説明

伝導性高分子コーティング組成物、それを利用したコーティングフィルムの製造方法及びそのコーティングフィルム

【課題】伝導性高分子コーティング組成物、それを利用したコーティングフィルムの製造方法及びそのコーティングフィルムを提供する。
【解決手段】本発明の伝導性高分子コーティング組成物は、伝導性高分子水分散液と、水溶性バインダー樹脂と、アルコール溶媒と、有機溶媒と、水と、水溶性オレフィンワックスと、フッ素系樹脂と、を含む。また、本発明の伝導性高分子コーティングフィルムの製造方法は、前記伝導性高分子コーティング組成物を基板にコーティングする工程と、コーティングされた組成物を乾燥する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝導性高分子コーティング組成物、それを利用したコーティングフィルム製造方法及びそのコーティングフィルムに係り、さらに詳細には、保護フィルム用の伝導性高分子コーティング組成物、それを利用した汚染管理能力及び印刷性が向上したコーティングフィルムの製造方法及びそのコーティングフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムは、部材の表面に付着してその表面を保護する。通常、LCD(Liquid
Crystal Display)のようなディスプレイ装置の製造工程では、例えば、偏光板の表面の損傷を防止するために液晶パネルの最外側の表面上に保護フィルムを装着する。このような表面保護フィルム上には、指痕、指紋または他の汚れが付着し、帯電によってホコリや塵も付着する。したがって、表面保護フィルムは、このような汚れを容易に拭い取れる汚染管理能力及び帯電防止能力を必要とする。
【0003】
一方、表面保護フィルムが装着された偏光板は、その使用目的によって多くの種類があり、これらを判別するためには、シートのそれぞれに品名や軸方向を表示するか、またはバーコードによって必要情報が提供されることもある。この場合に付着した表面保護フィルムは、インクがよく広まり、軽く擦りつつ拭い取る時にも落ちないように、汚染管理能力とは相反する能力、すなわち、印刷性を必要とする。
【0004】
従来の表面保護フィルムは、PET(Polyethylenethiophene)のようなプラスチック基材上に、前記のような性能を得るために、帯電防止機能を有する帯電層を形成し、その上に汚染管理能力と印刷性とを有する層を形成して問題点を解決するか(特許文献1)、またはフィルムの帯電防止の主材料として4次アンモニウム2価塩形態の界面活性剤を使用したが、前記表面保護フィルムは、TFT(Thin Film Transistor)−LCDのような高仕様のディスプレイに用いるには、その帯電防止機能に限界がある。
【特許文献1】韓国特許第2003−0012766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、保護フィルムに汚染管理能力及び印刷性を具備可能な伝導性高分子コーティング組成物を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、前記コーティング組成物を使用して2回のコーティング工程で発生するコストの低減及び時間の短縮が可能な、簡単で便利な伝導性高分子コーティングフィルムの製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、前記方法で製造された伝導性高分子コーティングフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明では、ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリアニリン系高分子化合物またはこれらの混合物を含有する伝導性高分子水分散液と、水溶性バインダー樹脂と、アルコール溶媒と、有機溶媒と、水と、水溶性オレフィン系ワックスと、フッ素系樹脂と、を含む伝導性高分子コーティング組成物が提供される。
【0009】
また、本発明の他の目的を達成するために、前記伝導性高分子コーティング組成物を基板にコーティングする工程と、前記コーティングされた組成物を乾燥する工程と、を含む伝導性高分子コーティングフィルムの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の他の目的のために前記伝導性高分子コーティングフィルムの製造方法で製造されたコーティングフィルムが提供される。
【0011】
本発明の一具現例によれば、前記伝導性高分子コーティング組成物は、1ないし30重量%の伝導性高分子水分散液と、5ないし25重量%の水溶性バインダー樹脂と、5ないし40重量%のアルコール溶媒と、5ないし30重量%の機能性有機溶媒と、10ないし50重量%の水と、0.1ないし10%の水溶性オレフィン系ワックスと、0.001ないし5%のフッ素系樹脂と、を含むことが望ましい。
【0012】
本発明の他の具現例によれば、前記伝導性高分子コーティング組成物において、伝導性高分子水分散液は、PEDOTを含むことが望ましい。
【0013】
本発明の他の具現例によれば、前記伝導性高分子組成物において、水溶性バインダー樹脂は、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタル、ポリビニルアセテート、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが望ましい。
【0014】
本発明の他の具現例によれば、前記伝導性高分子組成物において、水溶性オレフィン系ワックスは、エチレン系ワックス、プロピレン系ワックス及びその混合物からなる群から選択されることが望ましい。
【0015】
本発明の他の具現例によれば、前記伝導性高分子組成物において、フッ素系樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレンPUフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、パーフルオロシクロコポリマー、ビニルエーテルフルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステルフルオロオレフィンコポリマー、テトラフルオロエチレンビニルエステルコポリマー、クロロトリフルオロエチレンビニルエステルコポリマー、テトラフルオロエチレンウレタン架橋体、テトラフルオロエチレンエポキシ架橋体、テトラフルオロエチレンアクリル架橋体、テトラフルオロエチレンメラミン架橋体及びその混合物からなる群から選択されることが望ましい。
【0016】
本発明の他の具現例によれば、前記伝導性高分子組成物において、アルコール溶媒は、炭素数1ないし5の脂肪族アルコールのうち一つ以上を選択して使用することが望ましい。
【0017】
本発明の他の具現例によれば、前記伝導性高分子組成物において、機能性有機溶媒は、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールメチルエーテル、N−メチルピロリドン、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトール及びこれらの混合物からなる群から選択されることが望ましい。
【0018】
また、本発明の他の具現例によれば、前記伝導性高分子コーティングフィルムの製造方法において、前記伝導性高分子コーティング組成物を水及びアルコールの混合溶媒でさらに希釈して使用することもある。
【0019】
本発明の伝導性高分子コーティング組成物を利用すれば、帯電防止、汚染管理能力及び印刷性に何れも優れた伝導性高分子コーティングフィルムを簡単かつ便利に製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の伝導性高分子コーティング組成物を利用すれば、帯電防止、汚染管理能力及び印刷性に何れにも優れた伝導性高分子コーティングフィルムを簡単かつ便利に製造することができる。本発明の伝導性高分子コーティング組成物は、一液型であって、表面保護フィルムの製造工程でコスト及び時間を短縮させることができる。また、本発明の伝導性高分子コーティング組成物は、水溶性溶媒を使用して環境にやさしい。本発明による製造方法で得られた伝導性高分子コーティングフィルムは、LCDのようなディスプレイの保護フィルムに適したコーティング特性及び光学特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の1実施形態について詳細に説明する。
前記のように、本発明の1実施形態に係る伝導性高分子コーティング組成物は、ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリアニリン系高分子化合物またはこれらの混合物を含有する伝導性高分子水分散液と、水溶性バインダー樹脂と、アルコール溶媒と、機能性有機溶媒と、水と、水溶性オレフィン系ワックスと、フッ素系樹脂と、を含む。
【0022】
本発明の1実施形態に係る伝導性高分子コーティング組成物に使用する伝導性高分子は、コーティングフィルムの表面に帯電防止効果を発生させ、ホコリなどの汚染源を除去するために使われる。本発明の1実施形態に係る伝導性高分子コーティング組成物のうち、伝導性高分子水分散液は、伝導性高分子化合物を水に分散または溶解させたものであって、高分子化合物の濃度が総分散液を基準に0.1ないし10重量%である。伝導性高分子化合物としては、ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリアニリン系高分子化合物またはこれらの混合物が望ましく、そのうち、ポリチオフェン系化合物がさらに望ましく、PEDOTが特に望ましい。
【0023】
一方、前記水分散液として、市販されているBayer社の商品名Baytron PやBaytron PHを使用してよい。BaytronPは、水にPEDOTが分散されている水分散液にポリスチレンスルホン酸(PSS)をドーパントとして添加した製品である。前記Baytron
PのうちPEDOTの含量は約1.4%である。
【0024】
前記伝導性高分子水分散液の含量は、伝導性高分子コーティング組成物全体に対して1ないし30重量%であることが望ましい。前記伝導性高分子水分散液の含量が1重量%未満であれば、表面抵抗が増加してコーティング後にコーティングフィルムの帯電防止及び電磁波遮蔽性能が低下するという問題があり、30重量%を超えれば、帯電防止機能が増加せずにコーティング性が低下するという問題がある。
【0025】
本発明の1実施形態に係る伝導性高分子コーティング組成物に使われる水溶性バインダー樹脂は、伝導性高分子の分散性を向上させ、生成されるコーティングフィルムの膜均一性、付着性、膜強度を向上させる役割を担う。本発明の1実施形態に使用する水溶性バインダー樹脂としては、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタル、ポリビニルアセテートまたはこれらの混合物が望ましく、水溶性ポリウレタン樹脂が特に望ましい。
【0026】
前記水溶性バインダー樹脂の含量は、伝導性高分子コーティング組成物全体に対して5ないし25重量%であることが望ましい。前記水溶性バインダー樹脂の含量が5重量%未満であれば、コーティングフィルムの均一性、接着力及び膜強度が低下するという問題があり、25重量%を超えれば、伝導性高分子の分散性が低下するという問題がある。
【0027】
本発明の1実施形態に係る伝導性高分子コーティング組成物は、伝導性高分子コーティング組成物全体に対して5ないし40重量%のアルコール溶媒を含むことが望ましい。前記アルコール溶媒は、コーティング組成物の乾燥性などコーティング性を向上させる役割を担う。前記アルコール溶媒としては、伝導性高分子コーティング組成物に通常的に使われるアルコール化合物を広範囲に使用し、望ましくは、炭素数1ないし5の脂肪族アルコールのうち何れか一つ以上を選択して使用し、さらに望ましくは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)またはこれらの混合物を使用し、望ましくは、エタノールとイソプロピルアルコールとを混合して製造した溶媒混合物を使用する。
【0028】
前記アルコール溶媒の含量が伝導性高分子コーティング組成物全体に対して5重量%未満であれば、乾燥性が低下する恐れがあり、40重量%を超えれば、伝導性高分子の分散性が低下して表面抵抗が増加するという問題がある。
【0029】
本発明の1実施形態に係る伝導性高分子コーティング組成物は、前記アルコール溶媒と共に、コーティング組成物の溶解性、分散性、乾燥性、膜均一性のようなコーティング性を向上させる機能性有機溶媒をさらに含んでよい。前記機能性有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、N−メチルピロリドン(NMP)、エチル−3−エトキシプロピオネート(EEP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ブチルカルビトール(BC)またはこれらの混合物を使用し、望ましくは、ジメチルスルホキシドを使用する。
【0030】
前記機能性有機溶媒の含量は、伝導性高分子コーティング組成物全体に対して5ないし30重量%、望ましくは10ないし30重量%である。前記機能性有機溶媒の含量が5重量%未満であれば、コーティング組成物のコーティング性が低下して不均一膜が形成されるという問題があり、30重量%を超えれば、コーティング性能が特別に向上せずに乾燥性が低下するという問題がある。
【0031】
本発明の1実施形態に係る伝導性高分子コーティング組成物に使用する水溶性オレフィン系ワックスとして、インク印刷性及び塗装密着性を表すポリオレフィン系ワックスを使用する。ポリオレフィン系ワックスとしては、エチレン系ワックス及びプロピレン系ワックスが単独でまたは混合して使われる。
【0032】
前記水溶性オレフィン系ワックスの含量は、インク組成物全体に対して0.1ないし10重量%として使用することが望ましい。水溶性オレフィン系ワックスの含量は、0.1重量%未満であれば、印刷性が低下して油性インクによる表示が難しく、10重量%を超えれば、帯電防止機能が低下し、コーティング液の安定性も低下してゲル化となる問題がある。
【0033】
本発明の1実施形態に係る伝導性高分子コーティング組成物に使用するフッ素系樹脂は、基材とコーティングフィルムとの密着性を向上させる。前記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、パーフルオロシクロコポリマー、ビニルエーテルフルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステルフルオロオレフィンコポリマー、テトラフルオロエチレンビニルエステルコポリマー、クロロトリフルオロエチレンビニルエステルコポリマー、テトラフルオロエチレンウレタン架橋体、テトラフルオロエチレンエポキシ架橋体、テトラフルオロエチレンアクリル架橋体、テトラフルオロエチレンメラミン架橋体などのフルオロ基を含有するポリマーが適切に利用される。前記フッ素系樹脂のうちポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が高い密着性を有する点で望ましい。
【0034】
フッ素系樹脂の含量は、伝導性高分子コーティング組成物全体に対して0.001%ないし5%重量%であることが望ましい。フッ素系樹脂の含量が0.001%未満であれば、水に対する表面接触角が小さくなって耐汚染性が低下し、5重量%を超えれば、耐汚染性が上昇して印刷性に影響を与えるので、インクによる表示が難しくなるという問題がある。
【0035】
次いで、本発明の1実施形態に係る伝導性高分子コーティング組成物の製造方法について説明する。
【0036】
前記含量の成分を混合し、かつ均一にして伝導性高分子コーティング組成物を作る。混合時に水溶性バインダー及び伝導性高分子水分散液の分散のために水を添加する。水は、全体伝導性高分子コーティング組成物に対して10ないし50重量%であることが望ましい。
【0037】
以下、伝導性高分子コーティングフィルムの製造方法について説明する。
本発明の1実施形態に係る伝導性高分子コーティングフィルムの製造方法は、本発明の1実施形態に係る伝導性高分子コーティング組成物を基板にコーティングする工程と、前記コーティングされた組成物を乾燥させる工程と、を含む。
【0038】
本発明の1実施形態に係る伝導性高分子コーティングフィルムの製造方法において、任意の水及びエタノールの混合溶液で前記伝導性高分子コーティング組成物をさらに希釈したコーティング完成液を使用してコーティングを行ってよい。望ましくは、伝導性高分子コーティング組成物:水:エタノールを1:1:3の割合で希釈する。
【0039】
前記コーティング用組成物をコーティングする基材としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン酸、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの有機高分子基材が挙げられる。
【0040】
望ましいコーティング法には、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法などがある。
【0041】
コーティングフィルムの乾燥条件は、それぞれのコーティング法に適した条件が選択されるが、通常的に使用する60ないし120℃の温度で5ないし120秒間実施することが望ましく、80ないし120℃の温度で10ないし100秒間実施することがさらに望ましい。特に望ましくは、コーティング後に80℃の温度条件で1分間乾燥させる。
【0042】
乾燥及び硬化温度が60℃未満である場合には、乾燥が不十分である。乾燥及び硬化温度が120℃以上である場合には、120℃以下で乾燥及び硬化させる時と比較しても、コーティングフィルムの性能面で有利な点がないだけでなく、コストが上昇して高温加熱による作業上の危険性が高まるという問題がある。
【0043】
乾燥及び硬化時間が5秒未満である場合には、乾燥が不十分であり、120秒を超えて乾燥及び硬化させても、コーティングフィルムの性能面で有利な点がないだけでなく、コーティングフィルムを形成するコストが上昇する。
【0044】
このように得られた伝導性高分子コーティングフィルムの帯電防止性は、表面抵抗が1×1010Ω/□(または Ω/sq)以下に管理されることが望ましい。表面抵抗が1×1010Ω/□(または Ω/sq)より大きければ、保護フィルムを剥離によって除去する過程で静電気の発生を防止できないので、ホコリが付着してしまう。また、液晶ディスプレイに保護フィルムを適用する場合には、保護フィルムを剥離する過程で発生する剥離帯電によって液晶ディスプレイ素子が破壊されるという問題も生じる。
【0045】
前記伝導性高分子コーティングフィルムの接触角は、80°以上であることが望ましく、さらに望ましくは、90°以上であることが望ましい。接触角が80°未満である場合、作業過程中に発生する色々な汚染物質から液晶ディスプレイを安全に保護できない。
【0046】
本発明の1実施形態に係る製造方法による伝導性高分子コーティングフィルムは、インクぬれ性が0.75以上であることが望ましい。インクぬれ性が0.75未満である場合、印刷されたインクがよく広がらないので望ましくない。一方、コーティングフィルムの印刷接着性において、印刷されたコーティングフィルムにスコッチテープを付けた後、45°の角度で取り外した場合、印刷部分の脱落が発生してはならない。
【0047】
以下、実施例及び比較例を通じて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではない。下記実施例及び比較例で百分率及び混合比は、別の言及がなければ、重量を基準とする。
【0048】
(比較例1)
コーティング組成物及びコーティングフィルム(帯電防止層)の製造
混合容器に水20重量部、ジメチルスルホキシド20重量部、エタノールを10重量部、イソプロピルアルコールを15重量部入れて1時間攪拌した。ここに、水溶性ポリウレタン樹脂を15重量部投入してさらに1時間攪拌した。次いで、PEDOT水分散液を20重量部投入してさらに1時間攪拌してコーティング組成物を製造した。前記PEDOT水分散液としては、スルホン酸ポリスチレンのドーピングされたBayer社のBaytron
P(PEDOT濃度1.4重量%)を使用した。製造されたコーティング組成物を純水及びエタノールの混合溶媒でさらに希釈して最終コーティング液を製造した(コーティング液:水:エタノールの重量比=1:1:3)。バーコーターを使用して前記最終コーティング液でPETフィルムをコーティングし、80℃のホットプレート上で1分間乾燥した後にコーティングフィルムを得た。
【0049】
(比較例2)
コーティングフィルム(帯電防止層/防汚層)の製造
比較例1と同じ組成でコーティングされたコーティングフィルムを、トルエン溶媒に20重量%に希釈されたフッ素系樹脂であって、バーコーターを使用してもう一度コーティングし、80℃のホットプレート上で1分間乾燥した後に2回コーティングしたコーティングフィルムを得た。
【0050】
(比較例3)
コーティング組成物及びコーティングフィルムの製造
比較例1のコーティング組成物に、トルエン溶媒に20重量%に希釈されたフッ素系樹脂をコーティング組成物全体への対比0.5重量部をさらに投入し、1時間攪拌した。製造されたコーティング組成物を水及びエタノールの混合溶媒でさらに希釈して最終コーティング液を製造した(コーティング液:水:エタノールの重量比=1:1:3)。バーコーターを使用して前記最終コーティング液でPETフィルムをコーティングし、80℃のホットプレート上で1分間乾燥した後にコーティングフィルムを得た。
【0051】
(実施例1及び2)
伝導性高分子コーティング組成物及びコーティングフィルムの製造
比較例1と同じ組成でコーティング組成物を製造するが、下記表1のように添加剤を0.5重量部ずつさらに添加して1時間攪拌した。製造されたコーティング組成物を水及びエタノールの混合溶媒でさらに希釈して最終コーティング液を製造した(コーティング液:水:エタノール=1:1:3)。バーコーターを使用して前記最終コーティング液でPETフィルムをコーティングし、80℃のホットプレート上で1分間乾燥した後にコーティングフィルムを得た。
【0052】
【表1】

【0053】
コーティングフィルムの物性測定
比較例1ないし3及び実施例1及び2で製造したコーティングフィルムを使用して表面抵抗、接触角、インクぬれ性、印刷接着性、及び透過率を測定し、下記表2に測定結果を表した。
(1)表面抵抗
表面抵抗は、SIMCO社のST−3測定機を使用して測定した。
(2)接触角
接触角は、KRUSS社のDSA100を使用して測定した。
(3)インクぬれ性
インクぬれ性は、コロナ処理した2軸延伸ポリエステルフィルムに印加した有機インクのドットサイズに対するコーティングフィルム試料に印加したインクドットサイズの割合で測定し、下記の式で計算される。
インクぬれ性=コーティングフィルム試料に印加したドットのサイズ/2軸延伸ポリエステルフィルムに印加したドットのサイズ
(4)印刷接着性
印刷接着性は、印刷されたフィルムにスコッチテープを付けた後、45°の角度で取り外してテープの表面にくっ付いた印刷部分の程度によって次のように評価した。
◎:印刷部分の脱落がほとんどない。
△:印刷部分の脱落が部分的である。
×:印刷部分が何れも脱落する。
(5)透過率
透過率は、コーティングする前のフィルム透過率を測定した後、コーティングした後のフィルム透過率を測定して、その差を割合で表した。
【0054】
【表2】

【0055】
帯電防止層のみを形成した比較例1の場合は、帯電防止能力及びその他の物性は最も優秀であるが、水の接触角が低くて汚染物質による汚染可能性が大きい。現在、広く使われている比較例2の場合には、帯電防止層の形成過程と防汚層の形成過程とを2回にわたって行うことによって、工程コストが高いという短所がある。比較例3のコーティング組成物は、比較例1と比較例2とを単純統合したコーティング用組成物であって、製造直後には使用が可能であるが、製造後24時間が過ぎれば、コーティング組成物がゲル化して実際コーティングフィルムの製造工程への使用には不適合である。
【0056】
実施例1及び2の場合は、優秀な帯電防止能力、90°以上の接触角、0.8以上のインクぬれ性を示し、印刷部分の脱落がほとんどなく、優秀な透過率を維持している。すなわち、汚染管理能力及び印刷性のどちらも付与する添加剤を含む一液型の伝導性高分子コーティング組成物を使用して、一回のコーティング作業のみで優秀な帯電防止、インクぬれ性及び接着性のどちらも優秀な伝導性高分子コーティングフィルムを製造できた。前記コーティングフィルムは、次第に大型化しているディスプレイ装置の表面を保護する表面保護フィルムとしての使用に適している。
【0057】
以上、望ましい実施例及び比較例を通じて本発明を説明したが、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であることが分かる。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、LCDのようなディスプレイ装置関連の技術分野に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護フィルム用の伝導性高分子コーティング組成物において、
ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリアニリン系高分子化合物またはこれらの混合物を含有する伝導性高分子水分散液1ないし30重量%と、
水溶性バインダー樹脂5ないし25重量%と、
アルコール溶媒5ないし40重量%と、
機能性有機溶媒5ないし30重量%と、
水10ないし50重量%と、
水溶性オレフィン系ワックス0.1ないし10重量%と、
フッ素系樹脂0.001ないし5%と、
を含むことを特徴とする伝導性高分子コーティング組成物。
【請求項2】
前記伝導性高分子水分散液は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を含むことを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子コーティング組成物。
【請求項3】
前記水溶性バインダー樹脂は、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタル、ポリ酢酸ビニル及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子コーティング組成物。
【請求項4】
前記水溶性オレフィン系ワックスは、エチレン系ワックス、プロピレン系ワックス及びその混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子コーティング組成物。
【請求項5】
前記フッ素系樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、パーフルオロシクロコポリマー、ビニルエーテルフルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステルフルオロオレフィンコポリマー、テトラフルオロエチレンビニルエステルコポリマー、クロロトリフルオロエチレンビニルエステルコポリマー、テトラフルオロエチレンウレタン架橋体、テトラフルオロエチレンエポキシ架橋体、テトラフルオロエチレンアクリル架橋体、テトラフルオロエチレンメラミン架橋体及びその混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子コーティング組成物。
【請求項6】
前記アルコール溶媒は、炭素数1ないし5の脂肪族アルコールであることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子コーティング組成物。
【請求項7】
前記アルコール溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子コーティング組成物。
【請求項8】
前記機能性有機溶媒は、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールメチルエーテル、N−メチルピロリドン、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトール及びこれらの混合物からなる群から選択される特徴とする請求項1に記載の伝導性高分子コーティング組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の伝導性高分子コーティング組成物を基板にコーティングする工程と、
前記コーティングされた組成物を乾燥させる工程と、
を含むことを特徴とする伝導性高分子コーティングフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記伝導性高分子コーティング組成物を水及びアルコールの混合溶媒でさらに希釈して使用することを特徴とする請求項9に記載の伝導性高分子コーティングフィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法によって製造される伝導性高分子コーティングフィルム。

【公開番号】特開2008−50609(P2008−50609A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217833(P2007−217833)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(502081871)ドンジン セミケム カンパニー リミテッド (62)
【Fターム(参考)】