説明

伝達比可変装置及び車両用操舵装置

【課題】ロック時の衝撃トルクによるロックホルダずれを抑制できる伝達比可変装置及び車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】キー機構71は、シャフト凹部72、ホルダ凹部73及びこれらシャフト凹部72とホルダ凹部73とを連通するようにトルクリミットリング57に形成された連通孔74により区画される収容室75内に収容される係合部材76を備えた。このシャフト凹部72を、モータシャフト30とロックホルダ52とが互いに相対回転可能となるように係合部材76を収容可能に形成するとともに、ホルダ凹部73を、モータシャフト30とロックホルダ52とが相対回転不能となるように係合部材76の一部がシャフト凹部72内に突出した状態で該係合部材76を収容可能に形成した。そして、係合部材76を、モータシャフト30とロックホルダ52とが相対回転可能となる位置と相対回転不能となる位置との間で移動可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝達比可変装置及び車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、差動機構を用いてステアリング操作に基づく入力軸の回転にモータ駆動に基づく回転を上乗せして出力軸に伝達する伝達比可変装置がある。この種の伝達比可変装置として、ハウジングが自動車の車体に対して固定され、前記入力軸の回転によってハウジングが回転されないハウジング固定型のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。一般に、こうしたハウジング固定型の伝達比可変装置には、モータシャフトとハウジングとを相対回転不能にロックし、モータシャフトの回転を拘束するロック装置が設けられている。そして、このロック装置の作動によって、モータシャフトの回転を拘束することにより、モータへの電力供給の停止時等において、モータシャフトが空転(自由回転)することを防ぎ、入力軸と出力軸との間のトルク伝達が不能になることを防止している。
【0003】
このようなロック装置は、モータシャフトと一体的に設けられるロックホルダと、車体に対して固定されたハウジング等に設けられるロックアームとを備え、ロックホルダの外周面に形成された係合溝にロックアームの係合爪を係合させることによりモータシャフトの回転を拘束するように構成されている。
【0004】
ところで、波動歯車機構等からなる差動機構に異物の噛み込み等の異常が発生すると、入力軸及び出力軸がモータシャフトに対して相対回転できなくなることがある。そのため、例えばロック装置によりモータシャフトの回転が拘束されたロック状態において、差動機構に異常が発生すると、入力軸及び出力軸の回転も拘束されることになり、ステアリング操作の妨げとなる虞がある。そこで、ロック装置には、モータシャフトとロックホルダとの間に介在されるトルクリミットリングが設けられており、所定値以上のトルク入力があった場合には、ロック状態であってもモータシャフトの回転を許容するようになっている。詳しくは、こうしたトルクリミットリングは、例えばその外周面とモータシャフトとの間の摩擦抵抗に基づいてモータシャフトとロックホルダとの相対回転を規制するとともに、所定値以上のトルク入力がある場合には、前記外周面が滑り面となることにより上記相対回転を許容する、即ちトルクリミッタとしての機能を果たすようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−38990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、トルクリミットリングによりモータシャフトとロックホルダとの相対回転が許容されるのは、上記のようにロック状態で差動機構に異物の噛み込みが発生した場合等の異常時において、モータシャフトの回転が拘束されていることによりステアリング操作が妨げられることを防ぐためである。つまり、フェールセーフ措置としてロックホルダをモータシャフトに対して相対回転させるものであるため、通常使用時にモータシャフトとロックホルダとが相対回転することは、装置の信頼性確保等の観点から好ましいものではない。
【0007】
しかしながら、モータシャフトが高速で回転している状態(例えばステアリングを操舵エンドまで切り込んだ状態からさらに切り込んだ場合等)でロック装置が作動すると、ロックホルダの係合溝にロックアームの係合爪が係合する瞬間(ロック時)に、上記所定値以上の衝撃トルクがロックホルダに作用することがある。この結果、異常時でなくとも、モータシャフトとロックホルダとが相対回転する所謂ロックホルダずれが生じる虞があり、この点においてなお改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ロック時の衝撃トルクによるロックホルダずれを抑制できる伝達比可変装置及び車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、入力軸の回転にモータ駆動に基づく回転を上乗せして出力軸に伝達する差動機構と、前記差動機構及びモータを収容するとともに前記入力軸の回転によって回転されないハウジングと、前記ハウジングとモータシャフトとを相対回転不能にロックするロック装置とを備え、前記ロック装置は、前記モータシャフトと一体に設けられるとともに外周面に係合溝が形成されたロックホルダ、及び前記係合溝に係合することにより前記ロックホルダの回転を拘束可能なロックアームを有し、前記モータシャフトと前記ロックホルダとの間には、摩擦抵抗に基づいて前記モータシャフトと前記ロックホルダとの相対回転を規制又は許容するトルクリミットリングが介在される伝達比可変装置であって、前記モータシャフトの外周面に形成されたシャフト凹部、初期組み付け状態で該シャフト凹部に対面するように前記ロックホルダの内周面に形成されたホルダ凹部、前記シャフト凹部と前記ホルダ凹部とを連通するように前記トルクリミットリングに形成された連通孔、これらシャフト凹部、ホルダ凹部及び連通孔により区画される収容室、該収容室内に収容される係合部材を備え、前記シャフト凹部は、前記モータシャフトと前記ロックホルダとが相対回転可能となるように前記係合部材を収容可能に形成されるとともに、前記ホルダ凹部は、前記モータシャフトと前記ロックホルダとが相対回転不能となるように前記係合部材の一部が前記シャフト凹部内に突出した状態で該係合部材を収容可能に形成され、前記係合部材は、前記モータシャフトと前記ロックホルダとが相対回転可能となる位置と相対回転不能となる位置との間を移動可能であることを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、ロックホルダずれが生じ易い状態、すなわちモータシャフトが高速で回転している状態では、係合部材は遠心力により径方向外側に移動してホルダ凹部内に収容され、モータシャフトとロックホルダとが相対回転不能となるように係合部材の一部がシャフト凹部内に突出した状態となる。そのため、モータシャフトとロックホルダとが互いに相対回転し始めるときに、ホルダ凹部に収容された状態の係合部材がシャフト凹部に引っ掛かることで、瞬間的に、これらが相対回転不能となる。ここで、ロック時に生じる衝撃トルクは、極めて短い間だけロックホルダに作用するものであるため、係合部材によってモータシャフトとロックホルダとが瞬間的に相対回転不能となることにより、ロック時の衝撃トルクによるロックホルダずれを抑制できる。また、モータシャフトとロックホルダとを相対回転させるトルクが継続して作用し、係合部材がシャフト凹部内に収容されると、モータシャフトとロックホルダとが互いに相対回転可能な状態になり、トルクリミットリングによりこれらの相対回転が許容されるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の伝達比可変装置において、前記係合部材は、前記収容室内で転動可能に構成されたことを要旨とする。
上記構成によれば、係合部材は、転動することにより収容室内を移動するため、長期に亘る使用により係合部材が収容室内を繰り返し移動しても、係合部材やモータシャフト等が摩耗し難くなる。これにより、例えば摩耗粉がトルクリミットリングとモータシャフトとの間に詰まって、モータシャフトとロックホルダとが円滑に相対回転できなくなることを防止できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の伝達比可変装置において、前記係合部材を前記ホルダ凹部側に付勢する弾性部材を備えたことを要旨とする。
上記構成によれば、係合部材が弾性部材によりホルダ凹部側に付勢されるため、確実に係合部材がホルダ凹部内に収容されるようなる。これにより、ロック時に生じる衝撃トルクに起因したロックホルダずれを確実に抑制できる。また、係合部材がシャフト凹部側に移動する際に、弾性部材を弾性変形させる必要があることから、同係合部材がシャフト凹部内に収容され難くなる。従って、弾性部材を用いない構成に比べ、係合部材によりモータシャフトとロックホルダとの相対回転が規制される状態を長く維持することができるようになり、モータシャフトとロックホルダとの相対回転を十分に抑制できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の伝達比可変装置において、前記シャフト凹部は、前記モータシャフトの径方向に貫通して形成され、前記弾性部材は、前記モータシャフトの内周面に設けられるとともに、前記シャフト凹部を閉塞するシート部を有することを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、シート部がシャフト凹部におけるモータシャフトの内周面側の開口を閉塞するようにして、弾性部材が同モータシャフトの内周面に設けられるため、シャフト凹部内に同弾性部材を収容しなくともよくなる。そのため、例えばシャフト凹部を外周面側のみに開口するように形成し、同シャフト凹部内に係合部材及び弾性部材を一緒に挿入する場合に比べ、伝達比可変装置の組み付け性の向上を図ることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の伝達比可変装置を備えた車両用操舵装置であることを要旨とする。
上記構成によれば、ロック時の衝撃トルクによるロックホルダずれを抑制することができ、信頼性の高い車両用操舵装置を提供できる。また、運転者によるステアリング操作のように、モータシャフトとロックホルダとを互いに相対回転させるトルクが継続して作用する場合には、上記のように係合部材がシャフト凹部内に収容されることで、これらの相対回転が許容されるため、異常時にステアリング操作が妨げられることを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロック時の衝撃トルクによるロックホルダずれを抑制することが可能な伝達比可変装置及び車両用操舵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】伝達比可変装置を備えた車両用操舵装置の概略構成図。
【図2】伝達比可変装置の断面図。
【図3】図2におけるA−A断面でのロック装置を示す概略構成図。
【図4】第1実施形態におけるロックホルダとモータシャフトとの相対回転を規制する状態のキー機構を示す拡大断面図。
【図5】第1実施形態におけるロックホルダとモータシャフトとの相対回転を許容する状態のキー機構を示す拡大断面図。
【図6】第2実施形態におけるロックホルダとモータシャフトとの相対回転を規制する状態のキー機構を示す拡大断面図。
【図7】第2実施形態におけるロックホルダとモータシャフトとの相対回転を許容する状態のキー機構を示す拡大断面図。
【図8】別例におけるロックホルダとモータシャフトとの相対回転を規制する状態のキー機構を示す拡大断面図。
【図9】別例におけるロックホルダとモータシャフトとの相対回転を規制する状態のキー機構を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明を車両用操舵装置に具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両用操舵装置1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、ステアリングシャフト3は、コラムシャフト8、インターミディエイトシャフト9、及びピニオンシャフト10を連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド11を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪12の舵角、即ち車両の進行方向が変更される。
【0019】
また、ラック軸5を収容し、車体に対して固定されているラックハウジング13には、モータ14を駆動源としてラック軸5を軸方向移動させることにより操舵系にアシスト力を付与するEPSアクチュエータ15が設けられている。一方、ピニオンシャフト10には、そのパワーアシスト制御に用いる操舵トルクを検出するためのトルクセンサ16、並びにステアリング2と転舵輪12との間の伝達比(ギヤ比)を変更可能とした伝達比可変装置18が設けられている。
【0020】
図2に示すように、ラックハウジング13の上面には、略円筒状に形成されたピニオンハウジング20が固定されている。ピニオンシャフト10は、このピニオンハウジング20内に挿通されることにより、その一端に形成されたピニオン歯10aがラック軸5のラック歯(図示略)と噛合された状態で回転可能に支持されている。本実施形態のピニオンハウジング20は、ラックハウジング13の上部に固定されたロアハウジング23と、該ロアハウジング23の上端に連結されたアッパハウジング24とにより構成されている。そして、ピニオンハウジング20の内部には、上記のトルクセンサ16及び伝達比可変装置18が収容されている。
【0021】
詳述すると、ピニオンシャフト10は、インターミディエイトシャフト9に連結される(図1参照)ことによりステアリング操作に伴う回転が入力される入力軸25と、一端に上記ピニオン歯10aが形成された出力軸26とにより構成されている。そして、伝達比可変装置18は、これら入力軸25及び出力軸26の間に介在された差動機構27と、該差動機構27を駆動するモータ28とを備え、ハウジングとしての前記アッパハウジング24に収容されている。また、アッパハウジング24は上記のように車体に対して固定されたラックハウジング13に固定されており、入力軸25の回転によって回転されないようになっている。
【0022】
本実施形態では、出力軸26は、ロアハウジング23に設けられた軸受29a,29bに軸支されることにより、その一端がアッパハウジング24内に突出した状態で回転可能に支持されている。また、伝達比可変装置18の駆動源であるモータ28には、中空状のモータシャフト30を有するブラシレスモータが採用されている。このモータ28は、モータハウジング28aを介して、そのステータ31がアッパハウジング24の内周に固定されることにより、車体に対して固定された同アッパハウジング24に対して回転不能に設けられている。そして、アッパハウジング24内に突出された出力軸26の一端は、このモータシャフト30内に挿通されることにより、同アッパハウジング24の上端部24a(図2における上側の端部)近傍まで延設されている。
【0023】
なお、出力軸26は、その一端が差動機構27に連結される第1の軸部材32と、一端にピニオン歯10aが形成された第2の軸部材33とを、トーションバー34を介して連結することにより形成されている。そして、トルクセンサ16は、そのトーションバー34の捻れ角を測定することにより、操舵系に入力される操舵トルクを検出するように構成されている。
【0024】
一方、入力軸25は、アッパハウジング24の上端部24aに設けられた軸受35により回転自在に支承されている。そして、差動機構27は、同モータ28の軸方向におけるステアリング側(図2における上側)に並置されている。
【0025】
この差動機構27には、同軸に並置されたステイサーキュラスプライン41及びドライブサーキュラスプライン42と、これら各サーキュラスプライン41,42と部分的に噛み合うように同軸配置された筒状のフレクスプライン43と、モータ駆動によりフレクスプライン43の噛合部を回転させる波動発生器44とからなる波動歯車機構45が用いられている。
【0026】
各サーキュラスプライン41,42には、互いに異なる歯数が設定されており、フレクスプライン43は、略楕円状に撓められた状態で各サーキュラスプライン41,42の内側に配置されている。これにより、フレクスプライン43は、その外歯が該各サーキュラスプライン41,42の内歯とそれぞれ部分的に噛合される。また、波動発生器44は、フレクスプライン43の内側に配置されており、モータ28に駆動されて上記撓められたフレクスプライン43の略楕円形状、即ち両サーキュラスプライン41,42との噛合部を回転させるように構成されている。そして、モータ28側に配置されたステイサーキュラスプライン41には、入力軸25が連結されるとともに、アッパハウジング24の上端部24a側に配置されたドライブサーキュラスプライン42には、両サーキュラスプライン41,42よりも軸方向における上端部24a側に突出された出力軸26の一端が連結されている。
【0027】
なお、本実施形態では、出力軸26(第1の軸部材32)は、同出力軸26の外周に嵌合される筒状部46aと、その外周から径方向外側に延設されてドライブサーキュラスプライン42の内周に嵌合されるフランジ部46bとからなる連結部材46を介してドライブサーキュラスプライン42に連結されている。また、入力軸25の内端には、その内径が各サーキュラスプライン41,42の外径よりも大径に形成された筒状部25aが形成されており、入力軸25は、この筒状部25a内に波動歯車機構45及び連結部材46を収容する態様で、その内周がステイサーキュラスプライン41の外周に圧入嵌合されることにより、同ステイサーキュラスプライン41と連結されている。
【0028】
そして、このように入力軸25及び出力軸26、並びにモータシャフト30に対してそれぞれ連結された波動歯車機構45をモータ駆動することにより、ステアリング2と転舵輪12との間の伝達比(ギヤ比)を変更することが可能とされている。
【0029】
詳しくは、ステアリング操作に伴う入力軸25の回転は、該入力軸25に連結されたステイサーキュラスプライン41からフレクスプライン43を介してドライブサーキュラスプライン42に伝達され、これにより出力軸26へと伝達される。また、波動発生器44がモータ28によって駆動され、フレクスプライン43の楕円形状、即ち両サーキュラスプライン41,42との噛合部が回転することにより、両サーキュラスプライン41,42間の歯数差に基づく回転差が、モータ駆動に基づく回転として上記ステアリング操作に基づく回転に上乗せされて出力軸26へと伝達される。これにより、入力軸25と出力軸26との間の回転伝達比、即ちステアリング2と転舵輪12との間の伝達比を変更することが可能となっている。
【0030】
また、伝達比可変装置18は、モータ28の軸方向における反ステアリング側(図2における下側)に、ピニオンハウジング20に対してモータシャフト30を回転不能にロックするロック装置51を備えている。そして、このロック装置51の作動により、必要に応じて、その伝達比を機械的に固定することが可能となっている。図3に示すように、ロック装置51は、モータシャフト30に固定されたロックホルダ52と、該ロックホルダ52(の回転)を拘束可能なロックアーム53と、該ロックアーム53を駆動するソレノイド54とを備えている。
【0031】
ロックホルダ52は、略円環状に形成されるとともに、モータシャフト30の一端(ラック軸5側の軸方向端部)において同モータシャフト30と同軸に固定されている(図2参照)。そして、ロックホルダ52の外周面52aには、その厚み方向両側に開口した複数(本実施形態では4つ)の係合溝56が凹設されている。
【0032】
また、モータシャフト30とロックホルダ52との間には、トルクリミットリング57が介在されている。本実施形態のトルクリミットリング57は、長尺状の金属板を略環状に湾曲させることにより形成されており、その環状のリング部からは径方向内側に突出する複数の凸部58(図4参照)が形成されている。そして、トルクリミットリング57は、その内周面(凸部58)とモータシャフト30との摩擦抵抗に基づいてモータシャフト30とロックホルダ52との相対回転を規制する。一方、トルクリミットリング57は、所定値以上のトルク入力がある場合には、その内周面が滑り面となることにより、モータシャフト30に対して相対回転することで上記モータシャフト30とロックホルダ52との相対回転を許容する、即ちトルクリミッタとしての機能を果たすようになっている。
【0033】
ロックアーム53は、ロックホルダ52の径方向外側に配置された支持軸59に対して、同支持軸59の軸心を中心として回動可能に軸支されている。このロックアーム53の一端には、ロックホルダ52の外周面に向かって突出する係合爪61が設けられている。一方、同ロックアーム53の他端には、ソレノイド54の駆動によりその軸方向に沿って進退するプランジャ62が連結されている。なお、この支持軸59及びソレノイド54は、アッパハウジング24に固定されたモータ28のモータハウジング28a上に固定されている(図2参照)。そして、ロックアーム53は、支持軸59の周囲に装着された捩りコイルバネ63の弾性力によって、その係合爪61側の端部がロックホルダ52側に向かって回動するように付勢されている。
【0034】
すなわち、通常状態(非ロック状態)において、ロックアーム53は、ソレノイド54への通電によって、捩りコイルバネ63の弾性力に抗してその係合爪61がロックホルダ52の径方向外側に配置されるように駆動されており、モータシャフト30はアッパハウジング24に対して回転可能とされている。このように非ロック状態では、モータシャフト30が回転可能であるため、上記のようにステアリング操作に基づく入力軸25の回転にモータ駆動に基づく回転が上乗せされて出力軸26に伝達される。
【0035】
一方、ソレノイド54への通電が停止されることにより、ロックアーム53は、その係合爪61側の端部がロックホルダ52側に向かって回動する。これにより、係合爪61がロックホルダ52側の係合溝56に係合することで、ロックホルダ52をアッパハウジング24に対して回転不能に拘束するロック状態となる。このようにロック状態では、モータシャフト30の回転が拘束されるため、モータ28の停止時において、モータシャフト30がステータ31に対して空転(自由回転)することにより入力軸25と出力軸26との間のトルク伝達が不能になることが防止される。
【0036】
(ロックホルダずれ対策)
次に、本実施形態の伝達比可変装置18において、ロックホルダ52の係合溝56にロックアーム53の係合爪61が係合する瞬間(ロック時)に、ロックホルダ52に作用する衝撃トルクにより、モータシャフト30とロックホルダ52とが相対回転する所謂ロックホルダずれを抑制するための構成について説明する。
【0037】
図3に示すように、ロック装置51には、ロックホルダ52とモータシャフト30とを互いに相対回転させるトルクが瞬間的に作用した場合には、これらの相対回転を規制するとともに、ロックホルダ52とモータシャフト30とを互いに相対回転させる力が継続して作用した場合には、これらの相対回転を許容するキー機構71が設けられている。
【0038】
詳述すると、図4に示すように、このキー機構71は、モータシャフト30の外周面30aに形成されたシャフト凹部72、初期組み付け状態でこのシャフト凹部72に対面するようにロックホルダ52の内周面52bに形成されたホルダ凹部73、これらシャフト凹部72とホルダ凹部73とを連通するようにトルクリミットリング57に形成された連通孔74、これらシャフト凹部72、ホルダ凹部73及び連通孔74により区画される収容室75を有している。また、キー機構71は、この収容室75内に、モータシャフト30及びロックホルダ52の径方向(図4における左右方向)に移動可能に収容される係合部材76を備えている。さらに、シャフト凹部72は、ロックホルダ52がモータシャフト30に対して相対回転可能となるように係合部材76を収容可能に形成されるとともに、ホルダ凹部73は、ロックホルダ52とモータシャフト30とが相対回転不能となるように係合部材76の一部がシャフト凹部72内に突出した状態で同係合部材76を収容可能に形成されている。そして、係合部材76は、モータシャフト30とロックホルダ52とが相対回転可能となる位置(図4参照)と、これらが相対回転不能となる位置(図5参照)との間を移動可能に構成されている。
【0039】
具体的には、シャフト凹部72は、モータシャフト30の径方向に延びるとともに、断面円形の穴状に形成されている。また、シャフト凹部72は、その内径が同シャフト凹部72の軸方向に沿って略一定になるとともに、その軸線がモータシャフト30の径方向と平行になるように形成されている。一方、係合部材76は、シャフト凹部72の内径のよりも僅かに小さな直径の球形状に形成されており、収容室75内でモータシャフト30及びロックホルダ52の径方向に転動可能に構成されている。そして、シャフト凹部72の深さ(モータシャフト30の径方向に沿った長さ)は、係合部材76の直径よりも深く形成されており、係合部材76はシャフト凹部72の底部72aに接触した状態で、モータシャフト30の外周面30aよりも径方向外側に突出しないようになっている。すなわち、シャフト凹部72は、係合部材76が同シャフト凹部72の底部72aに接触した状態でトルクリミットリング57の内周面(凸部58)に接触せず、トルクリミットリング57及びロックホルダ52がモータシャフト30に対して相対回転可能となるように係合部材76を収容可能に構成されている。
【0040】
ホルダ凹部73は、ロックホルダ52(モータシャフト30)の径方向に延びるとともに、断面円形の穴状に形成されている。また、ホルダ凹部73は、その深さが係合部材76の直径よりも浅く形成されており、係合部材76の一部のみが収容されるように形成されている。つまり、ホルダ凹部73は、係合部材76が収容室75における最も径方向外側の位置にした状態でその一部がシャフト凹部72内に突出するように形成されており、係合部材76がシャフト凹部72に引っ掛かることでロックホルダ52とモータシャフト30とが相対回転不能となるようになっている。なお、本実施形態では、ホルダ凹部73の深さは、係合部材76の直径の半分程度の深さに形成されている。そして、ホルダ凹部73は、ロックホルダ52の径方向内側に向かうにつれて拡径するようなテーパ状に形成されている。そして、ホルダ凹部73は、係合部材76に当接した状態で、ロックホルダ52がモータシャフト30に対して相対回転する(図4においてロックホルダ52がモータシャフト30に対して略上下方向に相対移動する)ことにより、係合部材76をシャフト凹部72内に移動させるようになっている。
【0041】
より具体的には、ホルダ凹部73は、係合部材76における同ホルダ凹部73から同係合部材76に作用する力の作用線L上の点Aが、モータシャフト30の外周面30aよりも径方向内側に位置するように形成されている。換言すれば、係合部材76におけるホルダ凹部73の内側面との接触点Bと中心Oを挟んで対向する点Aが、モータシャフト30の外周面30aよりも径方向内側に位置するように形成されている。なお、図4において、ホルダ凹部73から係合部材76に作用する力を太線で示すとともに、作用線Lを破線で示す。
【0042】
トルクリミットリング57の連通孔74は、ロックホルダ52の内周面52b上におけるホルダ凹部73の内径と略等しい丸孔としてトルクリミットリング57を貫通して形成されており、係合部材76をシャフト凹部72内に移動させるようになっている。
【0043】
このように構成されたロック装置51では、係合部材76がホルダ凹部73内に収容され、その一部がシャフト凹部72内に突出した状態で、モータシャフト30とロックホルダ52とが互いに相対回転しようとすると、係合部材76はホルダ凹部73により押圧されて径方向内側(シャフト凹部72側)に移動しようとする。このとき、係合部材76は、瞬時にはシャフト凹部72内に移動できないため、図4に示すように、ホルダ凹部73内に収容された係合部材76の一部がシャフト凹部72に引っ掛かることで、モータシャフト30とロックホルダ52とが瞬間的に相対回転不能となる。換言すれば、ロックホルダ52に作用したトルクは、ホルダ凹部73から係合部材76を介してシャフト凹部72に伝達されることで、ロックホルダ52とモータシャフト30とが相対回転することが瞬間的に規制されるようになっている。そして、モータシャフト30とロックホルダ52とを相対回転させる力が継続して作用すると、図5に示すように、係合部材76はホルダ凹部73及びトルクリミットリング57に押圧されることでシャフト凹部72内に収容され、ロックホルダ52はモータシャフト30に対して相対回転することが可能になるようになっている。
【0044】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)キー機構71は、シャフト凹部72、ホルダ凹部73及びこれらシャフト凹部72とホルダ凹部73とを連通するようにトルクリミットリング57に形成された連通孔74により区画される収容室75内に収容される係合部材76を備えた。このシャフト凹部72を、モータシャフト30とロックホルダ52とが互いに相対回転可能となるように係合部材76を収容可能に形成するとともに、ホルダ凹部73を、モータシャフト30とロックホルダ52とが相対回転不能となるように係合部材76の一部がシャフト凹部72内に突出した状態で該係合部材76を収容可能に形成した。そして、係合部材76を、モータシャフト30とロックホルダ52とが相対回転可能となる位置と相対回転不能となる位置との間で移動可能に構成した。
【0045】
上記構成によれば、ロックホルダ52ずれが生じ易い状態、すなわちモータシャフト30が高速で回転している状態では、係合部材76は遠心力により径方向外側に移動してホルダ凹部73内に収容され、モータシャフト30とロックホルダ52とが相対回転不能となるように係合部材76の一部がシャフト凹部72内に突出した状態となる。そのため、モータシャフト30とロックホルダ52とが互いに相対回転し始めるときには、上記のようにホルダ凹部73に収容された状態の係合部材76がシャフト凹部72に引っ掛かることで、瞬間的に、これらが相対回転不能となる。ここで、ロック時に生じる衝撃トルクは、極めて短い間だけロックホルダ52に作用するものであるため、係合部材76によってモータシャフト30とロックホルダ52とが瞬間的に相対回転不能となることにより、ロック時の衝撃トルクによるロックホルダ52ずれを抑制できる。そして、これにより、信頼性の高い車両用操舵装置1を提供できる。
【0046】
また、モータシャフト30とロックホルダ52とを相対回転させるトルクが継続して作用し、係合部材76がシャフト凹部72内に収容されることにより、モータシャフト30とロックホルダ52とが互いに相対回転なり、トルクリミットリング57によりこれらの相対回転が許容される。これにより、ロック状態で差動機構27に異常が発生した場合において、ステアリング操作が妨げられることを防止できる。
【0047】
(2)係合部材76を収容室75内で転動可能に構成したため、係合部材76は、転動することにより収容室75内を移動するようになる。従って、長期に亘る使用により係合部材76が収容室75内を繰り返し移動しても、例えば係合部材76が摺動することにより収容室75内を移動する場合に比べ、係合部材76やモータシャフト30等が摩耗し難くなる。これにより、例えば摩耗粉がトルクリミットリング57とモータシャフト30との間に詰まって、モータシャフト30とロックホルダ52とが円滑に相対回転できなくなることを防止できる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図6に示すように、本実施形態のキー機構71は、係合部材76をホルダ凹部73側に付勢する弾性部材81を備えており、係合部材76をホルダ凹部73側に付勢するように構成されている。
【0050】
詳述すると、本実施形態のシャフト凹部72は、モータシャフト30の径方向に貫通するとともに、断面円形の穴状に形成されている。また、シャフト凹部72は、その内径が同シャフト凹部82の軸方向(図6における左右方向)に沿って略一定に形成されるとともに、その軸線がモータシャフト30の径方向と平行になるように形成されている。本実施形態では、シャフト凹部82の深さ(モータシャフト30の厚み)は、収容室75における最も径方向外側に位置した状態の係合部材76が弾性部材81に接触するような深さに形成されている。
【0051】
また、弾性部材81は、ゴム等から構成されるとともに円筒状に形成されている。そして、弾性部材81は、シート部としての側壁部83がシャフト凹部82におけるモータシャフト30の内周面30b側の開口を閉塞するように、同モータシャフト30の内周面30bに固定されている。
【0052】
このように構成されたロック装置51では、上記第1実施形態と同様に、ホルダ凹部73内に挿入された係合部材76がシャフト凹部82に引っ掛かることにより、ロックホルダ52がモータシャフト30に対して瞬間的に相対回転不能となるようになっている。また、モータシャフト30とロックホルダ52とを相対回転させる力が継続的にして作用すると、図7に示すように、係合部材76は、ホルダ凹部73により押圧されて弾性部材81を弾性変形させることにより、モータシャフト30とロックホルダ52とが互いに相対回転可能となるようにシャフト凹部82内に収容されるようになっている。
【0053】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2)の作用効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(3)キー機構71は、係合部材76をホルダ凹部73側に付勢する弾性部材81を備えたため、係合部材76が同弾性部材81によりホルダ凹部73側に付勢され、確実に係合部材76がホルダ凹部73内に収容されるようなる。これにより、ロック時の衝撃トルクによるロックホルダずれを確実に抑制できる。また、係合部材76がシャフト凹部側に移動する際に、弾性部材81を弾性変形させる必要があることから、同係合部材76がシャフト凹部内に収容され難くなる。従って、上記第1実施形態のように弾性部材81を用いない構成に比べ、係合部材76によりモータシャフト30とロックホルダ52との相対回転が規制される状態を長く維持することができるようになり、モータシャフト30とロックホルダ52との相対回転を十分に抑制できる。
【0054】
(4)シャフト凹部82を、モータシャフト30の径方向に貫通する穴状に形成した。そして、側壁部83がシャフト凹部82におけるモータシャフト30の内周面30b側の開口を閉塞するように、弾性部材81をモータシャフト30の内周面30bに設けたため、シャフト凹部82内に弾性部材81を収容しなくともよくなる。そのため、例えばシャフト凹部82を外周面側のみに開口するように形成し、同シャフト凹部82内に係合部材76及びコイルスプリング等の弾性部材を一緒に挿入する場合に比べ、伝達比可変装置18の組み付け性の向上を図ることができる。
【0055】
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記第1実施形態において、例えば図8に示すように、シャフト凹部72におけるモータシャフト30の外周面30a側の開口部91を、径方向外側に向かうにつれて拡径するテーパ状に形成してよい。このように構成することで、係合部材76がシャフト凹部82内に移動し難くなるため、確実にロックホルダずれを防止できるようになる。
【0056】
また、例えば図9に示すように、シャフト凹部82におけるモータシャフト30の外周面30a側の開口部91を、径方向外側に向かうにつれて縮径するテーパ状に形成してよい。このように構成することで、係合部材76がシャフト凹部82内に移動し易くなるため、容易にモータシャフト30とロックホルダ52とが相対回転可能な状態となり、ロック状態で差動機構27に異常が発生した場合において、運転者が速やかに操舵できるようになる。
【0057】
さらに、シャフト凹部72の形状は、断面円形の穴状に限らず、例えば断面四角形の穴状や溝状等に形成してもよく、モータシャフト30とロックホルダ52とが互いに相対回転可能となるように係合部材76を収容できれば、どのような形状としてもよい。
【0058】
上記第2実施形態においても同様に、例えばシャフト凹部82におけるモータシャフト30の外周面30a側の開口部を、径方向外側に向かうにつれて拡径又は縮径するテーパ状に形成してよく、また、シャフト凹部82を例えば断面四角形の穴状等の形状にしてもよい。
【0059】
・上記各実施形態では、ホルダ凹部73を径方向内側に向かうにつれて拡径するテーパ状に形成した。しかし、これに限らず、モータシャフト30とロックホルダ52とが相対回転不能となるように係合部材76の一部がシャフト凹部72,82内に突出した状態で同係合部材76を収容し、且つモータシャフト30とロックホルダ52とが互いに相対回転する際に、係合部材76をシャフト凹部72,82側に移動させるような形状であれば、ホルダ凹部73をどのような形状にしてもよい。
【0060】
・上記第1実施形態において、シャフト凹部82に例えばコイルスプリング等の弾性部材を設け、係合部材76をホルダ凹部73側に付勢するようにしてもよい。
・上記第2実施形態では、弾性部材81を円筒状に形成したが、これに限らず、シャフト凹部82を覆うシート部を有していれば、例えば弾性部材を平板状等の他の形状に構成しもよい。
【0061】
・上記各実施形態では、係合部材を球形状の係合部材76により構成することで、収容室75内を転動可能とした。しかし、これに限らず、例えば係合部材を円柱状のコロにより構成するとともに、シャフト凹部72,82を断面四角形状に形成することで、係合部材が収容室75内を転動可能にしてもよい。また、係合部材が収容室75内を摺動することにより、モータシャフト30の径方向に移動するようにしてもよい。
【0062】
・上記各実施形態では、トルクリミットリング57がモータシャフト30に対して相対回転することでモータシャフト30とロックホルダ52との相対回転を許容するようにした。しかし、これに限らず、トルクリミットリング57がロックホルダ52に対して相対回転することで同モータシャフト30とロックホルダ52との相対回転を許容するようにしてもよい。
【0063】
・上記各実施形態では、ロック装置51にキー機構71を1つだけ設けたが、これに限らず、ロック装置51に2以上のキー機構71を設けるようにしてもよい。
・上記各実施形態では、差動機構27には、同軸に並置された筒状をなす一対のサーキュラスプライン41,42を有する所謂リング型の波動歯車機構45を用いたが、一のサーキュラスプラインと有底筒状に形成されたフレクスプラインとの歯数差に基づく回転差を減速比として取り出す所謂カップ型の波動歯車機構を用いるものに適用してもよい。
【0064】
・上記実施形態では、本発明を、車両用操舵装置1の伝達比可変装置18に具体化したが、これ以外の用途に用いる伝達比可変装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…車両用操舵装置、14,28…モータ、18…伝達比可変装置、20…ピニオンハウジング、23…ロアハウジング、24…アッパハウジング、25…入力軸、26…出力軸、27…差動機構、30…モータシャフト、30a,52a…外周面、30b,52b…内周面、45…波動歯車機構、51…ロック装置、52…ロックホルダ、53…ロックアーム、56…係合溝、57…トルクリミットリング、61…係合爪、71…キー機構、72,82…シャフト凹部、73…ホルダ凹部、74…連通孔、75…収容室、76…係合部材、81…弾性部材、83…側壁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸の回転にモータ駆動に基づく回転を上乗せして出力軸に伝達する差動機構と、前記差動機構及びモータを収容するとともに前記入力軸の回転によって回転されないハウジングと、前記ハウジングとモータシャフトとを相対回転不能にロックするロック装置とを備え、前記ロック装置は、前記モータシャフトと一体に設けられるとともに外周面に係合溝が形成されたロックホルダ、及び前記係合溝に係合することにより前記ロックホルダの回転を拘束可能なロックアームを有し、前記モータシャフトと前記ロックホルダとの間には、摩擦抵抗に基づいて前記モータシャフトと前記ロックホルダとの相対回転を規制又は許容するトルクリミットリングが介在される伝達比可変装置であって、
前記モータシャフトの外周面に形成されたシャフト凹部、初期組み付け状態で該シャフト凹部に対面するように前記ロックホルダの内周面に形成されたホルダ凹部、前記シャフト凹部と前記ホルダ凹部とを連通するように前記トルクリミットリングに形成された連通孔、これらシャフト凹部、ホルダ凹部及び連通孔により区画される収容室、該収容室内に収容される係合部材を備え、
前記シャフト凹部は、前記モータシャフトと前記ロックホルダとが相対回転可能となるように前記係合部材を収容可能に形成されるとともに、前記ホルダ凹部は、前記モータシャフトと前記ロックホルダとが相対回転不能となるように前記係合部材の一部が前記シャフト凹部内に突出した状態で該係合部材を収容可能に形成され、
前記係合部材は、前記モータシャフトと前記ロックホルダとが相対回転可能となる位置と相対回転不能となる位置との間を移動可能であることを特徴とする伝達比可変装置。
【請求項2】
請求項1に記載の伝達比可変装置において、
前記係合部材は、前記収容室内で転動可能に構成されたことを特徴とする伝達比可変装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の伝達比可変装置において、
前記係合部材を前記ホルダ凹部側に付勢する弾性部材を備えたことを特徴とする伝達比可変装置。
【請求項4】
請求項3に記載の伝達比可変装置において、
前記シャフト凹部は、前記モータシャフトの径方向に貫通して形成され、
前記弾性部材は、前記モータシャフトの内周面に設けられるとともに、前記シャフト凹部を閉塞するシート部を有することを特徴とする伝達比可変装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の伝達比可変装置を備えた車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−36911(P2012−36911A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174475(P2010−174475)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】