説明

伸線装置及び素線の製造方法

【課題】メンテナンス作業の簡易化を図りつつ、母線材の材質、目的となる仕上り線径等に応じて、線材の縮径変形度合の調整変更に容易に対応できるようにすること。
【解決手段】線材供給部22と、線材引取部26と、第1キャプスタン機構部30と、第2キャプスタン機構部40とを備える。第1キャプスタン機構部30は、複数の第1キャプスタン32(1)・・・32(8)と、1つの第1回転駆動源34と、第1回転駆動源34の回転駆動力を各第1キャプスタンに伝達する第1回転伝達機構部36とを有し、第2キャプスタン機構部40は、複数の第2キャプスタン42(9)・・・42(15)と、各第2キャプスタンを個別に回転駆動する複数の第2回転駆動源44とを有している。各第1キャプスタン32(1)・・・32(8)及び各第2キャプスタン42(9)・・・42(15)間にダイス60が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、線材を伸線する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、線材を伸線する技術として、特許文献1及び特許文献2に開示のものがある。
【0003】
特許文献1では、複数個の中間引抜きキャプスタンが、1ブロックの中に複数個の中間引抜きキャプスタンが入るようにして2以上のブロックに分割され、ブロック毎に1つの駆動モータによって複数の中間引抜きキャプスタンが駆動されている。
【0004】
特許文献2では、巻出手段と巻取手段との間に、駆動キャプスタン及びキャプスタン駆動モータを有する伸線ユニットが複数配設されている。
【0005】
上記のような伸線装置では、各キャプスタン間に対応して線材の縮径変形度合が設定されており、複数の縮径変形加工を経て線材を徐々に縮径変形するように構成されている。具体的には、各キャプスタンの間に前記縮径変形度合に対応するダイスが配設されている。また、各ダイスによる縮径変形度合に応じて、当該ダイスを挟むようにして配設されるキャプスタンの引抜き速度比が設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−47821号公報
【特許文献2】特開2005−103623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、線材を伸線する場合には、加工対象となる母線材の材質、目的となる仕上り線径等に応じて、線材の縮径変形度合を適宜設定変更する必要がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、ブロック毎に、1つの駆動モータによって複数の中間引抜きキャプスタンを回転駆動しているため、線材の縮径変形度合の設定変更が困難であった。
【0009】
一方、特許文献2に開示の技術では、全てのキャプスタンを個別にモータによって回転駆動するため、メンテナンス作業の煩雑化を招く。
【0010】
そこで、この発明は、メンテナンス作業の簡易化を図りつつ、母線材の材質、目的となる仕上り線径等に応じて、線材の縮径変形度合の調整変更等に容易に対応できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る伸線装置は、線材を伸線する伸線装置であって、線材を供給する線材供給部と、線材を引取る線材引取部と、複数の第1キャプスタンと、1つの第1回転駆動源と、前記第1回転駆動源の回転駆動力を前記複数の第1キャプスタンに伝達する第1回転伝達機構部とを有し、前記線材供給部と前記線材引取部との間であって前記線材供給部側に設けられた第1キャプスタン機構部と、複数の第2キャプスタンと、前記複数の第2キャプスタンをそれぞれ個別に回転駆動する複数の第2回転駆動源とを有し、前記線材供給部と前記線材引取部との間であって前記第1キャプスタン機構部よりも前記線材引取部側に設けられた第2キャプスタン機構部と、前記複数の第1キャプスタン及び前記複数の第2キャプスタンの各間に配設されたダイス複数と、を備えるものである。
【0012】
第2の態様に係る伸線装置は、第1の態様に係る伸線装置であって、前記複数の第2キャプスタン全てを経由した場合の線材の直径が、製造対象となる複数種の仕上り線径のうちの最も細径な仕上り線径となり、前記複数の第2キャプスタンのうちの一部を経由した場合の線材の直径が、製造対象となる複数種の仕上り線径のうちの1つの仕上り線径となるように、前記複数の第2キャプスタンの前後の引抜き速度比が設定されているものである。
【0013】
第3の態様に係る伸線装置は、第1又は第2の態様に係る伸線装置であって、前記複数の第2キャプスタンそれぞれに対する前後間の引抜き速度比が、前記線材引取部側に向けて徐々に小さくなるように設定されているものである。
【0014】
第4の態様に係る伸線装置は、第1〜第3のいずれか1つの態様に係る伸線装置であって、伸線加工対象となる線材がアルミ線又はアルミ合金線であり、直径0.5mm以下となった線材の伸線加工を、前記第2キャプスタンにより線材を引抜きつつ行うように、前記複数の第1キャプスタン間の引抜き速度比が設定されているものである。
【0015】
第5の態様に係る伸線装置は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係る伸線装置であって、少なくとも1つの仕上げ用キャプスタンと、1つの仕上げ用回転駆動源と、前記仕上げ用回転駆動源の回転駆動力を前記仕上げ用キャプスタンに伝達する仕上げ用伝達機構部とを有し、前記線材供給部と前記線材引取部との間であって前記第2キャプスタン機構部よりも前記線材引取部側に設けられた仕上げ用キャプスタン機構部をさらに備えるものである。
【0016】
第6の態様に係る素線の製造方法は、線材を伸線することによって素線を製造する素線の製造方法であって、線材を供給する線材供給部と、線材を引取る線材引取部と、複数の第1キャプスタンと、1つの第1回転駆動源と、前記第1回転駆動源の回転駆動力を前記複数の第1キャプスタンに伝達する第1回転伝達機構部とを有し、前記線材供給部と前記線材引取部との間であって前記線材供給部側に設けられた第1キャプスタン機構部と、複数の第2キャプスタンと、前記複数の第2キャプスタンをそれぞれ個別に回転駆動する複数の第2回転駆動源とを有し、前記線材供給部と前記線材引取部との間であって前記線材引取部側に設けられた第2キャプスタン機構部と、前記複数の第1キャプスタン及び前記複数の第2キャプスタンの各間に配設されたダイス複数と、を備える伸線装置を用い、前記複数の第2キャプスタン全てを経由した場合の線材の直径が、製造対象となる複数種の仕上り線径のうちの最も細径な仕上り線径となり、前記複数の第2キャプスタンのうちの一部を経由した場合の線材の直径が、製造対象となる複数種の仕上り線径のうちの1つの仕上り線径となるように、前記複数の第2キャプスタンの回転速度を設定し、前記線材が経由する前記複数の第2キャプスタンの対象を全て又は一部に変更することで、複数種の仕上り線径の素線を製造する。
【発明の効果】
【0017】
第1の態様に係る伸線装置によると、第1キャプスタン機構については、1つの第1回転駆動源の回転駆動力が第1回転伝達機構部を介して複数の第1キャプスタンに伝達されるため、メンテナンス作業の容易化を図ることができる。また、第2キャプスタン機構については、複数の第2回転駆動源の回転速度を個別に調整して、複数の第2キャプスタンの回転速度を変更することで、当該各第2キャプスタンの前後で引抜き速度比を変更することができる。このため、母線材の材質、目的となる仕上り線径等に応じて、線材の縮径変形度合の調整変更に容易に対応できる。
【0018】
第2の態様によると、複数の第2キャプスタンを全て用いて伸線加工を行えば、細径である素線を製造することができる。そして、複数の第2キャプスタンのうちの一部により伸線を行えば、製造対象となる複数種の仕上り線径のうちの1つである素線を製造することができる。このため、一旦第2キャプスタンの前後の引抜き速度比の設定を行えば、その変更を行わなくとも、複数種の仕上り線径である伸線を容易に製造できる。
【0019】
第3の態様によると、線材が細径になればなるほど、前後間の引抜き速度比が小さくなるため、線材の切断をより確実に防止することができる。
【0020】
また、通常、アルミ線又はアルミ合金線は、伸線加工時に、0.50mmより大きい直径で切断し難く、0.50mmよりも小さい直径で切断し易い。そこで、第4の態様のように、前記第1キャプスタン機構部で直径が0.50mm程度になるまでの伸線加工を行うことで、固定送給速度比による効率のよい伸線を行える。一方、前記第2キャプスタンの引抜きにより直径0.50mm以下となった線材の伸線加工を行うことで、アルミ線又はアルミ合金線が切断し難いように引抜き速度を調整して伸線加工を行える。
【0021】
第5の態様によると、第1キャプスタン機構部で比較的に大きな縮径変形度合で伸線加工を行い、第2キャプスタン機構部で材質等に応じて調整された縮径変形度合で伸線加工を行い、複数の仕上げ用キャプスタンで仕上げに適した縮径変形度合で伸線加工を行うことができる。
【0022】
第6の態様によると、第2キャプスタンの回転速度の変更を行わなくとも、複数種の仕上り線径である伸線を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態に係る伸線装置を示す概略平面図である。
【図2】同上の伸線装置を示す概略側面図である。
【図3】減面率設定の例を示す図である。
【図4】線材が断線するに至った箇所及び断線要因を示す図である。
【図5】第2キャプスタンの一部を用いて伸線加工を行う例を示す説明図である。
【図6】変形例に係る伸線装置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係る伸線装置及び素線の製造方法について説明する。図1は実施形態に係る伸線装置20を示す概略平面図であり、図2は同伸線装置20を示す概略側面図である。
【0025】
この伸線装置20は、線材10の直径を小さくするように伸線する装置であり、線材供給部22と、線材引取部26と、第1キャプスタン機構部30と、第2キャプスタン機構部40と、複数のダイス60を備えている。なお、線材10は、伸線加工の前後及び加工中のもの全てを含む総称であり、加工前のものを母線材10a、加工後の伸線されたものを素線10bと区別する場合がある。素線10bは、単独で又は撚り合わされた形態で、電線の芯線等として用いられる。
【0026】
線材供給部22は、母線材10aを供給可能に構成されている。より具体的には、線材供給部22は、リール状の部材に母線材10aが巻回収容された構成とされている。この線材供給部22は、所定の伸線加工ラインLの上流側に回転自在に支持されており、この線材供給部22から母線材10aが引出し可能とされている。
【0027】
線材引取部26は、素線10bを引取可能に構成されている。より具体的には、線材引取部26は、素線10bを巻回収容可能なリール状の部材が、モータ等の回転駆動源によって回転駆動可能に支持されている。この線材引取部26は、前記伸線加工ラインLの下流側に配設されており、最終の仕上り線径に加工された素線10bが本線材引取部26によって引取って収容されるようになっている。
【0028】
なお、本実施形態では、複数(ここでは7本)の母線材10aに対する伸線加工を可能にすべく、線材供給部22及び線材引取部26が複数(ここでは7つ)設けられている。もっとも、第2キャプスタン機構部40の下流側に複数の素線10bを撚り合わせる撚り合わせ機構部が設けられていてもよい。この場合、撚り合せ線を1本だけ引取る線材引取部が1つだけ設けられていてもよい。
【0029】
第1キャプスタン機構部30は、線材供給部22と線材引取部26との間であって線材供給部22側に設けられており、複数(ここでは8個)の第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)と、1つの第1回転駆動源34と、第1回転伝達機構部36とを有している。
【0030】
各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)は、略円板状或は略円柱状に形成されており、その外周に線材10を巻付可能な周溝が形成されている。周溝は、加工対象となる線材10の数に応じて形成されており、ここでは、7つ形成されている。また、各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)は、この順で上流側から下流側に向けて伸線加工ラインLに沿って間隔を有して並ぶように配設されており、それぞれ伸線加工ラインLに対して略直交する略略水平方向の回転軸周りに回転可能に支持されている。そして、線材10を各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)の周溝に巻付けた状態で、各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)を回転駆動することで、その回転速度に応じた引抜き速度で線材10が引抜かれるようになっている。
【0031】
なお、各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)の回転軸は、略鉛直方向又は略鉛直方向に対して斜め方向に沿った軸であってもよい。
【0032】
第1回転駆動源34は、ACモータ等のモータであり、回転駆動力を発生させるように構成されている。
【0033】
第1回転伝達機構部36は、前記1つの第1回転駆動源34の回転駆動力を各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)に伝達するように構成されている。より具体的には、第1回転伝達機構部36は、各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)に連結された駆動軸36a、駆動軸36a間で回転運動を変速して伝達する変速機構36b等を有している。変速機構36bは、複数の歯車、プーリ及び該プーリに巻きかけられた伝達ベルト等の各種機構によって構成されており、歯車径、歯車の歯数、プーリ径等を適宜設定することで、所定の変速比で回転運動を伝達する構成とされている。ここでは、第1回転駆動源34の回転運動は、そのままの回転速度で下流側の第1キャプスタン32(8)に伝達され、順次増速されつつ、下流側から上流側の第1キャプスタン32(7)、32(6)、・・・、32(2)、32(1)へと伝達されるようになっている。従って、各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)の回転速度は、第1回転駆動源34の回転速度に応じて決る値であり、伸線加工ラインLの上流側及び下流側との間(単に前後間という場合がある)で、各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)の回転速度比は一定となっている。なお、本実施形態では、各キャプスタンの直径は同じであるという前提で説明するため、前後の回転速度比が一定であるということは、前後の引抜き速度比が一定であるということを意味している。ここでは、各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)のそれぞれ間で前後の引抜き速度比は、一定の固定値に設定されている。引抜き速度比のより具体的な設定例については後述する。
【0034】
第2キャプスタン機構部40は、複数(ここでは7つ)の第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)と、複数の第2回転駆動源44とを有しており、線材供給部22と線材引取部26との間であって第1キャプスタン機構部30よりも線材引取部26側に設けられている。なお、第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)のうち線材供給ラインの最下流の第2キャプスタン42(15)を仕上げ用のキャプスタンと呼ぶ場合がある。
【0035】
各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)は、上記第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)と同様に、略円板状或は略円柱状に形成されており、その外周に線材10を巻付可能な周溝が形成されている。各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)は、この順で上流側から下流側に向けて伸線加工ラインLに沿って間隔を有して並ぶように回転可能に配設支持されている。そして、線材10を各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)の周溝に巻付けた状態で、各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)を回転駆動することで、その回転速度に応じた引抜き速度で線材10が引抜かれるようになっている。
【0036】
第2回転駆動源44は、ACモータ等、回転速度を調整可能なモータであり、上記各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)に対応して複数(ここでは、6つ)設けられている。各第2回転駆動源44は、それぞれ別々に各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)に連結されており、各第2回転駆動源44が、各第2キャプスタンをそれぞれ個別に回転駆動するように構成されている。従って、各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)の回転速度は、各第2回転駆動源44の回転速度に応じて決る値であり、各第2回転駆動源44の回転速度を調整することで、各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)の前後の回転速度比を調整できるようになっている。なお、本実施形態では、各キャプスタンの直径は同じであるという前提で説明するため、前後の回転速度比を調整できるということは、前後の引抜き速度比を調整できるということを意味している。ここでは、各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)が関与するそれぞれの前後間の引抜き速度比は、伸線加工ラインLの上流側から下流側に向けて徐々に小さくなるように設定される(つまり、徐々に速度差が小さくなるように設定される)。各引抜き速度比の具体的な調整設定例については後述する。
【0037】
上記のように第1キャプスタン機構部30と第2キャプスタン機構部40とを有する構成とすることで、第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)だけの前後間では、引抜き速度比が一定である加工領域とすることができ、各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)が関与する前後間(つまり、第1キャプスタン32(8)と第2キャプスタン42(9)との関係を含む)では、引抜き速度比を可変にできる加工領域とすることができる。
【0038】
また、第2キャプスタン機構部40と線材引取部26との間に、一対のローラ72a、72bを有する線速差吸収機構部70が設けられている。線速差吸収機構部70は、いわゆるダンサローラ等とも呼ばれ、一方の固定ローラ72aに対して可動側ローラ72bが近接離間移動可能に支持された構成とされている。そして、第2キャプスタン42(15)と線材引取部26との間の線速差に応じて両ローラ72a、72b間距離が調整されることで、第2キャプスタン機構部40と線材引取部26との間における線材10の弛み及び線材10の過大な引張り力の作用等が抑制されるようになっている。
【0039】
複数のダイス60は、線材10の直径が小さくなるように縮径変形加工する加工具であり、上記各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)及び各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)間に着脱可能に配設されている。より具体的には、ダイス60は、金属等で形成された部材であり、線材10を通すための縮径加工孔が形成されている。ここでは、加工対象となる線材10の数に合わせて、複数(ここでは7つ)の縮径加工孔が並列状に形成されている。縮径加工孔は、加工ラインLに沿って上流側から下流側に向けて順次縮径する貫通円穴状に形成されている。縮径加工孔のうち上流側の開口径は、そのダイス60に導かれる線材10の径と略同じであり、縮径加工孔のうち下流側の開口径は、そのダイス60による縮径加工目的となる径と略同じである。ダイス60の縮径加工孔のうち上流側の開口面積をS1、下流側の開口面積をS2とした場合、開口面積の減少率((S1−S2)/S1)を減面率という。この減面率は、当該ダイス60において目的とする縮径加工度合に応じて設定されている。なお、縮径加工孔の上流側に、線材10を縮径加工孔に導くガイド孔が形成されていてもよい。なお、各ダイス60を着脱可能に配設しているのは、ダイス60の取外し、交換、メンテナンス等を行うためである。特に、第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)の速度変更により前後間の引抜き速度比調整を行う場合には、これに応じた減面率のダイス60に交換する必要がある。
【0040】
ここで、減面率と引抜き速度比との関係について説明しておく。すなわち、ダイス60によって線材10を縮径加工すると、線材10は引き伸されて長くなる。このため、ダイス60の上流側よりも下流側で線材10の引抜き速度を大きくする必要がある。また、ダイス60による線材10の縮径加工度合(減面率)が大きくなる程、線材10はより長く伸されるため、減面率が大きくなるほど、ダイス60の上流側の引抜き速度に対する下流側の引抜き速度比を大きくする必要がある。例えば、線材10の断面積の関係からすると、ダイス60による減面率が”r”である場合、ダイス60を挟んで下流側の引抜き速度に対する引抜き速度差の比率(つまり、上流側の引抜き速度V1、下流側の引抜き速度V2とした場合、(V2−V1)/V2)を”r”にすればよい。つまり、各キャプスタン部分で所定の縮径変形度合で加工を行うように検討すれば、ダイス60の減面率は設計上1つに決り、これに対応して各キャプスタンの前後の引抜き速度比も1つに決る。つまり、各ダイス60による縮径変形度合の設定、調整は、ダイスの減面率の設定、調整及び各キャプスタンの前後の引抜き速度比の設定、調整と同義であり、以下では、その前提で説明する。
【0041】
また、本伸線装置20は、制御ユニット68を備えている。制御ユニット68は、CPU、ROMおよびRAM等を備える一般的なマイクロコンピュータである。この制御ユニット68は、スイッチ等の入力部68aを介して第1回転駆動源34及び各第2回転駆動源44に対するオンオフ指令、及び、各第2回転駆動源44の回転速度指令を受付ける。また、本制御ユニット68は、図示省略の駆動回路を介して、前記指令に応じて第1回転駆動源34及び各第2回転駆動源44をオンオフ動作制御すると共に、各第2回転駆動源44の回転速度を制御する。もっとも、各第2回転駆動源44に対する回転速度調整は、各第2回転駆動源44に対する個別設定によって行われてもよい。
【0042】
以下、アルミ線又はアルミ合金線材を対象とした具体的な減面率(%)を参照しつつ、上記伸線装置20の動作について説明する。図3は減面率設定の例を示す図である。ここでは、母線材として、直径1.100mmであるアルミ合金製の母線材10aを用いた例を想定している。図3中、左列は、第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)及び第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)の括弧内の数字(つまり、伸線加工ラインLにおいて上流側から下流側に向けて配設されたキャプスタンの順番)を示しており、中央の列は、各キャプスタンに巻回されて引抜かれる線材10の直径を示しており、右列は各キャプスタンの上流側にあるダイス60の減面率を示している。なお、減面率は、上記したように、当該ダイス60による縮径変形度合を示すと共に、当該ダイス60を挟む前後のキャプスタンによる引抜き速度比を間接的に示している。
【0043】
同図に示すように、第1キャプスタン機構部30における各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)間では、減面率を20%の一定の固定値に設定している。つまり、第1回転伝達機構部36として、当該減面率(引抜き速度比)に変速比に構成されたものを用いている。なお、上記減面率は、直径0.5mm以下となった線材10の伸線加工を、第2キャプスタン42(9)により線材10を引抜きつつ伸線加工を行えるように考慮された設定値でもある。これにより、直径1.10mmの母線材10aが、0.98mmから0.87mm、0.78mm、0.70mm、0.62mm、0.56mm、0.50mmの直径となるように、段階的に縮径変形加工される。そして、直径0.50mmとなった線材10は、次の第2キャプスタン42(9)により引抜かれつつ、キャプスタン32(8)とキャプスタン42(9)間のダイス60により伸線加工される。
【0044】
ここで、0.5mm以下となった線材10の伸線加工を、第2キャプスタン42(9)により線材10を引抜きつつ伸線加工を行えるようにした理由について説明しておく。
【0045】
図4は、発明者らが各種アルミ合金線を母線材として各種条件下で伸線加工を試行錯誤した場合において、線材が断線するに至った箇所を示す図である。なお、ここで対象となった線材は、JIS規格において、いわゆる1000系アルミ合金(特に、1050〜1080など)、5000系アルミ合金(特に5154〜5454など)、その他、Al−Fe系、Al−Fe−Mg系、Al−Mg系等のアルミ合金である。同図に示すように、断線はほとんど直径0.5mm以下に加工するダイス部分で生じていることがわかる。そして、減面率を大きくすれば、引抜き抵抗の増加、速度向上による摩擦熱等の要因によって断線に至る可能性が高まると考えられる。そこで、線材10が比較的太径である段階での伸線加工は、第1キャプスタン機構部30における各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)によって一定の固定値による減面率で行う一方、線材10が比較的細径(0.50mm以下)になった時点での伸線加工は、減面率の設定変更等が可能な第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)の引抜き工程下で行うことで、線材10が断線に至り難いように当該減面率を調整して製造することができる。
【0046】
また、各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)それぞれに対応する前後間では、減面率を上記第1キャプスタン機構部30における各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)間での減面率よりも小さく設定すると共に、線材引取部26に向けて徐々に小さくなるように設定している。つまり、それらに対応する引抜き速度比が線材引取部26側に向けて徐々に小さくなるように設定されている。減面率をどの程度にするか、また、どの程度の割合で徐々に小さくするかは、線材10の材質及び目的径等に応じて実験的に定められる。つまり、なるべく少ないダイス60数で加工するためにはなるべく大きな減面率にすることが好ましい。一方、減面率を大きくすると断線し易くなる。断線し易さは、線材の材質及び加工径等によって異なるため、問題無い断線頻度となる範囲内でなるべく減面率を大きく設定できるように、実験的に定められる。
【0047】
また、ここでは、各減面率は、全ての第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)を経由して伸線加工を行った場合の線材10の直径が製造対象となる複数種の仕上り線径のうち最も細径な仕上り線径となるように設定されている。しかも、減面率は、複数の第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)のうちの一部を経由して(つまり、残りのキャプスタンについては線材を巻付けず、また、対応するダイスを省略して)伸線加工を行った場合の線材10の直径が製造対象となる複数種の仕上り線径のうちの1つの仕上り線径となるように、設定されている。ここでは、上記引抜き速度比となるように、適した速度指令値が入力部68aを介して制御ユニット68に与えられ、当該速度指令値が制御ユニット60に設定記憶されており、制御ユニット60が当該制御指令値に応じて各第2回転駆動源44を駆動制御する。
【0048】
ここで、製造対象となる素線10bの仕上り線径は、製造対象となる電線の芯線に用いる場合を想定して、0.42mm、0.36mm、0.34mm、0.32mm、0.30mmであるとする。
【0049】
そして、第1キャプスタン32(8)と第2キャプスタン42(9)との間の減面率が16%、第2キャプスタン42(9)、42(10)の間の減面率が15%、第2キャプスタン42(10)、42(11)の間の減面率が14%、第2キャプスタン42(11)、42(12)の間の減面率が13%、第2キャプスタン42(12)、42(13)の間の減面率が12%、第2キャプスタン42(13)、42(14)の間の減面率が11%、第2キャプスタン42(14)、42(15)の間の減面率が10%に設定されている。すると、線材10の直径は、第2キャプスタン42(9)により引抜かれた時点で0.45mmであり、第2キャプスタン42(10)により引抜かれた時点で0.42mmであり、第2キャプスタン42(11)により引抜かれた時点で0.39mmであり、第2キャプスタン42(12)により引抜かれた時点で0.36mmであり、第2キャプスタン42(13)により引抜かれた時点で0.34mmであり、第2キャプスタン42(14)により引抜かれた時点で0.32mmであり、第2キャプスタン42(15)により引抜かれた時点で0.30mmとなる。このため、全ての第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)を経由して伸線加工を行った場合に、最細となる直径0.30mmの素線10bを得ることができる。また、第2キャプスタン42(10)迄、第2キャプスタン42(12)迄、第2キャプスタン42(13)迄、第2キャプスタン42(14)迄、第2キャプスタン42(15)迄のそれぞれを経由した加工により、製造対象となる直径0.42mm、0.36mm、0.34mm、0.32mmの素線10bを得ることができる。
【0050】
つまり、直径0.30の素線10bを製造する場合には、図1及び図2に示すように、線材10を全ての第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)及び全ての第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)に巻付ける。また、それらの全ての各間にダイス60が配設されており、当該全てのダイス60に線材10が挿通されている。そして、この状態で、各第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)及び各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)を、上記減面率に応じた引抜き速度比となるような回転速度で回転させる。なお、実際の各回転速度は、いずれか1つの回転速度を決定し、それを基準にして前記引抜き速度比に応じて決定される。通常は、最も線速が速くなる最下流側で線材10の切断が所定頻度以上で生じない範囲で、可及的に速い速度が選定される。これにより、線材10が各ダイス60で順次圧縮変形加工され、最細となる直径0.30mmの素線10bが製造される。
【0051】
また、例えば、直径0.32mmの素線を製造する場合には、図5に示すように、各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)のうちの一部及びダイス60の一部を省略する。より具体的には、線材10を第2キャプスタン42(14)に巻付けずに通過させている。また、第2キャプスタン42(14)、42(15)間に配設されていたダイス60を取外し、その位置に、第2キャプスタン42(13)、42(14)間に配設されていたダイス60を取付けている。ここで、最下流の第2キャプスタン42(15)ではなく、その手前の第2キャプスタン42(14)を省略しているのは、当該最下流の第2キャプスタン42(15)は仕上げ用のキャプスタンとして比較的トルクの大きなモータが選定されているからである。
【0052】
他の直径0.42mm、0.36mm、0.34mmの素線10bを製造する場合でも、第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)のうちの1つ又は複数を省略することで、上記と同様にして製造することができる。
【0053】
これにより、線材10の材質、目的径等に応じて、一旦、複数の第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)による引抜き速度を設定すれば、複数の第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)のうちの全て又は一部を用いるかによって、複数種の仕上り線径の素線10bを容易に製造することができる。
【0054】
勿論、仕上り線径に応じて、第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)の回転速度を変更、調整し、また、ダイス60を交換するようにしてもよい。
【0055】
以上のように構成された伸線装置20によると、第1キャプスタン機構部30については、1つの第1回転駆動源34が第1回転伝達機構部36を介して複数の第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)に伝達されるため、それらを個別にモータ駆動する場合と比べて、メンテナンス作業の容易化を図ることができる。また、第2キャプスタン機構部40については、複数の第2回転駆動源44の回転速度を個別に調整して各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)の回転速度を個別変更することで、当該第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)が関与する前後で線材10の引抜き速度比を変更することができる。このため、線材10の材質、目的となる仕上り線径等に応じて、線材10の縮径変形度合の調整変更に容易に対応できる。
【0056】
また、第1キャプスタン機構部30では、比較的大きな固定の減面率に設定しているため、線材10が比較的太径な段階では効率よく伸線加工を行うことができ、結果、全体のダイス60の数を削減することができ、装置の小型化、低コスト化等に貢献する。
【0057】
また、各第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)が関与する前後の引抜き速度比は、下流側に向けて、つまり、線材10が細径になればなるほど、徐々に小さくなるように設定されている。つまり、線材10が細径になればなるほど、1つのダイス60による圧縮変形度合が小さくなるように設定されている。このため、線材10の切断をより確実に防止することができる。
【0058】
図6は変形例に係る伸線装置120を示す概略平面図である。なお、上記実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0059】
本変形例では、最下流にある仕上げ用のキャプスタンを固定の引抜き速度とした例について説明する。この伸線装置120は、線材供給部22と、線材引取部26と、第1キャプスタン機構部130と、第2キャプスタン機構部140と、仕上げ用キャプスタン機構部180と、ダイス60とを備えている。
【0060】
第1キャプスタン機構部130は、上記第1キャプスタン機構部30と同様に、線材供給部22と線材引取部26との間であって線材供給部22側に設けられており、上記第1キャプスタン32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8)に対応する複数(ここでは3個)の第1キャプスタン132(1)、132(2)、132(3)と、上記第1回転駆動源34に対応する1つの第1回転駆動源134と、上記第1回転伝達機構部36に対応する第1回転伝達機構部136とを有している。つまり、この第1キャプスタン機構部130は、第1キャプスタン132(1)、132(2)、132(3)の数、及び、第1回転伝達機構部136の回転駆動力伝達対象数が異なる点を除いて、上記第1キャプスタン機構部30と同様構成である。
【0061】
第2キャプスタン機構部140は、上記第2キャプスタン機構部40と同様に、線材供給部22と線材引取部26との間であって第1キャプスタン機構部130よりも線材引取部26側に設けられており、上記第2キャプスタン42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15)に対応する複数(ここでは3つ)の第2キャプスタン142(4)、142(5)、142(6)と、上記各第2回転駆動源44に対応する複数(ここでは4つ)の第2回転駆動源144とを有している。つまり、この第2キャプスタン機構部140は、第2キャプスタン142(4)、142(5)、142(6)の数、及び、第2回転駆動源144の数が異なる点を除いて、上記第2キャプスタン機構部40と同様構成である。
【0062】
仕上げ用キャプスタン機構部180は、一定の引抜き速度で線材10を引抜くものであり、上記線材供給部22と線材引取部26との間であって第2キャプスタン機構部140よりも線材引取部26側に設けられており、複数(ここでは3つ)の仕上げ用キャプスタン182(7)、182(8)、182(9)と、1つの仕上げ用回転駆動源182と、仕上げ用回転駆動源182の回転駆動力を複数の仕上げ用キャプスタン182(7)、182(8)、182(9)に伝達する仕上げ用伝達機構部184とを有している。上記複数(ここでは3つ)の仕上げ用キャプスタン182(7)、182(8)、182(9)は、上記複数の第1キャプスタン132(1)、132(2)、132(3)と同様構成であり、1つの仕上げ用回転駆動源182は上記第1回転駆動源134と同様構成であり、仕上げ用伝達機構部184は上記第1回転伝達機構部136と同様構成である。従って、この仕上げ用キャプスタン機構部180における仕上げ用キャプスタン182(7)、182(8)、182(9)間の引抜き速度比は、固定された一定値である。もっとも、仕上げ用キャプスタン182(7)、182(8)、182(9)の数は、第1キャプスタン132(1)、132(2)、132(3)の数と同じである必要はない。また、引抜きキャプスタンは1つであってもよい。
【0063】
また、ダイス60は、複数の第1キャプスタン132(1)、132(2)、132(3)と、複数の第2キャプスタン142(4)、142(5)、142(6)と、複数の仕上げ用キャプスタン182(7)、182(8)、182(9)との各間に配設されている。
【0064】
この伸線装置120によると、第1キャプスタン機構部130で比較的大きな一定の縮径変形度合で伸線加工を行い、第2キャプスタン機構部140で線材10の材質等に応じて調整された縮径変形度合で伸線加工を行い、仕上げ用のキャプスタン機構部180で仕上げに適した縮径閉経度合で伸線加工を行うことができる。特に、仕上げ加工を一定の条件で行うことができるため、仕上げ品質がより安定化するというメリットがある。
【0065】
なお、上記実施形態及び変形例では、アルミ線材或はアルミ合金線材を想定した例で説明したが、その他、各種材質の線材10についても適用できる。つまり、線材10の材質、加工径等に応じて第2キャプスタン機構部40、140における引抜き速度比を実験的に設定、調整すればよい。
【0066】
各キャプスタンの径が同じであるという前提で説明したが、各径が異なっていてもよい。この場合、引抜き速度は、回転速度に当該径を加味した値として考慮すればよい。
【0067】
また、上記実施形態では、伸線加工ラインLが直線である場合で説明したが、必ずしもその必要はなく、各キャプスタン部分或は他のガイドローラ部分で曲っているラインであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 線材
20 伸線装置
22 線材供給部
26 線材引取部
30 第1キャプスタン機構部
32(1)、32(2)、・・・、32(6)、32(7)、32(8) 第1キャプスタン
34 第1回転駆動源
36 第1回転伝達機構部
40 第2キャプスタン機構部
42(9)、42(10)、・・・、42(13)、42(14)、42(15) 第2キャプスタン
44 第2回転駆動源
60 ダイス
120 伸線装置
130 第1キャプスタン機構部
132(1)、132(2)、132(3) 第1キャプスタン
134 第1回転駆動源
136 第1回転伝達機構部
140 第2キャプスタン機構部
142(4)、142(5)、142(6) 第2キャプスタン
144 第2回転駆動源
180 仕上げ用キャプスタン機構部
182(1)、182(2)、182(3) 仕上げ用キャプスタン
182 仕上げ用回転駆動源
184 仕上げ用伝達機構部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を伸線する伸線装置であって、
線材を供給する線材供給部と、
線材を引取る線材引取部と、
複数の第1キャプスタンと、1つの第1回転駆動源と、前記第1回転駆動源の回転駆動力を前記複数の第1キャプスタンに伝達する第1回転伝達機構部とを有し、前記線材供給部と前記線材引取部との間であって前記線材供給部側に設けられた第1キャプスタン機構部と、
複数の第2キャプスタンと、前記複数の第2キャプスタンをそれぞれ個別に回転駆動する複数の第2回転駆動源とを有し、前記線材供給部と前記線材引取部との間であって前記第1キャプスタン機構部よりも前記線材引取部側に設けられた第2キャプスタン機構部と、
前記複数の第1キャプスタン及び前記複数の第2キャプスタンの各間に配設されたダイス複数と、
を備える伸線装置。
【請求項2】
請求項1記載の伸線装置であって、
前記複数の第2キャプスタン全てを経由した場合の線材の直径が、製造対象となる複数種の仕上り線径のうちの最も細径な仕上り線径となり、前記複数の第2キャプスタンのうちの一部を経由した場合の線材の直径が、製造対象となる複数種の仕上り線径のうちの1つの仕上り線径となるように、前記複数の第2キャプスタンの前後の引抜き速度比が設定されている、伸線装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の伸線装置であって、
前記複数の第2キャプスタンそれぞれに対する前後間の引抜き速度比が、前記線材引取部側に向けて徐々に小さくなるように設定されている、伸線装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の伸線装置であって、
伸線加工対象となる線材がアルミ線又はアルミ合金線であり、
直径0.5mm以下となった線材の伸線加工を、前記第2キャプスタンにより線材を引抜きつつ行うように、前記複数の第1キャプスタン間の引抜き速度比が設定されている、伸線装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の伸線装置であって、
少なくとも1つの仕上げ用キャプスタンと、1つの仕上げ用回転駆動源と、前記仕上げ用回転駆動源の回転駆動力を前記仕上げ用キャプスタンに伝達する仕上げ用伝達機構部とを有し、前記線材供給部と前記線材引取部との間であって前記第2キャプスタン機構部よりも前記線材引取部側に設けられた仕上げ用キャプスタン機構部をさらに備える伸線装置。
【請求項6】
線材を伸線することによって素線を製造する素線の製造方法であって、
線材を供給する線材供給部と、
線材を引取る線材引取部と、
複数の第1キャプスタンと、1つの第1回転駆動源と、前記第1回転駆動源の回転駆動力を前記複数の第1キャプスタンに伝達する第1回転伝達機構部とを有し、前記線材供給部と前記線材引取部との間であって前記線材供給部側に設けられた第1キャプスタン機構部と、
複数の第2キャプスタンと、前記複数の第2キャプスタンをそれぞれ個別に回転駆動する複数の第2回転駆動源とを有し、前記線材供給部と前記線材引取部との間であって前記線材引取部側に設けられた第2キャプスタン機構部と、
前記複数の第1キャプスタン及び前記複数の第2キャプスタンの各間に配設されたダイス複数と、を備える伸線装置を用い、
前記複数の第2キャプスタン全てを経由した場合の線材の直径が、製造対象となる複数種の仕上り線径のうちの最も細径な仕上り線径となり、前記複数の第2キャプスタンのうちの一部を経由した場合の線材の直径が、製造対象となる複数種の仕上り線径のうちの1つの仕上り線径となるように、前記複数の第2キャプスタンの回転速度を設定し、
前記線材が経由する前記複数の第2キャプスタンの対象を全て又は一部に変更することで、複数種の仕上り線径の素線を製造する素線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−11236(P2011−11236A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158034(P2009−158034)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】