説明

伝送特性調整装置、回路基板、及び伝送特性調整方法

【課題】エラーを起こす前に回路調整を行うことができ、エラーを生じることがない、伝送特性の信頼性の高い伝送特性調整装置を提供する。
【解決手段】伝送路300を介して送信素子100と受信素子200との間での伝送特性を調整する伝送特性調整装置において、受信素子200側に設けられ、アイパターン開口を検出する符号検査回路205と、検出されたアイパターン開口が有するマスクに対してのマージンを算出するマージン算出回路206と、算出されたマージンの変動に基づいて、受信波形に影響を及ぼす送信素子100又は受信素子200の回路要素の設定値について評価し、該評価結果に基づいて、送信素子100又は受信素子200の回路要素の設定値を変更する回路要素調整回路207とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス等に適用され、伝送路を介する送信素子と受信素子との間での伝送特性を調整する伝送特性調整装置、回路基板および伝送特性調整方法に係り、特に、アイパターン開口とマスクとのマージンの変動に基づいて、受信波形に影響を及ぼす送信素子又は受信素子の回路要素の設定値について評価し、該評価結果に基づいて、前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値を変更する伝送特性調整装置、回路基板および伝送特性調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、信号伝送の高速化に伴い、そのマージン(波形マージン)は小さくなる傾向にあり、設計、評価段階だけでなく、装置上で適所ごとに逐次伝送特性を調整する必要性が高まってきている。
【0003】
これに対して従来から提供されている技術は、エラー率を監視しながら、任意の回路要素を調整して伝送特性を調整する方式を採用している。例えば参考文献として、下記特許文献が挙げられる。
【特許文献1】特開2003−32187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エラー率を監視しながら、回路要素を調整することになると、ある程度のエラー率を許容せざるを得ず、従って、従来の技術ではある程度のエラー率を許容することができるシステムにしか適用することができないという問題点がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、エラーを起こす前に回路調整を行うことができ、エラーを生じることがない、伝送特性の信頼性の高い伝送特性調整装置、そのような伝送特性調整装置を組み込んだ回路基板、及び伝送特性調整方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、この伝送特性調整装置は、伝送路を介する送信素子と受信素子との間での伝送特性を調整する伝送特性調整装置であって、前記受信素子側に設けられ、アイパターン開口を検出するアイパターン開口検出部と、前記アイパターン開口検出部により検出されたアイパターン開口が有するマスクに対してのマージンを算出するマージン算出部と、前記マージン算出部により算出されたマージンの変動に基づいて、受信波形に影響を及ぼす前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値について評価し、該評価結果に基づいて、前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値を変更する回路要素設定部とを備える。
【0007】
また、この伝送特性調整方法は、伝送路を介する送信素子と受信素子との間での伝送特性を調整する伝送特性調整方法であって、アイパターン開口を検出し、該アイパターン開口が有するマスクに対してのマージンを算出し、該算出されたマージンの変動を検出し、該検出されたマージンの変動に基づいて、受信波形に影響を及ぼす前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値について評価し、該評価結果に基づいて、前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値を変更する。
【0008】
また、伝送特性調整装置を有する回路基板は、伝送路を介する送信素子と受信素子との間での伝送特性を調整する伝送特性調整装置を有する回路基板であって、前記伝送特性調整装置は、前記受信素子側に設けられ、アイパターン開口を検出するアイパターン開口検出部と、前記アイパターン開口検出部により検出されたアイパターン開口が有するマスクに対してのマージンを算出するマージン算出部と、前記マージン算出部により算出されたマージンの変動を検出し、該検出されたマージンの変動に基づいて、受信波形に影響を及ぼす前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値について評価し、該評価結果に基づいて、前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値を変更する回路要素設定部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マージンの変動に基づいて、設定の評価を行い、その評価結果に応じて伝送特性を調整することができ、常に信頼性高い伝送を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1における全体構成を示すブロック図である。この実施の形態は送信素子100と受信素子200とこれらの間に設けられる伝送路300とを備えて構成される。
【0012】
送信素子100は、内部処理回路101とその処理結果を伝送路に出力する出力バッファ102と、内部処理回路101と出力バッファ102との間に設けられる符号検査ビット挿入回路103を備えている。
【0013】
また受信素子200は、イコライザ201A,201Bと入力バッファ202A,202Bとを有する二つの受信系RA,RBと経路切り替え回路203と内部処理回路204とを備える。
【0014】
そして、二つの受信系RA,RBのうちの一つの受信系RBは、アイパターン開口を検出する符号検査回路(アイパターン開口検出部)205と、アイパターン開口が有するマスクに対してのマージン(波形マージン)を算出(測定)し、算出されたマージンを伝送特性の品質の指標として出力するマージン算出回路(マージン算出部)206と、マージン算出回路206により算出されたマージンの変動を検出し該変動に基づいて、アイパターン開口に影響を与える回路要素(ここではイコライザ201B)の設定値についての評価を行い、該評価結果に基づいてイコライザ201B(回路要素の設定値)を調整する回路要素調整回路(回路要素調整部)207を備える。
【0015】
また、符号検査回路205によりアイパターン開口を検出するとともに、マージン算出回路206によりマージンを算出するために、可変論理判定電位発生器208と、位相可変クロック発生器209と、入力バッファ210とフリップフロップ211を備える。
【0016】
なお、符号検査回路205、マージン算出回路206、回路要素調整回路207は、マージン監視系を構成し、本実施の形態における伝送特性調整装置を構成している。また、回路要素調整回路207で調整されたイコライザ201Bの設定値は、後述のように、201Aにも設定されることとなる。
【0017】
上記構成において、マージン算出回路206には、マージンを算出するために、符号検査回路205からのパス又はエラー判定結果と、位相可変クロック発生器209からの位相情報と、可変論理判定電位発生器208からの電位情報が入力される。
【0018】
符号検査回路205には、イコライザ201Bの出力と可変論理判定電位発生器208からの判定電位が入力バッファにおいて比較され、該比較結果が位相可変クロック発生器209からのクロックによってフリップフロップ211からの出力として入力される。この符号検査回路205は、マージン算出回路206にアイパターン開口(パス又はエラー判定結果)を出力する。
【0019】
以下これらについて詳述する。送信素子100に設けられる符号検査ビット挿入回路103は、送受信するべきデータの中に一定の割合で符号検査をするためのビットを挿入するための回路である。挿入するビットは伝送路、送受信素子の条件変動を感知できる程度の個数でよい。具体的には20〜30ビット程度である。
【0020】
伝送路300は、送信素子100と受信素子200を接続する線路であり、具体的にはプリント配線板、Cableなどにより構成される。
【0021】
イコライザ201A,201Bは、伝送路で損失する高周波成分を受信素子200側で補償する回路である。
【0022】
可変論理判定電位発生器208は、信号の論理「High」と「Low」を判定する基準となる電位を変動させることができる回路である。
【0023】
位相可変クロック(CLK)発生器209は、クロックの位相を1周期を任意数で分割した時間幅ずつ変動させることができる回路である。
【0024】
符号検査回路205は、送信素子100の符号検査ビット挿入回路103で挿入されたビットを用いて符号検査を行う回路である。
【0025】
マージン算出回路206は、符号検査回路205の結果を入力情報として、アイパターンの開口を検出し、その品質の指標としてマージンを出力する回路である。
【0026】
回路要素調整回路207は、マージンを入力情報として、アイパターン開口に影響を与える回路要素を制御しながら、マージンが最大となる設定を検索する回路である。
【0027】
以上の構成に基づく本実施の形態の全体動作について図2を用いて説明する。
まず、伝送特性としてのアイパターン開口の検出が符号検査回路205により行われる(S1)。
【0028】
アイパターン開口を検出するためには、図3に示されるように、受信素子200において論理判定レベルと論理判定時間の掃引が行われる。論理確定レベルの掃引は入力バッファの参照電圧を可変論理判定電位発生器により変化させることによって実現される。論理確定時間の掃引は入力バッファの次段にあるフリップフロップに入力されるクロックの位相を位相可変クロック発生器209により変化させることによって実現される。
【0029】
この掃引された論理判定電位と論理判定時間のすべての組み合わせについて、図4に示されるようにマトリックス状に符号試験を行い、その結果を図5に示されるように出力する。図4、図5においては、縦方向に論理判定電位スイープを示し、横方向に論理判定時間スイープを示している。
【0030】
次にマージンの算出がマージン算出回路206により行われる(S2)。
符号検査回路205により検出されたアイパターン開口を表すデータより、マージンを算出する。マージンは受信素子200について規定されるマスクとアイパターン開口の内側との距離が最も短くなる部分で規定する。具体的なイメージを図6に示す。
【0031】
図6においては、波形信号から切り出される規定の長さを持つ波形信号片を重畳することで生成されるアイパターン開口EPと、そのアイパターンに要求される開口の大きさを示すマスクMPとの間のマージンが算出される。図6に示されるように、マージンには、アイパターン開口とマスクとの間に生じるマージンとして、電圧軸マージン(最小差分電圧値)と時間軸マージン(最小差分時間値)がある。
【0032】
マージンの算出の一例としては、まず、アイパターン開口の中心位置を算出するため各波形信号片の持つ時間軸近傍の波形信号部分を抽出して、その抽出した波形信号部分の時間座標値に含まれる最小時間および最大時間を検出し、その検出した最小時間および最大時間に基づいてアイパターン開口の中心位置を算出する。
【0033】
次に、算出した中心位置にマスクの中心位置を配置した場合における、マスクの持つ各特徴点の時間座標値および電圧座標値を算出する。
【0034】
そして、マスクの持つ特徴点の内の時間軸上に存在しない特徴点を処理対象として、処理対象の特徴点の電圧座標値とその特徴点に対応付けられる波形信号片個所の電圧座標値とに基づいて、電圧軸方向のマージンを算出する。
【0035】
ここでは、例えば、処理対象の特徴点に対応付けられる波形信号片個所の電圧座標値として、時間座標値が処理対象の特徴点に最も近い波形信号片個所の電圧座標値を用いたり、処理対象の特徴点を挟む形で隣接する2つの波形信号片個所を直線補間することで得た処理対象の特徴点の時間座標値上の電圧座標値を用いることができる。
【0036】
次に、マスクの持つ特徴点の内の時間軸上に存在する特徴点を処理対象として、処理対象の特徴点の時間座標値とその特徴点に対応付けられる波形信号片個所の時間座標値とに基づいて、時間軸方向のマージンを算出する。
【0037】
ここでは、例えば、各波形信号片について、処理対象の特徴点の時間座標値とその特徴点に対応付けられる波形信号片個所の時間座標値との差分を算出し、それらの差分値の中で最も小さくなるものを特定することで、各特徴点について時間軸方向のマージンを算出して、それらのマージンの中から最小のものを選択することで最終的な時間軸方向のマージンを算出することができる。
【0038】
なお、通常、マージンとしては、電圧軸マージンの方が時間軸マージンよりも先にマージンが小さくなるため(悪影響を及ぼす)ため、図6に示す4つの特徴点の電圧値マージンをマージン算出回路206で算出し、該電圧値マージンを回路要素調整回路207により、後述するように監視するようにすることができるが、時間軸マージンを使用してもよいことは言うまでもない。
【0039】
次にマージン変動の監視が回路要素調整回路207により行われる(S3)。
ここでは、一定の周期でマージン算出回路からの出力であるマージンを監視し、マージンに変動があった場合は、設定の評価(S4)に進む。変動がない場合は、処理を行うことなく、(S1)に戻る。マージン監視は前回測定との差分に対して任意の基準値を設定することによって実現する。
【0040】
次に設定の評価が回路要素調整回路207により行われる(S4)。
評価の一例を示す動作イメージを図7に示すとともに動作の詳細を図8のフローチャートに示す。
【0041】
まず、イコライザ201Bの高周波成分に関する増幅量(以降イコライザ量と表現する)の設定を初期値「0」に設定する(S11)。次に、マージンを測定する(S12)。そして、イコライザ量の設定を次の増加方向段階に変更する(S13)。さらに、マージンを測定する(S14)。そして、(S13)、(S14)の処理を全ての設定値について実施し(S15)、マージンが最大となる設定を検出し、これを採用値とする(S16)。
【0042】
以上のようにして設定した設定値を変更する場合について説明する。
前項で検出した設定を反映する場合、設定変更にともなうエラーを生じないように回路を制御する必要がある。この機能は、図9に動作イメージを示すように「経路切り替え回路」に持たせることができる。具体的な手順を図10のフローチャートに示す。
【0043】
まず、抽出した設定を図9に示すSub系に反映する(S21)。次に、Sub系の設定切り替え時のエラーが収まったことを、Sub系とMain系の受信データの一致により検出する(S22)。このデータの一致を確認する回路の具体例としては排他的論理和の利用があげられる。データの一致を確認するためには数ミリ秒程度の監視が必要となる。この監視に必要な時間が送受信データの何倍に相当するかを計算し、その結果をカウンタで計測することによって、所望の一致監視時間を得る。この構成回路の一例を図11に示す。
【0044】
図11には、Main系とSub系の受信データを入力する排他的論理和回路221と、その出力を一致を監視するための一致監視周期計算回路222で指示される周期にわたり、カウントするカウンタ223と、そのカウンタ223のカウント値に基づいてMain系とSub系を切替えるセレクタ224とを備えて構成される。
【0045】
そして、Main系とSub系の一致が確認されると(S22)、受信データとしてSub系を選択する(S23)。そして、Sub系の設定をMain系に反映し(S24)、Main系の設定切り替え時のエラーが収まったことを、Sub系とMain系の受信データの一致により確認すると(S25)、受信データとしてMain系を選択する(S26)。
【0046】
実施の形態2.
実施の形態1では伝送特性を制御する回路要素、即ち回路要素設定回路207が調整する回路要素としてイコライザを採用しているが、送信素子100、および受信素子200を制御することによって、同様の効果を得ることができる。
【0047】
例えば実施の形態2として、図12に示すように伝送路の両端である送信素子100の出力バッファ102の出力側と受信素子200の入力バッファ202A,202Bの入力側とに設けられる内蔵終端抵抗131,231A,231Bの値を変更制御することによっても、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。
【0048】
実施の形態3.
また、実施の形態3においては、回路要素の設定として、送信素子100Aの送信系を冗長化することもできる。上述した実施の形態1では、受信素子側のみで冗長回路が構成されているため、送信側の回路要素を調節することができない。
【0049】
そこで、図13に示すように、送信素子100A内におけるデータ送信系を冗長に備えることによって、受信素子側から伝送されてくる制御信号によって、プリエンファシス量、振幅、およびデータ送信系の切り替えを行いながら伝送特性を調整することによって、同様の効果を得ることができる。
【0050】
図13では、送信素子内に複数(二つ)のデータ送信系TA,TBを備えるとともに、これら送信系のそれぞれが出力バッファ102A,102Bとプリエンファシス設定回路105A,105Bを有する。そして、これら送信系を受信素子200側の回路要素調整回路207からの制御信号により切替える経路切り替え回路106を備えている。
【0051】
実施の形態4.
実施の形態1では、アイパターン開口から算出されるマージンを監視し、変動があったときに回路要素を調整する方式をとっている。この回路要素の調整動作は定期的もしくは周期的に行うようにしても良い。
【0052】
一方、このマージンはプリント配線板上の部品温度と連動して変化する。よって、各部品の温度を監視しながら、変動があったときに回路要素の調整動作を実施する(回路調整の開始トリガとする)ことによっても環境温度を考慮に入れたより信頼性の高い伝送特性を得ることができる。
【0053】
図14は実施の形態4を示すブロック図であり、温度センサ241とこの温度センサからの温度を監視する温度監視回路242とを備え、回路要素調整回路207は、温度監視回路242の監視結果に基づき、所定の閾値以上の温度変化があったときに、回路要素の調整動作を開始するようにできる。もちろん、この調整動作の開始は定期的に行う動作と組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0054】
実施の形態5.
さらに、実施の形態5として、電源電圧変動に基づいて調整動作を開始するようにしても良い。マージンはプリント配線板上の電源供給系の電位と連動して変化する。よって、プリント板上の電源電圧を監視し、変動があったときに回路要素の調整動作を実施する(回路調整の開始トリガとする)ことによっても環境温度を考慮に入れた、より信頼性の高い伝送特性を得ることができる。
【0055】
図15は実施の形態5を示すブロック図であり、電源電圧センサ251とこの電源電圧センサ251からの温度を監視する電源電圧監視回路252とを備え、回路要素調整回路207は、電源電圧監視回路252の監視結果に基づき、所定の閾値以上の電源電圧変動があった場合に回路要素の調整動作を開始する。これによっても環境温度を考慮に入れた、より信頼性の高い伝送特性を得ることができる。もちろん、この調整動作の開始は定期的に行う動作、あるいは実施の形態4で説明した温度変化と組み合わせて行うようにしてもよいことは言うまでもない。
【0056】
実施の形態6.
実施の形態1では、信号伝送系をMainとSubの2系統に分け、回路要素の調整についてはSub側に設けられたマージン監視回路MMにその機能をもたせている。この構成によれば、図16(a)に示すように、設定の切り替え時にMain→Sub→Mainという手順になり2回の切り替えが必要となる。
【0057】
これに対し、図16(b)に示すように、Main系とSub系の両系統にマージン監視回路MMA,MMBを設けて、信号伝送系の2重化を完全に対称な形態にすることによって、Main系とSub系という区別がなくなり、回路の切り替えを信号伝送系(1)→信号伝送系(2)と1回に減少させることができる。
【0058】
実施の形態7.
実施の形態1では、図17(a)に示すように、マージン監視系を含むSub系(入力バッファ202B,マージン監視回路MM)を多チャネル(1ch〜3ch)におけるそれぞれのチャネルに持たせることになるが、これを図17(b)に示すように、一つの入力バッファ202Bとマージン監視回路MMCとして、複数のデータ伝送系(多チャネル系)で共有することにより回路規模を小さくすることができる。なお、共有は時分割方式とすることができる。
【0059】
実施の形態8.
実施の形態1では、図18(a)に示すように、回路要素の調整についてマージンに制限を設けていないので、マージンを最も大きくとれる設定を選択することになる。そのため、受信素子で規定されているマスクに対し過剰なマージンとなってしまう可能性がある。過剰なマージンとなる場合はイコライザ201のブースト量が過剰である場合が多く、消費電力の増加につながる。そこで、図18(b)に示すように、マージンに上限を設けることによって過剰なイコライザ201によるブーストを防ぎ、省電力化を測ることができる。
【0060】
実施の形態9.
実施の形態1では、回路要素の調整について制限を設けていないので、マージンを最も大きくとれる設定を選択することになる。そのため、図19(a)に示すように、受信素子で規定されているマスクに対し過剰なマージンとなってしまう可能性がある。調整対象の回路要素として送信素子の出力振幅が選択されている場合は、過剰なマージンとなる際に、振幅が過剰に大きくなっている場合が多く、消費電力の増加につながる。
【0061】
これに対し、図19(b)に示すように、マージンに上限を設けることによって過剰な振幅出力を防ぎ、省電力化を測ることができる。
【0062】
実施の形態10.
実施の形態3では、送信素子の冗長化について説明した。これは図20(a)に示すように、送信素子側の回路要素を制御する手段として主信号の伝送路300aと別に、受信素子から送信素子へ制御信号を送付するための伝送路300bを付加している。このため、専用の信号Pinを送信素子、受信素子、コネクタに用意する必要があり、実装効率を悪化させることとなる。
【0063】
これに対し、図20(b)に示すように、受信素子200に制御信号搬送波を生成して主信号の配線に重畳する制御信号搬送波生成回路371を設けると共に、送信素子100に主信号に重畳された制御信号搬送波を受信する制御信号搬送波受信回路171を設け、受信素子200側からの制御信号を差動データ伝送系に同相で重畳して伝送することにより、送受信データへの影響なく、かつ、制御信号用伝送路を追加することなく、送信素子への制御信号伝送を実現できる。
【0064】
実施の形態11.
実施の形態1では、図21(a)に示すように、伝送特性を制御する回路要素としてイコライザを採用しているが、図21(b)に示すように、送信素子100、または受信素子200のPLL261に供給する電源の電源フィルタを構成する回路部品(定数可変のインダクタンス、コンデンサ、抵抗)の定数を制御することによっても、同様の効果を得ることができる。実施の形態11では、このようにジッタ周波数耐性を調整する。
【0065】
信号伝送系においてジッタによるエラーが発生する場合、その原因となるジッタ周波数は限定されることが多い。そして、そのジッタはPLL261の電源供給系に混入する雑音によって生じる場合が多い。よって、PLL261への電源供給端子の内部に可変素子(コンデンサ、またはインダクタンス)262を作りこみ、この内部素子と外部に作成した外部電源フィルタ(フィルタ回路)263の合成で決まるフィルタの特性を変化させることのよって原因となるジッタを抑制することができる。
【0066】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、結果を確認しながら伝送特性の調整を図る事が可能となり、またマージンの測定をデジタル回路で構成しているのでLSIへの適用が容易になる。よって、信号伝送の品質改善に寄与することができるという効果を奏する。
【0067】
本実施の形態によれば、以下のような付記が開示されている。
(付記1) 伝送路を介する送信素子と受信素子との間での伝送特性を調整する伝送特性調整装置であって、
前記受信素子側に設けられ、アイパターン開口を検出するアイパターン開口検出部と、
前記アイパターン開口検出部により検出されたアイパターン開口が有するマスクに対してのマージンを算出するマージン算出部と、
前記マージン算出部により算出されたマージンの変動に基づいて、受信波形に影響を及ぼす前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値について評価し、該評価結果に基づいて、前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値を変更する回路要素設定部と、
を備える伝送特性調整装置。
(付記2) 付記1に記載の伝送特性調整装置において、
前記回路要素設定部は、前記伝送路の終端に設けられる内蔵終端抵抗を変更することにより伝送特性を調整する伝送特性調整装置。
(付記3) 付記1に記載の伝送特性調整装置において、
前記受信素子内に複数のデータ受信系を備えてなり、前記回路要素設定部は、前記評価結果に基づいて、前記データ受信系を切替えることにより伝送特性を調整する伝送特性調整装置。
(付記4) 付記1に記載の伝送特性調整装置において、
前記送信素子内に複数のデータ送信系を備えてなり、前記回路要素設定部は、前記評価結果に基づいて、前記複数のデータ送信系を切替えることにより伝送特性を調整する伝送特性調整装置。
(付記5) 付記4に記載の伝送特性調整装置において、
前記複数のデータ送信系を切替えることにより、プリエンファシス量又は振幅を又は伝送路の切り替えを行い伝送特性を調整する伝送特性調整装置。
(付記6) 付記1に記載の伝送特性調整装置において、
前記回路要素設定部による前記マージンの変動の検出は一定時間ごとに行われる伝送特性調整装置。
(付記7) 付記1に記載の伝送特性調整装置において、
温度を検出する温度センサを備え、前記回路要素設定部は、前記温度センサの検出温度の変動に基づいて回路要素の設定を行う伝送特性調整装置。
(付記8) 付記1に記載の伝送特性調整装置において、
電源電圧を検出する電圧センサを備え、前記回路要素設定部は、前記電圧センサの検出電源電圧の変動に基づいて回路要素の設定を行う伝送特性調整装置。
(付記9) 付記1に記載の伝送特性調整装置であって、
前記伝送特定調整装置は、前記受信素子内に設けられる複数の受信系のそれぞれに設けられる伝送特性調整装置。
(付記10) 付記1に記載の伝送特性調整装置であって、
前記マージン算出回路及び前記回路要素設定部は、前記受信素子内に設けられる複数の受信系に対して共用されるように設けられる伝送特性調整装置。
(付記11) 付記1に記載の伝送特性調整装置であって、
マージンに最大値の基準を設け、前記回路要素設定部は、前記マージンが前記最大値の基準内に納まるように前記設定値を調整する伝送特性調整装置。
(付記12) 付記11に記載の伝送特性調整装置において、
前記設定値は前記受信素子の受信系のイコライザ量、または前記送信素子の送信系の出力振幅の少なくともいずれか一つである伝送特性調整装置。
(付記13) 付記6に記載の伝送特性調整装置において、
前記回路要素設定部は、前記送信素子側へ送信する設定用の制御信号を、変調して差動データ伝送系に同相で重畳して伝送する伝送特性調整装置。
(付記14) 付記1に記載の伝送特性調整装置において、
前記回路要素設定部は、前記送信素子、または前記受信素子のPLLに供給する電源の電源フィルタを構成するインダクタンス、コンデンサ、及び抵抗のうちの少なくともいずれか一つの定数を設定することによって、ジッタ周波数耐性の調整を行う伝送特性調整装置。
(付記15) 伝送路を介する送信素子と受信素子との間での伝送特性を調整する伝送特性調整装置を有する回路基板であって、
前記伝送特性調整装置は、
前記受信素子側に設けられ、アイパターン開口を検出するアイパターン開口検出部と、
前記アイパターン開口検出部により検出されたアイパターン開口が有するマスクに対してのマージンを算出するマージン算出部と、
前記マージン算出部により算出されたマージンの変動を検出し、該検出されたマージンの変動に基づいて、受信波形に影響を及ぼす前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値について評価し、該評価結果に基づいて、前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値を変更する回路要素設定部と、
を備える回路基板。
(付記16) 伝送路を介する送信素子と受信素子との間での伝送特性を調整する伝送特性調整方法であって、
アイパターン開口を検出し、
該アイパターン開口が有するマスクに対してのマージンを算出し、
該算出されたマージンの変動を検出し、該検出されたマージンの変動に基づいて、受信波形に影響を及ぼす前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値について評価し、該評価結果に基づいて、前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値を変更する伝送特性調整方法。
(付記17) 付記16に記載の伝送特性調整方法において、
前記マージンの変動の検出は一定時間ごとに行われる伝送特性調整方法。
(付記18) 付記16に記載の伝送特性調整方法において、
前記回路要素の設定は、前記伝送路の終端に設けられる内蔵終端抵抗を変更することにより行われる伝送特性調整方法。
(付記19) 付記16に記載の伝送特性調整方法において、
前記回路要素の設定は、前記評価結果に基づいて、前記受信素子内に複数設けられたデータ受信系を切替えることにより行われる伝送特性調整方法。
(付記20) 付記16に記載の伝送特性調整方法において、
前記回路要素の設定は、前記評価結果に基づいて、送信素子内に複数設けられたデータ送信系を切替えることにより行われる伝送特性調整方法。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1の全体動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1の動作を説明するブロック図である。
【図4】波形判定方法を示す図である。
【図5】合否判定方法を示す図である。
【図6】マージンの算出方法を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1の評価動作を説明するブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態1の評価動作を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態1の設定動作を説明するブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態1の設定動作を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態1のデータ一致監視回路の一例を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態2を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施の形態3を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施の形態4を示すブロック図である。
【図15】本発明の実施の形態5を示すブロック図である。
【図16】本発明の実施の形態6を示すブロック図である。
【図17】本発明の実施の形態7を示すブロック図である。
【図18】本発明の実施の形態8を示すブロック図である。
【図19】本発明の実施の形態9を示すブロック図である。
【図20】本発明の実施の形態10を示すブロック図である。
【図21】本発明の実施の形態11を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0069】
100 送信素子、101 内部処理回路、102 出力バッファ、130 符号検査ビット挿入回路、200 受信素子、201A,201B イコライザ、202A,202B 入力バッファ、203 経路切り替え回路、204 内部処理回路、205 符号検査回路(アイパターン開口検出部)、206 マージン算出回路、207 回路要素調整回路、RA,RB 受信系、208 可変論理判定電位発生器、209 位相可変クロック発生器、210 入力バッファ、211 フリップフロップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路を介する送信素子と受信素子との間での伝送特性を調整する伝送特性調整装置であって、
前記受信素子側に設けられ、アイパターン開口を検出するアイパターン開口検出部と、
前記アイパターン開口検出部により検出されたアイパターン開口が有するマスクに対してのマージンを算出するマージン算出部と、
前記マージン算出部により算出されたマージンの変動に基づいて、受信波形に影響を及ぼす前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値について評価し、該評価結果に基づいて、前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値を変更する回路要素設定部と、
を備える伝送特性調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の伝送特性調整装置において、
前記回路要素設定部は、前記伝送路の終端に設けられる内蔵終端抵抗を変更することにより伝送特性を調整する伝送特性調整装置。
【請求項3】
請求項1に記載の伝送特性調整装置において、
前記受信素子内に複数のデータ受信系を備えてなり、前記回路要素設定部は、前記評価結果に基づいて、前記データ受信系を切替えることにより伝送特性を調整する伝送特性調整装置。
【請求項4】
請求項1に記載の伝送特性調整装置において、
前記送信素子内に複数のデータ送信系を備えてなり、前記回路要素設定部は、前記評価結果に基づいて、前記複数のデータ送信系を切替えることにより伝送特性を調整する伝送特性調整装置。
【請求項5】
請求項1に記載の伝送特性調整装置において、
前記回路要素設定部による前記マージンの変動の検出は一定時間ごとに行われる伝送特性調整装置。
【請求項6】
請求項1に記載の伝送特性調整装置において、
温度を検出する温度センサを備え、前記回路要素設定部は、前記温度センサの検出温度の変動に基づいて回路要素の設定を行う伝送特性調整装置。
【請求項7】
請求項1に記載の伝送特性調整装置において、
電源電圧を検出する電圧センサを備え、前記回路要素設定部は、前記電圧センサの検出電源電圧の変動に基づいて回路要素の設定を行う伝送特性調整装置。
【請求項8】
請求項1に記載の伝送特性調整装置であって、
マージンに最大値の基準を設け、前記回路要素設定部は、前記マージンが前記最大値の基準内に納まるように前記回路要素の設定値を調整する調整する伝送特性調整装置。
【請求項9】
伝送路を介する送信素子と受信素子との間での伝送特性を調整する伝送特性調整装置を有する回路基板であって、
前記伝送特性調整装置は、
前記受信素子側に設けられ、アイパターン開口を検出するアイパターン開口検出部と、
前記アイパターン開口検出部により検出されたアイパターン開口が有するマスクに対してのマージンを算出するマージン算出部と、
前記マージン算出部により算出されたマージンの変動を検出し、該検出されたマージンの変動に基づいて、受信波形に影響を及ぼす前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値について評価し、該評価結果に基づいて、前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値を変更する回路要素設定部と、
を備える回路基板。
【請求項10】
伝送路を介する送信素子と受信素子との間での伝送特性を調整する伝送特性調整方法であって、
アイパターン開口を検出し、
該アイパターン開口が有するマスクに対してのマージンを算出し、
該算出されたマージンの変動を検出し、該検出されたマージンの変動に基づいて、受信波形に影響を及ぼす前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値について評価し、該評価結果に基づいて、前記送信素子又は前記受信素子の回路要素の設定値を変更する伝送特性調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−159256(P2009−159256A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334546(P2007−334546)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】