段は選択される犠牲的層の種類に依存する。例えば、犠牲的層がシリカである場合、犠牲的層はソルゲル溶液からシリカの層をコーティングすることにより形成することができる。
【0018】
工程(b)が存在する場合、工程(d)が存在してもよい。工程(d)は任意の好都合な手段によって実施することができ、正確な手段は選択される犠牲的層の種類に依存する。例えば、犠牲的層がワックスである場合、それは加熱によって取り除くことができる。犠牲的層がシリカであり、その犠牲的層がソルゲル溶液からシリカの層をコーティングすることにより形成される場合、工程(d)はHFを含む溶液への暴露により実施される。工程(d)および(e)は、順次または並行して実施することができる。例えば、犠牲的層がシリカであり、工程(d)がHFを含む溶液への暴露により実施される場合、工程(d)および(e)は並行して実施される。本方法は、任意にさらに、工程(e)の後、(f)自立型のフィルムを洗浄する工程を含むことができる。工程(f)は、残余のHFまたは犠牲的層の残余の部分または両方を取り除くために使用することができる。
【0019】
あるいは、工程(b)は存在してもよく、工程(d)は存在しなくてもよい。例えば、この方法は、工程(b)で浸透されたワックスを有する自立型のフィルムを調製するために用いることができる。工程(d)が存在しない場合、このワックスは自立型のフィルム中の相変化層として作用できる。
【0020】
工程(c)は任意の好都合な手段によって実施することができ、正確な手段は選択されるマトリクス層の種類に依存する。例えば、工程(c)は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティングおよび溶媒キャスト法からなる群から選択される方法により実施することができる。マトリクス層は、熱硬化性ポリマーを含むことができる。好適な熱硬化性ポリマーの例としては、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーンエラストマー、ウレタンエラストマー、アクリルエラストマーおよびそれらの組み合わせが挙げられる。シリコーンエラストマーがマトリクス層として用いられる場合、そのシリコーンエラストマーは、A)1分子あたり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンと、B)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する架橋剤と、C)ヒドロシリル化触媒とを含む組成物をアレイに浸透させ、そしてこの組成物を硬化させて工程(d)または工程(e)の前にシリコーンエラストマーを形成することにより調製することができる。
【0021】
あるいは、マトリクス層は、熱可塑性ポリマーを含むことができる。好適な熱可塑性ポリマーの例としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリオキシメチレン、ポリホルムアルデヒド、シリコーンアミド共重合体、シリコーンポリエーテル、シリコーンポリエーテルイミド共重合体、シリコーンウレタン共重合体、シリコーン尿素およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
ナノロッドのアレイが比較的低い密度を有する場合、マトリクス層は、充填材を任意に含むことができる。充填材は、ナノロッドのアレイの中へのマトリクスの浸透を阻害しないほどに十分な小さい粒径を有しなければならない。充填材は、熱伝導性の充填材でもよい。好適な熱伝導性の充填材の例としては、銅、窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、銀、アルミニウムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
(自立型のフィルム)
上記のプロセスの生成物は、
i)対向する表面を有するマトリクス層と、
ii)ナノロッドのアレイと
を含み、このナノロッドはマトリクス層を通過して、マトリクス層の一方または両方の表面で少なくとも1マイクロメートルの距離を突出するように配向されている自立型のフィルムである。
【0024】
このアレイは、0.5体積%〜50体積%の範囲のナノロッドの密度を有することができる。正確な密度は、アレイを提供するために使用される方法および自立型のフィルムの最終用途に依存する。例えば、ACFは、例えば0.1の体積%〜10体積%のナノロッドという低い密度を有することができる。熱伝導性のナノロッドが使用される場合には、熱伝導率を改善するために、密度は5体積%〜50体積%の範囲とすることができる。
【0025】
本発明において使用されるナノロッドは、ナノチューブでもよい。選択されるナノロッドは、熱伝導性かつ電気絶縁性でもよい。好適なナノロッドの例としては、MWNTおよび単層カーボンナノチューブが挙げられる。あるいは、選択されるナノロッドは、導電性かつ熱伝導性でもよい。好適なナノロッドの例としては、窒化ホウ素ナノチューブが挙げられる。
【0026】
ナノロッドは、5〜500マイクロメートルの範囲の平均高さを有することができる。ナノロッドは、マトリクス層を通過して、マトリクス層の対向する表面の一方または両方に少なくとも1マイクロメートルの平均距離を突出するように、配向される。あるいは、ナノロッドは、マトリクス層の一方または両方の対向する表面に、1マイクロメートル〜0.8ミリメートルの範囲の平均距離を突出することができる。
【0027】
(自立型のフィルムの使用)
この自立型のフィルムは、さまざまな応用で使用することが可能である。ナノチューブの種類に応じて、この自立型のフィルムは、光学フィルタとして、ACFとして、またはTIMとして有用である。この自立型のフィルムがTIMとして用いられる場合、この自立型のフィルムは、
a)熱を発生させる構成要素と、
b)放熱材料と、
c)熱管理補助機構と
を備え、放熱材料が、熱を発生させる構成要素の表面から熱管理補助機構の表面まで延在する熱通路に沿って熱を発生させる構成要素と熱管理補助機構との間に配置され、放熱材料は上記の自立型のフィルムを含み、ナノロッドは熱を発生させる構成要素の表面および熱管理補助機構の表面に接触するデバイスで使用することができる。
【0028】
図2は、電子デバイス200の一部分の断面を示す。デバイス200は、熱を発生させる構成要素(ICチップとして示される)203、第1の放熱材料(TIM1)206(上記のとおりのマトリクス層に突出するMWNTを有する自立型のフィルムである)、および熱管理補助機構(金属カバーとして示される)207を備える。TIM1 206は、熱を発生させる構成要素203の表面から熱管理補助機構207の表面まで延在する矢印208により表される熱通路に沿って、熱を発生させる構成要素203と熱管理補助機構207との間に配置される。デバイス200が動作するとき、ナノチューブは伝熱を促進するために、熱を発生させる構成要素203の表面および熱管理補助機構207の表面と接触する。熱を発生させる構成要素203は、ダイ接着剤209を介して基板204に取り付けられる。基板204は、パッド210を介して基板204に対して取り付けられるはんだ球205を有する。第2のインタフェース材料(TIM2)202は、熱管理補助機構207とヒートシンク201との間に配置される。デバイスが動作するとき、熱は矢印208により表される熱通路に沿って移動する。
【0029】
この自立型のフィルムは、電子デバイスを製作する方法で用いることが可能である。この方法は、熱を発生させる構成要素と熱管理補助機構との間に放熱材料を配置する工程を含む。放熱材料は、熱を発生させる構成要素の表面から熱管理補助機構の表面まで延在する熱通路に沿って配置される。放熱材料は、上記の自立型のフィルムを含み、ナノロッドは、熱を発生させる構成要素の表面および熱管理補助機構の表面に接触する。熱を発生させる構成要素は半導体ダイを含んでいてよく、熱管理補助機構はヒートシンクまたは熱分散部材を含むことができる。
【0030】
デバイスは、上記の自立型のフィルムを含んで調製することができる。例えば、上記の自立型のフィルムは、本願明細書に記載されているインタフェース材料に加えて、またはそのインタフェース材料の代わりに、例えば米国特許第5,912,805号および同第6,054,198号に開示されるデバイスの放熱材料として、またはその放熱材料の中で使用することが可能である。
【実施例】
【0031】
これらの実施例は、当業者に本発明を例示することを目的としており、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を制限するものと解釈されてはならない。
【0032】
(実施例1:犠牲的層を用いずに調製した自立型のフィルム)
クロロホルム中に溶解させた20重量%の硬化性シリコーンエラストマー組成物(ダウコーニング(DOW CORNING)(登録商標)シルガード(Sylgard) 184(米国、ミシガン州、ミッドランドのダウコーニング社(Dow Corning Corporation)から市販されている)を含む充分な量の溶液(0.5〜1mL)を、上にMWNTのアレイを有する2×2cmのシリコンウエハの上に分注した。このMWNTは18マイクロメートル±2マイクロメートルの平均高さ、0.1マイクロメートルの平均直径を有し、図1aに示すように、ウェーハの表面の6〜10面積%を覆う密度を有していた。このナノチューブのアレイは、穏やかな機械的な力によるウェーハからの剥離に適していた。
【0033】
次に、このウェーハおよび溶液を、ケマットスピンコーター(Chemat Spin Coater) KW−4Aを使用して1000回転/分で30秒間、回転させた。回転した後に、ウェーハを15分間静置させ、次いで150℃のオーブンに1時間置き、このシリコーンエラストマーマトリクス層を硬化させた。冷却後、このウェーハをHFおよび脱イオン水の35体積%溶液に浸漬すると、10分後に自立型のフィルムがウェーハから離れて浮いた。この自立型のフィルムを、異なる倍率で図1bおよび図1cに示す。自立型のフィルムを取り出し、洗浄工程に供して残留するHF溶液を除去した。
【0034】
(実施例2:犠牲的層を用いて調製した自立型のフィルム)
5%の固形分シリカを含むソルゲル溶液(TEOS/HCl/エタノール/H2O)を含む充分な量の溶液を、2×2cmのMWNTでコーティングしたシリコンウエハ基板上へ分注した。この溶液および基板を、ケマットスピンコーター KW−4Aを使用して、2000回転/分で30秒間回転させた。ウェーハを30分の周囲条件(20℃、35%相対湿度)で静置させ、次いで50℃で30分間、次いで150℃で15分間加熱することによって硬化させた。次に、11重量%のシリコーンポリエーテルイミド共重合体(ジェレスト(Gelest) SSP−085)のトルエン溶液の充分量を、MWNTアレイ上に配置し、この溶液およびウェーハを1000回転/分で30秒間回転させた。このウェーハを室温で15分間、次いで100℃で15分間静置し、トルエンを除去した。冷却後、ウェーハを、HFおよび脱イオン水の35体積%溶液に浸漬した。ほぼ20分後に、図1dに示すような自立型のフィルムが、ウェーハから離れて浮いた。このフィルムを取り出し、洗浄工程に供して、残留するHF溶液を除去した。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本願明細書に記載される方法により調製される自立型のフィルムは、光学フィルタとして、ACFとして、または、TIMとして有用である。理論に束縛されることは望まないが、カーボンナノチューブ、特にMWNTがアレイで使用される場合、改良された熱伝導率が成し遂げられ得ると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板上にナノロッドのアレイを提供する工程と、
任意に(b)犠牲的層を前記アレイに浸透させる工程と、
(c)マトリクス層を前記アレイに浸透させて、これにより浸透したアレイを生成する工程と、
任意に(d)工程(b)が存在する場合、前記マトリクス層を取り除くことなく前記犠牲的層を取り除く工程と、
(e)前記浸透したアレイを前記基板から取り除いて自立型のフィルムを形成する工程であって、前記マトリクス層は対向する表面を有し、かつ前記ナノロッドは前記マトリクス層を通過して、前記マトリクス層の前記対向する表面の一方または両方に少なくとも1マイクロメートルの平均距離を突出するように配向される工程と
を含む、方法。
【請求項2】
工程(d)が存在し、かつ前記方法がさらに、工程(d)の前、その間、またはその後に、第2のマトリクス層を前記アレイに浸透させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノロッドが、前記一方または両方の対向する表面に、1マイクロメートル〜0.8ミリメートルの範囲の距離を突出する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アレイが0.1体積%〜50体積%の範囲の密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノロッドが5〜500マイクロメートルの範囲の平均高さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノロッドが熱伝導性かつ電気絶縁性である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノロッドが導電性かつ熱伝導性である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノロッドが窒化ホウ素ナノチューブである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノロッドが多層カーボンナノチューブおよび単層カーボンナノチューブからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノロッドのアレイがプラズマ化学気相成長プロセスによって提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノロッドのアレイが工程(a)の前に黒鉛化工程に供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)が存在し、かつ前記犠牲的層がフルオロシリコーン、光硬化性シリコーン、シリカおよびワックスからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記犠牲的層がワックスである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(d)が存在し、かつ前記犠牲的層が加熱によって取り除かれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記犠牲的層がシリカであり、前記犠牲的層がソルゲル溶液からシリカの層をコーティングすることにより形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
工程(d)が存在し、かつ工程(d)および(e)がHF溶液への曝露によって実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(e)の後、(f)前記自立型のフィルムを洗浄する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記マトリクスが熱硬化性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記熱硬化性ポリマーが、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーンエラストマー、ウレタンエラストマー、アクリルエラストマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記熱硬化性ポリマーが、
A)1分子あたり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンと、
B)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する架橋剤と、
C)ヒドロシリル化触媒と
を含む組成物を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記マトリクスが熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリオキシメチレン、ポリホルムアルデヒド、シリコーンアミド共重合体、シリコーンポリエーテル、シリコーンポリエーテルイミド共重合体、シリコーンウレタン共重合体、シリコーン尿素およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記マトリクスがさらに充填材を含む、請求項18から請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記充填材が熱伝導性である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(c)が、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティングおよび溶媒キャスト法からなる群から選択される方法により実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の方法によって調製された自立型のフィルム。
【請求項27】
自立型のフィルムであって、
i)対向する表面を有するマトリクス層と、
ii)ナノロッドのアレイであって、前記ナノロッドは前記マトリクス層を通過して、前記マトリクス層の一方または両方の表面に少なくとも1マイクロメートルの平均距離を突出するように配向されているナノロッドのアレイと
を含む、自立型のフィルム。
【請求項28】
前記アレイが0.5体積%〜50体積%の範囲の平均密度を有する、請求項26に記載の自立型のフィルム。
【請求項29】
前記ナノロッドが5〜500マイクロメートルの範囲の平均高さを有する、請求項26に記載の自立型のフィルム。
【請求項30】
光学フィルタとしての請求項26から請求項28のいずれか1項に記載の自立型のフィルムの使用。
【請求項31】
異方性導電フィルムとしての請求項26から請求項28のいずれか1項に記載の自立型のフィルムの使用。
【請求項32】
放熱材料としての請求項26から請求項28のいずれか1項に記載の自立型のフィルムの使用。
【請求項33】
デバイスであって、
a)熱を発生させる構成要素と、
b)放熱材料と、
c)熱管理補助機構と
を備え、前記放熱材料は、前記熱を発生させる構成要素の表面から前記熱管理補助機構の表面まで延在する熱通路に沿って、前記熱を発生させる構成要素と前記熱管理補助機構との間に配置され、前記放熱材料は請求項26から請求項28のいずれか1項に記載の自立型のフィルムを含み、前記ナノロッドは前記熱を発生させる構成要素の前記表面および前記熱管理補助機構の前記表面に接触するデバイス。
【請求項34】
熱を発生させる構成要素と熱管理補助機構との間に放熱材料を配置する工程を含む方法であって、前記放熱材料は、前記熱を発生させる構成要素の表面から前記熱管理補助機構の表面まで延在する熱通路に沿って配置され、前記放熱材料は、請求項26から請求項28のいずれか1項に記載の自立型のフィルムを含み、前記ナノロッドは、前記熱を発生させる構成要素の前記表面および前記熱管理補助機構の前記表面に接触する方法。
【請求項35】
前記熱を発生させる構成要素が半導体ダイを含み、前記熱管理補助機構がヒートシンクまたは熱分散部材を含む、請求項33に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−519162(P2010−519162A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550868(P2009−550868)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/000977
【国際公開番号】WO2008/103221
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(506143975)ダウ コーニング コーポレーション (19)
【Fターム(参考)】