伝熱板の製造方法
【課題】摩擦攪拌によって平坦性の高い伝熱板を製造することができる伝熱板の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ベース部材2の表面側に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行う接合工程と、ベース部材2の裏面2b側に矯正用回転ツールGを移動させて摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、前記矯正工程におけるベース部材2への入熱量を、前記接合工程におけるベース部材2への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする。
【解決手段】ベース部材2の表面側に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行う接合工程と、ベース部材2の裏面2b側に矯正用回転ツールGを移動させて摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、前記矯正工程におけるベース部材2への入熱量を、前記接合工程におけるベース部材2への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱交換器や加熱機器あるいは冷却機器などに用いられる伝熱板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝熱板の製造方法として、例えば、特許文献1に記載された方法が知られている。図27は、特許文献1に係る伝熱板の製造方法によって形成された伝熱板を示した断面図である。特許文献1に係る伝熱板100は、表面に開口する断面視矩形の蓋溝106と、蓋溝106の底面に開口する凹溝108を有するベース部材102と、凹溝108に挿入される熱媒体用管116と、蓋溝106に挿入される蓋板110と、を備えている。伝熱板100は、蓋溝106における両側壁と蓋板110の両側面とが突き合わされたそれぞれの突合部J,Jに沿って回転ツールを移動させることにより、摩擦攪拌接合によって一体形成されている。これにより、伝熱板100の突合部J,Jには、塑性化領域W,Wがそれぞれ形成されている。伝熱板100は、熱媒体用管116に、例えば高温液や冷却水などの熱媒体を循環させて使用する。なお、伝熱板100に熱媒体用管116を設けずに、凹溝108に直接熱媒体を循環させる技術も従来知られている。
【0003】
前記した伝熱板の製造方法によって形成された伝熱板100は、ベース部材102の表面側のみから摩擦攪拌を行うため、熱収縮によって塑性化領域W,Wが縮むと、伝熱板100が反って撓んでしまうという問題があった。そこで、伝熱板100の裏面にも、表面と略同等の条件で摩擦攪拌を行うことで、伝熱板100の裏面にも熱収縮を発生させて伝熱板100の平坦性を高めることも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−314115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、伝熱板100の表面側から行う摩擦攪拌接合時においては、ベース部材102とベース部材102が載置されたテーブルとが面接触しているため、回転ツールによって加えられた熱の一部は、ベース部材102の裏面全体からテーブルに放出される(抜熱)。しかし、伝熱板100の表裏を逆にして、伝熱板100(ベース部材102)の裏面側から摩擦攪拌を行う場合には、伝熱板100が熱収縮により反っているため、伝熱板100とテーブルとの間に隙間が形成された状態で摩擦攪拌を行うことになる。これにより、伝熱板100の裏面側から行う摩擦攪拌では、熱が放出される経路が少なくなるため表面側から行う摩擦攪拌接合に比べて抜熱量が少なくなる。
【0006】
よって、伝熱板100の表裏で略同条件で摩擦攪拌を行うと、伝熱板100の裏面側から行う摩擦攪拌では、表面側から行う摩擦攪拌接合に比べて、伝熱板100に残存する熱量が多くなるため反りが戻り過ぎてしまい、伝熱板100の裏面は結局凹状に変形する。つまり、伝熱板100の表裏に対して同等の条件で摩擦攪拌を行っても、伝熱板100に残存する熱量が不均衡となるため、伝熱板100が歪んでしまうという問題があった。
【0007】
このような観点から、本発明は、摩擦攪拌接合によって形成される伝熱板の平坦性を高めることができる伝熱板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明に係る伝熱板の製造方法は、ベース部材の表面側に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から摩擦攪拌接合を行う接合工程と、矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする。
また、本発明は、ベース部材の表面側に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、前記蓋溝に蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から摩擦攪拌接合を行う接合工程と、矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする。
【0009】
要するに、摩擦攪拌接合された金属部材に残存する熱量は、残存熱量(J)=入熱量−抜熱量で現され、ベース部材の表面側から行う摩擦攪拌と裏面側から行う摩擦攪拌の残存熱量が等しくなれば伝熱板が平坦になると考えられる。
かかる製造方法によれば、ベース部材の裏面側における入熱量が、表面側における入熱量よりも少なくなるため、伝熱板内に残存する熱量の不均衡を是正することができる。これにより、伝熱板の反りを防止して伝熱板の平坦性を高めることができる。
【0010】
また、前記蓋板の底面には、前記凹溝に挿入される凸部が形成されていることが好ましい。かかる製造方法によれば、熱媒体用管の周囲の空隙を凸部で塞ぐことができるため、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0011】
また、前記接合工程では、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に摩擦熱によって流動化された塑性流動材を流入させることが好ましい。かかる製造方法によれば、熱媒体用管の周囲の空隙を塑性流動材で塞ぐことができるため、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0012】
また、本発明は、ベース部材の表面側に開口する凹溝に蓋板を挿入する蓋板挿入工程と、前記凹溝に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から前記ベース部材と前記蓋板の摩擦攪拌接合を行う接合工程と、矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする。
また、本発明は、ベース部材の表面側に開口する凹溝に熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、前記凹溝に蓋板を挿入する蓋板挿入工程と、前記凹溝に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から前記ベース部材と前記蓋板の摩擦攪拌接合を行う接合工程と、矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする。
【0013】
要するに、摩擦攪拌接合された金属部材に残存する熱量は、残存熱量(J)=入熱量−抜熱量で現され、ベース部材の表面側から行う摩擦攪拌と裏面側から行う摩擦攪拌の残存熱量が等しくなれば伝熱板が平坦になると考えられる。
かかる製造方法によれば、ベース部材の裏面側における入熱量が、表面側における入熱量よりも少なくなるため、伝熱板内に残存する熱量の不均衡を是正することができる。これにより、伝熱板の反りを防止して伝熱板の平坦性を高めることができる。
【0014】
また、前記接合工程では、前記接合用回転ツールの押圧力によって前記蓋板が前記熱媒体用管の上部を押圧するとともに、前記蓋板の少なくとも上部と前記ベース部材とを塑性流動化することが好ましい。
【0015】
かかる製造方法によれば、熱媒体用管の上部を蓋板で押し込みながら摩擦攪拌するため、熱媒体用管の周辺の空隙を減少させることができ、ひいては、熱交換効率を高めることができる。
【0016】
また、前記ベース部材を固定治具によってテーブルに固定した状態で前記接合工程及び前記矯正工程を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、ベース部材を拘束した状態で摩擦攪拌を行うため作業性を高めることができる。
【0017】
また、前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の形状が、前記ベース部材の中心に対して略点対称であることが好ましい。また、前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の形状が、前記ベース部材の外縁の形状と略相似形状であることが好ましい。また、前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の形状が、前記ベース部材の表面側に形成される前記接合用回転ツールの軌跡の形状と略同一であることが好ましい。また、前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の全長が、前記ベース部材の表面側に形成される前記接合用回転ツールの軌跡の全長と略同一であることが好ましい。かかる製造方法によれば、伝熱板をバランスよく矯正することにより、伝熱板の平坦性をより高めることができる。
【0018】
また、前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の全長が、前記ベース部材の表面側に形成される前記接合用回転ツールの軌跡の全長よりも短いことが好ましい。また、前記矯正工程で用いる前記矯正用回転ツールのショルダ部の外径が、前記接合工程で用いる前記接合用回転ツールのショルダ部の外径よりも小さいことが好ましい。また、前記矯正工程で用いる前記矯正用回転ツールのピンの長さが、前記接合工程で用いる前記接合用回転ツールのピンの長さよりも短いことが好ましい。また、前記矯正工程では、前記接合工程における前記接合用回転ツールの送り速度よりも速い送り速度で前記矯正用回転ツールによって摩擦攪拌を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、矯正工程による入熱量を接合工程による入熱量よりも低く設定できる。
【0019】
また、前記ベース部材の厚みが、前記接合用回転ツールのショルダ部の外径の1.5倍以上であることが好ましい。また、前記ベース部材の厚みが前記接合用回転ツールのピンの長さの3倍以上であることが好ましい。かかる製造方法によれば、接合用回転ツールの各部位の大きさに対してベース部材が十分な厚みを備えているため、伝熱板の平坦性をより高めることができる。
【0020】
また、前記ベース部材が平面視多角形である場合、前記矯正工程において、前記ベース部材の隅部に対して前記矯正用回転ツールにより摩擦攪拌を行う隅部摩擦攪拌工程を含むことが好ましい。かかる製造方法によれば、ベース部材の隅部において発生した反りを解消して伝熱板の平坦性を解消することができる。
【0021】
また、前記熱媒体用管の内部にヒーターを備える場合、前記矯正工程後に前記ヒーターに通電して、前記伝熱板を焼鈍する焼鈍工程を含むことが好ましい。かかる製造方法によれば、塑性化領域に残留する内部応力を除去して伝熱板の反りを解消することができる。
【0022】
また、前記矯正工程後に、前記ベース部材の裏面側を面削加工する面削工程を含み、前記面削加工の深さは、前記矯正用回転ツールのピンの長さよりも大きいことが好ましい。かかる製造方法によれば、伝熱板の裏面を平滑に形成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る伝熱板の製造方法によれば、平坦性の高い伝熱板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第一実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、(a)のI−I線断面図である。
【図2】第一実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、分解斜視図、(b)は、分解断面図である。
【図3】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、溝形成工程、(b)は、熱媒体用管挿入工程、(c)は、蓋溝閉塞工程を示す。
【図4】(a)は、接合用回転ツールを示した側面図であり、(b)は、矯正用回転ツールを示した側面図である。
【図5】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を行う前を示した斜視図である。
【図6】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を段階的に示した平面図である。
【図7】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を示した模式断面図である。
【図8】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を行った後を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、地点c及び地点fを結ぶ線の断面図である。
【図9】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、(a)は、矯正工程を示した斜視図、(b)は、矯正工程を示した平面図である。
【図10】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、矯正工程を示した模式断面図である。
【図11】第一変形例の接合工程を示した模式断面図である。
【図12】第一変形例の接合工程後を示した模式断面図である。
【図13】第二変形例を示した図であって、(a)は、接合工程前を示した分解断面図、(b)は、接合工程を示した断面図である。
【図14】第二実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。
【図15】第二実施形態に係る伝熱板を示した分解斜視図である。
【図16】第二実施形態に係る伝熱板を示した分解断面図である。
【図17】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、(a)は、接合工程を示した斜視図、(b)は、(a)のII-II線断面図である。
【図18】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を示した模式断面図である。
【図19】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を行った後を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、地点c及び地点fを結ぶ線の断面図である。
【図20】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、(a)は、矯正摩擦攪拌工程を示した平面図、(b)は、隅部摩擦攪拌工程を示した平面図である。
【図21】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、矯正工程を示した模式断面図である。
【図22】図20のIII-III線断面において、第二実施形態に係る伝熱板の製造方法の面削工程を示した図である。
【図23】第四変形例に係る伝熱板の表面側の一部破断平面図である。
【図24】第四変形例に係る伝熱板の裏面側の平面図である。
【図25】伝熱板の裏面側の平面図であって(a)は第六変形例、(b)は第七変形例、(c)は第八変形例、(d)は第九変形例、(e)は第十変形例、(f)は第十一変形例を示す。
【図26】実施例におけるベース部材を示した図であって、(a)は、表面側の斜視図、(b)は、裏面側の平面図である。
【図27】従来の伝熱板を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第一実施形態]
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、第一実施形態に係る製造方法によって製造された伝熱板1について説明する。本実施形態においては、伝熱板1をヒートプレートとして用いる場合を例にして説明する。
【0026】
伝熱板1は、図1の(a)及び(b)に示すように、平面視矩形の板厚のベース部材2と、ベース部材2の内部に埋設される熱媒体用管20と、ベース部材2に凹設された溝に配置された蓋板10と、を主に備えている。ベース部材2と蓋板10との突合部J1,J2は、それぞれ摩擦攪拌によって接合されている。かかる伝熱板1は、熱媒体用管20に挿通された図示しないマイクロヒーター等で加熱して使用される。
【0027】
ベース部材2は、熱媒体用管20内の熱媒体の熱を外部に伝達させる役割、あるいは、外部の熱を熱媒体用管20内の熱媒体に伝達させる役割を果たすものである。ベース部材2は、図2の(a)及び(b)に示すように、平面視正方形を呈する直方体であって、本実施形態では、厚みが30mm〜120mmのものを用いる。ベース部材2は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。ベース部材2の平面視した形状は、本実施形態では正方形としたが、他の多角形状、円形、楕円形でもよい。ベース部材2の表面2aには、蓋溝6が凹設されており、蓋溝6の底面6cの中央には、蓋溝6よりも幅狭の凹溝8が凹設されている。
【0028】
蓋溝6は、蓋板10が配置される部分であって、平面視略馬蹄状に一定の幅及び深さで連続して形成されている。蓋溝6は、断面視矩形を呈し、蓋溝6の底面6cから垂直に立ち上がる側壁6a,6bを備えている。
【0029】
凹溝8は、熱媒体用管20が挿入される部分であって、蓋溝6の底面6cの中央部分において、蓋溝6の全長に亘って形成されている。凹溝8は、上方が開口した断面視U字状の溝であって、下端には半円形の底面7が形成されている。底面7の半径は、熱媒体用管20の半径と同等に形成されている。また、凹溝8の深さ及び開口部分の幅は、熱媒体用管20と同等に形成されている。蓋溝6の深さ及び幅は、蓋板10の高さ及び幅と略同等に形成されている。
【0030】
熱媒体用管20は、図2の(a)及び(b)に示すように、断面視円形の中空部18を有する円筒管である。熱媒体用管20は、本実施形態では銅からなり、平面視馬蹄状を呈する。凹溝8に熱媒体用管20を配置するとともに、蓋溝6に蓋板10を配置すると、熱媒体用管20の下半部と凹溝8の底面7とが面接触するとともに、熱媒体用管20の上端と蓋板10の下面12とが接触する。
【0031】
熱媒体用管20には、本実施形態においては、マイクロヒーターを挿通するが、他にも例えば、冷却水、冷却ガス、高温液、あるいは高温ガスなどの熱媒体を循環させて、熱媒体の熱をベース部材2及び蓋板10に、あるいは、ベース部材2及び蓋板10の熱を熱媒体に伝達させてもよい。
【0032】
なお、本実施形態においては、熱媒体用管20は、断面視円形としたが、断面視角形であってもよい。また、熱媒体用管20は、本実施形態においては、銅管を用いているが、他の材料の管を用いてもよい。
【0033】
蓋板10は、図2の(a)及び(b)に示すように、ベース部材2の蓋溝6の断面と略同じ矩形断面を形成する上面11、下面12、側面13a及び側面13bを有し、平面視略馬蹄状で形成されている。蓋板10は、本実施形態では、ベース部材2と同様の組成で形成されている。蓋板10の幅は、蓋溝6の溝幅と略同等に形成されているため、蓋板10を蓋溝6に配置すると、蓋板10の側面13aは、蓋溝6の側壁6aと面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。また、蓋板10の側面13bは、蓋溝6の側壁6bと面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。
【0034】
前記したように、本実施形態においては、凹溝8と熱媒体用管20の下半部を面接触させ、かつ、熱媒体用管20の上端と蓋板10の下面12とを接触させて各部材を配置したが、これに限定されるものではない。例えば、熱媒体用管20の外径よりも凹溝8の深さを大きく形成して、熱媒体用管20の上端と蓋板10の下面12とを離間させてもよい。また、熱媒体用管20の外径よりも凹溝8の幅を大きく形成してもよい。また、蓋溝6、凹溝8、蓋板10及び熱媒体用管20は、本実施形態では、平面視馬蹄状を呈するように形成したがこれに限定されるものではなく、伝熱板1の用途に応じて適宜設計すればよい。
【0035】
次に、伝熱板1の製造方法について説明する。
本実施形態に係る伝熱板1の製造方法は、(1)溝形成工程、(2)熱媒体用管挿入工程、(3)蓋溝閉塞工程、(4)接合工程、(5)矯正工程、(6)焼鈍工程を含むものである。
【0036】
(1)溝形成工程
溝形成工程では、図3の(a)に示すように、ベース部材2の表面2aに、所定の幅及び深さで蓋溝6及び凹溝8を形成する。溝形成工程は、例えば、公知のエンドミル等を用いて、切削加工により行う。
【0037】
(2)熱媒体用管挿入工程
熱媒体用管挿入工程では、図3の(b)に示すように、溝形成工程で形成された凹溝8に熱媒体用管20を挿入する。
【0038】
(3)蓋溝閉塞工程
蓋溝閉塞工程では、図3の(c)に示すように、蓋溝6に蓋板10を配置して、蓋溝6を閉塞する。ここで、蓋溝6と蓋板10との突き合わせ部分において、蓋溝6と蓋板10の内縁とで突き合わされた部分を突合部J1とし、蓋溝6と蓋板10の外縁とで突き合わされた部分を突合部J2とする。
【0039】
(4)接合工程
接合工程では、突合部J1,J2に沿って、接合用回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行う。接合工程は、本実施形態では、ベース部材2を移動不能に固定する固定工程、突合部J1を摩擦攪拌する第一接合工程と、突合部J2を摩擦攪拌する第二接合工程とを含む。
【0040】
ここで、本実施形態における接合工程の際に用いる接合用回転ツールF及び後記する矯正工程の際に用いる矯正用回転ツールGについて詳細に説明する。
接合用回転ツールFは、図4の(a)に示すように、工具鋼などベース部材2よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部F1と、このショルダ部F1の下端面F11に突設された攪拌ピン(プローブ)F2とを備えて構成されている。接合用回転ツールFの寸法・形状は、ベース部材2の材質や厚さ等に応じて設定すればよいが、少なくとも、後記する矯正工程で用いる矯正用回転ツールG(図4の(b)参照)よりも大型にする。
【0041】
ショルダ部F1の下端面F11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。ショルダ部F1の外径X1の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、矯正用回転ツールGのショルダ部G1の外径Y1よりも大きくなっている。
【0042】
攪拌ピンF2は、ショルダ部F1の下端面F11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンF2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。攪拌ピンF2の外径の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、最大外径(上端径)X2が矯正用回転ツールGの攪拌ピンG2の最大外径(上端径)Y2よりも大きく、かつ、最小外径(下端径)X3が攪拌ピンG2の最小外径(下端径)Y3よりも大きい。攪拌ピンF2の長さLAは、矯正用回転ツールGの攪拌ピンG2の長さLB(図4の(b)参照)よりも大きく成形されている。
【0043】
ここで、図4の(a)に示すベース部材2の厚みtは、攪拌ピンF2の長さLAの3倍以上であることが好ましい。また、ベース部材2の厚みtは、ショルダ部F1の外径X1の1.5倍以上であることが好ましい。かかる設定によれば、接合用回転ツールFの大きさに対して、ベース部材2の厚みを十分に確保することができるため、摩擦攪拌を行う際に発生する反りを低減することができる。
【0044】
図4の(b)に示す矯正用回転ツールGは、工具鋼などベース部材2よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部G1と、このショルダ部G1の下端面G11に突設された攪拌ピン(プローブ)G2とを備えて構成されている。
【0045】
ショルダ部G1の下端面G11は、接合用回転ツールFと同様に、凹面状に成形されている。攪拌ピンG2は、ショルダ部G1の下端面G11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンG2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。
【0046】
固定工程では、図5に示すように、摩擦攪拌装置(図示省略)のテーブルTに固定治具15を用いてベース部材2を移動不能に拘束する。固定治具15は、ベース部材2の表面2aに当接する当て金具15aと、当て金具15aに挿通されるボルト15bと、ボルト15bが螺入するネジ孔15cとを有する。固定治具15は、ベース部材2をテーブルTに固定できる形態であれば他の形態であってもよい。また、本実施形態では4つの固定治具15を用いたが、数量を限定するものではない。
【0047】
第一接合工程では、図6の(a)及び(b)に示すように、ベース部材2と蓋板10との突合部J1に沿って摩擦攪拌接合を行う。
まず、ベース部材2の表面2aの任意の位置に開始位置SM1を設定し、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2をベース部材2に押し込む(押圧する)。開始位置SM1は、本実施形態では、ベース部材2の外縁の近傍であり、かつ、突合部J1の近傍に設定する。接合用回転ツールFのショルダ部F1の一部がベース部材2の表面2aに接触したら、突合部J1の始点s1に向かって接合用回転ツールFを相対移動させる。そして、図6の(a)に示すように、始点s1に達したら、接合用回転ツールFを離脱させずに、そのまま突合部J1に沿って移動させる。
【0048】
接合用回転ツールFが突合部J1の終点e1に達したら、接合用回転ツールFをそのまま開始位置SM1側に移動させて、任意の位置に設定した終了位置EM1で接合用回転ツールFを離脱させる。
なお、開始位置SM1、始点s1、終了位置EM1及び終点e1は、本実施形態の位置に限定するものではないが、ベース部材2の外縁の近傍であり、かつ、突合部J1の近傍であることが好ましい。
【0049】
次に、第二接合工程では、図6の(b)及び(c)に示すように、ベース部材2と蓋板10との突合部J2に沿って摩擦攪拌接合を行う。
まず、ベース部材2の表面2aの任意の地点hに開始位置SM2を設定し、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2をベース部材2に押し込む(押圧する)。接合用回転ツールFのショルダ部F1の一部がベース部材2の表面2aに接触したら、突合部J2の始点s2に向かって接合用回転ツールFを相対移動させる。そして、始点s2に達したら、接合用回転ツールFを離脱させずに、そのまま突合部J2に沿って移動させる。
【0050】
接合用回転ツールFが突合部J2の終点e2に達したら、接合用回転ツールFをそのまま地点f側に移動させて、地点fに設定した終了位置EM2で接合用回転ツールFを離脱させる。
なお、開始位置SM2及び終了位置EM2は、本実施形態の位置に限定するものではないが、ベース部材2の外縁の隅部であることが好ましい。これにより、終了位置EM2に抜け穴が残存する場合は、隅部を切削加工して除去することができる。
【0051】
図6の(c)に示すように、接合工程によって、突合部J1及び突合部J2に沿って表面塑性化領域W1(W1a,W1b)が形成される。これにより、熱媒体用管20がベース部材2及び蓋板10によって密閉される。また、図1の(b)に示すように、本実施形態では、表面塑性化領域W1の深さが、蓋溝6の側壁6a,6b(図2の(b)参照)の高さと略同等に形成されているため、突合部J1及び突合部J2の深さ方向の全体を摩擦攪拌することができる。これにより、伝熱板1の気密性を高めることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、接合用回転ツールFを左回転させつつ、進行方向左側に蓋板10が位置するように摩擦攪拌接合を行った。接合用回転ツールFを左回転させると、進行方向右側は、シアー側(被接合部に対する回転ツールの外周の相対速さが、回転ツールの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側)となるためメタルが強く攪拌されて高温軟化し、バリとなって排出され易いと考えられる。このため、進行方向右側はメタルが不足するので、トンネル状空洞欠陥が形成される可能性がある。一方、進行方向左側は、フロー側となるため、比較的緻密な塑性化領域が形成される。かかるトンネル状空洞欠陥などの接合欠陥が形成される可能性のある部分を熱媒体用管20及び凹溝8から離間する位置に配置することで、伝熱板1の気密性及び水密性をより高めることができる。
ちなみに、進行方向右側に蓋板10が位置するように設定した場合は、接合用回転ツールFを右回転させて摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。
【0053】
図7に示すように、高速回転した接合用回転ツールFがベース部材2及び蓋板10に挿入されると、ベース部材2及び蓋板10に摩擦熱が伝達される(入熱)。ベース部材2がテーブルTに面接触しているため、摩擦熱の一部は、矢印Nに示すようにベース部材2の裏面2b全体からテーブルT側に放出(抜熱)される。
【0054】
ここで、図8は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を行った後を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、地点c及び地点fを結ぶ線の断面図である。ベース部材2及び蓋板10には、接合工程によって表面塑性化領域W1が形成される。表面塑性化領域W1は、熱収縮によって縮むため、ベース部材2の表面2a側において、ベース部材2の各隅部側から中心側に向かって圧縮応力が作用する。これにより、ベース部材2及び蓋板10は表面2a側が凹となるように、撓んでしまう可能性がある。特に、ベース部材の表面2aに示す地点a〜地点jのうち、四隅に係る地点a,c,f,hにおいては、その反りの影響が顕著に現れる傾向がある。なお、地点jは、ベース部材2の中心地点を示す。
【0055】
(5)矯正工程
矯正工程では、矯正用回転ツールGを用いてベース部材2の裏面2bから摩擦攪拌を行う。矯正工程は、前記した接合工程で発生した反り(撓み)を解消するために行う工程である。矯正工程は、本実施形態では、タブ材を配置するタブ材配置工程と、ベース部材2を固定する固定工程と、ベース部材2の裏面2bに対して摩擦攪拌を行う矯正摩擦攪拌工程と、を含む。
【0056】
タブ材配置工程では、図9に示すように、後記する矯正摩擦攪拌工程の開始位置及び終了位置を設定するタブ材31を配置する。タブ材31は、本実施形態では直方体を呈し、ベース部材2と同等の組成からなる。タブ材31は、ベース部材2の側面2cの一部を覆い隠すようにして、側面2cに当接されている。また、タブ材31は、タブ材31の両側面とベース部材2の側面2cとを溶接によって仮接合されている。タブ材31の表面は、ベース部材2の裏面2bと面一に形成することが好ましい。
【0057】
固定工程では、図9に示すように、ベース部材2の裏面2bが上方を向くようにして、摩擦攪拌装置(図示省略)のテーブルに前記した固定治具15を用いてベース部材2を移動不能に拘束する。
【0058】
矯正摩擦攪拌工程では、図9の(a)及び(b)に示すように、矯正用回転ツールGを用いて、ベース部材2の裏面2bに対して摩擦攪拌を行う。矯正摩擦攪拌工程のルートは、本実施形態では、中心地点j’を囲み、かつ、矯正摩擦攪拌工程によって形成される裏面塑性化領域W2が中心地点j’に対して放射状となるように設定する。なお、地点a’,地点b’・・・は、ベース部材2の表面2a側の地点a,地点b・・・(図8参照)のそれぞれ裏面2b側に対応する地点をいう。
【0059】
矯正摩擦攪拌工程では、図8の(a)に示すように、まず、タブ材31の表面に開始位置SM3を設定し、矯正用回転ツールGの攪拌ピンG2をタブ材31に押し込む(押圧する)。矯正用回転ツールGのショルダ部G1の一部がタブ材31に接触したら、ベース部材2に向かって矯正用回転ツールGを相対移動させる。そして、ベース部材2の裏面2bにおける地点f’、地点a’、地点c’及び地点h’付近で平面視凸状となるとともに、地点g‘、地点d’、地点b’及び地点e’付近で平面視凹状となるように矯正用回転ツールGを相対移動させて摩擦攪拌を行う。つまり、図9の(b)に示すように、ベース部材2の中心線(一点鎖線)に対して線対称となるように裏面塑性化領域W2が形成される。本実施形態では、開始位置SM3と終了位置EM3とをタブ材31に設け、一筆書きの要領で摩擦攪拌を行う。これにより、摩擦攪拌を効率よく行うことができる。矯正摩擦攪拌工程が終了したら、タブ材31を切除する。
【0060】
本実施形態では、矯正用回転ツールGの軌跡、即ち、裏面塑性化領域W2の形状が、中心地点jに対して略点対称となるように設定した。これにより、バランスよくベース部材2の反りを矯正することができる。なお、矯正用回転ツールGの軌跡は、これに限定されるものではない。矯正用回転ツールGの軌跡のバリエーションについては、後記する。
【0061】
また、本実施形態では、矯正用回転ツールGの軌跡の長さ(裏面塑性化領域W2の長さ)は、接合用回転ツールFの軌跡の長さ(表面塑性化領域W1の長さの和)よりも短くなるように設定している。また、矯正用回転ツールGのショルダ部G1の外径は、接合用回転ツールFのショルダ部F1の外径よりも小さく設定している。また、矯正用回転ツールGの攪拌ピンG2の長さは、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2の長さよりも短く設定している。さらに、矯正用回転ツールFの送り速度は、接合用回転ツールGの送り速度より速く設定している。これにより、矯正工程における摩擦攪拌による入熱量を、接合工程における摩擦攪拌による入熱量よりも少なく設定している。
【0062】
なお、本実施形態では矯正工程において、タブ材を配置したが、矯正摩擦攪拌工程における摩擦攪拌のルートによっては、タブ材を設けなくてもいい。
【0063】
(6)焼鈍工程
焼鈍工程では、ベース部材2及び蓋板10を焼鈍することにより、ベース部材2及び蓋板10の内部応力を除去する。本実施形態では、熱媒体用管20に、例えば、マイクロヒーターを通電させて焼鈍を行う。これにより、伝熱板1の内部応力を除去することができ、伝熱板1の使用時の変形を防止することができる。
【0064】
以上説明した本実施形態に係る製造方法によれば、接合工程による熱収縮によって、ベース部材2及び蓋板10が撓んでしまったとしても、ベース部材2の裏面2bにも摩擦攪拌を行うことで、表面2aに発生した反りを解消して伝熱板1の平坦性を高めることができる。つまり、ベース部材2の裏面2bに形成された裏面塑性化領域W2が、熱収縮により縮むため、ベース部材2の裏面2b側において、ベース部材2の各隅部側から中心側に向かって圧縮応力が作用する。これにより、接合工程によって形成された反りが解消されて、伝熱板1の平坦性を高めることができる。
【0065】
ここで、図10は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、矯正工程を示した模式断面図である。図10に示すように、矯正工程において、高速回転した矯正用回転ツールGがベース部材2の裏面2bに挿入されると、ベース部材2内に摩擦熱が伝達される(入熱)。矯正工程では、ベース部材2が接合工程によって反っているため、ベース部材2の表面2aとテーブルTの間に隙間があいている。摩擦熱の一部は、矢印Nに示すようにベース部材2の表面2a側の縁部U,UからテーブルTに放出(抜熱)される。そのため、矯正工程では、接合工程に比べて熱が放出される経路が少なく、ベース部材2内に熱がこもりやすくなる。つまり、ベース部材2の表裏で同等の入熱量で摩擦攪拌を行うと、裏面側から摩擦攪拌を行う方が、残存熱量が大きくなるため反りが戻りすぎてしまう。
【0066】
そこで、本実施形態では、矯正工程にかかる摩擦攪拌での入熱量を、接合工程にかかる入熱量よりも少なく設定することで、ベース部材2の表裏に対する残存熱量の均衡を図った。つまり、矯正工程では、接合工程に比べて抜熱量が少なくなるが、接合工程よりも入熱量を少なく設定することで、接合工程と矯正工程とでベース部材2及び蓋板10に残存する熱量が略同等となるようにした。これにより、伝熱板1の反りを解消して平坦性を高めることができる。
【0067】
本実施形態では、矯正工程において、矯正用回転ツールGを接合用回転ツールFよりも小さく設定したり、矯正用回転ツールGの送り速度を接合用回転ツールGの送り速度よりも速く設定したりして入熱量を少なくしたが、他の方法を用いて入熱量の調整をしてもよい。また、第一実施形態に係る熱媒体用管20の形状、凹溝8の形状等は、あくまで例示であって他の形態であってもよい。
【0068】
[第一変形例]
第一実施形態においては、図1に示すように、接合工程を行うと、熱媒体用管20の周囲に空隙部が形成されてしまう。そこで、図11及び図12に示す第一変形例のように、熱媒体用管20の周囲に形成された空隙部に塑性流動材を流入させて、当該空隙部を埋めてもよい。
【0069】
第一変形例では、図11に示すように、蓋溝6及び蓋板10の幅を前記した第一実施形態よりも小さく設定して、熱媒体用管20の近傍に突合部J1及び突合部J2が位置するように形成する。そして、接合用回転ツールFを所定の深さで押し込んで摩擦攪拌を行うことにより、熱媒体用管20の周囲に形成された空隙部P,Pに塑性流動材を流入させることができる。これにより、図12に示すように、熱媒体用管20の周囲が塑性化された金属で密閉されるため、熱交換効率の高い伝熱板1を形成することができる。
なお、空隙部Pに塑性流動材をどの程度流動させるかは、接合用回転ツールFの大きさや押込み量、蓋溝6及び蓋板10の形状に応じて適宜設定すればよい。
【0070】
[第二変形例]
第二変形例では、図13の(a)に示すように、蓋板10の下面12に凸部16を形成する点で第一実施形態と相違する。蓋板10の下面12の中央には、凸部16が形成されている。凸部16の下面16aは、凹面状に形成されている。下面16aの曲率半径は、熱媒体用管20の半径と同等に形成されている。図13の(b)に示すように、ベース部材2に熱媒体用管20及び蓋板10を載置すると、蓋板10の凸部16がベース部材2の凹溝8に挿入される。これにより、熱媒体用管20の周囲の空隙を塞ぐことができるため、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0071】
なお、第二変形例においても、蓋板10の凸部16と熱媒体用管20との間に微細な隙間ができる可能性がある。このような場合は、第一変形例のように、当該隙間に塑性流動材を流入させて塞いでもよい。
【0072】
[第三変形例]
第三変形例では、具体的な図示はしないが、第一実施形態に係る伝熱板1において、熱媒体用管20を設けない構成としてもよい。熱媒体用管20は必ずしも設ける必要はなく、凹溝8に直接熱媒体を流入させて伝熱板を構成してもよい。
【0073】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態の説明においては、第一実施形態と重複する点は、簡単に説明する。前記した第一実施形態においては、蓋板10の両側面に沿ってそれぞれ摩擦攪拌を行うことで、表面塑性化領域W1,W1のように、二条の塑性化領域が形成されるようにして伝熱板を形成したが、第二実施形態のように、蓋板の幅を小さく設定して、一条の塑性化領域のみが形成されるようにして伝熱板を形成してもよい。
【0074】
第二実施形態によって製造された伝熱板41は、図14及び図15に示すように、平面視正方形の板厚のベース部材2と、ベース部材2に凹設された溝に挿入された熱媒体用管21と、ベース部材2に凹設された溝に挿入された蓋板42と、を主に備えている。蓋板42の上面は、摩擦攪拌によって接合される。
【0075】
図14及び図15に示すように、ベース部材2の表面2aには、ベース部材2の一方の側面2cから対向する他方の側面2dまで連続して形成された凹溝43が形成されている。凹溝43は、熱媒体用管21及び蓋板42が挿入される部分である。凹溝43は、断面視U字状、平面視蛇行状を呈するように形成されている。図16に示すように、凹溝43の側壁43a,43b間の幅は、熱媒体用管20の外径と略同等に形成されている。また、凹溝43の幅は、接合用回転ツールFのショルダ部F1の外径X1よりも小さく形成されている。凹溝43の深さは、熱媒体用管21の外径と同じ深さで形成されている。
【0076】
熱媒体用管21は、凹溝43に挿入される管であって、ベース部材2の一方の側面2cから他方の側面2dまで貫通して形成されている。熱媒体用管21は、平面視蛇行状を呈し、凹溝43の平面視形状と略同等の形状を呈する。
【0077】
蓋板42は、断面視矩形、平面視蛇行状を呈する部材であって凹溝43に挿入される部材である。蓋板42は、側面42a,42b及び上面42c、下面42dを備えている。蓋板42を凹溝43に挿入すると、上面42cとベース部材2の表面2aとが面一になるとともに、蓋板42の側面42a,42bは、凹溝43の側壁43a,43bとそれぞれ面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。
【0078】
次に、第二実施形態に係る製造方法について説明する。
第二実施形態に係る伝熱板の製造方法は、(1)溝形成工程、(2)熱媒体用管挿入工程、(3)蓋板挿入工程、(4)接合工程、(5)矯正工程、(6)面削工程を含むものである。
【0079】
(1)溝形成工程
溝形成工程では、図15及び図16に示すように、ベース部材2の表面2aに所定の幅及び深さで凹溝43を形成する。溝形成工程は、例えば、公知のエンドミル等を用いて行う。
【0080】
(2)熱媒体用管挿入工程
熱媒体用管挿入工程では、図15及び図16に示すように、溝形成工程で形成された凹溝43に熱媒体用管21を挿入する。
【0081】
(3)蓋板挿入工程
蓋板挿入工程は、図15及び図16に示すように、凹溝43に蓋板42を挿入して凹溝43を閉塞する。ここで、凹溝43と蓋板42との突き合わせ部分において、凹溝43の一方の側壁43aと、蓋板42の一方の側面42aとで突き合わされた部分を突合部J3とし、凹溝43の他方の側壁43bと、蓋板42の他方の側面42bとで突き合わされた部分を突合部J4とする。
【0082】
(4)接合工程
接合工程では、蓋板42(凹溝43)に沿って接合用回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行う。接合工程は、本実施形態ではタブ材を配置するタブ材配置工程と、ベース部材
2を固定する固定工程と、摩擦攪拌を行う接合工程とを含む。
【0083】
タブ材配置工程では、図17の(a)に示すように、ベース部材2の一方の側面2c及び他方の側面2dに一対のタブ材33,34をそれぞれ配置する。タブ材33,34の両側面とベース部材2とは溶接によって仮接合する。
【0084】
固定工程では、図17の(a)に示すように、ベース部材2を固定治具15を介して摩擦攪拌装置のテーブルTに固定する。
【0085】
接合工程では、図17の(a)及び(b)に示すように、蓋板42(凹溝43)に沿って摩擦攪拌接合を行う。タブ材33に設定した開始位置SM4に接合用回転ツールFを押し込んで、ショルダ部F1がベース部材2に接触したら、蓋板42に沿って接合用回転ツールFを相対移動させ、タブ材34に設定した終了位置EM4まで連続して摩擦攪拌を行う。図17の(b)に示すように、接合用回転ツールFのショルダ部F1の外径X1は、凹溝43の幅よりも大きく設定しているため、蓋板42の中心に沿って接合用回転ツールFを移動させると、突合部J3,J4が塑性化される。このように、本実施形態によれば、一のルートを設定するだけで、突合部J3,J4を摩擦攪拌することができるため、第一実施形態に比べて作業手間を大幅に省略することができる。また、摩擦攪拌を行う際に、接合用回転ツールFが蓋板42を押し込むため、熱媒体用管21も押圧されて若干変形する。これにより、熱媒体用管21の周囲に形成されている空隙部Pを低減することができるため、伝熱板41の熱交換効率を高めることができる。なお、接合工程が終了したら、ベース部材2からタブ材を切除する。
【0086】
図18に示すように、接合工程において、高速回転した接合用回転ツールFがベース部材2及び蓋板42に挿入されると、ベース部材2及び蓋板42に摩擦熱が伝達される(入熱)。ベース部材2がテーブルTに面接触しているため、摩擦熱の一部は、矢印Nに示すように、ベース部材2の裏面2bの全体からテーブルTに放出(抜熱)される。
【0087】
ここで図19は、第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を行った後を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、地点c及び地点fを結ぶ線の断面図である。ベース部材2及び蓋板42は、接合工程によって、表面塑性化領域W3が形成される。表面塑性化領域W3は、熱収縮によって縮むため、ベース部材2が表面2a側に凹状となるように反って撓んでしまう可能性がある。特に、ベース部材2の表面2aに示す地点a〜地点jのうち、ベース部材2の四隅に係る地点a,c,f,hに関しては、その反りが顕著に見られる傾向がある。なお、地点jは、ベース部材2の中心地点を示す。
【0088】
(5)矯正工程
矯正工程では、矯正用回転ツールGを用いてベース部材2の裏面2bから摩擦攪拌を行う。矯正工程は、前記した接合工程で発生した反りを解消するために行う工程である。矯正工程は、本実施形態では、ベース部材2を固定する固定工程と、放射線状に摩擦攪拌を行う矯正摩擦攪拌工程と、ベース部材2の隅部に対して摩擦攪拌を行う隅部摩擦攪拌工程とを含むものである。
【0089】
矯正摩擦攪拌工程では、図20の(a)に示すように、中心地点j’を通って放射状に塑性化領域が形成されるように摩擦攪拌を行う。即ち、地点a’と地点h’とを結ぶ直線上、地点d’と地点e’とを結ぶ直線上、地点f’と地点c’とを結ぶ直線上、地点g’と地点b’とを結ぶ直線上にそれぞれ摩擦攪拌の開始位置(SM5,SM6,SM7,SM8)及び終了位置(EM5,EM6,EM7,EM8)を設定するとともに、各開始位置から中心地点j’までの距離と、中心地点j’から各終了位置までの距離とが同等となるように摩擦攪拌のルートを設定する。
矯正摩擦攪拌工程の摩擦攪拌のルートを設定したら、各開始位置に矯正用回転ツールGを押し込み、各ルート(直線)に沿って矯正用回転ツールGを移動させる。図20の(b)に示すように、矯正摩擦攪拌工程によって形成された裏面塑性化領域W41〜W44は、中心地点j’に対して八方向に放射状に広がるように形成される。
【0090】
隅部摩擦攪拌工程では、図20の(b)に示すように、ベース部材2の地点a’、地点c’、地点f’及び地点h’に係る各隅部において、重点的に摩擦攪拌を行う。即ち、地点a’に係る隅部を構成する一辺45a側に摩擦攪拌の開始位置SM9及び終了位置EM9を設定し、他辺45b側に折返し位置SR9を設定する。そして、開始位置SM9に矯正用回転ツールGを押し込み、折返し位置SR9に向けて移動させた後、折返し位置SR9で折り返し、終了位置EM9で矯正用回転ツールGを離脱させる。同様の工程を、地点c’、地点f’及び地点h’の各隅部にも行う。隅部摩擦攪拌工程によれば、特に反りの大きいベース部材2の隅部に重点的に矯正工程を行うことができるため、より伝熱板41の平坦性を高めることができる。
【0091】
隅部摩擦攪拌工程は、本実施形態では、矯正用回転ツールGの軌跡が各隅部において、対角線と直交するように形成されているが、これに限定されるものではない。隅部の反りの大きさを考慮して適宜摩擦攪拌のルートを設定すればよい。なお、隅部摩擦攪拌工程で形成される裏面塑性化領域W45と裏面塑性化領域W47、裏面塑性化領域46と裏面塑性化領域W48はそれぞれ中心地点j’に対して点対称となるように形成されることが好ましい。これにより、バランスよく反りを解消して伝熱板41の平坦性を高めることができる。
【0092】
図21は、第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、矯正工程を示した模式断面図である。図21に示すように、矯正工程で高速回転した矯正用回転ツールGがベース部材2の裏面2bに挿入されると、ベース部材2内に摩擦熱が伝達される(入熱)。矯正工程では、ベース部材2が接合工程によって反っているため、ベース部材2の表面2aとテーブルTの間に隙間があいている。摩擦熱の一部は、矢印Nに示すようにベース部材2の表面2a側の縁部U,UからテーブルTに放出(抜熱)される。そのため、矯正工程では、接合工程に比べて熱が放出される経路が少なく、ベース部材2内に熱がこもりやすくなる。つまり、ベース部材2の表裏で同等の入熱量で摩擦攪拌を行うと、裏面側から摩擦攪拌を行う方が、残存熱量が大きくなるため反りが戻りすぎてしまう。
【0093】
そこで、本実施形態では、矯正工程にかかる摩擦攪拌での入熱量を少なく設定することで、ベース部材2に対する残存熱量の均衡を図った。つまり、接合工程で用いる接合用回転ツールFよりも小型の矯正用回転ツールGを用いて摩擦攪拌を行うことで、表面側よりも裏面側からの入熱量を少なく設定した。
【0094】
(6)面削工程
面削工程では、公知のエンドミル等を用いてベース部材2の裏面2bを面削する。図20の(b)に示すように、ベース部材2の裏面2bには、矯正用回転ツールGの抜き穴(図示省略)や、各回転ツールを押し込むことによって発生する溝(図示省略)、バリ等が発生する。したがって、面削工程を行うことにより、ベース部材2の裏面2bを平滑に形成することができる。本実施形態では、図22に示すように、面削加工の厚みMaは、裏面塑性化領域W42の厚みWaよりも大きく設定する。これにより、ベース部材2の裏面2bに形成される裏面塑性化領域W41〜W48が除去されるため、ベース部材2の性質の均一性を図ることができる。また、裏面2bに裏面塑性化領域W42等が露出しないため、意匠性等にも好適である。
【0095】
なお、本実施形態では、面削加工の厚みは、裏面塑性化領域の厚みよりも大きく設定したが、これに限定されるものではない。面削加工の厚みは、例えば、矯正用回転ツールGの攪拌ピンG2の長さよりも大きく設定してもよい。
また、本実施形態では、攪拌ピンG2を備えた矯正用回転ツールGを用いて矯正工程を行ったが、攪拌ピンG2を備えない矯正用回転ツールGを用いて矯正工程を行っても構わない。かかる回転ツールによれば、裏面塑性化領域の深さを浅くすることができるため、面削する厚みを小さくすることができる。これにより、面削部分が少ないためベース部材2のロスを小さくすることができ、コストを低減することができる。
【0096】
以上説明した第二実施形態によれば、蓋板42と凹溝43との突合部J3,J4を接合用回転ツールFの一回の移動で摩擦攪拌することができるため、第一実施形態に比べて作業手間を大幅に省略することができる。また、矯正工程では、接合工程よりも回転ツールによる入熱量を少なく設定することで、伝熱板41の平坦性を高めることができる。また、ベース部材2の裏面2bに対して、隅部摩擦攪拌工程を行うため、特に反りの大きい隅部に対して重点的に矯正を行って、伝熱板41の平坦性を高めることができる。
【0097】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されずに本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、矯正工程は、前記した第一実施形態及び第二実施形態の摩擦攪拌のルートに限定されずに様々なルートを設定することができる。以下に、矯正工程に係る摩擦攪拌のルートの他の形態について説明する。
【0098】
[第四変形例]
例えば、図23及び図24に示す第四変形例のように、伝熱板の表面側及び裏面側に形成される塑性化領域が、略同等の形状を呈するように矯正工程に係る摩擦攪拌のルートを設定してもよい。なお、第四変形例においては、第一実施形態及び第二実施形態と重複する点は説明を省略する。
【0099】
図23に示す伝熱板51は、中央に開口部52を備えたベース部材2と、ベース部材2に切り欠かれた凹溝(図示省略)に埋設された熱媒体用管53と、凹溝を塞ぐ蓋板54とを主に有している。
【0100】
熱媒体用管53は、平面視中抜きの十字状を呈するように、ベース部材2の内部に埋設されている。熱媒体用管53の一端と他端は、ベース部材2の開口部52に露出している。開口部52に現れる熱媒体用管53の一端から熱を供給し、他端から熱を排出してベース部材2に熱が伝達される。
【0101】
蓋板54とベース部材2との突合部は、接合用回転ツールFによって第二実施形態にかかる接合方法と略同等の工程によって、摩擦攪拌により接合されている。これにより、ベース部材2の表面2aには、平面視略中抜き十字状を呈するように、表面塑性化領域W50が形成されている。
【0102】
一方、図24に示すように、伝熱板51の裏面2bは、表面2aと同様に、平面視中抜き十字状を呈するように裏面塑性化領域W51が形成されている。当該矯正工程における摩擦攪拌の開始位置及び終了位置は、ベース部材2の任意の一点に設定されている。また、裏面塑性化領域W51は、矯正用回転ツールGを用いて一筆書きの要領で摩擦攪拌されている。矯正工程における矯正用回転ツールGの押込み量と、接合工程における接合用回転ツールFの押込み量は同等に設定している。
【0103】
第四変形例のように、伝熱板51の表面2a及び裏面2bにそれぞれ形成された表面塑性化領域W50及び裏面塑性化領域W51が略同等の形状を呈するように矯正工程に係る摩擦攪拌のルートを設定してもよい。かかる接合工程及び矯正工程によれば、伝熱板51の表面2a側及び裏面2b側に形成される塑性化領域の形状が略同等となるため、伝熱板1の反りをバランスよく解消して平坦性を高めることができる。
なお、第四変形例によれば、ベース部材2の表面2a側に行う摩擦攪拌の軌跡の長さと、裏面2b側に行う摩擦攪拌の軌跡の長さが略同等となるが、矯正用回転ツールGは、接合用回転ツールFよりも小さく形成されているため、矯正工程における入熱量は、接合用工程における入熱量に比べて小さくなる。これにより、伝熱板51の平坦性を高めることができる。
【0104】
[第五変形例]
第五変形例では、具体的な図示はしないが、第二実施形態に係る伝熱板41において、熱媒体用管21を設けない構成としてもよい。熱媒体用管21は、必ずしも設ける必要はなく、凹溝43に直接熱媒体を流入させて伝熱板を構成してもよい。
【0105】
[第六〜第十一変形例]
矯正工程に係る摩擦攪拌のルートは、前記した形態に限定されるものではなく、以下の形態でもよい。図25は、伝熱板の裏面側の平面図であって(a)は第六変形例、(b)は第七変形例、(c)は第八変形例、(d)は第九変形例、(e)は第十変形例、(f)は第十一変形例を示す。
【0106】
図25の(a)及び(b)に示す第六変形例及び第七変形例の矯正用回転ツールの軌跡(裏面塑性化領域W2)は、いずれもベース部材2の中心地点j’を囲むように形成されていることを特徴とする。また、第六変形例は、ベース部材2の外形形状に対して相似になるように形成されている。また、図25の(b)に示す第七変形例のように、格子状に形成してもよい。
【0107】
図25の(c)及び(d)に示す第八変形例及び第九変形例の矯正用回転ツールの軌跡(裏面塑性化領域W2)は、いずれもベース部材2の中心地点j’を通過して放射状となるように形成されていることを特徴とする。図25の(c)に示す第九変形例は、中心地点jを始点及び終点とするループを複数含み、中心地点j’に対して点対称となるように形成されている。また、第九変形例は、一筆書きの要領で形成することができるため、作業効率を高めることができる。図25の(d)に示す第九変形例は、中心地点j’を通過するとともに、ベース部材2の対角線に対して平行となるように形成されている。
【0108】
図25の(e)及び(f)に示す第十変形例及び第十一変形例の矯正用回転ツールの軌跡(裏面塑性化領域W2)は、中心地点j’を通る直線で区分けした領域に、同形状の4つの軌跡がそれぞれ独立して形成されるとともに、中心地点j’を挟んで斜めに対向する軌跡が点対称となるように形成されている。4つの軌跡の形状は、同形状であれば、どのような形状であっても構わない。
【0109】
以上説明したように、矯正工程は、ベース部材2に行われる接合工程の摩擦攪拌の軌跡に応じて適宜摩擦攪拌のルートを設定して行えばよい。第六変形例〜第十一変形例のように、矯正工程の矯正用回転ツールGの軌跡を適宜設定することでバランスよく反りを解消することができる。
【実施例】
【0110】
次に、本発明の実施例について説明する。本発明に係る実施例は、図26の(a)及び(b)に示すように平面視正方形のベース部材2の表面2a及び裏面2bにそれぞれ3つの円を描くように摩擦攪拌を行い、表面2a側で発生した反りの変形量と、裏面2b側で発生した反りの変形量を測定した。表面2a側で発生した反りの変形量の値と、裏面2b側で発生した反りの変形量の値が近いほど、ベース部材200の平坦性が高いことを示す。
【0111】
ベース部材2は、平面視500mm×500mmの直方体であって、厚みが30mm、60mmの二種類の部材を用いてそれぞれ測定を行った。ベース部材2の素材は、JIS規格の5052アルミニウム合金である。
【0112】
摩擦攪拌の軌跡である3つの円は、ベース部材2の中心に設定した地点j又は地点j’を中心とし、表面2a及び裏面2bともに半径r1=100mm(以下、小円ともいう)、r2=150mm(以下、中円ともいう)、r3=200mm(以下、大円ともいう)に設定した。摩擦攪拌の順序は、小円、中円、大円の順番で行った。
【0113】
回転ツールは、表面2a側及び裏面2b側ともに同じ大きさの回転ツールを用いた。回転ツールのサイズは、ショルダ部の外径が20mm、攪拌ピンの長さが10mm、攪拌ピンの根元の大きさ(最大径)が9mm、攪拌ピンの先端の大きさ(最小径)が6mmのものを用いた。回転ツールの回転数は、600rpm、送り速度は、300mm/minに設定した。また、表面2a側及び裏面2b側ともに回転ツールの押込み量は一定に設定した。図26に示すように、表面2a側において形成された塑性化領域を小円から大円に向けてそれぞれ塑性化領域W21乃至塑性化領域W23とする。また、裏面2b側において形成された塑性化領域を小円から大円に向けて塑性化領域W31乃至W33とする。当該実施例における各測定結果を以下の表1〜表4に示す。
【0114】
表1は、ベース部材2の板厚が30mmであって、表面2a側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。「FSW前」は、摩擦攪拌を行う前において、中心地点j(基準j)と各地点(地点a〜地点h)との高低差を示している。「FSW後」は、基準jをゼロとして、3つの円の摩擦攪拌を行った後において、基準jと各地点との高低差を示している。「表面側変形量」は、各地点における(FSW後−FSW前)の値を示している。「表面側変形量」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。「FSW前」及び「FSW後」のマイナス値は、基準jよりも下方に位置していることを意味する。
【0115】
【表1】
【0116】
表2は、ベース部材2の板厚が30mmであって、表面側から小円、中円、大円の摩擦攪拌をいった後、反って(歪んで)しまったベース部材2に対して、裏面側からも小円、中円、大円のそれぞれの摩擦攪拌を行った場合のベース部材2の各地点の測定値を示した表である。「FSW前」は、摩擦攪拌を行う前において、中心地点j’(基準j’)と各地点(a’〜h’)との高低差を示している。
「FSW1」は、図26を参照するように、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量1」は、各地点における(FSW1−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量1」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW2」は、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)に加えてさらに、中円(半径r2)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量2」は、各地点における(FSW2−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量2」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW3」は、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)、中円(半径r2)に加えてさらに、大円(半径r3)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量3」は、各地点における(FSW3−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量3」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
【0117】
【表2】
【0118】
表3は、ベース部材2の板厚が60mmであって、表面側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。表3の各項目は、表1の各項目と略同等の意味を示す。
【0119】
【表3】
【0120】
表4は、ベース部材2の板厚が60mmであって、表面側から小円、中円、大円の摩擦攪拌を行った後、裏面側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。表4の各項目は、表2の各項目と略同等の意味を示す。
【0121】
【表4】
【0122】
表1の「表面側変形量」の平均値(1.61)と、表2の「裏面側変形量1」の平均値(2.04)とを比較すると、「裏面側変形量1」の値の方が大きい。同様に、「裏面側変形量2」の平均値(2.95)及び「裏面側変形量3」の平均値(3.53)も、「表面側変形量」の平均値(1.61)よりも大きな値となっている。つまり、ベース部材2の板厚が30mmの場合は、裏面側から小円の摩擦攪拌のみを行っただけでも、ベース部材2の反りが戻りすぎてしまう。したがって、ベース部材2が30mmの場合は、小さい回転ツールを用いるなどして表面側よりも裏面側の入熱量を少なくすれば、ベース部材2の平坦性を高めることができる。
【0123】
表3の「表面側変形量」の平均値(0.98)と、表4の「裏面側変形量2」の平均値(0.91)とを比較すると、両者の変形量が近似している。したがって、ベース部材2の板厚が60mmの場合は、裏面側から小円及び中円の摩擦攪拌を行ったときに、ベース部材2の平坦性が高いことが確認できた。つまり、板厚が60mmの場合は、小さい回転ツールを用いるなどして表面側よりも裏面側の入熱量を少なくすれば、ベース部材2の平坦性を高めることができる。
【符号の説明】
【0124】
1 伝熱板
2 ベース部材
2a 表面
2b 裏面
6 蓋溝
8 凹溝
10 蓋板
20 熱媒体用管
F 接合用回転ツール
G 矯正用回転ツール
J 突合部
P 空隙部
W 塑性化領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱交換器や加熱機器あるいは冷却機器などに用いられる伝熱板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝熱板の製造方法として、例えば、特許文献1に記載された方法が知られている。図27は、特許文献1に係る伝熱板の製造方法によって形成された伝熱板を示した断面図である。特許文献1に係る伝熱板100は、表面に開口する断面視矩形の蓋溝106と、蓋溝106の底面に開口する凹溝108を有するベース部材102と、凹溝108に挿入される熱媒体用管116と、蓋溝106に挿入される蓋板110と、を備えている。伝熱板100は、蓋溝106における両側壁と蓋板110の両側面とが突き合わされたそれぞれの突合部J,Jに沿って回転ツールを移動させることにより、摩擦攪拌接合によって一体形成されている。これにより、伝熱板100の突合部J,Jには、塑性化領域W,Wがそれぞれ形成されている。伝熱板100は、熱媒体用管116に、例えば高温液や冷却水などの熱媒体を循環させて使用する。なお、伝熱板100に熱媒体用管116を設けずに、凹溝108に直接熱媒体を循環させる技術も従来知られている。
【0003】
前記した伝熱板の製造方法によって形成された伝熱板100は、ベース部材102の表面側のみから摩擦攪拌を行うため、熱収縮によって塑性化領域W,Wが縮むと、伝熱板100が反って撓んでしまうという問題があった。そこで、伝熱板100の裏面にも、表面と略同等の条件で摩擦攪拌を行うことで、伝熱板100の裏面にも熱収縮を発生させて伝熱板100の平坦性を高めることも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−314115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、伝熱板100の表面側から行う摩擦攪拌接合時においては、ベース部材102とベース部材102が載置されたテーブルとが面接触しているため、回転ツールによって加えられた熱の一部は、ベース部材102の裏面全体からテーブルに放出される(抜熱)。しかし、伝熱板100の表裏を逆にして、伝熱板100(ベース部材102)の裏面側から摩擦攪拌を行う場合には、伝熱板100が熱収縮により反っているため、伝熱板100とテーブルとの間に隙間が形成された状態で摩擦攪拌を行うことになる。これにより、伝熱板100の裏面側から行う摩擦攪拌では、熱が放出される経路が少なくなるため表面側から行う摩擦攪拌接合に比べて抜熱量が少なくなる。
【0006】
よって、伝熱板100の表裏で略同条件で摩擦攪拌を行うと、伝熱板100の裏面側から行う摩擦攪拌では、表面側から行う摩擦攪拌接合に比べて、伝熱板100に残存する熱量が多くなるため反りが戻り過ぎてしまい、伝熱板100の裏面は結局凹状に変形する。つまり、伝熱板100の表裏に対して同等の条件で摩擦攪拌を行っても、伝熱板100に残存する熱量が不均衡となるため、伝熱板100が歪んでしまうという問題があった。
【0007】
このような観点から、本発明は、摩擦攪拌接合によって形成される伝熱板の平坦性を高めることができる伝熱板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明に係る伝熱板の製造方法は、ベース部材の表面側に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から摩擦攪拌接合を行う接合工程と、矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする。
また、本発明は、ベース部材の表面側に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、前記蓋溝に蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から摩擦攪拌接合を行う接合工程と、矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする。
【0009】
要するに、摩擦攪拌接合された金属部材に残存する熱量は、残存熱量(J)=入熱量−抜熱量で現され、ベース部材の表面側から行う摩擦攪拌と裏面側から行う摩擦攪拌の残存熱量が等しくなれば伝熱板が平坦になると考えられる。
かかる製造方法によれば、ベース部材の裏面側における入熱量が、表面側における入熱量よりも少なくなるため、伝熱板内に残存する熱量の不均衡を是正することができる。これにより、伝熱板の反りを防止して伝熱板の平坦性を高めることができる。
【0010】
また、前記蓋板の底面には、前記凹溝に挿入される凸部が形成されていることが好ましい。かかる製造方法によれば、熱媒体用管の周囲の空隙を凸部で塞ぐことができるため、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0011】
また、前記接合工程では、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に摩擦熱によって流動化された塑性流動材を流入させることが好ましい。かかる製造方法によれば、熱媒体用管の周囲の空隙を塑性流動材で塞ぐことができるため、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0012】
また、本発明は、ベース部材の表面側に開口する凹溝に蓋板を挿入する蓋板挿入工程と、前記凹溝に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から前記ベース部材と前記蓋板の摩擦攪拌接合を行う接合工程と、矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする。
また、本発明は、ベース部材の表面側に開口する凹溝に熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、前記凹溝に蓋板を挿入する蓋板挿入工程と、前記凹溝に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から前記ベース部材と前記蓋板の摩擦攪拌接合を行う接合工程と、矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする。
【0013】
要するに、摩擦攪拌接合された金属部材に残存する熱量は、残存熱量(J)=入熱量−抜熱量で現され、ベース部材の表面側から行う摩擦攪拌と裏面側から行う摩擦攪拌の残存熱量が等しくなれば伝熱板が平坦になると考えられる。
かかる製造方法によれば、ベース部材の裏面側における入熱量が、表面側における入熱量よりも少なくなるため、伝熱板内に残存する熱量の不均衡を是正することができる。これにより、伝熱板の反りを防止して伝熱板の平坦性を高めることができる。
【0014】
また、前記接合工程では、前記接合用回転ツールの押圧力によって前記蓋板が前記熱媒体用管の上部を押圧するとともに、前記蓋板の少なくとも上部と前記ベース部材とを塑性流動化することが好ましい。
【0015】
かかる製造方法によれば、熱媒体用管の上部を蓋板で押し込みながら摩擦攪拌するため、熱媒体用管の周辺の空隙を減少させることができ、ひいては、熱交換効率を高めることができる。
【0016】
また、前記ベース部材を固定治具によってテーブルに固定した状態で前記接合工程及び前記矯正工程を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、ベース部材を拘束した状態で摩擦攪拌を行うため作業性を高めることができる。
【0017】
また、前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の形状が、前記ベース部材の中心に対して略点対称であることが好ましい。また、前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の形状が、前記ベース部材の外縁の形状と略相似形状であることが好ましい。また、前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の形状が、前記ベース部材の表面側に形成される前記接合用回転ツールの軌跡の形状と略同一であることが好ましい。また、前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の全長が、前記ベース部材の表面側に形成される前記接合用回転ツールの軌跡の全長と略同一であることが好ましい。かかる製造方法によれば、伝熱板をバランスよく矯正することにより、伝熱板の平坦性をより高めることができる。
【0018】
また、前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の全長が、前記ベース部材の表面側に形成される前記接合用回転ツールの軌跡の全長よりも短いことが好ましい。また、前記矯正工程で用いる前記矯正用回転ツールのショルダ部の外径が、前記接合工程で用いる前記接合用回転ツールのショルダ部の外径よりも小さいことが好ましい。また、前記矯正工程で用いる前記矯正用回転ツールのピンの長さが、前記接合工程で用いる前記接合用回転ツールのピンの長さよりも短いことが好ましい。また、前記矯正工程では、前記接合工程における前記接合用回転ツールの送り速度よりも速い送り速度で前記矯正用回転ツールによって摩擦攪拌を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、矯正工程による入熱量を接合工程による入熱量よりも低く設定できる。
【0019】
また、前記ベース部材の厚みが、前記接合用回転ツールのショルダ部の外径の1.5倍以上であることが好ましい。また、前記ベース部材の厚みが前記接合用回転ツールのピンの長さの3倍以上であることが好ましい。かかる製造方法によれば、接合用回転ツールの各部位の大きさに対してベース部材が十分な厚みを備えているため、伝熱板の平坦性をより高めることができる。
【0020】
また、前記ベース部材が平面視多角形である場合、前記矯正工程において、前記ベース部材の隅部に対して前記矯正用回転ツールにより摩擦攪拌を行う隅部摩擦攪拌工程を含むことが好ましい。かかる製造方法によれば、ベース部材の隅部において発生した反りを解消して伝熱板の平坦性を解消することができる。
【0021】
また、前記熱媒体用管の内部にヒーターを備える場合、前記矯正工程後に前記ヒーターに通電して、前記伝熱板を焼鈍する焼鈍工程を含むことが好ましい。かかる製造方法によれば、塑性化領域に残留する内部応力を除去して伝熱板の反りを解消することができる。
【0022】
また、前記矯正工程後に、前記ベース部材の裏面側を面削加工する面削工程を含み、前記面削加工の深さは、前記矯正用回転ツールのピンの長さよりも大きいことが好ましい。かかる製造方法によれば、伝熱板の裏面を平滑に形成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る伝熱板の製造方法によれば、平坦性の高い伝熱板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第一実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、(a)のI−I線断面図である。
【図2】第一実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、分解斜視図、(b)は、分解断面図である。
【図3】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法を示した断面図であって、(a)は、溝形成工程、(b)は、熱媒体用管挿入工程、(c)は、蓋溝閉塞工程を示す。
【図4】(a)は、接合用回転ツールを示した側面図であり、(b)は、矯正用回転ツールを示した側面図である。
【図5】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を行う前を示した斜視図である。
【図6】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を段階的に示した平面図である。
【図7】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を示した模式断面図である。
【図8】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を行った後を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、地点c及び地点fを結ぶ線の断面図である。
【図9】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、(a)は、矯正工程を示した斜視図、(b)は、矯正工程を示した平面図である。
【図10】第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、矯正工程を示した模式断面図である。
【図11】第一変形例の接合工程を示した模式断面図である。
【図12】第一変形例の接合工程後を示した模式断面図である。
【図13】第二変形例を示した図であって、(a)は、接合工程前を示した分解断面図、(b)は、接合工程を示した断面図である。
【図14】第二実施形態に係る伝熱板を示した斜視図である。
【図15】第二実施形態に係る伝熱板を示した分解斜視図である。
【図16】第二実施形態に係る伝熱板を示した分解断面図である。
【図17】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、(a)は、接合工程を示した斜視図、(b)は、(a)のII-II線断面図である。
【図18】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を示した模式断面図である。
【図19】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を行った後を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、地点c及び地点fを結ぶ線の断面図である。
【図20】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、(a)は、矯正摩擦攪拌工程を示した平面図、(b)は、隅部摩擦攪拌工程を示した平面図である。
【図21】第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、矯正工程を示した模式断面図である。
【図22】図20のIII-III線断面において、第二実施形態に係る伝熱板の製造方法の面削工程を示した図である。
【図23】第四変形例に係る伝熱板の表面側の一部破断平面図である。
【図24】第四変形例に係る伝熱板の裏面側の平面図である。
【図25】伝熱板の裏面側の平面図であって(a)は第六変形例、(b)は第七変形例、(c)は第八変形例、(d)は第九変形例、(e)は第十変形例、(f)は第十一変形例を示す。
【図26】実施例におけるベース部材を示した図であって、(a)は、表面側の斜視図、(b)は、裏面側の平面図である。
【図27】従来の伝熱板を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第一実施形態]
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、第一実施形態に係る製造方法によって製造された伝熱板1について説明する。本実施形態においては、伝熱板1をヒートプレートとして用いる場合を例にして説明する。
【0026】
伝熱板1は、図1の(a)及び(b)に示すように、平面視矩形の板厚のベース部材2と、ベース部材2の内部に埋設される熱媒体用管20と、ベース部材2に凹設された溝に配置された蓋板10と、を主に備えている。ベース部材2と蓋板10との突合部J1,J2は、それぞれ摩擦攪拌によって接合されている。かかる伝熱板1は、熱媒体用管20に挿通された図示しないマイクロヒーター等で加熱して使用される。
【0027】
ベース部材2は、熱媒体用管20内の熱媒体の熱を外部に伝達させる役割、あるいは、外部の熱を熱媒体用管20内の熱媒体に伝達させる役割を果たすものである。ベース部材2は、図2の(a)及び(b)に示すように、平面視正方形を呈する直方体であって、本実施形態では、厚みが30mm〜120mmのものを用いる。ベース部材2は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。ベース部材2の平面視した形状は、本実施形態では正方形としたが、他の多角形状、円形、楕円形でもよい。ベース部材2の表面2aには、蓋溝6が凹設されており、蓋溝6の底面6cの中央には、蓋溝6よりも幅狭の凹溝8が凹設されている。
【0028】
蓋溝6は、蓋板10が配置される部分であって、平面視略馬蹄状に一定の幅及び深さで連続して形成されている。蓋溝6は、断面視矩形を呈し、蓋溝6の底面6cから垂直に立ち上がる側壁6a,6bを備えている。
【0029】
凹溝8は、熱媒体用管20が挿入される部分であって、蓋溝6の底面6cの中央部分において、蓋溝6の全長に亘って形成されている。凹溝8は、上方が開口した断面視U字状の溝であって、下端には半円形の底面7が形成されている。底面7の半径は、熱媒体用管20の半径と同等に形成されている。また、凹溝8の深さ及び開口部分の幅は、熱媒体用管20と同等に形成されている。蓋溝6の深さ及び幅は、蓋板10の高さ及び幅と略同等に形成されている。
【0030】
熱媒体用管20は、図2の(a)及び(b)に示すように、断面視円形の中空部18を有する円筒管である。熱媒体用管20は、本実施形態では銅からなり、平面視馬蹄状を呈する。凹溝8に熱媒体用管20を配置するとともに、蓋溝6に蓋板10を配置すると、熱媒体用管20の下半部と凹溝8の底面7とが面接触するとともに、熱媒体用管20の上端と蓋板10の下面12とが接触する。
【0031】
熱媒体用管20には、本実施形態においては、マイクロヒーターを挿通するが、他にも例えば、冷却水、冷却ガス、高温液、あるいは高温ガスなどの熱媒体を循環させて、熱媒体の熱をベース部材2及び蓋板10に、あるいは、ベース部材2及び蓋板10の熱を熱媒体に伝達させてもよい。
【0032】
なお、本実施形態においては、熱媒体用管20は、断面視円形としたが、断面視角形であってもよい。また、熱媒体用管20は、本実施形態においては、銅管を用いているが、他の材料の管を用いてもよい。
【0033】
蓋板10は、図2の(a)及び(b)に示すように、ベース部材2の蓋溝6の断面と略同じ矩形断面を形成する上面11、下面12、側面13a及び側面13bを有し、平面視略馬蹄状で形成されている。蓋板10は、本実施形態では、ベース部材2と同様の組成で形成されている。蓋板10の幅は、蓋溝6の溝幅と略同等に形成されているため、蓋板10を蓋溝6に配置すると、蓋板10の側面13aは、蓋溝6の側壁6aと面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。また、蓋板10の側面13bは、蓋溝6の側壁6bと面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。
【0034】
前記したように、本実施形態においては、凹溝8と熱媒体用管20の下半部を面接触させ、かつ、熱媒体用管20の上端と蓋板10の下面12とを接触させて各部材を配置したが、これに限定されるものではない。例えば、熱媒体用管20の外径よりも凹溝8の深さを大きく形成して、熱媒体用管20の上端と蓋板10の下面12とを離間させてもよい。また、熱媒体用管20の外径よりも凹溝8の幅を大きく形成してもよい。また、蓋溝6、凹溝8、蓋板10及び熱媒体用管20は、本実施形態では、平面視馬蹄状を呈するように形成したがこれに限定されるものではなく、伝熱板1の用途に応じて適宜設計すればよい。
【0035】
次に、伝熱板1の製造方法について説明する。
本実施形態に係る伝熱板1の製造方法は、(1)溝形成工程、(2)熱媒体用管挿入工程、(3)蓋溝閉塞工程、(4)接合工程、(5)矯正工程、(6)焼鈍工程を含むものである。
【0036】
(1)溝形成工程
溝形成工程では、図3の(a)に示すように、ベース部材2の表面2aに、所定の幅及び深さで蓋溝6及び凹溝8を形成する。溝形成工程は、例えば、公知のエンドミル等を用いて、切削加工により行う。
【0037】
(2)熱媒体用管挿入工程
熱媒体用管挿入工程では、図3の(b)に示すように、溝形成工程で形成された凹溝8に熱媒体用管20を挿入する。
【0038】
(3)蓋溝閉塞工程
蓋溝閉塞工程では、図3の(c)に示すように、蓋溝6に蓋板10を配置して、蓋溝6を閉塞する。ここで、蓋溝6と蓋板10との突き合わせ部分において、蓋溝6と蓋板10の内縁とで突き合わされた部分を突合部J1とし、蓋溝6と蓋板10の外縁とで突き合わされた部分を突合部J2とする。
【0039】
(4)接合工程
接合工程では、突合部J1,J2に沿って、接合用回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行う。接合工程は、本実施形態では、ベース部材2を移動不能に固定する固定工程、突合部J1を摩擦攪拌する第一接合工程と、突合部J2を摩擦攪拌する第二接合工程とを含む。
【0040】
ここで、本実施形態における接合工程の際に用いる接合用回転ツールF及び後記する矯正工程の際に用いる矯正用回転ツールGについて詳細に説明する。
接合用回転ツールFは、図4の(a)に示すように、工具鋼などベース部材2よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部F1と、このショルダ部F1の下端面F11に突設された攪拌ピン(プローブ)F2とを備えて構成されている。接合用回転ツールFの寸法・形状は、ベース部材2の材質や厚さ等に応じて設定すればよいが、少なくとも、後記する矯正工程で用いる矯正用回転ツールG(図4の(b)参照)よりも大型にする。
【0041】
ショルダ部F1の下端面F11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。ショルダ部F1の外径X1の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、矯正用回転ツールGのショルダ部G1の外径Y1よりも大きくなっている。
【0042】
攪拌ピンF2は、ショルダ部F1の下端面F11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンF2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。攪拌ピンF2の外径の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、最大外径(上端径)X2が矯正用回転ツールGの攪拌ピンG2の最大外径(上端径)Y2よりも大きく、かつ、最小外径(下端径)X3が攪拌ピンG2の最小外径(下端径)Y3よりも大きい。攪拌ピンF2の長さLAは、矯正用回転ツールGの攪拌ピンG2の長さLB(図4の(b)参照)よりも大きく成形されている。
【0043】
ここで、図4の(a)に示すベース部材2の厚みtは、攪拌ピンF2の長さLAの3倍以上であることが好ましい。また、ベース部材2の厚みtは、ショルダ部F1の外径X1の1.5倍以上であることが好ましい。かかる設定によれば、接合用回転ツールFの大きさに対して、ベース部材2の厚みを十分に確保することができるため、摩擦攪拌を行う際に発生する反りを低減することができる。
【0044】
図4の(b)に示す矯正用回転ツールGは、工具鋼などベース部材2よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部G1と、このショルダ部G1の下端面G11に突設された攪拌ピン(プローブ)G2とを備えて構成されている。
【0045】
ショルダ部G1の下端面G11は、接合用回転ツールFと同様に、凹面状に成形されている。攪拌ピンG2は、ショルダ部G1の下端面G11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンG2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。
【0046】
固定工程では、図5に示すように、摩擦攪拌装置(図示省略)のテーブルTに固定治具15を用いてベース部材2を移動不能に拘束する。固定治具15は、ベース部材2の表面2aに当接する当て金具15aと、当て金具15aに挿通されるボルト15bと、ボルト15bが螺入するネジ孔15cとを有する。固定治具15は、ベース部材2をテーブルTに固定できる形態であれば他の形態であってもよい。また、本実施形態では4つの固定治具15を用いたが、数量を限定するものではない。
【0047】
第一接合工程では、図6の(a)及び(b)に示すように、ベース部材2と蓋板10との突合部J1に沿って摩擦攪拌接合を行う。
まず、ベース部材2の表面2aの任意の位置に開始位置SM1を設定し、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2をベース部材2に押し込む(押圧する)。開始位置SM1は、本実施形態では、ベース部材2の外縁の近傍であり、かつ、突合部J1の近傍に設定する。接合用回転ツールFのショルダ部F1の一部がベース部材2の表面2aに接触したら、突合部J1の始点s1に向かって接合用回転ツールFを相対移動させる。そして、図6の(a)に示すように、始点s1に達したら、接合用回転ツールFを離脱させずに、そのまま突合部J1に沿って移動させる。
【0048】
接合用回転ツールFが突合部J1の終点e1に達したら、接合用回転ツールFをそのまま開始位置SM1側に移動させて、任意の位置に設定した終了位置EM1で接合用回転ツールFを離脱させる。
なお、開始位置SM1、始点s1、終了位置EM1及び終点e1は、本実施形態の位置に限定するものではないが、ベース部材2の外縁の近傍であり、かつ、突合部J1の近傍であることが好ましい。
【0049】
次に、第二接合工程では、図6の(b)及び(c)に示すように、ベース部材2と蓋板10との突合部J2に沿って摩擦攪拌接合を行う。
まず、ベース部材2の表面2aの任意の地点hに開始位置SM2を設定し、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2をベース部材2に押し込む(押圧する)。接合用回転ツールFのショルダ部F1の一部がベース部材2の表面2aに接触したら、突合部J2の始点s2に向かって接合用回転ツールFを相対移動させる。そして、始点s2に達したら、接合用回転ツールFを離脱させずに、そのまま突合部J2に沿って移動させる。
【0050】
接合用回転ツールFが突合部J2の終点e2に達したら、接合用回転ツールFをそのまま地点f側に移動させて、地点fに設定した終了位置EM2で接合用回転ツールFを離脱させる。
なお、開始位置SM2及び終了位置EM2は、本実施形態の位置に限定するものではないが、ベース部材2の外縁の隅部であることが好ましい。これにより、終了位置EM2に抜け穴が残存する場合は、隅部を切削加工して除去することができる。
【0051】
図6の(c)に示すように、接合工程によって、突合部J1及び突合部J2に沿って表面塑性化領域W1(W1a,W1b)が形成される。これにより、熱媒体用管20がベース部材2及び蓋板10によって密閉される。また、図1の(b)に示すように、本実施形態では、表面塑性化領域W1の深さが、蓋溝6の側壁6a,6b(図2の(b)参照)の高さと略同等に形成されているため、突合部J1及び突合部J2の深さ方向の全体を摩擦攪拌することができる。これにより、伝熱板1の気密性を高めることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、接合用回転ツールFを左回転させつつ、進行方向左側に蓋板10が位置するように摩擦攪拌接合を行った。接合用回転ツールFを左回転させると、進行方向右側は、シアー側(被接合部に対する回転ツールの外周の相対速さが、回転ツールの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側)となるためメタルが強く攪拌されて高温軟化し、バリとなって排出され易いと考えられる。このため、進行方向右側はメタルが不足するので、トンネル状空洞欠陥が形成される可能性がある。一方、進行方向左側は、フロー側となるため、比較的緻密な塑性化領域が形成される。かかるトンネル状空洞欠陥などの接合欠陥が形成される可能性のある部分を熱媒体用管20及び凹溝8から離間する位置に配置することで、伝熱板1の気密性及び水密性をより高めることができる。
ちなみに、進行方向右側に蓋板10が位置するように設定した場合は、接合用回転ツールFを右回転させて摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。
【0053】
図7に示すように、高速回転した接合用回転ツールFがベース部材2及び蓋板10に挿入されると、ベース部材2及び蓋板10に摩擦熱が伝達される(入熱)。ベース部材2がテーブルTに面接触しているため、摩擦熱の一部は、矢印Nに示すようにベース部材2の裏面2b全体からテーブルT側に放出(抜熱)される。
【0054】
ここで、図8は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を行った後を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、地点c及び地点fを結ぶ線の断面図である。ベース部材2及び蓋板10には、接合工程によって表面塑性化領域W1が形成される。表面塑性化領域W1は、熱収縮によって縮むため、ベース部材2の表面2a側において、ベース部材2の各隅部側から中心側に向かって圧縮応力が作用する。これにより、ベース部材2及び蓋板10は表面2a側が凹となるように、撓んでしまう可能性がある。特に、ベース部材の表面2aに示す地点a〜地点jのうち、四隅に係る地点a,c,f,hにおいては、その反りの影響が顕著に現れる傾向がある。なお、地点jは、ベース部材2の中心地点を示す。
【0055】
(5)矯正工程
矯正工程では、矯正用回転ツールGを用いてベース部材2の裏面2bから摩擦攪拌を行う。矯正工程は、前記した接合工程で発生した反り(撓み)を解消するために行う工程である。矯正工程は、本実施形態では、タブ材を配置するタブ材配置工程と、ベース部材2を固定する固定工程と、ベース部材2の裏面2bに対して摩擦攪拌を行う矯正摩擦攪拌工程と、を含む。
【0056】
タブ材配置工程では、図9に示すように、後記する矯正摩擦攪拌工程の開始位置及び終了位置を設定するタブ材31を配置する。タブ材31は、本実施形態では直方体を呈し、ベース部材2と同等の組成からなる。タブ材31は、ベース部材2の側面2cの一部を覆い隠すようにして、側面2cに当接されている。また、タブ材31は、タブ材31の両側面とベース部材2の側面2cとを溶接によって仮接合されている。タブ材31の表面は、ベース部材2の裏面2bと面一に形成することが好ましい。
【0057】
固定工程では、図9に示すように、ベース部材2の裏面2bが上方を向くようにして、摩擦攪拌装置(図示省略)のテーブルに前記した固定治具15を用いてベース部材2を移動不能に拘束する。
【0058】
矯正摩擦攪拌工程では、図9の(a)及び(b)に示すように、矯正用回転ツールGを用いて、ベース部材2の裏面2bに対して摩擦攪拌を行う。矯正摩擦攪拌工程のルートは、本実施形態では、中心地点j’を囲み、かつ、矯正摩擦攪拌工程によって形成される裏面塑性化領域W2が中心地点j’に対して放射状となるように設定する。なお、地点a’,地点b’・・・は、ベース部材2の表面2a側の地点a,地点b・・・(図8参照)のそれぞれ裏面2b側に対応する地点をいう。
【0059】
矯正摩擦攪拌工程では、図8の(a)に示すように、まず、タブ材31の表面に開始位置SM3を設定し、矯正用回転ツールGの攪拌ピンG2をタブ材31に押し込む(押圧する)。矯正用回転ツールGのショルダ部G1の一部がタブ材31に接触したら、ベース部材2に向かって矯正用回転ツールGを相対移動させる。そして、ベース部材2の裏面2bにおける地点f’、地点a’、地点c’及び地点h’付近で平面視凸状となるとともに、地点g‘、地点d’、地点b’及び地点e’付近で平面視凹状となるように矯正用回転ツールGを相対移動させて摩擦攪拌を行う。つまり、図9の(b)に示すように、ベース部材2の中心線(一点鎖線)に対して線対称となるように裏面塑性化領域W2が形成される。本実施形態では、開始位置SM3と終了位置EM3とをタブ材31に設け、一筆書きの要領で摩擦攪拌を行う。これにより、摩擦攪拌を効率よく行うことができる。矯正摩擦攪拌工程が終了したら、タブ材31を切除する。
【0060】
本実施形態では、矯正用回転ツールGの軌跡、即ち、裏面塑性化領域W2の形状が、中心地点jに対して略点対称となるように設定した。これにより、バランスよくベース部材2の反りを矯正することができる。なお、矯正用回転ツールGの軌跡は、これに限定されるものではない。矯正用回転ツールGの軌跡のバリエーションについては、後記する。
【0061】
また、本実施形態では、矯正用回転ツールGの軌跡の長さ(裏面塑性化領域W2の長さ)は、接合用回転ツールFの軌跡の長さ(表面塑性化領域W1の長さの和)よりも短くなるように設定している。また、矯正用回転ツールGのショルダ部G1の外径は、接合用回転ツールFのショルダ部F1の外径よりも小さく設定している。また、矯正用回転ツールGの攪拌ピンG2の長さは、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2の長さよりも短く設定している。さらに、矯正用回転ツールFの送り速度は、接合用回転ツールGの送り速度より速く設定している。これにより、矯正工程における摩擦攪拌による入熱量を、接合工程における摩擦攪拌による入熱量よりも少なく設定している。
【0062】
なお、本実施形態では矯正工程において、タブ材を配置したが、矯正摩擦攪拌工程における摩擦攪拌のルートによっては、タブ材を設けなくてもいい。
【0063】
(6)焼鈍工程
焼鈍工程では、ベース部材2及び蓋板10を焼鈍することにより、ベース部材2及び蓋板10の内部応力を除去する。本実施形態では、熱媒体用管20に、例えば、マイクロヒーターを通電させて焼鈍を行う。これにより、伝熱板1の内部応力を除去することができ、伝熱板1の使用時の変形を防止することができる。
【0064】
以上説明した本実施形態に係る製造方法によれば、接合工程による熱収縮によって、ベース部材2及び蓋板10が撓んでしまったとしても、ベース部材2の裏面2bにも摩擦攪拌を行うことで、表面2aに発生した反りを解消して伝熱板1の平坦性を高めることができる。つまり、ベース部材2の裏面2bに形成された裏面塑性化領域W2が、熱収縮により縮むため、ベース部材2の裏面2b側において、ベース部材2の各隅部側から中心側に向かって圧縮応力が作用する。これにより、接合工程によって形成された反りが解消されて、伝熱板1の平坦性を高めることができる。
【0065】
ここで、図10は、第一実施形態に係る伝熱板の製造方法において、矯正工程を示した模式断面図である。図10に示すように、矯正工程において、高速回転した矯正用回転ツールGがベース部材2の裏面2bに挿入されると、ベース部材2内に摩擦熱が伝達される(入熱)。矯正工程では、ベース部材2が接合工程によって反っているため、ベース部材2の表面2aとテーブルTの間に隙間があいている。摩擦熱の一部は、矢印Nに示すようにベース部材2の表面2a側の縁部U,UからテーブルTに放出(抜熱)される。そのため、矯正工程では、接合工程に比べて熱が放出される経路が少なく、ベース部材2内に熱がこもりやすくなる。つまり、ベース部材2の表裏で同等の入熱量で摩擦攪拌を行うと、裏面側から摩擦攪拌を行う方が、残存熱量が大きくなるため反りが戻りすぎてしまう。
【0066】
そこで、本実施形態では、矯正工程にかかる摩擦攪拌での入熱量を、接合工程にかかる入熱量よりも少なく設定することで、ベース部材2の表裏に対する残存熱量の均衡を図った。つまり、矯正工程では、接合工程に比べて抜熱量が少なくなるが、接合工程よりも入熱量を少なく設定することで、接合工程と矯正工程とでベース部材2及び蓋板10に残存する熱量が略同等となるようにした。これにより、伝熱板1の反りを解消して平坦性を高めることができる。
【0067】
本実施形態では、矯正工程において、矯正用回転ツールGを接合用回転ツールFよりも小さく設定したり、矯正用回転ツールGの送り速度を接合用回転ツールGの送り速度よりも速く設定したりして入熱量を少なくしたが、他の方法を用いて入熱量の調整をしてもよい。また、第一実施形態に係る熱媒体用管20の形状、凹溝8の形状等は、あくまで例示であって他の形態であってもよい。
【0068】
[第一変形例]
第一実施形態においては、図1に示すように、接合工程を行うと、熱媒体用管20の周囲に空隙部が形成されてしまう。そこで、図11及び図12に示す第一変形例のように、熱媒体用管20の周囲に形成された空隙部に塑性流動材を流入させて、当該空隙部を埋めてもよい。
【0069】
第一変形例では、図11に示すように、蓋溝6及び蓋板10の幅を前記した第一実施形態よりも小さく設定して、熱媒体用管20の近傍に突合部J1及び突合部J2が位置するように形成する。そして、接合用回転ツールFを所定の深さで押し込んで摩擦攪拌を行うことにより、熱媒体用管20の周囲に形成された空隙部P,Pに塑性流動材を流入させることができる。これにより、図12に示すように、熱媒体用管20の周囲が塑性化された金属で密閉されるため、熱交換効率の高い伝熱板1を形成することができる。
なお、空隙部Pに塑性流動材をどの程度流動させるかは、接合用回転ツールFの大きさや押込み量、蓋溝6及び蓋板10の形状に応じて適宜設定すればよい。
【0070】
[第二変形例]
第二変形例では、図13の(a)に示すように、蓋板10の下面12に凸部16を形成する点で第一実施形態と相違する。蓋板10の下面12の中央には、凸部16が形成されている。凸部16の下面16aは、凹面状に形成されている。下面16aの曲率半径は、熱媒体用管20の半径と同等に形成されている。図13の(b)に示すように、ベース部材2に熱媒体用管20及び蓋板10を載置すると、蓋板10の凸部16がベース部材2の凹溝8に挿入される。これにより、熱媒体用管20の周囲の空隙を塞ぐことができるため、伝熱板の熱交換効率を高めることができる。
【0071】
なお、第二変形例においても、蓋板10の凸部16と熱媒体用管20との間に微細な隙間ができる可能性がある。このような場合は、第一変形例のように、当該隙間に塑性流動材を流入させて塞いでもよい。
【0072】
[第三変形例]
第三変形例では、具体的な図示はしないが、第一実施形態に係る伝熱板1において、熱媒体用管20を設けない構成としてもよい。熱媒体用管20は必ずしも設ける必要はなく、凹溝8に直接熱媒体を流入させて伝熱板を構成してもよい。
【0073】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態の説明においては、第一実施形態と重複する点は、簡単に説明する。前記した第一実施形態においては、蓋板10の両側面に沿ってそれぞれ摩擦攪拌を行うことで、表面塑性化領域W1,W1のように、二条の塑性化領域が形成されるようにして伝熱板を形成したが、第二実施形態のように、蓋板の幅を小さく設定して、一条の塑性化領域のみが形成されるようにして伝熱板を形成してもよい。
【0074】
第二実施形態によって製造された伝熱板41は、図14及び図15に示すように、平面視正方形の板厚のベース部材2と、ベース部材2に凹設された溝に挿入された熱媒体用管21と、ベース部材2に凹設された溝に挿入された蓋板42と、を主に備えている。蓋板42の上面は、摩擦攪拌によって接合される。
【0075】
図14及び図15に示すように、ベース部材2の表面2aには、ベース部材2の一方の側面2cから対向する他方の側面2dまで連続して形成された凹溝43が形成されている。凹溝43は、熱媒体用管21及び蓋板42が挿入される部分である。凹溝43は、断面視U字状、平面視蛇行状を呈するように形成されている。図16に示すように、凹溝43の側壁43a,43b間の幅は、熱媒体用管20の外径と略同等に形成されている。また、凹溝43の幅は、接合用回転ツールFのショルダ部F1の外径X1よりも小さく形成されている。凹溝43の深さは、熱媒体用管21の外径と同じ深さで形成されている。
【0076】
熱媒体用管21は、凹溝43に挿入される管であって、ベース部材2の一方の側面2cから他方の側面2dまで貫通して形成されている。熱媒体用管21は、平面視蛇行状を呈し、凹溝43の平面視形状と略同等の形状を呈する。
【0077】
蓋板42は、断面視矩形、平面視蛇行状を呈する部材であって凹溝43に挿入される部材である。蓋板42は、側面42a,42b及び上面42c、下面42dを備えている。蓋板42を凹溝43に挿入すると、上面42cとベース部材2の表面2aとが面一になるとともに、蓋板42の側面42a,42bは、凹溝43の側壁43a,43bとそれぞれ面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。
【0078】
次に、第二実施形態に係る製造方法について説明する。
第二実施形態に係る伝熱板の製造方法は、(1)溝形成工程、(2)熱媒体用管挿入工程、(3)蓋板挿入工程、(4)接合工程、(5)矯正工程、(6)面削工程を含むものである。
【0079】
(1)溝形成工程
溝形成工程では、図15及び図16に示すように、ベース部材2の表面2aに所定の幅及び深さで凹溝43を形成する。溝形成工程は、例えば、公知のエンドミル等を用いて行う。
【0080】
(2)熱媒体用管挿入工程
熱媒体用管挿入工程では、図15及び図16に示すように、溝形成工程で形成された凹溝43に熱媒体用管21を挿入する。
【0081】
(3)蓋板挿入工程
蓋板挿入工程は、図15及び図16に示すように、凹溝43に蓋板42を挿入して凹溝43を閉塞する。ここで、凹溝43と蓋板42との突き合わせ部分において、凹溝43の一方の側壁43aと、蓋板42の一方の側面42aとで突き合わされた部分を突合部J3とし、凹溝43の他方の側壁43bと、蓋板42の他方の側面42bとで突き合わされた部分を突合部J4とする。
【0082】
(4)接合工程
接合工程では、蓋板42(凹溝43)に沿って接合用回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行う。接合工程は、本実施形態ではタブ材を配置するタブ材配置工程と、ベース部材
2を固定する固定工程と、摩擦攪拌を行う接合工程とを含む。
【0083】
タブ材配置工程では、図17の(a)に示すように、ベース部材2の一方の側面2c及び他方の側面2dに一対のタブ材33,34をそれぞれ配置する。タブ材33,34の両側面とベース部材2とは溶接によって仮接合する。
【0084】
固定工程では、図17の(a)に示すように、ベース部材2を固定治具15を介して摩擦攪拌装置のテーブルTに固定する。
【0085】
接合工程では、図17の(a)及び(b)に示すように、蓋板42(凹溝43)に沿って摩擦攪拌接合を行う。タブ材33に設定した開始位置SM4に接合用回転ツールFを押し込んで、ショルダ部F1がベース部材2に接触したら、蓋板42に沿って接合用回転ツールFを相対移動させ、タブ材34に設定した終了位置EM4まで連続して摩擦攪拌を行う。図17の(b)に示すように、接合用回転ツールFのショルダ部F1の外径X1は、凹溝43の幅よりも大きく設定しているため、蓋板42の中心に沿って接合用回転ツールFを移動させると、突合部J3,J4が塑性化される。このように、本実施形態によれば、一のルートを設定するだけで、突合部J3,J4を摩擦攪拌することができるため、第一実施形態に比べて作業手間を大幅に省略することができる。また、摩擦攪拌を行う際に、接合用回転ツールFが蓋板42を押し込むため、熱媒体用管21も押圧されて若干変形する。これにより、熱媒体用管21の周囲に形成されている空隙部Pを低減することができるため、伝熱板41の熱交換効率を高めることができる。なお、接合工程が終了したら、ベース部材2からタブ材を切除する。
【0086】
図18に示すように、接合工程において、高速回転した接合用回転ツールFがベース部材2及び蓋板42に挿入されると、ベース部材2及び蓋板42に摩擦熱が伝達される(入熱)。ベース部材2がテーブルTに面接触しているため、摩擦熱の一部は、矢印Nに示すように、ベース部材2の裏面2bの全体からテーブルTに放出(抜熱)される。
【0087】
ここで図19は、第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、接合工程を行った後を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、地点c及び地点fを結ぶ線の断面図である。ベース部材2及び蓋板42は、接合工程によって、表面塑性化領域W3が形成される。表面塑性化領域W3は、熱収縮によって縮むため、ベース部材2が表面2a側に凹状となるように反って撓んでしまう可能性がある。特に、ベース部材2の表面2aに示す地点a〜地点jのうち、ベース部材2の四隅に係る地点a,c,f,hに関しては、その反りが顕著に見られる傾向がある。なお、地点jは、ベース部材2の中心地点を示す。
【0088】
(5)矯正工程
矯正工程では、矯正用回転ツールGを用いてベース部材2の裏面2bから摩擦攪拌を行う。矯正工程は、前記した接合工程で発生した反りを解消するために行う工程である。矯正工程は、本実施形態では、ベース部材2を固定する固定工程と、放射線状に摩擦攪拌を行う矯正摩擦攪拌工程と、ベース部材2の隅部に対して摩擦攪拌を行う隅部摩擦攪拌工程とを含むものである。
【0089】
矯正摩擦攪拌工程では、図20の(a)に示すように、中心地点j’を通って放射状に塑性化領域が形成されるように摩擦攪拌を行う。即ち、地点a’と地点h’とを結ぶ直線上、地点d’と地点e’とを結ぶ直線上、地点f’と地点c’とを結ぶ直線上、地点g’と地点b’とを結ぶ直線上にそれぞれ摩擦攪拌の開始位置(SM5,SM6,SM7,SM8)及び終了位置(EM5,EM6,EM7,EM8)を設定するとともに、各開始位置から中心地点j’までの距離と、中心地点j’から各終了位置までの距離とが同等となるように摩擦攪拌のルートを設定する。
矯正摩擦攪拌工程の摩擦攪拌のルートを設定したら、各開始位置に矯正用回転ツールGを押し込み、各ルート(直線)に沿って矯正用回転ツールGを移動させる。図20の(b)に示すように、矯正摩擦攪拌工程によって形成された裏面塑性化領域W41〜W44は、中心地点j’に対して八方向に放射状に広がるように形成される。
【0090】
隅部摩擦攪拌工程では、図20の(b)に示すように、ベース部材2の地点a’、地点c’、地点f’及び地点h’に係る各隅部において、重点的に摩擦攪拌を行う。即ち、地点a’に係る隅部を構成する一辺45a側に摩擦攪拌の開始位置SM9及び終了位置EM9を設定し、他辺45b側に折返し位置SR9を設定する。そして、開始位置SM9に矯正用回転ツールGを押し込み、折返し位置SR9に向けて移動させた後、折返し位置SR9で折り返し、終了位置EM9で矯正用回転ツールGを離脱させる。同様の工程を、地点c’、地点f’及び地点h’の各隅部にも行う。隅部摩擦攪拌工程によれば、特に反りの大きいベース部材2の隅部に重点的に矯正工程を行うことができるため、より伝熱板41の平坦性を高めることができる。
【0091】
隅部摩擦攪拌工程は、本実施形態では、矯正用回転ツールGの軌跡が各隅部において、対角線と直交するように形成されているが、これに限定されるものではない。隅部の反りの大きさを考慮して適宜摩擦攪拌のルートを設定すればよい。なお、隅部摩擦攪拌工程で形成される裏面塑性化領域W45と裏面塑性化領域W47、裏面塑性化領域46と裏面塑性化領域W48はそれぞれ中心地点j’に対して点対称となるように形成されることが好ましい。これにより、バランスよく反りを解消して伝熱板41の平坦性を高めることができる。
【0092】
図21は、第二実施形態に係る伝熱板の製造方法において、矯正工程を示した模式断面図である。図21に示すように、矯正工程で高速回転した矯正用回転ツールGがベース部材2の裏面2bに挿入されると、ベース部材2内に摩擦熱が伝達される(入熱)。矯正工程では、ベース部材2が接合工程によって反っているため、ベース部材2の表面2aとテーブルTの間に隙間があいている。摩擦熱の一部は、矢印Nに示すようにベース部材2の表面2a側の縁部U,UからテーブルTに放出(抜熱)される。そのため、矯正工程では、接合工程に比べて熱が放出される経路が少なく、ベース部材2内に熱がこもりやすくなる。つまり、ベース部材2の表裏で同等の入熱量で摩擦攪拌を行うと、裏面側から摩擦攪拌を行う方が、残存熱量が大きくなるため反りが戻りすぎてしまう。
【0093】
そこで、本実施形態では、矯正工程にかかる摩擦攪拌での入熱量を少なく設定することで、ベース部材2に対する残存熱量の均衡を図った。つまり、接合工程で用いる接合用回転ツールFよりも小型の矯正用回転ツールGを用いて摩擦攪拌を行うことで、表面側よりも裏面側からの入熱量を少なく設定した。
【0094】
(6)面削工程
面削工程では、公知のエンドミル等を用いてベース部材2の裏面2bを面削する。図20の(b)に示すように、ベース部材2の裏面2bには、矯正用回転ツールGの抜き穴(図示省略)や、各回転ツールを押し込むことによって発生する溝(図示省略)、バリ等が発生する。したがって、面削工程を行うことにより、ベース部材2の裏面2bを平滑に形成することができる。本実施形態では、図22に示すように、面削加工の厚みMaは、裏面塑性化領域W42の厚みWaよりも大きく設定する。これにより、ベース部材2の裏面2bに形成される裏面塑性化領域W41〜W48が除去されるため、ベース部材2の性質の均一性を図ることができる。また、裏面2bに裏面塑性化領域W42等が露出しないため、意匠性等にも好適である。
【0095】
なお、本実施形態では、面削加工の厚みは、裏面塑性化領域の厚みよりも大きく設定したが、これに限定されるものではない。面削加工の厚みは、例えば、矯正用回転ツールGの攪拌ピンG2の長さよりも大きく設定してもよい。
また、本実施形態では、攪拌ピンG2を備えた矯正用回転ツールGを用いて矯正工程を行ったが、攪拌ピンG2を備えない矯正用回転ツールGを用いて矯正工程を行っても構わない。かかる回転ツールによれば、裏面塑性化領域の深さを浅くすることができるため、面削する厚みを小さくすることができる。これにより、面削部分が少ないためベース部材2のロスを小さくすることができ、コストを低減することができる。
【0096】
以上説明した第二実施形態によれば、蓋板42と凹溝43との突合部J3,J4を接合用回転ツールFの一回の移動で摩擦攪拌することができるため、第一実施形態に比べて作業手間を大幅に省略することができる。また、矯正工程では、接合工程よりも回転ツールによる入熱量を少なく設定することで、伝熱板41の平坦性を高めることができる。また、ベース部材2の裏面2bに対して、隅部摩擦攪拌工程を行うため、特に反りの大きい隅部に対して重点的に矯正を行って、伝熱板41の平坦性を高めることができる。
【0097】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されずに本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、矯正工程は、前記した第一実施形態及び第二実施形態の摩擦攪拌のルートに限定されずに様々なルートを設定することができる。以下に、矯正工程に係る摩擦攪拌のルートの他の形態について説明する。
【0098】
[第四変形例]
例えば、図23及び図24に示す第四変形例のように、伝熱板の表面側及び裏面側に形成される塑性化領域が、略同等の形状を呈するように矯正工程に係る摩擦攪拌のルートを設定してもよい。なお、第四変形例においては、第一実施形態及び第二実施形態と重複する点は説明を省略する。
【0099】
図23に示す伝熱板51は、中央に開口部52を備えたベース部材2と、ベース部材2に切り欠かれた凹溝(図示省略)に埋設された熱媒体用管53と、凹溝を塞ぐ蓋板54とを主に有している。
【0100】
熱媒体用管53は、平面視中抜きの十字状を呈するように、ベース部材2の内部に埋設されている。熱媒体用管53の一端と他端は、ベース部材2の開口部52に露出している。開口部52に現れる熱媒体用管53の一端から熱を供給し、他端から熱を排出してベース部材2に熱が伝達される。
【0101】
蓋板54とベース部材2との突合部は、接合用回転ツールFによって第二実施形態にかかる接合方法と略同等の工程によって、摩擦攪拌により接合されている。これにより、ベース部材2の表面2aには、平面視略中抜き十字状を呈するように、表面塑性化領域W50が形成されている。
【0102】
一方、図24に示すように、伝熱板51の裏面2bは、表面2aと同様に、平面視中抜き十字状を呈するように裏面塑性化領域W51が形成されている。当該矯正工程における摩擦攪拌の開始位置及び終了位置は、ベース部材2の任意の一点に設定されている。また、裏面塑性化領域W51は、矯正用回転ツールGを用いて一筆書きの要領で摩擦攪拌されている。矯正工程における矯正用回転ツールGの押込み量と、接合工程における接合用回転ツールFの押込み量は同等に設定している。
【0103】
第四変形例のように、伝熱板51の表面2a及び裏面2bにそれぞれ形成された表面塑性化領域W50及び裏面塑性化領域W51が略同等の形状を呈するように矯正工程に係る摩擦攪拌のルートを設定してもよい。かかる接合工程及び矯正工程によれば、伝熱板51の表面2a側及び裏面2b側に形成される塑性化領域の形状が略同等となるため、伝熱板1の反りをバランスよく解消して平坦性を高めることができる。
なお、第四変形例によれば、ベース部材2の表面2a側に行う摩擦攪拌の軌跡の長さと、裏面2b側に行う摩擦攪拌の軌跡の長さが略同等となるが、矯正用回転ツールGは、接合用回転ツールFよりも小さく形成されているため、矯正工程における入熱量は、接合用工程における入熱量に比べて小さくなる。これにより、伝熱板51の平坦性を高めることができる。
【0104】
[第五変形例]
第五変形例では、具体的な図示はしないが、第二実施形態に係る伝熱板41において、熱媒体用管21を設けない構成としてもよい。熱媒体用管21は、必ずしも設ける必要はなく、凹溝43に直接熱媒体を流入させて伝熱板を構成してもよい。
【0105】
[第六〜第十一変形例]
矯正工程に係る摩擦攪拌のルートは、前記した形態に限定されるものではなく、以下の形態でもよい。図25は、伝熱板の裏面側の平面図であって(a)は第六変形例、(b)は第七変形例、(c)は第八変形例、(d)は第九変形例、(e)は第十変形例、(f)は第十一変形例を示す。
【0106】
図25の(a)及び(b)に示す第六変形例及び第七変形例の矯正用回転ツールの軌跡(裏面塑性化領域W2)は、いずれもベース部材2の中心地点j’を囲むように形成されていることを特徴とする。また、第六変形例は、ベース部材2の外形形状に対して相似になるように形成されている。また、図25の(b)に示す第七変形例のように、格子状に形成してもよい。
【0107】
図25の(c)及び(d)に示す第八変形例及び第九変形例の矯正用回転ツールの軌跡(裏面塑性化領域W2)は、いずれもベース部材2の中心地点j’を通過して放射状となるように形成されていることを特徴とする。図25の(c)に示す第九変形例は、中心地点jを始点及び終点とするループを複数含み、中心地点j’に対して点対称となるように形成されている。また、第九変形例は、一筆書きの要領で形成することができるため、作業効率を高めることができる。図25の(d)に示す第九変形例は、中心地点j’を通過するとともに、ベース部材2の対角線に対して平行となるように形成されている。
【0108】
図25の(e)及び(f)に示す第十変形例及び第十一変形例の矯正用回転ツールの軌跡(裏面塑性化領域W2)は、中心地点j’を通る直線で区分けした領域に、同形状の4つの軌跡がそれぞれ独立して形成されるとともに、中心地点j’を挟んで斜めに対向する軌跡が点対称となるように形成されている。4つの軌跡の形状は、同形状であれば、どのような形状であっても構わない。
【0109】
以上説明したように、矯正工程は、ベース部材2に行われる接合工程の摩擦攪拌の軌跡に応じて適宜摩擦攪拌のルートを設定して行えばよい。第六変形例〜第十一変形例のように、矯正工程の矯正用回転ツールGの軌跡を適宜設定することでバランスよく反りを解消することができる。
【実施例】
【0110】
次に、本発明の実施例について説明する。本発明に係る実施例は、図26の(a)及び(b)に示すように平面視正方形のベース部材2の表面2a及び裏面2bにそれぞれ3つの円を描くように摩擦攪拌を行い、表面2a側で発生した反りの変形量と、裏面2b側で発生した反りの変形量を測定した。表面2a側で発生した反りの変形量の値と、裏面2b側で発生した反りの変形量の値が近いほど、ベース部材200の平坦性が高いことを示す。
【0111】
ベース部材2は、平面視500mm×500mmの直方体であって、厚みが30mm、60mmの二種類の部材を用いてそれぞれ測定を行った。ベース部材2の素材は、JIS規格の5052アルミニウム合金である。
【0112】
摩擦攪拌の軌跡である3つの円は、ベース部材2の中心に設定した地点j又は地点j’を中心とし、表面2a及び裏面2bともに半径r1=100mm(以下、小円ともいう)、r2=150mm(以下、中円ともいう)、r3=200mm(以下、大円ともいう)に設定した。摩擦攪拌の順序は、小円、中円、大円の順番で行った。
【0113】
回転ツールは、表面2a側及び裏面2b側ともに同じ大きさの回転ツールを用いた。回転ツールのサイズは、ショルダ部の外径が20mm、攪拌ピンの長さが10mm、攪拌ピンの根元の大きさ(最大径)が9mm、攪拌ピンの先端の大きさ(最小径)が6mmのものを用いた。回転ツールの回転数は、600rpm、送り速度は、300mm/minに設定した。また、表面2a側及び裏面2b側ともに回転ツールの押込み量は一定に設定した。図26に示すように、表面2a側において形成された塑性化領域を小円から大円に向けてそれぞれ塑性化領域W21乃至塑性化領域W23とする。また、裏面2b側において形成された塑性化領域を小円から大円に向けて塑性化領域W31乃至W33とする。当該実施例における各測定結果を以下の表1〜表4に示す。
【0114】
表1は、ベース部材2の板厚が30mmであって、表面2a側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。「FSW前」は、摩擦攪拌を行う前において、中心地点j(基準j)と各地点(地点a〜地点h)との高低差を示している。「FSW後」は、基準jをゼロとして、3つの円の摩擦攪拌を行った後において、基準jと各地点との高低差を示している。「表面側変形量」は、各地点における(FSW後−FSW前)の値を示している。「表面側変形量」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。「FSW前」及び「FSW後」のマイナス値は、基準jよりも下方に位置していることを意味する。
【0115】
【表1】
【0116】
表2は、ベース部材2の板厚が30mmであって、表面側から小円、中円、大円の摩擦攪拌をいった後、反って(歪んで)しまったベース部材2に対して、裏面側からも小円、中円、大円のそれぞれの摩擦攪拌を行った場合のベース部材2の各地点の測定値を示した表である。「FSW前」は、摩擦攪拌を行う前において、中心地点j’(基準j’)と各地点(a’〜h’)との高低差を示している。
「FSW1」は、図26を参照するように、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量1」は、各地点における(FSW1−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量1」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW2」は、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)に加えてさらに、中円(半径r2)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量2」は、各地点における(FSW2−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量2」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW3」は、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)、中円(半径r2)に加えてさらに、大円(半径r3)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量3」は、各地点における(FSW3−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量3」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
【0117】
【表2】
【0118】
表3は、ベース部材2の板厚が60mmであって、表面側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。表3の各項目は、表1の各項目と略同等の意味を示す。
【0119】
【表3】
【0120】
表4は、ベース部材2の板厚が60mmであって、表面側から小円、中円、大円の摩擦攪拌を行った後、裏面側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。表4の各項目は、表2の各項目と略同等の意味を示す。
【0121】
【表4】
【0122】
表1の「表面側変形量」の平均値(1.61)と、表2の「裏面側変形量1」の平均値(2.04)とを比較すると、「裏面側変形量1」の値の方が大きい。同様に、「裏面側変形量2」の平均値(2.95)及び「裏面側変形量3」の平均値(3.53)も、「表面側変形量」の平均値(1.61)よりも大きな値となっている。つまり、ベース部材2の板厚が30mmの場合は、裏面側から小円の摩擦攪拌のみを行っただけでも、ベース部材2の反りが戻りすぎてしまう。したがって、ベース部材2が30mmの場合は、小さい回転ツールを用いるなどして表面側よりも裏面側の入熱量を少なくすれば、ベース部材2の平坦性を高めることができる。
【0123】
表3の「表面側変形量」の平均値(0.98)と、表4の「裏面側変形量2」の平均値(0.91)とを比較すると、両者の変形量が近似している。したがって、ベース部材2の板厚が60mmの場合は、裏面側から小円及び中円の摩擦攪拌を行ったときに、ベース部材2の平坦性が高いことが確認できた。つまり、板厚が60mmの場合は、小さい回転ツールを用いるなどして表面側よりも裏面側の入熱量を少なくすれば、ベース部材2の平坦性を高めることができる。
【符号の説明】
【0124】
1 伝熱板
2 ベース部材
2a 表面
2b 裏面
6 蓋溝
8 凹溝
10 蓋板
20 熱媒体用管
F 接合用回転ツール
G 矯正用回転ツール
J 突合部
P 空隙部
W 塑性化領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材の表面側に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から摩擦攪拌接合を行う接合工程と、
矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、
前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項2】
ベース部材の表面側に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、
前記蓋溝に蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から摩擦攪拌接合を行う接合工程と、
矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、
前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項3】
前記蓋板の底面には、前記凹溝に挿入される凸部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項4】
前記接合工程では、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に摩擦熱によって流動化された塑性流動材を流入させることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項5】
ベース部材の表面側に開口する凹溝に蓋板を挿入する蓋板挿入工程と、
前記凹溝に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から前記ベース部材と前記蓋板の摩擦攪拌接合を行う接合工程と、
矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、
前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項6】
ベース部材の表面側に開口する凹溝に熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、
前記凹溝に蓋板を挿入する蓋板挿入工程と、
前記凹溝に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から前記ベース部材と前記蓋板の摩擦攪拌接合を行う接合工程と、
矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、
前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項7】
前記接合工程では、前記接合用回転ツールの押圧力によって前記蓋板が前記熱媒体用管の上部を押圧するとともに、前記蓋板の少なくとも上部と前記ベース部材とを塑性流動化することを特徴とする請求項6に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項8】
前記ベース部材を固定治具によってテーブルに固定した状態で前記接合工程及び前記矯正工程を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項9】
前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の形状が、前記ベース部材の中心に対して略点対称であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項10】
前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の形状が、前記ベース部材の外縁の形状と略相似形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項11】
前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の形状が、前記ベース部材の表面側に形成される前記接合用回転ツールの軌跡の形状と略同一であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項12】
前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の全長が、前記ベース部材の表面側に形成される前記接合用回転ツールの軌跡の全長と略同一であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項13】
前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の全長が、前記ベース部材の表面側に形成される前記接合用回転ツールの軌跡の全長よりも短いことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項14】
前記矯正工程で用いる前記矯正用回転ツールのショルダ部の外径が、前記接合工程で用いる前記接合用回転ツールのショルダ部の外径よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項15】
前記矯正工程で用いる前記矯正用回転ツールのピンの長さが、前記接合工程で用いる前記接合用回転ツールのピンの長さよりも短いことを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項16】
前記矯正工程では、前記接合工程における前記接合用回転ツールの送り速度よりも速い送り速度で前記矯正用回転ツールによって摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項17】
前記ベース部材の厚みが、前記接合用回転ツールのショルダ部の外径の1.5倍以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項18】
前記ベース部材の厚みが前記接合用回転ツールのピンの長さの3倍以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項19】
前記ベース部材が平面視多角形である場合、前記矯正工程において、前記ベース部材の隅部に対して前記矯正用回転ツールにより摩擦攪拌を行う隅部摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項20】
前記熱媒体用管の内部にヒーターを備える場合、前記矯正工程後に前記ヒーターに通電して、前記伝熱板を焼鈍する焼鈍工程を含むことを特徴とする請求項2又は請求項6に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項21】
前記矯正工程後に、前記ベース部材の裏面側を面削加工する面削工程を含み、前記面削加工の深さは、前記矯正用回転ツールのピンの長さよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項20のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項1】
ベース部材の表面側に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から摩擦攪拌接合を行う接合工程と、
矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、
前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項2】
ベース部材の表面側に開口する蓋溝の底面に形成された凹溝に、熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、
前記蓋溝に蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から摩擦攪拌接合を行う接合工程と、
矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、
前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項3】
前記蓋板の底面には、前記凹溝に挿入される凸部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項4】
前記接合工程では、前記熱媒体用管の周囲に形成された空隙部に摩擦熱によって流動化された塑性流動材を流入させることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項5】
ベース部材の表面側に開口する凹溝に蓋板を挿入する蓋板挿入工程と、
前記凹溝に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から前記ベース部材と前記蓋板の摩擦攪拌接合を行う接合工程と、
矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、
前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項6】
ベース部材の表面側に開口する凹溝に熱媒体用管を挿入する熱媒体用管挿入工程と、
前記凹溝に蓋板を挿入する蓋板挿入工程と、
前記凹溝に沿って接合用回転ツールを相対移動させて前記ベース部材の表面側から前記ベース部材と前記蓋板の摩擦攪拌接合を行う接合工程と、
矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含み、
前記矯正工程における前記ベース部材への入熱量を、前記接合工程における前記ベース部材への入熱量よりも少なく設定することを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項7】
前記接合工程では、前記接合用回転ツールの押圧力によって前記蓋板が前記熱媒体用管の上部を押圧するとともに、前記蓋板の少なくとも上部と前記ベース部材とを塑性流動化することを特徴とする請求項6に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項8】
前記ベース部材を固定治具によってテーブルに固定した状態で前記接合工程及び前記矯正工程を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項9】
前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の形状が、前記ベース部材の中心に対して略点対称であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項10】
前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の形状が、前記ベース部材の外縁の形状と略相似形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項11】
前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の形状が、前記ベース部材の表面側に形成される前記接合用回転ツールの軌跡の形状と略同一であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項12】
前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の全長が、前記ベース部材の表面側に形成される前記接合用回転ツールの軌跡の全長と略同一であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項13】
前記矯正工程において、前記矯正用回転ツールの軌跡の全長が、前記ベース部材の表面側に形成される前記接合用回転ツールの軌跡の全長よりも短いことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項14】
前記矯正工程で用いる前記矯正用回転ツールのショルダ部の外径が、前記接合工程で用いる前記接合用回転ツールのショルダ部の外径よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項15】
前記矯正工程で用いる前記矯正用回転ツールのピンの長さが、前記接合工程で用いる前記接合用回転ツールのピンの長さよりも短いことを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項16】
前記矯正工程では、前記接合工程における前記接合用回転ツールの送り速度よりも速い送り速度で前記矯正用回転ツールによって摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項17】
前記ベース部材の厚みが、前記接合用回転ツールのショルダ部の外径の1.5倍以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項18】
前記ベース部材の厚みが前記接合用回転ツールのピンの長さの3倍以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項19】
前記ベース部材が平面視多角形である場合、前記矯正工程において、前記ベース部材の隅部に対して前記矯正用回転ツールにより摩擦攪拌を行う隅部摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項20】
前記熱媒体用管の内部にヒーターを備える場合、前記矯正工程後に前記ヒーターに通電して、前記伝熱板を焼鈍する焼鈍工程を含むことを特徴とする請求項2又は請求項6に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項21】
前記矯正工程後に、前記ベース部材の裏面側を面削加工する面削工程を含み、前記面削加工の深さは、前記矯正用回転ツールのピンの長さよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項20のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
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【図16】
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【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2011−41954(P2011−41954A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189812(P2009−189812)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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