説明

伝達比可変装置

【課題】シンプルな構成でコストを抑えつつ、伝達比の変化を精密にできる伝達比可変装置を提供する。
【解決手段】伝達比可変装置において、入力側レバー28は、入力軸18aに連結し、径方向に延びる入力側ガイド溝を有する。出力側レバー30は、出力軸18bに連結し、径方向に延びる出力側ガイド溝を有する。伝達ピン26は、入力側ガイド溝と出力側ガイド溝とに挿入される。固定部材は、入力軸18aの回転角に応じて伝達ピン26の出力軸18b周りの移動をガイドする固定側ガイド溝25を有し、車体に固定される。固定側ガイド溝25の形状により、入力軸18aの回転角に応じて入力軸18aから出力軸18bへの伝達比を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングシャフトに取り付けられる伝達比可変装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング装置には、ステアリングホイールの操舵を変化させて出力する可変舵角比操舵装置が設けられる(特許文献1参照)。特許文献1の可変舵角比操舵装置は、入力軸と、出力軸と、入力軸と出力軸を連結する継手と、入力軸の回転中心を変位させる舵角比制御用電動機とを備える。この可変舵角比操舵装置は、舵角比制御用電動機により入力軸の回転中心を変位させて、入力軸の回転中心と出力軸の回転中心との距離を変化させることで、舵角比を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−16317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の可変舵角比操舵装置では、電動機を用いて入力軸の回転中心と出力軸の回転中心との距離を変化させるため、搭載スペースを必要とし、コストも高くなる。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シンプルな構成でコストを抑えつつ、伝達比の変化を精密にできる伝達比可変装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の伝達比可変装置は、操舵により回転する入力軸と、出力軸と、入力軸に連結し、径方向に延びる入力側ガイド溝を有する入力側レバーと、出力軸に連結し、径方向に延びる出力側ガイド溝を有する出力側レバーと、入力側ガイド溝と出力側ガイド溝とに挿入される伝達ピンと、入力軸の回転角に応じて伝達ピンの出力軸周りの移動をガイドする固定側ガイド溝を有し、車体に固定される固定部材と、を備える。
【0007】
この態様によると、伝達ピンを固定側ガイド溝に沿って移動させ、伝達ピンと出力軸との間隔を変化させることができる。これにより、シンプルな構成でコストを抑えつつ、入力軸から出力軸への伝達比を変化させることができる。また固定側ガイド溝の形状によって伝達比を精密に変化させることができる。
【0008】
固定側ガイド溝の形状により、入力軸の回転角に応じて入力軸から出力軸への伝達比を変化させてもよい。固定側ガイド溝は、第1固定側ガイド溝と、入力軸から出力軸への伝達比が第1固定側ガイド溝より大きい第2固定側ガイド溝を有してもよい。入力軸が初期位置から所定の回転角になると、伝達ピンを第1固定側ガイド溝から第2固定側ガイド溝へ移行させてもよい。これにより、入力軸の回転角が大きくなると伝達ピンを第2固定側ガイド溝に移行させて伝達比が小さくなることを抑えることができるため、操舵角が大きい場合のハンドル回しを容易にできる。
【0009】
固定側ガイド溝は、入力軸の回転角の初期位置を含む所定の範囲内における変化に対して、出力軸と伝達ピンとの間隔が略一定となるようにガイドする形状に定められてよい。これにより初期位置近傍での伝達比の変化を抑え、運転者が操舵感覚を容易に把握できるよう操舵フィーリングを向上することができる。
【0010】
伝達ピンは、入力軸の回転により入力側ガイド溝、固定側ガイド溝および出力側ガイド溝に沿って出力軸の周りを回転して、出力軸に入力軸の回転を伝達し、出力軸と伝達ピンの間隔に応じて入力軸から出力軸への伝達比が変化してもよい。これにより固定側ガイド溝の形状によって、出力軸と伝達ピンの間隔を変えることができ、出力軸と伝達ピンの間隔に応じた伝達比に設定できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の伝達比可変装置によれば、シンプルな構成でコストを抑えつつ、伝達比の変化を精密にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る操舵装置の構成の概略を説明するための説明図である。
【図2】実施形態に係る伝達比可変装置の断面図である。
【図3】図2の伝達比可変装置における線分A−Aの断面図である。
【図4】伝達ピン、入力側レバー、出力側レバー、固定側ガイド溝の関係を説明するための説明図である。
【図5】入力軸を反時計回りに回転させた伝達比可変装置の内部の状態を示す図である。
【図6】入力軸を時計回りに回転させた伝達比可変装置の内部の状態を示す図である。
【図7】入力軸が時計回り方向に回転した場合の伝達比可変装置の伝達比の変化を示す図である。
【図8】変形例の伝達比可変装置の断面図である。
【図9】図8に示す伝達比可変装置の線分B−Bの断面図である。
【図10】図9に示す伝達比可変装置とは逆方向に入力軸を回転させた場合の伝達比可変装置の断面図である。
【図11】伝達比可変装置の変形例を示す図である。
【図12】変形例の伝達比可変装置の断面図である。
【図13】入力軸が時計回り方向に回転した場合の伝達比可変装置の伝達比の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施形態に係る操舵装置10の構成の概略を説明するための説明図である。操舵装置10は、転舵ギアボックス14、減速ギア16、ステアリングシャフト18、伝達比可変装置20およびステアリングホイール22を備える。
【0014】
ステアリングホイール22は、車両室内に設けられ、運転者によって回動操作される。ステアリングシャフト18は、ステアリングホイール22とともに回転するように一端がステアリングホイール22に連結されており、ステアリングホイール22の回転を伝達比可変装置20に伝達する回転軸として機能する。ステアリングシャフト18は、ステアリングホイール22と伝達比可変装置20とを連結する入力軸18aと、伝達比可変装置20と減速ギア16を連結する出力軸18bと、減速ギア16と転舵ギアボックス14を連結する下流軸18cとを有する。
【0015】
伝達比可変装置20は、入力軸18aから入力された回転角を変えて出力軸18bに伝達する。具体的な構成は後ほど説明する。減速ギア16は、出力軸18bからの入力を減速して下流軸18cに出力する。
【0016】
転舵ギアボックス14は、ステアリングホイール22の回動を車輪12の転舵運動に変換する。たとえば転舵ギアボックス14はラックアンドピニオンギアを有し、ステアリングホイール22の回転が転舵軸の軸方向の移動に変換される。また転舵ギアボックス14は前輪および後輪に接続され、前輪および後輪の転舵を行う。
【0017】
図2は、実施形態に係る伝達比可変装置20の断面図を示す。伝達比可変装置20は、ハウジング24、伝達ピン26、入力側レバー28、出力側レバー30、操舵側ギア32、および切替機構42を備える。切替機構42は、切替側ギア34、軸受36、切替溝形成部38、および切替軸40を有する。
【0018】
入力側レバー28は、入力軸18aに連結して入力軸18aとともに回転し、入力軸18aから径方向に延びる。また入力側レバー28は、入力軸18aとの連結部分から径方向に延びる入力側ガイド溝28aを有する。
【0019】
出力側レバー30は、出力軸18bに連結して出力軸18bとともに回転し、出力軸18bから径方向に延びる。出力側レバー30は、出力軸18bとの連結部分から径方向に延びる出力側ガイド溝30aを有する。
【0020】
ハウジング24は、箱状に形成され、車体に固定されて固定部材として機能する。ハウジング24の上下面には固定側ガイド溝25が形成される。固定側ガイド溝25には伝達ピン26が挿通される。固定側ガイド溝25は、入力軸18aおよび出力軸18bの周りを囲うように形成される。固定側ガイド溝25は、入力軸18aの回転角に応じて伝達ピン26の入力軸18aおよび出力軸18b周りの移動をガイドする。固定側ガイド溝25について図3を参照する。
【0021】
図3は、図2の伝達比可変装置20における線分A−Aの断面図を示す。なお、伝達ピン26の位置は図2に示す態様と異なる。図3に示す固定側ガイド溝25は、第1固定側ガイド溝25aと、第1固定側ガイド溝25aを囲むように形成された第2固定側ガイド溝25bと、第1切替溝44と、第2切替溝46とを有する。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0022】
第1固定側ガイド溝25aおよび第2固定側ガイド溝25bは一部が切り欠かれた略楕円形に形成される。第1固定側ガイド溝25aの間には入力軸18aおよび出力軸18bが配される。
【0023】
第1固定側ガイド溝25aおよび第2固定側ガイド溝25bの切り欠かれた部分に切替機構42が配される。切替機構42はハウジング24に連結するように設けられる。切替機構42は、入力軸18aに設けられた操舵側ギア32と噛合する切替側ギア34を有し、これにより入力軸18aの回転角に応じて回転する。切替溝形成部38は円盤形状に形成され、第1切替溝44および第2切替溝46が形成される。切替溝形成部38の外周端はハウジング24に摺動可能に係合される。切替溝形成部38は切替軸40に回動可能に支持される。これらの各溝は入力軸18aおよび出力軸18bに対して垂直に形成される。
【0024】
第1切替溝44および第2切替溝46は、入力軸18aの回転角が所定の回転角になると、切替溝形成部38が回転して、第1固定側ガイド溝25aと第2固定側ガイド溝25bとを連通する位置に配置される。この伝達比可変装置20の動作について説明する。
【0025】
図4は、伝達ピン26、入力側レバー28、出力側レバー30、固定側ガイド溝25の関係を説明する説明図である。出力軸18bは、入力軸18aと平行であるが同軸でない。伝達ピン26は、入力軸18aの回転により入力側ガイド溝28a、固定側ガイド溝および出力側ガイド溝に沿って出力軸18bの周りを回転して出力側レバー30を回転させ、入力軸18aでの回転を出力軸18bに伝達する。
【0026】
具体的には、入力軸18aが反時計回りに回転すると、入力側レバー28も反時計回りに回転する。これにより伝達ピン26も反時計回りに回転するが、固定側ガイド溝25にガイドされて、固定側ガイド溝25に沿って回転する。そのため、伝達ピン26は入力側ガイド溝28aに沿って径方向にも移動する。
【0027】
伝達ピン26の移動により出力側レバー30も反時計回りに回転する。このとき伝達ピン26は出力側ガイド溝30aを径方向に移動する。これにより、入力軸18aの回転を出力軸18bに出力しつつ入力軸18aから出力軸18bへの伝達比を変化させることができる。
【0028】
なお、入力軸18aから出力軸18bへの伝達比は、以下のように定められる。入力軸18aの回転角θと出力軸18bの回転角φの関係は、入力軸18aおよび出力軸18bの軸ずれ幅Lと、伝達ピン26と出力軸18bとの間隔Rとにより定まる。なお間隔Rは伝達ピン26の回転半径であってよい。
【0029】
入力軸18aの回転角θと出力軸18bの回転角φの関係は、下記式1および式2となる。なお、e=L/Rとし、eを偏心率という。
0≦θ≦π[rad]のとき、
φ=acos(e・sinθ+cosθ・√(1−e・sinθ)) 式1
π<θ≦2π[rad]のとき、
φ=2π−acos(e・sinθ+cosθ・√(1−e・sinθ)) 式2
【0030】
入力軸18aおよび出力軸18bの軸ずれ幅Lはあらかじめ設定された固定値であるため、出力軸18bと伝達ピンの間隔に応じて入力軸18aから出力軸18bへの伝達比が変化する。たとえば出力軸18bと伝達ピン26の間隔が大きくなると、入力軸18aから出力軸18bへの伝達比Δφ/Δθは大きくなり、出力軸18bと伝達ピン26の間隔が小さくなると、入力軸18aから出力軸18bへの伝達比Δφ/Δθは小さくなる。
【0031】
また、偏心率eが大きくなると、入力軸18aの回転角θに応じた伝達比の変化が大きくなり、偏心率eが小さくなると、入力軸18aの回転角θに応じた伝達比の変化が小さくなる。
【0032】
図3に戻る。図3に示す伝達ピン26の位置は、初期位置であって、ステアリングホイール22の操舵角および車輪12の転舵角がゼロである場合である。初期位置の伝達ピン26は、第1固定側ガイド溝25aの中間に位置する。初期位置では出力軸18bと伝達ピン26の間隔が最も小さく、入力軸18aから出力軸18bへの伝達比は最も小さい。つまり、初期位置近傍でステアリングホイール22を回しても、車輪12の転舵角は比較的小さくなるように設定され、操舵角に対する転舵角の反応が鈍くなるように設定される。これにより車両が高速で直進している場合に、ステアリングホイール22を回しても大きく転舵することを抑えることができる。伝達ピン26が初期位置から左右に約±160度回転すると、切替機構42の第1切替溝44または第2切替溝46に入る。
【0033】
図5は、入力軸18aを反時計回りに回転させた伝達比可変装置20の内部の状態を示す。ステアリングホイール22を反時計回りに回転させて入力軸18aを回転させると、入力側レバー28が回転して伝達ピン26が第1固定側ガイド溝25aに沿って回転する。このとき切替軸40も入力軸18aとともに反時計回りに回転し、図示するように第1固定側ガイド溝25aと第2切替溝46とが連通する。
【0034】
さらにステアリングホイール22を反時計回りに回転させると、第2切替溝46と第2固定側ガイド溝25bが連通し、伝達ピン26が第2固定側ガイド溝25bに移行する。これにより伝達ピン26と出力軸18bの間隔が大きくなるため、入力軸18aから出力軸18bへの伝達比は大きくなる。
【0035】
図6は、入力軸18aを時計回りに回転させた伝達比可変装置20の内部の状態を示す。ステアリングホイール22を時計回りに回転させて入力軸18aを回転させると、入力側レバー28が回転して伝達ピン26が第1固定側ガイド溝25aに沿って回転する。このとき切替軸40も入力軸18aとともに時計回りに回転し、図示するように第1固定側ガイド溝25aと第1切替溝44とが連通する。そして、伝達ピン26が第1切替溝44に移行する。
【0036】
さらにステアリングホイール22を時計回りに回転させると、第1切替溝44と第2固定側ガイド溝25bが連通し、伝達ピン26が第2固定側ガイド溝25bに移行する。これにより伝達ピン26と出力軸18bの間隔が大きくなるため、入力軸18aから出力軸18bへの伝達比は大きくなる。
【0037】
図7は、入力軸18aが時計回り方向に回転した場合の伝達比可変装置20の伝達比Δφ/Δθの変化を示す図である。第1波線48は、偏心率が一定である場合の伝達比の変化を示し、第2波線49は、実施形態の伝達比可変装置20における伝達比の変化を示す。なお、入力軸18aが反時計回りに回転した場合も第2波線49と同様に伝達比が変化をする。
【0038】
伝達比が1より小さければ、入力軸18aの回転を減速して出力軸18bに出力しており、θ=0度の初期位置において伝達比が最も大きくなっている。これにより、高速で直進している場合に、ステアリングホイール22を回転させても入力を減速して、大きく転舵しないようにできる。また、伝達比が1より大きければ、入力軸18aの回転を増速して出力軸18bに出力しており、初期位置からθ=180度まで、伝達比が徐々に大きくなる。これにより、ある程度大きく転舵させたい場合に操舵をアシストできる。
【0039】
第1波線48は、固定側ガイド溝の形状が偏心率一定で楕円形である場合を示し、伝達比の変化は360度周期で一様である。すなわちステアリングホイール22を1回転すると、初期位置に戻り、再び入力を減速するようになる。車両を運転する際にステアリングホイール22を1回転以上操舵する場合は、大きく転舵しようとするときであって、1回転操舵した際に、再び入力を減速するようになると操舵が煩瑣である。
【0040】
一方、第2波線49に示す伝達比可変装置20では、初期位置近傍では伝達比を小さくしている点は第1波線48と同じであるが、360度操舵しても初期位置と同様に伝達比が小さくならないように構成されている。これは、図3に示すように360度回転させると、伝達ピン26が第2固定側ガイド溝25bに移行するからである。伝達ピン26が第2固定側ガイド溝25bに移行すると、出力軸18bと伝達ピン26の間隔が大きくなって伝達比が大きくなる。これによりステアリングホイール22を初期位置から1回転操舵した場合に入力が大きく減速されることがなくなり、大きく操舵する場合のハンドル回しを容易にできる。
【0041】
また、第2波線49に示す伝達比可変装置20では入力軸18aの回転角θが180度以上になると、伝達比の変化を抑えるように構成されている。したがって伝達比の変化をより滑らかにでき、操舵フィーリングを向上することができる。
【0042】
図8は、変形例の伝達比可変装置120の断面図を示す。また図9は、図8に示す伝達比可変装置120の線分B−Bの断面図である。なお図9に示す伝達ピン26の位置は図8に示す伝達比可変装置120とは異なり、初期位置にある。伝達比可変装置120は、図2に示す伝達比可変装置20と切替機構142の構造が異なるが、その他の構成は同様である。
【0043】
切替機構142は、ハウジング24にスライド可能に連結される。切替機構142は、ソレノイドやモータなどの駆動部によって入力軸18aの回転角にもとづいてスライドする。切替機構142は、板状の切替溝形成部138と、第1切替溝144と、第2切替溝146とを有する。入力軸18aが反時計回りに回転する場合は図9に示すように、第1切替溝144により第1固定側ガイド溝25aと第2固定側ガイド溝25bが連通する。したがって、伝達ピン26が反時計回りに回転する場合に第1固定側ガイド溝25aから第2固定側ガイド溝25bに移行させることができる。
【0044】
図10は、図9に示す伝達比可変装置120とは逆方向に入力軸18aを回転させた場合の伝達比可変装置120の断面図を示す。入力軸18aが時計回りに回転させられており、切替機構142がスライドして第2切替溝146により第1固定側ガイド溝25aと第2固定側ガイド溝25bが連通する。図10の伝達ピン26は、時計回りに約190度回転した状態である。
【0045】
このように切替機構142によって、いずれの方向にステアリングホイール22を回転させても、第1固定側ガイド溝25aから第2固定側ガイド溝25bに伝達ピン26を移行させることができる。これにより、図7の第2波線に示すように伝達比を変化させることができ、同様の効果を得ることができる。
【0046】
図11は、伝達比可変装置120の変形例を示す。この伝達比可変装置120の切替機構142は、図10に示す第1切替溝144および第2切替溝146に加えて、第3切替溝148を有する。第3切替溝148は、第2固定側ガイド溝25bの両端を連通する。
【0047】
たとえば時計回りに入力軸18aが回転して、伝達ピン26が第2固定側ガイド溝25bに移行した後、さらに入力軸18aが時計回りに回転すると、切替機構142がスライドされて第2固定側ガイド溝25bの両端が第3切替溝148により連通される。これにより、初期位置の伝達比より大きい伝達比を保持しつつ、入力軸18aを何回転も回転可能となる。
【0048】
図12は、変形例の伝達比可変装置220の断面図である。伝達比可変装置220は、伝達比可変装置20と、固定側ガイド溝125の形状が異なる。図12に示す伝達ピン26は初期位置にある。
【0049】
固定側ガイド溝125は、ハウジング124に形成され、略楕円形の閉じた形状に形成される。また固定側ガイド溝125は、偏心率eが一定ではなく、伝達ピン26が移動すると所望の伝達比に変化するように形成されている。ここで、固定側ガイド溝125の具体的な形状について、図13を参照しつつ説明する。
【0050】
図13は、入力軸18aが時計回り方向に回転した場合の伝達比可変装置220の伝達比Δφ/Δθの変化を示す図である。第3波線64は、偏心率が一定である場合の伝達比の変化を示し、第4波線66は、実施形態の伝達比可変装置220における伝達比の変化を示す。なお、入力軸18aが反時計回りに回転した場合も第4波線66と同様に伝達比が変化をする。
【0051】
図13に示す入力軸18aの回転角θ1は、図12に示す伝達ピン26の位置60に対応し、回転角θ2は位置62に対応し、回転角θ3は位置60に対応する。固定側ガイド溝125は、初期位置から位置62までの第1の固定側ガイド溝125aと、初期位置から位置60までの第2の固定側ガイド溝125bと、それ以外の位置60から位置62まで(回転角θ1から回転角θ2まで)の第3の固定側ガイド溝125cとに分けられる。
【0052】
固定側ガイド溝125は、入力軸18aの回転角の初期位置を含む所定の範囲内における変化に対して、出力軸18bと伝達ピン26との間隔が略一定となるようにガイドする形状に定められる。所定の範囲内とは、初期位置を含む位置60から位置62の間の回転角をいい、たとえば±70度以下をいう。図13に示すようにゼロ度から回転角θ1まで、伝達比が入力を減速する状態で一定となっている。すなわち第1の固定側ガイド溝125aおよび第2の固定側ガイド溝125bは、伝達比を一定にするように出力軸18bと伝達ピン26との間隔が略一定となるように形成される。これにより、初期位置近傍では伝達比が変化しないため、運転者が操舵感覚を容易に把握でき、操舵フィーリングを向上することができる。
【0053】
一方で、第3の固定側ガイド溝125cは偏心率が一定となるように形成され、第3波線64と同様に伝達率が変化する。これにより、第1の固定側ガイド溝125aおよび第2の固定側ガイド溝125bでは一定であった伝達比を第3の固定側ガイド溝125cで変化させることができる。
【0054】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0055】
たとえば、図3に示す固定側ガイド溝25が、図12に示す第1の固定側ガイド溝125aおよび第2の固定側ガイド溝125bの形状を有するように組み合わせてもよい。これにより、伝達比可変装置20は初期位置近傍で伝達比の変化を抑えることができ、操舵フィーリングを向上することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 操舵装置、 12 車輪、 14 転舵ギアボックス、 16 減速ギア、 18 ステアリングシャフト、 18a 入力軸、 18b 出力軸、 20 伝達比可変装置、 22 ステアリングホイール、 24 ハウジング、 25 固定側ガイド溝、 25a 第1固定側ガイド溝、 25b 第2固定側ガイド溝、 26 伝達ピン、 28 入力側レバー、 28a 入力側ガイド溝、 30 出力側レバー、 30a 出力側ガイド溝、 32 操舵側ギア、 34 切替側ギア、 36 軸受、 38 切替溝形成部、 40 切替軸、 42 切替機構、 44 第1切替溝、 46 第2切替溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵により回転する入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸に連結し、径方向に延びる入力側ガイド溝を有する入力側レバーと、
前記出力軸に連結し、径方向に延びる出力側ガイド溝を有する出力側レバーと、
前記入力側ガイド溝と前記出力側ガイド溝とに挿入される伝達ピンと、
前記入力軸の回転角に応じて前記伝達ピンの前記出力軸周りの移動をガイドする固定側ガイド溝を有し、車体に固定される固定部材と、
を備えることを特徴とする伝達比可変装置。
【請求項2】
前記固定側ガイド溝の形状により、前記入力軸の回転角に応じて前記入力軸から前記出力軸への伝達比を変化させることを特徴とする請求項1に記載の伝達比可変装置。
【請求項3】
前記固定側ガイド溝は、第1固定側ガイド溝と、前記入力軸から前記出力軸への伝達比が前記第1固定側ガイド溝より大きい第2固定側ガイド溝を有し、
前記入力軸が初期位置から所定の回転角になると、前記伝達ピンを前記第1固定側ガイド溝から前記第2固定側ガイド溝へ移行させることを特徴とする請求項1または2に記載の伝達比可変装置。
【請求項4】
前記固定側ガイド溝は、前記入力軸の回転角の初期位置を含む所定の範囲内における変化に対して、前記出力軸と前記伝達ピンとの間隔が略一定となるようにガイドする形状に定められることを特徴とする請求項1または2に記載の伝達比可変装置。
【請求項5】
前記伝達ピンは、前記入力軸の回転により前記入力側ガイド溝、前記固定側ガイド溝および前記出力側ガイド溝に沿って前記出力軸の周りを回転して、前記出力軸に前記入力軸の回転を伝達し、
前記出力軸と前記伝達ピンの間隔に応じて前記入力軸から前記出力軸への伝達比が変化することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の伝達比可変装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−63745(P2013−63745A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204849(P2011−204849)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】