説明

伸縮性積層シート及びその製造方法

【課題】伸縮性不織布に透湿フィルムが接合されてなり、伸縮を繰り返しても透湿フィルムの破れが生じ難い伸縮性積層シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】弾性繊維集合体21の両面に実質的に非弾性の第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23が配され且つ隣接する弾性繊維集合体21と非弾性繊維層22,23とが熱融着によって接合されている伸縮性不織布2における第1の非弾性繊維層22に、透湿フィルム3が全面的に接合されてなる伸縮性積層シート1で、透湿フィルム2、第1の非弾性繊維層22、弾性繊維集合体21及び第2の非弾性繊維層23は、一体的に波状形状を有しており、透湿フィルム3側及び第2の非弾性繊維層23側には、並列した複数本の第1凹条41及び第2凹条42が形成されており、第1凹条41は、透湿フィルム3の外面が基面11に対して屈曲して凹んで形成されており、第2凹条42は、第2の非弾性繊維層23の外面が基面12に対して滑らかに凹んで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性不織布に透湿フィルムが接合されてなる伸縮性積層シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、不織布と透湿フィルムとを積層した積層シートが知られている(例えば下記特許文献1,2参照)。このような積層シートによれば、不織布の面は肌触りがよく、透湿フィルムの面は透湿防漏性を有することから、肌触りのよい透湿防漏シートを実現できる。
しかし、特許文献1,2に記載の積層シートにおいては、非弾性不織布と透湿フィルムとを積層しているため、ある程度の伸長性は発現するが、収縮性が発現しない。そのため、伸長によりシート形状が変形してしまうと、その変形がそのまま維持される。例えば、形状の変形を伴うような対象物に前記積層シートを使用すると、形状の変形への追従性が悪く、密着感やフィット感などが低下する。具体的には、人等に装着する製品に使用すると、姿勢の変形に対する追従性が悪い。
また、積層シートにおける不織布として伸縮性不織布を用いることにより、積層シート全体として伸縮性が発現する「伸縮性積層シート」を構成することも考えられる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−316359号公報
【特許文献2】特開2002−307627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特段の工夫をせずに形成した伸縮性積層シートにおいては、透湿フィルムが破れるという問題点がある。
例えば、襞状の透湿フィルムが伸縮性不織布に部分的に接合されてなる伸縮性積層シートにおいては、製造時において透湿フィルムの破れは発生しにくいものの、繰り返し伸縮させた場合において、透湿フィルムと不織布との接合部に応力集中が起こり、そこからフィルムに破れが生じやすい。
また、伸縮性不織布と透湿フィルムとが接合されてなる平坦状積層シートを、ギア延伸により波状に形成して、積層シート全体の伸縮性を発現させようとすると、ギア延伸加工時に透湿フィルムが局部的に過剰に引き伸ばされて、透湿フィルムの破れが生じやすい。
【0005】
従って、本発明の目的は、伸縮性不織布に透湿フィルムが接合されてなる伸縮性積層シートにおいて、伸縮を繰り返したとしても透湿フィルムの破れが生じにくい伸縮性積層シート、及び透湿フィルムの破れを防止しつつ、該伸縮性積層シートを容易に製造することができる伸縮性積層シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、弾性繊維集合体の両面に実質的に非弾性の第1の非弾性繊維層及び第2の非弾性繊維層がそれぞれ配され且つ隣接する該弾性繊維集合体と該非弾性繊維層とが熱融着によって接合されている伸縮性不織布における該第1の非弾性繊維層に、透湿フィルムが全面的に接合されてなる伸縮性積層シートであって、前記透湿フィルム、前記第1の非弾性繊維層、前記弾性繊維集合体及び前記第2の非弾性繊維層は、一体的に波状形状を有しており、前記伸縮性積層シートにおける前記透湿フィルム側及び前記第2の非弾性繊維層側には、それぞれ並列した複数本の第1凹条及び第2凹条が形成されており、前記第1凹条は、前記透湿フィルムの外面が基面に対して屈曲して凹んで形成されており、前記第2凹条は、前記第2の非弾性繊維層の外面が基面に対して滑らかに凹んで形成されている伸縮性積層シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0007】
また、本発明は、弾性繊維集合体の少なくとも一面に実質的に非弾性の第1の非弾性繊維層が配され且つ該弾性繊維集合体と該第1の非弾性繊維層とが熱融着によって接合されている伸縮性不織布における該第1の非弾性繊維層に透湿フィルムが全面的に接合されてなり、該透湿フィルム、該第1の非弾性繊維層及び該弾性繊維集合体が一体的に波状形状を有しており、該透湿フィルム側及びその反対側にそれぞれ並列した複数本の第1凹条及び第2凹条が形成されている伸縮性積層シートの製造方法であって、前記伸縮性不織布における前記第1の非弾性繊維層と前記透湿フィルムとを接合して平坦状積層シートを形成する工程の後に又は該工程と同時に、大径部及び小径部が交互に形成された一対の凹凸ロールを備えた延伸装置を用いて、該平坦状積層シートに延伸加工を行い、前記第1凹条及び前記第2凹条を形成して、伸縮性積層シートを製造する方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の伸縮性積層シートによれば、伸縮性不織布に透湿フィルムが接合されてなる伸縮性積層シートにおいて、伸縮を繰り返したとしても透湿フィルムの破れが生じにくい。
また、本発明の伸縮性積層シートの製造方法によれば、透湿フィルムの破れを防止しつつ、前記伸縮性積層シートを容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の伸縮性積層シートについて、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の伸縮性積層シートの第1実施形態の断面構造を示す模式図が示されている。
第1実施形態の伸縮性積層シート1は、伸縮性不織布2に透湿フィルム3が全面的に接合されてなる伸縮性積層シートであり、詳述すると、弾性繊維集合体21の両面に実質的に非弾性の第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23がそれぞれ配され、隣接する弾性繊維集合体21と非弾性繊維層21,23とが熱融着によって接合されている伸縮性不織布2における第1の非弾性繊維層22に、透湿フィルム3が全面的に接合されてなる伸縮性積層シートである。
第1実施形態における弾性繊維集合体21は、層状に形成された弾性繊維層である。
【0010】
透湿フィルム3、第1の非弾性繊維層22、弾性繊維集合体21及び第2の非弾性繊維層23は、一体的に波状形状を有している。
伸縮性積層シート1における透湿フィルム3側及び第2の非弾性繊維層23側には、それぞれ並列した複数本の第1凹条41及び第2凹条42が形成されている。
【0011】
まず、伸縮性不織布2について説明する。第1実施形態における伸縮性不織布2においては、弾性繊維層21と第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層,23とは、弾性繊維層21の構成繊維が繊維形態を保った状態で、繊維交点の熱融着によって全面で接合されている。つまり、弾性繊維層21と非弾性繊維層22,23との界面及びその近傍において、弾性繊維層21の構成繊維と非弾性繊維層22,23の構成繊維との交点が熱融着しており、実質的に全面で均一に接合されている。弾性繊維層21と非弾性繊維層22,23とが全面的に接合されていることによって、弾性繊維層21と非弾性繊維層22,23との間に浮きが生じること、つまり、両層が離間して空間が形成されることが防止される。両層間に浮きが生じると、弾性繊維層21と非弾性繊維層22,23との一体感がなくなり、風合いが低下する傾向にある。本実施形態における伸縮性不織布2は、あたかも一層の不織布ごとき一体感のある多層構造の伸縮性不織布となっている。
【0012】
「弾性繊維層21の構成繊維が繊維形態を保った状態」とは、熱や圧力等を付与された場合であっても、弾性繊維層21の構成繊維のほとんどがフィルム状又はフィルム−繊維構造に変形していない状態をいう。弾性繊維層21の構成繊維が繊維形態を保った状態にあることで、伸縮性不織布2には十分な通気性が付与される。
弾性繊維層21は、その層内において構成繊維の交点が熱融着している。同様に、非弾性繊維層22,23も、その層内において構成繊維の交点が熱融着している。
【0013】
2つの非弾性繊維層22,23のうちの少なくとも一方においては、その構成繊維の一部が弾性繊維層21に入り込んだ状態、及び/又は、弾性繊維層21の構成繊維の一部が少なくとも一方の非弾性繊維層22,23に入り込んだ状態になっている。このような状態になっていることで、弾性繊維層21と非弾性繊維層22,23との一体化が促進され、両層間に浮きが生じることが一層効果的に防止される。結果として、それぞれの層の表面に追従した形で両層が組み合わさっている状態となる。一方の非弾性繊維層の構成繊維は、その一部が弾性繊維層21に入り込み、そこにとどまっているか、あるいは弾性繊維層21を突き抜けて、他方の非弾性繊維層にまで到達している。例えば非弾性繊維層22,23において、2つの表面のうち弾性繊維層21に対向する側における表面繊維間を結ぶ面をマクロ的に想定したとき、この面から層の内側に形成される繊維空間に、弾性繊維層21の構成繊維の一部が入り込んでいる。また、弾性繊維層の2つの表面において、表面繊維間を結ぶ面をマクロ的に想定したとき、これらの面から層の内側に形成される繊維空間に、非弾性繊維層22,23の構成繊維の一部が入り込んでいる。特に、非弾性繊維層22,23の構成繊維が弾性繊維層21に入り込み、そこにとどまっている場合、該構成繊維は、更に弾性繊維層21の構成繊維と交絡していることが好ましい。同様に、一方の非弾性繊維層の構成繊維が弾性繊維層21を突き抜けて、他方の非弾性繊維層にまで到達している場合には、一方の非弾性繊維層の構成繊維は、他方の非弾性繊維層の構成繊維と交絡していることが好ましい。これは、伸縮性不織布の厚み方向断面をSEMやマイクロスコープなどで観察した際に、層間において実質的に空間が形成されていないことで確認される。また、ここでいう「交絡」とは、繊維同士が十分に絡み合っている状態を意味し、繊維層を単に重ね合わせただけの状態は交絡に含まれない。
【0014】
交絡しているか否かは、例えば次の方法で判断できる。繊維層を単に重ね合わせた状態から、繊維層を剥離するときに要する力を測定する。これとは別に、繊維層を重ね合わせ、それに熱融着を伴わないエアスルー法を適用した後に、繊維層を剥離する力を測定する。二つの力を比較して、両者間に実質的に差異が認められる場合には、交絡していると判断できる。
【0015】
非弾性繊維層の構成繊維を弾性繊維層に入り込ませる、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維を非弾性繊維層に入り込ませるには、非弾性繊維層の構成繊維と弾性繊維層の構成繊維とを熱融着させる処理の前において、非弾性繊維又は弾性繊維の少なくともどちらかがウエブ状態(熱融着していない状態)であることが好ましい。構成繊維を他の層に入り込ませる観点から、ウエブ状態である繊維層は、短繊維の方が長繊維に比べ自由度が高いことから好ましい。
【0016】
非弾性繊維層の構成繊維を弾性繊維層に入り込ませる、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維を非弾性繊維層に入り込ませるには、エアスルー法を用いることが好ましい。エアスルー法を用いることで、相対する繊維層に構成繊維を入り込ませ、また、相対する繊維層から構成繊維を入り込ませることが容易となる。またエアスルー法を用いることで、非弾性繊維層の嵩高さを維持しつつ、非弾性繊維層の構成繊維を弾性繊維層に入り込ませることが容易となる。一方の非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層を突き抜けさせて他方の非弾性繊維層にまで到達させる場合にも、同様にエアスルー法を用いることが好ましい。特に、ウエブ状態の非弾性繊維層を弾性繊維層と積層して、エアスルー法を用いることが好ましい。この場合、弾性繊維層は、その構成繊維同士が熱融着していてもよく、熱融着していなくてもよい。
【0017】
更に、後述する製造方法において説明するように、特定の条件下でエアスルー法を行うことで、また、熱風の通りをよくするため伸縮性不織布の通気性、特に弾性繊維層の通気度を高いものとすることで、繊維をより均一に入り込ませることができる。エアスルー法以外の方法、例えばスチームを吹き掛ける方法も使用することができる。また、スパンレース法、ニードルパンチ法などを用いることも可能であるが、その場合には非弾性繊維層の嵩高さが損なわれたり、伸縮性不織布2の表面に弾性繊維層の構成繊維が出てきてしまい、風合いが低下する傾向にある。
特に、非弾性繊維層の構成繊維が弾性繊維層の構成繊維と交絡している場合には、エアスルー法のみによって交絡していることが好ましい。
【0018】
エアスルー法によって繊維を交絡させるためには、気体の吹き付け圧、吹き付け速度、繊維層の坪量や厚み、繊維層の搬送速度等を適切に調整すればよい。通常のエアスルー不織布を製造するための条件を採用しただけでは、非弾性繊維層の構成繊維と弾性繊維層の構成繊維とを交絡させることはできない。後述する製造方法において説明するように、特定の条件下でエアスルー法を行うことによって、本発明の伸縮性積層シートにおける所望の伸縮性不織布が得られる。
【0019】
エアスルー法では一般に、所定温度に加熱された気体を、繊維層の厚み方向に貫通させている。その場合には、繊維の交絡及び繊維交点の融着が同時に起こる。しかし、本発明における伸縮性不織布2においては、エアスルー法によって各層内の構成繊維間で繊維交点を融着させることは必須ではない。換言すれば、エアスルー法は、非弾性繊維層の構成繊維を弾性繊維層に入り込ませるために、あるいは、非弾性繊維層の構成繊維を弾性繊維層の構成繊維と交絡させ、そして、非弾性繊維層の構成繊維と弾性繊維層の構成繊維とを熱融着させるために必要な操作である。また、繊維が入り込む方向は、加熱された気体の通過方向と非弾性繊維層と弾性繊維層との位置関係によって変わる。非弾性繊維層は、エアスルー法によって、その構成繊維同士が繊維交点で融着されたエアスルー不織布となることが好ましい。
【0020】
以上の説明から明らかなように、第1実施形態における伸縮性不織布2の好ましい形態においては、実質的に非弾性のエアスルー不織布の厚み方向内部に、構成繊維が繊維形態を保った状態の弾性繊維層が含まれており、該エアスルー不織布の構成繊維の一部が弾性繊維層に入り込んだ状態、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維の一部が非弾性繊維層に入り込んだ状態になっている。
【0021】
更に好ましい形態においては、エアスルー不織布の構成繊維の一部が弾性繊維層の構成繊維とエアスルー法によってのみ交絡している。弾性繊維層がエアスルー不織布の内部に含まれていることによって、弾性繊維層の構成繊維は、実質的に伸縮性不織布の表面には存在しないことになる。このことは、弾性繊維に特有のべたつき感が生じない点から好ましいものである。
【0022】
弾性繊維層21は、伸ばすことができ且つ伸ばした力から解放したときに収縮する性質を有するものである。弾性繊維層21は、少なくとも面と平行な一方向において、100%伸長後に収縮させたときの残留歪みが20%以下、特に10%以下であることが好ましい。この値は、少なくとも、MD方向及びCD方向の何れか一方において満足することが好ましく、両方向において満足することがより好ましい。
【0023】
弾性繊維層21は、弾性を有する繊維が層状に集合した集合体である。もっとも、弾性繊維層21の伸縮弾性を損なわない限りにおいて、非弾性繊維が少量含まれていてもよい。弾性を有する繊維は、連続繊維でもよく、短繊維でもよい。弾性を有する繊維の成形方法には、例えば溶融した樹脂をノズル孔より押し出し、この押し出された溶融状態の樹脂を熱風により伸長させることによって繊維を細くするメルトブローン方法や、半溶融状態の樹脂を冷風や機械的ドロー比によって延伸するスパンボンド法がある。また、溶融紡糸法の一種であるスピニングブローン法がある。
【0024】
また、弾性繊維層21は、弾性を有する繊維からなるウエブや不織布の形態であり得る。例えば、スピニングブローン法、スパンボンド法、メルトブローン法等によって形成されたウエブや不織布であり得る。特に好ましい弾性繊維層21は、スピニングブローン法で得られたウエブである。
【0025】
スピニングブローン法では紡糸ダイを用いる。紡糸ダイは、前記吐出ノズルを中心に、溶融ポリマーの吐出ノズルの先端近辺に一対の熱風吐出部を対向配置し、その下流に一対の冷風吐出部を対向配置したものである。スピニングブローン法によれば、溶融繊維の熱風による伸長と冷風による冷延伸とが連続的に行われるので、伸縮性繊維の成形を容易に行えるという利点がある。また、繊維が緻密になりすぎず、短繊維に類した太さの伸縮性繊維を成形できるので、通気性の高い不織布が得られるという利点もある。更にスピニングブローン法によれば、連続フィラメントのウエブを得ることができる。連続フィラメントのウエブは、短繊維のウエブに比較して高伸長時の破断が起こりにくく、弾性を発現させやすい。
【0026】
スピニングブローン法に用いられる紡糸ダイとしては、例えば特公昭43−30017号公報の図1に記載されているもの、特開昭62−90361号公報の図2に記載されているもの、特開平3−174008号公報の図2に記載されているものを用いることができる。更に、特開平3−174008号公報の図2に示されるものや、特許第3335949号公報の図1ないし図3に示されるものを用いることができる。紡糸ダイから紡出された繊維は、捕集ネットコンベア上に堆積される。
【0027】
弾性繊維層21の構成繊維としては、例えば熱可塑性エラストマーやゴムなどを原料とする繊維を用いることができる。特に熱可塑性エラストマーを原料とする繊維は、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、また、そのようにして得られた繊維は熱融着させやすいので、エアスルー不織布を基本構成とする第1実施形態における伸縮性不織布2に好適である。
【0028】
熱可塑性エラストマーとしては、SBS、SIS、SEBS、SEPS等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの樹脂からなる芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維を用いることもできる。特に弾性繊維の成形性、伸縮特性、コストの面で、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー又はそれらを組み合わせて用いることが好ましい。
【0029】
非弾性繊維層22,23は、伸長性を有するが、実質的に非弾性のものである。ここでいう、伸長性は、構成繊維自体が伸長する場合と、構成繊維自体は伸長しなくても、繊維同士の交点において熱融着していた両繊維同士が離れたり、繊維同士の熱融着等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたりして、繊維層全体として伸長する場合とがある。
【0030】
非弾性繊維層22,23を構成する繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。非弾性繊維層22,23を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよく、親水性でも撥水性でもよい。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
非弾性繊維層22,23は、連続フィラメント、短繊維のウエブ又は不織布であり得る。特に、短繊維のウエブであることが、厚みのある嵩高な非弾性繊維層22,23を形成し得る点から好ましい。2つの非弾性繊維層22,23は、構成繊維の材料、坪量、厚み等に関して同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。芯鞘型の複合繊維の場合、芯がPET、PPで、鞘が低融点PET、PP、PEであることが好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等を好ましく含む弾性繊維層の構成繊維との熱融着が強くなり、層剥離が起こりにくい点で好ましい。
【0032】
2つの非弾性繊維層22,23のうち少なくとも一方は、その厚みが弾性繊維層21の厚みの1.2〜20倍、特に1.5〜5倍になっていることが好ましい。一方、2つの非弾性繊維層22,23のうち少なくとも一方は、その坪量よりも弾性繊維層21の坪量の方が高くなっていることが好ましい。換言すれば、非弾性繊維層22,23は、弾性繊維層21よりも厚く且つ坪量が小さいことが好ましい。厚みと坪量とがこのような関係になっていることで、非弾性繊維層22,23は、弾性繊維層21に比較して厚みのある嵩高なものとなる。その結果、伸縮性不織布2は柔らかで風合いの良好なものとなる。
【0033】
非弾性繊維層22,23の厚みは、0.05〜5mm、特に0.1〜1mmであることが好ましい。一方、弾性繊維層21の厚みは、非弾性繊維層22,23の厚みよりも小さいことが好ましく、具体的には0.01〜2mm、特に0.1〜0.5mmであることが好ましい。厚みは、伸縮性不織布の断面をマイクロスコープにより50〜200倍の倍率で観察し、各視野において平均厚みをそれぞれ求め、3視野の厚みの平均値として求めることができる。
【0034】
非弾性繊維層22,23の坪量は、弾性繊維層21の表面を均一に覆う観点及び残留歪みの観点から、それぞれ1〜60g/m2、特に5〜15g/m2であることが好ましい。一方、弾性繊維層21の坪量は、伸縮特性及び残留歪みの観点から、非弾性繊維層22,23の坪量よりも大きいことが好ましい。具体的には5〜80g/m2、特に20〜40g/m2であることが好ましい。
【0035】
弾性繊維層21の構成繊維の繊維径は、少なくとも一方の非弾性繊維層22,23の構成繊維の繊維径の1.2〜5倍、特に1.2〜2.5倍であることが好ましい。これに加えて弾性繊維層21の構成繊維の繊維径は、通気性及び伸縮特性の観点から、5μm以上、特に10μm以上が好ましく、100μm以下、特に40μm以下であることが好ましい。
【0036】
一方、非弾性繊維層22,23の構成繊維の繊維径は、1〜30μm、特に10〜20μmであることが好ましい。つまり、非弾性繊維層22,23の構成繊維としては、弾性繊維層21の構成繊維よりも細めのものを用いることが好ましい。これによって、伸縮性不織布2の表層に位置する非弾性繊維層22,23の構成繊維の融着点が増加する。融着点の増加は、伸縮性不織布2の毛羽立ち発生の防止に有効である。更に、細めの繊維を用いることで肌触りの良い伸縮性不織布2が得られる。
【0037】
第1実施形態における伸縮性不織布2にはエンボス加工が施されていてもよい。エンボス加工は、弾性繊維層21と非弾性繊維層22,23との接合強度を一層高める目的で行われる。従って、エアスルー法によって弾性繊維層21と非弾性繊維層22,23とを十分に接合できれば、エンボス加工を行う必要はない。なお、エンボス加工は、構成繊維同士を接合させるが、エアスルー法と異なり、構成繊維同士を交絡しない。
【0038】
第1実施形態における伸縮性不織布2は、その面内方向の少なくとも一方向に伸縮性を有する。面内の全ての方向に伸縮性を有していてもよい。その場合には、方向によって伸縮性の程度が異なっていてもよい。最も伸縮する方向の伸縮性の程度は、100%伸長時の荷重が20〜500cN/25mm、特に40〜150cN/25mmであることが好ましい。また、100%伸長状態から収縮させたときの残留歪みは、15%以下、特に10%以下であることが好ましい。
【0039】
伸縮性不織布の坪量や厚みは、その具体的な用途に応じて適切に調整できる。例えば吸収性物品の構成材料として用いる場合には、坪量20〜160g/m2程度、厚み0.1〜5mm程度とすることが望ましい。また、本発明における伸縮性不織布は、弾性繊維層の構成繊維が繊維形態を保っていることに起因して、柔軟であり、また通気性が高くなっている。柔軟性の尺度である曲げ剛性に関し、伸縮性不織布の曲げ剛性値は、10g/30mm以下と低いことが好ましい。通気度は、16m/(kPa・s)以上であることが好ましい。また、伸度は、100%以上であることが望ましい。
【0040】
曲げ剛性は、JIS L−1096に準拠して測定され、ハンドルオメーターによる押し込み量:8mm、スリット幅:10mmの条件において、それぞれ流れ方向とそれに対して直角方向に曲げた際の平均値として得られる。通気度は、カトーテック株式会社製:AUTOMATIC AIR−PERMEABILITY TESTER KES−F8−AP1により通気抵抗を測定し、その逆数として求められる。
【0041】
次に透湿フィルム3について説明する。透湿フィルムとしては、例えば熱可塑性樹脂と、これとは相溶性のない無機フィラーを含む樹脂組成物とを溶融混練して押し出したフィルムを、所定の倍率に延伸して微細孔を開けた多孔性フィルムが挙げられる。透湿フィルムに十分な透湿性を付与するためには、フィルムの坪量と無機フィラーの配合量とのバランスを適度に設定すればよい。
高い透湿度と破れにくさとを両立するためには、フィルムの坪量は、好ましくは5〜100g/m2、より好ましくは10〜50g/m2である。また、無機フィラーの配合量は、フィルム全体の重量に対するフィラーの重量%として好ましくは20〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%である。
【0042】
透湿フィルムに含まれる無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、タルク、ゼオライト、カーボン、シリカ、ケイ酸塩鉱物等が用いられる。一方、透湿フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が用いられる。
【0043】
透湿フィルム3は、伸縮性不織布2における第1の非弾性繊維層22と全面的に接合されている。この接合には、例えばホットメルト型接着剤が用いられる。透湿フィルム3と第1の非弾性繊維層22とが、巨視的に視て未接合部分がない程度に実質的に接合されていれば、全面的に接合されているものとする。
【0044】
第1実施形態の伸縮性積層シート1においては、第1凹条41は、透湿フィルム3の外面が基面11に対して屈曲して凹んで形成されており、第2凹条42は、第2の非弾性繊維層23の外面が基面12に対して滑らかに凹んで形成されている。
第1凹条41について、「透湿フィルム3の外面が基面11に対して屈曲して凹んでいる」とは、透湿フィルム3を屈曲したときに、その物性に起因して、その屈曲線が比較的明りょうに現れることに基づき、透湿フィルム3の外面が伸縮性積層シート1の基面11に対して屈曲して凹むことを意味する。
また、第2凹条42について、「第2の非弾性繊維層23の外面が基面12に対して滑らかに凹んでいる」とは、第2の非弾性繊維層23を屈曲させても、その物性に起因して、その屈曲線が明りょうには現れないことに基づき、第2の非弾性繊維層23の外面が伸縮性積層シート1の基面12に対して滑らかに凹むことを意味する。
【0045】
第1実施形態の伸縮性積層シート1によれば、伸縮を繰り返したとしても透湿フィルム3の破れが生じにくい。そのメカニズムは定かではないが、以下の通りと考えられる。透湿フィルム3は、第1の非弾性繊維層22に全面的に接合されており、余っていないため、応力集中が起こりにくく、破れが生じにくい。また、透湿フィルム3と弾性繊維層21とが、第1の非弾性繊維層22を介在させて一体的に構成されているため、第1の非弾性繊維層22があたかも緩衝材の役割を果たし、透湿フィルム3に加わる負荷が緩衝される。
【0046】
伸縮性積層シート1の凹凸形状は、透湿フィルム3が屈曲して得られていることから、収縮時に透湿フィルム3の抵抗が少なく、伸縮性不織布と透湿フィルムとを単に積層してなる伸縮性積層シートよりも伸縮応答性がよい。
また、伸長時においては、伸縮性積層シート1の凹凸形状が平坦になるように、屈曲が容易に変形できることから、単に積層した伸縮性積層シートで見られるような伸長抵抗感も少ない。
【0047】
伸縮性積層シート1は、伸長後の収縮により、凹凸を有する形状に復元しようとすることから、繰返しの伸縮においても同様の効果が継続し得る。
また、第2の非弾性繊維層23が滑らかな凹凸形状を有することから、柔軟で良好な肌触りが得られる。特に収縮時においては、凹凸によるクッション性もあることから、より柔かなクッション感による相乗効果も奏する、より柔軟な伸縮性積層シートが得られる。
【0048】
本発明の伸縮性積層シートは、例えば、使い捨ておむつにおける透湿性及び伸縮性を要する部分に部分的に接合して用いることができる。また、使い捨ておむつについて部分的に強度を向上させることができる。これらの場合には、複数の伸縮性積層シートについて、それらの一部を重ね合わせて、使い捨ておむつに接合することもできる。
また、本発明の伸縮性積層シートは、生理用ナプキンや尿失禁パッド等においても同様に用いることができ、その場合には、着用時のフィット感や柔らかさを改善し、高級感を呈することができる。
また、人体に直接貼り付けるカイロや蒸気温熱シート等などのシートに使用することができ、その場合には、伸縮性と透湿性を一度付与できることから、蒸れ感を改善することができ、また、身体の動きに応じて追従できることから、フィット感や密着感を向上させることができる。
【0049】
次に、本発明の伸縮性積層シートの製造方法について、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。第1実施態様の伸縮性積層シートの製造方法は、前述した第1実施形態の伸縮性積層シート1を製造する方法である。
以下、第1実施態様の伸縮性積層シートの製造方法について詳述する。
図2に示すように、非弾性の短繊維を原料として用い、カード機51によって第1の非弾性繊維ウエブ22’を製造し、一方向に連続搬送させる。
【0050】
また、弾性樹脂を原料として用い、スピニングブローン紡糸ダイ52によって紡出された繊維は、捕集ネットコンベア上に堆積され、弾性繊維の連続フィラメントを含む弾性繊維ウエブ21’が製造される。これをコンベアから剥離させ、一方向に連続搬送されている非弾性繊維ウエブ22’上に積層させる。
更に、弾性繊維ウエブ21’上に、カード機53によって製造された第2の非弾性繊維ウエブ23’が積層される。
【0051】
ここで、非弾性繊維ウエブ22’を熱処理により仮融着させた後又は仮交絡させた後に、その上に直接紡糸された弾性繊維を直接堆積させることが好ましい。このようにすることで、弾性繊維の自由度が高くなり、風等によってお互いの繊維を一層入り込ませやすくなる。
熱処理による仮融着としては、ヒートロール法、加圧カレンダーロール法、スチーム法、エアスルー法などが挙げられ、仮交絡としては、ニードルパンチ法、ウオータージェット法などが挙げられる。特にヒートロール及びエアスルー法を用いると、不織布の風合いを損ねることがない点及び設備スペースを小さくできる点で好ましい。
【0052】
非弾性繊維ウエブ22’は、仮融着後又は仮交絡後に巻き取らず、インラインにて、その上に弾性繊維を直接堆積させることが好ましい。一旦巻き取ってしまうと、巻き付き圧によって非弾性繊維ウエブ22’が潰れてしまう場合がある。仮融着又は仮交絡させる目的は、非弾性繊維ウエブ22’上に弾性繊維を直接溶融紡糸して堆積させるとき、非弾性繊維ウエブ22’が風等で吹き飛ばされないようにすることにある。
【0053】
3つのウエブ23’,21’及び22’の積層体は、エアスルー方式のドライヤー54に送られ、そこで熱風処理が施される。熱風処理によって、主として熱風の吹き付け面側に位置する非弾性繊維ウエブ23’の構成繊維の一部は、弾性繊維ウエブ21’に入り込む。熱風処理の条件によっては、非弾性繊維ウエブ23’の構成繊維の一部は、弾性繊維ウエブ21’に入り込み、更に、弾性繊維ウエブ21’の構成繊維と交絡する。あるいは、非弾性繊維ウエブ23’の構成繊維の一部は、弾性繊維ウエブ21’を突き抜けて、非弾性繊維ウエブ22’まで到達し、非弾性繊維ウエブ23’の構成繊維と交絡する。
【0054】
非弾性繊維ウエブ23’の構成繊維の一部を弾性繊維ウエブ21’に入り込ませる、及び/又は、弾性繊維ウエブ21’の構成繊維の一部を非弾性繊維ウエブ23’に入り込ませるための好ましい条件は、熱風風量:0.4〜3m/秒、温度:80〜160℃、搬送速度:5〜200m/分、熱風処理時間:0.5〜10秒である。特に、熱風風量は、エアスルー法として一般的に行われる熱風風量よりも高いことが好ましく、特に好ましくは1〜2m/秒である。
【0055】
エアスルー法の熱風処理に用いるネットに通気度の高いものを用いると、エアの通りによって、繊維が一層入り込みやすくなる。同様に、非弾性繊維ウエブ22’上に弾性繊維ウエブ21’を直接紡糸する場合も、紡糸時の風によって、弾性繊維ウエブ21’の構成繊維が非弾性繊維ウエブ22’に入り込み易くなる。
【0056】
熱風処理に用いるネット及び弾性繊維の直接紡糸に用いるネットの通気度は、250〜800cm3/(cm2・s)、特に400〜750cm3/(cm2・s)であることが好ましい。上記条件は、繊維を軟化させて均一に入り込ませる点及び繊維融着させる点においても好ましい。更に、繊維の交絡は、熱風風量を3〜5m/秒とし、吹き付け圧を0.1〜0.3kPaとすることで可能となる。
弾性繊維ウエブ21’の通気度が8m/(kPa・s)以上、特に24m/(kPa・s)以上であると、熱風の通りがよくなり、繊維をより均一に入り込ませることができるので好ましい。また、繊維融着が良好で最大強度が高くなる。更に毛羽立ちも防止される。
【0057】
熱風処理においては、非弾性繊維ウエブ23’の構成繊維の一部が、弾性繊維ウエブ21’に入り込むのと同時に、非弾性繊維ウエブ23’の構成繊維及び/又は非弾性繊維ウエブ22’の構成繊維と弾性繊維ウエブ21’の構成繊維とが、それらの交点で熱融着する。この場合、熱風処理によって弾性繊維ウエブ21’の構成繊維がフィルム状又はフィルム−繊維構造にならないように注意する。そして、熱風処理においては、非弾性繊維ウエブ23’の構成繊維同士が交点において熱融着し、同様に、弾性繊維ウエブ21’の構成繊維同士及び非弾性繊維ウエブ22’の構成繊維同士が交点において熱融着する。
【0058】
エアスルー法の熱風処理によって、3つのウエブ23’,21’及び22’が一体化された未エンボス繊維シート2”が得られる。未エンボス繊維シート2”は、周面にエンボス用凸部が規則的に配置されたエンボスロール56及びそれに対向配置された受けロール57を備えたエンボス装置55に送られ、そこで熱エンボス加工が施される。熱エンボス加工によって、接合部(図示せず)が規則的なパターンで形成された被エンボス繊維シート2’が得られる。前記接合部は、被エンボス繊維シート2’の流れ方向(MD)及びその直交方向(CD)の両方向に不連続に形成されていることが好ましい。
【0059】
次に、被エンボス繊維シート2’における第1の非弾性繊維ウエブ22’の外面に、塗工装置71によって全面的に接着剤が塗工される。接着剤として、例えばホットメルト型接着剤が用いられる。接着剤は、巨視的に視て連続しており、未塗工部分がない程度に実質的に全面的に塗工されていればよい。
全面的に接着剤を塗工可能な塗工装置としては、例えば、ロールコーター方式やスクリーン印刷方式等の接触方式、スプレー方式等の非接触方式が挙げられる。これらの塗工装置で連続的に接着剤を塗工することで、実質的に全面的な接着領域を得ることができる。接着剤の塗工量は、好ましくは0.5〜20g/m2、更に好ましくは1〜10g/m2である。
【0060】
そして、図2及び図3に示すように、透湿フィルム3の連続体3’を、被エンボス繊維シート2’における、接着剤の塗工された第1の非弾性繊維ウエブ22’の外面に合流させる。合流した被エンボス繊維シート2’及び透湿フィルム連続体3’を、一対のニップロール72,72の間で挟圧して、接着剤の接着力により全面的に接合し、平坦状積層シート1’を形成する。
【0061】
ここで、透湿フィルム3を、エンボスロール56の反対側(つまり受けロール57側)に合流するように構成しているのは、エンボスロール56の反対側に位置する第1の非弾性繊維ウエブ22’は、エンボス加工による凹凸の影響が比較的少ないため、接着剤をムラなく塗布しやすく、透湿フィルム3との一体的な接合がしやすいためである。
平坦状積層シート1’は、透湿フィルム連続体3’、第1の非弾性繊維ウエブ22’、弾性繊維ウエブ21’及び第2の非弾性繊維ウエブ23’の順で4層に積層されている。この平坦状積層シート1’は、波状形状を有しておらず、従って、第1凹条41及び第2凹条42が形成されていない。
【0062】
次いで、4層構造の平坦状積層シート1’に対して延伸加工を施す。具体的には、図2及び図4に示すように、大径部61,62及び小径部(図示せず)がそれぞれ軸長方向に交互に形成された一対の凹凸ロール63,64を備えた延伸装置6を用いて、平坦状積層シート1’を、その流れ方向(MD)に直交する方向(CD)に延伸させる。
【0063】
延伸装置6は、一方又は双方の凹凸ロール63,64の枢支部を上下に変位させる公知の昇降機構(図示せず)を有し、凹凸ロール63,64間の間隔を調節可能になっている。本製造方法においては、各凹凸ロール63,64を、図4及び図5に示されるように、一方の凹凸ロール63の大径部61が、他方の凹凸ロール64の大径部62間に遊挿され、他方の凹凸ロール64の大径部62が一方の凹凸ロール63の大径部61間に遊挿されるように組み合わせ、その状態の両凹凸ロール63,64間に、平坦状積層シート1’を挿入して、該平坦状積層シート1’を延伸させる。
【0064】
本製造方法によれば、平坦状積層シート1’は、凹凸ロール63,64間を通過する際に、大径部61,62と重ならない大径部同士間の領域が積極的に延伸される。この延伸により、非弾性繊維層22,23及び透湿フィルム3には、平坦状積層シート1’が収縮しても回復しない変化が生じる。その変化により、非弾性繊維層22,23及び透湿フィルム3が、弾性繊維層21の自由な伸縮を阻害する程度が大きく低下する。
【0065】
前記の延伸加工によって、平坦状積層シート1’の厚みは、延伸加工前後で1.1倍〜4倍、特に1.3倍〜3倍に増すことが好ましい。これによって、非弾性繊維層22,23の繊維は、塑性変形して伸び、細くなる。これと同時に、非弾性繊維層22,23が一層嵩高となり、肌ざわりが良くクッション性が良好になる。
延伸加工される前の平坦状積層シート1’の厚みが薄いと、平坦状積層シート1’のロール原反の運搬及び保管をするスペースを小さくできるメリットがある。
【0066】
更に、前記の延伸加工によって、平坦状積層シート1’の曲げ剛性は、延伸加工前に比較して30〜80%、特に40〜70%に変化することが好ましい。これによって、ドレープ性が良く柔らかな伸縮性積層シート1が得られる。また、延伸加工される前の平坦状積層シート1’の曲げ剛性が高いことで、搬送ラインにおいて平坦状積層シート1’に皺が入りにくくなるので好ましい。その上、延伸加工時にも平坦状積層シート1’に皺が入らず、加工しやすいので好ましい。
【0067】
延伸加工前後での平坦状積層シート1’の厚みや曲げ剛性は、透湿フィルム3の厚みや物性、非弾性繊維層22,23に用いられる繊維の伸度、凹凸ロール63,64のピッチや先端部の厚み、噛み合わせ量によって制御することができる。
【0068】
凹凸ロール63,64の大径部61,62の周面は、平坦状積層シート1’、特に透湿フィルム連続体3’に損傷を与えないようにするために、先鋭でないことが好ましい。例えば図5に示すように、所定幅の平坦面となっていることが好ましい。大径部61,62の先端部の幅W(図5参照。平坦状積層シート1’の延伸方向の幅)は、0.3〜1mmであることが好ましい。
【0069】
また、一方の凹凸ロール63と他方の凹凸ロール64とが噛み合った状態において、一方の凹凸ロール63の大径部61と他方の凹凸ロール64の大径部62とのピッチP(図5参照)は、0.7〜2.5mmであることが好ましい。これによって、露出する第2の非弾性繊維層23が布様の外観を呈し、肌触りが良いくなる。
【0070】
延伸装置6から送り出された平坦状積層シート1’は、その幅方向への延伸状態が解放される。即ち伸長が緩和される。その結果、平坦状積層シート1’に伸縮性が発現し、該平坦状積層シート1’はその幅方向へ収縮する。これによって目的とする伸縮性積層シート1が得られる。
なお、延伸状態を解放する場合、延伸状態が完全に解放されるようにしてもよく、あるいは伸縮性が発現する限度において、延伸状態がある程度維持された状
態で延伸状態を解放してもよい。
【0071】
第1実施態様の製造方法によって得られた伸縮性積層シート1は、図2に示すように、一旦、ロール状に巻き取ることができ、あるいはそのままおむつ等の製造ライン(図示せず)に投入することもできる。
【0072】
第1実施態様の製造方法によって、第1実施形態の伸縮性積層シート1の断面形状が形成されるメカニズムは、以下の通りであると考えられる。
平坦状積層シート1’においては、大径部61,62に押圧される未延伸部と、大径部61,62に押圧されずに延伸される延伸部とが交互に配列する。
延伸部及び未延伸部の各々の幅(長さ)は、凹凸ロールの大径部のピッチを変更することで、多様な状態に制御することができる。
また、凹凸ロールの大径部のピッチと、伸縮性積層シート1を形成するときに使用したエンボスパターンの間隔とが周期的に一致する場合には、延伸部と未延伸部との交互の配列基点に、エンボスパターンのエンボス部が同調する。そのために、外観上も、延伸部と未延伸部との交互の配列がより鮮明になり、きれいな外観を有するシートに加工できる。
【0073】
第1実施態様の製造方法によれば、透湿フィルム3の破れを防止しつつ、第1実施形態の伸縮性積層シート1を容易に製造することができる。また、透湿フィルム3を部分的に延伸させることができるため、透湿フィルム3全体の透湿度を向上させることができる。
尚、延伸によって伸長される透湿フィルム3の長さの絶対値及び伸長率の許容範囲を、予め設定しておくことが好ましい。
【0074】
次に、本発明の伸縮性積層シートの製造方法の第2実施態様について図6及び図7を参照しながら説明する。第2実施態様の説明において、特に説明しない点については、前述した第1実施態様の説明が適宜適用される。
第2実施態様は、前述の第1実施態様に比して、伸縮性不織布2に相当する被エンボス繊維シート2’を形成するまでの工程とその後の工程とを、異なる製造ラインで行っている点が主として異なる。
具体的には、第2実施態様の製造方法は、エンボス装置55を用いて被エンボス繊維シート2’を形成するまでは、第1実施態様の製造方法と同様である。而して、第2実施態様の製造方法においては、形成された被エンボス繊維シート2’を一旦、ロール状としている。
【0075】
次に、図7に示すように、別の製造ラインにおいて、被エンボス繊維シート2’における第1の非弾性繊維ウエブ22’側(図7の上側)に塗工装置71により接着剤を全面的に塗工する。そして、透湿フィルム連続体3’を、被エンボス繊維シート2’における、接着剤の塗工された第1の非弾性繊維ウエブ22’の外面に合流させる。合流した被エンボス繊維シート2’及び透湿フィルム連続体3’を、一対のニップロール72,72の間で挟圧して、接着剤の接着力により全面的に接合し、平坦状積層シート1’を形成する。
この平坦状積層シート1’に対して、第1実施態様と同様に、延伸装置6により延伸加工を行い、伸縮性積層シート1を得る。
【0076】
次に、本発明の伸縮性積層シートの第3実施態様について図8及び図9を参照しながら説明する。第3実施態様の説明において、特に説明しない点については、前述した第1実施態様及び第2実施態様の説明が適宜適用される。
第3実施態様の製造方法は、前述の第1実施態様の製造方法に比して、伸縮性積層シート1の前段階である平坦状積層シート1’を形成するまでの工程と、平坦状積層シート1’に延伸加工を行って伸縮性積層シート1を形成する工程とを、異なる製造ラインで行っている点が主として異なる。
【0077】
具体的には、第3実施態様の製造方法は、一対のニップロール72,72を用いて平坦状積層シート1’を形成するまでは、第1実施態様の製造方法と同様である。而して、第3実施態様の製造方法においては、形成された平坦状積層シート1’を、一旦ロール状としている。
次に、図9に示すように、おむつ等の別の製造ラインにおいて、平坦状積層シート1’に対して、第1実施態様の製造方法と同様に、延伸装置6により延伸加工を行い、伸縮性積層シート1を得る。
【0078】
前述の第1〜第3実施態様の製造方法においては、平坦状積層シート1’に対してCD方向に延伸加工を行っているが、本発明の伸縮性積層シートの製造方法においては、これに制限されず、図10及び図11に示すように、大径部61’,62’と小径部(図示せず)が周方向に交互に形成された一対の凹凸ロール63,64を備えた延伸装置6を用いて、平坦状積層シート1’を、その流れ方向(MD)に延伸させることもできる。
【0079】
また、前述の第1〜第3実施態様の製造方法においては、伸縮性不織布2に相当する被エンボス繊維シート2’と透湿フィルム連続体3’とを接合して平坦状積層シート1’を形成する工程の後に、延伸装置6を用いて平坦状積層シート1’に延伸加工を行っているが、本発明の伸縮性積層シートの製造方法においては、被エンボス繊維シート2’と透湿フィルム連続体3’とを延伸装置6の直前で合流させて、平坦状積層シート1’の形成と同時に、平坦状積層シート1’の延伸加工を行うこともできる(図示せず)。
【0080】
次に、本発明の伸縮性積層シートの他の実施形態について説明する。他の実施形態については、上述した第1実施形態と異なる点を主として説明し、同様の点は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。他の実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0081】
第2実施形態の伸縮性積層シートは、第1実施形態の伸縮性積層シートに比して、伸縮性不織布2における弾性繊維集合体21が「互いに交差せずに一方向に延びるように配列した多数の弾性フィラメント24」から構成されている点が主として異なる。第2実施形態については、透湿フィルム3自体の構成、伸縮性不織布2(被エンボス繊維シート2’)と透湿フィルム3(透湿フィルム連続体3’)とを接合する工程、平坦状積層シート1’に延伸加工を行う工程等については、第1実施形態と同様であるから、以下には、伸縮性不織布2自体の構成及びその製造方法を中心に説明する。
【0082】
図12には、第2実施形態の伸縮性積層シートにおける伸縮性不織布2について一部を破断した斜視図が示されている。第2実施形態における伸縮性不織布2は、第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23と、両非弾性繊維層22,23間に挟持された多数の弾性フィラメント24とから構成されている。各弾性フィラメント24は、第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23と接合している。第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23は、同種のものでもよく、あるいは異種のものでもよい。ここでいう「同種」とは、非弾性繊維層の製造プロセス、非弾性繊維層の構成繊維の種類、構成繊維の繊維径や長さ、非弾性繊維層の厚みや坪量等が全て同じであることを意味する。これらのうちの少なくとも一つが異なる場合には「異種」であるという。
【0083】
各非弾性繊維層22,23は、弾性フィラメント24の延びる方向と同方向に伸長性を有している。「伸長性を有している」には、(イ)非弾性繊維層22,23の構成繊維自体が伸長する場合と、(ロ)構成繊維自体は伸長しなくても、交点において結合していた繊維同士が離れたり、繊維同士の結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたりして、非弾性繊維層全体として伸長する場合とがある。
【0084】
各非弾性繊維層22,23は、弾性フィラメント24と接合される前の原反の状態で既に伸長可能になっていてもよい。あるいは、弾性フィラメント24と接合される前の原反の状態では伸長可能ではないが、弾性フィラメント24と接合された後に伸長可能となるように加工が施されて、伸長可能になるものでもよい。非弾性繊維層22,23を伸長可能にするための具体的な方法としては、熱処理、ロール間延伸、歯溝やギアによる噛み込み延伸、テンターによる引張延伸等が挙げられる。弾性フィラメント24を非弾性繊維層22,23に融着させるときの該非弾性繊維層22,23の搬送性が良好になる点から、非弾性繊維層22,23は、その原反の状態では伸長可能でないことが好ましい。
【0085】
各非弾性繊維層22,23は、伸長可能であり且つ実質的に非弾性である。弾性とは、伸ばすことができ且つ伸ばした力から解放したときに収縮する性質であるところ、各非弾性繊維層22,23は、かかる性質を有していない。各非弾性繊維層22,23が弾性を有する場合には、その構成繊維として弾性樹脂を含む繊維が必要となり、弾性樹脂を含む繊維は、非弾性繊維層22,23の風合いを低下させる一因となるべた付き感を呈する傾向にある。従って、各非弾性繊維層22,23を実質的に非弾性として、その風合いの低下を防止している。
【0086】
各弾性フィラメント24は、伸縮性不織布2の全長に亘って実質的に連続している。弾性フィラメント24は弾性樹脂を含んでいる。各弾性フィラメント24は、互いに交差せずに一方向に延びるように配列している。ただし、伸縮性不織布2の製造条件の不可避的な変動に起因して、弾性フィラメント24が意図せず交差することは許容される。各弾性フィラメント24は、互いに交差しない限り、直線状に延びていてもよく、あるいは蛇行しながら延びていてもよい。弾性フィラメント24の延びる方向は、非弾性繊維層22,23の製造時の流れ方向と一致していてもよく、あるいは非弾性繊維層22,23の製造時の流れ方向と直交していてもよい。後述する好適な製造方法に従って伸縮性不織布2を製造すると、弾性フィラメント24の延びる方向は、第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23の製造時の流れ方向と一致する。
【0087】
弾性フィラメント24は、実質的に非伸長状態で非弾性繊維層22,23に接合されている。弾性フィラメント24が伸長していないため、伸長による緩和(クリープ)が起こらず、該弾性フィラメント24を非弾性繊維層22,23と貼り合わせた後の原反の保存時や延伸等の加工後において、伸縮性の低下がないという利点がある。また、巻き取られた原反の巻き締まりによる変形もない。更に、例えば、弾性フィラメント24を2倍に伸長させて非弾性繊維層22,23と貼り合わせた場合に、仮に初期の1.3倍まで戻ったとすると、この状態からは1.7倍までしか伸ばすことができないが、非伸長状態で貼り合わせを行った場合には、伸縮性不織布を伸長させたときの初期原点が異なるため、非弾性繊維層22,23の伸長可能な長さまで又は弾性フィラメント24の最大伸度まで伸ばすことが可能となるという利点がある。
【0088】
弾性フィラメント24は、糸状の合成ゴム糸や天然ゴムであり得る。あるいは乾式紡糸(溶融紡糸)や、湿式紡糸によって得られたものであり得る。このうち、後述する好適な製造方法に鑑みると、弾性フィラメント24は、これを一旦巻き取ることなしに直接溶融紡糸によって得られたものであることが好ましい。
【0089】
弾性フィラメント24は、未延伸糸を延伸して得られたものであることが好ましい。延伸することで、弾性フィラメント24を構成する高分子が、該弾性フィラメント24の長さ方向に分子配向するので、後述する50%伸長時の行き/戻り比が高まり、ヒステリシスロスが小さくなる。また、延伸によって細い弾性フィラメント24が得られる。この観点から、弾性フィラメント24は、1.1〜400倍、特に4〜100倍に延伸されたものであることが好ましい。
【0090】
特に、弾性フィラメント24は、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されて形成されたものであることが好ましい。弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されることで、弾性フィラメント24を非伸長状態で非弾性繊維層22,23に接合させることが可能になる。
延伸の具体的な操作としては、(イ)弾性フィラメント24の原料となる樹脂を溶融紡糸して一旦、未延伸糸を得、その未延伸糸の弾性フィラメント24を再度加熱して軟化温度(ハードセグメントのガラス転移点温度Tg)以上の状態で延伸する操作や、(ロ)弾性フィラメント24の原料となる樹脂を溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸する操作が挙げられる。後述する好適な製造方法に従って伸縮性不織布2を製造すると、弾性フィラメント24は、溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸することで得られる。
【0091】
延伸により得られた弾性フィラメント24は、その直径が10〜200μm、特に20〜130μmであることが好ましい。この範囲は、伸縮性不織布2の風合いや、弾性フィラメント24の生産性を考慮して決定されたものである。詳細には、弾性フィラメント24の直径が大き過ぎると、伸縮性不織布2に触れたときに、弾性フィラメント24に起因する段差が知覚されやすくなってしまう。この段差は、伸縮性不織布2の風合いにマイナスに作用するものである。この観点から、弾性フィラメント24の直径は、小さいほど、各非弾性繊維層22,23の風合いのみが知覚されやすくなるので好ましい。また、弾性フィラメント24は、伸縮性不織布2に隠蔽性を持たせる意味でも細い方が好ましい。
【0092】
更に、歯溝ロールによる延伸において、弾性フィラメント24の直径は、歯溝ロール間の歯と歯とのクリアランス以下(好ましいクリアランスとしては、歯の耐久性を高める点及び噛み込み量による延伸倍率を高くする点で、250μm以下、より好ましくは200μm以下である)にすることで、延伸時に弾性フィラメントがダメージ(亀裂や切断)を受けにくくなるので、細い方が好ましい。弾性フィラメントの直径と上記クリアランスとの比は、0.2〜1、特に0.2〜0.5が好ましい。もっとも、弾性フィラメント24が細径になる程、その製造が容易でなくなる。これらを考慮すると、弾性フィラメント24の直径は前記の範囲内であることが好ましい。
【0093】
上述の段差を発生させないようにする観点から、伸縮性不織布2の厚みに対する弾性フィラメント24の(伸縮性不織布の厚み方向の)直径の割合は、1〜30%、特に5〜12%であることが好ましい。
【0094】
弾性フィラメント24は、その断面が円形であり得るが、場合によっては楕円形の断面のこともある。例えば後述する製造方法に従って伸縮性不織布2を製造する場合には、弾性フィラメント24の断面は楕円形になりやすい傾向にある。この場合、伸縮性不織布2中において、弾性フィラメント24は、楕円形の長軸が伸縮性不織布2の平面方向と同方向になり、且つ短軸が伸縮性不織布2の厚さ方向と同方向になるように配置されることが好ましい。
【0095】
弾性フィラメント24の断面が楕円形である場合、長軸/短軸の比率(平均偏平率)は、伸縮特性及び弾性フィラメント24と非弾性繊維層22,23の構成繊維との接合強度、及び伸縮性不織布2の隠蔽性が増す点から、1.0〜7.0、特に1.1〜3.0であることが好ましい。断面が楕円形である弾性フィラメント24は、その長軸方向が、伸縮性不織布2の平面方向とほぼ一致するように配されている。なお、弾性フィラメント24の断面が楕円形である場合、弾性フィラメント24の直径とは、長軸径と短軸径とを数平均したものを意味する。
【0096】
弾性フィラメント24は、第2の非弾性繊維層23の色と異なる色に着色されていることも好ましい。これによって、弾性フィラメント24が第2の非弾性繊維層23越しに透けて見えて、伸縮性不織布2が縞模様を呈するようになるという意匠的な効果が奏される。このような効果は、特に非弾性繊維層23の厚み及び坪量が、後述する範囲内であると一層顕著なものとなる。
【0097】
伸縮性不織布2が十分な伸縮性を発現する観点、布様の良好な風合いを発現させる観点、及び必要に応じ上述の意匠的な効果を発現させる観点から、隣り合う弾性フィラメント24のピッチは、該弾性フィラメント24の直径が上述した範囲であることを条件として、0.1〜5mm、特に0.4〜1mmであることが好ましい。
【0098】
弾性フィラメント24は、その全長に亘って各非弾性繊維層22,23に接合している。ここで、「その全長に亘って接合している」とは、弾性フィラメント24と接触している全ての繊維(非弾性繊維層22,23の構成繊維)が、該弾性フィラメント24と接合していることを要せず、弾性フィラメント24に、意図的に形成された非接合部が存在しないような態様で、弾性フィラメント24と非弾性繊維層22,23の構成繊維とが接合されていることをいう。弾性フィラメント24が各非弾性繊維層22,23にその全長に亘って接合していることで、弾性フィラメント24と各非弾性繊維層22,23との接合力を十分に高めることができる。その結果、伸縮性不織布2を引き伸ばしても、弾性フィラメント24が各非弾性繊維層22,23から剥離しにくくなる。弾性フィラメント24が各非弾性繊維層22,23から剥離してしまうと、自然状態(弛緩状態)において、弾性フィラメント24と各非弾性繊維層22,23との間に浮きが生じて、伸縮性不織布2に皺が発生しやすくなり、伸縮性不織布2全体としての一体感に欠けるものとなる。
【0099】
弾性フィラメント24と非弾性繊維層22,23との接合の様式としては、例えば融着、接着剤による接着などが挙げられる。後述する好適な製造方法に従って伸縮性不織布2を製造すると、弾性フィラメント24は、各非弾性繊維層22,23に融着により接合される。この方法によれば、各非弾性繊維層22,23に熱は加わらず、溶融紡糸により得られた弾性フィラメント24の固化前に、該弾性フィラメント24を非弾性繊維層22,23に融着させる。従って、該弾性フィラメント24の周囲に存在する繊維のみが該弾性フィラメント24と接合し、それよりも離れた位置にある繊維は、非弾性繊維層22,23の風合いを維持したままになっているので、伸縮性不織布2の風合いが良好に保たれるという利点がある。この場合、各非弾性繊維層22,23と弾性フィラメント24とを接合させる前に、補助的な接合手段として接着剤を塗布することができる。あるいは、各非弾性繊維層22,23と弾性フィラメント24とを接合させた後に、補助的な接合手段として、熱処理(スチームジェット、ヒートエンボス)や、機械交絡(ニードルパンチ、スパンレース)などを行うこともできる。もっとも、これらの補助的な接合手段は、得られる伸縮性不織布2の風合いを損なったり、弾性フィラメント24にダメージを与える場合がある。従って、弾性フィラメント24をその溶融熱で非弾性繊維層22,23と融着することが好ましい。ただし、補助的な接合手段として、エアスルー法による熱風吹き付けからなる熱処理を用いた場合には、得られる伸縮性不織布2の風合いは損なわれず、また非弾性繊維層22,23の接合強度の高いものが得られる点で好ましい。
【0100】
伸縮性不織布2は、弾性フィラメント24の延びる方向と同方向に伸縮可能になっている。伸縮性不織布2の伸縮性は、弾性フィラメント24の弾性に起因して発現する。伸縮性不織布2を、弾性フィラメント24の延びる方向と同方向に引き伸ばすと、弾性フィラメント24、第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23が伸長する。そして伸縮性不織布2の引き伸ばしを解除すると、弾性フィラメント24が収縮し、その収縮に連れて、第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23が引き伸ばし前の状態に復帰する。
【0101】
第2実施形態における伸縮性不織布2においては、弾性フィラメント24と直交した状態で結合している他の弾性フィラメントは存在していない。従って、伸縮性不織布2を、弾性フィラメント24の延びる方向と同方向に引き伸ばしたときには、該伸縮性不織布2は幅縮みをほとんど起こさずに伸長する。つまり、伸縮性不織布2は、その引き伸ばし状態において、その長手方向に亘って幅がほぼ一様になっている。その結果、伸縮性不織布2をその伸長状態で搬送させて、これを加工するときのハンドリング性が良好になる。また、伸縮性不織布2を例えばパンツ型おむつの外包材として用いた場合、おむつの着用中にずれ落ちが起こったり、皺が寄ったりすることが効果的に防止される。この観点から、伸縮性不織布2は、これを1.5倍に伸長したときの幅縮みの割合が、伸長前の幅の90%〜99%、特に95%〜99%であることが好ましい。幅縮みは、伸長後の幅を伸長前の幅で割った値として求めることができる。幅の測定は、長さ1m、幅300mmのサンプルを切り出し、伸長する両端の間隔を幅300mmに保った状態で1.5倍に伸長させて行う。伸長後の幅の測定位置は中央部とする。
【0102】
次に、第2実施形態における伸縮性不織布2を構成する第1の非弾性繊維層22、第2の非弾性繊維層23及び弾性フィラメント24の構成材料について説明する。
各非弾性繊維層22,23を構成する繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。各非弾性繊維層22,23を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよく、親水性でも撥水性でもよい。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。各非弾性繊維層22,23は、連続フィラメント又は短繊維の不織布であり得る。特に、伸縮性不織布2を厚みのある嵩高なものとする観点から、各非弾性繊維層22,23は、短繊維の不織布であることが好ましい。伸縮性不織布2を、肌に接触する部材として用いる場合には、肌の接触する側に風合いの良い短繊維不織布を用い、その反対面に強度の高い連続フィラメントの不織布を用いてもよい。
【0103】
各非弾性繊維層22,23は、その構成繊維が低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなることが好ましい。その場合には、少なくとも低融点成分の熱融着により、その構成繊維同士が繊維交点で接合される。低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる芯鞘型の複合繊維としては、芯が高融点PET、PPで、鞘が低融点PET、PP、PEのものが好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、弾性フィラメント24との融着が強くなり、両者間での剥離が起こりにくくなるので好ましい。
【0104】
各非弾性繊維層22,23の構成繊維は、最大強度の高い伸縮性不織布2が得られる点で、高伸度(例えば繊維の最大伸度が150〜400%)のものであることが好ましい。繊維の伸度は、JIS L−1015に準拠し、測定環境温湿度:20±2℃、65±5%RH、引張試験機の掴み間隔:20mm、引張速度:20mm/minの条件で測定する。なお、既に製造された非弾性繊維層22,23から繊維を採取して伸度を測定するときを始めとして、掴み間隔を20mmにできない場合、つまり、測定する繊維の長さが20mmに満たない場合には、掴み間隔を10mm又は5mmに設定して測定する。
【0105】
各非弾性繊維層22,23の厚みは、好ましくは0.05〜5mm、更に好ましくは0.1〜1.0mm、一層好ましくは0.15〜0.5mmである。厚みの測定は、0.5cN/cm2の荷重にて平板間に挟み、伸縮性不織布の断面をマイクロスコープにより50〜200倍の倍率で観察し、各視野において平均厚みをそれぞれ求め、3視野の厚みの平均値として求めることができる。伸縮性不織布全体の厚みは、平板間の距離を測ることで求められる。各非弾性繊維層22,23の坪量は、風合い、厚み及び意匠性等の観点から、それぞれ3〜100g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。
【0106】
弾性フィラメント24は、例えば熱可塑性エラストマーやゴムなどを原料とするものである。特に熱可塑性エラストマーを原料として用いると、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、また、そのようにして得られたフィラメントは、熱融着させやすいので、第2実施形態における伸縮性不織布2に好適である。熱可塑性エラストマーとしては、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー(エチレン系のα−オレフィンエラストマー、エチレン・ブテン・オクテン等を共重合したプロピレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらの樹脂からなる芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維を用いることもできる。特に、弾性フィラメント24の成形性、伸縮特性、コストの面で、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はそれらを組み合わせて用いることが好ましい。
【0107】
弾性フィラメント24と非弾性繊維層22,23を構成する繊維との好適な組み合わせは、弾性フィラメント24にSEBS樹脂又はSEPS樹脂を用い、非弾性繊維層22,23の構成繊維にPP/PE芯鞘型複合繊維又はPET/PE芯鞘型複合繊維を用いる組み合わせである。この組み合わせを採用することで、融着をしっかりと行うことができる。また芯の融点が高いので、繊維が融着時に溶け切らず(芯が残り)、最大強度の高い伸縮性不織布2が得られる。
【0108】
また、具体的な用途にもよるが、第2実施形態における伸縮性不織布2の全体の坪量は、10〜150g/m2、特に25〜50g/m2であることが好ましい。伸縮性不織布2の厚みは、0.05〜5mm、特に0.5〜2mmであることが好ましい。伸縮性不織布2の厚みは、先に述べた各非弾性繊維層22,23の厚みの測定と同様の方法で測定される。
【0109】
第2実施形態の伸縮性積層シート1は、前述したように、伸縮性不織布2における弾性繊維集合体21が「互いに交差せずに一方向に延びるように配列した多数の弾性フィラメント24」から構成されている点が異なる以外は、第1実施形態の伸縮性積層シート1と同様に構成される。
従って、第2実施形態の伸縮性積層シート1によれば、第1実施形態と同様の効果が奏される。また、弾性繊維集合体21が多数の弾性フィラメント24から構成され、弾性繊維集合体21が伸縮性積層シート1の面方向に連続的ではないため、弾性繊維集合体21に歪みが生じにくい。また、第1の非弾性繊維層22と第2の非弾性繊維層23とが直接接合されている領域(つまり弾性フィラメント24,24の間)が存在するため、伸縮性積層シート1全体の伸縮応答性に優れている。
【0110】
尚、第2実施形態の伸縮性積層シート1においては、弾性フィラメント24は、同径であり、等ピッチで配置されていたので、伸縮性不織布2におけるどの部分をとっても、伸長応力が同じになっていた。しかし、これに代えて、弾性フィラメント24の伸長方向における伸長応力が異なる2以上の領域からなるように伸縮性不織布2を構成してもよい。2つ以上の該領域は、該伸長方向に対してほぼ並列配置されている。この場合、伸長応力が異なる各領域間では、隣り合う弾性フィラメント24のピッチが異なっているか、及び/又は、弾性フィラメント24の直径が異なっている。それによって各領域間での伸長応力を異ならせることができる。伸縮性不織布2の製造時に、2種以上の異なる樹脂を、任意の紡糸ノズルに導入して紡糸を行うことでも、各領域間での伸長応力を異ならせることができる。
【0111】
伸縮性不織布2に部分的にエンボス加工を行ったり、弾性フィラメント24を部分的にカットしたり、部分的に熱シールすることもできる。これらの操作は、伸縮性不織布2に伸縮しない部分を形成したり、強度を部分的に上げる目的で行われる。あるいは、他の部材と貼り合わせたり、デザイン性を持たせる目的で行う。
【0112】
次に、第2実施形態における伸縮性不織布2の一製造方法(以下「第4実施態様の製造方法」ともいう)について図13を参照しながら説明する。
第4実施態様の製造方法においては、不織布状の非弾性繊維層22,23を用いる。図13に示すように、紡糸ノズル73から紡出された溶融状態の多数の弾性フィラメント24を所定速度で引き取って延伸しつつ、該弾性フィラメント24の固化前に、該弾性フィラメント24が互いに交差せず一方向に配列するように該弾性フィラメント24を非弾性繊維層22,23に融着させ、次いで該弾性フィラメント24が融着した非弾性繊維層22,23を、該弾性フィラメント24の延びる方向に沿って延伸して該非弾性繊維層22,23に伸長性を付与する。
【0113】
紡糸ノズル73は、紡糸ヘッド74に設けられている。紡糸ヘッド74は、押出機に接続されている。紡糸ヘッド74への樹脂の供給は、ギアポンプを介して行うこともできる。該押出機によって溶融混練された弾性樹脂は、紡糸ヘッド74に供給される。紡糸ヘッド74には、多数の紡糸ノズル73が直線状に一列に配置されている。紡糸ノズル73は、第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23の幅方向に沿って配置されている。隣り合う紡糸ノズル73の間隔は、目的とする伸縮性不織布2における弾性フィラメント24の間隔に相当する。
【0114】
紡糸ノズル73は通常円形であり、その直径は弾性フィラメント24の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。この観点から、紡糸ノズル73の直径は、0.1〜2mm、特に0.2〜0.6mmであることが好ましい。非弾性繊維層22,23との接合強度を高める目的、弾性フィラメント24の紡糸性を上げる目的、及び伸縮性不織布2の伸縮特性を向上させる目的で、弾性フィラメント24を複合の形態(サイドバイサイド、芯鞘、海島構造)とすることもできる。具体的にはPP系のエラストマー樹脂とスチレン系のエラストマー樹脂とを組み合わせることが好ましい。
【0115】
紡出された溶融状態の弾性フィラメント24は、それぞれ原反から同速度で繰り出された、不織布状の第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23と合流し、両非弾性繊維層22,23間に挟持されて所定速度で引き取られる。弾性フィラメント24の引き取り速度は、両非弾性繊維層22,23の繰り出し速度と一致している。弾性フィラメント24の引き取り速度は、該弾性フィラメント24の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。延伸によって弾性フィラメント24に生じる張力は、該弾性フィラメント24を非弾性繊維層22,23と貼り合わせるときの風や静電気に起因する該弾性フィラメント24の乱れを防止する。それによって弾性フィラメント同士を交差させずに一方向へ配列させることができる。これらの観点から、弾性フィラメント24の引き取り速度は、紡糸ノズル73の孔内の樹脂吐出速度に対し、その延伸倍率が1.1〜400倍、特に4〜100倍、更に10〜80倍となるように調整されることが好ましい。
【0116】
弾性フィラメント24は、その固化前に、即ち融着可能な状態で第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23と合流する。その結果、弾性フィラメント24は、第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23に挟持された状態で、これらの非弾性繊維層22,23に融着する。つまり、固化前の弾性フィラメント24を、搬送される非弾性繊維層22,23に融着させることで、弾性フィラメント24は引き取られて延伸される。弾性フィラメント24の融着に際しては第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23には、外部から熱は付与されていない。つまり、融着可能になっている弾性フィラメント24に起因する溶融熱によってのみ、該弾性フィラメント24と両非弾性繊維層22,23とが融着する。その結果、両非弾性繊維層22,23の構成繊維のうち、弾性フィラメント24の周囲に存在する繊維のみが該弾性フィラメントと融着し、それよりも離れた位置に存在する繊維は融着しない。その結果、両非弾性繊維層22,23に加わる熱は最小限にとどまるので、該非弾性繊維層22,23自身が本来的に有する良好な風合いが維持される。それによって、得られる伸縮性不織布2の風合いが良好になる。
【0117】
紡出された弾性フィラメント24が、第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23と合流するまでの間、該弾性フィラメント24は延伸されて延伸方向に分子が配向する。また直径が小さくなる。分子配向によって、50%伸長時強度の行き/戻り比(ヒステリシス)の小さな弾性フィラメント24が得られる。弾性フィラメント24を十分に延伸させる観点及び弾性フィラメント24の糸切れを紡糸する観点から、紡出された弾性フィラメント24に所定温度の風(熱風、冷風)を吹き付けて、該弾性フィラメント24の温度を調整してもよい。
【0118】
弾性フィラメント24の延伸は、弾性樹脂の溶融状態での延伸(溶融延伸)だけでなく、その冷却過程における軟化状態の延伸(軟化延伸)であってもよい。溶融状態とは、外力を加えたとき樹脂が流動する状態である。樹脂の溶融温度は粘弾性測定による(例えば、円形の並行平板間に挟んだ樹脂に、回転方向の振動歪を加えて測定される)Tanδのピーク温度として測定される。弾性樹脂の延伸時に糸切れが起こらないようにするために、延伸区間を長く確保することがよい。この観点から、弾性樹脂の溶融温度は130〜300℃が好ましい。また、弾性樹脂の耐熱性(成形温度)の観点から、溶融温度は130〜220℃が好ましい。軟化温度は、シート状にした弾性樹脂の測定試料の粘弾性特性におけるTg温度として測定される。軟化温度から溶融温度までの範囲を軟化状態という。軟化温度は、伸縮性不織布2の保存時における弾性樹脂の結晶の成長や、体温による伸縮性不織布2の伸縮特性の低下の観点から、60℃以上が好ましく、80℃〜180℃がより好ましい。
【0119】
弾性フィラメント24と非弾性繊維層22,23とを接合させるときの弾性フィラメント24の温度は、繊維融着を確実にするために100℃以上であることが好ましい。また、弾性フィラメント24の形状を保持して伸縮特性の良好な伸縮性不織布2を得る観点から、弾性フィラメントの温度は、180℃以下であることが好ましく、より好ましくは120〜160℃の範囲である。接合時の温度は、弾性フィラメント24と接合させるラミネート基材として、弾性フィラメントを構成する弾性樹脂の融点と異なる融点を有する変性ポリエチレンや変性ポリプロピレンなどからなるフィルムを用いて、その接合状態を観察することで測定できる。このとき、弾性フィラメントとラミネート基材が融着していれば、接合温度はラミネート基材の融点以上である。
【0120】
弾性フィラメント24と非弾性繊維層22,23との接合時には、弾性フィラメント24は実質的に非伸長状態(外力を取り除いたときに縮まない状態)である。両者の接合状態においては、非弾性繊維層22,23を構成する繊維の少なくとも一部が、弾性フィラメントへ融着するか、更には弾性フィラメント24と非弾性繊維層22,23を構成する繊維の少なくとも一部との両方が融着することがより好ましい。十分な接合強度が得られるからである。得られる伸縮性不織布2の伸縮特性は、弾性フィラメント24と非弾性繊維層22,23との接合点の密度に影響を受ける。また、伸縮特性は、接合温度、接合圧力、後述する非弾性繊維層22,23の延伸による接合点の外れによって調整することができる。非弾性繊維層22,23の構成繊維を弾性フィラメント24に融着させることで、接合点一つ一つの接合強度が高くなる。接合点の密度を低くすると、非弾性繊維層22,23による伸縮阻害が少なくなり、且つ十分な接合強度を有する伸縮性不織布2が得られるので好ましい。
【0121】
弾性フィラメント24を第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23と合流させるときには、各弾性フィラメント24が互いに交差せず一方向に配列するようにする。そして、弾性フィラメント24を第1の非弾性繊維層22及び第2の非弾性繊維層23と合流させて両非弾性繊維層22,23間に該弾性フィラメント24を挟持させた状態で、これら三者を一対のニップロール75,75によって挟圧する。挟圧の条件は、得られる伸縮性不織布2の風合いに影響を及ぼす。挟圧力が大きすぎると、弾性フィラメント24が両非弾性繊維層22,23内に食い込みやすくなり、それに起因して得られる伸縮性不織布2の風合いが低下しやすい。この観点から、ニップロール75,75による挟圧力は、弾性フィラメント24が両非弾性繊維層22,23に接触する程度で足り、過度に高い挟圧力は必要とされない。
【0122】
ニップロール75による挟圧の別の条件として、ニップロール75の温度が挙げられる。ニップロール75を加熱した状態で挟圧を行うよりもむしろ、加熱しないか(つまり成り行きにまかせるか)、又は冷却しながら挟圧を行う方が、風合いの良好な伸縮性不織布2が得られる。ニップロール75を冷却する場合には、冷却水等の冷媒を用い、ニップロール75の表面設定温度が10〜50℃になるように温度調節することが好ましい。
【0123】
このようにして2枚の不織布状の非弾性繊維層22,23間に弾性フィラメント24が挟持された未エンボス繊維シート2”が得られる。
非弾性繊維層22,23として本来的に伸長性を有するものを用いた場合には、この未エンボス繊維シート2”が伸縮性不織布2そのものとなる。これを用いて、第1〜第3実施態様と同様の工程により、伸縮性不織布2に透湿フィルム3を全面的に接合して、第2実施形態の伸縮性積層シート1を形成することができる。
【0124】
一方、非弾性繊維層22,23として本来的に伸長性を有しないものを用いた場合には、該非弾性繊維層22,23を含む未エンボス繊維シート2”に、第1〜第3実施態様と同様の工程により、透湿フィルム3を全面的に接合して、平坦状積層シート1’を得る。そして、平坦状積層シート1’を、弾性フィラメント24の延びる方向に沿って延伸して、該非弾性繊維層22,23に伸長性を付与する操作を行い、第2実施形態の伸縮性積層シート1を形成することできる。
【0125】
第4実施態様の製造方法においては、弾性フィラメント24を非弾性繊維層22,23に接合した後に行う延伸加工において、延伸方向は、非弾性繊維層22,23の流れ方向のみであることが好ましいが、斜めであってもよい。更に、2種以上の延伸方法を組み合わせたり、段階的に延伸倍率を上げたり、部分的に延伸を行ったりすることもできる。延伸方向は一方向のみでなく、直交する二方向であってもよい。一方向に伸縮する不織布とこれに直交する方向に伸縮する不織布とを接合して、伸縮シートの全方向に伸縮性を持たせることもできる。
【0126】
また、第4実施態様の製造方法において、弾性フィラメント24と非弾性繊維層22,23とを接合する方法の別法として、一方の非弾性繊維層上に弾性フィラメント24を溶融延伸することなしに直接押出することもできる。この場合において延伸倍率は1倍である。また、弾性フィラメント24と非弾性繊維層22,23とを接合する前に、非弾性繊維層22,23又は弾性フィラメント24に接着剤を塗布し、その後に弾性フィラメント24を非弾性繊維層22,23に実質的に未伸長の状態で貼り合わせることもできる。更に、接着剤を塗布せずに、弾性フィラメント24と非弾性繊維層22,23とを重ねた後に、熱処理(エアスルー法による熱風の吹き付け、スチームジェット、ヒートエンボス)や、機械交絡(ニードルパンチ、スパンレース)などを行うこともできる。このとき、不織布状の非弾性繊維層22,23の代わりに繊維ウエブ状の非弾性繊維層22,23を用いることもできる。
【0127】
本発明の伸縮性積層シートは、前述の各実施形態に制限されず、適宜変更が可能である。
弾性繊維集合体は、第1実施形態においては、層状に形成された弾性繊維層21であり、第2実施形態においては、「互いに交差せずに一方向に延びるように配列した多数の弾性フィラメント24」から構成されているが、これに制限されない。例えば、弾性繊維集合体は、短繊維及び/又はフィラメントを主体として構成されているが、完全な層構造を形成していないもの(部分的に厚み方向に抜けている構成)でもよく、弾性フィラメントが交差して形成されたものでもよい。
【0128】
本発明の伸縮性積層シートの製造方法は、前述の各実施態様に制限されず、適宜変更が可能である。例えば、前述の各実施態様においては、透湿フィルム3、第1の非弾性繊維層22、弾性繊維集合体21及び第2の非弾性繊維層23の4層が一体的に波状形状を有している伸縮性積層シート1を製造しているが、本発明の伸縮性積層シートの製造方法は、これに制限されず、透湿フィルム3、第1の非弾性繊維層22及び弾性繊維集合体21の3層が一体的に波状形状を有している伸縮性積層シート1(図示せず)の製造に適用することができる。
【0129】
また、前述の各実施態様の製造方法においては、透湿フィルム連続体3’を用いているが、本発明の伸縮性積層シートの製造方法においては、透湿フィルム連続体3’を用いずに、予め所定の形状に切断されている透湿フィルム3を被エンボス繊維シート2’に間欠的に供給して、透湿フィルム3が間欠的に接合された平坦状積層シート1’を形成することができる(図示せず)。その場合には、被エンボス繊維シート2’における透湿フィルム3が接合される領域のみに接着剤を部分的に塗工することが好ましい。また、接着剤と透湿フィルム3との位相の同調を容易にするために、接着剤を透湿フィルム3に塗工してもよい。
【実施例】
【0130】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0131】
〔実施例1−1〕
実施例1−1は、第1実施形態に対応する実施例である。
伸縮性不織布2を以下のように形成した。直径:18μm、繊維長:44mm、最大伸度:160%の短繊維(芯:PET、鞘:PE)をカード機に供給し、カードウエブからなる坪量:10g/m2の非弾性繊維層22を形成した。弾性繊維層21は、スチレン系のエラストマー樹脂を構成繊維として、スピニングブローン法により、繊維径:21μm、坪量:15g/m2のものを、非弾性繊維層22上に直接積層して形成した。さらに、前述の非弾性繊維層22と同様の短繊維からなる坪量:10g/m2の非弾性繊維層23を、弾性繊維層21上に積層した。
【0132】
これら3層のウエブ積層体を熱風処理機(ドライヤー54)に導入し、エアスルー方式で熱風を吹き付け、熱風処理(繊維間融着)を行なった。熱風処理条件は、ネット上温度:137℃、熱風風量:2m/秒、吹き付け圧:0.1kg/cm2、吹き付け時間:15秒間であった。この熱風処理によって、3層のウエブが一体化された未エンボス繊維シート2”が得られた。
次いで、未エンボス繊維シート2”に熱エンボス加工を施した。熱エンボス加工は、エンボスロール56と、金属製フラットロールである受けロール57とを備えたエンボス装置55を用いて行った。エンボスロール56として、CD方向、MD方向ともにピッチが2.0mmである多数の凸部を有するドット状凸ロールを用いた。各ロールの温度は120℃に設定した。この熱エンボス加工によって、接合部が規則的なパターンで形成された伸縮性不織布2を得た。
【0133】
また、透湿フィルム3として、低密度ポリエチレン(ウルトゼックス2520F、三井石油化学工業(株)製)100重量部、炭酸カルシウム(エスカロン#2000、三井精粉(株)製)150重量部、ステアリン酸(ルナックS−40、花王(株)製)2重量部、ポリエステル(TM20AS、花王(株)製)11重量部からなる樹脂組成物を予備混練し、造粒した後、一軸押出し機を用いてインフレーション成形を行い、さらにロール延伸機を用いて成形方向に2.1倍に一軸延伸して得た多孔性シートを用いた。透湿度は1.6g/100cm2・hrであり、坪量は20g/m2である。ここでいう「透湿度」は、下記〔透湿度の測定方法〕により測定されたものである。
〔透湿度の測定方法〕
透湿度は、JIS Z0208に準拠して(試験片の面積及び試験時間については変更して)測定する。つまり、30℃、90%RH環境下で、試験片100cm2からの1時間あたりの透湿量(g/100cm2・hr)を測定する。
【0134】
上記伸縮性不織布2と上記透湿フィルム3とを、スロットスプレー方式により、坪量:4g/m2に塗工されたホットメルト型接着剤によって全面的に接合して、平坦状積層シート1’を得た。
平坦状積層シート1’の延伸加工は、図4に示すように、平坦状積層シート1’がCD方向に伸縮可能になるように行った。延伸加工においては、凹凸ロール63と凹凸ロール64とのピッチPは1.0mmであり、延伸倍率は、上下の凹凸ロール63,64の押し込み量を調整し、3.0倍とした。このようにして、実施例1−1の伸縮性積層シート1を得た。
【0135】
〔実施例1−2〕
実施例1−1に比して、平坦状積層シート1’の延伸加工を、図11に示すように、平坦状積層シート1’がMD方向に伸縮可能になるように行った。それ以外は、実施例1−1と同様である。
【0136】
〔比較例1−1〕
比較例1−1は、実施例1−1に比して、平坦状積層シート1’の延伸加工を行っていない。それ以外は、実施例1−1と同様である。つまり、比較例1−1は、実施例1−1における平坦状積層シート1’そのものである。
【0137】
〔比較例1−2〕
比較例1−2は、比較例1−1に比して、透湿フィルム3を備えていない。それ以外は、比較例1−1と同様である。つまり、比較例1−2は、比較例1−1における伸縮性不織布2そのものである。
【0138】
〔比較例1−3〕
比較例1−3は、比較例1−1に比して、伸縮性不織布2を備えていない。それ以外は、比較例1−1と同様である。つまり、比較例1−3は、比較例1−1における透湿フィルム3そのものである。
【0139】
〔実施例2−1〕
実施例2−1は、第2実施形態に対応する実施例である。
各非弾性繊維層22、23としては、坪量:20g/m2のエアスルー不織布を用いた。この不織布の構成繊維は、直径:19μm、最大伸度:180%、繊維長:44mmの芯鞘型複合繊維(芯:PET、鞘:PE)であった。
弾性フィラメント24の原料樹脂としては、SEPS樹脂〔重量平均分子量:5万、MFR:60g/分(230℃、2.16kg)〕からなるエラストマーを用いた。紡糸条件は、紡糸ヘッドの温度:310℃、紡糸ノズルの径:400μm、紡糸ノズルのピッチ:1mm、延伸倍率:11倍とした。弾性フィラメントの直径は120μmで、弾性フィラメントの坪量は8g/m2であった。かかる製造条件において、実施例2−1の伸縮性不織布2を得た。
【0140】
〔比較例2−1〕
比較例2−1は、実施例2−1に比して、平坦状積層シート1’の延伸加工を行っていない。それ以外は、実施例2−1と同様である。つまり、比較例2−1は、実施例2−1における平坦状積層シート1’そのものである。
【0141】
〔比較例2−2〕
比較例2−2は、比較例2−1に比して、透湿フィルム3を備えていない。それ以外は、比較例2−1と同様である。つまり、比較例2−2は、比較例2−1における伸縮性不織布2そのものである。
【0142】
〔比較例2−3〕
比較例2−3は、比較例2−1に比して、伸縮性不織布2を備えていない。それ以外は、比較例2−1と同様である。つまり、比較例2−3は、比較例2−1における透湿フィルム3そのものである。
【0143】
〔評価方法〕
各実施例及び比較例に対し、前記〔透湿度の測定方法〕により透湿度を測定して、透湿度の高低を評価する。各実施例及び比較例それぞれについて測定された透湿度を下記〔表1〕又は〔表2〕に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
〔表1〕に示す測定結果から、例えば以下のことがわかる。
伸縮性不織布2に透湿フィルム3を接合した平坦状積層シート1’(即ち比較例1−1)では、伸縮性不織布2単体(即ち比較例1−2)及び透湿フィルム3単体(即ち比較例1−3)よりも透湿度が低下する。これは、材料を積層し、接着剤で接合しているためである。
一方、比較例1−1の平坦状積層シート1’に延伸加工を施すことにより、透湿度の低下を防ぎ、透湿度を維持・向上させながら、肌触り及び伸縮性のよい伸縮性積層シート1(即ち実施例1−1及び1−2)を得ることができた。
CD方向(実施例1−1)及びMD方向(実施例1−2)のどちらに延伸加工を施しても、同様の効果が得られた。特に透湿フィルムをMD方向へ延伸しても、本条件程度の延伸であれば、材料がダメージを受けることなく延伸加工が可能であることが確認された。従って、本発明は、MD方向・CD方向のどちらにおいても伸縮性及び透湿度の向上を両立した伸縮性積層シートである。
【0147】
〔表2〕に示す測定結果から、例えば以下のことがわかる。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に延伸加工を施すことにより、透湿度の低下を防ぎ、透湿度を維持・向上させながら、肌触り及び伸縮性の良い伸縮性積層シート1(即ち実施例2−1)を得ることができた。
第2実施形態においては、MD方向への延伸加工後、伸縮性不織布2を、少ない歪で伸長できることから、伸縮性積層シート1についても伸長時の歪が少なく、伸縮性が優れ、また外観上も凹凸の皺が良好に形成される。従って、風合い及び外観が良好で、伸縮性及び透湿度の向上を両立した伸縮性積層シートが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1は、本発明の伸縮性積層シートの第1実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図2】図2は、第1実施形態の伸縮性積層シートの製造に用いられる、本発明の伸縮性積層シートの製造方法の第1実施態様を実施する製造装置を示す模式図である。
【図3】図3(a)は、伸縮性不織布と透湿フィルムとが当接する前の状態を示す断面図であり、図3(b)は、伸縮性不織布と透湿フィルムとが接合された状態を示す断面図である。
【図4】図4は、一対の凹凸ロール間で平坦状積層シートにCD方向に延伸加工を行っている状態を示す断面図である。
【図5】図5は、一対の凹凸ロール間で平坦状積層シートにCD方向に延伸加工を行っている状態を示す拡大断面図である。
【図6】図6は、本発明の伸縮性積層シートの製造方法の第2実施態様の前段を実施する製造装置を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の伸縮性積層シートの製造方法の第2実施態様の後段を実施する製造装置を示す模式図である。
【図8】図8は、本発明の伸縮性積層シートの製造方法の第3実施態様の前段を実施する製造装置を示す模式図である。
【図9】図9は、本発明の伸縮性積層シートの製造方法の第3実施態様の後段を実施する製造装置を示す模式図である。
【図10】図10は、一対の凹凸ロール間で平坦状積層シートにMD方向に延伸加工を行っている状態を示す斜視図である。
【図11】図11は、一対の凹凸ロール間で平坦状積層シートにMD方向に延伸加工を行っている状態を示す断面図である。
【図12】図12は、第2実施形態の伸縮性積層シートにおける伸縮性不織布について、一部を破断して示す斜視図である。
【図13】図13は、第2実施形態の伸縮性積層シートにおける伸縮性不織布の製造に用いられる、本発明の伸縮性積層シートの製造方法の第4実施態様を実施する製造装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0149】
1 伸縮性積層シート
11,12 基面
2 伸縮性不織布
21 弾性繊維層(弾性繊維集合体)
22 第1の非弾性繊維層
23 第2の非弾性繊維層
24 弾性フィラメント
3 透湿フィルム
41 第1凹条
42 第2凹条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性繊維集合体の両面に実質的に非弾性の第1の非弾性繊維層及び第2の非弾性繊維層がそれぞれ配され且つ隣接する該弾性繊維集合体と該非弾性繊維層とが熱融着によって接合されている伸縮性不織布における該第1の非弾性繊維層に、透湿フィルムが全面的に接合されてなる伸縮性積層シートであって、
前記透湿フィルム、前記第1の非弾性繊維層、前記弾性繊維集合体及び前記第2の非弾性繊維層は、一体的に波状形状を有しており、
前記伸縮性積層シートにおける前記透湿フィルム側及び前記第2の非弾性繊維層側には、それぞれ並列した複数本の第1凹条及び第2凹条が形成されており、
前記第1凹条は、前記透湿フィルムの外面が基面に対して屈曲して凹んで形成されており、前記第2凹条は、前記第2の非弾性繊維層の外面が基面に対して滑らかに凹んで形成されている伸縮性積層シート。
【請求項2】
前記第1の非弾性繊維層は伸長性を有している請求項1記載の伸縮性積層シート。
【請求項3】
弾性繊維集合体の少なくとも一面に実質的に非弾性の第1の非弾性繊維層が配され且つ該弾性繊維集合体と該第1の非弾性繊維層とが熱融着によって接合されている伸縮性不織布における該第1の非弾性繊維層に透湿フィルムが全面的に接合されてなり、該透湿フィルム、該第1の非弾性繊維層及び該弾性繊維集合体が一体的に波状形状を有しており、該透湿フィルム側及びその反対側にそれぞれ並列した複数本の第1凹条及び第2凹条が形成されている伸縮性積層シートの製造方法であって、
前記伸縮性不織布における前記第1の非弾性繊維層と前記透湿フィルムとを接合して平坦状積層シートを形成する工程の後に又は該工程と同時に、大径部及び小径部が交互に形成された一対の凹凸ロールを備えた延伸装置を用いて、該平坦状積層シートに延伸加工を行い、前記第1凹条及び前記第2凹条を形成して、伸縮性積層シートを製造する方法。
【請求項4】
前記伸縮性積層シートは、更に、前記弾性繊維集合体の他面に実質的に非弾性の第2の非弾性繊維層が配されてなる請求項3記載の伸縮性積層シートの製造方法。
【請求項5】
前記第1の非弾性繊維層は伸長性を有している請求項3又は4に記載の伸縮性積層シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−284717(P2008−284717A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129648(P2007−129648)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】