説明

伴奏テンポ自動調整カラオケ装置

【課題】 唄い手の歌のテンポやその変化に合わせて、カラオケの伴奏のテンポを自動的に調整することにより、誰でも唄いやすい伴奏を行う伴奏テンポ自動調整カラオケ装置を提供する。
【解決手段】 音声検出部12で検出された唄い手2からの音声信号と記憶部13からの曲データ13aに含まれるテンポを示す信号部分が比較部14aで比較される。比較の結果、テンポ調整部14bは音声信号の各音声の長さが曲データのテンポを示す信号部分に対し、所定範囲より外れている場合には、曲データの伴奏速度を音声信号のテンポに近づけるように、すなわち所定範囲内に入るように調整する。カラオケ装置が唄い手のテンポに併せて伴奏を自動調整するため、唄い易すいカラオケ装置を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、唄い手の歌のテンポに合わせて伴奏のテンポを自動調整するカラオケ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のカラオケ装置では、予め用意されているカラオケ伴奏に合わせて唄い手が歌うこととなり、音楽の主体は装置であって、唄い手はそれに合わせなければならない。具体的には、記録媒体にカラオケの曲データおよびテレビ画面に写し出す画像情報,テロップ情報が格納されており、カラオケ開始と同時に伴奏がスピーカから流れるとともにテレビ画面に曲対応の絵が写し出され歌詞が画面上に表示される。唄い手は、カラオケ装置が発する伴奏の速度に合わせて唄を歌い、マイクから入力した音声は伴奏とともにスピーカより出力される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、各唄い手は、それぞれ唄い方に個性を持っており、スローテンポまたは速いピッチで唄う癖を持っていたり、遅れた出だしで唄ったりする人もいる。そのため、唄い手によっては、カラオケ装置に合わせるのが大変な場合がある。また、独自のテンポで唄いたい場合には、カラオケ装置を予め調整することができるが、歌の箇所によってテンポが変える場合には、予め一律に決めてしまうのは不都合である。そこで、本件発明者は、唄い手の歌う速度に合わせてカラオケ装置の伴奏速度を自動的に替えることで上記問題を解決できないかを考察した。本発明の目的は、上記考察に基づくもので唄い手の歌のテンポやその変化に合わせて、カラオケの伴奏のテンポを自動的に調整することにより、誰でも唄いやすい伴奏を行う伴奏テンポ自動調整カラオケ装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために本発明による伴奏テンポ自動調整カラオケ装置は、マイクと、前記マイクから入力される音声を検出する音声検出部と、テンポを示す信号部分を含む伴奏曲データを格納する記憶手段と、前記テンポを示す信号部分と、前記音声検出部で検出した音声信号のテンポを比較する比較手段と、前記比較手段での比較結果、前記音声信号のテンポが前記テンポを示す信号部分の所定範囲から外れている場合には伴奏曲データの伴奏速度を前記音声信号のテンポに近づけるように調整するテンポ調整手段と、前記所定範囲から外れている場合に伴奏速度が調整される伴奏曲データを、アナログ信号に変換するとともに音声信号を出力する伴奏演奏部と、前記伴奏演奏部からの音声信号および曲データのアナログ信号ならびに曲対応の表示データを出力表示する表示拡声出力手段とから構成されている。また本発明は、上記構成において、前記伴奏曲データに含まれているテンポを示す信号部分は、曲を構成する各音程の長さにより規定されるものであり、前記比較手段は前記伴奏曲データの各音程の長さと、前記音声検出部で検出した音声信号の各音程の長さを比較し、前記テンポ調整手段は、前記伴奏曲データの各音程の長さに対し、前記音声信号の各音程の長さが所定範囲から外れている場合に伴奏曲速度を前記音声のテンポに近づけるように調整するように構成されている。さらに本発明は、上記構成において、前記比較手段は、1またはそれ以上の小節単位で比較を行ってテンポずれ量の平均値を算出し、前記テンポ調整部は、その平均値が前記所定範囲から外れている場合に、前記伴奏曲速度を前記音声のテンポに近づけるように調整するように構成されている。
【0005】上記構成によれば、唄い手のテンポにカラオケ装置の伴奏速度が追随するため、唄い手の満足するテンポを提供でき、唄い手にとっては唄い易くなる。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。図1は本発明による伴奏テンポ自動調整カラオケ装置の外観を示す斜視図である。カラオケ装置5の上にテレビ3が搭載され、カラオケ装置5の下側にアンプ6,映像発生機器7が配置されている。マイク1を持った唄い手2は、画面上に流れている歌詞テロップ4を見ながら歌っている。唄い手2の歌う速度が所定以上に速かったり,遅かったりすると、カラオケ装置5は、演奏曲のテンポ(速度)を唄い手2の歌う速度に合わせるように制御する。
【0007】図2は、本発明による伴奏テンポ自動調整カラオケ装置の回路の実施の形態を示すブロック図である。この実施の形態におけるカラオケ装置は、本発明に直接関係する部分のみを記載したものである。カラオケ装置5は、音声検出部12,テンポを示す信号部分を含む曲データを格納する記憶部13,比較部14aおよびテンポ調整部14bの機能部を含む制御部14ならびにシンセサイザよりなる伴奏演奏部16より構成されている。唄い手2が歌う音声は、マイク1に入力し、音声検出部12で音声信号(歌声)として検出される。一方、記憶部13からは曲データ13aが読み出され、曲を構成する各インターバル(16分音譜,8分音譜,4分音譜,4分休止など)の音程の信号が制御部14に入力される。制御部14の比較部14aでは、音声信号の各音程レベルでのインターバル(長さ)と曲データの各音程のインターバルが比較される。
【0008】比較の結果、曲データの各音程のインターバルに対し、音声信号の各音程レベルのインターバルが所定以上大きいか、または小さい場合、テンポ調整部14bは、曲データの各音程のインターバルを音声信号の各音程レベルのインターバルの所定範囲に入るように調整する。このように処理された曲データおよび音声信号ならびに曲データに付随して記憶部13から読み出された画像情報およびテロップ情報は、伴奏演奏部16に入力される。伴奏演奏部16は、曲データをシンセサイザによってアナログ信号に変換し、これら信号を音声信号ならびに画像情報およびテロップ情報とともに出力する。表示部(テレビ)3は曲データ対応の画像を表示しテロップを流す。そして拡声部6からは伴奏および歌声が出力される。
【0009】次に図3のフローチャートの流れに従って図2,図4および図5を参照しながら動作説明を行う。唄い手は、カラオケ装置の操作部20を操作して曲リクエストを行うとともに必要に応じ曲のテンポを調整することができる(ステップ(以下「S」という)301)。この調整は手動によるものである。演奏を開始する(S302)と、記憶部13から曲データ等が読み出され制御部14の制御に従って表示部3に画像および歌詞が表示されるとともに拡声部6から伴奏および歌声が流れる。このとき、制御部14の比較部14aには曲データの各音程の長さと音声検出部12で検出された唄い手の音声信号の各音程の長さの情報とが入力され比較される(S303)。
【0010】図4は、唄い手と曲データのテンポを示す情報の波形を模式化した図である。縦軸は音程(周波数),横軸は時間(t)を示している。実線1)が曲データに基づく波形,一点鎖線2)が唄い手の音声に基づく波形を表している。この例は、簡単化のために4分音譜の長さ単位で、音程が「ド,ミ,ソ,レ,シ」の曲データが演奏されている場合を示している。通常、曲データの波形は音程,音色,フレーズなどの要素によって複雑な形状となるが、各音程部分の長さ部分に着目して矩形波で書き出した図である。唄い手の音声についても同様である。曲データが示す4分音譜の長さをaとし、音声の同じ音程の長さをbとすると、比較部14aは、各音程毎にb/aの比較演算を行う。
【0011】図3の「伴奏速度の変更」のS304では、テンポ調整部14bは、各音程毎にb/aの演算を行い、2小節単位でその平均値( b/a) avを算出し、平均値(b/a) avが例えば図5に示すように所定範囲0.8(b1 /a)〜1.2(b2 /a)内に納まっているか否かを判断する。所定範囲内にない場合には、曲データのテンポを所定範囲0.8(80%)〜1.2(120%)内になるように調整を行う。所定範囲内にある場合には調整は行わない。
【0012】制御部14は、上記処理を行った後、曲が終了したか否かを判断する(S305)。曲が終了していない場合には、引き続き唄い手と曲データの各音程の長さを比較するため、S303に戻り同様な処理を行う。曲が終了した場合には、カラオケは終了する。
【0013】以上の実施の形態では、音程の長さをすべて4分音譜の場合について説明したが、実際は2分音譜,8分音譜,16分音譜,休止記号なども入り、様々な音程の長さになる。また、2小節単位で平均を算出した結果について、所定範囲内にあるか否かを判断しているが、平均値を算出する範囲は1小節単位でも良いし、2小節単位以上でも良い。さらに、所定範囲を0.8(80%)〜1.2(120%)に限らず、これよりも大または小に設定することも可能である。さらには1つの音譜単位で長さを比較しているが、小節単位で長さを比較することも可能である。
【0014】また、音声に限らず、他の方法でテンポを検出することもできる。例えば、カラオケ装置にカメラを接続し、唄い手の映像を取込むことにより、唄い手の動きからテンポを検出することもできる。かかる場合は、唄い手の動き差分の信号を取り出すことにより所定時間当たりの動き量を得て曲データのテンポ情報と比較を行う。また、唄い手がパッド等を叩くことにより、その音をマイクに入力し、パッド等のテンポで伴奏を指揮することも可能である。
【0015】
【発明の効果】以上、説明したように本発明は、唄い手がカラオケ装置に合わせて唄うのではなく、唄い手に合わせてカラオケ装置が伴奏するように構成されているので、唄い手が感情を込めてゆっくりと唄ったり、リズムを溜めたりしても、カラオケ伴奏がそれに合わせて演奏し、生演奏のバンドで唄ったときのように唄い手が主体となるようなカラオケ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による伴奏テンポ自動調整カラオケ装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明による伴奏テンポ自動調整カラオケ装置の回路の実施の形態を示すブロック図である。
【図3】図2の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】唄い手と曲データのテンポを示す情報の波形を模式化して示した図である。
【図5】具体的な比較例を説明するための図である。
【符号の説明】
1…マイク
2…唄い手
3…表示部(テレビ)
4…歌詞テロップ
5…カラオケ装置
6…拡声部(アンプ)
7…映像発生機器
12…音声検出部
13…記憶部
13a…曲データ(テンポを示す信号部分を含む)
14…制御部
14a…比較部
14b…テンポ調整部
16…伴奏演奏部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 マイクと、前記マイクから入力される音声を検出する音声検出部と、テンポを示す信号部分を含む伴奏曲データを格納する記憶手段と、前記テンポを示す信号部分と、前記音声検出部で検出した音声信号のテンポを比較する比較手段と、前記比較手段での比較結果、前記音声信号のテンポが前記テンポを示す信号部分の所定範囲から外れている場合には伴奏曲データの伴奏速度を前記音声信号のテンポに近づけるように調整するテンポ調整手段と、前記所定範囲から外れている場合に伴奏速度が調整される伴奏曲データを、アナログ信号に変換するとともに音声信号を出力する伴奏演奏部と、前記伴奏演奏部からの音声信号および曲データのアナログ信号ならびに曲対応の表示データを出力表示する表示拡声出力手段と、から構成されたことを特徴とする伴奏テンポ自動調整カラオケ装置。
【請求項2】 前記伴奏曲データに含まれているテンポを示す信号部分は、曲を構成する各音程の長さにより規定されるものであり、前記比較手段は前記伴奏曲データの各音程の長さと、前記音声検出部で検出した音声信号の各音程の長さを比較し、前記テンポ調整手段は、前記伴奏曲データの各音程の長さに対し、前記音声信号の各音程の長さが所定範囲から外れている場合に伴奏曲速度を前記音声のテンポに近づけるように調整するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の伴奏テンポ自動調整カラオケ装置。
【請求項3】 前記比較手段は、1またはそれ以上の小節単位で比較を行ってテンポずれ量の平均値を算出し、前記テンポ調整部は、その平均値が前記所定範囲から外れている場合に、前記伴奏曲速度を前記音声のテンポに近づけるように調整することを特徴とする請求項1または2記載の伴奏テンポ自動調整カラオケ装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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