説明

伝送チャネルのチャネル評価の決定

【課題】 通信システムにおける第1の伝送チャネルのチャネル評価を決定する方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる方法は,第1の伝送チャネルを経由して受信された記号から第1のセットのチャネル評価を誘導するステップと,通信システムにおける第2の伝送チャネルを経由して受信された記号から第2のセットのチャネル評価を誘導するステップと,最小二乗誤差基準からチャネル評価の第1,第2のセット間の倍率を決定するステップと,第1のチャネル評価を,決定された倍率によって拡大縮小された第2の伝送チャネルのチャネル評価と決定するステップと,を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,伝送チャネルのチャネル評価の決定に関する。本発明は更に,チャネル評価に基づいた信号対干渉比の決定に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル通信システムでは,情報を交換するために異なるノード(例えば基地局,移動体電話)間で,情報を表すディジタル記号が伝送される。
【0003】
通常,OSI(Open System Interconnection)と呼ばれる階層モデルが,通信システムを記述するためにしばしば用いられる。複数のビットからなる情報ストリームが伝送されるこのモードにおける最も低い層はしばしば,物理チャネルと呼ばれる。物理チャネルは,構成に依存してサービスに予め定義された品質を与える。単純化された説明では物理チャネルは,予め定義されたフォーマットでのビットのフォーマット化と,符号化と,インターリーブと,搬送波の変調と,媒体上での伝送と,下方変換と,復調と,インターリーブ解除と,前進誤り訂正とを含む。更に時間と周波数の両者での同期およびチャネル評価といった適切な動作に必要とされる他の多くの機能が存在する。物理チャネル上では,情報記号の間でしばしばパイロット記号が伝送される。それからこれらのパイロット記号は,同期とチャネル評価とを取得するために受信器内で使用される。チャネル評価は,伝送された記号がチャネルによってどのように影響されるか(変調,TXフロントエンド,媒体,RXフロントエンド,および復調器を含めて)を記述し,また受信器内で信号を再構築するために使用される。物理チャネルの二つのタイプは,専用チャネルと共通(例えば放送)チャネルである。専用物理チャネルは一つの受信器に伝送されるが,共通物理チャネルは多数の受信器向けを意図している。
【0004】
基地局は,最も頻繁に多数の物理チャネルを送信する。TDMAシステムでは同じ基地局からの複数の物理チャネルは,時間(およびもし多数の搬送波が使用されていれば周波数)を使用して分離される。FDMAシステムでは異なる物理チャネルを分離するために周波数だけが使用される。スペクトル拡散CDMAシステムでは,異なるユーザを分離するためにコード(およびもし多数の搬送波が使用されていれば周波数)が使用される。
【0005】
幾つかの理由からこれらの物理チャネルの多くは,チャネル特性を評価するために使用できるパイロット記号を持っている。パイロット信号は典型的には,それ自身のチャネル上で伝送され得る,または他のチャネルに埋め込まれ得る,そして管理,制御,等化,連続性,同期,または参照目的のために使用され得る1個以上の予め決められた記号である。
【0006】
WCDMAシステムでは,共通パイロットチャネル(CPICH)のパイロット記号と専用物理チャネル(DPCH)で伝送されるパイロットとは,基地局から送信される。
【0007】
使用されるチャネルとは無関係に,受信された信号は,伝送媒体を通過する影響のせいで送信された信号とは種々の面で異なる。ある媒体では無線周波数信号に対するこのような影響は主として,マルチパスフェージングと,媒体を通過する他の信号からの干渉と,熱雑音とを含む。フェージングは,信号のそれ自身の反射またはエコーとの相互作用によって引き起こされ,その結果この信号の大きくて高度に局所化された振幅と位相偏移とをもたらす可能性がある。無線環境では干渉はしばしば,他の無線信号の望ましくない存在によって引き起こされる。これらの他の信号は,所望の信号と同じチャネルを使用している可能性があり(同一チャネル干渉と呼ばれることもある),あるいは隣接チャネルを使用していることもある(隣接チャネル干渉と呼ばれることもある)。熱雑音は,すべての通信チャネルに存在し,伝送された信号の更なる歪みを引き起こす。従って受信器で受信された信号は,所望の成分と有害成分とからなる複合信号と考えることができる。有害成分は,媒体を通過する影響,例えば干渉と雑音とを表す。
【0008】
WCDMAでは,共通パイロットチャネル(CPICH)は一般に,このチャネルが極めて強いことが多くて,正確なチャネル評価が得られるので,復調時の位相基準として使用される。しかしながら専用物理チャネル(DPCH)上のパイロットは,例えば電力制御ループ,RAKEフィンガー選択手順で(特に異なる基地局とのソフトハンドオーバー・シナリオにおいて)使用されるためばかりでなく「同期内」,「同期外」測定といった信号強度測定で使用されるためにも,信号対干渉比(SIR)評価のために必要とされる。DPCHは電力制御され,またDPCH上にはほんの比較的僅かのパイロット記号しか存在しないので,取得されたチャネル評価は,また従って取得されたSIR評価も雑音が多い。
【0009】
従来技術のシステムは主として,チャネル評価のために専用パイロットを使用し,干渉評価のためにパイロットチャネルを使用するSIR評価に基づいている。
【0010】
このような従来技術システムは典型的には,チャネル評価の,従ってまたこれに続くSIR評価の正確さと精密さの点から低下したシステム性能を引き起こす雑音の多いチャネル評価に悩まされている。SIR評価の低い正確さと精密さは,今度は通信システムの電力制御性能に大きく影響し,その結果,通信システムの容量に大きな影響を及ぼす。
【発明の開示】
【0011】
上記および他の問題は,通信システムにおける第1の伝送チャネルのチャネル評価を決定する方法であって,
a)前記第1の伝送チャネルを経由して受信された記号から第1のセットのチャネル評価を誘導するステップと,
b)前記通信システムにおける第2の伝送チャネルを経由して受信された記号から第2のセットのチャネル評価を誘導するステップと,
c)最小二乗誤差基準からチャネル評価の前記第1,第2のセット間の倍率を決定するステップと,
d)前記第1のチャネル評価を,前記決定された倍率によって拡大縮小された前記第2の伝送チャネルのチャネル評価と決定するステップと,を含むことを特徴とする方法によって解決される。
【0012】
それ故に二つのチャネルの評価を使用することと,これら二つのチャネルのチャネル評価に関する倍率を決定することとによって,これらのチャネルのうちの一つに関するチャネル評価が改善される。それ故に本方法は,チャネル間の差が利得オフセットとも呼ばれる倍率によって実質的に記述され得るという事実を利用している。この結果,倍率の評価を決定することによって,チャネル評価の改善された評価が与えられる。
【0013】
倍率を評価するために最小二乗誤差基準を適用することによって,評価の高い精度が達成される。本方法が単に低い計算的複雑さしか必要とせず,コスト的および電力効率的仕方で,例えばディジタル信号プロセッサ(DSP)実施形態として実現され得ることは,本方法の更なる利点である。
【0014】
特にチャネル評価を決定する複雑さの少ない方法は,SIR評価が典型的には電力制御のタイミング要件を満たすために極めて迅速に行われるべきであるから,SIR評価に関連して有利に使用できる。
【0015】
ある幾つかの実施形態では干渉評価が利益をもたらすために使用できても,上記の方法が如何なる干渉評価からも独立している評価を与えるということは注目される。
【0016】
更に最小二乗法に基づく上記の方法が線形演算によって実現され,それによって必要とされる複雑さを大幅に削減できることは注目される。
【0017】
一実施形態では,第1,第2の伝送チャネルは無線チャネルであるが,当業者はこれらのチャネルが他の伝送チャネルでもよいことを認めるであろう。伝送チャネルの例は,電話伝送チャネル,移動体電話伝送チャネル,ローカルエリアネットワーク伝送チャネルなどを含む。これらのチャネルはまた,フェーズドアレイ・アンテナ要素またはビームフォーマーからのビームに関連する無線チャネルであってもよい。
【0018】
特に本発明は有利にもWCDMAにおけるダウンリンクDPCHのチャネル評価に適用できることが本発明者らによって認められている。従って好適な実施形態では,前記第1の伝送チャネルはWCDMAシステムにおける専用物理チャネル(DPCH)であり,前記第2の伝送チャネルはWCDMAシステムにおける共通パイロットチャネル(CPICH)である。
【0019】
好適な実施形態では,前記倍率を決定するステップは,誤差項を含む目的関数の最小値を決定するステップを更に含み,前記誤差項は各々が多数の伝播遅延の一つに対応する二乗誤差寄与の和を含み,前記誤差寄与の各々は前記第1の伝送チャネルのチャネル評価を前記倍率によって拡大縮小された前記第2の伝送チャネルの評価で置き換えることによって導入される誤差に対応する。それ故に,倍率が個別の伝播遅延に関する,またはRAKE受信器のフィンガーに関する複数の個別チャネル評価に基づいて評価されるのでチャネル評価が高い精度で決定されるということは,利点である。チャネル間の倍率が伝播遅延とは実質的に独立していることは注目される。
【0020】
更なる好適な実施形態では,前記誤差寄与の各々は,それぞれの重み付け係数によって重み付けされる。好適には前記重み付け係数は,前記対応する伝播遅延の干渉寄与に応じて選択される。
【0021】
更に,多くの通信システムではチャネルによって搬送される情報が,連続するフレームにグループ化される複数のタイムスロットに編成されることは注目される。各スロットは,ペイロードと,パイロット記号,伝送電力制御(TPC)コマンドなどを含む付加情報とを含み得る。一例示的通信システムではスロットは,0.625ミリ秒の継続時間を持ち,スロットのタイプによって可変数のビットを含み得る。二つの隣接スロット間の利得オフセットは,前のスロット中に受信器によって送信されたTPCコマンドに依存する。それ故にこの知識は利得オフセットと,従ってまたSIR評価性能とを改善するために組み込むことができる。従ってもう一つの好適な実施形態では,前記目的関数は更に,前のタイムスロットに関して決定された利得オフセットと前のタイムスロット中に送信されたTPCコマンドとに依存する第2の項を含む。
【0022】
好適な実施形態では,前記倍率は電力増分パラメータを含んでおり,また前記方法は更に,前記第1の伝送チャネルのチャネル評価と干渉評価とから前記電力増分パラメータを評価するステップを含む。
【0023】
更に,本発明によって達成される性能利得が,現在の無線アクセスベアラ(RAB)に依存する可能性があることは認められる。例えば性能利得は,低い平均DPCH電力(大きな拡散係数を意味する)と僅かのDPCHパイロットとを有するRABに関して,より大きい。この故に好適な実施形態では上記のステップは,複雑さを減らす,また従って消費電力を減らすために,より高い層,例えば現在のRABから受信される情報を条件として実行され,それによって本評価方法を現在のRABに適応させている。
【0024】
従って好適な実施形態では本方法は,階層的通信システムのより高い層から情報を受信するステップと,前記受信された情報を条件として少なくともステップd)を起動するステップと,を更に含む。
【0025】
もう一つの好適な実施形態によれば本方法は,現在のRABに関する情報に応じて目的関数の少なくとも一つのパラメータを適応させるステップを更に含む。更なる好適な実施形態によれば,前記目的関数の誤差項の前記誤差寄与の各々はそれぞれの重み付け係数によって重み付けされ,また前記重み付け係数は階層的通信システムのより高い層から受信された情報,好適には無線アクセスベアラに関する情報に応じて決定される。
【0026】
更なる好適な実施形態は,従属請求項において開示される。
【0027】
もう一つの態様によれば通信システムの伝送チャネルに関して改善されたSIR評価を与える問題を解決することが本発明の目的である。
【0028】
この問題は,通信システムにおける第1の伝送チャネルに関する信号対干渉比(SIR)を決定する方法であって,前記第1に挙げられた方法のステップを実行することによって第1の伝送チャネルのチャネル評価を決定するステップと,干渉評価を決定するステップと,前記決定されたチャネル評価と前記決定された干渉評価とから信号対干渉比を誘導するステップと,を含むことを特徴とする方法によって解決される。
【0029】
上述され,また下記に説明される方法の特徴は,ソフトウエアに実現され,またデータ処理システム上で,またはコンピュータ実行可能な命令といったプログラムコード手段の実行によって生じる他の処理手段上で実行され得る。ここ,および下記で処理手段という用語は,上記の機能を実行するために適切に適応した如何なる回路および/または装置をも含む。特に上記の用語は,汎用または専用のプログラム可能マイクロプロセッサ,ディジタル信号プロセッサ(DSP),特定用途向け集積回路(ASIC),プログラム可能論理アレイ(PLA),利用者書込み可能ゲートアレイ(FPGA),専用電子回路など,またはこれらの組合せを含む。
【0030】
例えばプログラムコード手段は,記憶媒体から,またはコンピュータネットワークを介して他のコンピュータからRAMといったメモリ内にロードできる。代替として上記の特徴は,ソフトウエアの代わりに,またはソフトウエアと組み合わせて配線回路によって実現できる。
【0031】
本発明は,上記および下記の方法と,通信装置と,各々が第1に挙げられた方法に関連して説明された利益と有利さの一つ以上をもたらす製品手段であって,各々が第1に挙げられた方法に関連して説明され,従属請求項に開示された好適な実施形態に対応する一つ以上の好適な実施形態を有する更なる製品手段と,を含む種々の方法で実現できる。
【0032】
本発明は更に,伝送チャネルを経由して通信信号を受信するための通信装置であって,
第1の伝送チャネルを経由して受信された信号から第1のセットのチャネル評価を誘導するための手段と,前記通信システムにおける第2の伝送チャネルを経由して受信された記号から第2のセットのチャネル評価を誘導するための手段と,最小二乗誤差基準からチャネル評価の前記第1,第2のセット間の倍率を決定するための手段と,前記第1の伝送チャネルのチャネル評価を,前記決定された倍率によって拡大縮小された前記第2の伝送チャネルのチャネル評価と決定するための手段と,を含むことを特徴とする通信装置に関する。
【0033】
通信装置という用語は,データ通信を容易にするために通信信号,例えば無線通信信号を受信および/または送信するための適当な回路を含む如何なる装置をも含む。このような装置の例は,携帯可能な無線通信装置と他のハンドヘルドまたは携帯可能装置とを含む。携帯可能な無線通信装置という用語は,移動体電話,ページャ,コミュニケータ(通報器)すなわち電子オルガナイザ,スマート電話,パーソナルディジタルアシスタント(PDA),ハンドヘルドコンピュータなどといったすべての装置を含む。
【0034】
通信装置の更なる例は,静止型通信装置,例えば静止型コンピュータまたは無線通信インタフェースを含む他の電子装置を含む。一実施形態ではこれらの装置の一つは,ネットワーク装置,例えばセルラー電気通信ネットワークの基地局であり得る。
【0035】
本発明の上記および他の態様は,以下の図面を参照しながら上記で説明された実施形態から明らかになり,解明されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図面では同様の,また対応する構成要素,ステップなどには同様の参照符号が使用されている。図1は,ディジタル通信システムのブロック図を模式的に示す。この通信システムは,通信チャネル103を介して通信する送信通信装置101と受信通信装置102とを含む。例えば実際の実施形態では,送信通信装置はセルラー無線周波数(RF)通信システムの基地局であって受信通信装置は移動体端末であるか,あるいはこの逆である。移動体端末と基地局は,空中インタフェースに亘って伝送される通信信号を介して互いに通信する。大抵の通信システムでは通信装置の一部または全部が送信および受信両方の通信装置であることは理解される。下記の説明の目的のために送信通信装置101は信号が通信チャネル上を伝送され得るように信号に必要な変調をかける送信器ユニット105を含むと考えられる。受信通信装置は,送信器ユニット105によって実施された変調処理に対応する復調処理を実施し,それによって受信された信号から初めに送信された情報を復元することを可能にする受信器106を含む。
【0037】
3GPPシステムでは専用チャネルと共通チャネルは異なる信号を使用して送信され,これらはしばしば物理チャネルと呼ばれる。それ故に送信チャネル103は,多数の物理チャネル107,108を含む。これらの物理チャネルは,チャネル化コードおよび/または時間多重化によって分離される。しかしながら基地局の構成によって,これらの信号は同じ媒体を経由して送信でき,それによって同じマルチパス伝播を経験し得る。
【0038】
受信通信装置102は,例えばRAKE受信器の異なるフィンガーによって,それぞれDPCHチャネル107とCPICHチャネル108から信号を同時に受信できる。CPICHは,特定のチャネル化コードを使用して電力制御なしでセルラー電気通信ネットワークの各セル内に放送される。CPICHの電力は,セル境界の外側の移動体でもCPICHを受信できるように選択される。従ってCPICHの電力は多くの場合,DPCHの電力よりはるかに大きいであろう。更にDPCHは大抵の場合,各移動体が各DPCHを受信するために必要とされる電力にまで,各個別DPCHによって使用される電力を制限するために使用される電力制御を使用して送信されるであろう。従って各DPCHとCPICH上の伝送電力は大抵の場合,移動体には知られないある量だけ異なるであろう。下記では伝送電力の比は,利得オフセットと呼ばれるであろう。利得オフセットが電力制御のせいで時間的に変化し得ることは注目される。
【0039】
DPCHとCPICHは,基地局の同じフロントエンドと同じアンテナとを使用して送信され,それによってこれら二つのチャネルに同じ媒体応答を経験させ得る。従ってCPICHとDPCHとに基づくチャネル評価が両者とも,チャネル係数の良好な評価を与えるために有用であることは注目される。
【0040】
通信信号の伝送中に建物およびその他の障害物による反射は,フェージングと分散という結果を招く。分散は,物理チャネル上の記号速度に依存するマルチパス伝播と分散の酷さを引き起こす可能性がある。マルチパス伝播は,自己干渉信号が時間分散し,従って互いに干渉してフェージングを生じることがあり得るので,一般に不利である。しかしながらマルチパス伝播はまた,有益であることもあり得る。反射された信号は,主信号と同じ情報を伝送する。フェージングが主信号自身の著しい減衰を引き起こすと,主信号は時間分散された放射線の構成的追加によって「再構成」または増幅でき,すなわち信号は増幅されたダイバーシティになる。
【0041】
受信通信装置102において受信器106は,1連の,または1ストリームのディジタルサンプルを得るために受信された信号を処理し,またこれらのサンプルは複素数として表すことができる。例えば受信器は,フィルタリングと,増幅と,同位相直角局部発振器を使用してのベースバンドへのミキシングと,アナログ・ディジタル(A/D)変換と,同期化と,を含めて受信された信号を処理し,その結果として1ストリームの受信サンプルを得ることができる。
【0042】
受信器106は典型的には,送信通信装置101の送信器ユニット105によって加えられた変調に従って,受信されたサンプルストリームによって表される情報記号を復元する(あるいは「検出する」)ために受信されたサンプルストリームにある形式のベースバンド信号処理を適用する。このようなベースバンド信号処理は,伝送媒体のモデルに基づく可能性がある。例えば伝送媒体は,多数のチャネルタップ係数を有するフィルタとしてモデル化できる。このフィルタへの入力は伝送されるディジタル信号であり,フィルタからの出力は受信された信号の所望の信号成分である。もしb(n)が伝送されるディジタル信号を表すならば,所望の信号成分サンプルs(n)は,下記(数式1)によって表される。ここでh(k)は実数部と虚数部の両者を有する複素数値であるチャネルタップ係数である。
【0043】
【数1】

・・・(数式1)
【0044】
チャネルタップ係数の評価は,種々のチャネルタップ評価技術によって決定できる。チャネルタップ評価またはチャネル追跡は,本技術ではよく知られており,例えばJohn G.Proakisによる「Digital Communications(ディジタル通信)」第4版,McGraw−Hill,2000年に論じられている。最初のチャネルタップ評価は,既知の手法を使用して同期信号相関値または最小二乗評価から得ることができる。
【0045】
図2は,SIRを評価するための構成を含む受信器の第1の実施形態のブロック図を模式的に示す。一般に106で示される受信器は,受信された無線信号をディジタルベースバンド信号Yに下方変換してサンプリングするフロントエンド受信器202を含む。受信器106は更に,専用チャネル評価ユニット207と,共通パイロット評価ユニット204と,各々がディジタルベースバンド信号Yを受信するRAKE受信器203と,を含む。RAKE受信器は,対応する伝播遅延とチャネル評価とに従って数個のマルチパス成分を個別に処理するために,RAKE受信器のいわゆるフィンガーにおいて数個のベースバンド相関器を使用する。相関器出力は,改善された通信の信頼性と性能とを達成するために組み合わされる(例えばJohn G.Proakisによる「Digital Communications(ディジタル通信)」第4版,McGraw−Hill,2000年を参照のこと)。RAKE受信器は,復号器205に供給される信号記号Dを生成する。
【0046】
チャネル評価ユニット204,207は各々,受信された無線信号のディジタルベースバンド表現Yを受信し,それぞれのチャネル107,108上を伝送されるパイロットに基づいて伝送チャネル103の評価を与える。特にチャネル評価ユニットは各々,物理チャネルCHに関して対応するチャネル評価の(数式2)によって多数の無線経路を識別する。
【0047】
【数2】

・・・(数式2)
【0048】
ここでFは所定のセルbに関するRAKE受信器のフィンガー遅延のセットであり,フィンガー遅延のこのセットはfによってインデックス付けされる。典型的な例では1セルごとに3〜4個のフィンガーが存在する。しかしながら本方法はまた,異なる数のフィンガーを有する状態にも適用可能である。
【0049】
伝送チャネルの1モデルによれば,チャネル評価は,下記(数式3)として表すことができる。
【0050】
【数3】

・・・(数式3)
【0051】
ここでhは実際のチャネルを表し,eは雑音を表す。雑音は,分散lを有する所定の雑音分布に従ってモデル化できる。例えば雑音は,無相関,ゼロ平均の複素ガウス分布雑音としてモデル化できる。チャネル評価ユニット204は更に,各フィンガーfに関する干渉電力lの評価を与える。しかしながら干渉電力が代替としてDPCHに基づいて決定できることは理解される。
【0052】
典型的にはチャネル評価は,スロットベースで計算され,すなわちチャネル評価(数式4)はタイムスロットjに亘る実際のチャネルの平均を表す。
【0053】
【数4】

・・・(数式4)
【0054】
下記ではCPICHに関してチャネル評価ユニット204によって決定されたチャネル評価は,(数式5)と表される。
【0055】
【数5】

・・・(数式5)
【0056】
DPCHに関してチャネル評価ユニット207によって決定されたチャネル評価は,(数式6)と表される。
【0057】
【数6】

・・・(数式6)
【0058】
これらの評価ユニットは,このような本技術で知られた,例えばJohn G.Proakisによる「Digital Communications(ディジタル通信)」第4版,McGraw−Hill,2000年に記載されたような如何なる適当なチャネル評価手法をも実現できる。すべてのRAKE受信器のためにCPICHに関してチャネル評価ユニット204によって決定されたチャネル評価(数式7)は,RAKE受信器203に供給され,引き続いて復号器205によって復調処理に使用される。
【0059】
【数7】

・・・(数式7)
【0060】
CPICHおよびDPCHのチャネル評価(数式8),(数式9)と干渉評価lもまた,改善されたDPCH評価209を計算する追加のチャネル評価ユニット208に供給される。それから改善されたDPCHチャネル評価は,この改善されたチャネル評価の絶対値の二乗としてSIRを評価するSIR評価ユニット210に送られ,干渉で除算され,それによって改善されたDPCH信号対干渉比211を与える。
【0061】
【数8】

・・・(数式8)
【0062】
【数9】

・・・(数式9)
【0063】
図3は,チャネル評価を評価する方法の一実施形態の流れ図を示す。ステップ301でタイムスロットjに関するCPICHチャネル評価(数式10)は,上記のように決定される。
【0064】
【数10】

・・・(数式10)
【0065】
ステップ302でタイムスロットjに関するDPCHチャネル評価(数式11)は,上記のように決定される。
【0066】
【数11】

・・・(数式11)
【0067】
後に続くステップ303でDPCHチャネルとCPICHチャネルとの間の利得オフセットまたは倍率が決定される。下記でスロットjにおけるDPCHとCPICHとの間の利得オフセットは,セルbに関して(数式12)によって表され,すなわち(数式13)と表されるであろう。
【0068】
【数12】

・・・(数式12)
【0069】
【数13】

・・・(数式13)
【0070】
ここでE(.)はそれぞれのチャネル評価の期待値を示す。本説明の目的のために,チャネル評価は伝播チャネル評価に関して不偏であることが仮定されている。各セルに関して(数式12)を評価するために,このプロセスは最小二乗誤差評価を決定する。
【0071】
特にこのプロセスは下記の目的関数(数式14)の最小値を,すなわちDPCHチャネル評価を拡大縮小されたCPICHチャネル評価としてモデル化することによって各フィンガーに関して導入された二乗誤差のすべてのRAKEフィンガーに亘る重み付け合計を決定する。
【0072】
【数14】

・・・(数式14)
【0073】
ここでαは異なる重みが異なるフィンガーに割り当てられることを可能にする重み付け係数である。利得オフセットが異なるRAKEフィンガーの伝播遅延に依存しないことは注目される。しかしながら上記の目的関数はすべてのフィンガーに関するチャネル評価を利用するので,利得オフセットの改善された評価が達成される。
【0074】
一実施形態ではこれらの重み付け係数はフィンガーfに関する干渉に逆比例するように,すなわちα=1/lであるように選択され,それによって,干渉が小さいと評価されたフィンガーを,強い評価された干渉を有するフィンガーよりも比較的強く重み付けする。しかしながら重み付け係数のその他の選択も同様に可能である。例えば一実施形態では,すべてのフィンガーは等しい強さに,すなわちα=1∀fと重み付けされ,それによって特に単純な実施形態を与えている。
【0075】
上記の式の最小値,すなわち決定された利得オフセットは,(数式15)によって与えられる。
【0076】
【数15】

・・・(数式15)
【0077】
ここで()は複素共役を表す。この故に,上記の目的関数の最小値は上記の閉じた形に決定され得るので,如何なる数値最小化手順も避けられる。更に上記の方程式による利得オフセットの決定は単に,加算と複素数乗算と除算と複素共役演算とを必要とするだけであって,これによって例えばDSPにおける効率的な実現を可能にしている。
【0078】
上記の目的関数の代わりに他の目的関数が使用できることは理解される。例えば一実施形態では,このプロセスは,閉じた形の解:(数式17)を有する(数式16)を最小にする。
【0079】
【数16】

・・・(数式16)
【0080】
【数17】

・・・(数式17)
【0081】
故にこの実施形態では目的関数は,(複素)チャネル評価の絶対値の二乗誤差の和を含む。故に本実施形態による利得オフセットの決定は単に,実数を含む演算を含むだけで,それによって計算の複雑さを更に減らしている。更に目的関数の例は,下記に説明されるであろう。
【0082】
ステップ304でこのプロセスは,DPCHに関するチャネル評価として(数式18)を,すなわち評価された倍率によって拡大縮小されたCPICHチャネル評価を採ることによって,改善されたDPCHチャネル評価を決定する。
【0083】
【数18】

・・・(数式18)
【0084】
(数式19)のように,この改善されたDPCHチャネル評価の絶対値の二乗をとって干渉lで除算することによって,この改善されたDPCHチャネル評価から,改善されたDPCH SIRが計算できる。
【0085】
【数19】

・・・(数式19)
【0086】
図4は,SIRを評価するための構成を含む受信器の第2の実施形態のブロック図を模式的に示す。この実施形態によればチャネル評価は更に,電力制御ループの電力制御コマンドに基づいている。この実施形態による受信器は,図2に関連して説明された受信器に類似している。この受信器は更に,電力制御ユニット401を含む。この電力制御ユニットは,受信器がDPCH上で通信信号を受信する電力の閉ループ電力制御を実行する。特にスロットjにおいてDPCH上で伝送された電力は,前のスロットj−1に関する係数(数式20)によって変えられる。
【0087】
【数20】

・・・(数式20)
【0088】
ここでΔTPCはネットワークによって設定された一定の電力増分であり,すなわちΔTPCは電力がどの量だけ増やされるかを決定する。ある幾つかの通信ネットワークではΔTPCの値は受信器に知らされる。しかしながら他の実施形態では,これは事実でないこともある。更にTPCj−τは,スロットj−τに関して受信器によって決定されて基地局に送信される電力制御コマンドを表している。電力制御コマンドは,電力がスロットjにおいて増やされるべきか,減らされるべきかどうかに依存して,二つの値;プラスワン(「+1」)またはマイナスワン(「−1」)をとることができる。電力制御ユニット401は,SIRユニット201によって決定されたSIR評価211を受信し,DPCH上の閉ループ電力制御の結果として対応するTPCコマンドを決定する。このような閉ループ電力制御は本技術では既知であり,例えば(Eds),Wiley,2000年発行のH.HolmaとA.Toskalaによる「WCDMA for UMTS Radio Access for Third Generation Mobile Communication(第3世代移動体通信のためのUMTS無線アクセスに関するWCDMA)」に記載されているように実施できる。TPCコマンドは,矢印403に示されるように送信器に返されて,後のタイムスロットで送信電力の調整を制御する。TPCは更に,チャネル評価ユニット208に供給される。TPCが送信器に送られるためと,送信器がこのTPCに反応するためと,そして調整された電力で送信された信号が受信器に到達するためと,に必要とされる時間をとるために,TPCは遅延回路402によって遅延させられる。遅延パラメータτは,TPCが基地局で考えられる前の遅延を指定する。これは,例えば参照して全体がここに組み込まれる国際公開第02/054637号に記載されている方法を使用して評価できる。
【0089】
チャネル評価ユニット208は,今度は図5を参照しながらより詳細に説明されるように伝送電力調整に関する情報を考慮して最小二乗誤差評価を実行する。
【0090】
図5は,チャネル評価を評価する方法のもう一つの実施形態の流れ図を示す。ステップ301でタイムスロットjに関するCPICHチャネル評価(数式21)は,上記のように決定される。
【0091】
【数21】

・・・(数式21)
【0092】
ステップ302でタイムスロットjに関するDPCHチャネル評価(数式22)は,上記のように決定される。
【0093】
【数22】

・・・(数式22)
【0094】
上記のように電力増分係数ΔTPCは,受信器に伝達され得る。もしこれが事実でなければ,プロセスはステップ501でΔTPCを評価する。特にスロットjに関する増分係数は,例えば(数式23)に従ってDPCHチャネル評価と干渉評価とから評価され得る。
【0095】
【数23】

・・・(数式23)
【0096】
好適には上記の方程式に従って決定された値は,雑音を減らすためにフィルタリングされる。所定のシステムでは増分係数の値は,変化しない。この故にフィルタリングは極めて強く実施され得る。スロットjにおけるフィルタリングされた値が(数式24)で表されるとする。
【0097】
【数24】

・・・(数式24)
【0098】
WCDMAシステムではΔTPCは単に,多数の離散した値,例えば4個の異なる値,0.5,1,1.5および2dBをとることができる。この故にΔTPCに関する最終的評価は,これらの離散値のうちで(数式25)に最も近い値になるように選択される。
【0099】
【数25】

・・・(数式25)
【0100】
もしΔTPCの実際の値が受信器に知られていれば,上記のステップが省略できることは理解される。
【0101】
後に続くステップ503でDPCHチャネルとCPICHチャネルとの間の利得オフセット(数式26)は,上述のように最小二乗誤差評価として決定される。
【0102】
【数26】

・・・(数式26)
【0103】
しかしながらこの実施形態では最小化すべき目的関数は,(数式27)によって与えられる。
【0104】
【数27】

・・・(数式27)
【0105】
それ故に,図3に関連して説明された誤差項に加えて目的関数は更に,電力制御パラメータに依存する第2の項を含む。この第2の項は,前のタイムスロットj−τにおけるTPCコマンドTPCj−τに応じてタイムスロットjからタイムスロットj−1までの利得オフセットの変化が期待されることを反映する。この変化の大きさは,(数式28)であると期待される。
【0106】
【数28】

・・・(数式28)
【0107】
上記の目的関数においてαは,前のTPC情報がどのくらい強く重み付けされるべきかに従って選択される定数である。伝送電力の実際の変化が,発行されたTPCに基づいて受信器によって期待されるようには起こらない可能性があることは注目される。例えばこれは,TPC復号時に起こり得る誤差に起因する可能性がある。ある幾つかの通信システムではこのような誤差は,TPCコマンドの3〜4%が不正確に復号される原因となり,それによって利得オフセットを決定するという目的のための前のTPC情報の信頼度を低下させる。例えばαは,0.3より小さく,好適には0.2より小さくなるように,例えばα=0.1またはα=0.2になるように選択できる。図2,3の実施形態が,α=0という選択に対応していることは注目される。
【0108】
上記の目的関数の最小値は,(数式29)によって与えられる。
【0109】
【数29】

・・・(数式29)
【0110】
上述のように代替実施形態ではもう一つの目的関数が使用され,例えば絶対値に基づく目的関数が使用され,それによって複素数を含む演算を避けている。一実施形態では目的関数は,閉じた形の解(数式31)を有する(数式30)である。
【0111】
【数30】


・・・(数式30)
【0112】
【数31】

・・・(数式31)
【0113】
最後にステップ304でプロセスは,DPCHに関するチャネル評価として(数式32)をとることによって,改善されたDPCHチャネル評価を計算する。
【0114】
【数32】

・・・(数式32)
【0115】
図6は,SIRを評価するための構成を含む受信器の第3の実施形態のブロック図を模式的に示す。この実施形態による受信器は,図2に関連して説明された受信器に類似している。この実施形態によれば受信器は更に,この受信器によって実現される通信モデルのより高い層(明示的に図示されていない)から情報602を受信する制御ユニット601を含む。一実施形態ではこの制御ユニットは,現在の無線アクセスベアラ(RAB)に関する情報,例えばスロットフォーマットに関する情報,専用チャネルのパイロット記号の数に関する情報,拡散係数に関する情報などを受信する。この情報に基づいて制御ユニットは,チャネル評価および/または後続のSIR評価のプロセスを制御するためにチャネル評価ブロック208に供給される制御信号603を生成する。
【0116】
例えばもし高い拡散係数を有する低速度のデータチャネルと僅かなDPCHパイロット記号とが使用されれば,図3,5の実施形態の一つに関連して説明されたSIR評価方法が使用され得る。もし低い拡散係数を有する高速度のデータチャネルと多数のDPCHパイロット記号とが使用されれば,例えば信号電力評価のためにDPCHパイロットだけに基づく,より単純なSIR評価が使用される。例えば制御ユニット601は,各々が異なる評価方法を実施する多数の評価ユニットの一つを起動させるスイッチ(明示的に図示されていない)を制御できる。例えば一実施形態では制御ユニットは,もしチャネル評価手段207によって生成されたチャネル評価が受信された情報602に従って十分であれば,ブロック208の改善されたチャネル評価がバイパスされるようにし得る。
【0117】
代替として,またはこれに加えて制御ユニット601は,チャネル評価手段208の一つ以上のパラメータを決定できる。一実施形態ではこの制御ユニットは,無線アクセスベアラに応じて重み付け係数αおよび/またはαを制御できる。例えば速度信号に関して重み付け係数は,上記のような評価された干渉に従って選択できるが,より高速の信号,例えばビデオ伝送に関しては,すべての重み付け係数は1に等しくなるように選択され得る。それ故にこの実施形態によればSIR評価の複雑さと品質は,異なる通信シナリオの異なる必要性に従って最適化できる。
【0118】
更に他の実施形態では図6に関連して説明された制御ユニットが,図4の実施形態の代わりに図2の実施形態と組み合わせることができることは注目される。
【0119】
本発明が通信システムにおける電力制御の性能を改善するために使用できることは更に注目される。特に幾つかのシミュレーションは,良好なSIR評価が,ダウンリンクにおける必要とされるDPCH電力の削減された平均(および分散)の点から電力制御性能を改善できることを示している。例えば理想的なSIR評価を想定すると,SIR評価がDPCHパイロットに基づいている場合と比較して,WCDMA音声無線アクセスベアラ(RAB)に関して平均DPCH電力の約1.5〜2dBだけの低減が達成できる。理想的SIR評価の理論的ケースが実際の実施形態において達成できなくても,上記の結果は,システム容量の点からの大きな性能利得が,電力制御ループにおけるSIR評価を改善することによって達成できることを示している。例えば1dB低い平均ダウンリンクDPCH電力は,システムにおける約25%良好な容量を意味する。更に,良好なSIR評価は,ダウンリンク性能も改善するより良好な測定性能をもたらす。
【0120】
本発明に従って決定された改善されたチャネル評価は他の目的にも,例えば後に続く信号処理におけるソフト値計算を改善するために使用できることは更に注目される。
【0121】
用語「含む/含んでいる(comprises/comprising)」は,本明細書で使用されるとき,明示された特徴,整数,ステップ,または構成要素の存在を指定するために採られるが,一つ以上の他の特徴,整数,ステップ,構成要素またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことは強調されるべきである。
【0122】
本発明の好適な実施形態が説明され図示されてきたが,本発明はこれらに限定されるものではなく,前記の請求項に記載された主題事項の範囲内で他の仕方でも実現され得るものである。
【0123】
本発明は,数個の個別の要素を含むハードウエアによって,また適当にプログラムされたコンピュータによって実現可能である。幾つかの手段を列挙する装置請求項ではこれらの手段の幾つかは,ハードウエアの一つおよび同じ品目によって,例えばここの説明されたような適当にプログラムされたマイクロプロセッサまたはコンピュータ,一つ以上のユーザインタフェースおよび/または一つ以上の通信インタフェースによって実現できる。ある幾つかの手段が互いに異なる従属請求項に列挙されている,または異なる実施形態で説明されているという単なる事実は,これらの手段の組合せが利益を得るために使用できないことを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】ディジタル通信システムのブロック図を模式的に示す図である。
【図2】SIRを評価するための構成を含む受信器の第1の実施形態のブロック図を模式的に示す図である。
【図3】チャネル評価を評価する方法の一実施形態の流れ図を示す図である。
【図4】SIRを評価するための構成を含む受信器の第2の実施形態のブロック図を模式的に示す図である。
【図5】チャネル評価を評価する方法のもう一つの実施形態の流れ図を示す図である。
【図6】SIRを評価するための構成を含む受信器の第3の実施形態のブロック図を模式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムにおける第1の伝送チャネルのチャネル評価を決定する方法であって,
a)前記第1の伝送チャネルを経由して受信された記号から第1のセットのチャネル評価を誘導するステップと,
b)前記通信システムにおける第2の伝送チャネルを経由して受信された記号から第2のセットのチャネル評価を誘導するステップと,
c)最小二乗誤差基準からチャネル評価の前記第1,第2のセット間の倍率を決定するステップと,
d)前記第1のチャネル評価を,前記決定された倍率によって拡大縮小された前記第2の伝送チャネルのチャネル評価と決定するステップと,
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の伝送チャネルはWCDMAシステムにおける専用物理チャネル(DPCH)であり,前記第2の伝送チャネルはWCDMAシステムにおける共通パイロットチャネル(CPICH)であることを特徴とする,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記倍率を決定するステップは,誤差項を含む目的関数の最小値を決定するステップを更に含み,前記誤差項は各々が多数の伝播遅延の一つに対応する誤差寄与の和を含み,前記誤差寄与の各々は前記第1の伝送チャネルのチャネル評価を前記倍率によって拡大縮小された前記第2の伝送チャネルのチャネル評価で置き換えることによって導入される誤差に対応することを特徴とする,請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記誤差寄与の各々は,それぞれの重み付け係数によって重み付けされることを特徴とする,請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記重み付け係数は,前記対応する伝播遅延の干渉寄与に応じて選択されることを特徴とする,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記重み付け係数は,階層的通信システムのより高い層から受信される情報に応じて決定されることを特徴とする,請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記目的関数は更に,前のタイムスロットに関して決定された倍率と前のタイムスロット中に送信されたTPCコマンドとに依存する第2の項を含むことを特徴とする,請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記倍率は電力増分パラメータを含んでおり,前記方法は更に,前記第1の伝送チャネルのチャネル評価と干渉評価とから前記電力増分パラメータを評価するステップを含むことを特徴とする,請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電力増分パラメータは,スロットjに関する前記電力増分パラメータの評価が
【数1】

であり,干渉評価がlで表され,RAKE受信器のフィンガーfに関するチャネル評価とスロットj,j−1に関するチャネル評価とがそれぞれ
【数2】


【数3】

とで表され,また総和がRAKE受信器のフィンガー遅延のセットに亘る和を含む場合に,
【数4】

に従って評価されることを特徴とする,請求項8に記載の方法。
【請求項10】
階層的通信システムのより高い層から情報を受信するステップと,
前記受信された情報を条件として少なくともステップd)を起動するステップと,
を更に含むことを特徴とする,請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
通信システムにおける第1の伝送チャネルに関する信号対干渉比(SIR)を決定する方法であって,
請求項1〜10のいずれかに記載の方法のステップを実行することによって前記第1の伝送チャネルのチャネル評価を決定するステップと,
干渉評価を決定するステップと,
前記決定されたチャネル評価と前記決定された干渉評価とから信号対干渉比を誘導するステップと,
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
伝送チャネルを経由して通信信号を受信するための通信装置であって,
第1の伝送チャネルを経由して受信された信号から第1のセットのチャネル評価を誘導するための手段と,
前記通信システムにおける第2の伝送チャネルを経由して受信された記号から第2のセットのチャネル評価を誘導するための手段と,
最小二乗誤差基準からチャネル評価の前記第1,第2のセット間の倍率を決定するための手段と,
前記第1の伝送チャネルのチャネル評価を,前記決定された倍率によって拡大縮小された前記第2の伝送チャネルのチャネル評価と決定するための手段と,
を含むことを特徴とする,通信装置。
【請求項13】
干渉評価を決定するための手段と,
前記決定されたチャネル評価と前記決定された干渉評価とから信号対干渉比を誘導するための手段と,
を更に含むことを特徴とする,請求項12に記載の通信装置。
【請求項14】
前記第1の伝送チャネルは,WCDMAシステムにおける専用物理チャネル(DPCH)であり,前記第2の伝送チャネルは,WCDMAシステムにおける共通パイロットチャネル(CPICH)であることを特徴とする,請求項12または13に記載の通信装置。
【請求項15】
前記倍率を決定するための手段は,誤差項を含む目的関数の最小値を決定するように適応させられており,前記誤差項は各々が多数の伝播遅延の一つに対応する誤差寄与の和を含み,前記誤差寄与の各々は前記第1の伝送チャネルのチャネル評価を前記倍率によって拡大縮小された前記第2の伝送チャネルの評価で置き換えることによって導入される誤差に対応することを特徴とする,請求項12〜14のいずれかに記載の通信装置。
【請求項16】
前記誤差寄与の各々は,それぞれの重み付け係数によって重み付けされることを特徴とする,請求項15に記載の通信装置。
【請求項17】
前記重み付け係数は,前記対応する伝播遅延の干渉寄与に応じて選択されることを特徴とする,請求項16に記載の通信装置。
【請求項18】
前記重み付け係数は,階層的通信システムのより高い層から受信される情報に応じて決定されることを特徴とする,請求項16に記載の通信装置。
【請求項19】
前記目的関数は更に,前のタイムスロットに関して決定された倍率と前のタイムスロット中に送信されたTPCコマンドとに依存する第2の項を含むことを特徴とする,請求項15〜18のいずれかに記載の通信装置。
【請求項20】
前記倍率は電力増分パラメータを含んでおり,前記通信装置は更に,前記第1の伝送チャネルのチャネル評価と干渉評価とから前記電力増分パラメータを評価するための手段を含むことを特徴とする,請求項19に記載の通信装置。
【請求項21】
前記電力増分パラメータは,スロットjに関する前記電力増分パラメータの評価が
【数5】


であり,干渉評価がlで表され,RAKE受信器のフィンガーfに関するチャネル評価とスロットj,j−1に関するチャネル評価とがそれぞれ
【数6】

と,
【数7】

とで表され,また総和がRAKE受信器のフィンガー遅延のセットに亘る和を含む場合に
【数8】

に従って評価されることを特徴とする,請求項20に記載の通信装置。
【請求項22】
階層的通信システムのより高い層から情報を受信することと,
前記受信された情報を条件として,少なくとも前記第1の伝送チャネルのチャネル評価を前記第2の伝送チャネルのチャネル評価と決定する手段を選択的に起動することと,
に適応した制御手段を含むことを特徴とする,請求項12〜21のいずれかに記載の通信システム。
【請求項23】
プロセッサに請求項1〜11のいずれかに記載の方法のステップを実行させるように適応したプログラムコード手段を含むことを特徴とする,コンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−500979(P2007−500979A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529695(P2006−529695)
【出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004257
【国際公開番号】WO2004/102824
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】