説明

伸び計

【課題】 簡単な構成のもとに高温域から低温式において正確に伸びを計測することのできる伸び計を提供する。
【解決手段】 試験片Wに設定されている2箇所の標線部にそれぞれ固定具11a,11bを固定し、一方の固定具11aには試験片Wの伸び方向に沿うように導電体からなるパイプ12を固着し、他方の固定具11bにはそのパイプの内側の移動自在に挿入されるコイル13を固着し、パイプ12に対するコイル13の挿入量の変化に基づくコイル13のインダクタンスの変化を検出して試験片Wの標線間の伸びを計測する計測回路14を備えた構成の採用により、固定具11a,11b間の相対位置変化を伝達機構を介することなく直接的に計測することを可能とし、また、−40℃〜150℃の温度域での計測をも可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張試験に用いられる接触式の伸び計に関し、特に高温や低温の環境下で用いたり、あるいは高速引張試験に用いるのに適した伸び計に関する。
【背景技術】
【0002】
引張試験において試験片の伸びを計測する接触式の伸び計としては、従来、差動トランス式の変位計や歪みゲージをセンシング部材としたものが知られており、その構造ないしは計測原理は、基本的には、試験片の2つの標線部に固定される固定具と、これらの各固定具相互の変位を差動トランス式の変位計に伝達し、あるいは歪みゲージが貼着された起歪部材に伝達してこれを歪ませることにより、試験片の2つの標線間の伸びを計測するものである(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、150℃にも及ぶ高温の環境下での試験や、−40℃にも及ぶ低温の環境下での試験においては、以上のような通常の伸び計を用いることができず、例えば各固定具を長い棒状のものとして、これらの相対的変位を常温またはそれに近い環境下に置かれた差動トランス等の計測部に伝達するようにした伸び計が用いられる。
【0004】
更に、試験片の両端部を把持する一対の掴み具のうちの一方を、助走機構を備えたシリンダ等のアクチュエータにより他方に対して離隔する向きに急速に移動させることによって試験片に高速引張荷重を付与する高速引張試験においては、前記した通常の伸び計を用いると、衝撃により伸び計が破壊してしまう。そのため、このような高速引張試験においては、アクチュエータを構成するシリンダに、そのピストンの変位を計測する変位検出器を取り付け、その変位検出器の出力から試験片の伸びを推定している(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−201309号公報
【特許文献2】特開平10−318894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、以上のような差動トランスや歪みゲージをセンサとして用いた従来の伸び計は、試験片の標線に固定される固定具の変位をこれらのセンサに伝達する機構が必要であり、比較的構造が複雑となり、高温や低温の環境下で用いるための伸び計にあっては、その構造は更に複雑なものとなる。
【0006】
また、高速引張試験においてピストンの変位を検出する変位検出器の検出出力には、ピストンや助走機構を構成する治具の変形量も含まれるので、試験片の伸び量を正確に測定することはできない。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、簡単な構成のもとに高温域から低温域において正確に伸びを計測することのできる伸び計と、高速引張試験においても試験片の伸びを正確に計測することができ、従来のピストンの変位を検出する方法に比してその測定の正確さを大幅に向上させることのできる伸び計の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の伸び計は、試験片の両端部を把持して引張荷重を付与したときの試験片の伸びを計測するための伸び計であって、試験片の伸び方向2箇所に設定されている標線部にそれぞれ固定される2つの固定具と、これらの各固定具のうちの一方の固定具に試験片の引張方向に沿うように固着される導電体からなるパイプと、他方の固定具に固着され、上記パイプの内側に移動自在に挿入されるコイルを備えるとともに、上記パイプに対するコイルの挿入量の変化に基づく当該コイルのインダクタンスの変化を検出して試験片の伸びを計測する計測回路を備えていることによって特徴づけられる。
【0009】
また、請求項2に係る発明の伸び計は、試験片の両端部をそれぞれ把持する一対の掴み具のうちの一方を、他方に対して高速度で移動させることにより試験片に高速度の引張荷重を作用させる高速引張試験に用いられる伸び計であって、上記一対の掴み具のうち移動側の掴み具に試験片の引張方向に沿うように固着される導電体からなるパイプと、固定側の掴み具が取り付けられる固定部材に固着され、上記パイプの内側に移動自在に挿入されるコイルを備えるとともに、上記パイプに対するコイルの挿入量の変化に基づく当該コイルのインダクタンスの変化を検出して試験片の伸びを計測する計測回路を備えていることによって特徴づけられる。
【0010】
更に、請求項3に係る発明の伸び計は、上記と同様に試験片の両端部をそれぞれ把持する一対の掴み具のうちの一方を、他方に対して高速度で移動させることにより試験片に高速度の引張荷重を作用させる高速引張試験に用いられる伸び計であって、上記一対の掴み具のそれぞれに試験片の引張方向に沿うように固着される2本の導電体からなるパイプと、固定側の掴み具が取り付けられる固定部材に固着され、上記各パイプの内側に移動自在に挿入される2つのコイルと、上記各パイプに対する各コイルの挿入量の変化に基づく当該各コイルのインダクタンスの変化をそれぞれ検出し、その各検出結果から試験片の伸びを計測する計測回路を備えていることによって特徴づけられる。
【0011】
更にまた請求項4に係る発明の伸び計は、請求項2または3に記載の1つまたは2つのパイプに代えて、導電体からなる試験片に当該試験片の引張方向に沿って形成された孔を用いることによって特徴づけられる。
【0012】
本発明は、導電体からなるパイプもしくは孔内にコイルを挿入したとき、その挿入量に応じてコイルのインダクタンスが変化することを利用した変位計を、試験片の伸びの計測に用いることによって、所期の目的を達成しようとするものである。
【0013】
すなわち、コイルを導電体からなるパイプや導電材料に形成された孔内に挿入して交流電圧を印加すると、コイルの被嵌部分におけるパイプないしは導電材料に渦電流が発生する。この渦電流による損失によりコイルのインダクタンスが減少する。このコイルのインダクタンスの変化から、パイプないしは孔内へのコイルの挿入量、ひいてはコイルとパイプないしは孔との相対位置を検出することができる。このような位置検出器の原理は、例えば特開2000−180109号公報等において公知である。
【0014】
請求項1に係る発明では、このよなインダクタンス式の位置検出器を構成する導電体からなるパイプとコイルを、試験片の2箇所に設定された各標線部にそれぞれ引張方向に沿うように固定具を介して取り付ける。これにより、試験片が伸びて標線間の距離が増大すると、パイプに対するコイルの挿入量が変化してコイルのインダクタンスが変化し、その変化から標線間の伸びを計測することができる。
【0015】
このような試験片の2箇所の標線部にそれぞれ固定具を介してパイプとコイルを固着してパイプに対するコイルの挿入量から標線間の伸びを計測する構成によると、従来の差動トランスや歪みゲージを用いた伸び計のように、各固定具の相対変位を差動トランスや歪みゲージが貼着された起歪体に伝達する機構が不要となり、構成を簡素化することができると同時に、−40℃〜150℃の範囲で何ら問題なく使用可能であることが判明している。
【0016】
また、請求項2に係る発明の伸び計は高速引張試験用の伸び計であり、試験片の両端部を移動側の掴み具と固定側の掴み具で把持して、移動側の掴み具を高速度で固定側の掴み具に対して離隔させる高速引張試験においては、試験片に直接的にパイプやコイルを装着することが困難であることから、移動側の掴み具にパイプを固着し、このパイプに対してテーブル等の固定部材に固着したコイルを挿入する。この構成によると、移動側の掴み具におけるパイプ固着部位と試験片把持部位間の変形量が伸びの計測結果に混入するものの、その量は従来のピストンの変位を計測して試験片の伸びを推定する場合に比して極めて少なく実用的には無視し得る程度であり、高速引張試験における試験片の伸びを正確に計測することが可能となる。また、パイプとコイルのうち、配線が不要なパイプを移動側の掴み具に固着し、配線が必要なコイルはテーブル等の固定部材に固着するため、配線も簡単となる。
【0017】
以上の請求項2に係る発明は、試験片の伸びが大きく、その伸びに比して、試験時における固定側の掴み具のテーブル等の固定部材に対する変形量が小さい、例えば樹脂等の試験に有効であるのに対し、請求項3に係る発明は、金属などの伸びの小さい試験片の衝撃引張試験に有効となる。
【0018】
すなわち、請求項3に係る発明においては、移動側および固定側の掴み具のそれぞれにパイプを固着し、テーブル等の固定部材にはこれらの各パイプに個々に挿入される2つのコイルを固着する。これにより、移動側の掴み具の変位と、固定側の掴み具の変位をそれぞれ測定することができ、衝撃引張荷重により試験片の伸びに比して固定側の掴み具の変形が無視できない場合であっても、試験片の伸びを正確に計測することが可能となる。
【0019】
そして、請求項4に係る発明は、金属などの導電体からなる試験片の衝撃引張試験に有効な発明であり、請求項2または3の発明において用いるパイプを用いずに、試験片そのものに引張方向に沿った孔を形成し、その孔内にコイルを挿入してインダクタンス変化を検出する。この構成によればパイプが不要となって伸び計としての構成をより簡素化することができると同時に、伸びの計測結果は試験片の2箇所の相対変位から求めるため、掴み具等の変形の影響を全く受けることがない。しかも、高速度で移動する移動側の掴み具に伸びを計測するための部材を全く設ける必要がない分、メンテナンスも容易となる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によると、実質的に伝達機構を有さない簡単な構成のもとに、試験片の標線間の伸びを正確に計測することができるとともに、−40℃〜150℃程度の温度範囲内でもそのまま充分に用いることのできる伸び計が得られる。
【0021】
請求項2および3に係る発明によれば、高速引張試験における試験片の伸びを、従来のピストンの変位を計測することによって推定する場合に比して、より正確に計測することが可能となる。
【0022】
また、請求項4に係る発明によると、高速度で移動する移動側の掴み具を含む一対の掴み具に何ら伸びの計測のための部材等を装着することなく、掴み具等の変形の影響を受けることなく高速引張試験における試験片の伸びを正確に計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は請求項1に係る発明の実施の形態の構成図であり、材料試験機による引張試験(静的もしくは準静的)に供される試験片Wに、本発明に係る伸び計1を装着した状態での機械的構成を表す模式図と電気的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【0024】
試験片Wはその上下両端部が掴み具2a,2bによって把持された状態で試験に供される。上側の掴み具2aは上下方向に移動するクロスヘッド3に取り付けられている一方、下側の掴み具2bはテーブル4に固定されており、クロスヘッド3を上昇させることによって試験片Wに引張荷重が加えられる。
【0025】
伸び計1は、試験片Wの上下2箇所に設定されている標線部にそれぞれ取り付けられる上下2つの固定具11a,11bと、上側の固定具11aに固着される導電体からなるパイプ12と、下側の固定具11bに固着されるコイル13と、そのコイル13のインダクタンスを検出して、試験片Wの標線間の伸びを求める計測回路14によって構成されている。
【0026】
各固定具11a,11bはそれぞれ、例えばエッジと、試験片Wを挟んでこれと対向し、バネ等によりエッジ側に付勢される押さえ板等の、公知の伸び計に用いられている把持機構Gを一端側に備えているとともに、上側の固定具11aの他端側には導電体からなるパイプ12が、その軸心が引張方向に沿うように固着されている。また、下側の固定具11bの他端側には、細い棒状の磁性体の周囲に巻回したコイル13が、同じくその軸心が引張方向に沿うように固着され、このコイル13はその一部がパイプ12内に非接触状態で挿入されている。従って、以上の構成においてクロスヘッド3を上昇させて試験片Wに引張荷重を加えることによって試験片Wの標線間の距離が伸びると、パイプ12内へのコイル13の挿入量が減少することになる。
【0027】
計測回路14は、コイル13に交流電流を流してそのインダクタンスを検出することのできる回路であれば特に限定されないが、例えば図2にその要部回路構成図を示すように、交流電源14aと、その交流電源14aが正入力に接続されるオペレーショナルアンプ14bと、そのオペレーショナルアンプ14bの負入力と接地電位の間に挿入される抵抗14cを備えるとともに、前記したコイル13をオペレーショナルアンプ14bの負帰還回路に挿入した回路構成を採用することができる。
【0028】
導電体からなるパイプ12内にコイル13を挿入して交流電圧を印加すると、パイプ12に発生する渦電流による損失によってコイル13のインダクタンスが低下する。従って、図2に模式的に示しているように、コイル13のインダクタンスLはパイプ12内へのコイル13の挿入量Δの関数となる。図2の回路構成において、交流電源14aからの交流電圧をVCO、抵抗14cの抵抗値をR、オペレーショナルアンプ14bの出力をVO とすると、
【0029】
【数1】

【0030】
となる。この式(1)においてLはΔの関数であるから、Vo からΔを知ることができ、あらかじめキャリブレーションにより係数を求めて設定しておくことにより、Vo から試験片Wの標線間の伸びを算出することができる。
【0031】
以上の実施の形態において特に注目すべき点は、試験片Wの2箇所の標線部に固定具11a,11bを取り付けることにより、従来の伸び計のような伝達機構を何ら設けることなく直接的に標線間の距離の変化、つまり標線間の伸びを直接的に計測することができる点であり、これにより、構成が簡単で、しかも−40℃〜150℃の雰囲気下での伸びの計測が可能となる。
【0032】
次に、請求項2に係る発明の実施の形態について説明する。
図3はその構成図であり、高速引張試験機による高速引張試験に供される試験片Wに、請求項2の発明に係る伸び計10を装着した状態での機械的構成を表す模式図と電気的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。この例は、試験片Wが例えば樹脂などの伸びが大きい材料の試験を行う場合の例を示している。
【0033】
この高速引張試験機では、試験片Wはその上下両端部が掴み具32a,32bによって把持された状態で試験に供される。上側の掴み具32aは移動体33の下端部に取り付けられているとともに、下側の掴み具32bはロードセル34を介してテーブル35に取り付けられている。移動体33は、その上方に配置されているピストン36の空洞36a内に挿入されており、この移動体33の上端部分には上向きに広がるテーパ部33aが形成されている一方、空洞36aの下端部にはテーパ部33aと略同一の角度で上向きに広がったテーパ部36bが形成されている。この構成により、ピストン36を高速度で上昇させたとき、テーパ部33aと36bが当接するまでの助走区間の後に、移動体が高速度の初速度のもとに上方に移動し、これによって試験片Wに高速引張荷重が加えられる。
【0034】
さて、伸び計10は、移動する側の上側の掴み具32aに固定される固定具101と、その固定具101に引張方向に沿うように固着される導電体からなるパイプ102と、そのパイプ102内に一部が非接触のもとに挿入されるコイル103と、そのコイル103をロードセル34を介してテーブル35に固定するためのスタンド105と、先の例と同等の計測回路104によって構成されている。また、コイル103は細い棒状の磁性体に巻回されている点も先の例と同様である。
【0035】
以上の構成において、ピストン36を高速度で上昇させると、助走区間を経た後に移動体33が高速度で上昇し、これによって上側の掴み具32aを介して試験片Wに高速引張荷重が加えられ、試験片Wが伸びると同時に上側の掴み具32aが上方に移動する。この掴み具32aの移動により、パイプ1032内へのコイル103の挿入量が減少し、そのインダクタンスが変化する。その変化は先の例と同等の計測回路104で捕らえられ、試験片Wの伸びが求められる。
【0036】
この例によると、従来はピストン36の変位を計測して試験片Wの伸びを推定するが故にピストン36や移動体33等の伸びが計測値に含まれていたのに対し、計測回路104による計測結果にはこれらの伸びが含まれていないため、従来に比して格段に正確な伸びの計測が可能である。
【0037】
次に、請求項3の発明に係る実施の形態について説明する。図4はその構成図であり、この例は、先の例と同様の高速引張試験機を用いた高速引張試験の例であるが、金属等の伸びの小さい材料の高速引張試験に適した例である。
【0038】
すなわち、図3の例においては、樹脂等の伸びの大きい材料を対象としているが故に、高速引張荷重を加えたときの下側の掴み具32bの変位が試験片Wの伸びに比して無視し得る程度であったのに対し、金属等の伸びの小さい材料では、高速引張荷重を加えたときの下側の掴み具32bの変位が試験片Wの伸びに対して無視し得ない大きさとなる。そのため、この例における伸び計100においては、上側の掴み具32aに、先の例と同様の固定具101aを介してパイプ102aを固着するとともに、下側の掴み具32bにも、同様の固定具101bを介してパイプ102bを固着している。また、スタンド105には、各パイプ102aおよび102bのそれぞれに非接触のもとに挿入されるコイル103aおよび103bを固着している。
【0039】
以上の構成においてピストン36を上昇させて移動体33を所定の助走区間の後に高速度で移動させることにより、試験片Wには上側の掴み具32aを介して高速引張荷重が作用し、これによって試験片Wが伸びると同時に上側の掴み具32aが上方に移動し、更に下側の掴み具32bについても弾性変形により僅かに上方に移動する。このとき、上側のコイル103aのパイプ102a内への挿入量が減少すると同時に、下側のコイル103bのパイプ102b内への挿入量が増大する。
【0040】
上側のコイル103aおよび下側のコイル103bは、それぞれ先の各例と同等の計測回路104a,104bによってそのインダクタンスの変化が検出され、その検出結果に基づいてそれぞれ上側の掴み具32aおよび下側の掴み具32bの上方への変位量が計測され、これらの各計測結果は、演算回路106によって上側の掴み具32aの変位量から下側の掴み具32bの変位量が減算され、その減算結果が試験片Wの伸びとして出力される。この例においても、図3の例と同様に従来に比して格段に正確な伸びの計測が可能となる。
【0041】
次に請求項4に係る発明の実施の形態について説明する。図5はその構成図であり、この例においても、図3,図4の例と同等の高速引張試験機により試験片Wに高速引張荷重を加えるのであるが、この例の特徴は、試験片Wが金属でその形状が丸棒状であって、その試験片W自体に孔を形成してコイルを挿入している点である。
【0042】
すなわち、この例における試験片Wは断面が円形であり、両端部には中央部に比して大径の大径部Wa,Wbが形成されているとともに、その大径部Wa,Wbの先端側には雄ねじWc,Wdが一体に形成されている。
【0043】
上下の掴み具52a,52bは、それぞれの下面または上面に雌ねじ52c,52dを形成したものであって、試験片Wの両端部の雄ねじWc,Wdがこれらの雌ねじ52c,52dにねじ込まれることによって試験片Wが試験機に装着される。
【0044】
試験片Wの両端の大径部Wa,Wbには、それぞれの内側の面(軸方向中心側を向く面)に引張方向に沿った孔Hが形成されており、この各孔Hに、ロードセル34を介してテーブル35に固定されたスタンド105に固着されている、伸び計200のコイル103a,103bがそれぞれ非接触状態で挿入されている。
【0045】
この例において、試験片Wに高速引張荷重を加えて試験片Wが伸びたときに、上下の大径部Wa,Wbも上方に変位し、上側のコイル103aの孔H内への挿入量が減少するとともに、下側のコイル103bの孔H内への挿入量が増大し、コイル103a,103bのインダクタンスが変化する。この変化を先の例と同等の計測回路104a,104bで検出して上下の大径部Wa,Wbの変位を計測し、演算回路106によって上側の大径部Wbの変位量から下側の大径部Wbの変位量を減算することによって、試験片Wの伸びを計測することができる。
【0046】
この例によれば、コイル103a,103bを挿入するためのパイプが不要となって構成をより簡素化できると同時に、伸びの計測結果は試験片W自体の2箇所の変位から求めたものであるため、掴み具等の変形に起因する誤差をも含まない正確な伸びの計測値となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】請求項1に係る発明の実施の形態の構成図であり、材料試験機による引張試験に供される試験片Wに本発明に係る伸び計を装着した状態での機械的構成を表す模式図と電気的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における計測回路14の要部回路構成図である。
【図3】請求項2に係る発明の実施の形態の構成図であり、高速引張試験機による高速引張試験に供される試験片Wに本発明に係る伸び計を装着した状態での機械的構成を表す模式図と電気的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図4】請求項3に係る発明の実施の形態の構成図であり、高速引張試験機による高速引張試験に供される試験片Wに本発明に係る伸び計を装着した状態での機械的構成を表す模式図と電気的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図5】請求項4に係る発明の実施の形態の構成図であり、高速引張試験機による高速引張試験に供される試験片Wに本発明に係る伸び計を装着した状態での機械的構成を表す模式図と電気的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1,10,100,200 伸び計
11a,11b,101,101a,101b 固定具
12,102,102a,102b パイプ
13,103,103a,103b コイル
14,104,104a,104b 計測回路
105 スタンド
106 演算回路
2a,2b,32a,32b,52a,52b 掴み具
3 クロスヘッド
33 移動体
4,35 テーブル
36 ピストン
W 試験片
Wa,Wb 大径部
H 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片の両端部を把持して引張荷重を付与したときの試験片の伸びを計測するための伸び計であって、
試験片の伸び方向2箇所に設定されている標線部にそれぞれ固定される2つの固定具と、これらの各固定具のうちの一方の固定具に試験片の引張方向に沿うように固着される導電体からなるパイプと、他方の固定具に固着され、上記パイプの内側に移動自在に挿入されるコイルを備えるとともに、上記パイプに対するコイルの挿入量の変化に基づく当該コイルのインダクタンスの変化を検出して試験片の伸びを計測する計測回路を備えていることを特徴とする伸び計。
【請求項2】
試験片の両端部をそれぞれ把持する一対の掴み具のうちの一方を、他方に対して高速度で移動させることにより試験片に高速度の引張荷重を作用させる高速引張試験に用いられる伸び計であって、
上記一対の掴み具のうち移動側の掴み具に試験片の引張方向に沿うように固着される導電体からなるパイプと、固定側の掴み具が取り付けられる固定部材に固着され、上記パイプの内側に移動自在に挿入されるコイルを備えるとともに、上記パイプに対するコイルの挿入量の変化に基づく当該コイルのインダクタンスの変化を検出して試験片の伸びを計測する計測回路を備えていることを特徴とする伸び計。
【請求項3】
試験片の両端部をそれぞれ把持する一対の掴み具のうちの一方を、他方に対して高速度で移動させることにより試験片に高速度の引張荷重を作用させる高速引張試験に用いられる伸び計であって、
上記一対の掴み具のそれぞれに試験片の引張方向に沿うように固着される2本の導電体からなるパイプと、固定側の掴み具が取り付けられる固定部材に固着され、上記各パイプの内側に移動自在に挿入される2つのコイルと、上記各パイプに対する各コイルの挿入量の変化に基づく当該各コイルのインダクタンスの変化をそれぞれ検出し、その各検出結果から試験片の伸びを計測する計測回路を備えていることを特徴とする伸び計。
【請求項4】
請求項2または3に記載の1つまたは2つのパイプに代えて、導電体からなる試験片に引張方向に沿って形成された孔を用いることを特徴とする伸び計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−10409(P2006−10409A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185382(P2004−185382)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】