位相型光学素子、光源ユニット、光走査装置および画像形成装置
【課題】回折光学素子に、ビームスポット径を太くすることなく深度余裕を拡大できる機能を、コストアップなしで付与し、ビームスポット径の更なる安定化を目指すことができる位相型光学素子を実現する。
【解決手段】光学素子11の光学面を複数の領域に分割することで、該光学面を不連続にするとともに、分割部における隣り合う領域間の位相差は、使用する波長に対して2πの整数倍となるように設定した位相型光学素子10において、前記光学素子11の一部(例えば複数の輪帯の一部)に不連続領域12を設け、前記不連続領域12と周辺部との位相差が、使用する波長に対して2πとは異なるように設定した。これによりビームスポット径を太くすることなく深度余裕を拡大することができ、ビームスポット径の安定化を図ることができる。
【解決手段】光学素子11の光学面を複数の領域に分割することで、該光学面を不連続にするとともに、分割部における隣り合う領域間の位相差は、使用する波長に対して2πの整数倍となるように設定した位相型光学素子10において、前記光学素子11の一部(例えば複数の輪帯の一部)に不連続領域12を設け、前記不連続領域12と周辺部との位相差が、使用する波長に対して2πとは異なるように設定した。これによりビームスポット径を太くすることなく深度余裕を拡大することができ、ビームスポット径の安定化を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル複写機、レーザプリンタ、レーザプロッタ、レーザファクシミリ、光ピックアップ、レーザ加工装置等に用いられる光源ユニットに用いる位相型光学素子と、その位相型光学素子を用いた光源ユニット、及び、その光源ユニットを用いた光走査装置、及び、その光走査装置を備えたデジタル複写機、レーザプリンタ、レーザプロッタ、レーザファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置に用いられる光走査装置において、環境変動による像面位置ずれ低減のため、回折レンズが用いられている(特許文献1〜3等)。
例えば特許文献1には、充分な精度を保って保持出来る形状のレンズを実現し、更に温度変化によるピント位置ずれを抑制できる光学系を実現することにより、低コストで良好な性能を持つ、デジタル複写機、レーザプリンタ、レーザファクシミリ等の光走査装置を提供することを課題として、「半導体レーザからなる光源と、該光源からの光束をカップリングするカップリング光学系と、該カップリング光学系からの光束を主走査方向は平行光とし、副走査方向は偏向器に集束させる光束とする第1光学系と、該第1光学系からの光束を主走査方向に偏向させる偏向器と、該偏向器により偏向された光束を集光させる走査光学系と、を備えた光走査装置であって、前記カップリング光学系を構成する全てのレンズの材質を樹脂とし、該レンズの少なくとも1面に回折光学面を備えたことを特徴とする光走査装置」が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、温度変化時にも性能の安定した安価なレーザー走査装置を提供することを課題として、「レーザー光を発するレーザー光源と、入射してきたレーザー光を主走査方向に偏向させる偏向器と、前記レーザー光源から射出されたレーザー光を主走査方向についてはほぼ平行光にし副走査方向については前記偏向器の偏向面近傍で集光させる光源光学系と、前記偏向器により偏向されたレーザー光を再び集光させる走査光学系と、を備えたレーザー走査装置であって、前記光源光学系が樹脂で構成された1つの光学素子から成り、その光学素子が、回転対称軸を持たない少なくとも1面の反射面と、2面の透過面と、を有することを特徴とするレーザー走査装置」が記載されている。
【0004】
さらに特許文献3には、環境温度変動と半導体レーザの波長変動に強い、高精細印字に適したコンパクトな光走査装置及びそれを用いた画像形成装置を得ることを課題として、「光源手段と、該光源手段からの光束を光偏向手段に導光する光学手段と、該光偏向手段からの光束を被走査面に導光する結像光学系と、を有し、該光偏向手段の回動動作に基いて該被走査面を光走査する光走査装置において、該光学手段は1以上の面に回折部を有しており、所定の条件式を満足することを特徴とする光走査装置」が記載されている。
【0005】
また、ピックアップ光学系においても、単一の対物レンズで複数の波長(例えば、青、赤、赤外)を互換するためや収差補正のため、回折光学素子が用いられている(特許文献4、5等)。
例えば特許文献4には、3つの波長に対して互換を達成しつつ、トラッキングによるコマ収差の劣化を軽減できる集光光学素子及び光ピックアップ装置を提供することを課題として、「保護基板厚t1〜t3の第1〜第3光ディスクに対して波長λ1〜λ3の光束を用いて情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に用いられる集光光学素子において、少なくとも1つの光学面が光軸を中心とした同心円状の複数の領域に分割され、第3光ディスクに対して有限共役系で再生及び/又は記録を行なう場合の光学系倍率をm3と規定したとき、波長λ3の光束に対する集光光学素子の焦点距離f3が、
0.01<|m3|×(t3−t1)/f3<0.07
を満たすことを特徴とする集光光学素子」が記載されている。
【0006】
また、特許文献5には、ホログラムと対物レンズから成る複合対物レンズにより、青色光ビームに対応した基材厚約0.1mmのBDと、赤色光ビームに対応した基材厚約0.6mmのDVDとの安定かつ高精度な互換再生記録を可能にすることを課題として、「ホログラムと屈折型レンズからなる複合対物レンズであって、前記ホログラムは、少なくとも一部領域内に形成された階段状断面形状を有する格子を備え、前記階段状断面形状の段差は単位段差d1の整数倍であり、前記単位段差d1は、390nm〜415nmの範囲内にある波長λ1を有する第1光ビームに対して約1波長の光路差を与える段差であり、前記格子の一周期は、前記ホログラムの光軸側から外周側に向かって前記単位段差d1の0倍、2倍、1倍、3倍という順番の高さの階段からなることを特徴とする複合対物レンズ」が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−258392公報
【特許文献2】特開2002−287062公報
【特許文献3】特開2004−126192公報
【特許文献4】特開2006−12218公報
【特許文献5】特開2005−129227公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、デジタル複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置の出力画像の画質向上が市場で求められている。出力画像の画質向上のためには、ビームスポット径の安定化が必要不可欠である。そこで上記の従来技術に開示されているような回折レンズを用いることにより、温度変動時のビームスポット径が安定化するため、出力画像の画質向上が可能である。しかし、回折レンズで補正できるのは、温度変動の影響のみである。従って、振動や装置本体の歪み等によって生じるビームスポット径の変動に対しては効果がない。
【0009】
今後、更なるビームスポット径の安定化を目指すためには、深度余裕(許容するビームスポット径以下となる光軸方向の距離)を拡大することができればよい、つまり、ビームスポット径が通常よりも広がりにくくすることができれば良い。
【0010】
しかし、深度余裕dとビームスポット径w(波長:λ)には以下の関係、
d ∝ w^2/λ
があり、深度余裕を拡大すると、ビームスポット径は太くなる。ビームスポット径が太くなると、画像の解像度が低下するため、画質は低下してしまう。
【0011】
また、ピックアップ光学系で用いられる、単一の対物レンズで複数の波長(例えば、青、赤、赤外)を互換するための回折光学素子や、収差補正のための回折光学素子においても、深度余裕について上記の関係式が成り立つ。
近年の記録密度の高密度化に伴い、ビームスポット径が小さくなってきているため、深度余裕は減少する方向であり、性能安定性の低下や高コスト化が懸念されている。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、環境変動による像面位置ずれの低減や、単一の対物レンズで複数の波長(例えば、青、赤、赤外)を互換するためや収差補正のために用いられている回折レンズや回折光学素子(以下、これらを併せて回折光学素子と呼ぶ)に、ビームスポット径を太くすることなく深度余裕を拡大できる機能(深度余裕拡大機能と言う)を、コストアップなしで付与し、ビームスポット径の更なる安定化を目指すことができる位相型光学素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記位相型光学素子を用いた光源ユニット、光走査装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明では以下のような技術的手段を採っている。
本発明の第1の手段は、光学素子の光学面を複数の領域に分割することで、該光学面を不連続にするとともに、分割部における隣り合う領域間の位相差は、使用する波長に対して2πの整数倍となるように設定した位相型光学素子において、前記光学素子の一部に不連続領域を設け、前記不連続領域と周辺部との位相差が、使用する波長に対して2πとは異なるように設定したことを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の手段は、第1の手段の位相型光学素子において、前記不連続領域部分は、前記分割部であることを特徴とする。
また、本発明の第3の手段は、第1の手段の位相型光学素子において、前記不連続領域は、前記複数の領域のうちの1つの領域の内部か、もしくは複数の領域に跨るように、少なくとも1箇所に設けることを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の手段は、第1の手段の位相型光学素子において、前記複数の領域の内部を階段状の面で構成し、前記不連続領域は、前記階段状の面であることを特徴とする。
また、本発明の第5の手段は、第1の手段の位相型光学素子において、前記複数の領域の内部を階段状の面で構成し、前記不連続領域は、前記階段状の面の一部に設けることを特徴とする。
【0016】
本発明の第6の手段は、第1〜第6のいずれか1つの手段の位相型光学素子において、前記不連続領域と周辺部との位相差は、使用する波長に対してπの奇数倍であることを特徴とする。
また、本発明の第7の手段は、第1〜第6のいずれか1つの手段の位相型光学素子において、前記複数の領域は帯状の領域であり、光軸を中心とした同心円状であるか、もしくは、光軸を中心とした楕円状であるか、もしくは直線状であることを特徴とする。
【0017】
本発明の第8の手段は、位相型光学素子であって、光学素子の光学面に階段状の面を有し、該階段状の面の高さは、所定の単位量の整数倍に設定するとともに、前記光学素子の一部に、周辺部との高さの差が、前記単位量よりも大きく、且つ、所定の波長に対する位相差が2πではない不連続部分を設けることを特徴とする。
【0018】
本発明の第9の手段は、第8の手段の位相型光学素子において、前記不連続部分は、前記階段状の面であることを特徴とする。
また、本発明の第10の手段は、第8の手段の位相型光学素子において、前記不連続部分は、前記階段状の面の一部に設けることを特徴とする。
さらに本発明の第11の手段は、第8〜第10のいずれか1つの手段の位相型光学素子において、前記周辺部との高さの差は、使用する波長に対してπの奇数倍であることを特徴とする。
【0019】
本発明の第12の手段は、光源ユニットであって、光源と、第1〜第11のいずれか1つの手段の位相型光学素子とを有することを特徴とする。
また、本発明の第13の手段は、光源と、該光源からの発散光を平行光に変換するレンズと、前記平行光の一部のみを透過するアパーチャと、請求項1〜11のいずれか1項に記載の位相型光学素子とを有する光源ユニットであって、前記光源ユニットから射出される光を集光光学素子で集光したときの焦点位置におけるビームプロファイルの第1サイドローブピーク強度は、前記位相型光学素子がないと仮定したときに、前記光源ユニットから射出される光を集光光学素子で集光したときの焦点位置におけるビームプロファイルの第1サイドローブピーク強度よりも大きくなるように、前記位相型光学素子の位相分布を設定することを特徴とする。
【0020】
本発明の第14の手段は、光走査装置であって、第12または第13の手段の光源ユニットと、該光源ユニットからの光ビームを偏向し走査する偏向手段と、該偏向手段により走査された走査ビームを被走査面に結像する走査レンズと、を有することを特徴とする。
また、本発明の第15の手段は、第14の手段の光走査装置において、前記位相型光学素子は、前記偏向手段よりも前記光源側に設けることを特徴とする。
【0021】
本発明の第16の手段は、像担持体と、該像担持体に光ビームを照射して静電潜像を形成する光走査装置と、該光走査装置により前記像担持体上に形成された静電潜像を現像剤で顕像化する現像手段と、前記像担持体上に顕像化された画像を、転写媒体に転写する転写手段とを有し、画像を出力する画像形成装置において、前記光走査装置として、第14または第15の手段の光走査装置を用いたことを特徴とする。
【0022】
本発明の第17の手段は、並設された複数の像担持体と、該複数の像担持体の各々に光ビームを照射して静電潜像を形成する光走査装置と、該光走査装置により各像担持体上に形成された静電潜像を色の異なる現像剤で顕像化する現像手段と、前記各像担持体上に顕像化された各色の画像を、転写媒体に重ね合わせて転写する転写手段とを有し、多色またはカラー画像を出力する画像形成装置において、前記光走査装置として、第14または第15の手段の光走査装置を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の位相型光学素子では、環境変動による像面位置ずれの低減や、単一の対物レンズで複数の波長(例えば、青、赤、赤外)を互換するためや収差補正のために用いられている回折光学素子に、ビームスポット径を太くすることなく深度余裕を拡大できる機能(深度余裕拡大機能)を、コストアップなしで付与することができ、ビームスポット径の更なる安定化を目指すことができる。
従って、本発明の位相型光学素子を用いることで、温度変動の影響によるビームスポット径変動の低減だけでなく、さらにビームの深度余裕を拡大することにより、装置の変形や振動等に起因するビームスポット径の変動を抑制することができる。さらに本発明の位相型光学素子は、コストアップなしに、且つ、信頼性のある作製技術を用いて実現することができるため、低コストで信頼性の高い位相型光学素子を実現できる。
また、本発明の位相型光学素子を用いることで、深度余裕の拡大量を最大限に引き出すことができる。
さらにまた、本発明の位相型光学素子を用いることで、工場出荷前のビームスポット径の太りを低減できるだけでなく、装置の変形や振動等に伴う光学素子の位置ずれ等、工場出荷後に発生する要因によるビームスポット径の変動(太り)を低減できる。
【0024】
本発明の光源ユニットでは、上記の効果を有する本発明の位相型光学素子を用いることで、温度変動の影響によるビームスポット径変動の低減機能と深度余裕の拡大機能を有した光源ユニットや、工場出荷前のビームスポット径の太りの低減機能と、深度余裕の拡大機能を有した光源ユニットや、もしくは上記全ての機能を兼ね備えた光源ユニットを実現できる。また、本発明の光源ユニットを用いることで、深度余裕の拡大機能を有する光学系を実現することができる。
【0025】
本発明の光走査装置では、上記の効果を有する本発明の光源ユニットを用いることで、被走査面上でのビームスポット径の変動を低減することができる。また、本発明の光源ユニットを用いることで、被走査面の全ての位置において、同じ機能を付与できる。
【0026】
本発明の画像形成装置では、上記の効果を有する本発明の光走査装置を用いることで、ドット径の揃った高品質な画像を提供することができる。
また、本発明の光走査装置を用いることで、ドット径の揃った高品質なカラー画像を提供することができる。また、複数あるプロセス制御条件のうちの1つを安定化することができるため、プロセス制御頻度を低減することができ、省エネルギー等の環境負荷の低減を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の各手段に対応する実施例を、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0028】
[実施例1:第1、第2の手段の実施例]
まず、ビームスポット径を太くすることなく、深度余裕を拡大する方法について説明する。
ビームスポット径を太くすることなく、深度余裕を拡大するためには、回折を上手く制御すれば実現できる。つまり回折光学素子を用いて実現することができる。このことについて、以下で説明する。
なお、本願における回折光学素子とは、光学素子の凹凸や屈折率分布により、ビームの位相分布を制御するものであり、以下では、「位相型光学素子」と呼ぶ。
【0029】
図1は、深度余裕を拡大する原理を説明するための光学系の概略構成図である。
図1に示すように、図示しない光源からの均一強度の入射波(平面波)をアパーチャ1で所望のビーム幅に切り取り、アパーチャ1に密接して(距離0)設けられた位相型光学素子2により所望の位相分布をビームに付与し、焦点距離fの理想レンズ3により焦点位置(ピント面)に結像させる。アパーチャ(位相型光学素子の有効径でも代用可能である)は、レンズの前側焦点位置に設置している。なお、各種パラメータは以下のとおりである。
・アパーチャ:直径930μmの円形
・レンズ:f=50mm
・波長:λ=632.8nm
【0030】
なお、以下では説明の簡略化のため、入射波は均一強度として説明を行うが、実際の半導体レーザ等の強度分布はガウス分布である。しかし、以下で述べることは、入射波がガウスビームであるときにも成り立つ。
【0031】
まず、位相型光学素子を設けないときの焦点位置におけるビームプロファイルのシミュレーション結果を図2(a)に示す。ピーク強度を1に規格化している。このときのサイドローブピーク強度は0.016(ピーク強度の1.6%)になっている。図2(b)は、横軸にレンズ面からの距離、縦軸に1/e^2ビームスポット径をとったシミュレーション結果である。焦点位置におけるビームスポット径は56.4μmであり、最小ビームスポット径の105%まで許容したときの深度余裕は8.9mmとなり、サイドローブのピーク強度は1.6%である。
【0032】
次に位相型光学素子を用いたときの実施例(シミュレーション結果)を図3に示す。波長は632.8nmとして使用している。図3において、(a)は位相型光学素子2の平面図と断面図を併記したものであり、位相型光学素子2の位相分布を表している。図中の高さdのリング状の段差部分は、使用する波長に対してπの位相を与えるように設定した(上段の平面図の白部が0位相、リング状の斜線部がπ位相)。図3の(b)は焦点位置におけるビームプロファイルを表し(ピーク強度を1に規格化している)、(c)は横軸にレンズ面からの距離、縦軸に1/e^2ビームスポット径をとったグラフを示している。また、図3(a)は円形(リング状)の位相分布であり、アパーチャの中心と位相型光学素子の中心は一致させている。焦点位置におけるビームスポット径は51.8μmであり、最小ビームスポット径の105%まで許容したときの深度余裕は12.9mmとなり、サイドローブのピーク強度は5.8%である。
【0033】
図2(b)と図3(c)を比較すると、ビームスポット径を太くすることなく深度余裕を拡大できているのがわかる。深度余裕が拡大できるのは、サイドローブピーク強度を増大させているためであり、図3(a)の位相型光学素子2はそのように設計されている。
サイドローブのピーク強度を増大させることで、深度余裕を拡大できることを以下で説明する。
【0034】
図1のレンズ3の焦点位置では、メインローブと第1サイドローブは位相が反転しており、境界付近で急激に位相が反転する(近軸理論(フレネル回折等)で考えると)。メインローブ光とサイドローブ光の境界では、メインローブ光とサイドローブ光が打ち消しあう条件(位相が反転しており、強度が等しい)となり、強度が0となるところが存在する。この状態で、焦点位置から伝搬すると、メインローブ光、サイドローブ光ともに発散光になるため、焦点位置では平面であった波面(位相)が、発散球面波の波面(位相)に徐々に近づいていく。従って、メインローブ光とサイドローブ光の境界付近の位相の切り替わりが、徐々になだらかになっていく。2つの光波が打ち消しあい0になる条件は、位相が反転して、且つ強度が等しいことであるため、メインローブ光とサイドローブ光の境界付近では、焦点面からの伝搬とともに、2つの光波が打ち消しあう条件からずれていくため、強度が0から徐々に高くなる。そのため、焦点位置では0であったメインローブ光とサイドローブ光の境界の光強度は0ではなくなる。メインローブ光とサイドローブ光の境界の光強度が高くなると、それに伴ってメインローブ光も太ってしまう。
【0035】
そこで、位相型光学素子2を用いて、焦点位置におけるサイドローブのピーク強度を増大させると、2つの光波が打ち消しあう範囲が広くなるため、焦点位置からの伝搬とともにメインローブ光とサイドローブ光の境界の強度が増大する割合が遅くなる。従って、メインローブ光の太りは、サイドローブ光の強度が弱いときに比べて抑制され、深度余裕が増大する。以上が、位相型光学素子を用いて深度余裕を拡大できる原理である。
【0036】
ここで、図19に、レンズ面から57mmの位置におけるビームプロファイルのシミュレーション結果を示す。図19(a)は位相型光学素子を用いないとき、図19(b)は位相型光学素子を用いたときを示している。図19より、位相型光学素子を用いたときの方が、デフォーカス時のプロファイルの劣化が抑制されており、その結果、深度余裕が拡大されているのがわかる。図19(a)におけるサイドローブピーク強度は14.9%(図19(a)ではサイドローブのピーク位置は明確に認識できないが、前後のデフォーカス位置でのビームプロファイルにおけるサイドローブのピーク位置より類推した)であり、図19(b)におけるサイドローブピーク強度は8.1%であり、位相型光学素子を用いたときの方がデフォーカス時のサイドローブピーク強度が小さい。
このように、位相型光学素子を用いて、焦点位置におけるビームプロファイルのサイドローブピーク強度を、位相型光学素子を用いないときに比べて大きくするとともに、焦点位置以外の任意の位置(デフォーカス位置)におけるビームプロファイルのサイドローブピーク強度を、位相型光学素子を用いるときの方が小さくなるように位相型光学素子を設計することで、深度余裕を拡大できる。
【0037】
なお、上記では、図3(a)に示すような同心円状の位相分布を例に説明したが、それに限定するものではない。焦点位置において、サイドローブのピーク強度を増大させるような位相分布であれば良い。そのような位相分布として望ましいのは、位相型光学素子の中心を基準として、対称形状の位相分布を少なくとも一部に設けることである。ここで、対称とは、線対称と点対称(回転対称を含む)の両方を含む(線対称のときは、中心を通る線に対して)。その深度余裕拡大機能を実現するための位相分布の例を図4に示す。図4(a)〜(c)は、位相型光学素子2の中心に対して点対称な形状であり、図4(d)は、対称形状の位相分布をピクセル構造で実現したものである。図4(a)〜(d)は中心を通る或る線に対して線対称とも考えることができる。図4(e)は、一部に点対称な形状を有し、直交する2方向で構造が異なるものである。本発明の位相型光学素子では、図4(a)〜(e)のように全ての位相分布が中心に対して点対称もしくは線対称にするのが最も望ましい。
【0038】
上記において、位相型光学素子として2段階の位相(2段階の高さ)分布を考え説明したが、これに限定するものではない。3段階以上の位相分布を用いることで、設計自由度を向上でき、深度余裕の拡大量を増大することができる。一方、作製の容易さという観点では、位相分布の段階数は少ない方が望ましい。2段階の位相で実現するときは、位相分布は0とπで実現するのが最も良い。4段階で実現するときは、位相分布は0、π/2、π、π/4で実現するのがよい。そうすることで、少ない段数の位相分布のときでも、深度余裕の拡大機能を最大限に引き出すことができる。
【0039】
次に、回折レンズについて説明する。
従来用いられている回折レンズの構造(パワーが有るタイプ)を図5に示す。図5の上段の図は回折レンズの光学面を正面から見た平面図であり、(a)〜(c)は回折レンズの中央部の断面図である。
図5(a)は、通常のレンズの形状を輪帯状に分割し、各輪帯の高さがhになるように折り返した構造である。図5(b)は、同図(a)の輪帯を直線で近似した形状(鋸波状)であり、図5(c)は、同図(a)の輪体を階段形状で近似したものである。図5(a)〜(c)における構造は、パワーを有し、入射したビームを集光(もしくは発散)させることができる。
【0040】
次に図6にパワーを有さない回折レンズの構造を示す。図6の上段の図は回折レンズの光学面を正面から見た平面図であり、下段の図は回折レンズの中央部の断面図である。パワーを有さない回折レンズの場合、各輪帯は、光軸に対して垂直な形状となっている。
ここで、図5,6における各輪帯の高さhは、使用する波長に対して、媒質中で2πの整数倍の位相差となるように設定される。
【0041】
上記のような回折レンズを用いることで、温度変動時の焦点位置変動を抑制できる。また、光ディスク装置等に用いられるピックアップ光学系では、回折レンズは1つの対物レンズを複数の波長で互換するための素子として新たに設けられたり、対物レンズ上に設けられたりする。
【0042】
上記のような回折レンズにより、温度変動時の焦点位置変動を抑制することができるため、例えばデジタル複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置の光走査装置に利用すれば、被走査面である感光体(像担持体)上でのビームスポット径が安定化するため、出力画像におけるドットの大きさが安定し、出力画像を高画質化することができる。しかし、回折レンズの効果があるのは、温度変動による影響のみであり、その他の影響、例えば、装置の変形や振動等に伴う光学素子の位置ずれ等の影響によるビームスポット径の変動に対しては効果がない。温度変動以外の影響によるビームスポット径変動を低減するためには、上記で説明した位相型光学素子を用いてビームの深度余裕を拡大するのがよい。
【0043】
上記で説明した深度余裕を拡大する位相型光学素子を、別の光学素子として新たに設けることでも良いが、位相型光学素子とレンズ(回折レンズ)の距離を離すと、位相型光学素子で発生する高次回折光がレンズ(回折レンズ)でケラれる恐れがあり、位相型光学素子の深度余裕拡大機能を最大限に引き出せない恐れがある。それを防止しようとすると、レンズ(回折レンズ)を大きくする必要があり、レンズ(回折レンズ)が大型化してしまう恐れがある。そのため、位相型光学素子とレンズ(回折レンズ)を一体化するのが最も良い。
【0044】
深度余裕を拡大する位相型光学素子(例えば図3(a))と回折レンズ(例えば図5,6)を一体化する方法として、回折レンズの一部に不連続点を設け、前記不連続領域と周辺部との位相差が、使用する波長において2πと異なるように設定することで実現できる。回折レンズに深度余裕を拡大する機能を付与した位相型光学素子の実施例を図7に示す。図7の上段の図は位相型光学素子10の光学面を正面から見た平面図であり、(a)〜(c)は位相型光学素子の中央部の断面図である。
【0045】
図7の実施例の位相型光学素子10では、上記の不連続領域は、図5に示したような構造の回折レンズ11の輪帯と同一にしている。すなわち内側から2番目(斜線で示す)の輪帯12の高さが、図5に示した構造の回折レンズに対して、dだけ高くなっている。ここで、dは、使用する波長に対して2πの整数倍の位相差にならないようにする。こうすると、2番目の輪帯12は他の輪帯に対して不連続領域となり、高さdと使用する波長に対応して位相差を付与することができる。すなわち、図3(a)と図5の構造を一体化することができ、回折レンズ11に深度余裕を拡大する機能(位相差を付与した輪帯12)を一体化した位相型光学素子10を実現することができる。
【0046】
回折レンズ11は、通常、金型をバイトで切削して所望の形状した後、樹脂を成形して作製する。図7のような構造にすると、信頼性の高い従来と全く同じ作製方法を用いることができるため、信頼性の高い位相型光学素子10を提供することができ、また、金型作製の際にもコストアップはないというメリットがある。
【0047】
図7では、2番目の輪帯12を不連続領域として、その高さを変えることにより、他の輪帯に対して位相差を付与したが、2番目の輪帯12にのみ新たに材料を塗布することや、2番目の輪帯12の屈折率を変えることによっても、回折レンズ11に深度余裕を拡大する機能(位相差を付与した輪帯12)を一体化した位相型光学素子10を実現することができる。
【0048】
また、上記の実施例では、回折レンズ11に深度余裕を拡大する機能(位相差を付与した輪帯12)を一体化した位相型光学素子10として、図3(a)に示すような、1本のリング状の位相分布で、2段階の位相(2段階の高さに相当)のものを考えたが、これに限定するわけではない。複数のリング状の位相分布を設けても良いし、3段階以上の複数の段差を用いてもよい。複数の段差を設ける方が設計自由度が向上するため、深度余裕の拡大量を増大できる。
【0049】
[実施例2:第3の手段の実施例]
図8に、別の実施例として、回折レンズ11の輪帯の内部に不連続点を新たに設ける実施例を示す。図8の上段の図は位相型光学素子10の光学面を正面から見た平面図であり、(a)〜(c)は位相型光学素子10の中央部の断面図である。
図8では、内側から1番目の輪帯の内部に不連続点を新たに設け、不連続領域(斜線部)13を設けている。図7の実施例の方法では、図3(a)に示した位相型光学素子の斜線部分を図5に示すような回折レンズの輪帯の一部に一致させる必要があるため、設計の自由度が制限される恐れがある。そこで図8のような構造にすることで、設計自由度を向上でき、深度余裕の拡大量を増大できる。
【0050】
図8(a),(b)では、内側から1番目の輪帯の内部に不連続領域13を設けた例を示しているが、複数の輪帯にまたがるように設けても良い。
なお、図8(a),(b)では、不連続領域13の頂上付近の面形状は、周りの面形状と滑らかにつながるような形状で書いおり(高さの不連続量を取り除いたときに)、そうするのが最も望ましいが、光軸と垂直な面とすることも可能である。
【0051】
[実施例3:第4、第5の手段の実施例]
回折レンズ11の輪帯を階段状の面で構成する際は、図8(c)に示すように、不連続領域13を、階段状の面の1つもしくは複数の面に対応させるのが良い。
【0052】
また、図8(c)では、不連続領域13を、階段状の面の1つもしくは複数の面に対応させているため、設計自由度を制限する恐れがある。階段状の面の途中で更に段差を設け、不連続領域を設けることで、設計自由度の制限をなくすことができる。
【0053】
[実施例4:第6の手段の実施例]
実施例1〜3に示した位相型光学素子(図7または図8)において、深度余裕を拡大するための位相分布(高さ分布に相当)として、2段階の高さで実現するのが最も作製が容易で望ましい。その際には、不連続領域と周辺部との位相差(図7、図8において、高さdに対応した位相差)は、使用する波長に対してπの奇数倍付近にするのがよく、そうすることで、深度余裕拡大機能を最大限に引き出すことができる。
【0054】
[実施例5:第7の手段の実施例]
上記において、図7または図8に示した構造の位相型光学素子10では、回折レンズ11の輪帯は同心円状として説明した。しかし、同心円に限定するのではなく、例えば図9(a),(b)に示すように、楕円形状や、直線形状にしても良い。楕円形状や、直線形状は、直交する2方向の光学倍率が異なる光学システムに適用する際に有用である。
また、回折レンズとして、図5の代わりに図6のようなものにすることも可能であり、上記の実施例1〜4と全く同様に考えることができる。
上記の実施例では、不連続領域はリング状であるときを説明したが、これに限定するわけではなく、図4に示した位相分布の例と同様に、リング状とは異ならせることも可能である。
【0055】
[実施例6:第8、第9の手段の実施例]
次に、階段状の位相型光学素子と、深度余裕を拡大する位相型光学素子とを一体化した構造について説明する。
ここでいう「階段状の位相型光学素子」とは、図5(c)や図6とは異なり、輪帯構造がないものや、輪帯間の位相差が使用する波長に対して2πになっていないものを指す。このような階段状の位相型光学素子は、例えば収差補正(球面収差等)等の目的で使用される。このような収差補正素子を用いることにより、収差によるビームスポット径の太りを抑制できる。また、上記の「階段状の位相型光学素子」は、ピックアップ光学系において、複数の単一の対物レンズで複数の波長(例えば、青、赤、赤外)を互換するためにも用いられる。
なお、上記の「階段状の位相型光学素子」は、通常、ほとんどパワーはないと見なせる。
【0056】
図10に、階段状の位相型光学素子の実施例を示す。図10(a)に示す位相型光学素子21は球面収差の補正を想定したものであり、図10(b)に示す位相型光学素子31はコマ収差の補正を想定したものである。図10において、各階段状の面の高さはhの整数倍になっており、hは、例えば補正したい収差量と階段の段数等より決定され、使用したい波長に対して、2πではない位相に対応する。
【0057】
上記の収差補正素子のような位相型光学素子21,31は、初期(工場出荷時)には効果を発揮するが、しかし、装置の変形や振動等に伴う光学素子の位置ずれ等、工場出荷後に発生する要因によるビームスポット径の変動(太り)に対しては効果がない。従って、前述の深度余裕を拡大する位相型光学素子を設けることで、工場出荷後においてもビームスポット径の変動を低減できる。
【0058】
図11(a),(b)は、階段状の位相型光学素子(例えば図10(a),(b)の位相型光学素子21,31)に深度余裕を拡大する位相型光学素子(例えば図3(a)と同様の位相分布)を一体化した構造の位相型光学素子20,30の実施例を示している。そのメリットは、前述の位相型光学素子として回折レンズを用いたときと同じである。
【0059】
図11(a),(b)において、斜線で示すように、周辺部との高さの差dは、各階段状の面の高さの単位量hより大きい不連続領域22,32を設けている。このように、周辺部との高さの差が大きい不連続領域22,32を設けることで、従来の収差補正素子のような位相型光学素子21,31に、深度余裕を拡大する機能を付与した位相型光学素子20,30を実現することができる(周辺部との高さの差dが単位量hより小さいときには、斜線部の領域22,32は収差補正として機能し、dがhより大きくなると、斜線部の領域22,32は深度余裕の拡大として機能する)。また、回折レンズと同様に、信頼性の高い従来と全く同じ作製方法を用いることができるため、信頼性の高い位相型光学素子を提供することができる。
【0060】
また、上記実施例では、深度余裕を拡大する位相型光学素子として、図3(a)に示すような、1本のリング状の位相分布で、2段階の位相(2段階の高さに相当)のものを考えたが、これに限定するわけではない。複数のリング状の位相分布を設けても良いし、3段階以上の複数の段差を用いてもよい。複数の段差を設ける方が設計自由度が向上するため、深度余裕の拡大量を増大できる。
【0061】
[実施例7:第10の手段の実施例]
図12(a),(b)に、位相型光学素子の別の実施例として、階段状の面の一部に新たに不連続部分を設け、周辺部との高さの差dが、使用波長に対して2πと異なるように設定した構造の位相型光学素子20’,30’の実施例を示す。図12(a),(b)においては、図11(a),(b)の階段状の面の途中に新たに段差dの不連続領域23,33を設けており、この段差dは、使用波長に対して2πと異なるように設定している。図11(a),(b)の方法では、図3(a)に示した斜線部分を図11(a),(b)の1つの階段状の面に一致させる必要があるため、設計の自由度が制限される恐れがある。そこで図12(a),(b)のような構造にすることで、設計自由度を向上でき、深度余裕の拡大量を増大できる。
【0062】
[実施例8:第11の手段の実施例]
深度余裕を拡大するための位相分布(高さ分布に相当)として、2段階の高さで実現するのが最も作製が容易で望ましい。その際には、不連続領域と周辺部との位相差(図11または図12において、高さdに対応した位相差)は、使用する波長に対してπの奇数倍付近にするのがよく、そうすることで、深度余裕拡大機能を最大限に引き出すことができる。
【0063】
上記の実施例では、高さ(もしくは屈折率)のみを制御した位相型光学素子について説明してきたが、上記の位相型光学素子の一部の振幅透過率を2次元的に制御すると、光利用効率が低下するというデメリットはあるものの、同等以上の深度拡大効果を実現できるため、本発明の範疇に含める。
【0064】
[実施例9:第12の手段の実施例]
上記の実施例の位相型光学素子を光源ユニットに展開した実施例を図13に示す。上記の実施例で説明した位相型光学素子は、光学素子の1面(1つの光学面)で実現できるため、もう1つの光学面に、レンズ面や、上記で説明した第2の位相型光学素子を設けることが可能である。
【0065】
図13(a)は、光源である半導体レーザ41とパワーのある位相型光学素子42を設けた光源ユニットの実施例である。パワーは、位相型光学素子42にパワーを与えても良いし、位相型光学素子の反対面にレンズ面を用いても良いし、パワーのある位相型光学素子とレンズ面を両方用いても良い。
また、図13(b)は光源である半導体レーザ41と2つの位相型光学素子を用いた光源ユニットの実施例である。第2の位相型光学素子42−2は第1の位相型光学素子42−1と別に設けても良いし、1つの光学素子の両面に一体化してもよい。
【0066】
上記により、温度変動の影響によるビームスポット径変動の低減機能と深度余裕の拡大機能を有した光源ユニットや、工場出荷前のビームスポット径の太りの低減機能と、深度余裕の拡大機能を有した光源ユニットや、温度変動の影響によるビームスポット径変動の低減機能と工場出荷前のビームスポット径の太りの低減機能と深度余裕の拡大機能等を集積した光源ユニットを実現することができる。
【0067】
[実施例10:第13の手段の実施例]
次に上記の実施例の位相型光学素子を光源ユニットに展開した別の実施例を図14に示す。この光源ユニットは、光源である半導体レーザ41と、半導体レーザ41からの発散光を平行光に変換するレンズ43と、平行光の一部のみを透過するアパーチャ44と、上記の実施例で説明した本発明の位相型光学素子42とを有している。
光源41からの発散光をレンズ43により平行光束化し、アパーチャ44によって一部を切り取ったとき(レンズの有効径で一部を切り取ったときも含む)、アパーチャ44の回折像(ファーフィールドパターン)は、サイドローブを伴ったビームになる。例えば、円形のアパーチャを設けたときには図2(a)のようなプロファイル(横軸の数値は無視する)がファーフィールドパターンとして得られる(集光レンズを用いれば、レンズの焦点位置でファーフィールドパターンが得られる)。円形アパーチャの回折像の第1サイドローブのピーク強度は、メインローブ光のピーク強度の約1.6%であり、矩形アパーチャのときは約4.7%である。図14に示すように位相型光学素子42を設けたときは、位相型光学素子42の焦点位置における回折像(位相型光学素子にパワーがないときはファーフィールドパターン)のメインローブ光のピーク強度に対する第1サイドローブ光のピーク強度の割合が、アパーチャの回折像(ファーフィールドパターン)よりも増大させることで、深度余裕を拡大することができる。
【0068】
[実施例11:第14、第15の手段の実施例]
本発明の位相型光学素子を用いた光源ユニットを、デジタル複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置に用いられる光走査装置に展開した実施例を図15〜17に示す。
図15はフルカラー画像形成装置に展開した光走査装置の例であり、図16は図15の符号250で示す光源ユニット部の拡大図である。図15の実施例では、光走査装置は、光源ユニット250と、該光源ユニットからの光ビームを偏向し走査する偏向手段213と、該偏向手段により走査された走査ビームを被走査面(感光体)101〜104に結像する走査レンズ2181〜2184とを有しており、偏向手段であるポリゴンミラー213に対して対向する方向に2ステーション分ずつ走査している。また、図15では、説明の簡略化のため、光源ユニットや走査レンズ以降の光学系は、1ステーション分のみを図示している。なお、図16は光り走査装置の断面図である。
【0069】
図15〜17に示す実施例では、被走査面である4つの感光体ドラム101,102,103,104を転写ベルト105の移動方向に沿って配列し、順次異なる色のトナー像を転写することでカラー画像を形成する画像形成装置において、各光走査装置を一体的に構成し単一のポリゴンミラー213で全ての光ビームを走査する。
【0070】
まず、図16に示す構成の光源ユニット250の半導体レーザ41からの発散光は、位相型光学素子42により深度余裕拡大機能を付与され、平行光束化される。図16では、光学素子の一方の面に本発明のパワーのない位相型光学素子42を設けて、もう一方の面にレンズ(正のパワー)43を一体に設け、光源側にレンズ面がくるように設置している。位相型光学素子42には、なるべく平行に光束を入射させる方が回折効率(光利用効率)が向上できるため、図16のように設置するのが最も望ましい。図16の光源ユニットの実施例の他のバリエーションとして、以下の表1に例を示すが、これに限定するものではない。なお、収差補正という観点では、バリエーション1が最も望ましい。
【0071】
【表1】
【0072】
図15では1つの光源ユニット250のみ図示してあるが、光源ユニット250は4つの感光体ドラム101〜104に対応して4つ設けられており、各光源ユニット250のレンズ43及び位相型光学素子42で平行光束化された光束は、アパーチャ44により所望の光束幅に切り取られ(図15の201)、シリンドリカルレンズ209により副走査方向にのみ集束され、ポリゴンミラー213の偏向反射面位置に、主走査方向に長い線像として結像する。なお、本発明の位相型光学素子42はシリンドリカルレンズ209の代わりに用いることも可能であり、その場合にはシリンドリカルレンズ209は省くことができる。
【0073】
fθレンズ2181〜2184は、主走査方向にはポリゴンミラー213の回転に伴って各感光体面上でビームが等速に移動するようにパワーを持たせた非円弧面形状となし、トロイダルレンズ220とともにポリゴンミラー213の面倒れ補正機能をなし、fθレンズ2181〜2184を通過した後、折り返しミラー224で反射され、トロイダルレンズ220に入射し、さらに折返しミラー227で反射され、各感光体ドラム101〜104にスポット状に結像し、第1〜第4の光走査手段として、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各画像の潜像を形成する。本実施例では、4つの感光体上を同時に走査し、4色の画像を同時に形成することができる。
【0074】
fθレンズ2181,2182,2183,2184は全て同一形状のレンズであり、各感光体対し1つのfθレンズが対応している。2181と2182(2183と2184)は副走査方向に重ねて保持されている。
【0075】
各光走査手段では、ポリゴンミラー213から感光体面に至る各光路長が一致するように、また、等間隔で配列された各感光体ドラム101〜104に対する入射位置、入射角が等しくなるように複数枚の折り返しミラーが配置される。
本発明の位相型光学素子を光走査装置に適用することで、被走査面(感光体面)におけるビームスポット径の変動を小さくすることができる。
【0076】
上記のような構成の光走査装置において、本発明の位相型光学素子は、ポリゴンミラー(光偏向器)213より前側に設けるのが良い。そうすることで、被走査面の全ての位置において、同じ機能を付与することができる。
【0077】
[実施例12:第16、第17の手段の実施例]
次に、本発明の位相型光学素子を光源ユニットに用いた光走査装置を多色画像形成装置に展開した実施例を示す。
図18に本発明に係る光走査装置を用いた多色対応の画像形成装置の一構成例を示す。図中の符号111Y,111M,111C,111Kは、転写ベルト118に沿って並設された感光体ドラムであり、図中の矢印方向に回転される。各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kの周囲には、帯電装置112Y,112M,112C,112K(図では帯電ローラによる接触式のものを示しているが、この他、帯電ブラシや、非接触式のコロナチャージャ等を用いることもできる)、実施例11で説明したような構成の本発明の光走査装置113、各色の現像装置114Y,114M,114C,114K、転写装置(転写チャージャ、転写ローラ、転写ブラシ等)115Y,115M,115C,115K、クリーニング装置116Y,116M,116C,116Kが配設されている。また、図中の符号117は定着装置、119は記録紙等のシート状記録媒体Sを積載した給紙カセット、120は給紙ローラ、121は分離ローラ、122は搬送ローラ、123はレジストローラを示している。
【0078】
感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kは潜像形成手段である光走査装置113により画像情報に応じて強度変調された光ビームが露光され、静電潜像が形成される。この露光工程を行う光走査装置113の基本的な構成は実施例11で説明した通りであり、各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kに対応して4つの光走査装置を配置しても良いが、図18の例では、図15〜17と同様に1つの偏向手段で4系統のマルチビームを振り分けて走査する構成である。すなわち、図18に示す光走査装置113では、4つの感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kにそれぞれ対応するための4つの光源ユニットとシリンドリカルレンズ、偏向手段である1つのポリゴンミラー、4系統の光学系(fθレンズ、折り返しミラー、トロイダルレンズ等)を備えており、1つの偏向手段で4系統の光ビームを左右に振り分けて走査し、4系統の光学系で各光ビームを各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kに照射する構成である。
【0079】
各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kに形成された静電潜像は、イエロー(Y)現像装置114Y、マゼンタ(M)現像装置114M、シアン(C)現像装置114C、ブラック(K)現像装置114Kによって現像され、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像として顕像化される。また、この現像工程にタイミングを合わせて給紙カセット119からシート状記録媒体Sが給紙ローラ120と分離ローラ121により1枚ずつ給紙され、搬送ローラ122を経てレジストローラ123に至る。そして、上記の現像工程で顕像化された各感光体ドラム111Y,111M,111C,111K上のトナー像が転写位置に来るタイミングに合わせてレジストローラ123によりシート状記録媒体Sが転写ベルト118に送り出され、転写ベルト118によりシート状記録媒体Sが担持されて各色の転写位置に順次搬送される。そして、転写ベルト118を挟んで各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kに対向して配置された転写装置115Y,115M,115C,115Kにより転写バイアスが印加され、各感光体ドラム111Y,111M,111C,111K上の各色のトナー像がシート状記録媒体Sに順次重ね合わせて転写される。シート状記録媒体S上に転写された4色重ね合わせのトナー画像(カラー画像)は定着装置117によって熱及び圧力を加えることにより定着される。そして、トナー画像を定着されたシート状記録媒体Sは装置外の図示しない排紙部に排出される。また、トナー画像転写後の各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kはクリーニング装置116Y,116M,116C,116Kのクリーニング部材(ブレード、ブラシ等)によりクリーニングされて残留トナーや紙粉が除去される。
【0080】
なお、図18に示す画像形成装置では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれか1色の画像を形成する単色モード、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれか2色の画像を重ねて形成する2色モード、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれか3色の画像を重ねて形成する3色モード、上記のように4色の重ね画像を形成するフルカラーモードを有し、これらのモードを図示しない操作部にて指定して実行することで単色、多色、フルカラーの画像形成が可能である。
【0081】
また、図18に示す構成の画像形成装置では、各色の作像部で帯電→露光→現像→転写という工程を経てシート状記録媒体S上に多色画像形成を行なうものであるが、各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kからシート状記録媒体Sに直接転写する方式に換えて、中間転写ベルト等の中間転写媒体を用い、各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kから中間転写ベルトに1次転写して各色の重ね画像を形成した後、中間転写ベルトからシート状記録媒体Sに一括して2次転写する構成の、中間転写方式の画像形成装置としてもよい。
【0082】
以上のように、本発明に係る画像形成装置では、各色の作像部で帯電→露光→現像→転写という工程を経てシート状記録媒体S上に多色画像形成を行なうものであるが、本発明の位相型光学素子を用いた光走査装置を上記の画像形成装置に展開することで、各感光体ドラム上でのビームスポット径の変動を抑えることができる。従って、出力画像のドット径の変動を抑えることができるため、ドット径の揃った高画質な画像を提供することができる。また、各感光体ドラム上におけるビームスポット径が安定化するということは、複数あるプロセス制御条件のうちの1つが安定化するということを意味する。従って、プロセス制御頻度を低減することができ、省エネルギー等の環境負荷の低減が可能である。
【0083】
なお、上記の実施例では、多色(カラー)画像形成装置を例に上げて説明したが、単色の画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。
また、本発明の位相型光学素子や光源ユニットは、レーザを用いる光学系、例えば、光ディスク装置のピックアップユニットや、レーザ加工装置、レーザ計測装置等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】深度余裕を拡大する原理を説明するための光学系の概略構成図である。
【図2】図1に示す光学系に位相型光学素子がないときの像面上(焦点位置)におけるビームプロファイル(光軸からの距離に対する規格化強度)及び深度(レンズ面からの距離に対するビームスポット径)を示す図である。
【図3】図1に示す光学系に位相型光学素子を用いたときの実施例を示す図であり、(a)は位相型光学素子の一例を示す平面図及び断面図、(b)、(c)は像面上(焦点位置)におけるビームプロファイル(光軸からの距離に対する規格化強度)及び深度(レンズ面からの距離に対するビームスポット径)を示す図である。
【図4】位相型光学素子で深度余裕拡大機能を実現するための位相分布の例を示す図である。
【図5】従来の回折レンズ(パワーが有るタイプ)の構造例を示す図である。
【図6】従来の回折レンズ(パワーが無いタイプ)の構造例を示す図である。
【図7】本発明の一実施例を示す図であり、回折レンズに深度余裕拡大機能を付与した位相型光学素子の構造例を示す図である。
【図8】本発明の別の実施例を示す図であり、回折レンズに深度余裕拡大機能を付与した位相型光学素子の構造例を示す図である。
【図9】回折レンズの輪帯の形状例を示す図である。
【図10】階段状の位相型光学素子の構造例を示す図である。
【図11】本発明の別の実施例を示す図であり、階段状の位相型光学素子に深度余裕拡大機能を一体化した位相型光学素子の構造例を示す図である。
【図12】本発明の別の実施例を示す図であり、階段状の位相型光学素子に深度余裕拡大機能を一体化した位相型光学素子の構造例を示す図である。
【図13】本発明の位相型光学素子を用いた光源ユニットの実施例を示す概略構成図である。
【図14】本発明の位相型光学素子を用いてサイドローブのピーク強度を増大させることを説明するための図である。
【図15】本発明の位相型光学素子を用いた光源ユニットを画像形成装置の光走査装置に展開した実施例を示す図である。
【図16】図15の光走査装置に用いられる光源ユニットの構成例を示す図である。
【図17】本発明に係る光走査装置の構成例を示す概略断面図である。
【図18】多色(カラー)画像形成装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図19】図1に示す光学系において、位相型光学素子を用いないときと、位相型光学素子を用いたときの、レンズ面から57mmの位置におけるビームプロファイルのシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
1:アパーチャ
2:位相型光学素子
3:レンズ
10:回折レンズに深度余裕拡大機能を付与した構造の位相型光学素子
11:回折レンズ
12:2番目の輪帯(不連続領域)
13:不連続領域
20,30:位相型光学素子に深度余裕拡大機能を付与した位相型光学素子
20’,30’:位相型光学素子に深度余裕拡大機能を付与した位相型光学素子
21,31:階段状の位相型光学素子
22,32:不連続領域
23,33:不連続領域
41:半導体レーザ(光源)
42,42−1,42−2:位相型光学素子
43:レンズ
44:アパーチャ
101〜104:感光体ドラム(被走査面)
105:転写ベルト
111,111Y,111M,111C,111K:感光体ドラム(像担持体)
112,112Y,112M,112C,112K:帯電装置
113:光走査装置
114,114Y,114M,114C,114K:現像装置
115,115Y,115M,115C,115K:転写装置
116,116Y,116M,116C,116K:クリーニング装置
117:定着装置
118:転写ベルト
119:給紙カセット
120:給紙ローラ
121:分離ローラ
122:搬送ローラ
123:レジストローラ
209:シリンドリカルレンズ
213:ポリゴンミラー(偏向手段)
220:トロイダルレンズ
224,227:折り返しミラー
250:光源ユニット
2181〜2184:fθレンズ
S:シート状記録媒体(転写媒体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル複写機、レーザプリンタ、レーザプロッタ、レーザファクシミリ、光ピックアップ、レーザ加工装置等に用いられる光源ユニットに用いる位相型光学素子と、その位相型光学素子を用いた光源ユニット、及び、その光源ユニットを用いた光走査装置、及び、その光走査装置を備えたデジタル複写機、レーザプリンタ、レーザプロッタ、レーザファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置に用いられる光走査装置において、環境変動による像面位置ずれ低減のため、回折レンズが用いられている(特許文献1〜3等)。
例えば特許文献1には、充分な精度を保って保持出来る形状のレンズを実現し、更に温度変化によるピント位置ずれを抑制できる光学系を実現することにより、低コストで良好な性能を持つ、デジタル複写機、レーザプリンタ、レーザファクシミリ等の光走査装置を提供することを課題として、「半導体レーザからなる光源と、該光源からの光束をカップリングするカップリング光学系と、該カップリング光学系からの光束を主走査方向は平行光とし、副走査方向は偏向器に集束させる光束とする第1光学系と、該第1光学系からの光束を主走査方向に偏向させる偏向器と、該偏向器により偏向された光束を集光させる走査光学系と、を備えた光走査装置であって、前記カップリング光学系を構成する全てのレンズの材質を樹脂とし、該レンズの少なくとも1面に回折光学面を備えたことを特徴とする光走査装置」が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、温度変化時にも性能の安定した安価なレーザー走査装置を提供することを課題として、「レーザー光を発するレーザー光源と、入射してきたレーザー光を主走査方向に偏向させる偏向器と、前記レーザー光源から射出されたレーザー光を主走査方向についてはほぼ平行光にし副走査方向については前記偏向器の偏向面近傍で集光させる光源光学系と、前記偏向器により偏向されたレーザー光を再び集光させる走査光学系と、を備えたレーザー走査装置であって、前記光源光学系が樹脂で構成された1つの光学素子から成り、その光学素子が、回転対称軸を持たない少なくとも1面の反射面と、2面の透過面と、を有することを特徴とするレーザー走査装置」が記載されている。
【0004】
さらに特許文献3には、環境温度変動と半導体レーザの波長変動に強い、高精細印字に適したコンパクトな光走査装置及びそれを用いた画像形成装置を得ることを課題として、「光源手段と、該光源手段からの光束を光偏向手段に導光する光学手段と、該光偏向手段からの光束を被走査面に導光する結像光学系と、を有し、該光偏向手段の回動動作に基いて該被走査面を光走査する光走査装置において、該光学手段は1以上の面に回折部を有しており、所定の条件式を満足することを特徴とする光走査装置」が記載されている。
【0005】
また、ピックアップ光学系においても、単一の対物レンズで複数の波長(例えば、青、赤、赤外)を互換するためや収差補正のため、回折光学素子が用いられている(特許文献4、5等)。
例えば特許文献4には、3つの波長に対して互換を達成しつつ、トラッキングによるコマ収差の劣化を軽減できる集光光学素子及び光ピックアップ装置を提供することを課題として、「保護基板厚t1〜t3の第1〜第3光ディスクに対して波長λ1〜λ3の光束を用いて情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に用いられる集光光学素子において、少なくとも1つの光学面が光軸を中心とした同心円状の複数の領域に分割され、第3光ディスクに対して有限共役系で再生及び/又は記録を行なう場合の光学系倍率をm3と規定したとき、波長λ3の光束に対する集光光学素子の焦点距離f3が、
0.01<|m3|×(t3−t1)/f3<0.07
を満たすことを特徴とする集光光学素子」が記載されている。
【0006】
また、特許文献5には、ホログラムと対物レンズから成る複合対物レンズにより、青色光ビームに対応した基材厚約0.1mmのBDと、赤色光ビームに対応した基材厚約0.6mmのDVDとの安定かつ高精度な互換再生記録を可能にすることを課題として、「ホログラムと屈折型レンズからなる複合対物レンズであって、前記ホログラムは、少なくとも一部領域内に形成された階段状断面形状を有する格子を備え、前記階段状断面形状の段差は単位段差d1の整数倍であり、前記単位段差d1は、390nm〜415nmの範囲内にある波長λ1を有する第1光ビームに対して約1波長の光路差を与える段差であり、前記格子の一周期は、前記ホログラムの光軸側から外周側に向かって前記単位段差d1の0倍、2倍、1倍、3倍という順番の高さの階段からなることを特徴とする複合対物レンズ」が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−258392公報
【特許文献2】特開2002−287062公報
【特許文献3】特開2004−126192公報
【特許文献4】特開2006−12218公報
【特許文献5】特開2005−129227公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、デジタル複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置の出力画像の画質向上が市場で求められている。出力画像の画質向上のためには、ビームスポット径の安定化が必要不可欠である。そこで上記の従来技術に開示されているような回折レンズを用いることにより、温度変動時のビームスポット径が安定化するため、出力画像の画質向上が可能である。しかし、回折レンズで補正できるのは、温度変動の影響のみである。従って、振動や装置本体の歪み等によって生じるビームスポット径の変動に対しては効果がない。
【0009】
今後、更なるビームスポット径の安定化を目指すためには、深度余裕(許容するビームスポット径以下となる光軸方向の距離)を拡大することができればよい、つまり、ビームスポット径が通常よりも広がりにくくすることができれば良い。
【0010】
しかし、深度余裕dとビームスポット径w(波長:λ)には以下の関係、
d ∝ w^2/λ
があり、深度余裕を拡大すると、ビームスポット径は太くなる。ビームスポット径が太くなると、画像の解像度が低下するため、画質は低下してしまう。
【0011】
また、ピックアップ光学系で用いられる、単一の対物レンズで複数の波長(例えば、青、赤、赤外)を互換するための回折光学素子や、収差補正のための回折光学素子においても、深度余裕について上記の関係式が成り立つ。
近年の記録密度の高密度化に伴い、ビームスポット径が小さくなってきているため、深度余裕は減少する方向であり、性能安定性の低下や高コスト化が懸念されている。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、環境変動による像面位置ずれの低減や、単一の対物レンズで複数の波長(例えば、青、赤、赤外)を互換するためや収差補正のために用いられている回折レンズや回折光学素子(以下、これらを併せて回折光学素子と呼ぶ)に、ビームスポット径を太くすることなく深度余裕を拡大できる機能(深度余裕拡大機能と言う)を、コストアップなしで付与し、ビームスポット径の更なる安定化を目指すことができる位相型光学素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記位相型光学素子を用いた光源ユニット、光走査装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明では以下のような技術的手段を採っている。
本発明の第1の手段は、光学素子の光学面を複数の領域に分割することで、該光学面を不連続にするとともに、分割部における隣り合う領域間の位相差は、使用する波長に対して2πの整数倍となるように設定した位相型光学素子において、前記光学素子の一部に不連続領域を設け、前記不連続領域と周辺部との位相差が、使用する波長に対して2πとは異なるように設定したことを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の手段は、第1の手段の位相型光学素子において、前記不連続領域部分は、前記分割部であることを特徴とする。
また、本発明の第3の手段は、第1の手段の位相型光学素子において、前記不連続領域は、前記複数の領域のうちの1つの領域の内部か、もしくは複数の領域に跨るように、少なくとも1箇所に設けることを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の手段は、第1の手段の位相型光学素子において、前記複数の領域の内部を階段状の面で構成し、前記不連続領域は、前記階段状の面であることを特徴とする。
また、本発明の第5の手段は、第1の手段の位相型光学素子において、前記複数の領域の内部を階段状の面で構成し、前記不連続領域は、前記階段状の面の一部に設けることを特徴とする。
【0016】
本発明の第6の手段は、第1〜第6のいずれか1つの手段の位相型光学素子において、前記不連続領域と周辺部との位相差は、使用する波長に対してπの奇数倍であることを特徴とする。
また、本発明の第7の手段は、第1〜第6のいずれか1つの手段の位相型光学素子において、前記複数の領域は帯状の領域であり、光軸を中心とした同心円状であるか、もしくは、光軸を中心とした楕円状であるか、もしくは直線状であることを特徴とする。
【0017】
本発明の第8の手段は、位相型光学素子であって、光学素子の光学面に階段状の面を有し、該階段状の面の高さは、所定の単位量の整数倍に設定するとともに、前記光学素子の一部に、周辺部との高さの差が、前記単位量よりも大きく、且つ、所定の波長に対する位相差が2πではない不連続部分を設けることを特徴とする。
【0018】
本発明の第9の手段は、第8の手段の位相型光学素子において、前記不連続部分は、前記階段状の面であることを特徴とする。
また、本発明の第10の手段は、第8の手段の位相型光学素子において、前記不連続部分は、前記階段状の面の一部に設けることを特徴とする。
さらに本発明の第11の手段は、第8〜第10のいずれか1つの手段の位相型光学素子において、前記周辺部との高さの差は、使用する波長に対してπの奇数倍であることを特徴とする。
【0019】
本発明の第12の手段は、光源ユニットであって、光源と、第1〜第11のいずれか1つの手段の位相型光学素子とを有することを特徴とする。
また、本発明の第13の手段は、光源と、該光源からの発散光を平行光に変換するレンズと、前記平行光の一部のみを透過するアパーチャと、請求項1〜11のいずれか1項に記載の位相型光学素子とを有する光源ユニットであって、前記光源ユニットから射出される光を集光光学素子で集光したときの焦点位置におけるビームプロファイルの第1サイドローブピーク強度は、前記位相型光学素子がないと仮定したときに、前記光源ユニットから射出される光を集光光学素子で集光したときの焦点位置におけるビームプロファイルの第1サイドローブピーク強度よりも大きくなるように、前記位相型光学素子の位相分布を設定することを特徴とする。
【0020】
本発明の第14の手段は、光走査装置であって、第12または第13の手段の光源ユニットと、該光源ユニットからの光ビームを偏向し走査する偏向手段と、該偏向手段により走査された走査ビームを被走査面に結像する走査レンズと、を有することを特徴とする。
また、本発明の第15の手段は、第14の手段の光走査装置において、前記位相型光学素子は、前記偏向手段よりも前記光源側に設けることを特徴とする。
【0021】
本発明の第16の手段は、像担持体と、該像担持体に光ビームを照射して静電潜像を形成する光走査装置と、該光走査装置により前記像担持体上に形成された静電潜像を現像剤で顕像化する現像手段と、前記像担持体上に顕像化された画像を、転写媒体に転写する転写手段とを有し、画像を出力する画像形成装置において、前記光走査装置として、第14または第15の手段の光走査装置を用いたことを特徴とする。
【0022】
本発明の第17の手段は、並設された複数の像担持体と、該複数の像担持体の各々に光ビームを照射して静電潜像を形成する光走査装置と、該光走査装置により各像担持体上に形成された静電潜像を色の異なる現像剤で顕像化する現像手段と、前記各像担持体上に顕像化された各色の画像を、転写媒体に重ね合わせて転写する転写手段とを有し、多色またはカラー画像を出力する画像形成装置において、前記光走査装置として、第14または第15の手段の光走査装置を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の位相型光学素子では、環境変動による像面位置ずれの低減や、単一の対物レンズで複数の波長(例えば、青、赤、赤外)を互換するためや収差補正のために用いられている回折光学素子に、ビームスポット径を太くすることなく深度余裕を拡大できる機能(深度余裕拡大機能)を、コストアップなしで付与することができ、ビームスポット径の更なる安定化を目指すことができる。
従って、本発明の位相型光学素子を用いることで、温度変動の影響によるビームスポット径変動の低減だけでなく、さらにビームの深度余裕を拡大することにより、装置の変形や振動等に起因するビームスポット径の変動を抑制することができる。さらに本発明の位相型光学素子は、コストアップなしに、且つ、信頼性のある作製技術を用いて実現することができるため、低コストで信頼性の高い位相型光学素子を実現できる。
また、本発明の位相型光学素子を用いることで、深度余裕の拡大量を最大限に引き出すことができる。
さらにまた、本発明の位相型光学素子を用いることで、工場出荷前のビームスポット径の太りを低減できるだけでなく、装置の変形や振動等に伴う光学素子の位置ずれ等、工場出荷後に発生する要因によるビームスポット径の変動(太り)を低減できる。
【0024】
本発明の光源ユニットでは、上記の効果を有する本発明の位相型光学素子を用いることで、温度変動の影響によるビームスポット径変動の低減機能と深度余裕の拡大機能を有した光源ユニットや、工場出荷前のビームスポット径の太りの低減機能と、深度余裕の拡大機能を有した光源ユニットや、もしくは上記全ての機能を兼ね備えた光源ユニットを実現できる。また、本発明の光源ユニットを用いることで、深度余裕の拡大機能を有する光学系を実現することができる。
【0025】
本発明の光走査装置では、上記の効果を有する本発明の光源ユニットを用いることで、被走査面上でのビームスポット径の変動を低減することができる。また、本発明の光源ユニットを用いることで、被走査面の全ての位置において、同じ機能を付与できる。
【0026】
本発明の画像形成装置では、上記の効果を有する本発明の光走査装置を用いることで、ドット径の揃った高品質な画像を提供することができる。
また、本発明の光走査装置を用いることで、ドット径の揃った高品質なカラー画像を提供することができる。また、複数あるプロセス制御条件のうちの1つを安定化することができるため、プロセス制御頻度を低減することができ、省エネルギー等の環境負荷の低減を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の各手段に対応する実施例を、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0028】
[実施例1:第1、第2の手段の実施例]
まず、ビームスポット径を太くすることなく、深度余裕を拡大する方法について説明する。
ビームスポット径を太くすることなく、深度余裕を拡大するためには、回折を上手く制御すれば実現できる。つまり回折光学素子を用いて実現することができる。このことについて、以下で説明する。
なお、本願における回折光学素子とは、光学素子の凹凸や屈折率分布により、ビームの位相分布を制御するものであり、以下では、「位相型光学素子」と呼ぶ。
【0029】
図1は、深度余裕を拡大する原理を説明するための光学系の概略構成図である。
図1に示すように、図示しない光源からの均一強度の入射波(平面波)をアパーチャ1で所望のビーム幅に切り取り、アパーチャ1に密接して(距離0)設けられた位相型光学素子2により所望の位相分布をビームに付与し、焦点距離fの理想レンズ3により焦点位置(ピント面)に結像させる。アパーチャ(位相型光学素子の有効径でも代用可能である)は、レンズの前側焦点位置に設置している。なお、各種パラメータは以下のとおりである。
・アパーチャ:直径930μmの円形
・レンズ:f=50mm
・波長:λ=632.8nm
【0030】
なお、以下では説明の簡略化のため、入射波は均一強度として説明を行うが、実際の半導体レーザ等の強度分布はガウス分布である。しかし、以下で述べることは、入射波がガウスビームであるときにも成り立つ。
【0031】
まず、位相型光学素子を設けないときの焦点位置におけるビームプロファイルのシミュレーション結果を図2(a)に示す。ピーク強度を1に規格化している。このときのサイドローブピーク強度は0.016(ピーク強度の1.6%)になっている。図2(b)は、横軸にレンズ面からの距離、縦軸に1/e^2ビームスポット径をとったシミュレーション結果である。焦点位置におけるビームスポット径は56.4μmであり、最小ビームスポット径の105%まで許容したときの深度余裕は8.9mmとなり、サイドローブのピーク強度は1.6%である。
【0032】
次に位相型光学素子を用いたときの実施例(シミュレーション結果)を図3に示す。波長は632.8nmとして使用している。図3において、(a)は位相型光学素子2の平面図と断面図を併記したものであり、位相型光学素子2の位相分布を表している。図中の高さdのリング状の段差部分は、使用する波長に対してπの位相を与えるように設定した(上段の平面図の白部が0位相、リング状の斜線部がπ位相)。図3の(b)は焦点位置におけるビームプロファイルを表し(ピーク強度を1に規格化している)、(c)は横軸にレンズ面からの距離、縦軸に1/e^2ビームスポット径をとったグラフを示している。また、図3(a)は円形(リング状)の位相分布であり、アパーチャの中心と位相型光学素子の中心は一致させている。焦点位置におけるビームスポット径は51.8μmであり、最小ビームスポット径の105%まで許容したときの深度余裕は12.9mmとなり、サイドローブのピーク強度は5.8%である。
【0033】
図2(b)と図3(c)を比較すると、ビームスポット径を太くすることなく深度余裕を拡大できているのがわかる。深度余裕が拡大できるのは、サイドローブピーク強度を増大させているためであり、図3(a)の位相型光学素子2はそのように設計されている。
サイドローブのピーク強度を増大させることで、深度余裕を拡大できることを以下で説明する。
【0034】
図1のレンズ3の焦点位置では、メインローブと第1サイドローブは位相が反転しており、境界付近で急激に位相が反転する(近軸理論(フレネル回折等)で考えると)。メインローブ光とサイドローブ光の境界では、メインローブ光とサイドローブ光が打ち消しあう条件(位相が反転しており、強度が等しい)となり、強度が0となるところが存在する。この状態で、焦点位置から伝搬すると、メインローブ光、サイドローブ光ともに発散光になるため、焦点位置では平面であった波面(位相)が、発散球面波の波面(位相)に徐々に近づいていく。従って、メインローブ光とサイドローブ光の境界付近の位相の切り替わりが、徐々になだらかになっていく。2つの光波が打ち消しあい0になる条件は、位相が反転して、且つ強度が等しいことであるため、メインローブ光とサイドローブ光の境界付近では、焦点面からの伝搬とともに、2つの光波が打ち消しあう条件からずれていくため、強度が0から徐々に高くなる。そのため、焦点位置では0であったメインローブ光とサイドローブ光の境界の光強度は0ではなくなる。メインローブ光とサイドローブ光の境界の光強度が高くなると、それに伴ってメインローブ光も太ってしまう。
【0035】
そこで、位相型光学素子2を用いて、焦点位置におけるサイドローブのピーク強度を増大させると、2つの光波が打ち消しあう範囲が広くなるため、焦点位置からの伝搬とともにメインローブ光とサイドローブ光の境界の強度が増大する割合が遅くなる。従って、メインローブ光の太りは、サイドローブ光の強度が弱いときに比べて抑制され、深度余裕が増大する。以上が、位相型光学素子を用いて深度余裕を拡大できる原理である。
【0036】
ここで、図19に、レンズ面から57mmの位置におけるビームプロファイルのシミュレーション結果を示す。図19(a)は位相型光学素子を用いないとき、図19(b)は位相型光学素子を用いたときを示している。図19より、位相型光学素子を用いたときの方が、デフォーカス時のプロファイルの劣化が抑制されており、その結果、深度余裕が拡大されているのがわかる。図19(a)におけるサイドローブピーク強度は14.9%(図19(a)ではサイドローブのピーク位置は明確に認識できないが、前後のデフォーカス位置でのビームプロファイルにおけるサイドローブのピーク位置より類推した)であり、図19(b)におけるサイドローブピーク強度は8.1%であり、位相型光学素子を用いたときの方がデフォーカス時のサイドローブピーク強度が小さい。
このように、位相型光学素子を用いて、焦点位置におけるビームプロファイルのサイドローブピーク強度を、位相型光学素子を用いないときに比べて大きくするとともに、焦点位置以外の任意の位置(デフォーカス位置)におけるビームプロファイルのサイドローブピーク強度を、位相型光学素子を用いるときの方が小さくなるように位相型光学素子を設計することで、深度余裕を拡大できる。
【0037】
なお、上記では、図3(a)に示すような同心円状の位相分布を例に説明したが、それに限定するものではない。焦点位置において、サイドローブのピーク強度を増大させるような位相分布であれば良い。そのような位相分布として望ましいのは、位相型光学素子の中心を基準として、対称形状の位相分布を少なくとも一部に設けることである。ここで、対称とは、線対称と点対称(回転対称を含む)の両方を含む(線対称のときは、中心を通る線に対して)。その深度余裕拡大機能を実現するための位相分布の例を図4に示す。図4(a)〜(c)は、位相型光学素子2の中心に対して点対称な形状であり、図4(d)は、対称形状の位相分布をピクセル構造で実現したものである。図4(a)〜(d)は中心を通る或る線に対して線対称とも考えることができる。図4(e)は、一部に点対称な形状を有し、直交する2方向で構造が異なるものである。本発明の位相型光学素子では、図4(a)〜(e)のように全ての位相分布が中心に対して点対称もしくは線対称にするのが最も望ましい。
【0038】
上記において、位相型光学素子として2段階の位相(2段階の高さ)分布を考え説明したが、これに限定するものではない。3段階以上の位相分布を用いることで、設計自由度を向上でき、深度余裕の拡大量を増大することができる。一方、作製の容易さという観点では、位相分布の段階数は少ない方が望ましい。2段階の位相で実現するときは、位相分布は0とπで実現するのが最も良い。4段階で実現するときは、位相分布は0、π/2、π、π/4で実現するのがよい。そうすることで、少ない段数の位相分布のときでも、深度余裕の拡大機能を最大限に引き出すことができる。
【0039】
次に、回折レンズについて説明する。
従来用いられている回折レンズの構造(パワーが有るタイプ)を図5に示す。図5の上段の図は回折レンズの光学面を正面から見た平面図であり、(a)〜(c)は回折レンズの中央部の断面図である。
図5(a)は、通常のレンズの形状を輪帯状に分割し、各輪帯の高さがhになるように折り返した構造である。図5(b)は、同図(a)の輪帯を直線で近似した形状(鋸波状)であり、図5(c)は、同図(a)の輪体を階段形状で近似したものである。図5(a)〜(c)における構造は、パワーを有し、入射したビームを集光(もしくは発散)させることができる。
【0040】
次に図6にパワーを有さない回折レンズの構造を示す。図6の上段の図は回折レンズの光学面を正面から見た平面図であり、下段の図は回折レンズの中央部の断面図である。パワーを有さない回折レンズの場合、各輪帯は、光軸に対して垂直な形状となっている。
ここで、図5,6における各輪帯の高さhは、使用する波長に対して、媒質中で2πの整数倍の位相差となるように設定される。
【0041】
上記のような回折レンズを用いることで、温度変動時の焦点位置変動を抑制できる。また、光ディスク装置等に用いられるピックアップ光学系では、回折レンズは1つの対物レンズを複数の波長で互換するための素子として新たに設けられたり、対物レンズ上に設けられたりする。
【0042】
上記のような回折レンズにより、温度変動時の焦点位置変動を抑制することができるため、例えばデジタル複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置の光走査装置に利用すれば、被走査面である感光体(像担持体)上でのビームスポット径が安定化するため、出力画像におけるドットの大きさが安定し、出力画像を高画質化することができる。しかし、回折レンズの効果があるのは、温度変動による影響のみであり、その他の影響、例えば、装置の変形や振動等に伴う光学素子の位置ずれ等の影響によるビームスポット径の変動に対しては効果がない。温度変動以外の影響によるビームスポット径変動を低減するためには、上記で説明した位相型光学素子を用いてビームの深度余裕を拡大するのがよい。
【0043】
上記で説明した深度余裕を拡大する位相型光学素子を、別の光学素子として新たに設けることでも良いが、位相型光学素子とレンズ(回折レンズ)の距離を離すと、位相型光学素子で発生する高次回折光がレンズ(回折レンズ)でケラれる恐れがあり、位相型光学素子の深度余裕拡大機能を最大限に引き出せない恐れがある。それを防止しようとすると、レンズ(回折レンズ)を大きくする必要があり、レンズ(回折レンズ)が大型化してしまう恐れがある。そのため、位相型光学素子とレンズ(回折レンズ)を一体化するのが最も良い。
【0044】
深度余裕を拡大する位相型光学素子(例えば図3(a))と回折レンズ(例えば図5,6)を一体化する方法として、回折レンズの一部に不連続点を設け、前記不連続領域と周辺部との位相差が、使用する波長において2πと異なるように設定することで実現できる。回折レンズに深度余裕を拡大する機能を付与した位相型光学素子の実施例を図7に示す。図7の上段の図は位相型光学素子10の光学面を正面から見た平面図であり、(a)〜(c)は位相型光学素子の中央部の断面図である。
【0045】
図7の実施例の位相型光学素子10では、上記の不連続領域は、図5に示したような構造の回折レンズ11の輪帯と同一にしている。すなわち内側から2番目(斜線で示す)の輪帯12の高さが、図5に示した構造の回折レンズに対して、dだけ高くなっている。ここで、dは、使用する波長に対して2πの整数倍の位相差にならないようにする。こうすると、2番目の輪帯12は他の輪帯に対して不連続領域となり、高さdと使用する波長に対応して位相差を付与することができる。すなわち、図3(a)と図5の構造を一体化することができ、回折レンズ11に深度余裕を拡大する機能(位相差を付与した輪帯12)を一体化した位相型光学素子10を実現することができる。
【0046】
回折レンズ11は、通常、金型をバイトで切削して所望の形状した後、樹脂を成形して作製する。図7のような構造にすると、信頼性の高い従来と全く同じ作製方法を用いることができるため、信頼性の高い位相型光学素子10を提供することができ、また、金型作製の際にもコストアップはないというメリットがある。
【0047】
図7では、2番目の輪帯12を不連続領域として、その高さを変えることにより、他の輪帯に対して位相差を付与したが、2番目の輪帯12にのみ新たに材料を塗布することや、2番目の輪帯12の屈折率を変えることによっても、回折レンズ11に深度余裕を拡大する機能(位相差を付与した輪帯12)を一体化した位相型光学素子10を実現することができる。
【0048】
また、上記の実施例では、回折レンズ11に深度余裕を拡大する機能(位相差を付与した輪帯12)を一体化した位相型光学素子10として、図3(a)に示すような、1本のリング状の位相分布で、2段階の位相(2段階の高さに相当)のものを考えたが、これに限定するわけではない。複数のリング状の位相分布を設けても良いし、3段階以上の複数の段差を用いてもよい。複数の段差を設ける方が設計自由度が向上するため、深度余裕の拡大量を増大できる。
【0049】
[実施例2:第3の手段の実施例]
図8に、別の実施例として、回折レンズ11の輪帯の内部に不連続点を新たに設ける実施例を示す。図8の上段の図は位相型光学素子10の光学面を正面から見た平面図であり、(a)〜(c)は位相型光学素子10の中央部の断面図である。
図8では、内側から1番目の輪帯の内部に不連続点を新たに設け、不連続領域(斜線部)13を設けている。図7の実施例の方法では、図3(a)に示した位相型光学素子の斜線部分を図5に示すような回折レンズの輪帯の一部に一致させる必要があるため、設計の自由度が制限される恐れがある。そこで図8のような構造にすることで、設計自由度を向上でき、深度余裕の拡大量を増大できる。
【0050】
図8(a),(b)では、内側から1番目の輪帯の内部に不連続領域13を設けた例を示しているが、複数の輪帯にまたがるように設けても良い。
なお、図8(a),(b)では、不連続領域13の頂上付近の面形状は、周りの面形状と滑らかにつながるような形状で書いおり(高さの不連続量を取り除いたときに)、そうするのが最も望ましいが、光軸と垂直な面とすることも可能である。
【0051】
[実施例3:第4、第5の手段の実施例]
回折レンズ11の輪帯を階段状の面で構成する際は、図8(c)に示すように、不連続領域13を、階段状の面の1つもしくは複数の面に対応させるのが良い。
【0052】
また、図8(c)では、不連続領域13を、階段状の面の1つもしくは複数の面に対応させているため、設計自由度を制限する恐れがある。階段状の面の途中で更に段差を設け、不連続領域を設けることで、設計自由度の制限をなくすことができる。
【0053】
[実施例4:第6の手段の実施例]
実施例1〜3に示した位相型光学素子(図7または図8)において、深度余裕を拡大するための位相分布(高さ分布に相当)として、2段階の高さで実現するのが最も作製が容易で望ましい。その際には、不連続領域と周辺部との位相差(図7、図8において、高さdに対応した位相差)は、使用する波長に対してπの奇数倍付近にするのがよく、そうすることで、深度余裕拡大機能を最大限に引き出すことができる。
【0054】
[実施例5:第7の手段の実施例]
上記において、図7または図8に示した構造の位相型光学素子10では、回折レンズ11の輪帯は同心円状として説明した。しかし、同心円に限定するのではなく、例えば図9(a),(b)に示すように、楕円形状や、直線形状にしても良い。楕円形状や、直線形状は、直交する2方向の光学倍率が異なる光学システムに適用する際に有用である。
また、回折レンズとして、図5の代わりに図6のようなものにすることも可能であり、上記の実施例1〜4と全く同様に考えることができる。
上記の実施例では、不連続領域はリング状であるときを説明したが、これに限定するわけではなく、図4に示した位相分布の例と同様に、リング状とは異ならせることも可能である。
【0055】
[実施例6:第8、第9の手段の実施例]
次に、階段状の位相型光学素子と、深度余裕を拡大する位相型光学素子とを一体化した構造について説明する。
ここでいう「階段状の位相型光学素子」とは、図5(c)や図6とは異なり、輪帯構造がないものや、輪帯間の位相差が使用する波長に対して2πになっていないものを指す。このような階段状の位相型光学素子は、例えば収差補正(球面収差等)等の目的で使用される。このような収差補正素子を用いることにより、収差によるビームスポット径の太りを抑制できる。また、上記の「階段状の位相型光学素子」は、ピックアップ光学系において、複数の単一の対物レンズで複数の波長(例えば、青、赤、赤外)を互換するためにも用いられる。
なお、上記の「階段状の位相型光学素子」は、通常、ほとんどパワーはないと見なせる。
【0056】
図10に、階段状の位相型光学素子の実施例を示す。図10(a)に示す位相型光学素子21は球面収差の補正を想定したものであり、図10(b)に示す位相型光学素子31はコマ収差の補正を想定したものである。図10において、各階段状の面の高さはhの整数倍になっており、hは、例えば補正したい収差量と階段の段数等より決定され、使用したい波長に対して、2πではない位相に対応する。
【0057】
上記の収差補正素子のような位相型光学素子21,31は、初期(工場出荷時)には効果を発揮するが、しかし、装置の変形や振動等に伴う光学素子の位置ずれ等、工場出荷後に発生する要因によるビームスポット径の変動(太り)に対しては効果がない。従って、前述の深度余裕を拡大する位相型光学素子を設けることで、工場出荷後においてもビームスポット径の変動を低減できる。
【0058】
図11(a),(b)は、階段状の位相型光学素子(例えば図10(a),(b)の位相型光学素子21,31)に深度余裕を拡大する位相型光学素子(例えば図3(a)と同様の位相分布)を一体化した構造の位相型光学素子20,30の実施例を示している。そのメリットは、前述の位相型光学素子として回折レンズを用いたときと同じである。
【0059】
図11(a),(b)において、斜線で示すように、周辺部との高さの差dは、各階段状の面の高さの単位量hより大きい不連続領域22,32を設けている。このように、周辺部との高さの差が大きい不連続領域22,32を設けることで、従来の収差補正素子のような位相型光学素子21,31に、深度余裕を拡大する機能を付与した位相型光学素子20,30を実現することができる(周辺部との高さの差dが単位量hより小さいときには、斜線部の領域22,32は収差補正として機能し、dがhより大きくなると、斜線部の領域22,32は深度余裕の拡大として機能する)。また、回折レンズと同様に、信頼性の高い従来と全く同じ作製方法を用いることができるため、信頼性の高い位相型光学素子を提供することができる。
【0060】
また、上記実施例では、深度余裕を拡大する位相型光学素子として、図3(a)に示すような、1本のリング状の位相分布で、2段階の位相(2段階の高さに相当)のものを考えたが、これに限定するわけではない。複数のリング状の位相分布を設けても良いし、3段階以上の複数の段差を用いてもよい。複数の段差を設ける方が設計自由度が向上するため、深度余裕の拡大量を増大できる。
【0061】
[実施例7:第10の手段の実施例]
図12(a),(b)に、位相型光学素子の別の実施例として、階段状の面の一部に新たに不連続部分を設け、周辺部との高さの差dが、使用波長に対して2πと異なるように設定した構造の位相型光学素子20’,30’の実施例を示す。図12(a),(b)においては、図11(a),(b)の階段状の面の途中に新たに段差dの不連続領域23,33を設けており、この段差dは、使用波長に対して2πと異なるように設定している。図11(a),(b)の方法では、図3(a)に示した斜線部分を図11(a),(b)の1つの階段状の面に一致させる必要があるため、設計の自由度が制限される恐れがある。そこで図12(a),(b)のような構造にすることで、設計自由度を向上でき、深度余裕の拡大量を増大できる。
【0062】
[実施例8:第11の手段の実施例]
深度余裕を拡大するための位相分布(高さ分布に相当)として、2段階の高さで実現するのが最も作製が容易で望ましい。その際には、不連続領域と周辺部との位相差(図11または図12において、高さdに対応した位相差)は、使用する波長に対してπの奇数倍付近にするのがよく、そうすることで、深度余裕拡大機能を最大限に引き出すことができる。
【0063】
上記の実施例では、高さ(もしくは屈折率)のみを制御した位相型光学素子について説明してきたが、上記の位相型光学素子の一部の振幅透過率を2次元的に制御すると、光利用効率が低下するというデメリットはあるものの、同等以上の深度拡大効果を実現できるため、本発明の範疇に含める。
【0064】
[実施例9:第12の手段の実施例]
上記の実施例の位相型光学素子を光源ユニットに展開した実施例を図13に示す。上記の実施例で説明した位相型光学素子は、光学素子の1面(1つの光学面)で実現できるため、もう1つの光学面に、レンズ面や、上記で説明した第2の位相型光学素子を設けることが可能である。
【0065】
図13(a)は、光源である半導体レーザ41とパワーのある位相型光学素子42を設けた光源ユニットの実施例である。パワーは、位相型光学素子42にパワーを与えても良いし、位相型光学素子の反対面にレンズ面を用いても良いし、パワーのある位相型光学素子とレンズ面を両方用いても良い。
また、図13(b)は光源である半導体レーザ41と2つの位相型光学素子を用いた光源ユニットの実施例である。第2の位相型光学素子42−2は第1の位相型光学素子42−1と別に設けても良いし、1つの光学素子の両面に一体化してもよい。
【0066】
上記により、温度変動の影響によるビームスポット径変動の低減機能と深度余裕の拡大機能を有した光源ユニットや、工場出荷前のビームスポット径の太りの低減機能と、深度余裕の拡大機能を有した光源ユニットや、温度変動の影響によるビームスポット径変動の低減機能と工場出荷前のビームスポット径の太りの低減機能と深度余裕の拡大機能等を集積した光源ユニットを実現することができる。
【0067】
[実施例10:第13の手段の実施例]
次に上記の実施例の位相型光学素子を光源ユニットに展開した別の実施例を図14に示す。この光源ユニットは、光源である半導体レーザ41と、半導体レーザ41からの発散光を平行光に変換するレンズ43と、平行光の一部のみを透過するアパーチャ44と、上記の実施例で説明した本発明の位相型光学素子42とを有している。
光源41からの発散光をレンズ43により平行光束化し、アパーチャ44によって一部を切り取ったとき(レンズの有効径で一部を切り取ったときも含む)、アパーチャ44の回折像(ファーフィールドパターン)は、サイドローブを伴ったビームになる。例えば、円形のアパーチャを設けたときには図2(a)のようなプロファイル(横軸の数値は無視する)がファーフィールドパターンとして得られる(集光レンズを用いれば、レンズの焦点位置でファーフィールドパターンが得られる)。円形アパーチャの回折像の第1サイドローブのピーク強度は、メインローブ光のピーク強度の約1.6%であり、矩形アパーチャのときは約4.7%である。図14に示すように位相型光学素子42を設けたときは、位相型光学素子42の焦点位置における回折像(位相型光学素子にパワーがないときはファーフィールドパターン)のメインローブ光のピーク強度に対する第1サイドローブ光のピーク強度の割合が、アパーチャの回折像(ファーフィールドパターン)よりも増大させることで、深度余裕を拡大することができる。
【0068】
[実施例11:第14、第15の手段の実施例]
本発明の位相型光学素子を用いた光源ユニットを、デジタル複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置に用いられる光走査装置に展開した実施例を図15〜17に示す。
図15はフルカラー画像形成装置に展開した光走査装置の例であり、図16は図15の符号250で示す光源ユニット部の拡大図である。図15の実施例では、光走査装置は、光源ユニット250と、該光源ユニットからの光ビームを偏向し走査する偏向手段213と、該偏向手段により走査された走査ビームを被走査面(感光体)101〜104に結像する走査レンズ2181〜2184とを有しており、偏向手段であるポリゴンミラー213に対して対向する方向に2ステーション分ずつ走査している。また、図15では、説明の簡略化のため、光源ユニットや走査レンズ以降の光学系は、1ステーション分のみを図示している。なお、図16は光り走査装置の断面図である。
【0069】
図15〜17に示す実施例では、被走査面である4つの感光体ドラム101,102,103,104を転写ベルト105の移動方向に沿って配列し、順次異なる色のトナー像を転写することでカラー画像を形成する画像形成装置において、各光走査装置を一体的に構成し単一のポリゴンミラー213で全ての光ビームを走査する。
【0070】
まず、図16に示す構成の光源ユニット250の半導体レーザ41からの発散光は、位相型光学素子42により深度余裕拡大機能を付与され、平行光束化される。図16では、光学素子の一方の面に本発明のパワーのない位相型光学素子42を設けて、もう一方の面にレンズ(正のパワー)43を一体に設け、光源側にレンズ面がくるように設置している。位相型光学素子42には、なるべく平行に光束を入射させる方が回折効率(光利用効率)が向上できるため、図16のように設置するのが最も望ましい。図16の光源ユニットの実施例の他のバリエーションとして、以下の表1に例を示すが、これに限定するものではない。なお、収差補正という観点では、バリエーション1が最も望ましい。
【0071】
【表1】
【0072】
図15では1つの光源ユニット250のみ図示してあるが、光源ユニット250は4つの感光体ドラム101〜104に対応して4つ設けられており、各光源ユニット250のレンズ43及び位相型光学素子42で平行光束化された光束は、アパーチャ44により所望の光束幅に切り取られ(図15の201)、シリンドリカルレンズ209により副走査方向にのみ集束され、ポリゴンミラー213の偏向反射面位置に、主走査方向に長い線像として結像する。なお、本発明の位相型光学素子42はシリンドリカルレンズ209の代わりに用いることも可能であり、その場合にはシリンドリカルレンズ209は省くことができる。
【0073】
fθレンズ2181〜2184は、主走査方向にはポリゴンミラー213の回転に伴って各感光体面上でビームが等速に移動するようにパワーを持たせた非円弧面形状となし、トロイダルレンズ220とともにポリゴンミラー213の面倒れ補正機能をなし、fθレンズ2181〜2184を通過した後、折り返しミラー224で反射され、トロイダルレンズ220に入射し、さらに折返しミラー227で反射され、各感光体ドラム101〜104にスポット状に結像し、第1〜第4の光走査手段として、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各画像の潜像を形成する。本実施例では、4つの感光体上を同時に走査し、4色の画像を同時に形成することができる。
【0074】
fθレンズ2181,2182,2183,2184は全て同一形状のレンズであり、各感光体対し1つのfθレンズが対応している。2181と2182(2183と2184)は副走査方向に重ねて保持されている。
【0075】
各光走査手段では、ポリゴンミラー213から感光体面に至る各光路長が一致するように、また、等間隔で配列された各感光体ドラム101〜104に対する入射位置、入射角が等しくなるように複数枚の折り返しミラーが配置される。
本発明の位相型光学素子を光走査装置に適用することで、被走査面(感光体面)におけるビームスポット径の変動を小さくすることができる。
【0076】
上記のような構成の光走査装置において、本発明の位相型光学素子は、ポリゴンミラー(光偏向器)213より前側に設けるのが良い。そうすることで、被走査面の全ての位置において、同じ機能を付与することができる。
【0077】
[実施例12:第16、第17の手段の実施例]
次に、本発明の位相型光学素子を光源ユニットに用いた光走査装置を多色画像形成装置に展開した実施例を示す。
図18に本発明に係る光走査装置を用いた多色対応の画像形成装置の一構成例を示す。図中の符号111Y,111M,111C,111Kは、転写ベルト118に沿って並設された感光体ドラムであり、図中の矢印方向に回転される。各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kの周囲には、帯電装置112Y,112M,112C,112K(図では帯電ローラによる接触式のものを示しているが、この他、帯電ブラシや、非接触式のコロナチャージャ等を用いることもできる)、実施例11で説明したような構成の本発明の光走査装置113、各色の現像装置114Y,114M,114C,114K、転写装置(転写チャージャ、転写ローラ、転写ブラシ等)115Y,115M,115C,115K、クリーニング装置116Y,116M,116C,116Kが配設されている。また、図中の符号117は定着装置、119は記録紙等のシート状記録媒体Sを積載した給紙カセット、120は給紙ローラ、121は分離ローラ、122は搬送ローラ、123はレジストローラを示している。
【0078】
感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kは潜像形成手段である光走査装置113により画像情報に応じて強度変調された光ビームが露光され、静電潜像が形成される。この露光工程を行う光走査装置113の基本的な構成は実施例11で説明した通りであり、各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kに対応して4つの光走査装置を配置しても良いが、図18の例では、図15〜17と同様に1つの偏向手段で4系統のマルチビームを振り分けて走査する構成である。すなわち、図18に示す光走査装置113では、4つの感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kにそれぞれ対応するための4つの光源ユニットとシリンドリカルレンズ、偏向手段である1つのポリゴンミラー、4系統の光学系(fθレンズ、折り返しミラー、トロイダルレンズ等)を備えており、1つの偏向手段で4系統の光ビームを左右に振り分けて走査し、4系統の光学系で各光ビームを各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kに照射する構成である。
【0079】
各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kに形成された静電潜像は、イエロー(Y)現像装置114Y、マゼンタ(M)現像装置114M、シアン(C)現像装置114C、ブラック(K)現像装置114Kによって現像され、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像として顕像化される。また、この現像工程にタイミングを合わせて給紙カセット119からシート状記録媒体Sが給紙ローラ120と分離ローラ121により1枚ずつ給紙され、搬送ローラ122を経てレジストローラ123に至る。そして、上記の現像工程で顕像化された各感光体ドラム111Y,111M,111C,111K上のトナー像が転写位置に来るタイミングに合わせてレジストローラ123によりシート状記録媒体Sが転写ベルト118に送り出され、転写ベルト118によりシート状記録媒体Sが担持されて各色の転写位置に順次搬送される。そして、転写ベルト118を挟んで各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kに対向して配置された転写装置115Y,115M,115C,115Kにより転写バイアスが印加され、各感光体ドラム111Y,111M,111C,111K上の各色のトナー像がシート状記録媒体Sに順次重ね合わせて転写される。シート状記録媒体S上に転写された4色重ね合わせのトナー画像(カラー画像)は定着装置117によって熱及び圧力を加えることにより定着される。そして、トナー画像を定着されたシート状記録媒体Sは装置外の図示しない排紙部に排出される。また、トナー画像転写後の各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kはクリーニング装置116Y,116M,116C,116Kのクリーニング部材(ブレード、ブラシ等)によりクリーニングされて残留トナーや紙粉が除去される。
【0080】
なお、図18に示す画像形成装置では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれか1色の画像を形成する単色モード、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれか2色の画像を重ねて形成する2色モード、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれか3色の画像を重ねて形成する3色モード、上記のように4色の重ね画像を形成するフルカラーモードを有し、これらのモードを図示しない操作部にて指定して実行することで単色、多色、フルカラーの画像形成が可能である。
【0081】
また、図18に示す構成の画像形成装置では、各色の作像部で帯電→露光→現像→転写という工程を経てシート状記録媒体S上に多色画像形成を行なうものであるが、各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kからシート状記録媒体Sに直接転写する方式に換えて、中間転写ベルト等の中間転写媒体を用い、各感光体ドラム111Y,111M,111C,111Kから中間転写ベルトに1次転写して各色の重ね画像を形成した後、中間転写ベルトからシート状記録媒体Sに一括して2次転写する構成の、中間転写方式の画像形成装置としてもよい。
【0082】
以上のように、本発明に係る画像形成装置では、各色の作像部で帯電→露光→現像→転写という工程を経てシート状記録媒体S上に多色画像形成を行なうものであるが、本発明の位相型光学素子を用いた光走査装置を上記の画像形成装置に展開することで、各感光体ドラム上でのビームスポット径の変動を抑えることができる。従って、出力画像のドット径の変動を抑えることができるため、ドット径の揃った高画質な画像を提供することができる。また、各感光体ドラム上におけるビームスポット径が安定化するということは、複数あるプロセス制御条件のうちの1つが安定化するということを意味する。従って、プロセス制御頻度を低減することができ、省エネルギー等の環境負荷の低減が可能である。
【0083】
なお、上記の実施例では、多色(カラー)画像形成装置を例に上げて説明したが、単色の画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。
また、本発明の位相型光学素子や光源ユニットは、レーザを用いる光学系、例えば、光ディスク装置のピックアップユニットや、レーザ加工装置、レーザ計測装置等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】深度余裕を拡大する原理を説明するための光学系の概略構成図である。
【図2】図1に示す光学系に位相型光学素子がないときの像面上(焦点位置)におけるビームプロファイル(光軸からの距離に対する規格化強度)及び深度(レンズ面からの距離に対するビームスポット径)を示す図である。
【図3】図1に示す光学系に位相型光学素子を用いたときの実施例を示す図であり、(a)は位相型光学素子の一例を示す平面図及び断面図、(b)、(c)は像面上(焦点位置)におけるビームプロファイル(光軸からの距離に対する規格化強度)及び深度(レンズ面からの距離に対するビームスポット径)を示す図である。
【図4】位相型光学素子で深度余裕拡大機能を実現するための位相分布の例を示す図である。
【図5】従来の回折レンズ(パワーが有るタイプ)の構造例を示す図である。
【図6】従来の回折レンズ(パワーが無いタイプ)の構造例を示す図である。
【図7】本発明の一実施例を示す図であり、回折レンズに深度余裕拡大機能を付与した位相型光学素子の構造例を示す図である。
【図8】本発明の別の実施例を示す図であり、回折レンズに深度余裕拡大機能を付与した位相型光学素子の構造例を示す図である。
【図9】回折レンズの輪帯の形状例を示す図である。
【図10】階段状の位相型光学素子の構造例を示す図である。
【図11】本発明の別の実施例を示す図であり、階段状の位相型光学素子に深度余裕拡大機能を一体化した位相型光学素子の構造例を示す図である。
【図12】本発明の別の実施例を示す図であり、階段状の位相型光学素子に深度余裕拡大機能を一体化した位相型光学素子の構造例を示す図である。
【図13】本発明の位相型光学素子を用いた光源ユニットの実施例を示す概略構成図である。
【図14】本発明の位相型光学素子を用いてサイドローブのピーク強度を増大させることを説明するための図である。
【図15】本発明の位相型光学素子を用いた光源ユニットを画像形成装置の光走査装置に展開した実施例を示す図である。
【図16】図15の光走査装置に用いられる光源ユニットの構成例を示す図である。
【図17】本発明に係る光走査装置の構成例を示す概略断面図である。
【図18】多色(カラー)画像形成装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図19】図1に示す光学系において、位相型光学素子を用いないときと、位相型光学素子を用いたときの、レンズ面から57mmの位置におけるビームプロファイルのシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
1:アパーチャ
2:位相型光学素子
3:レンズ
10:回折レンズに深度余裕拡大機能を付与した構造の位相型光学素子
11:回折レンズ
12:2番目の輪帯(不連続領域)
13:不連続領域
20,30:位相型光学素子に深度余裕拡大機能を付与した位相型光学素子
20’,30’:位相型光学素子に深度余裕拡大機能を付与した位相型光学素子
21,31:階段状の位相型光学素子
22,32:不連続領域
23,33:不連続領域
41:半導体レーザ(光源)
42,42−1,42−2:位相型光学素子
43:レンズ
44:アパーチャ
101〜104:感光体ドラム(被走査面)
105:転写ベルト
111,111Y,111M,111C,111K:感光体ドラム(像担持体)
112,112Y,112M,112C,112K:帯電装置
113:光走査装置
114,114Y,114M,114C,114K:現像装置
115,115Y,115M,115C,115K:転写装置
116,116Y,116M,116C,116K:クリーニング装置
117:定着装置
118:転写ベルト
119:給紙カセット
120:給紙ローラ
121:分離ローラ
122:搬送ローラ
123:レジストローラ
209:シリンドリカルレンズ
213:ポリゴンミラー(偏向手段)
220:トロイダルレンズ
224,227:折り返しミラー
250:光源ユニット
2181〜2184:fθレンズ
S:シート状記録媒体(転写媒体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子の光学面を複数の領域に分割することで、該光学面を不連続にするとともに、分割部における隣り合う領域間の位相差は、使用する波長に対して2πの整数倍となるように設定した位相型光学素子において、
前記光学素子の一部に不連続領域を設け、前記不連続領域と周辺部との位相差が、使用する波長に対して2πとは異なるように設定したことを特徴とする位相型光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の位相型光学素子において、
前記不連続領域部分は、前記分割部であることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項3】
請求項1に記載の位相型光学素子において、
前記不連続領域は、前記複数の領域のうちの1つの領域の内部か、もしくは複数の領域に跨るように、少なくとも1箇所に設けることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項4】
請求項1に記載の位相型光学素子において、
前記複数の領域の内部を階段状の面で構成し、前記不連続領域は、前記階段状の面であることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項5】
請求項1に記載の位相型光学素子において、
前記複数の領域の内部を階段状の面で構成し、前記不連続領域は、前記階段状の面の一部に設けることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項6】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相型光学素子において、
前記不連続領域と周辺部との位相差は、使用する波長に対してπの奇数倍であることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相型光学素子において、
前記複数の領域は帯状の領域であり、光軸を中心とした同心円状であるか、もしくは、光軸を中心とした楕円状であるか、もしくは直線状であることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項8】
光学素子の光学面に階段状の面を有し、該階段状の面の高さは、所定の単位量の整数倍に設定するとともに、前記光学素子の一部に、周辺部との高さの差が、前記単位量よりも大きく、且つ、所定の波長に対する位相差が2πではない不連続部分を設けることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項9】
請求項8に記載の位相型光学素子において、
前記不連続部分は、前記階段状の面であることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項10】
請求項8に記載の位相型光学素子において、
前記不連続部分は、前記階段状の面の一部に設けることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の位相型光学素子において、
前記周辺部との高さの差は、使用する波長に対してπの奇数倍であることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項12】
光源と、請求項1〜11のいずれか1項に記載の位相型光学素子とを有することを特徴とする光源ユニット。
【請求項13】
光源と、該光源からの発散光を平行光に変換するレンズと、前記平行光の一部のみを透過するアパーチャと、請求項1〜11のいずれか1項に記載の位相型光学素子とを有する光源ユニットであって、
前記光源ユニットから射出される光を集光光学素子で集光したときの焦点位置におけるビームプロファイルの第1サイドローブピーク強度は、前記位相型光学素子がないと仮定したときに、前記光源ユニットから射出される光を集光光学素子で集光したときの焦点位置におけるビームプロファイルの第1サイドローブピーク強度よりも大きくなるように、前記位相型光学素子の位相分布を設定することを特徴とする光源ユニット。
【請求項14】
請求項12または13に記載の光源ユニットと、
該光源ユニットからの光ビームを偏向し走査する偏向手段と、
該偏向手段により走査された走査ビームを被走査面に結像する走査レンズと、
を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項15】
請求項14に記載の光走査装置において、
前記位相型光学素子は、前記偏向手段よりも前記光源側に設けることを特徴とする光走査装置。
【請求項16】
像担持体と、該像担持体に光ビームを照射して静電潜像を形成する光走査装置と、該光走査装置により前記像担持体上に形成された静電潜像を現像剤で顕像化する現像手段と、前記像担持体上に顕像化された画像を、転写媒体に転写する転写手段とを有し、画像を出力する画像形成装置において、
前記光走査装置として、請求項14または15に記載の光走査装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
並設された複数の像担持体と、該複数の像担持体の各々に光ビームを照射して静電潜像を形成する光走査装置と、該光走査装置により各像担持体上に形成された静電潜像を色の異なる現像剤で顕像化する現像手段と、前記各像担持体上に顕像化された各色の画像を、転写媒体に重ね合わせて転写する転写手段とを有し、多色またはカラー画像を出力する画像形成装置において、
前記光走査装置として、請求項14または15に記載の光走査装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
光学素子の光学面を複数の領域に分割することで、該光学面を不連続にするとともに、分割部における隣り合う領域間の位相差は、使用する波長に対して2πの整数倍となるように設定した位相型光学素子において、
前記光学素子の一部に不連続領域を設け、前記不連続領域と周辺部との位相差が、使用する波長に対して2πとは異なるように設定したことを特徴とする位相型光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の位相型光学素子において、
前記不連続領域部分は、前記分割部であることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項3】
請求項1に記載の位相型光学素子において、
前記不連続領域は、前記複数の領域のうちの1つの領域の内部か、もしくは複数の領域に跨るように、少なくとも1箇所に設けることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項4】
請求項1に記載の位相型光学素子において、
前記複数の領域の内部を階段状の面で構成し、前記不連続領域は、前記階段状の面であることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項5】
請求項1に記載の位相型光学素子において、
前記複数の領域の内部を階段状の面で構成し、前記不連続領域は、前記階段状の面の一部に設けることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項6】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相型光学素子において、
前記不連続領域と周辺部との位相差は、使用する波長に対してπの奇数倍であることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相型光学素子において、
前記複数の領域は帯状の領域であり、光軸を中心とした同心円状であるか、もしくは、光軸を中心とした楕円状であるか、もしくは直線状であることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項8】
光学素子の光学面に階段状の面を有し、該階段状の面の高さは、所定の単位量の整数倍に設定するとともに、前記光学素子の一部に、周辺部との高さの差が、前記単位量よりも大きく、且つ、所定の波長に対する位相差が2πではない不連続部分を設けることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項9】
請求項8に記載の位相型光学素子において、
前記不連続部分は、前記階段状の面であることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項10】
請求項8に記載の位相型光学素子において、
前記不連続部分は、前記階段状の面の一部に設けることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の位相型光学素子において、
前記周辺部との高さの差は、使用する波長に対してπの奇数倍であることを特徴とする位相型光学素子。
【請求項12】
光源と、請求項1〜11のいずれか1項に記載の位相型光学素子とを有することを特徴とする光源ユニット。
【請求項13】
光源と、該光源からの発散光を平行光に変換するレンズと、前記平行光の一部のみを透過するアパーチャと、請求項1〜11のいずれか1項に記載の位相型光学素子とを有する光源ユニットであって、
前記光源ユニットから射出される光を集光光学素子で集光したときの焦点位置におけるビームプロファイルの第1サイドローブピーク強度は、前記位相型光学素子がないと仮定したときに、前記光源ユニットから射出される光を集光光学素子で集光したときの焦点位置におけるビームプロファイルの第1サイドローブピーク強度よりも大きくなるように、前記位相型光学素子の位相分布を設定することを特徴とする光源ユニット。
【請求項14】
請求項12または13に記載の光源ユニットと、
該光源ユニットからの光ビームを偏向し走査する偏向手段と、
該偏向手段により走査された走査ビームを被走査面に結像する走査レンズと、
を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項15】
請求項14に記載の光走査装置において、
前記位相型光学素子は、前記偏向手段よりも前記光源側に設けることを特徴とする光走査装置。
【請求項16】
像担持体と、該像担持体に光ビームを照射して静電潜像を形成する光走査装置と、該光走査装置により前記像担持体上に形成された静電潜像を現像剤で顕像化する現像手段と、前記像担持体上に顕像化された画像を、転写媒体に転写する転写手段とを有し、画像を出力する画像形成装置において、
前記光走査装置として、請求項14または15に記載の光走査装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
並設された複数の像担持体と、該複数の像担持体の各々に光ビームを照射して静電潜像を形成する光走査装置と、該光走査装置により各像担持体上に形成された静電潜像を色の異なる現像剤で顕像化する現像手段と、前記各像担持体上に顕像化された各色の画像を、転写媒体に重ね合わせて転写する転写手段とを有し、多色またはカラー画像を出力する画像形成装置において、
前記光走査装置として、請求項14または15に記載の光走査装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−70792(P2008−70792A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251451(P2006−251451)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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