説明

位相制御装置

【課題】部品数を少なくし、低コスト化、小型化を図る。
【解決手段】レーザ光源21,31,41と、変調信号発生器23,33,43と、変調信号に応じてレーザ光に強度変調を与える光変調器22,32,42と、光変調器からのレーザ光を所定の位相に調整する光移相器25,35,45と、光移相器からのレーザ光を電気信号に変換する光電変換器26,36,46とで構成される、複数のレーザ光伝送線路と、前記変調信号に対する所望信号を出力する所望位相出力系1〜14と、所望位相出力系からの信号の位相と複数のレーザ光伝送線路における変調信号の位相とを比較し、それらの信号の位相が一致するように、光移相器でのレーザ光の位相の調整に用いる制御信号を出力する位相比較器28,38,48とを備え、当該制御信号による位相の調整により、光電変換器18からの電気信号を所望の位相に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は位相制御装置に関し、特に、RF信号の位相を自由に制御できる位相制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に光が媒質中を伝搬する場合、その光路において温度変動等の擾乱が生じると、媒質中の屈折率が変化するため、光路長が変動する。したがって、RoF(Radio On Fiber)伝送等で、RF変調を光信号に施す際、伝送するRF信号に高位相安定が求められる場合には、光路長を所望の値に制御するなどの処置を施す必要がある。RF信号の位相を制御するための従来の光路長制御装置としては、例えば、図7のような装置がある。この装置では、位相を制御するRF信号を変調信号発生器より発生させ、レーザ光源からのレーザ光に対し、光変調器によりRF変調を施して、光合波器を介して伝送させる。一方、前述したレーザ光を発生するレーザ光源とは別に、光路長制御用のレーザ光源を備えている。この光路長制御用のレーザ光源からのレーザ光は、光分岐器により2分岐され、一方はヘテロダイン検波のためのローカル光として、光カプラに入力される。光分岐器からのもう一方のレーザ光は、光サーキュレータ、光合波器、光移相器、光分波器を通過し、さらに光移相器、光合波器、光サーキュレータを再度通過して、周波数シフタに入力される。その後このレーザ光は、周波数シフタにより、基準信号源からの変調信号だけ周波数シフトされ、光カプラに入力される。
【0003】
この光カプラにおいて、入力された2つのレーザ光は合波され、光受信器によりヘテロダイン検波される。その後、光受信器からの周波数が基準信号源の変調周波数であるビート信号が出力され、位相検波器に入力される。位相検波器では、基準信号源からの信号と光受信器からのビート信号との位相を比較し、前述のRF信号の位相を所望の位相と一致させるための例えば電圧値などの制御信号が出力される。この制御信号は、ループフィルタを介して光移相器に入力され、制御信号に応じた量だけ光信号の位相がシフトされる。ここで、光受信器からのビート信号により得られる制御信号が、光移相器に入力されるという動作が繰り返されることにより、帰還回路が構成され、この帰還回路により、擾乱による光路長変動を補正する制御を行う。したがって、前述のRF変調が施されたレーザ光は、光移相器、光サーキュレータを通過して光分波器で分波され、光電変換器で直接検波により、再び電気のRF信号に変換されるが、この変換されたRF信号は高い位相安定性が得られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
さらに、複数のRoF伝送系で位相を制御させる場合には、図7の構成を複数用いたような例えば図8の構成を用いることで実施できると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】武者他、「Robust and precise length stabilization of a 25-km long optical fiber using an optical interferometric method with a digital phase-frequency discriminator」、Applied Physics B 82、pp555-559、2006(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の位相制御装置は、図7のように、レーザ光を2つに分岐してヘテロダイン検波を行い、この検波で得られるビート信号と、ビート信号を得るために用いた周波数シフト用基準信号との位相比較を行うことで、光信号の位相を検波する。さらに、この検波した位相が所望の位相と一致するように光信号の位相を調整するための電圧値などの制御信号が、位相検波器から光移相器に伝送され、光移相器により、制御信号に応じた量だけ光信号の位相がシフトされる。ここで、ヘテロダイン位相検波と光移相器による位相制御が繰り返されることにより、帰還回路が構成され、この帰還回路により、擾乱による光路長変動を補正する制御を行う。さらに、複数のRoF伝送系で位相を制御させる場合には、図8の構成を用いることで実施できる。しかしながら、この構成では、帰還回路が前記RoF伝送系の数だけ必要となり、大型になる、部品数が非常に多くなる、製造コストが高くなるといった問題点があった。
【0007】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、従来のこの種の装置よりも部品数を少なくでき、低コスト化、小型化などが図れる、位相制御装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、レーザ光を発生する第1レーザ光源と、強度変調を与えるための変調信号を発生する第1変調信号発生器と、前記第1レーザ光源からのレーザ光と前記第1変調信号発生器からの変調信号とが入力されて、前記変調信号に応じ、前記レーザ光に強度変調を与える第1光変調器と、前記第1光変調器からの強度変調されたレーザ光が入力されて、当該レーザ光を、予め設定された所定の位相に調整し出力する第1光移相器と、前記第1光移相器から位相が調整されたレーザ光が入力されて、当該レーザ光を直接検波した後、当該レーザ光に強度変調されていた電気信号を取り出す光電変換器とで構成される、複数のレーザ光伝送線路を備え、さらに、前記第1変調信号発生器からの前記変調信号に対する、本装置で制御するべき所望の位相の情報を有する信号を、所望信号として出力する所望位相出力系と、前記所望位相出力系からの信号の位相と、前記複数のレーザ光伝送線路を伝送している変調信号の位相とを比較し、前記複数のレーザ光伝送線路からの変調信号の位相が、前記所望位相出力系からの信号の位相と一致するように、前記第1光移相器において、レーザ光の位相を調整するために用いるための制御信号を出力する位相比較器とを備え、前記制御信号に基づいて前記第1光移相器によりレーザ光の位相を調整することで、前記光電変換器からの電気信号の位相を所望の位相に制御することを特徴とする位相制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、レーザ光を発生する第1レーザ光源と、強度変調を与えるための変調信号を発生する第1変調信号発生器と、前記第1レーザ光源からのレーザ光と前記第1変調信号発生器からの変調信号とが入力されて、前記変調信号に応じ、前記レーザ光に強度変調を与える第1光変調器と、前記第1光変調器からの強度変調されたレーザ光が入力されて、当該レーザ光を、予め設定された所定の位相に調整し出力する第1光移相器と、前記第1光移相器から位相が調整されたレーザ光が入力されて、当該レーザ光を直接検波した後、当該レーザ光に強度変調されていた電気信号を取り出す光電変換器とで構成される、複数のレーザ光伝送線路を備え、さらに、前記第1変調信号発生器からの前記変調信号に対する、本装置で制御するべき所望の位相の情報を有する信号を、所望信号として出力する所望位相出力系と、前記所望位相出力系からの信号の位相と、前記複数のレーザ光伝送線路を伝送している変調信号の位相とを比較し、前記複数のレーザ光伝送線路からの変調信号の位相が、前記所望位相出力系からの信号の位相と一致するように、前記第1光移相器において、レーザ光の位相を調整するために用いるための制御信号を出力する位相比較器とを備え、前記制御信号に基づいて前記第1光移相器によりレーザ光の位相を調整することで、前記光電変換器からの電気信号の位相を所望の位相に制御することを特徴とする位相制御装置であるので、従来のこの種の装置よりも部品数を少なくでき、低コスト化、小型化などを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る位相制御装置の構成を示した構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る位相制御装置の所望位相出力系の図1の例とは別の構成例を示した図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る位相制御装置の所望位相出力系のさらなる別の構成例を示した図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る位相制御装置の所望位相出力系のさらなる別の構成例を示した図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る位相制御装置の所望位相出力系のさらなる別の構成例を示した図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る位相制御装置の所望位相出力系のさらなる別の構成例を示した図である。
【図7】従来の位相制御装置の構成を示した図である。
【図8】従来の位相制御装置の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。また、重複する説明については省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る位相制御装置の構成図である。
【0013】
図1に示すように、レーザ光源15は、レーザ光を発生し、変調信号発生器17は、光変調器16で変調を施すためのRF信号を発生する。光変調器16は、レーザ光源15からのレーザ光を、変調信号発生器17から与えられるRF信号に応じて強度変調し、変調後のレーザ光を光合波器4に伝送する。この変調されたレーザ光を以下では信号光と称し、本装置では、この信号光に変調されているRF信号の位相を制御するために光路長を制御するものとする。
【0014】
一方、別のレーザ光源である、レーザ光源1は、レーザ光を発生し、光分岐器2に入力する。光分岐器2は、入力されるレーザ光を2つに分岐し、一方のレーザ光を光カプラ10に伝送し、他方のレーザ光を光サーキュレータ3(光分離手段)に伝送する。この光カプラ10に伝送されるレーザ光を以下ではローカル光と称し、ヘテロダイン検波のためのレーザ光として使用する。また、光サーキュレータ3に伝送されるレーザ光を以下では参照光と称し、ヘテロダイン検波のためのレーザ光として使用する。
【0015】
光サーキュレータ3は、光分岐器2からのレーザ光を第1のポートから入力し、光合波器4に対して第2のポートから出力して伝送し、光合波器4からのレーザ光を第3のポートから周波数シフタ9に伝送する。光合波器4は、レーザ光源15からの信号光と光サーキュレータ3からの参照光とを合波して光移相器5に伝送するとともに、光移相器5からの参照光を光サーキュレータ3に伝送する。光移相器5は、ループフィルタ14から伝送される制御信号に基づいて、光合波器4からの参照光の位相を所定の位相に調整し、参照光と信号光とを光ファイバ6に伝送するとともに、光ファイバ6からの参照光を光合波器4に伝送する。この光移相器5としては、例えばファイバストレッチャのような光ファイバ長を変化させることでレーザ光の位相を調整させるものが挙げられる。
【0016】
光ファイバ6は、光移相器5からの信号光と参照光を光分波器7に伝送するとともに、光分波器7からの参照光を光移相器5に伝送する。光分波器7は、光ファイバ6からの信号光と参照光とを波長の違いに基づいて分離し、参照光は光反射器8に伝送し、信号光は光電変換器18に伝送する。光反射器8は光分波器7からの参照光を反射させ、再び光分波器7に伝送する。その後、この参照光は、光分波器7から、光ファイバ6、光移相器5、および、光合波器4を介して、光サーキュレータ3の第2のポートに再び入力される。一方、光電変換器18は、光分波器7からの信号光を直接検波により電気信号に変換して、信号光に強度変調されていた電気信号を取り出し、位相安定化されたRF信号として外部に出力する。なお、この信号の位相は後述するレーザ光伝送線路におけるRF信号の位相を制御するための所望の位相であり、以下では所望位相と称し、この信号を所望信号と称する。分岐器19は光電変換器18からのRF信号をn個に分岐し、n個の位相比較器に伝送する。
【0017】
基準信号源12は、ローカル光と参照光を用いたヘテロダイン検波において参照光を周波数シフトさせるときの変調信号を発生する。周波数シフタ9は、光サーキュレータ3からの参照光を基準信号源12からの変調信号に応じて周波数をシフトさせ、光カプラ10に伝送する。この周波数シフタ9としては、例えば音響光学素子に超音波を加えることで入力光の周波数をシフトさせるAO変調器(Acoust Optic Modulator:AOM)などが挙げられる。
【0018】
光カプラ10は、ローカル光と参照光とを合波し、光受信器11に伝送する。光受信器11は、光カプラ10からの2つのレーザ光をヘテロダイン検波した後、得られるビート信号(以下ではヘテロダインビート信号と称する)を位相検波器13に伝送する。位相検波器13は、基準信号源12からの基準信号と、光受信器11からのヘテロダインビート信号との位相を比較し、参照光の位相の情報を含んだ例えば電圧値などの信号を出力する。
【0019】
位相検波器13は、入力信号に情報として含まれる参照光の位相の差を検出し、この差と予め設定された所望の位相とが一致するように光移相器5で参照光の位相を調整するための例えば電圧値などの制御信号をループフィルタ14に伝送する。ループフィルタ14は、帰還回路により参照光の位相制御を行うために用いるフィルタであり、通常ローパスフィルタを用い、制御信号に含まれるフィルタ帯域より高周波の成分を除去して光移相器5に伝送する。なお、図1のレーザ光源1からループフィルタ14までを含み、光電変換器18から所望信号を出力するためのレーザ光を発生させる部分を、以下では所望位相出力系と称する。
【0020】
一方、さらに別に設けられたn個のレーザ光源のうちの1つである、レーザ光源21は、レーザ光を発生し、変調信号発生器23は、光変調器22で変調を施すためのRF信号を発生する。光変調器22は、レーザ光源21からのレーザ光を、変調信号発生器23から与えられるRF信号に応じて強度変調させる。光ファイバ24は光変調器22からの強度変調されたレーザ光を光移相器25に伝送する。
【0021】
光移相器25はループフィルタ29から伝送される制御信号に基づいて、光ファイバ24からのレーザ光に強度変調されているRF信号の位相を所定の位相に調整する。光電変換器26は光移相器25からのレーザ光を直接検波した後、レーザ光に強度変調されていたRF信号を電気信号に変換して分岐器27へ伝送する。分岐器27は光電変換器26からのRF信号を2つに分岐させ、一方を位相比較器28へ伝送させ、もう一方は位相が制御された所望のRF信号として、所定の位置へ伝送させる。位相比較器28は分岐器27からのRF信号と分岐器19からの基準信号との位相を検出し、分岐器27からのRF信号の位相が基準位相と一致するように光移相器25でレーザ光の位相を調整するための例えば電圧値などの制御信号をループフィルタ29に伝送する。ループフィルタ29は、帰還回路により参照光の位相制御を行うために用いるフィルタである。
【0022】
ここで図1では、レーザ光源21からループフィルタ29までと同様の線路が各々n個あるとし、それぞれの機能は全て前述と同じとする。n個の光ファイバについては、それぞれの長さはL、L、・・・、Lとする。なお、図1では簡単のため、長さLの光ファイバを有する線路に関する部品であるレーザ光源31からループフィルタ39までと、長さLの光ファイバを有する線路に関する部品であるレーザ光源41からループフィルタ49のみを記載している。
【0023】
次に、図1の位相制御装置の全体の動作について説明する。まず、レーザ光源15からレーザ光が発生され、光変調器16により、変調信号発生器17から与えられるRF信号に応じて強度変調が施され、光合波器4で参照光と合波された後、光移相器5および光ファイバ6を通過して、光分波器7で参照光と分離され、光電変換器18に出力される。
【0024】
また、レーザ光源1から、信号光と異なる波長を有するレーザ光が発生され、光分岐器2で2つに分岐された後、一方はローカル光として光カプラ10に伝送され、他方は参照光として光サーキュレータ3に伝送される。光サーキュレータ3からの参照光は、光合波器4に伝送され、レーザ光源1からの信号光と合波された後、光移相器5に伝送される。光移相器5からの信号光と参照光は、光ファイバ6を通過して、光分波器7で信号光と参照光は分離される。参照光は、光反射器8で反射された後、再び、光分波器7、光ファイバ6、光移相器5、光合波器4、光サーキュレータ3を通過して周波数シフタ9に伝送される。
【0025】
周波数シフタ9に入力された参照光は、基準信号源12から発生される変調信号の周波数だけ周波数シフトされて光カプラ10に伝送される。その後、光分岐器2からのローカル光と周波数シフタ9からの参照光は、光カプラ10により合波され、光受信器11に伝送される。この光カプラ10からの2つのレーザ光は、光受信器11によりヘテロダイン検波され、得られるヘテロダインビート信号が位相検波器13に伝送される。
【0026】
このヘテロダインビート信号は、位相検波器13により、基準信号源12からの基準信号の位相と比較され、この位相が予め設定された所望の位相と一致するように光移相器5で参照光の位相を調整するための例えば電圧値などの制御信号がループフィルタ14に伝送される。さらに上記制御信号は、ループフィルタ14により、フィルタ帯域外の成分が除去された後、光移相器5に伝送される。
【0027】
光移相器5は、入力された制御信号に応じて、光合波器4からの参照光の位相を調整する。ここで、光受信器11からのビート信号により得られる制御信号が光移相器5に入力され、光移相器5がこの制御信号に応じて参照光の位相を調整するという動作が繰り返されることにより、帰還回路が構成される。この帰還回路により、擾乱による光ファイバ長変動を補正する制御を行う。したがって、光電変換器18での直接検波により電気信号に変換された基準信号は高い位相安定性が得られる。この基準信号は分岐器19に伝送され、n個に分岐された後、n個の位相比較器に伝送される。
【0028】
一方、レーザ光源21からレーザ光が発生され、光変調器22により、変調信号発生器23から与えられるRF信号に応じて強度変調が施された後、光ファイバ24および光移相器25を通過して、光電変換器26により電気信号に変換される。この電気信号に変換されたRF信号は、分岐器27により2つに分岐され、一方は位相比較器28へ伝送され、もう一方は位相が制御された所望のRF信号として、所定の位置へ伝送される。
【0029】
その後、分岐器27からのRF信号と分岐器19からの基準信号は、位相比較器28によりそれぞれの位相が検出され、分岐器27からのRF信号の位相が基準位相と一致するように光移相器25でレーザ光の位相を調整するための例えば電圧値などの制御信号が、位相比較器28からループフィルタ29に伝送される。さらに上記制御信号は、ループフィルタ29により、フィルタ帯域外の成分が除去された後、光移相器25に伝送される。
【0030】
光移相器25は、入力された制御信号に応じて、光ファイバ24からの強度変調が施されたレーザ光の位相を調整する。ここで、ループフィルタ29からの制御信号が光移相器25に入力され、光移相器25がこの制御信号に応じてレーザ光の位相を調整するという動作が繰り返されることにより、帰還回路が構成される。この帰還回路により、擾乱による光ファイバ長変動を補正する制御を行う。したがって、分岐器27からのRF信号は、所望位相と一致した状態でなおかつ高い安定度で位相が保持される。
【0031】
ここで、長さLの光ファイバを有する線路に関する部品であるレーザ光源31からループフィルタ39までで構成された線路から、長さLの光ファイバを有する線路に関する部品であるレーザ光源41からループフィルタ49までで構成された線路までの、n−1個の線路は、前述したレーザ光源21からループフィルタ29までで構成された線路と同じ動作を行う。したがって、分岐器27から分岐器47までのn個の分岐器からのRF信号は、全て所望位相と一致した状態でなおかつ高い安定度で位相が保持される。
【0032】
次に、図1の位相制御装置における効果について説明する。図1の構成は前述したように、所望位相出力系は1つである。一方、従来の構成である図8では、所望位相出力系(基準位相出力系)はn個である。したがって、図1の構成では、従来に対し部品数を少なくできるため、低コスト化が可能となる、小型化が可能となるといった効果が得られる。
【0033】
なお、図1の構成例によれば、レーザ光源1と光分岐器2との間、光分岐器2と光サーキュレータ3との間、光サーキュレータ3と光合波器4との間、光合波器4と光移相器5との間、光移相器5と光ファイバ6との間、光ファイバ6と光分波器7との間、光分波器7と光反射器8との間、光分岐器2と光カプラ10との間、光サーキュレータ3と周波数シフタ9との間、周波数シフタ9と光カプラ10との間、光カプラ10と光受信器11との間、光分波器7と光電変換器18との間、および、長さLの光ファイバを有する線路に関する部品であるレーザ光源21と光変調器22との間、光変調器22と光ファイバ24との間、光ファイバ24と光移相器25との間、光移相器25と光電変換器26との間と、長さLから長さLまでのn−1個の光ファイバを有する線路におけるレーザ光源から光電変換器までの間で、上記レーザ光源21から光電変換器26までに関する4つの間と同様の形式の間は光ファイバによって接続されているので、装置の小型化が可能になり、さらに、高い信頼性が得られるとともに、取り扱いが容易となり、自由性の高い配置が得られるなどの効果がある。ただし、この実施の形態1では、レーザ光の伝送路の全てを光ファイバだけを用いることに限定するものではなく、例えば空間など、他のものを用いても構わない。
【0034】
また、光移相器5は、光合波器4から光分波器7までの間であれば、どの位置に設置されてもよい。また、長さLの光ファイバを有する線路に関する部品である光移相器25は、光変調器22から光電変換器26までの間であれば、どの位置に設置されてもよい。同様にして、長さLから長さLまでのn−1個の光ファイバを有する線路における光移相器はそれぞれの線路における光変調器から光電変換器までの間であれば、どの位置に設置されてもよい。
【0035】
また、周波数シフタ9は、光サーキュレータ3から光分波器7までの間、光サーキュレータ3と光カプラ10の間および光分岐器2と光カプラ10の間であれば、どの位置に設置されてもよい。ただし、光合波器4から光分波器7までの間に設置する場合、参照光とともに信号光も周波数シフトされるため、信号光の周波数シフトが好ましくない場合に、上記以外に設置した方がよい。このことは、以降の他の変形例においても当てはまることである。
【0036】
また、光分岐器2の分岐比については特に言及していないが、ヘテロダインビート信号電力および光受信器11から出力される雑音電力に対し、位相検波が実現できるだけの信号対雑音比(Signal to Noise Ratio、以下S/N比と称する)が確保できていればどのような分岐比でも構わない。また、ヘテロダイン検波を行う際にショット雑音限界に達していれば、さらなる検波性能の向上が得られる。
【0037】
また、図1の構成では、参照光の位相を所望の位相と一致させるように、光路長を制御しているが、信号光の位相を所望の位相と一致させるためには、信号光と参照光の伝送経路ができるだけ一致している方が好ましい。したがって、例えば図1の構成では、光変調器16と光合波器4との間、光分岐器2と光サーキュレータ3との間、光サーキュレータ3と光合波器4との間、光分波器7と光反射器8との間、光分波器7と光電変換器18との間、光サーキュレータ3と周波数シフタ9との間、周波数シフタ9と光カプラ10との間、および、光カプラ10と光受信器11との間は、信号光と参照光のうちどちらか一方のみが伝送されている経路であり、これらはできるだけ短い方が好ましい。
【0038】
また、光ファイバ等の物質中を光が伝播する場合、光の速さが光の波長(周波数)により異なる現象が生じ、これを分散と呼んでいる。一般的なシングルモードファイバ(以下、SMFと称する)の分散値は、波長1.3μm付近でほぼ0であり、波長1.55μm付近で約17ps/km/nmである。この「ps/km/nm」という単位は、波長が1nm離れた2つの光がファイバ長1kmを伝播したときに生じる伝播時間の差を表している。また、一般的に光通信などの用途で使用されるSMFは、透過損失が最も小さい1.55μm帯のものが使われることが多い。したがって、図1の構成で、レーザ光源1およびレーザ光源15から発生するレーザ光の波長を1.55μm帯とし、光ファイバ6や各部品の接続に使用している光ファイバにSMFを用いた場合、レーザ光源1およびレーザ光源15からのレーザ光が光ファイバを伝送する間に、分散による位相差が生じてしまい、光路長変動による所望の位相差のみを検出できなくなる。この対処法としては、本装置で用いている光ファイバとして、分散シフト光ファイバや分散補償器を用いればよい。分散シフト光ファイバは、伝送するレーザ光の波長における分散の値が0かもしくは小さくなるように調整された光ファイバのことである。分散シフト光ファイバは、一般的に、ファイバ内部の屈折率を調整することで、波長1.55μm付近における分散の値を0としたファイバであり、このファイバを用いることで、分散の影響を抑圧することができる。また、分散補償器は、SMF等により生じた分散に対して符合が逆の分散を与えることで、伝送系全体の分散を打ち消すものであり、これを使用することでも同様に、分散の影響を抑圧することができる。また、本装置において、2つのレーザ光を使用したときの分散により生じる位相差が既知である場合には、あらかじめ位相検波器13でこの値を補償しておけば、所望の位相を検出することができる。
【0039】
また、所望位相出力系として、図2のような構成を用いてもよい。図2の構成は、図1の所望位相出力系の構成に対して、光サーキュレータ3の代わりに、入射するレーザ光に対して2つの直交する偏光成分に分離して出射する偏光ビームスプリッタ101(以下ではPBSと称する)を使用するとともに、光反射器8の代わりに、入射するレーザ光の偏光面を45°回転させて反射させる(往復で90°回転させる)ファラデーローテータ反射器102を使用している。また、光分岐器2と光カプラ10との間で偏波面が90°回転するように光ファイバを接続している。他の構成については、図1の所望位相出力系の構成と同じである。
【0040】
これにより、光ファイバに偏波面が保存されない光ファイバを使用した場合でも、高いヘテロダイン検波効率が得られるという効果がある。この理由は以下の通りである。光ヘテロダイン検波では、検波効率を最大にするためには、ローカル光と参照光の偏波面を一致させる必要がある。しかし、光ファイバ6や本装置内の各部品の光路接続にSMF等の偏波面が保存されない光ファイバを使用した場合、ヘテロダイン検波効率が劣化するという欠点が生じる。この欠点を解消するためには、本装置内に用いる光ファイバに偏波面保存ファイバを使用するという方法があるが、それ以外の方法として、図2の構成を用いると、光ファイバ6に偏波面が保存されない光ファイバを使用したとしても、参照光はPBS101とファラデーローテータ反射器102との間を往復で2回通過して偏波面を90°回転しているので、PBS101とファラデーローテータ反射器102との間の偏波変動を補償することができる。さらに、前述したように、光分岐器2と光カプラ10との間で偏波面が90°回転するようにして光ファイバを接続させているため、ローカル光と参照光との偏波面が一致した状態で、ヘテロダイン検波を行う。したがって、図2の構成では、高いヘテロダイン検波効率が得られるという効果がある。
【0041】
また、所望位相出力系として、図3のような構成を用いてもよい。図3の構成は、図1の所望位相出力系の構成に対して、レーザ光源1の代わりに2つのレーザ光源111およびレーザ光源112を使用し、また、レーザ光源111およびレーザ光源112のそれぞれの出力光を合波させるための光合波器113を設け、さらに、レーザ光源111およびレーザ光源112のそれぞれの出力光を分波させるための光分波器114を使用し、光分波器114で分波させたあとの2つのレーザ光をそれぞれ電気信号に変換させるための光受信器115および光受信器116を設け、また、光受信器115および光受信器116からのヘテロダインビート信号を、基準信号源12からの基準信号の位相と比較し、得られる位相の情報を含んだ信号を出力する位相検波器117および位相検波器118と、位相検波器117からの信号に情報として含まれる位相と位相検波器118からの信号に情報として含まれる位相との差が予め設定された所望の位相差と一致するように光移相器5で参照光の位相を調整するための例えば電圧値などの制御信号が出力される位相差検出器119を使用している。他の構成は、図1の所望位相出力系の構成と同じである。
【0042】
図3の構成とすることにより、制御できる光ファイバ長が増加するという効果が得られる。この理由を以下で説明する。レーザ光源111からのレーザ光とレーザ光源112からのレーザ光との間の周波数差をΔf、ファイバの屈折率をn、光速をcとすると、位相差検出器119で検出した位相差が得られる本装置内のファイバ長の間隔ΔLは次式(1)で表される。
【0043】
【数1】

【0044】
例えば、式(1)において、Δf=100GHz、n=1.45とすると、ΔL=2.1mmが得られる。このとき、ファイバ長2.1mmの範囲内では、位相差とファイバ長は1対1の対応関係にあるため、位相差の測定値からファイバ長の絶対値を知ることができ、所望のファイバ長に制御することが可能となる。一方、従来の構成では、光波長オーダーでの位相を検波し、制御することは可能だが、それ以上のファイバ長を制御することは困難である。したがって、図3の構成を用いることで、光源の周波数差に応じたファイバ長を制御することが可能となり、従来と比較して制御可能なファイバ長を増加させる効果が得られる。
【0045】
なお、図3の構成において、所望位相出力系のレーザ光源111,112から光受信器115までの間、それらのレーザ光源111,112からのレーザ光が伝送される際に生じる分散による位相差を、位相差検出器119において位相差を検出する際に、あらかじめ補償しておく機能を含むようにしてもよい。
【0046】
また、所望位相出力系として、図4のような構成を用いてもよい。図4の構成は、図3の所望位相出力系の構成に対して、レーザ光源112と光合波器113とを使用せず、レーザ光源111と光分岐器2との間に、RF信号を発生させる変調信号発生器122と、入射するレーザ光に対して変調信号発生器122から与えられるRF信号に応じて強度変調し、変調後のレーザ光を出力する光変調器121とを使用している。他の構成は、図3と同じである。
【0047】
図4の構成により、2つ以上の光信号を発生させることができるため、光源が一つのみでよいことから、低コストで、小型化が可能となるという効果が得られる。
【0048】
また、所望位相出力系として、図5のような構成を用いてもよい。図5の構成は、図3の所望位相出力系の構成に対して、位相検波器118と位相差検出器119およびループフィルタ14との間にスイッチ(a)131を使用し、スイッチ(a)131および位相差検出器119とループフィルタ14との間にスイッチ(b)132を使用している。また、スイッチ(a)131およびスイッチ(b)132に対して、スイッチ(a)・スイッチ(b)切り替え信号発生器133を設けている。他の構成は、図3と同じである。
【0049】
これらのスイッチ(a)131およびスイッチ(b)132の切り替えにより、ループフィルタ14を介して光移相器5に入力される制御信号が、位相検波器118からの信号か、位相差検出器119からの信号かの、いずれか一方となる。
【0050】
これにより、本装置の温度変動等の擾乱による光路長変動が光波長オーダーよりも小さいと判断できるような場合、図5の構成を用いて伝送路を光路長微調整用経路に切り替えることで、光波長オーダーでの位相を検波し、光路長を制御することが可能となり、より正確な光路長制御が可能になるという効果が得られる。
【0051】
なお、図5の構成において、所望位相出力系のレーザ光源111,112から光受信器115,116までの間、それらのレーザ光源111,112からのレーザ光が伝送される際に生じる分散による位相差を、位相差検出器119において位相差を検出する際に、あらかじめ補償しておく機能を含むようにしてもよい。
【0052】
また、所望位相出力系として、図6のような構成を用いてもよい。図6の構成は、図1の所望位相出力系の構成に対して、発生するレーザ光の発生周波数を時間とともに連続的に変化させるための変調信号を発生するレーザ光源周波数変調信号発生器142を使用している。また、レーザ光源1の代わりに、レーザ光源周波数変調信号発生器142から与えられる変調信号に応じて時間とともに連続的に周波数が変化するレーザ光を発生させるFMCWレーザ光源141を使用している。さらに、周波数シフタ9、基準信号源12および位相検波器13を使用せず、光受信器11とループフィルタ14との間に、時間とともに変化するヘテロダインビート信号の周波数を検出し、この周波数の情報を含んだ例えば電圧値などの信号を出力する周波数検出器143を使用している。他の構成は、図1の所望位相出力系と同じである。
【0053】
ここで、周波数検出器143により、ヘテロダインビート信号の周波数を検出することで、光路長の変動を判別できる原理について簡単に説明する。FMCWレーザ光源141は、発生するレーザ光が時間とともに連続的に変化するため、ローカル光が光受信器11に到達したときの周波数と、参照光が光受信器11に到達したときの周波数は、それぞれが光受信器11に到達するまでの時間に比例する。ここで、FMCWレーザ光源141の周波数の変化率を用いることで、前述の2つの周波数差から、参照光の光路長とローカル光の光路長との差を求めることができる。したがって、ヘテロダインビート信号の周波数の変化量から参照光の光路長の変動量を求めることができる。
【0054】
図6の構成によれば、図1の構成に対して、レーザ光源1、周波数シフタ9、基準信号源12、位相検波器13が不要となるため、低コストで、小型化が可能となるという効果が得られる。
【0055】
なお、上記の図1〜図6の構成において、光変調器16と光合波器4との間、光分岐器2と光サーキュレータ3(またはPBS101)との間、光サーキュレータ3(またはPBS101)と光合波器4との間、光反射器8(またはファラデーローテータ反射器102)と光分波器7との間、光分波器7と光電変換器18との間、光サーキュレータ3(またはPBS101)と周波数シフタ9との間、周波数シフタ9と光カプラ10との間、光カプラ10と光受信器11との間、または、光サーキュレータ3と光カプラ10との間(図6)の、少なくとも一つの光路長を短くするようにしてもよい。
【0056】
また、光移相器5は、光サーキュレータ3(またはPBS101)と光反射器8(またはファラデーローテータ反射器102)との間であれば、いずれの箇所に設けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 レーザ光源、2 光分岐器、3 光サーキュレータ、4 光合波器、5 光移相器、6 光ファイバ、7 光分波器、8 光反射器、9 周波数シフタ、10 光カプラ、11 光受信器、12 基準信号源、13 位相検波器、14 ループフィルタ、15 レーザ光源、16 光変調器、17 変調信号発生器、18 光電変換器、19 分岐器、21,31,41 レーザ光源、22,32,42 光変調器、23,33,43 変調信号発生器、24,34,44 光ファイバ、25,35,45 光移相器、26,36,46 光電変換器、27,37,47 分岐器、28,38,48 位相比較器、101 PBS、102 ファラデーローテータ反射器、111,112 レーザ光源、113 光合波器、114 光分波器、115,116 光受信器、117,118 位相検波器、119 位相差検出器、121 光変調器、122 変調信号発生器、131 スイッチ(a)、132 スイッチ(b)、133 スイッチ(a)・スイッチ(b) 切り替え信号発生器、141 FMCWレーザ光源、142 レーザ光源周波数変調信号発生器、143 周波数検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生する第1レーザ光源と、
強度変調を与えるための変調信号を発生する第1変調信号発生器と、
前記第1レーザ光源からのレーザ光と前記第1変調信号発生器からの変調信号とが入力されて、前記変調信号に応じ、前記レーザ光に強度変調を与える第1光変調器と、
前記第1光変調器からの強度変調されたレーザ光が入力されて、当該レーザ光を、予め設定された所定の位相に調整し出力する第1光移相器と、
前記第1光移相器から位相が調整されたレーザ光が入力されて、当該レーザ光を直接検波した後、当該レーザ光に強度変調されていた電気信号を取り出す光電変換器と
で構成される、複数のレーザ光伝送線路を備え、
さらに、
前記第1変調信号発生器からの前記変調信号に対する、本装置で制御するべき所望の位相の情報を有する信号を、所望信号として出力する所望位相出力系と、
前記所望位相出力系からの信号の位相と、前記複数のレーザ光伝送線路を伝送している変調信号の位相とを比較し、前記複数のレーザ光伝送線路からの変調信号の位相が、前記所望位相出力系からの信号の位相と一致するように、前記第1光移相器において、レーザ光の位相を調整するために用いるための制御信号を出力する位相比較器と
を備え、
前記制御信号に基づいて前記第1光移相器によりレーザ光の位相を調整することで、前記光電変換器からの電気信号の位相を所望の位相に制御することを特徴とする位相制御装置。
【請求項2】
前記所望位相出力系が、
レーザ光を発生する第2レーザ光源と、
前記第2レーザ光源からのレーザ光を2つに分岐する光分岐器と、
前記光分岐器から出力される2つのレーザ光のうちの一方のレーザ光を第1のポートから入力して第2のポートから出力するとともに、前記第2のポートから入力されるレーザ光を第3のポートへ出力する光分離手段と、
前記光分離手段の前記第2のポートから出力された前記レーザ光を所定の位相に調整して出力する第2光移相器と、
前記第2光移相器を通過したレーザ光を1つのポートから入力し、それが入力されたポートと同じポートから出力して、前記第2光移相器を介して前記光分離手段の前記第2のポートへ入力するレーザ光方向変換手段と、
周波数シフトさせるための変調信号を発生する第2変調信号発生器と、
前記光分離手段の前記第3のポートから出力された前記レーザ光を、前記第2変調信号発生器からの変調信号の周波数に応じて周波数シフトして出力する周波数シフタと、
前記光分岐器から出力される2つのレーザ光のうちの前記光分離手段に入力されなかった他方のレーザ光と前記周波数シフタからのレーザ光とが入力され、それらを合波して、出力する光カプラと、
前記光カプラから合波されて出力された前記2つのレーザ光のビート信号を取り出して電気信号に変換する光受信器と、
前記第2変調信号発生器からの変調信号の位相と、前記光受信器からのビート信号の位相とを比較することで、前記光分岐器から出力された2つのレーザ光のうちの前記光分離手段を経由して前記第2光移相器を通過した前記一方のレーザ光の位相を検波し、この位相の情報を含んだ信号を前記第2光移相器に対して出力する位相検波器と
を備え、
さらに、
前記第2レーザ光源から発生するレーザ光と異なる波長を有するレーザ光を発生する第3レーザ光源と、
強度変調を与えるための変調信号を発生する第3変調信号発生器と、
前記第3変調信号発生器からの変調信号に応じて、前記第3レーザ光源からのレーザ光に対して強度変調を与える第2光変調器と、
前記光分岐器で分岐したレーザ光のうちの前記光分離手段に入力された前記一方のレーザ光と、前記第2光変調器からのレーザ光とを合波して出力する光合波器と、
前記光合波器で合波され前記第2光移相器を通過したレーザ光を波長の違いで分離して出力する光分波器と、
前記光分波器で分波されたレーザ光のうちの一方が入力され、当該レーザ光を直接検波した後、当該レーザ光に強度変調されていた電気信号を取り出す第2光電変換器と
を備え、
前記位相検波器からの前記信号に基づいて前記第2光移相器により前記レーザ光の位相を調整することで、前記第2光電変換器からの電気信号の位相を安定化させ、この位相の情報を有する信号を、前記所望信号として出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の位相制御装置。
【請求項3】
前記所望位相出力系において、
前記光分離手段は、入射するレーザ光を、2つの直交する偏光成分に分離して出射する偏光ビームスプリッタから構成され、
前記レーザ光方向変換手段は、入射するレーザ光の偏光面を45°回転させ、往復で90°回転させる、ファラデーローテータ反射器から構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の位相制御装置。
【請求項4】
前記所望位相出力系において、
前記第2レーザ光源は、複数のレーザ光源と、前記複数のレーザ光源からの出力光を合波させるための光合波器とから構成されており、
前記光カプラと前記光受信器との間に、前記光カプラから入力される前記複数のレーザ光源からの出力光を分波させるための光分波器が設けられ、
前記光受信器は、前記光分波器で分波させた後の複数のレーザ光をそれぞれ電気信号に変換させるための複数の光受信器から構成され、
前記位相検波器は、前記第2変調信号発生器からの変調信号の位相と、各前記複数の光受信器からのビート信号の位相とを、それぞれ比較することで、レーザ光の位相を検波し、この位相の情報を含んだ信号を出力する複数の位相検波器から構成され、
前記複数の位相検波器と前記第2光移相器との間に、前記複数の位相検波器からの信号に情報として含まれる位相の値のうち、2つの値の差を検出し、この差と予め設定された位相差とが一致するように前記第2光移相器でレーザ光の位相を調整するための信号を出力する位相差検出器が設けられている
ことを特徴とする請求項2または3に記載の位相制御装置。
【請求項5】
前記所望位相出力系において、
前記第2レーザ光源は、1つのレーザ光源と、変調が入力され、前記1つのレーザ光源からの出力光に対して当該変調信号に応じて強度変調を与える第3光変調器と、前記第3光変調器により強度変調を与えるための前記変調信号を発生する第4変調信号発生器とから構成されており、
前記光カプラと前記光受信器との間に、前記光カプラから入力される前記複数のレーザ光源からの出力光を分波させるための光分波器が設けられ、
前記光受信器は、前記光分波器で分波させた後の複数のレーザ光をそれぞれ電気信号に変換させるための複数の光受信器から構成され、
前記位相検波器は、前記第2変調信号発生器からの変調信号の位相と、各前記複数の光受信器からのビート信号の位相とを、それぞれ比較することで、レーザ光の位相を検波し、この位相の情報を含んだ信号を出力する複数の位相検波器から構成され、
前記複数の位相検波器と前記第2光移相器との間に、前記複数の位相検波器からの信号に情報として含まれる位相の値のうち、2つの値の差を検出し、この差と予め設定された位相差とが一致するように前記第2光移相器でレーザ光の位相を調整するための信号を出力する位相差検出器が設けられている
ことを特徴とする請求項2または3に記載の位相制御装置。
【請求項6】
前記所望位相出力系において、
前記位相検波器と前記位相差検出器および前記第2光移相器との間に設けられた第1のスイッチと、
前記第1のスイッチおよび前記位相差検出器と前記第2光移相器との間に設けられた第2のスイッチと
をさらに備え、
それらのスイッチの切り替えにより、前記第2光移相器でレーザ光の位相を調整するための前記信号として、前記位相検波器からの信号か、前記位相差検出器からの信号かの、いずれか一方を、前記第2光移相器に入力することを特徴とする請求項4または5に記載の位相制御装置。
【請求項7】
前記所望位相出力系が、
入力される変調信号に応じて時間とともに連続的に周波数が変化するレーザ光を発生する第2レーザ光源と、
前記第2レーザ光源で発生するレーザ光の発生周波数を時間とともに連続的に変化させるための変調信号を発生する変調信号発生器と、
前記第2レーザ光源からのレーザ光を2つに分岐する光分岐器と、
前記光分岐器から出力される2つのレーザ光のうちの一方のレーザ光を第1のポートから入力して第2のポートから出力するとともに、前記第2のポートから入力されるレーザ光を第3のポートへ出力する光分離手段と、
前記光分離手段の前記第2のポートから出力された前記レーザ光を所定の位相に調整して出力する第2光移相器と、
前記第2光移相器を通過したレーザ光を1つのポートから入力し、それが入力されたポートと同じポートから出力して、前記第2光移相器を介して前記光分離手段の前記第2のポートへ入力するレーザ光方向変換手段と、
前記光分岐器から出力される2つのレーザ光のうちの前記光分離手段に入力されなかった他方のレーザ光と前記光分離手段の前記第3のポートからのレーザ光とが入力され、それらを合波して、出力する光カプラと、
前記光カプラから合波されて出力された前記2つのレーザ光のビート信号を取り出して電気信号に変換する光受信器と、
前記光受信器からの時間とともに変化するビート信号の周波数を検出し、この周波数の情報を含んだ信号を検出して、この周波数と予め設定された所望の周波数とが一致するように前記第2光移相器でレーザ光の位相を調整するための信号を出力する周波数検出器と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の位相制御装置。
【請求項8】
前記第1レーザ光源から発生するレーザ光が前記光電変換器に到達するまでの間の前記複数のレーザ光伝送線路のうちの少なくとも一つの経路に光ファイバが用いられることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項9】
前記第2レーザ光源から発生するレーザ光が前記光受信器に到達するまでの間の経路に光ファイバが用いられることを特徴とする請求項2から8までのいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項10】
前記第2光変調器と前記光合波器との間、前記光分岐器と前記光分離手段との間、前記光分離手段と前記光合波器との間、前記レーザ光方向変換手段と前記光分波器との間、前記光分波器と前記光電変換器との間、前記光分離手段と前記周波数シフタとの間、前記周波数シフタと前記光カプラとの間、および、前記光カプラと前記光受信器との間の、少なくとも一つの光路長を短くしたことを特徴とする請求項2から6まで及び8から9までのいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項11】
前記第2光変調器と前記光合波器との間、前記光分岐器と前記光分離手段との間、前記光分離手段と前記光合波器との間、前記レーザ光方向変換手段と前記光分波器との間、前記光分波器と前記光電変換器との間、前記光分離手段と前記光カプラとの間、および、前記光カプラと前記光受信器との間の、少なくとも一つの光路長を短くしたことを特徴とする請求項7から9までのいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項12】
前記第2光移相器は、前記光分離手段と前記レーザ光方向変換手段との間に設けられたことを特徴とする請求項2から11までのいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項13】
前記所望位相出力系の前記第2レーザ光源から発生するレーザ光が前記光受信器に到達するまでの間の経路に、このレーザ光の波長における分散の値が小さくなるように調整された分散シフト光ファイバを含むことを特徴とする請求項2から12までのいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項14】
前記所望位相出力系の前記第2レーザ光源からのレーザ光が、前記光受信器に到達するまでの間の経路に、このレーザ光の伝送により生じた分散に対して符合が逆の分散を与えることで当該分散を打ち消す分散補償器を含むことを特徴とする請求項4から12までのいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項15】
前記所望位相出力系の前記第2レーザ光源から前記光受信器までの間、前記第2レーザ光源を構成している複数のレーザ光源からのレーザ光が伝送される際に生じる分散による位相差を、前記位相差検出器において位相差を検出する際に、あらかじめ補償しておく機能を含むことを特徴とする請求項4または6に記載の位相制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−146786(P2011−146786A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4032(P2010−4032)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】