説明

伸縮支柱のロック装置

【課題】ロック部材をロック状態に付勢するばねが破損した場合、不用意にロック状態の解除することを防止する。
【解決手段】支柱本体61に長さ方向移動自在に支持された伸縮支柱62に、複数の係合歯72が形成されている。同係合歯72は、伸縮支柱62の長さ方向に一列に並んでいる。支柱本体61に対する伸縮支柱62の移動をロックするためのロック部材82が、係合歯72に係合する係合爪102を有しかつ係合歯72の列が並んだ方向と交差させられた水平状支持軸94周りに揺動自在である。外力として、ロック部材82に重力のみが作用させられた状態で、重力によって生じるロック部材82の支持軸周りの回転モーメントによって、係合歯72に対する係合爪102の係合が保持可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、支柱、作業台等の高さ調節をするための伸縮支柱のロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のロック装置としては、支柱本体に長さ方向移動自在に支持された伸縮支柱に、複数の係合歯が形成されており、同係合歯は、伸縮支柱の長さ方向に一列に並んでおり、支柱本体に対する伸縮支柱の移動をロックするためのロック部材が、係合歯に係合する係合爪を有しかつ係合歯の列が並んだ方向と交差させられた水平状支持軸周りに揺動自在であり、係合歯に係合爪が係合させられる方向にロック部材がねじりコイルばねによって付勢されているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ねじりコイルばねは、他の種類のばね、例えば、圧縮コイルばねと比較して、破損し易い。ばねが破損すると、係合歯に対する係合爪の係合が外れて、伸縮支柱の伸縮のロックが解除される。そうすると、伸縮支柱の移動が自在となって、伸縮支柱が縮む恐れがある。そうすると、伸縮支柱を備えた脚立は、転倒する恐れがあり、危険である。
【0004】
ばねが破損した場合においても、上記のロック解除を防止するための機構を備えたロック装置も知られているが、そのようなロック解除防止機構を備えたロック装置の構造は、複雑となり勝ちである。
【0005】
また、上記のロック装置において、ばねが破損した場合、ばねを交換するためには、ロック装置を分解する必要があり、ばねの交換が容易でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−52581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明によるロック装置は、ロック部材をロック状態に付勢するばねが破損した場合、不用意にロック状態の解除を防止できるロック装置を、簡単な構造でもって実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による伸縮支柱のロック装置は、支柱本体に長さ方向移動自在に支持された伸縮支柱に、複数の係合歯が形成されており、同係合歯は、伸縮支柱の長さ方向に一列に並んでおり、支柱本体に対する伸縮支柱の移動をロックするためのロック部材が、係合歯に係合する係合爪を有しかつ係合歯の列が並んだ方向と交差させられた水平状支持軸周りに揺動自在であり、外力として、ロック部材に重力のみが作用させられた状態で、重力によって生じるロック部材の支持軸周りの回転モーメントによって、係合歯に対する係合爪の係合が保持可能であるものである。
【0009】
この発明による伸縮支柱のロック装置では、ロック部材をロック状態に付勢するばねが破損した場合でも、ロック部材の自重によって、係合歯に係合爪が係合した状態に保持される。したがって、ロック装置による伸縮支柱の伸縮のロックが不用意に解除されることがない。
【0010】
さらに、係合歯に係合爪が係合した状態で、係合爪が、支持軸線を通る水平線よりも下側に位置させられかつロック部材の重心が、支持軸線を通る垂直線を挟んで係合歯よりも遠い側に位置させられていると、ロック部材に一定方向の回転モーメントが安定して作用させられる。
【0011】
また、ロックボデイを備えており、ロックボデイは、支柱本体の最下段の踏桟に垂下状に固定されかつ支持軸が渡された一対の対向状支持壁を有しており、ロック部材は、支持軸にはめ被せられているボス部と、ボス部から係合歯に向かってのびかつ先端に係合爪を形成した第1アーム部と、ボス部から第1アーム部の反対側に向かってのびた第2アーム部とよりなり、最下段の踏桟底面および第2アーム部頂面間に圧縮コイルばねが介在させられていると、圧縮コイルばねは、ねじりコイルばねと比較して、破損し難い。したがって、ロック部材に安定したばね力を作用させることができる。
【0012】
また、支柱本体から伸縮支柱が引出された状態で、最下段の踏桟底面および第2アーム部頂面間の間隙が圧縮コイルばねの自由長よりも大となる位置まで、ロック部材が揺動可能であると、圧縮コイルばねを容易に交換することができる。
【0013】
また、ロックボデイ両側壁およびロック部材ボス部間の両間隙に、支持軸にはめ被せられた筒状スペーサがそれぞれ介在させられていると、支持軸外面およびロック部材ボス部内面間の間隙に異物が混入することを、スペーサが阻止する。したがって、ロック部材の安定した揺動を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ロック部材をロック状態に付勢するばねが破損した場合、不用意にロック状態の解除を防止でき、これを、簡単な構造でもって実現するるロック装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明によるロック装置を備えた脚立の斜視図である。
【図2】同ロック装置の垂直断面図である。
【図3】図2のIII−III線にそう水平断面図である。
【図4】図2のIV−IV線にそう垂直断面図である。
【図5】同ロック装置のばね交換の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明において、前後とは、図1を基準として、図1に矢印Aで示す側を前、これと反対側を後といい、左右とは、前方から見て、その左右の側を左右というものとする。
【0017】
脚立は、前支持脚11および後支持脚12を備えている。
【0018】
前支持脚11は、左右に互いに間隔をおいて並べられた第1支柱21および第2支柱22を備えている。後支持脚12は、左右に互いに間隔をおいて並べられた第3支柱23および第4支柱24を備えている。
【0019】
第1支柱21および第2支柱22の上端部には前天板25が渡し止められ、その下方には前踏桟26が上下2段に渡し止められている。第3支柱23および第4支柱24の上端部には後天板27が渡し止められ、その下方には後踏桟28が上下2段に渡し止められている。
【0020】
第1支柱21の左側面上端部に第1回転金具31が固定されている。第2支柱22の右側面上端部に第2回転金具32が固定されている。第3支柱23の左側面上端部に第3回転金具33が固定されている。第4支柱24の右側面上端部に第4回転金具34が固定されている。
【0021】
第1回転金具31および第3回転金具33が第1水平ピン41によって揺動自在に連結されるとともに、第2回転金具32および第4回転金具34が第2水平ピン42に揺動自在に連結されており、これにより、前支持脚11および後支持脚12を互いに前後方向に揺動させて開閉しうるようになっている。
【0022】
第1〜第4支柱21〜24は、いずれも伸縮式のもので、伸縮長さ調節用ロック装置51〜54を備えている。
【0023】
第1〜第4支柱21〜24および第1〜第4ロック装置51〜54は、前後および左右の向きは異にするが、基本的構造は同一のものである。以下、第2支柱22と、第2支柱22および下段の前踏桟26が交差する部分に装備された第2ロック装置52について、詳細に説明する。第1、第3および第4支柱21、23、24および第1、第3および第4ロック装置51、53、54については、前後および左右を読み替えるものとし、その詳細説明は省略する。
【0024】
第2支柱22は、左方を開放した横断面コ字状のアルミニウム型材製支柱本体61と、支柱本体61に長さ方向に移動自在に支持されている横断面方形状のアルミニウム型材製伸縮支柱62とよりなる。
【0025】
伸縮支柱62の左側壁外面幅方向中央には、これの長さ方向にのびた歯列溝71が形成されている。歯列溝71の底面には多数の係合歯72が溝長さ方向一列に並んで形成されている。伸縮支柱62の上端には抜止部材73が取付られている。抜止部材73は、図示しないビスの取外しによって、伸縮支柱62の上端に着脱自在である。
【0026】
前踏桟26は、アルミニウム型材によって横断面異形の方形状に形成されたものである。前踏桟26の底壁下面幅方向中央にはこれの長さ方向にのびた係止溝74が形成されている。
【0027】
第2ロック装置52は、ロックボディ81と、ロックボディ81に装備されているロック部材82とを備えている。
【0028】
ロックボディ81は、支柱本体61の下端近くにおいて支柱本体61の開口を被覆しかつ支柱本体61の前後側壁にまたがって固定されている右方開放横断面コ字状のボデイ本体91と、ボデイ本体91から左方に突出させられかつ前踏桟26の底壁から垂下させられるように前踏桟26の前後側壁に固定されている前後一対の対向状支持壁92とよりなる。
【0029】
ボデイ本体91の右側壁には覗き窓93があけられている。両支持壁92には、ロック部材82を揺動自在に支持している水平支持軸94が渡し止められている。
【0030】
ロック部材82は、支持軸94にはめ被せられているボス部101と、ボス部101から係合歯72に向かって右向きのびかつ先端に係合爪102を形成した第1アーム部103と、ボス部101から左側に向かってのびた第2アーム部104とよりなる。
【0031】
係合爪102の先端面には、隣り合う3つの係合歯72をはめ入れうる3つの係合溝105が形成されている。第2アーム部104頂面の長さ中程からガイド壁106が立ち上がらされている。
【0032】
両支持壁92およびボス部101間には隙間がそれぞれ形成されている。各隙間には、支持軸94にはめ被せられた筒状スペーサ111が介在させられている。スペーサ111によって、支持軸94外面およびボス部101内面間の間隙が被覆されている。
【0033】
係止溝74底面および第2アーム部104頂面間には圧縮コイルばね121が介在させられている。圧縮コイルばね121の上端は、前踏桟係止溝74内に嵌め入れられている。さらに、圧縮コイルばね121は、ガイド壁106およびボス部101によって左右から挟まれていることによって、圧縮コイルばね121の伸縮が安定姿勢で行われるようになっている。
【0034】
図2において、圧縮コイルばね121は、ロック部材82を反時計方向に回転させるように付勢している。これにより、係合爪102は、覗き窓93を通って、支柱本体61内に進入して、対応する係合歯72および係合溝105同士がはめ合わされている。その結果、支柱本体61に対する伸縮支柱62の移動がロックされている。
【0035】
さらに、図2において、ロック部材82の重心位置がGで示されている。この状態で、係合爪102は、支持軸94の軸線を通る水平線Lhよりも下側に位置させられかつロック部材82の重心Gが、支持軸94の軸線を通る垂直線Lvよりも左側に位置させられている。これにより、ロック部材82に作用させられる重力によって、ロック部材82には反時計方向の回転モーメントが生じさせられる。この回転モーメントは、圧縮コイルばね121による付勢方向と同一である。
【0036】
もし仮に、圧縮コイルばね121が損傷し、圧縮コイルばね121による付勢力が無くなったとしても、ロック部材82に作用させられる重力による回転モーメントは無くなることはない。したがって、圧縮コイルばね121による付勢力が無くなっても、係合歯72および係合溝105の係合が不用意に外れる恐れがない。
【0037】
図5に示すように、ロック部材82の第2アーム部104を押上げて、圧縮コイルばね121の付勢力およびロック部材82の重力による回転モーメントに抗して、ロック部材82を時計方向に回転させ、係合歯72および係合溝105の係合を解除すると、支柱本体61に対する伸縮支柱62の移動は自由となる。この状態で、支柱本体61から伸縮支柱62を引出していくと、ボディ本体の上端に抜止部材73が当接させられ、これ以上は、伸縮支柱62を引出すことはできない。
【0038】
伸縮支柱62の上端から抜止部材73を取外すと、抜止部材73によって規制されることなく、伸縮支柱62の全体が支柱本体61から引出される。そうすると、ロック部材82が係合歯72に係合することによって停止させられる位置を超えて、さらに、ロック部材82の反時計方向の回転が自由となる。これにより、圧縮コイルばね121の取付長さをその自由長よりも大にすることができる。この状態にしておくと、圧縮コイルばね121を自由に取り外せて、圧縮コイルばね121の交換が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明によるロック装置は、例えば、支柱、作業台等の高さ調節をするための伸縮支柱の伸縮をロックすることを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0040】
61 支柱本体
62 伸縮支柱
72 係合歯
82 ロック部材
94 支持軸
102 係合爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱本体に長さ方向移動自在に支持された伸縮支柱に、複数の係合歯が形成されており、同係合歯は、伸縮支柱の長さ方向に一列に並んでおり、支柱本体に対する伸縮支柱の移動をロックするためのロック部材が、係合歯に係合する係合爪を有しかつ係合歯の列が並んだ方向と交差させられた水平状支持軸周りに揺動自在であり、外力として、ロック部材に重力のみが作用させられた状態で、重力によって生じるロック部材の支持軸周りの回転モーメントによって、係合歯に対する係合爪の係合が保持可能である伸縮支柱のロック装置。
【請求項2】
係合歯に係合爪が係合した状態で、係合爪が、支持軸線を通る水平線よりも下側に位置させられかつロック部材の重心が、支持軸線を通る垂直線を挟んで係合歯よりも遠い側に位置させられている請求項1に記載の伸縮支柱のロック装置。
【請求項3】
ロックボデイを備えており、ロックボデイは、支柱本体の最下段の踏桟に垂下状に固定されかつ支持軸が渡された一対の対向状支持壁を有しており、ロック部材は、支持軸にはめ被せられているボス部と、ボス部から係合歯に向かってのびかつ先端に係合爪を形成した第1アーム部と、ボス部から第1アーム部の反対側に向かってのびた第2アーム部とよりなり、最下段の踏桟底面および第2アーム部頂面間に圧縮コイルばねが介在させられている請求項1または2に記載の伸縮支柱のロック装置。
【請求項4】
支柱本体から伸縮支柱が引出された状態で、最下段の踏桟底面および第2アーム部頂面間の間隙が圧縮コイルばねの自由長よりも大となる位置まで、ロック部材が揺動可能である請求項3に記載の伸縮支柱のロック装置。
【請求項5】
ロックボデイ両側壁およびロック部材ボス部間の両間隙に、支持軸にはめ被せられた筒状スペーサがそれぞれ介在させられている請求項3または4に記載の伸縮支柱のロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−193561(P2012−193561A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59101(P2011−59101)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(393018130)長谷川工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】