説明

伸縮式扉装置

【課題】中間リンク部材を中間仮想平面に対して非対称な形状としつつ、全ての中間リンク部材の形状を共通化することが可能な伸縮式扉装置を提供する。
【解決手段】X字状に交差する一対の中間リンク部材21,21が一列状に連結された上下一対のパンタグラフ機構と、それらを上下に連結する連結桟とを備え、中間リンク部材21は、長手方向中央部及び両端部に軸方向幅の略半分の略筒状に形成された中央枢着部31及び一対の端部枢着部32,33を備え、互いに交差する中間リンク部材21,21は互いの中央枢着部31を第1連結桟13aで連結し、伸縮方向に隣接する中間リンク部材21,21は互いの端部枢着部32,33を第2連結桟13bで連結した伸縮式扉装置で、中央枢着部31を中間リンク部材21の軸方向一端側に、一対の端部枢着部32,33を中間リンク部材21の軸方向における互いに異なる端部側に夫々配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のパンタグラフ機構を互いに平行に配置すると共にそれらの間を複数の連結桟により連結した伸縮式扉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伸縮式扉装置の一例としての伸縮式門扉には、所定距離をおいて互いに平行に配置される上下一対のパンタグラフ機構と、これら一対のパンタグラフ機構を上下に連結する複数本の連結桟とを備えたものがある。この種の伸縮式門扉では、各パンタグラフ機構はX字状に交差された一対の中間リンク部材が一列状に複数組連結され、更にその両端側に各一対の端部リンク部材が連結されて構成され、その端部リンク部材が戸当たり側の施錠枠及び吊り元側の吊り元支柱に連結されている。
【0003】
また、X字状に交差する一対の中間リンク部材はその交差部に夫々設けられた中央枢着部において第1枢軸により相対回転可能に連結され、隣接する中間リンク部材は互いの端部に設けられた端部枢着部において第2枢軸により相対回転可能に連結されており、連結桟として、両端部に第1枢軸を有する第1連結桟と、両端部に第2枢軸を有する第2連結桟とを備えたものが知られている。
【0004】
また特許文献1に記載の伸縮式門扉では、各中間リンク部材を軸方向に幅広に形成すると共に、中央枢着部及び端部枢着部を中間リンク部材の軸方向幅の略半分の長さの筒状に形成して中間リンク部材の軸方向同一端部側に配置し、交差する中間リンク部材は互いの中央枢着部を、伸縮方向に隣接する中間リンク部材は互いの端部枢着部を夫々軸方向に向かい合わせて連結することにより、外観的には各リンク部材が伸縮方向に一定幅で連続するパンタグラフ機構を構成することができ、また撓み方向に十分な強度を確保できるようになっている。
【特許文献1】実公昭55−49437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の伸縮式門扉のように、X字状に交差する中間リンク部材を互いに軸方向に向かい合わせて連結する場合、中間リンク部材をその三つの枢着部の中心軸を通る中間仮想平面に対して対称な形状にすると、扉を縮める際に、中間リンク部材の交差角度が比較的大きい段階で互いに干渉して扉を十分に縮めることができない。そこで、特許文献1に記載の伸縮式門扉では、中間リンク部材の交差角度が十分に小さくなるまで干渉が生じないように中間リンク部材をその中間仮想平面に対して非対称な形状としている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の伸縮式門扉では、このような中間仮想平面に対して非対称な形状の中間リンク部材を採用し、且つ上述のように中央枢着部及び端部枢着部を中間リンク部材の軸方向同一端部側に配置しているため、上下の個々のパンタグラフ機構については一種類の中間リンク部材の組み合わせで夫々構成することができるものの、上下二つのパンタグラフ機構を構成する中間リンク部材の形状を共通にすることはできず、一つの伸縮式門扉に対して少なくとも二種類の中間リンク部材を用いる必要があった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、中間リンク部材の交差角度が十分に小さくなるまで互いに干渉が生じないように中間リンク部材をその三つの枢着部の中心軸を通る中間仮想平面に対して非対称な形状としつつ、全ての中間リンク部材の形状を共通化することが可能な伸縮式扉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定距離をおいて互いに平行に配置される一対のパンタグラフ機構11,12と、これら一対のパンタグラフ機構11,12を連結する複数本の連結桟13とを備え、前記パンタグラフ機構11,12は、X字状に交差する一対の中間リンク部材21,21が一列状に複数組連結されて構成され、前記中間リンク部材21は、夫々長手方向中央部及び両端部に当該中間リンク部材21の軸方向幅の半分又はそれ以下の長さに形成された略筒状の中央枢着部31及び一対の端部枢着部32,33を備え、互いに交差する前記中間リンク部材21,21は互いの前記中央枢着部31を軸方向に向かい合わせて第1枢軸41を挿通することにより、伸縮方向に隣接する前記中間リンク部材21,21は互いの前記端部枢着部32,33を軸方向に向かい合わせて第2枢軸42を挿通することにより、夫々相対回転可能に連結されており、前記連結桟13として、両端部に前記第1枢軸41を有する第1連結桟13aと、両端部に前記第2枢軸42を有する第2連結桟13bとを備えた伸縮式扉装置において、前記中央枢着部31を前記中間リンク部材21の軸方向一端側に、一対の前記端部枢着部32,33を前記中間リンク部材21の軸方向における互いに異なる端部側に夫々配置したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、中間リンク部材をその三つの枢着部の中心軸を通る中間仮想平面に対して非対称な形状としても、全ての中間リンク部材の形状を共通化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。図1〜図17は本発明を伸縮式門扉として具現化した第1の実施形態を例示している。
【0011】
図1の(a)及び(b)において、1は塀、2は出入口である。3は吊り元支柱、4は戸当たり支柱で、これらの支柱3,4は塀1の後側で出入口2の左右両側の地面5に立設されている。戸当たり支柱4には、例えばその後側に施錠受け枠6が上下一対の連結部材7,7を介して固定的に連結されている。
【0012】
8は伸縮自在に構成された門扉本体で、吊り元支柱3と施錠受け枠6との間に出入口2を左右方向に開閉するように伸縮自在に配置されている。門扉本体8は、水平面内で伸縮可能に設けられ且つ互いに平行に配置される上下一対のパンタグラフ機構11,12と、それら一対のパンタグラフ機構11,12を上下に連結する複数本の連結桟13とを備え、その吊り元側端部が上下方向のヒンジ14を介して吊り元支柱3に回動自在に連結されている。
【0013】
また、門扉本体8の戸当たり側端部には施錠枠15が設けられており、この施錠枠15に、門扉本体8の伸縮操作を行うための把手16、門扉本体8を伸長して出入口2を閉じた状態で施錠受け枠6側に施錠するための施錠手段17等が設けられている。門扉本体8の下部側には、例えば一対のキャスター車輪18が伸縮方向の複数箇所、例えば戸当たり側端部近傍及び伸縮方向中間部近傍の二箇所に設けられている。また、例えば門扉本体8の伸縮方向中間部付近には、門扉本体8を地面5に固定するための落とし棒19が、連結桟13内に上下方向摺動可能に収容されている。
【0014】
パンタグラフ機構11,12は、X字状に交差・連結された一対の中間リンク部材21,21よりなるリンク交差体22が一列状に複数組、例えば11組連結され、更にその伸縮方向両端側に一対の端部リンク部材23,23が夫々連結されて構成されており、吊り元側の端部リンク部材23,23が吊り元支柱3に、戸当たり側の端部リンク部材23,23が施錠枠19に、それぞれ端部連結体24を介して連結されている。
【0015】
中間リンク部材21は例えば合成樹脂製で、上下のパンタグラフ機構11,12を構成する全てが同一形状に形成されており、図2及び図3に示すように、略円筒状の中央枢着部31と、この中央枢着部31と同一平面上で且つ中央枢着部31を挟んでその両側所定距離の位置に中央枢着部31と平行に配置された略円筒状の端部枢着部32,33と、中央枢着部31とその両側の端部枢着部32,33との間を夫々固定的に連結する一対の本体部34,34とを一体に備えている。
【0016】
本体部34は、中央枢着部31及び端部枢着部32,33の軸方向に沿う略板状で、例えばその軸方向幅が略一定に形成されている。本体部34には、その両面側に、軸方向に直交する方向の溝35が軸方向の略全体にわたって所定間隔で平行に設けられており、中間リンク部材21の面内方向及び面外方向に一定の曲げ強度を確保しつつ軽量化が図られている。
【0017】
中央枢着部31及び端部枢着部32,33は全て同径で、中間リンク部材21の軸方向幅に対してその略半分の長さに形成され、中央枢着部31は中間リンク部材21の軸方向一端側に、一対の端部枢着部32,33は中間リンク部材21の軸方向における互いに異なる端部側、例えば端部枢着部32が中央枢着部31と同じ端部側、端部枢着部33が中央枢着部31と異なる端部側に夫々配置されている。即ち、中央枢着部31及び端部枢着部32は本体部34の軸方向同一端部側から反対側の端部側に向けてその略半分の範囲にのみ設けられ、端部枢着部33は中央枢着部31及び端部枢着部32とは逆の端部側からその反対側の端部側に向けてその略半分の範囲にのみ設けられている。
【0018】
また、中間リンク部材21は、中央枢着部31及び端部枢着部32,33の各中心軸を通る中間仮想平面P0(図2(a))に対して非対称に形成されている。まず、本体部34,34は、中央枢着部31との接続部分である中央側接続部34a及び端部枢着部32,33との接続部分である端部側接続部34bが、中間仮想平面P0と各枢着部31,32,33との交差位置よりも夫々各枢着部31,32,33の中心軸廻り同一方向に若干ずれた位置に配置されている。即ち、例えば中間リンク部材21を中央枢着部31の配置側から軸方向に見た場合(図2(a))、中央枢着部31側の中央側接続部34a,34aは、中央枢着部31の中心軸に対して中間仮想平面P0の方向から夫々時計方向に所定角度(例えば10度程度)ずれた位置に配置され、また端部枢着部32,33側の各端部側接続部34b,34bについても、端部枢着部32,33の中心軸に対して中間仮想平面P0の方向から夫々時計方向に所定角度(例えば10度程度)ずれた位置に配置されており、本体部34,34は互いに略平行となっている。
【0019】
また、本体部34,34には、中央側接続部34a又はその近傍に、中央枢着部31の周方向の一方側、例えば中央側接続部34aの中間仮想平面P0からのずれ方向と同一側に突出する一対の突起部37が一体に設けられている。即ち、例えば中間リンク部材21を中央枢着部31の配置側から軸方向に見た場合(図2(a))、突起部37,37は本体部34,34に対して夫々中央枢着部31の中心軸廻り時計方向に突出している。
【0020】
更に、中央枢着部31及び端部枢着部32,33の内面側には、その軸方向に沿って断面U字状のねじ溝38が、例えば中央側接続部34a、端部側接続部34bに対応する位置に夫々一本ずつ設けられている。ねじ溝38は、その凹入深さが固定ねじ39の軸部の直径よりも若干浅く形成されている。
【0021】
以上のような中間リンク部材21は、図4及び図5に示すように連結されてパンタグラフ機構11,12を形成している。即ち、まず一対の中間リンク部材21,21の中央枢着部31,31が、例えばワッシャ40を挟んで軸方向に向かい合わされ、第1連結桟13aの両端側に設けられた第1枢軸41がそれら中央枢着部31,31に挿通されることにより相対回転可能に連結されてリンク交差体22が構成される。
【0022】
そして、全ての中間リンク部材21について、連結桟13の軸方向端部側に対応する端部枢着部32,33が扉伸縮方向の所定端側(例えば戸当たり側)に、連結桟13の軸方向内側に対応する端部枢着部32,33が扉伸縮方向の他端側(例えば吊り元側)に向くようにリンク交差体22が一列状に配列され、互いに隣接する中間リンク部材21,21の端部枢着部32,33が、例えばワッシャ40を挟んで軸方向に向かい合わされ、第2連結桟13bの両端側に設けられた第2枢軸42がそれら端部枢着部32,33に挿通されることにより相対回転可能に連結される。
【0023】
即ち、中間リンク部材21の端部枢着部32,33のうち、連結桟13の軸方向内側に配置されるものを内端部枢着部32a,33a、連結桟13の軸方向端部側に配置されるものを外端部枢着部32b,33bとして区別すると、リンク交差体22を構成する一対の中間リンク部材21,21のうち、連結桟13の軸方向内側に配置される内中間リンク部材21aは、図4,図5に示すように戸当たり側に外端部枢着部33bが、吊り元側に内端部枢着部32aがくるように配置され、連結桟13の軸方向端部側に配置される外中間リンク部材21bは、図4,図5に示すように戸当たり側に外端部枢着部32bが、吊り元側に内端部枢着部33aがくるように配置される。そして、内中間リンク部材21aの外端部枢着部33bは、戸当たり側に隣接する外中間リンク部材21bの内端部枢着部33aと連結され、内中間リンク部材21aの内端部枢着部32aは、吊り元側に隣接する外中間リンク部材21bの外端部枢着部32bと連結される。
【0024】
これにより、第1連結桟13aの両端側に配置される一対のリンク交差体22,22について見れば、図4に示すように上側のパンタグラフ機構11側の内中間リンク部材21aと下側のパンタグラフ機構12側の外中間リンク部材21bとが同一の第2連結桟13bにより連結され、図5に示すように上側のパンタグラフ機構11側の外中間リンク部材21bと下側のパンタグラフ機構12側の内中間リンク部材21aとが同一の第2連結桟13bにより連結される。
【0025】
以上のように構成されたパンタグラフ機構11,12は、伸長状態では、図6に実線で示すように各リンク交差体22を構成する中間リンク部材21a,21bの各突起部37,37同士が互いに当接してそれ以上の伸長が規制される。また、中間リンク部材21は、上述したように本体部34,34の中央側接続部34a及び端部側接続部34bが中間仮想平面P0と各枢着部31,32,33との交差位置よりも夫々各枢着部31,32,33の中心軸廻り同一方向に若干ずれた位置に配置されているため、パンタグラフ機構11,12を縮める際には、図6に一点鎖線で示すように、中間リンク部材21a,21bはその交差角度が十分に小さくなるまで互いに干渉することがなく、コンパクトに折り畳むことができる。
【0026】
連結桟13は、アルミ製その他の金属製丸パイプ材よりなり、上側のパンタグラフ機構11の上縁側から下側のパンタグラフ機構12の下縁側に達する長さで且つ例えばその長手方向全体にわたって一定径に形成されている。また、連結桟13には、図4,図5,図7,図8に示すように、その両端部から夫々所定距離の位置にスライド規制部材43が装着されており、それらスライド規制部材43,43から両端部までの範囲が第1枢軸41,第2枢軸42となっている。
【0027】
スライド規制部材43は、中央枢着部31及び端部枢着部32,33の連結桟13に対する軸方向中央側への移動を規制するためのもので、ステンレスその他の金属で形成され、例えば連結桟13に外嵌される筒状部44と、この筒状部44の軸方向一端側に設けられ且つ半径方向外向きに張り出す鍔部45とを一体に備えている。このスライド規制部材43は、連結桟13の両端側に、例えば鍔部45が軸方向内側となる向きで外嵌され、例えば筒状部44の外側からその中心に向けて一対のバーリング穴46を穿孔することにより連結桟13に固定されている。
【0028】
また、連結桟13のうち、中間リンク部材21の中央枢着部31を連結する第1連結桟13aには、図9,図10等に示すように、その内面側に軸方向の突条部47が周方向略等ピッチで複数本、例えば四本設けられている。この突条47は、第1連結桟13aに一体で、その突出高さがバーリング穴46の内向き突出量と略同じか若干大きくなっており、連結桟13内に配置される落とし棒19(図1)をバーリング穴46等に干渉することなく軸方向にスムーズに案内するようになっている。また、連結桟13のうち、リンク部材21の端部枢着部32,33を連結する第2連結桟13bには、図12等に示すように、その内面側に断面C字状又は筒状のねじ受け部48が例えば軸方向の略全域にわたって一体に設けられている。
【0029】
そして、第1連結桟13aの第1枢軸41には、まず内中間リンク部材21aの中央枢着部31が、その端縁をスライド規制部材43の鍔部45に当接させるように外嵌され、続いてワッシャ40を挟んで外中間リンク部材21bの中央枢着部31が外嵌されている。また、第2連結桟13bの第2枢軸42には、内端部枢着部32a又は内端部枢着部33aが、その端縁をスライド規制部材43の鍔部45に当接させるように外嵌され、続いてワッシャ40を挟んで外端部枢着部32b又は外端部枢着部33bが外嵌される。
【0030】
ここで、スライド規制部材43は、筒状部44を軸方向端部側に向けて連結桟13に挿通・固定されているため、筒状部44及びそのバーリング穴46は中央枢着部31又は端部枢着部32,33によって覆われ、外部に露出するのは鍔部45だけである。なお、中央枢着部31及び端部枢着部32,33の内面側には、スライド規制部材43側の筒状部44に対応して少なくともその筒状部44の板厚分だけ内径が大きい拡径部49が形成されている。
【0031】
また、本実施形態では、第2連結桟13bの下端側が、その軸方向端部側に装着されている外端部枢着部32b,33bに対して固定されると共に、第2連結桟13bの上端側には端部枢着部32,33の抜け止め処理が施されている。即ち、第2連結桟13bの上下両端側の第2枢軸42に夫々内端部枢着部32a又は内端部枢着部33aと外端部枢着部32b又は外端部枢着部33bとが順次装着された後、図8,図13等に示すように、下端側の外端部枢着部32b及び外端部枢着部33bのねじ溝38に対して下側から固定ねじ39がねじ込まれる。これにより、固定ねじ39が外端部枢着部32b又は外端部枢着部33bのねじ溝38とその内周側の第2枢軸42との両方に咬み合うため、両者は互いに軸方向及び回転方向に固定される。
【0032】
また、このように枢着部32,33の内周に沿って軸方向に設けられたねじ溝38に固定ねじ39をねじ込んで枢着部32,33とその内側の連結桟13とを固定することにより、ねじやリベット等の固定手段が枢着部の外周側に露出せず、見栄えがよいという利点がある。なお、枢着部32,33の端部側には固定ねじ39の頭部が露出するが、本実施形態の場合にはそれが第2連結桟13bの下端側のみであるため、死角となって通常は人目に触れることはなく、またそれが第2連結桟13bの上端側であったとしても、後述する第2実施形態のようにキャップ53aを第2連結桟13bの端部に装着することにより容易に隠すことができる。
【0033】
また、図8,図11等に示すように、第2連結桟13bの上端側には、抜け止めワッシャ51が、第2連結桟13bの上端面とその外周側の外端部枢着部32b又は外端部枢着部33bの上端面とに跨るように装着され、抜け止めねじ52を第2連結桟13b内のねじ受け部48にねじ込むことにより固定されている。これにより、第2連結桟13bの上端側の第2枢軸42に装着された軸方向内外の端部枢着部32,33は、第2連結桟13bに固定されたスライド規制部材43と抜け止めワッシャ51とに挟まれて第2枢軸42上に保持される。
【0034】
なお、例えば第2連結桟13bの上端側に装着された外端部枢着部32b,33bには、抜け止めワッシャ51との間に緩衝部材43aが装着されている。緩衝部材43aは、例えばスライド規制部材43と同様、筒状部44aとその軸方向一端側から半径方向外側に張り出す鍔部45aとを一体に備え、鍔部45aが外端部枢着部32b,33bの端面を覆うように拡径部49内に着脱自在に装着されており、その鍔部45aの外側に抜け止めワッシャ51が当接している。
【0035】
また、本実施形態では、第1連結桟13aは、図7等に示すように何れの中間リンク部材21とも固定されておらず、スライド規制部材43の鍔部45が、内中間リンク部材21aの中央枢着部31の軸方向内側に当接してその軸方向への移動が規制されることにより、上下のパンタグラフ機構11,12間に保持されている。
【0036】
また、連結桟13の少なくとも上端側にはキャップ53が着脱可能に装着されている。本実施形態では、第1連結桟13aと第2連結桟13bとで同一のキャップ53を使用しており、このキャップ53は、中央枢着部31,外端部枢着部32b,33bの軸方向外側の端部を覆う蓋部54と、当該キャップ53を連結桟13の内面側に着脱自在に固定する固定部55とを例えば一体に備えている。
【0037】
蓋部54は、例えば中央枢着部31,端部枢着部32,33と略同じ外径の丸蓋状で、その外縁側には裏側に向けて所定幅の周壁部54aが立設されており、その内側に第2連結桟13bの端部に装着される抜け止めねじ52の頭部を収容可能となっている。また、固定部55は、蓋部54の裏面側に突設され且つ抜け止めワッシャ51を避けて第2連結桟13bの内面側に嵌合可能な例えば断面略三日月型に形成されており、その外周面側には、例えばその軸方向に沿って平行に配置され且つ固定部55を着脱する際に連結桟13の内面側に沿って摺動する複数の案内突条部55aと、軸方向に略直交する板状に形成され且つ案内突条部55aよりも大きく外側に張り出して連結桟13の内面側に圧着する複数の抜け止め部55bとを一体に備えている。
【0038】
また、パンタグラフ機構11,12の両端側で中間リンク部材21に連結される端部リンク部材23は、中間リンク部材21と同じく例えば合成樹脂製で、図14に示すように、長手方向両端側に配置される略円筒状の連結側枢着部61及び支持側枢着部62と、これら連結側枢着部61と支持側枢着部62との間を固定的に連結する本体部63とを一体に備えている。
【0039】
本体部63は、連結側枢着部61及び支持側枢着部62の軸方向に沿う略板状で、リンク部材21側の本体部34と等しい軸方向幅に形成されており、その両面側には、リンク部材21側の本体部34と同様、軸方向に直交する方向の溝35が軸方向の略全体にわたって所定間隔で平行に設けられている。
【0040】
連結側枢着部61は、リンク部材21側の端部枢着部32,33と同径で、端部リンク部材23の軸方向幅に対してその略半分の長さに形成され、端部リンク部材23の軸方向一端側に配置されている。また、支持側枢着部62は、例えば連結側枢着部61よりも小径に形成され、端部リンク部材23の軸方向幅と略等しい長さに形成されている。なお、端部リンク部材23は、連結側枢着部61及び支持側枢着部62の各中心軸を通る中間仮想平面P1(図14(a))に対して対称な形状に形成されている。
【0041】
この端部リンク部材23は、上下のパンタグラフ機構11,12の両端側の計四カ所に夫々二本一組で配置されており、図15〜図17に示すように、一端側の連結側枢着部61がパンタグラフ機構11,12側の端部枢着部32,33に対して第2連結桟13bにより連結され、他端側の支持側枢着部62が端部連結体24側の枢軸64により枢支されている。
【0042】
端部連結体24は、門扉本体8の伸縮方向両端側に設けられており、上下のパンタグラフ機構11,12間に対応して連結桟13に平行に設けられた上下方向の軸保持枠65を備え、この軸保持枠65の上下両端側からその軸方向外側、即ち上下両側に向けて各二本の枢軸64が突設されている。一組の枢軸64,64は、それぞれ門扉本体8の幅方向に近接して平行に配置されており、この二本の枢軸64,64によって一対の端部リンク部材23,23の支持側枢着部62がそれぞれ枢支されている。
【0043】
一組の枢軸64,64には、支持側枢着部62を挟み込むように眼鏡型のワッシャ66,67が装着されており、端部側のワッシャ67の外側から各枢軸64,64に対して例えばブラインドリベット68を打ち込むことにより、支持側枢着部62が枢軸64に対して回転自在に固定されている。
【0044】
そして、扉伸縮方向両端側の二つの端部連結体24のうち、戸当たり端側の端部連結体24は施錠枠15に固定され、吊り元端側の端部連結体24はヒンジ14を介して吊り元支柱3側に連結されている。
【0045】
このように、パンタグラフ機構11,12の伸縮方向両端側はそれぞれ近接する二本の枢軸64,64を介して吊り元支柱3と施錠枠15とに連結されているため、扉伸縮時に施錠枠15が門扉本体8に対して縦軸廻りに揺動することがなく、施錠受け枠6に対して施錠枠15を常に正対させた状態で扉の開閉を行うことができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の伸縮式門扉は、中央枢着部31を中間リンク部材21の軸方向一端側に、一対の端部枢着部32,33を中間リンク部材21の軸方向における互いに異なる端部側に夫々配置しているため、中間リンク部材21,21の交差角度が十分に小さくなるまで互いに干渉が生じないように中間リンク部材21をその三つの枢着部31〜33の中心軸を通る中間仮想平面P0に対して非対称な形状としているにも拘わらず、全ての中間リンク部材21の形状を共通化することができたものである。
【0047】
また、中間リンク部材21は、中央枢着部31と端部枢着部32,33との間を夫々固定的に連結する一対の本体部34,34と、それら本体部34,34の中央枢着部31側端部近傍に配置され且つ中央枢着部31の周方向一方側に突出する突起部37,37とを備え、パンタグラフ機構11,12を伸長したとき、互いに交差する中間リンク部材21,21の各突起部37が互いに当接してそれ以上の伸長を阻止するように構成されているが、このような構成としても、全ての中間リンク部材21の形状を共通化できる。
【0048】
また、端部枢着部32,33の内面側にその軸方向に沿ってねじ溝38を設け、連結桟13の軸方向端部側に対応する外端部枢着部32b,33bと、その内周側の第2枢軸42との間にねじ溝38に沿って固定ねじ39をねじ込むことにより外端部枢着部32b,33bと第2枢軸42とを固定しているため、固定ねじ39が枢着部の外周側に露出せず、例えば本実施形態のように連結桟13の下端側であれば固定ねじ39を露出させた状態でも死角となって通常は人目に触れることはなく、またそれが連結桟13の上端側であったとしても連結桟13の端部にキャップを装着することにより容易に隠すことができる。
【0049】
図18〜図21は本発明の第2の実施形態を例示し、第2連結桟13bの上下両端側を夫々中間リンク部材21における軸方向端部側の外端部枢着部32b,33bに固定するように構成した例を示している。
【0050】
本実施形態では、図19〜図21に示すように、第1の実施形態において第2連結桟13bの下端側を外端部枢着部33b,32bに固定したのと同様、上端側の外端部枢着部33b,32bのねじ溝38に対しても、上側から固定ねじ39をねじ込むことにより、第2連結桟13bの上下両端部は、軸方向端部側の外端部枢着部32b,33bに対して夫々軸方向及び回転方向に固定されている。
【0051】
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様、全ての中間リンク部材21が、連結桟13の軸方向端部側に対応する外端部枢着部32b,33bを扉伸縮方向の所定端側(戸当たり端側)に、連結桟13の軸方向内側に対応する内端部枢着部32a,33aを扉伸縮方向の他端側(吊り元端側)に向けた状態で配置されている。これにより、パンタグラフ機構11,12で互いに同方向を向いている中間リンク部材21,21は、軸方向端部側に対応する外端部枢着部32b,33b同士、軸方向内側に対応する内端部枢着部32a,33a同士がそれぞれ第2連結桟13bで連結されるため、その第2連結桟13bの上下両端側を軸方向端部側の外端部枢着部32b,33bに固定しても、門扉本体8の伸縮動作が阻害されることがないばかりか、門扉本体8は、上下一対のリンク部材21a,21bとそれらの一端側を固定的に連結する第2連結桟13bとで構成されるコの字型の剛部材が扉伸縮方向に順次連結された構造となるため、全体として高強度にできる利点がある。
【0052】
また、第1の実施形態で採用したような抜け止め処理を別途施す必要がないため、第2連結桟13bの内面側にねじ受け部48等を設ける必要がなく、例えば第2連結桟13bを第1連結桟13aと共通化することができる。なお、第1,第2連結桟13a,13bの形状は、第1の実施形態の第1連結桟13aと同様に構成すればよい。
【0053】
また、本実施形態では、連結桟13の上端部に装着するキャップ53のうち、第2連結桟13b側のキャップ53aについては、蓋部54内に固定ねじ39の頭部を収容できるよう、蓋部54の外縁側の一部を固定ねじ39の外周に沿って中間リンク部材21の本体部34側に膨らませている。なお、図19,図20では、キャップ53の固定部55を第1の実施形態と同じく断面略三日月型としたが、本実施形態の場合には第2連結桟13b内にねじ受け部48が不要となるため、キャップ53の形状もそれに対応して例えば固定部55を略円形の断面に形成してもよい。
【0054】
また、本実施形態の場合、固定ねじ39をねじ溝38にねじ込んで第2連結桟13bと端部枢着部32a,33aとを固定する際に、第2連結桟13bと端部枢着部32a,33aとの間に両者を相対的に回転させようとするトルクが作用するが、上下両端側で同じ固定ねじ39を使用する場合、第2連結桟13bに対する上下の端部枢着部32a,33aの回転方向が互いに逆方向となるため、第2連結桟13bに対して上下の外中間リンク部材21bを同方向に向けて固定することが困難である。そこで、第2連結桟13bの上下両端側で使用する固定ねじ39の一方を逆ねじとすれば、そのような不具合を解消できる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、実施形態では第1連結桟13aの両端側は何れも中間リンク部材21に固定されていないが、例えば固定ねじ39を中央枢着部31のねじ溝38にねじ込むことにより、第1連結桟13aの一端側を中間リンク部材21の中央枢着部31に固定してもよい。なお、実施形態のように第1連結桟13aの両端側を中間リンク部材21に固定しない場合、中央枢着部31にはねじ溝38を設けなくてもよい。
【0056】
第1の実施形態のように、第2連結桟13bの一端側のみを外端部枢着部32b,33bに固定し、他端側には外端部枢着部32b、33bの抜け止め処理を行う場合には、全ての中間リンク部材21を、連結桟13の軸方向端部側に対応する外端部枢着部32b,33bを扉伸縮方向の所定端側に、連結桟13の軸方向内側に対応する内端部枢着部32a,33aを扉伸縮方向の他端側に向けた状態で配置する必要はない。
【0057】
実施形態では本発明を伸縮式門扉に適用した例を示したが、例えばパンタグラフ機構11,12を左右に配置して上下に伸縮させる伸縮式シャッター等にも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す伸縮式門扉の平面図及び正面図である。
【図2】中間リンク部材の平面図及び正面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】門扉本体の要部分解斜視図である。
【図5】門扉本体の要部分解斜視図である。
【図6】門扉本体の部分拡大平面図である。
【図7】図6におけるB−B断面図である。
【図8】図6におけるC−C断面図である。
【図9】図7におけるD−D断面図である。
【図10】図7におけるE−E断面図である。
【図11】図8におけるF−F断面図である。
【図12】図8におけるG−G断面図である。
【図13】図8におけるH矢視図である。
【図14】端部リンク部材の平面図及び正面図である。
【図15】門扉本体の部分拡大平面図である。
【図16】門扉本体の部分拡大正面図である。
【図17】図15におけるI−I断面図である。
【図18】本発明の第2の実施形態を示す伸縮式門扉の要部拡大平面図である。
【図19】図18におけるJ−J断面図である。
【図20】図19におけるK−K断面図である。
【図21】図19におけるL−L断面図である。
【符号の説明】
【0059】
11 パンタグラフ機構
12 パンタグラフ機構
13 連結桟(13a 第1連結桟,13b 第2連結桟)
21 中間リンク部材(21a 内中間リンク部材,21b 外中間リンク部材)
31 中央枢着部
32 端部枢着部(32a 内端部枢着部,32b 外端部枢着部)
33 端部枢着部(33a 内端部枢着部,33b 外端部枢着部)
34 本体部
37 突起部
38 ねじ溝
39 固定ねじ
41 第1枢軸
42 第2枢軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定距離をおいて互いに平行に配置される一対のパンタグラフ機構(11,12)と、これら一対のパンタグラフ機構(11,12)を連結する複数本の連結桟(13)とを備え、前記パンタグラフ機構(11,12)は、X字状に交差する一対の中間リンク部材(21,21)が一列状に複数組連結されて構成され、前記中間リンク部材(21)は、夫々長手方向中央部及び両端部に当該中間リンク部材(21)の軸方向幅の半分又はそれ以下の長さに形成された略筒状の中央枢着部(31)及び一対の端部枢着部(32,33)を備え、互いに交差する前記中間リンク部材(21,21)は互いの前記中央枢着部(31)を軸方向に向かい合わせて第1枢軸(41)を挿通することにより、伸縮方向に隣接する前記中間リンク部材(21,21)は互いの前記端部枢着部(32,33)を軸方向に向かい合わせて第2枢軸(42)を挿通することにより、夫々相対回転可能に連結されており、前記連結桟(13)として、両端部に前記第1枢軸(41)を有する第1連結桟(13a)と、両端部に前記第2枢軸(42)を有する第2連結桟(13b)とを備えた伸縮式扉装置において、前記中央枢着部(31)を前記中間リンク部材(21)の軸方向一端側に、一対の前記端部枢着部(32,33)を前記中間リンク部材(21)の軸方向における互いに異なる端部側に夫々配置したことを特徴とする伸縮式扉装置。
【請求項2】
前記中間リンク部材(21)は、前記中央枢着部(31)と前記端部枢着部(32,33)との間を夫々固定的に連結する一対の本体部(34,34)と、それら本体部(34,34)の前記中央枢着部(31)側端部近傍に配置され且つ前記中央枢着部(31)の周方向一方側に突出する突起部(37,37)とを備え、前記パンタグラフ機構(11,12)を伸長したとき、互いに交差する中間リンク部材(21,21)の各突起部(37)が互いに当接してそれ以上の伸長を阻止するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮式扉装置。
【請求項3】
前記端部枢着部(32,33)の内面側にその軸方向に沿ってねじ溝(38)を設け、前記連結桟(13)の軸方向端部側に対応する端部枢着部(32b,33b)と、その内周側の前記第2枢軸(42)との間に前記ねじ溝(38)に沿って固定ねじ(39)をねじ込むことにより前記端部枢着部(32b,33b)と前記第2枢軸(42)とを固定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮式扉装置。
【請求項4】
全ての前記中間リンク部材(21)が、前記連結桟(13)の軸方向端部側に対応する端部枢着部(32b,33b)を扉伸縮方向の所定端側に、前記連結桟(13)の軸方向内側に対応する端部枢着部(32a,33a)を扉伸縮方向の他端側に向けた状態で配置され、前記第2連結桟(13b)により、一方のパンタグラフ機構(11,12)において前記第1連結桟(13a)の軸方向内側に配置される前記中間リンク部材(21a)の端部枢着部(32,33)と、他方のパンタグラフ機構(12,11)において前記第1連結桟(13a)の軸方向端部側に配置される前記中間リンク部材(21b)の端部枢着部(32,33)とが互いに連結されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の伸縮式扉装置。
【請求項5】
前記第2連結桟(13b)の一端側のみを前記固定ねじ(39)によって前記端部枢着部(32b,33b)に固定し、前記第2連結桟(13b)の他端側は前記端部枢着部(32b,33b)に対して回転自在の抜け止め処理を施したことを特徴とする請求項4に記載の伸縮式扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−84862(P2009−84862A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255035(P2007−255035)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000230984)日本工機株式会社 (36)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】