説明

伸縮ブームの反力支持構造

【課題】簡単な構成によって内部応力を低減できる伸縮ブームの反力支持構造を提供する。
【解決手段】外箱部材141の上板部両端に形成される外箱斜板部4と、内箱部材142の上板部両端に形成される内箱斜板部5と、外箱斜板部4と内箱斜板部5の間に挿入されるスライド部材2と、を備える伸縮ブームの反力支持構造Cである。
そして、スライド部材2は、内箱斜板部5に向いた内向面の傾斜方向中央近傍が傾斜方向周辺よりも突出する突出部2aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮ブームの反力支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高所作業車や移動式クレーンなどの作業車の伸縮ブームとして、様々な断面形状を有するものが知られており、さらに外箱部材と内箱部材の間にスライド部材が配置されたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ピン固定式で搖動自在のスライドプレートが開示されている。この構成によれば、スライドプレートが揺動してブーム板に密着するようになるため、内部応力を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−219685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成は、構造が複雑であるため、設置に必要なスペースが大きくなるうえに、コストも増加するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構成によって内部応力を低減できる伸縮ブームの反力支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の伸縮ブームの反力支持構造は、外箱部材の上板部両端に形成される外箱斜板部と、内箱部材の上板部両端に形成される内箱斜板部と、前記外箱斜板部と前記内箱斜板部の間に挿入されるスライド部材と、を備える伸縮ブームの反力支持構造であって、前記スライド部材は、前記内箱斜板部に向いた内向面の傾斜方向中央近傍が傾斜方向周辺よりも突出する突出部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
このような構成としたため、内向面の傾斜方向中央近傍が内箱斜板部に接してスライド部材自体が揺動できるので、スライド部材の両側のコーナー近傍に確実に反力を伝達して伸縮ブームの内部応力を低減できる。そして、このような作用を簡単な構成で提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ラフテレーンクレーンの全体構成を説明する側面図である。
【図2】伸縮ブームの構成を説明する説明図である。(a)は斜視図であり、(b)は反力の作用を説明する説明図である。
【図3】伸縮ブームの反力支持構造の構成を分解して説明する分解斜視図である。
【図4】実施例1のスライド部材の構成を説明する断面図である。
【図5】実施例1のスライド部材の作用を説明する説明図である。(a)は揺動前であり、(b)は揺動後である。
【図6】実施例2のスライド部材の構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
(ラフテレーンクレーンの全体構成)
まず、図1を用いて実施例1の伸縮ブームの反力支持構造Cを備えるラフテレーンクレーン1の全体構成を説明する。実施例1のラフテレーンクレーン1は、走行機能を有する車両の本体部分となるキャリア10と、キャリア10の四隅に配置されたアウトリガ11,・・・と、キャリア10に水平旋回自在に取り付けられた旋回台12と、旋回台12に立設されたブラケット13に取り付けられた伸縮ブーム14と、伸縮ブーム14を起伏させる起伏シリンダ15と、伸縮ブーム14先端からワイヤロープ16を介して吊下げられるフック17と、操作レバーなどが配置されたキャビン18と、を備えている。
【0012】
伸縮ブーム14は、鋼板によって筒状に形成された基端ブーム141、中間ブーム142、及び、先端ブーム143によって入れ子状に構成されている。そして、伸縮ブーム14は、起伏シリンダ15を伸縮することで起伏自在であり、内部に収容した伸縮シリンダ(不図示)を伸縮することで伸縮自在であり、伸縮ブーム14を搭載した旋回台12を回転することで旋回自在である。
【0013】
(ブームの構成)
次に、図2(a),(b)を用いて伸縮ブーム14の摺動部分の構成を説明する。ここでは、基端ブーム141と中間ブーム142の摺動部分の構成について説明する。
【0014】
伸縮ブーム14の断面は、プレス機によって上半部を4回折り曲げるとともに下半部を4回折り曲げた八角形状に形成されている。そして、外箱部材としての中間ブーム142は、内箱部材としての基端ブーム141に比べてひと回り小さい八角形状に形成されている。
【0015】
そして、基端ブーム141の平板状の上板部両端は、約45°下方に折り曲げられて外箱斜板部4が形成され、中間ブーム142の平板状の上半部両端には、約45°下方に傾斜した内箱斜板部としてのサポート5が設置されているため、外箱斜板部4とサポート5とは、製作時の折り曲げ誤差を含むものの略平行になっている。
【0016】
この外箱斜板部4は、外箱部材としての基端ブーム141の上板部を折り曲げて形成するため、基端ブーム141を形成する鋼板と同一の厚みとなっている。一方、サポート5は、内箱部材としての中間ブーム142に、補強を兼ねて別の鋼板を溶接したものであるため、中間ブーム142を形成する鋼板よりも厚肉となっている。
【0017】
さらに、外箱部材としての基端ブーム141と内箱部材としての中間ブーム142との間には、3箇所にスライド部材2,31,32が挿入されることにより、反力R,Rに対応する作用力を分散している。
【0018】
すなわち、基端ブーム141の先端部には、内面下部にスライド部材32が配置されて、伸縮ブーム14を伸ばした状態では中間ブーム142の基端部の先端寄りの位置と接触する。
【0019】
また、中間ブーム142の基端部には、側面下部にスライド部材31が配置されて、伸縮ブーム14を伸ばした状態では基端ブーム141の先端部の基端寄りの位置と接触する。
【0020】
さらに、中間ブーム142の基端部には、サポート5にスライド部材2が配置されて、伸縮ブーム14を伸ばした状態では基端ブーム141の外箱斜板部4の基端寄りの位置と接触する。
【0021】
このため、図2(b)のように、伸縮ブーム14を伸ばした状態で吊荷の荷重Wが作用すると、中間ブーム142の基端部の先端寄りではスライド部材32を通じて下方へ反力Rを作用させるとともに、中間ブーム142の基端部にはスライド部材2を通じて上方へ反力Rを作用させることとなる。
【0022】
言い換えると、吊荷の荷重Wが作用すると、基端ブーム141の先端部において、スライド部材32を通じて上方から押下力が作用することで、下板部に反力として内部応力が生じる。
【0023】
同様に、吊荷の荷重Wが作用すると、基端ブーム141の先端部の基端寄りにおいて、スライド部材2を通じて斜め下方から押上力が作用することで、外箱斜板部4に反力として内部応力が生じる。
【0024】
以下、中間ブーム142の基端部のスライド部材2を含む伸縮ブームの反力支持構造Cについて詳述する。
【0025】
(反力支持構造の構成)
次に、図3,4を用いて本実施例の伸縮ブームの反力支持構造Cの構成について説明する。
【0026】
本実施例の伸縮ブームの反力支持構造Cは、外箱部材としての基端ブーム141の上板部両端に形成される外箱斜板部4と、内箱部材としての中間ブーム142の上板部両端に形成される内箱斜板部としてのサポート5と、外箱斜板部4とサポート5の間に挿入されるスライド部材2と、を備えている。
【0027】
加えて、スライド部材2の内側であってサポート5との間には、外箱斜板部4とサポート5の間隔を調整するための2枚のシム21,21が挿入されている。
【0028】
シム21は、鋼板によって矩形に形成されるもので、両端の突出片21a,21aがブラケット51,51に設けた凹部51a,51aに嵌合することで、面内方向の移動が拘束されて脱落しないようになっている。
【0029】
スライド部材2は、外箱部材としての基端ブーム141と内箱部材としての中間ブーム142の間の摩擦抵抗を低減しつつ応力を分散して摺動を円滑にするためのもので、合成樹脂によって対称な七角柱状に形成されて、外箱斜板部4とサポート5の間に所定の余裕をもって嵌め込まれている。
【0030】
そして、配置について詳細に説明すると、スライド部材2は、外箱斜板部4(及びサポート5)の板面に対する面外方向D3は、外箱斜板部4及びサポート5によって移動が制限されている。具体的には、スライド部材2の面外方向の厚みは、外箱斜板部4とサポート5の間隔より小さく、かつ、伸縮ブーム14の摺動に支障のない最大に形成されているためD3方向にほとんど移動しない。
【0031】
また、スライド部材2は、面内方向のうちブーム軸と平行な方向D2はブラケット51,51によって移動が制限されている。具体的には、スライド部材2のブーム軸方向の長さは、ブラケット51,51の間隔と略同一に形成されているためD2方向にほとんど移動しない。
【0032】
さらに、面内方向のうちブーム軸と垂直な方向D1(後述の傾斜方向D1と同じ)は基端ブーム141によって移動が制限されている。具体的には、スライド部材2のブーム軸垂直方向の長さは、外箱部材として基端ブーム141の上板部及び側板部の間隔より小さく、かつ、伸縮ブーム14の摺動に支障のない最大に形成されているためD1方向に移動しない。
【0033】
ここにおいて、スライド部材2の外向面の上端部2dから下端部2eまでの長さは、片当たりを防止するために、外箱斜板部4の屈曲部4a,4b間の長さよりも所定量(3mm程度の微小値)だけ短く形成されている。
【0034】
そして、傾斜方向に直交する方向視(ブーム軸に垂直な平面で切断した方向)の断面形状について詳細に説明すると、七角柱状のスライド部材2は、サポート5に向いた内向面の傾斜方向中央近傍が傾斜方向周辺よりも突出する突出部2aを備えている。ここにおいて、傾斜方向とは、断面方向(ブーム軸垂直方向)かつ外箱斜板部4(及びサポート5)と平行な方向をいうものとする(図3のD1方向)。
【0035】
具体的には、スライド部材2の内向面側の断面は、内向面の傾斜方向D1の中央近傍の突出部2aを頂点とする三角形状ないし船底形状に形成されている。
【0036】
この突出部2aの位置は、突出部2aを揺動中心として外箱斜板部4に向いた外向面の傾斜方向D1両端位置から作用する反力モーメントが左右両端で等しくなるように形成されている。例えば、外箱斜板部4(及びサポート5)の折り曲げ角度が45°の場合には、スライド部材2の内向面側の断面は二等辺三角形状になる。
【0037】
加えて、この突出部2aを頂点とする三角形の底角の角度は、使用時の荷重による捩れ変形や外箱斜板部4とサポート5の製作誤差などによる角度の差分の最大値よりも大きくなるように形成される。
【0038】
さらに、スライド部材2は、傾斜方向D1に向いた上端面及び下端面の外向面寄りの位置に、外向面の傾斜方向両端位置よりも傾斜方向D1に突出したエラ部2b,2cを有している。
【0039】
つまり、スライド部材2の傾斜方向D1に向いた上端面には、スライド部材2の外向面の上端部2dが、基端ブーム141の上側の屈曲部4aに乗り上げるよりも前に上板部と接触するエラ部2bが形成されている。
【0040】
同様に、スライド部材2の傾斜方向D1に向いた下端面には、スライド部材2の外向面の下端部2eが、基端ブーム141の上側の屈曲部4bに乗り上げるよりも前に側板部と接触するエラ部2cが形成されている。
【0041】
(作用)
次に、図2,5を用いて本実施例の伸縮ブームの反力支持構造Cの作用について説明する。ここでは、吊荷によって基端ブーム141に対し中間ブーム142が相対的に捩れて、あるいは、製作時の誤差によって、上板部に対する外箱斜板部4の折曲角度よりもサポート5の折曲角度のほうが浅く、下方において両者の間隔が狭くなっている場合について説明する。
【0042】
まず、図2に示すように、伸縮ブーム14を伸ばした状態で吊荷の荷重Wが作用すると、中間ブーム142の基端部の前寄り位置が支点となって、中間ブーム142の基端部は上方に移動する。
【0043】
この過程を拡大した断面で説明すると、図5(a)に示すように、中間ブーム142の基端部に設置されたサポート5が上方向に移動すると(黒矢印)、サポート5の上面がスライド部材2の突出部2aと接触する。
【0044】
引き続き、サポート5が上方向に移動すると、スライド部材2の突出部2aはサポート5の上面と接触したまま、スライド部材2の外向面の下端部2eが外箱斜板部4の下側の屈曲部4b近傍と接触する。
【0045】
さらに、サポート5が上方向に移動すると、突出部2a及び下端部2eの接触を保ったまま、スライド部材2の上側が下端部2eを揺動中心として外箱斜板部4方向に揺動する(白矢印)。
【0046】
そして、図5(b)に示すように、スライド部材2の外向面の上端部2dが外箱斜板部4の上側の屈曲部4aと接触した後は、突出部2aを揺動中心として上端部2d及び下端部2eからのモーメントがつり合うことで、スライド部材2の位置が固定されることとなる。
【0047】
この際、例えばスライド部材2が上方向にずれても、上側のエラ部2bが基端ブーム141の上板部と接触して押下力を受けることで、スライド部材2は下方に移動する。
【0048】
(効果)
次に、本実施例の伸縮ブームの反力支持構造Cの効果を列挙して説明する。
【0049】
(1)実施例1の伸縮ブームの反力支持構造Cでは、スライド部材2は、内箱斜板部としてのサポート5に向いた内向面の傾斜方向D1中央近傍が傾斜方向周辺よりも突出する突出部2aを有している。
【0050】
したがって、内向面の傾斜方向D1中央近傍が内箱斜板部としてのサポート5に接してスライド部材2自体が長手方向の軸に対して揺動することで、スライド部材2の両側のコーナー近傍である上端部2d及び下端部2eに確実に反力を伝達して伸縮ブーム14の内部応力を低減できる。そして、このような作用を簡単な構成で提供できる。
【0051】
つまり、使用時のブーム間の相対的な捩れや変形や製作時の誤差等に起因して、内箱斜板部としてのサポート5と外箱斜板部4の折曲角度が一致せず両者が平行に形成されていない場合には、スライド部材2の内向面と外向面が平行に形成されていると、上端部2d又は下端部2eの一方のみがサポート5及び外箱斜板部4に挟まれて片当たりが生じてしまう。
【0052】
このように片当たりが生じると、外箱斜板部4を含む外箱部材には高応力が発生することで疲労寿命が著しく低下するうえ、これを防止するために板厚を増加したり補強板を追加したりすると軽量化の妨げになる。さらに、補強板を追加する場合には、溶接歪を取除く作業が新たに生じるためコストが増加してしまう。
【0053】
そこで、スライド部材2を傾斜方向D1中央近傍が突出するように形成しておけば、伸縮ブーム14の伸縮時に内箱部材が外箱部材に近づくように移動すると、周辺よりも突出した傾斜方向D1中央近傍が周辺よりも先にサポート5に接して、スライド部材2自体が揺動して、外箱部材を面で捕らえるようになる。
【0054】
この場合、外箱部材は薄板であるため片当たりして高応力が発生すると疲労による亀裂発生の懸念があるものの、内箱部材のサポート5は厚板であるため面での接触にならなくても高応力は発生しない。
【0055】
(2)また、スライド部材2は、突出部2aを揺動中心として、外箱斜板部4に向いた外向面の傾斜方向D1両端位置である上端部2d及び下端部2eから作用する反力モーメントが等しくなるように形成されることで、上端部2d及び下端部2eを通じて均等に応力を分散した状態でスライド部材2の位置が固定される。
【0056】
つまり、スライド部材2は、揺動中は下端部2e(又は上端部2d)を中心として揺動するが(図5(a))、上端部2d(又は下端部2e)が接触した後は、モーメントがつり合うことで揺動しなくなる。
【0057】
(3)さらに、スライド部材2は、内向面が三角形状に形成されることで、きわめて簡単な形状によって、突出部2aを形成できるうえに、製作コストを抑えることができる。
【0058】
加えて、突出部2aが三角形の頂点として形成されている場合でも、使用している間に内向面及び外向面は徐々に変形して外側ブームに当たりがついた状態(応力を分散した位置)で馴染んでくる。
【0059】
(4)そして、スライド部材2は、傾斜方向に向いた上端面及び下端面に、外向面の傾斜方向D1両端位置よりも突出したエラ部2b、2cを有することで、外箱部材の上板部や側板部から反力を受けたスライド部材2が移動して、片当たりの発生を防止できる。
【0060】
例えば、スライド部材2が傾斜方向D1の上方にずれた場合には、上側のエラ部2bが外箱部材の上板部と接触して押下力を受けて、スライド部材2が傾斜方向D1下方に移動する。他方、スライド部材2が傾斜方向D1の下方にずれた場合には、下側のエラ部2cが外箱部材の側板部と接触して押下力を受けて、スライド部材2が傾斜方向D1上方に移動する。
【実施例2】
【0061】
以下、図6を用いて、前記実施例とは別の形態のスライド部材2Aを備える伸縮ブームの反力支持構造C1について説明する。なお、前記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0062】
(全体構成及びブームの構成)
まず、構成について説明するが、ラフテレーンクレーン1の全体構成及び伸縮ブーム14の構成は、実施例1と略同様であるため説明を省略する。
【0063】
(反力支持構造の構成)
実施例2の伸縮ブームの反力支持構造C1の構成は、実施例1と略同様に、外箱斜板部4と、内箱斜板部としてのサポート5と、スライド部材2Aと、を備えている。なお、本実施例では、外箱斜板部4とサポート5の間隔を調整するシムは挿入されていない。一方、スライド部材2Aの形状は実施例1と異なっている。
【0064】
つまり、本実施例のスライド部材2Aは、外箱部材としての基端ブーム141と内箱部材としての中間ブーム142の間の摩擦抵抗を低減しつつ応力を分散して摺動を円滑にするためのもので、合成樹脂によってサポート5に向いた内向面の傾斜方向中央近傍が傾斜方向周辺よりも突出する円弧形状の突出部2fを備えたかまぼこ形状に形成されて、外箱斜板部4とサポート5の間に所定の余裕をもって嵌め込まれている。
【0065】
配置については、実施例1と同様であるから説明を省略する。
【0066】
この突出部2fの最も突出した頂点位置は、突出部2fの頂点位置を揺動中心として外箱斜板部4に向いた外向面の傾斜方向D1両端位置から作用する反力モーメントが左右両端で等しくなるように形成されている。
【0067】
加えて、突出部2fの円弧の半径は、外箱斜板部4とサポート5の製作誤差や使用時のブーム間の相対的な捩れや変形による角度差が最大値になっても、円弧形状の突出部2fがサポート5と接触するように形成される。なお、実施例2のスライド部材2は、エラ部を有していない。
【0068】
(作用・効果)
次に、実施例2の伸縮ブームの反力支持構造C1の作用・効果について説明する。
【0069】
(1)実施例2の伸縮ブームの反力支持構造C1では、スライド部材2Aは、内箱斜板部としてのサポート5に向いた内向面の傾斜方向D1中央近傍が傾斜方向周辺よりも突出する突出部2fを有している。
【0070】
したがって、内向面の傾斜方向D1中央近傍が内箱斜板部としてのサポート5に接してスライド部材2A自体が揺動することで、スライド部材2Aの両側のコーナー近傍である上端部2d及び下端部2eに確実に反力を伝達して伸縮ブーム14の内部応力の集中を分散できる。
【0071】
(2)また、実施例2のスライド部材2Aは、内向面が円弧形状に形成されることで、きわめて簡単な形状によって突出部2fを形成できる。
【0072】
さらに、突出部2fが円弧形状に形成されていれば、突出部2fのどの位置がサポート5と接触しても、接触位置から押上力を伝達してスライド部材2A自体を揺動させやすくなる。
【0073】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施例と略同様であるため説明を省略する。
【0074】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0075】
例えば、実施例1,2では、ラフテレーンクレーン1に本発明を適用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、カーゴクレーン、トラッククレーンなどの移動式クレーン、高所作業車など、伸縮ブームを備える作業車であれば本発明を適用できる。
【0076】
また、実施例1,2では、内向面の断面形状が三角形状のスライド部材2と円弧形状のスライド部材2Aとについて説明したが、これに限定されるものではなく、傾斜方向中央近傍が周辺よりも突出する形状であれば、例えば凸字状など、どのような形状であってもよい。
【0077】
さらに、実施例1,2では、ブーム断面の下半部を4回折り曲げた八角形状に形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、上半部に斜板部を有する形状であれば本発明を適用できる。
【0078】
そして、実施例1,2では、スライド部材2,2Aについて、ブーム軸に垂直な左右方向の断面形状について詳述したが、これに限定されるものではなく、ブーム軸に沿った前後方向の断面形状が三角形状(点接触)又は円弧形状(点接触)にも形成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 ラフテレーンクレーン
14 伸縮ブーム
141 基端ブーム(外箱部材)
142 中間ブーム(内箱部材)
2,2A スライド部材
2a 突出部
2b,2c エラ部
2d 上端部
2e 下端部
2f 突出部
4 外箱斜板部
4a,4b 屈曲部
5 サポート(内箱斜板部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱部材の上板部両端に形成される外箱斜板部と、内箱部材の上板部両端に形成される内箱斜板部と、前記外箱斜板部と前記内箱斜板部の間に挿入されるスライド部材と、を備える伸縮ブームの反力支持構造であって、
前記スライド部材は、前記内箱斜板部に向いた内向面の傾斜方向中央近傍が傾斜方向周辺よりも突出する突出部を有することを特徴とする伸縮ブームの反力支持構造。
【請求項2】
前記スライド部材は、前記突出部を揺動中心として、前記外箱斜板部に向いた外向面の傾斜方向両端位置から作用する反力モーメントが等しくなるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の伸縮ブームの反力支持構造。
【請求項3】
前記スライド部材は、前記内向面が傾斜方向に直交する方向視において三角形状に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伸縮ブームの反力支持構造。
【請求項4】
前記スライド部材は、前記内向面が傾斜方向に直交する方向視において円弧形状に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伸縮ブームの反力支持構造。
【請求項5】
前記スライド部材は、傾斜方向に向いた上端面及び下端面に、前記外向面の傾斜方向両端位置よりも突出したエラ部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の伸縮ブームの反力支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−126465(P2012−126465A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276602(P2010−276602)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】