説明

伝送システムの分岐器並びに伝送システム

【課題】従来例に比べてインピーダンスの低下が補償できる範囲を拡大して分岐数の増減が容易に行える伝送システムの分岐器並びに伝送システムを提供する。
【解決手段】分岐器3は、幹線2に接続される各一対の第1の接続端子10と、分岐線2’が接続される一対の第2の接続端子11と、第1の接続端子10と第2の接続端子11との間に挿入され、幹線2に対して分岐線2’を高インピーダンスとするインピーダンス変換部12とを備えている。インピーダンス変換部12における抵抗値が幹線2に挿入される分岐器3の台数に応じた最適な値となるように切替スイッチSW1,SW2を切り替えて選択することができる。そのため、分岐器における抵抗値が固定であった従来例に比べて、分岐器3を挿入したことによるインピーダンスの低下が補償できる範囲を拡大し、分岐数の増減が容易に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス型の配線形態によって複数の端末器が伝送路を介して接続され、これら複数の端末器間で伝送路を介した信号伝送を行う伝送システムに用いられ、主となる伝送路から別の伝送路を分岐する分岐器、並びにかかる分岐器を有する伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の伝送システムとして、特許文献1〜4に記載されているような集合住宅用のインターホンシステムがある。かかるインターホンシステムでは、集合住宅の共用玄関(ロビー)に設置されるロビーインターホンと、集合住宅の各住戸に設置される複数の住戸機と、ロビーインターホンに接続される幹線と、幹線を分岐して各住戸機を接続する複数の分岐器とを備え、ロビーインターホンと各住戸機との間で幹線(伝送路)を介して音声信号と映像信号を伝送することにより、住戸機を使用する在宅者がロビーインターホンを使用する来訪者を撮像した映像を見ながら来訪者と通話することができる。
【0003】
ここで、上述のようなインターホンシステム(伝送システム)においては、伝送路(幹線及び分岐器で分岐された分岐線)と端末器(ロビーインターホン並びに住戸機)との間でインピーダンスを整合させて信号の減衰を抑える必要がある。そのため、分岐器には幹線に対して分岐線を高インピーダンスとする抵抗が設けられている。つまり、分岐器を介して伝送路に接続される端末器のインピーダンスによって伝送路のインピーダンスが低下し、端末器と伝送路とのインピーダンスが整合しなくなって信号が減衰してしまうので、端末器を接続することによるインピーダンスの低下を補償するために分岐器では抵抗を介して伝送路を分岐しているのである。
【特許文献1】特開2004−186834号公報
【特許文献2】特開2004−186835号公報
【特許文献3】特開2004−186836号公報
【特許文献4】特開2004−186837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、分岐器に設けられる抵抗の最適な抵抗値は、システム全体の分岐数(分岐器の台数)にほぼ正比例するように増大することがシミュレーション結果から明らかになっている。しかしながら、従来システムの分岐器では抵抗の抵抗値が固定であったため、インピーダンスの低下が補償できる範囲が非常に狭くなっていた。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、従来例に比べてインピーダンスの低下が補償できる範囲を拡大して分岐数の増減が容易に行える伝送システムの分岐器並びに伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、バス型の配線形態によって複数の端末器が伝送路を介して接続され、これら複数の端末器間で伝送路を介した信号伝送を行う伝送システムに用いられ、主となる伝送路から別の伝送路を分岐する分岐器であって、主となる伝送路に接続される第1の接続端子と、分岐用の別の伝送路が接続される第2の接続端子と、第1の接続端子と第2の接続端子との間に挿入され、主となる伝送路に対して分岐用の別の伝送路を高インピーダンスとするインピーダンス変換手段とを備え、インピーダンス変換手段は、抵抗成分を可変としてなることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、複数の端末器と、請求項1記載の複数の分岐器と、伝送路を介して各分岐器と接続される親機とを有する伝送システムであって、第1及び第2の接続端子に伝送路が接続されたときに認識信号を伝送路に送出する認識信号送出手段が各分岐器に設けられるとともに、伝送路を介して各分岐器より送出された認識信号に基づいて伝送路に接続されている分岐器の台数をカウントするカウント手段と、カウント手段のカウント値を伝送路を介して全ての分岐器に通知する通知手段とが親機に設けられ、親機から通知されるカウント値に応じてインピーダンス変換手段を制御することにより抵抗成分を調整する制御手段が各分岐器に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、インピーダンス変換手段が線路(分岐線)の抵抗成分を可変としているから、システム全体の分岐数に応じて最適な抵抗値を選択することができ、その結果、従来例に比べてインピーダンスの低下が補償できる範囲を拡大して分岐数の増減が容易に行える。
【0009】
請求項2の発明によれば、システム全体の分岐数(分岐器の台数)を親機でカウントしたカウント値が各分岐器に通知され、各分岐器において制御手段がインピーダンス変換手段を制御して線路(分岐線)の抵抗成分を最適な抵抗値に設定することができるから、各分岐器の抵抗成分の最適化が自動的且つ迅速に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施形態1)
本実施形態の伝送システムは、図1に示すようにバス型の配線形態によって複数の端末器1が伝送路(2線式の信号線)2を介して接続され、これら複数の端末器1間で信号線2を介した信号伝送を行う伝送システムであって、主となる信号線(以下、幹線と呼ぶ。)2の適所に複数の分岐器3が挿入され、分岐器3で分岐された信号線(以下、分岐線と呼ぶ。)2’に端末器1が接続されて構成されている。なお、端末器1は、例えば、ASK(振幅偏移キーイング)やFSK(周波数偏移キーイング)あるいはPSK(位相偏移キーイング)などの方式でディジタル信号を変復調する機能を有し、変調された信号を平衡線路からなる信号線(幹線2及び分岐線2’)を介して伝送するものである。但し、このような構成を有する端末器1は従来周知の技術を用いて実現可能であるから、詳細な構成並びに動作の説明並びに図示は省略する。
【0011】
一方、分岐器3は、幹線2に接続される各一対の第1の接続端子10と、分岐線2’が接続される一対の第2の接続端子11と、第1の接続端子10と第2の接続端子11との間に挿入され、幹線2に対して分岐線2’を高インピーダンスとするインピーダンス変換部12とを備えている。インピーダンス変換部12は、第1の接続端子10,10同士を繋ぐ線路(幹線2)の一方にそれぞれ一端が接続された複数(図示例では4つ)の固定抵抗R11〜R14と、前記線路の他方にそれぞれ一端が接続された複数(図示例では4つ)の固定抵抗R21〜R24と、第2の接続端子11の一方と固定抵抗R11〜R14の他端とを択一的に切り替えて接続する切替スイッチSW1と、第2の接続端子11の他方と固定抵抗R21〜R24の他端とを択一的に切り替えて接続する切替スイッチSW2とで構成される。但し、2つの切替スイッチSW1,SW2は、図示しない操作手段が操作されることで互いに連動して切り替わるものである。
【0012】
而して、固定抵抗R11〜R14,R21〜R24の抵抗値にはR11=R21<R12=R22<R13=R23<R14=R24の関係が成立しており、インピーダンス変換部12における抵抗値が幹線2に挿入される分岐器3の台数に応じた最適な値となるように切替スイッチSW1,SW2を切り替えて選択することができる。そのため、分岐器における抵抗値が固定であった従来例に比べて、分岐器3を挿入したことによるインピーダンスの低下が補償できる範囲を拡大し、分岐数の増減が容易に行えるものである。なお、本実施形態ではバス型の配線形態を有する場合について例示したが、分岐器3の分岐線2’にハブ(集線装置)を介して複数の端末器1を接続してバス型とスター型を組み合わせた配線形態においても同様の効果が期待できる。また、固定抵抗R11〜R14,R21〜R24と切替スイッチSW1,SW2の代わりに、図2に示すように可変抵抗器13,13によってインピーダンス変換部12を構成しても構わない。
【0013】
(実施形態2)
本実施形態の伝送システムは、図3に示すように幹線2に接続される親機4を備えている。但し、本実施形態の基本構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0014】
親機4は、幹線2を介して分岐器3との間で信号伝送を行うための信号伝送部20と、マイクロコンピュータを主構成要素とする制御部21と、不揮発性のメモリからなるメモリ部22とを具備している。
【0015】
一方、分岐器3は、第1及び第2の接続端子10,11とインピーダンス変換部12に加えて、幹線2を介して親機4との間で信号伝送を行うための信号伝送部14と、マイクロコンピュータを主構成要素とする制御部15とを具備している。制御部15では、第1の接続端子10に幹線2が接続された状態で最初に起動したときに自己に割り当てられている識別符号を含む信号(識別信号)を信号伝送部14より幹線2を介して親機4に伝送する。
【0016】
親機4では、分岐器3から伝送されてくる識別信号を信号伝送部20で受け取って制御部21に送り、制御部21が識別信号に含まれる識別符号に基づいて幹線2に挿入されている分岐器3の台数をカウントし、そのカウント値をメモリ部22に保存する。さらに制御21では、メモリ部22に保存している最新のカウント値を含む信号(通知信号)を信号伝送部20より幹線2を介して全ての分岐器3に伝送する。
【0017】
各分岐器3においては、親機4から伝送されてくる通知信号を信号伝送部14で受け取って制御部15に送る。制御部15では、通知信号に含まれるカウント値に基づいて分岐器3の台数に適した抵抗値を判断し、切替スイッチSW1,SW2を制御して当該抵抗値に最も近い値を有する固定抵抗R11〜R14,R21〜R24に切り替える。
【0018】
而して、実施形態1では切替スイッチSW1,SW2を手動で操作してインピーダンス変換部12の抵抗値を最適な値に設定する必要があるが、本実施形態では各分岐器3におけるインピーダンス変換部12の抵抗値が人手を介さずに自動的に最適な値に設定できるという利点がある。なお、分岐器3の制御部15がカウント値に基づいて分岐器3の台数に適した抵抗値を判断する方法としては、予め分岐器3の台数と最適な抵抗値との関係を決めたデータテーブルを不揮発性のメモリ等に保存しておき、当該データテーブルを参照することで制御部15が最適な抵抗値を判断するといった方法を採用すればよい。
【0019】
ここで、図4に示すようにゲート装置103の接続口に対して機能モジュール108のコネクタを接続するだけで機能モジュール108の電力路と、情報路とを同時に確保でき、しかも機能モジュール108をどのゲート装置103にも接続できるレイアウトフリーで施工性に優れた配線システムがある。かかる配線システムは、建物内の適所において埋め込み配設している1乃至複数のスイッチボックス102を設け、各スイッチボックス102間に壁面内に先行配線した電力線110と、情報線111とを送り配線するとともに、始端のスイッチボックス102に対しては、配線盤101内に引き込まれた主幹ブレーカMBと分岐ブレーカBBとを介して屋内に引き込まれた電力線110と、外部のインターネット網NTにゲートウェイ120(ルータ、ハブ内蔵)を介して接続されている情報線111とが、接続されている。そして、このような配線システムに本発明に係る分岐器3を用いて情報線111(すなわち幹線2)を分岐配線することも可能である。
【0020】
この場合、本発明に係る分岐器3には、電力線110からの商用電源供給だけでなく情報線111からの信号重畳式電源が供給されることが考えられる。このような電源複数種混同を避けるべく、施工時の異種配線接触によるショートに備えるような分離隔壁部材を分岐器3の外面に形成しておいたうえで、電力線110からの商用電源供給がなされる仕様では、情報線111については電源供給を避けて信号伝送だけ行えばよいし、また、情報線111からの信号重畳式電源供給がなされる仕様では、電力線110からの商用電源供給を避けるべく、分岐器3内に電力線110を通さないよう施工するか、分岐器3に電力線110を接続せざるを得ない仕様では分岐器3内での電力線110と情報線111との間を絶縁すべく商用交流周波数帯についてハイインピーダンスとしておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1を示しシステム構成図である。
【図2】同上における他の構成の分岐器を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態2を示しシステム構成図である。
【図4】同上を用いる配線システムのシステム構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1 端末器
2 幹線(伝送路)
2’ 分岐線(伝送路)
3 分岐器
10 第1の接続端子
11 第2の接続端子
12 インピーダンス変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バス型の配線形態によって複数の端末器が伝送路を介して接続され、これら複数の端末器間で伝送路を介した信号伝送を行う伝送システムに用いられ、主となる伝送路から別の伝送路を分岐する分岐器であって、
主となる伝送路に接続される第1の接続端子と、分岐用の別の伝送路が接続される第2の接続端子と、第1の接続端子と第2の接続端子との間に挿入され、主となる伝送路に対して分岐用の別の伝送路を高インピーダンスとするインピーダンス変換手段とを備え、
インピーダンス変換手段は、抵抗成分を可変としてなることを特徴とする伝送システムの分岐器。
【請求項2】
複数の端末器と、請求項1記載の複数の分岐器と、伝送路を介して各分岐器と接続される親機とを有する伝送システムであって、
第1及び第2の接続端子に伝送路が接続されたときに認識信号を伝送路に送出する認識信号送出手段が各分岐器に設けられるとともに、伝送路を介して各分岐器より送出された認識信号に基づいて伝送路に接続されている分岐器の台数をカウントするカウント手段と、カウント手段のカウント値を伝送路を介して全ての分岐器に通知する通知手段とが親機に設けられ、親機から通知されるカウント値に応じてインピーダンス変換手段を制御することにより抵抗成分を調整する制御手段が各分岐器に設けられたことを特徴とする伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−166109(P2007−166109A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358091(P2005−358091)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】