説明

伝熱管振れ防止バーの固定方法

【課題】作業時間の短縮化を図った伝熱管振れ防止バーの固定方法を提供する。
【解決手段】水平に配置され積層される複数の伝熱管Y1のそれぞれの間に、端部に先端キャップ10を有した振れ防止バーX1を、その先端部が予め設定した基準位置となるように順次配置し積層する積層工程と、複数の先端キャップ10の溶接面を、それぞれ固定部材に溶接する溶接工程とを備える伝熱管振れ防止バーの固定方法である。積層工程では、先端キャップ10の溶接面に平行となる基準面16を有する保持治具14を用いて、溶接面を突出させた状態でかつ基準面16が溶接面と平行となるように先端キャップ10を保持し、さらに振れ防止バーX1を積層する際に保持治具14も積層する。溶接工程では、保持治具14の基準面16を面一に合わせることで複数の先端キャップ10の溶接面を面一に合わせた後、固定部材に溶接を行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱管振れ防止バーの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換式の蒸気発生器は、U字形状の伝熱管を同一面上に複数整列させて伝熱管群を形成し、さらにこの伝熱管群を複数積層して見掛け上略円柱状に組むことにより、構成されている。この蒸気発生器では、伝熱管内に流体が流れる際のU字形状の円弧部での流体励起振動を防ぎ、振動損傷を防止するため、振れ防止バー(振止部材)が設けられている。振れ防止バーは、積層される伝熱管群のそれぞれの円弧部(U字部)の間に挿入された、ほぼV字形状のものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この振れ防止バーは、その両端部にそれぞれ先端キャップを有している。そして、これら先端キャップが前記円弧部の外側に突出するようにして、振れ防止バーは積層された多数の伝熱管群の間にそれぞれ配置される。その後、先端キャップの側面(溶接面)が別に用意された固定部材に溶接固定されることにより、多数の振れ防止バーは該固定部材を介して一体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−75387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、振れ防止バーは数が多く、しかもこれら振れ防止バーの固定部材への溶接固定は非常に狭い空間で行われることから、先端キャップの溶接作業が非常に困難で多大な時間を要する作業になっている。特に、積層される先端キャップの位置にはばらつきが多く、それぞれの溶接面を面一に揃えるのが困難であることから、この溶接面を揃える作業だけでも多くの時間が必要になっている。
また、伝熱管(伝熱管群)に対して振れ防止バーを正確に位置させる必要上、従来では例えばレーザー装置で基準位置(基準ライン)を設定し、振れ防止バーの両端部がそれぞれ基準位置となるように、すなわち基準位置上に位置するように位置決めしつつ、振れ防止バーを伝熱管群の上に積層している。しかし、このように振れ防止バーの両端部を毎回基準位置に合わせる必要上、振れ防止バーの配置にも多大な時間を要している。
【0006】
したがって、従来では振れ防止バーを伝熱管に対して適正に配置し、さらに固定部材に溶接する作業が非常に長時間を要することから、これら作業の容易化と作業時間の短縮化が望まれている。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、作業の容易化、及び作業時間の短縮化を図った伝熱管振れ防止バーの固定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の伝熱管振れ防止バーの固定方法は、水平に配置され積層される複数の伝熱管のそれぞれの間に、端部に先端キャップを有した振れ防止バーを、その先端部が予め設定した基準位置となるように順次配置し積層する積層工程と、
前記複数の先端キャップの溶接面を、それぞれ固定部材に溶接する溶接工程と、を備え、
前記積層工程では、前記先端キャップの溶接面に平行となる基準面を有する保持治具を用いて、前記溶接面を突出させた状態でかつ前記基準面が前記溶接面と平行となるように前記先端キャップを保持し、さらに振れ防止バーを積層する際に前記保持治具も積層するようにし、
前記溶接工程では、前記保持治具の基準面を面一に合わせることで複数の先端キャップの溶接面を面一に合わせた後、前記固定部材に溶接を行うようにする、ことを特徴としている。
【0008】
また、前記伝熱管振れ防止バーの固定方法において、前記積層工程では、振れ防止バーを配置し積層する処理を、予め設定した段数繰り返した後、前記基準位置を再度確認し、以降の処理では前記先端部が再度確認した基準位置となるようにするのが好ましい。
【0009】
前記保持治具には、該保持治具が互いに積層された際に、互いの前記基準面が面一になるように位置合わせをする、位置決め部が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の伝熱管振れ防止バーの固定方法によれば、積層工程では、先端キャップの溶接面を突出させた状態でかつ基準面が溶接面と平行となるようにして先端キャップを保持治具で保持し、さらに振れ防止バーを積層する際に該保持治具も積層するようにしているので、積層する保持治具の位置によって振れ防止バーの端部の位置を、予め設定した基準位置にほぼ合わせることができる。したがって、振れ防止バーの両端部を、毎回レーザー装置等を用いて基準位置に合わせる必要がなくなり、作業時間の短縮化が可能になる。
また、溶接工程では、保持治具の基準面を面一に合わせることで複数の先端キャップの溶接面を面一に合わせるようにしているので、従来のように先端キャップの溶接面を直接面一に揃えるのに比べ、その作業をより容易にし、溶接工程に要する時間を格段に短縮することができる。
よって、この固定方法にあっては、従来に比べ作業を容易にし、作業時間を格段に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】蒸気発生器の要部を示す模式図である。
【図2】先端キャップが固定部材で固定された状態を示す模式図である。
【図3】(a)は先端キャップを積層した状態を示す模式図、(b)は(a)のA−A線矢視断面図である。
【図4】保持ブロックを積層した状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明の伝熱管振れ防止バーの固定方法を実施することで得られる、蒸気発生器の要部の概略構成について説明する。
図1は、前記蒸気発生器の要部を示す模式図である。図1に示すように伝熱管振れ防止バー(以下、振れ防止バーと記す)X1は、横断面が矩形状で全体がV字型に形成された細長い板状のもので、大きさの異なるU字型の伝熱管Y1が同心かつ同一平面に配置されてなる伝熱管群Yに対して、複数設置されている。
【0013】
伝熱管群Yは、組立て時において蒸気発生器の容器内部に、紙面垂直方向(高さ方向)に所定寸法の隙間をあけて水平に複数積層されるもので、伝熱管Y1のU字側(湾曲側)が、全ての伝熱管群Yが積層されることで半球面状となるように、組み立てられるものである。そして、このように積層された伝熱管群Yどうしの間(すなわち伝熱管Y1どうしの間)の隙間1つ1つに対して、伝熱管Y1の振動を抑制防止するための振れ防止バーX1が、図1に示すように複数差し込まれて配置されている。
【0014】
なお、図1に示すように、1つの隙間に対して、長さ及び屈曲角度の異なる振れ防止バーX1が差し込まれて、1段分の振れ防止バー群Xが形成されている。ただし、1つの隙間に対して差し込まれる複数の振れ防止バーX1は、それぞれ、屈曲された中央部X11が一直線上に配置され、端部X12が円弧を描いて配置されるように、長さ及び屈曲角度が設定されている。また、これら振れ防止バーX1は、その両端部がそれぞれ伝熱管群Yの外側に突出して、配置されている。
【0015】
これら振れ防止バーX1には、図2の模式図に示すように伝熱管群Yから突出したそれぞれの端部(両端部)に、先端キャップ10が取り付けられている。先端キャップ10は略四角筒状のもので、振れ防止バーX1に外挿されて取り付けられ、固定されたものである。
そして、図2に示すように多数段に積層される伝熱管群Yのそれぞれの隙間に、振れ防止バーX1(振れ防止バー群X)が配置され積層された後、これら積層された振れ防止バーX1の対応する端部の先端キャップ10の一側面が、円弧板状の固定部材11に溶接され、固定されている。これにより、振れ防止バーX1の端部が固定部材11に固定されることで、蒸気発生器の要部が形成されている。
【0016】
次に、このような構成の、伝熱管群Y及び振れ防止バー群Xからなる蒸気発生器要部の組み立て方法に基づき、本発明の伝熱管振れ防止バーの固定方法の一実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態では、図2に示したように伝熱管群Yを水平に積層するとともに、その間の所定位置に振れ防止バーX1を挿入配置し、積層する。なお、振れ防止バーX1については、予めその両端部に先端キャップ10を取り付けておいてもよく、挿入配置後に取り付けてもよい。
その際、特に最下層に配置する振れ防止バーX1については、その両端部(先端部)を、例えばレーザー計測装置等によって予め設定された基準位置となるように、この基準位置に正確に合わせておく。
【0018】
本実施形態では、前記基準位置への位置合わせについては、後述するように振れ防止バーX1の配置・積層を予め設定した段数繰り返す毎に、行うようにする。すなわち、例えば5〜10段程度の積層数を一回の繰り返し単位とすると、その最初に挿入配置した振れ防止バーX1の両端部については、前記レーザー計測装置等による基準位置に正確に位置合わせを行う。そして、これ以降の端部位置合わせについては、正確に位置合わせを行った端部を基準にして順次位置合わせをする。その際、後述する保持治具を目安にして位置合わせを行うようにする。
【0019】
振れ防止バーX1の配置・積層を予め設定した段数繰り返す際、あるいは繰り返した後、積層する(積層した)複数段の振れ防止バーX1及びこれらに重なる伝熱管Y1に対して、図3(a)、及び図3(a)のA−A線矢視断面図である図3(b)に示すように、伝熱管クランプ12及びバー保持部材13を取り付け、伝熱管Y1にこれに対応する振れ防止バーX1を固定する。
【0020】
すなわち、図3(b)に示すように一対の伝熱管クランプ12を用いて、伝熱管Y1のU字部分を把持する。伝熱管クランプ12は、図3(a)に示すように伝熱管Y1を着脱可能に把持する把持部12aと、この把持部12aの操作をなすための螺子部12bとを備えたものでものである。この伝熱管クランプ12には、その螺子部12b近傍に、前記バー保持部材13が取り付けられている。
【0021】
バー保持部材13は、図3(a)に示すように伝熱管Y1の外側に位置させられて使用されるものである。そして、図3(b)に示すように振れ防止バーX1の端部側を把持する溝(図示せず)を形成した、略コ字状の保持部13aを有するものである。このバー保持部材13は、例えば伝熱管クランプ12に対して移動可能に螺子止めされており、したがって図3(b)中に示す伝熱管Y1の長さ方向に移動可能になっている。
【0022】
このような構成の伝熱管クランプ12及びバー保持部材13を用いて伝熱管Y1に振れ防止バーX1を固定するには、まず、固定する振れ防止バーX1の端部側を間にして、伝熱管Y1に所定間隔をあけて一対の伝熱管クランプ12を配する。そして、それぞれの螺子部12bを操作して把持部12aで伝熱管Y1を把持する。続いて、それぞれの伝熱管クランプ12に設けられたバー保持部材13を振れ防止バーX1側に移動させ、保持部13aによって振れ防止バーX1の側端部を保持する。
【0023】
このようにして振れ防止バーX1の両方の側端部を一対の保持部13aで保持することにより、伝熱管クランプ12及びバー保持部材13を介して振れ防止バーX1を伝熱管Y1に固定することができる。なお、前述の説明では伝熱管クランプ12を伝熱管Y1に固定した後、バー保持部材13を操作してその保持部13aで振れ防止バーX1を保持するようにしたが、例えば伝熱管クランプ12を伝熱管Y1に仮固定した後、該伝熱管クランプ12を伝熱管Y1に沿って移動させることにより、バー保持部材13の保持部13aで振れ防止バーX1を保持し、その後、伝熱管クランプ12を伝熱管Y1に固定するようにしてもよい。
【0024】
ここで、このような伝熱管Y1への振れ防止バーX1の保持・固定は、積層された(あるいは積層する)伝熱管Y1の最下段から、その上段へと順次行っていく。
その際、保持・固定を行う振れ防止バーX1については、予めそれぞれの端部(先端部)に先端キャップ10を取り付けておくとともに、該先端キャップ10を保持ブロック(保持治具)14で保持しておく。
【0025】
保持ブロック14は、図4に示すように、平行に配置された下板部14aと上板部14bとの間を、中間部14cで連結してなる側面視コ字状のもので、これら下板部14a、上板部14b、中間部14cで囲まれてなる凹状のキャップ保持部15に、先端キャップ10を保持するよう構成されたものである。すなわち、このキャップ保持部15内に先端キャップ10の一側面側を挿入し、該先端キャップ10の一側面を中間板14cの内面に突き当てることで、保持ブロック14はその下板部14aと上板部14bとの間に、先端キャップ10を保持するようになっている。
【0026】
また、キャップ保持部15は、このように先端キャップ10を保持した際、前記一側面と反対の側面を、該キャップ保持部15の外側に突出させ、露出させるようになっている。これにより、この突出させられた側面は、図2に示した固定部材11に溶接させられる、溶接面10aとなる。
【0027】
また、本実施形態では、この保持ブロック14の中間部14cの外面16は、その内面と平行になっている。したがって、この内面に当接する先端キャップ10の一側面とも平行になっており、一側面と反対の側の前記溶接面10aとも平行になっている。これにより、前記外面16は、先端キャップ10の溶接面10aに平行な基準面となっている。
【0028】
また、この保持ブロック14には、後述するように同じ保持ブロック14どうしが互いに積層された際、重ねられた保持ブロック14どうしの前記基準面(外面16)が面一になるように、位置合わせをするための位置決め部17が設けられている。この位置決め部17は、本実施形態では上板部14bの上面に形成された突条17aと、下板部14aの下面に形成された溝17bとからなっている。そして、これら突条17a及び溝17bは、互いに嵌合する寸法・形状に形成され、かつ、前記基準面16から所定の距離離れて形成されている。
【0029】
このような構成のもとに、図4に示したように複数の保持ブロック14が上下に重ねられて積層される際、下層の保持ブロック14の突条17aに上層の保持ブロック14の溝17bが嵌合され、下層の保持ブロック14に対して上層の保持ブロック14を位置決めされることにより、これら保持ブロック14の基準面(外面)16は互いに面一となるようになっている。また、このようにして複数の保持ブロック14を上下に重ねて積層すると、突条17aと溝17bとが嵌合していることにより、これら保持ブロック14はその後位置ずれを起こすことなく、互いの基準面16を面一にした状態に保持されるようになっている。
【0030】
したがって、このような保持ブロック14で先端キャップ10を保持しておき、前記したように振れ防止バーX1を最下段側から順次伝熱管Y1に固定していく際、振れ防止バーX1の端部の位置決めを、保持ブロック14を積み重ねることで行うことができる。すなわち、従来では振れ防止バーX1を積み重ねる毎に、その端部位置をレーザー計測装置等で設定された前記基準位置に合わせていたが、本実施形態では、最下段の振れ防止バーX1の端部の位置を前記基準位置に合わせた後には、単に先端キャップ10を保持する保持ブロック14を積み重ね、その基準面19を面一にするなどの位置合わせを行うことで、各端部を前記基準位置にほぼ合わせることができる。
【0031】
なお、振れ防止バーX1の端部(先端部)は、湾曲面(半球面)を構成することから、図3(a)に示すようにその位置が僅かずつずれていく。したがって、保持ブロック14を積み重ねることによる位置合わせは、前述したように予め設定した段数、例えば5〜10段程度の積層数を一回の繰り返し単位とし、この繰り返し単位が終了した後には、レーザー計測装置等で基準位置を設定してその位置を再度確認する。そして、それ以降の処理では、振れ防止バーX1の端部(先端部)が、再度確認した基準位置となるように順次積層する。ただし、この順次積層についても、繰り返し単位の最初の振れ防止バーX1についてのみ、その端部(先端部)を前記レーザー計測装置等による基準位置に合わせ、以降では保持ブロック14を積み重ねることで、簡易的に基準位置への位置合わせを行うことができる。
【0032】
このようにして、最下段側の振れ防止バーX1から順次その先端キャップ10に保持ブロック14を保持させつつ、振れ防止バーX1を順次積層し、かつ保持ブロック14を順次重ねて位置決め部17により基準面16を面一に合わせていく。また、その状態を維持できるように、前記伝熱管クランプ12とバー保持部材13とを用いて、図3(a)、(b)に示したように各振れ防止バーX1を対応する伝熱管Y1に順次固定していく。
【0033】
以上のような積層工程を終了したら、溶接工程として、位置合わせされた振れ防止バーX1の各先端キャップ10を、図2に示したように固定部材11に順次溶接し、固定していく。その際、図4に示したように各先端キャップ10をそれぞれ保持ブロック14で保持し、これら保持ブロック14の基準面16を面一に合わせていることにより、先端キャップ10の溶接面10aは自動的に面一に合わせられている。
【0034】
したがって、このように面一に合わせられた各溶接面10aに対し、図2に示したように固定部材11を均一に当接させることができ、これにより、固定部材11への溶接面10aの溶接を容易に行うことができる。このようにして、全ての溶接面10aを固定部材11に溶接することにより、振れ防止バーX1の端部をそれぞれ固定部材11に固定し、これによって積層された振れ防止バーX1を全て一体化(固定)することができる。
なお、このようにして振れ防止バーX1を全て一体化(固定)したら、特に必要が無い限り、保持ブロック14、伝熱管クランプ12、バー保持部材13は全て取り外す。
【0035】
このような伝熱管振れ防止バーの固定方法によれば、積層工程では、先端キャップ10の溶接面10aを突出させた状態でかつ基準面16が溶接面10aと平行となるようにして先端キャップ10を保持ブロック14で保持し、さらに振れ防止バーX1を積層する際に該保持ブロック14も積層するようにしているので、積層する保持ブロック14の位置によって振れ防止バーX1の端部の位置を、予め設定した基準位置にほぼ合わせることができる。したがって、振れ防止バーX1の両端部を、毎回レーザー装置等を用いて基準位置に正確に合わせる必要がなくなり、作業時間を短縮化することができる。
【0036】
また、溶接工程では、保持ブロック14の基準面16を面一に合わせることで複数の先端キャップ10の溶接面10aを面一に合わせるようにしているので、従来のように先端キャップ10の溶接面10aを直接面一に揃えるのに比べ、その作業をより容易にし、溶接工程に要する時間を格段に短縮することができる。
よって、本実施形態の固定方法にあっては、従来に比べ作業を容易にし、作業時間を格段に短縮することができる。
【0037】
また、積層工程では、振れ防止バーX1を配置し積層する処理を、予め設定した段数繰り返した後、前記基準位置を再度確認し、以降の処理では振れ防止バーX1の先端部が再度確認した基準位置となるようにしているので、振れ防止バーX1の先端部の位置を、基準位置にほぼ正確に合わせることができる。
【0038】
また、保持ブロック14に位置決め部17を設けているので、該保持ブロック14を互いに積層した際に、この位置決め部17を利用することで互いの基準面16を容易に面一にすることができ、しかもその状態を保持することができる。したがって、基準面16を面一にすることによる溶接面10aの位置合わせを、極めて容易に行うことができ、これによって作業時間を大幅に短縮することができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、伝熱管Y1への振れ防止バーX1の固定を、伝熱管クランプ12及びバー保持部材13を用いて行ったが、本発明はこれに限定されることなく、これら伝熱管クランプ12及びバー保持部材13以外の種々の構造の固定具を用いて、伝熱管Y1への振れ防止バーX1の固定を行ってもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、保持治具として側面視コ字状の保持ブロック14を用いたが、保持治具としては、先端キャップ10の溶接面10aに平行となる基準面を有し、前記溶接面10aを突出させた状態でかつ前記基準面が前記溶接面10aと平行となるように先端キャップ10を保持することができる構造であれば、保持ブロック14以外の種々の構造のものを用いることができる。
【0041】
さらに、保持治具に設ける位置決め部についても、突条と溝とからなる構成に限定されることなく、例えば突起と穴など、種々の構造を採用することができる。
【符号の説明】
【0042】
X…振れ防止バー群、X1…振れ防止バー(伝熱管振れ防止バー)、Y…伝熱管群、Y1…伝熱管、10…先端キャップ、10a…溶接面、11…固定部材、14…保持ブロック(保持治具)、15…キャップ保持部、16…基準面(外面)、17…位置決め部、17a…突条、17b…溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に配置され積層される複数の伝熱管のそれぞれの間に、端部に先端キャップを有した振れ防止バーを、その先端部が予め設定した基準位置となるように順次配置し積層する積層工程と、
前記複数の先端キャップの溶接面を、それぞれ固定部材に溶接する溶接工程と、を備え、
前記積層工程では、前記先端キャップの溶接面に平行となる基準面を有する保持治具を用いて、前記溶接面を突出させた状態でかつ前記基準面が前記溶接面と平行となるように前記先端キャップを保持し、さらに振れ防止バーを積層する際に前記保持治具も積層するようにし、
前記溶接工程では、前記保持治具の基準面を面一に合わせることで複数の先端キャップの溶接面を面一に合わせた後、前記固定部材に溶接を行うようにする、ことを特徴とする伝熱管振れ防止バーの固定方法。
【請求項2】
前記積層工程では、振れ防止バーを配置し積層する処理を、予め設定した段数繰り返した後、前記基準位置を再度確認し、以降の処理では前記先端部が再度確認した基準位置となるようにすることを特徴とする請求項1記載の伝熱管振れ防止バーの固定方法。
【請求項3】
前記保持治具には、該保持治具が互いに積層された際に、互いの前記基準面が面一になるように位置合わせをする、位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の伝熱管振れ防止バーの固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−122649(P2012−122649A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272661(P2010−272661)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】