説明

伸縮装置の接合方法及び伸縮装置

【課題】 簡便な方法で伸縮装置の接合部における止水性能を向上し、接合部からの漏水を抑制するとともに、現場作業において、隣接する伸縮装置の接合を容易に行うことのできる伸縮装置の接合方法及び伸縮装置を提供する。
【解決手段】 2つのプレート2の間にバックアップ部材6を配置し、バックアップ部材6の上方に反応硬化型弾性体を充填して止水部材を成型して伸縮装置1を製造するステップと、平板状に形成した型枠に反応硬化型弾性体を充填して連結部材4を成型するステップと、伸縮装置1の道路橋幅員方向yの端面で、少なくとも止水部材3の一部を覆うように連結部材4を貼り付けるステップと、伸縮装置1の連結部材4を挟むように、他の伸縮装置を接合して固定するステップを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路等の橋梁に設置している伸縮装置の接合方法及び伸縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁等では、温度変化による膨張等を吸収するために、伸縮装置(ジョイントとも呼ばれている)を設置している。この伸縮装置は、橋軸に直角となる方向に敷設されている。
【0003】
図3に、従来の伸縮装置1Xの概略を示す。伸縮装置1Xは、向かい合わせに配置した2つのプレート2と、2つのプレート2の間に配置した止水部材3Xと、止水部材3Xの下方に配置したバックアップ部材6Xを有している。この伸縮装置1Xは、橋梁の長手方向(以下、橋軸方向xという)に直角となる方向(以下、道路橋幅員方向yという)に複数台連結して設置されている。ここで、20はコンクリート及びアスファルトを打設した道路、9は複数の伸縮装置1Xの接合部を示している。また、zは鉛直方向を示している。
【0004】
この伸縮装置1Xは、道路20が温度変化により伸縮した際、この伸縮を吸収する機能を有している。また、伸縮装置1Xは、止水部材3Xの設置により、雨や自動車等から漏れ出した液体が、橋梁の下に落下することを防止している。ここで、破線で示した矢印は、この液体の流れる様子を示している。
【0005】
図4に、伸縮装置1Xのyz平面の断面図を示す。伸縮装置1Xの接合部9では、隣接するプレート2及び止水部材3Xの間に隙間が発生している。この止水部材3Xの隙間から、水等が落下することを防止する発明が開示されている。
【0006】
接合部9における止水部材3Xの隙間を埋める第1の方法として、橋梁等を建造する現場にて伸縮装置1Xを設置した後に、接合部9に反応硬化性のある弾性シール材を充填する方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。この構成により第1の方法は、接合部9に生じる隙間に、液体状の弾性シール材を流し込むため、高い止水性能を得ることができる。
【0007】
第2の方法として、弾性を有し且つ接合部9側に突出させた止水部材3Xを採用し、止水部材3Xの突出部分をつき合わせる方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。この止水部材3Xの突出部分を、伸縮装置1X同士を連結するネジ等により、圧着状態とする構成により、止水性能を向上している。なお、止水部材3Xの突出部分は、伸縮装置1Xが拡張した際(橋軸方向xに延びた際)、痩せて隙間が発生しないような、十分な大きさとしている。
【0008】
第3の方法として、弾性を有する止水部材3Xを採用し、接合部9において隣接する止水部材3Xを接着剤で接着する方法が開示されている(例えば特許文献3参照)。この構成により、低コストで、接合部9における止水部材3Xの隙間を塞ぎ、止水性能を向上することができる。
【0009】
第4の方法として、接合部9において、両側の止水部材3Xをそれぞれ凹状及び凸状に形成し、勘合させる方法が開示されている(例えば特許文献4参照)。この構成により、隣接する止水部材3Xを見かけ上、一体とすることができ、止水性能を向上することができる。
【0010】
しかしながら、上記の伸縮装置の接合方法はいくつかの問題点を有している。第1に、接合部に弾性シール材を充填する方法(第1の方法)は、現場での作業性が悪いという問題を有している。これは、弾性シール材は、一般的に反応硬化性の主剤と硬化剤からなる二液を撹拌する作業が必要となるためである。つまり、現場にて弾性シール材を使用するには、主剤と硬化剤を正しい比率で配合するために煩雑な計量が必要であったり、撹拌する量を少量とすると撹拌不良など品質に悪影響がでやすかったりするなどの問題がある。
【0011】
第2に、弾性を有する突出部分を突き合わせる方法(第2の方法)は、突出部分の大きさを決定することが困難であるという問題を有している。これは、伸縮装置における止水部材の変形量やその状態を特定することが困難なためである。また、伸縮装置は、橋梁等に設置された位置により、伸縮量が異なる。そのため、伸縮装置の伸縮量ごとに異なる大きさの突出部分を有する止水部材を成型しなくてはならず、止水部材の製造が煩雑となる。
【0012】
第3に、隣接する止水部材を接着剤で接着する方法(第3の方法)は、接着剤により接着した止水部材が剥離してしまい、漏水が発生してしまうという問題を有している。これは、止水部材の変形量と、接着剤の変形量が異なることが多く、止水部材の接着を維持できなくなるためである。
【0013】
第4に、止水部材の端部にそれぞれ形成した凹凸形状を嵌合する方法(第4の方法)は、止水部材に亀裂が発生し、漏水が発生してしまうという問題を有している。これは、止水部材の変形が、そもそも三次元的で複雑であり、更に凹凸形状の嵌合により変形が複雑化し、異常変形等が発生してしまうためである。また、止水部材は、凹状及び凸状の別々の部材が必要となるため、止水部材の製造が煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−129406号公報
【特許文献2】特開2001−140206号公報
【特許文献3】特開2008−57246号公報
【特許文献4】特開平8−284104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な方法で伸縮装置の接合部における止水性能を向上し、接合部からの漏水を抑制するとともに、現場作業において、隣接する伸縮装置の接合を容易に行うことのできる伸縮装置の接合方法及び伸縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するための本発明に係る伸縮装置の接合方法は、2つのプレートと、前記プレートに挟まれたバックアップ部材と、前記バックアップ部材の上方に配置した止水部材を有する伸縮装置を、道路橋幅員方向に複数台接合する伸縮装置の接合方法において、前記2つのプレートの間に前記バックアップ部材を配置し、前記バックアップ部材の上方に反応硬化型弾性体を充填して止水部材を成型して伸縮装置を製造するステップと、平板状に形成した型枠に前記反応硬化型弾性体を充填して連結部材を成型するステップと、前記伸縮装置の道路橋幅員方向の端面で、少なくとも前記止水部材の一部を覆うように前記連結部材を貼り付けるステップと、前記伸縮装置の前記連結部材を挟むように、他の伸縮装置を接合して固定するステップを有することを特徴とする。
【0017】
この構成により、伸縮装置の接合部における止水性能を向上することができる。これは、止水部材と接合部を塞ぐ連結部材が同一材料で同一物性を有しているためである。また、現場において、伸縮装置の接合作業の作業性を著しく向上することができる。これは、現場にて反応硬化型弾性体を作るための混合作業等が不要となるためである。
【0018】
上記の伸縮装置の接合方法において、前記伸縮装置を接合して固定するステップの前に、前記連結部材を貼り付けた位置の上方であって、前記プレートの鉛直方向に延伸したプレート側部端面に、前記連結部材と同じ材料で形成した補助連結部材を貼り付けるステップを有することを特徴とする。この構成により、プレート側部端面から水等が漏れ出し、打設されたコンクリート等に染み出すことを防止することができる。
【0019】
上記の伸縮装置の接合方法において、前記反応硬化型弾性体が、ポリブタジエンを主剤とするポリブタジエン系弾性体、前記ポリブタジエンに発泡剤を添加した発泡ポリブタジエン系弾性体、変性ポリウレタン系弾性体、ポリサルファイド系弾性体、シリコン系弾性体、又はブチルゴム系弾性体のいずれかで構成されたことを特徴とする。この構成により、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【0020】
上記の目的を達成するための本発明に係る伸縮装置は、2つのプレートと、前記プレートに挟まれたバックアップ部材と、前記バックアップ部材の上方に配置した止水部材を有する伸縮装置において、前記伸縮装置が、反応硬化型弾性体で成型した止水部材と、前記止水部材と同一材料で且つ前記止水部材の端面に貼り付けるように平板状に成型した連結部材を有していることを特徴とする。この構成により、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る伸縮装置の接合方法及び伸縮装置によれば、簡便な方法で伸縮装置の接合部における止水性能を向上し、接合部からの漏水を抑制するとともに、現場作業において、隣接する伸縮装置の接合を容易に行うことのできる伸縮装置の接合方法及び伸縮装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る実施の形態の伸縮装置の概略を示した図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の伸縮装置の接合時の概略を示した図である。
【図3】従来の伸縮装置を示した概略図である。
【図4】従来の伸縮装置を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施の形態の伸縮装置の接合方法及び伸縮装置について説明する。図1に、本発明の実施の形態の伸縮装置1の概略を示す。伸縮装置1は、向かい合わせて配置した2つのプレート2と、2つのプレート2の間に配置したバックアップ部材6と、バックアップ部材6の上方に配置した止水部材3と、止水部材3の接合部9(道路橋幅員方向yの端部)に貼り付ける平板状の連結部材4を有している。また、このプレート2は、隣接する伸縮装置1を互いに連結するための接合金具11を有している。
【0024】
ここで、止水部材3及び連結部材4は、反応硬化型弾性体で構成している。この反応硬化型弾性体は、例えばポリブタジエンを主剤とし、イソシアネートプレポリマーを硬化剤とし、この硬化剤を主剤の質量に対して5〜10%の質量を混合したポリブタジエン系弾性体で構成することができる。このポリブタジエン系弾性体で構成した止水部材3及び連結部材4は、表面の接着性が高く、全長が5倍以上伸びる性質を有している。なお、反応硬化型弾性体のうち、2種の材料を混合して構成するものを特に2成分型弾性体という。また、バックアップ部材6は、変形可能な材料であればよく、例えばウレタン等を利用することができる。更に、プレート2は、金属材料で構成している。
【0025】
次に、伸縮装置の製造方法及び接合方法について説明する。まず、工場にて、2つのプレート2とバックアップ部材6を組み合わせる。このプレート2等で内側に形成した型枠状の空間に、主剤と硬化剤を混合した2成分型弾性体を充填、硬化養生し、伸縮装置1を製造する。また、平板状に形成した型枠に、上記と同質の2成分型弾性体を充填し、硬化養生し、平板状の連結部材4を成型する。この平板状の連結部材4は、連結部材4に接着しにくいシート等で包み、運搬可能状態とする。
【0026】
次に、橋梁等の伸縮装置設置現場において、接合部9となる伸縮装置1の端部に、プライマーを塗布する。このプライマーを塗布した伸縮装置1の端部に、シートをはがしながら連結部材4を貼り付ける。ここで、伸縮装置1の端面において、連結部材4は、少なくとも止水部材3の一部、望ましくは上端を覆うように、更に望ましくは全体を覆うように接着される。また、連結部材4は、伸縮装置1の橋軸方向xにはみ出す大きさであることが望ましい。この連結部材4を貼り付けた伸縮装置1に合わせるように、他の連結部材2を接近させ、2つの伸縮装置1を道路橋幅員方向yにボルトナット等で連結する。このとき、連結部材4は、道路橋幅員方向yに圧縮された状態とする。上記を繰り返し、道路橋幅員方向yに複数の伸縮装置1を連結していく。その後、伸縮装置1の橋軸方向xに、コンクリート及びアスファルトを打設し、伸縮装置1の設置を完了する。
【0027】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、伸縮装置1の接合部9における止水性能を向上することができる。これは、止水部材3及び連結部材4を同一材料で構成したためである。つまり、伸縮装置1に外力が働き伸縮した場合に、止水部材3及び連結部材4が一体の材料として挙動するため、止水部材3と連結部材4の間にせん断力が発生しない。従って、止水部材3と連結部材4の剥離を防止することができるため、接合部9に隙間が生じて漏水が発生する事態を防止することができる。また、止水部材3及び連結部材4は、複雑な変形を起したとしても接着状態を維持したまま互いに追従するため、止水性能を向上することができる。
【0028】
第2に、伸縮装置1を設置し接合する現場において、伸縮装置1の接合作業の作業性を著しく向上することができる。これは、主剤と硬化剤を混合するための器具及び作業が不要となるためである。また、現場で2成分型弾性体の混合を行わないため、撹拌不良等の問題が発生しない。更に、2成分型弾性の混合や養生等を、環境の安定した工場等で成型できるため、止水部材3及び連結部材4の品質を向上することができる。
【0029】
第3に、伸縮装置1の接合を再現性の高い接合方法で行うことができる。これは、工場とは異なり不安定な環境下にある現場であっても、伸縮装置1の接合が、伸縮装置1と既に成型された連結部材4を貼り合わせる作業のみで、実現できるためである。
【0030】
なお、連結部材4は、道路橋幅員方向yの厚みを0.5mm以上30mm以下とすることが望ましい。また、止水部材3及び連結部材4の材料は、反応硬化型弾性体であれば上記に限られない。例えば、前述したポリブタジエンに発泡剤を添加して発泡ポリブタジエン系弾性体を使用してもよい。この弾性体は、発泡剤を添加された主剤と硬化剤を混合する2成分型弾性体、又は主剤、硬化剤、発泡剤を混合する3成分型弾性体などがある。また、2液混合型又は2成分型の変性ポリウレタン系弾性体を使用してもよい。更に、ポリサルファイド系弾性体、シリコン系弾性体、又はブチルゴム系弾性体を使用してもよい。なお、このポリサルファイド系弾性体等は、1成分型又は2成分型がある。
【0031】
加えて、止水部材3及び連結部材4を成型する際、同一の混合容器で混合された反応硬化型弾性体を使用することが望ましい。この構成により、止水部材3及び連結部材4の物性が同一となるためである。
【0032】
図2に、本発明の異なる実施の形態の伸縮装置1aの接合時の概略を示す。図2の上方の図は、伸縮装置1aの接合部9となる端面を示している。この伸縮装置1aのプレート2は、鉛直方向に延伸したプレート側部端面21を有している。なお、20は、コンクリート等の打設予定領域を示しており、伸縮装置1aを接合する際には、コンクリート等は打設されていない。
【0033】
図2の下方の図は、伸縮装置1aに連結部材4を貼り付けた状態を示している。この連結部材4は、橋軸方向xにおいて、少なくとも止水部材3の全体をも覆うことのできる長さとしている。望ましくは、連結部材4が、鉛直方向zにおいて止水部材3の全体を覆うことのできる高さとする。また、止水部材3の上方に位置するプレート側部端面21に、補助連結部材5を貼り付けている。この補助連結部材5は、連結部材4を小さく切り分けたものを使用することができる。
【0034】
上記の構成により、プレート側部端面21の止水性能を向上することができる。つまり、プレート側部端面21から水等が漏れ出し、打設されたコンクリート20等に染み出すことを防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1、1a 伸縮装置
2 プレート
3 止水部材
4 連結部材
5 補助連結部材
6 バックアップ部材
9 接合部
20 道路
21 プレート側部端面
x 橋軸方向
y 道路橋幅員方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのプレートと、前記プレートに挟まれたバックアップ部材と、前記バックアップ部材の上方に配置した止水部材を有する伸縮装置を、道路橋幅員方向に複数台接合する伸縮装置の接合方法において、
前記2つのプレートの間に前記バックアップ部材を配置し、前記バックアップ部材の上方に反応硬化型弾性体を充填して止水部材を成型して伸縮装置を製造するステップと、
平板状に形成した型枠に前記反応硬化型弾性体を充填して連結部材を成型するステップと、
前記伸縮装置の道路橋幅員方向の端面で、少なくとも前記止水部材の一部を覆うように前記連結部材を貼り付けるステップと、
前記伸縮装置の前記連結部材を挟むように、他の伸縮装置を接合して固定するステップを有することを特徴とする伸縮装置の接合方法。
【請求項2】
前記伸縮装置を接合して固定するステップの前に、
前記連結部材を貼り付けた位置の上方であって、前記プレートの鉛直方向に延伸したプレート側部端面に、前記連結部材と同じ材料で形成した補助連結部材を貼り付けるステップを有することを特徴とする請求項1に記載の伸縮装置の接合方法。
【請求項3】
前記反応硬化型弾性体が、ポリブタジエンを主剤とするポリブタジエン系弾性体、前記ポリブタジエンに発泡剤を添加した発泡ポリブタジエン系弾性体、変性ポリウレタン系弾性体、ポリサルファイド系弾性体、シリコン系弾性体、又はブチルゴム系弾性体のいずれかで構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮装置の接合方法。
【請求項4】
2つのプレートと、前記プレートに挟まれたバックアップ部材と、前記バックアップ部材の上方に配置した止水部材を有する伸縮装置において、
前記伸縮装置が、反応硬化型弾性体で成型した止水部材と、前記止水部材と同一材料で且つ前記止水部材の端面に貼り付けるように平板状に成型した連結部材を有していることを特徴とする伸縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64305(P2013−64305A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222336(P2011−222336)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【特許番号】特許第4941691号(P4941691)
【特許公報発行日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(511243163)秩父産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】