説明

位相変調型空間光変調器を用いたレーザ顕微鏡

【課題】高い光の利用効率で所望のパターンの光を対象物に照射し、且つ、光の照射に伴って生じる対象物の動的な変化を高い時間分解能で観測する技術を提供することを課題とする。
【解決手段】レーザ光源(2、14)から射出された照明光を、対物レンズ(12)の瞳位置と光学的に共役な位置に配置された位相変調型空間光変調器(5)と、空間光変調器(5)とは異なる照明光路上に配置された標本(13)を走査する2次元走査手段(16)へ同時に入射させる。そして、空間光変調器(5)で変調された照明光と2次元走査手段(16)で偏向された照明光とを光路合成手段(8)で合成し、対物レンズ(12)により標本(13)に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ顕微鏡の技術に関し、特に、位相変調型空間光変調器を用いたレーザ顕微鏡の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各々が独立に制御される複数の光変調素子(以降、ピクセル素子と記す。)を有する空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator、以降、SLMと記す。)を利用して、光の空間的分布及び強度(以降、パターンと記す。)を任意に制御し、所望のパターンの光を対象物に照射する技術が知られている。
【0003】
現在までにさまざまな種類の空間光変調器が提案されているが、デジタルマイクロミラー(DMD:Digital Micromirror Device)などに代表されるような、ピクセル素子が光の強度を変調する空間光変調器(以降、強度変調型SLMと記す。)や、ピクセル素子が光の位相を変調する空間光変調器(以降、位相変調型SLMと記す。)の普及が進んでいる。
【0004】
強度変調型SLMは、強度変調型SLM上に形成した光の強度のパターンを対象物に直接投影することにより、所望のパターンの光を対象物に照射することができる。しかしながら、強度変調型SLMでは、光の強度のパターンは、入射光をピクセル素子で選択的に除去することにより形成されるため、光の利用効率が低く、対象物に照射される光密度も低くなってしまうという課題が指摘されている。
【0005】
これに対して、位相変調型SLMは、レーザ光源などのコヒーレント光源を用いた上で、位相変調により入射光の波面形状を変化させる。これにより、対象物上での光の強度分布を変化させることが可能であり、所望のパターンの光を形成することができる。位相変調型SLMでは、光の位相分布の変化により所望のパターンが形成されるため、原理的には光の損失はほとんど生じない。このため、強度変調型SLMと比較して、高い光の利用効率を実現できる。特許文献1では、位相変調型SLMを用いたパターン形成装置や光ピンセット装置が開示されている。
【0006】
このような、光の損失を抑えて高い光の利用効率を実現することで、任意のパターンの光を対象物に高い光密度で照射することができる位相変調型SLMは、蛍光顕微鏡などのレーザ顕微鏡の分野にも応用されている。特に、非常に高い光密度が必要とされる非線形光学現象を利用する蛍光顕微鏡への応用は有効であり、非特許文献1では、非線形顕微鏡の一種である2光子励起顕微鏡が開示されている。
【0007】
非特許文献1に開示された顕微鏡は、位相変調型SLMを用いることで、光の損失を抑えながら、対象物に任意のパターンの光を照射すること(以降、光パターン照射と記す。)ができる。このため、対象物を走査することなく、対象物の複数部位を、非線形現象の発生に必要な高い光密度の光で、同時に照射することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−72280号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Volodymyr Nikolenko、他5名、“SLM microscope:scanless two‐photon imaging and photostimulation with spatial light modulators”、Frontiers in Neural Circuits、19 December 2008、Volume2、Article5、p.1−14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、蛍光顕微鏡を利用した蛍光観測では、光パターン照射に伴って生じる対象物の動的な変化(対象物に含まれる蛍光物質の動的な変化を含む)、例えば、フォトアクティベーション、フォトコンバージョン、FRAP(Fluorescence Recovery After Photobleaching)、FLIP(Fluorescence Loss In Photobleaching)などを観測したいという要求が存在する。この要求に応えるためには、光パターン照射領域とは独立した、対象物の任意の領域を画像化する機能が必要となる。
なお、このような対象物の動的な変化を観測したいという要求は、蛍光顕微鏡に限られるものではなく、他のレーザ顕微鏡でも同様に存在する。
【0011】
非特許文献1に開示された顕微鏡は、走査手段としてガルバノメータスキャナを有している。このため、通常のレーザ走査型顕微鏡(LSM:laser scanning microscope、以降、LSMと記す。)として利用することも可能であり、対象物の任意の領域を画像化することができる。
【0012】
しかしながら、非特許文献1に開示された顕微鏡では、光パターン照射のための位相変調型SLMと、対象物の画像化のための走査手段とが、同一光路上に配置されている。このため、光パターン照射と同時に、光パターン照射とは独立した、対象物の任意の領域を画像化することができない。したがって、光パターン照射から画像化までの間にタイムラグが生じ、その結果、対象物の動的な変化に対する観測の時間分解能が制限されてしまう。
【0013】
以上のような実情を踏まえ、本発明では、高い光の利用効率で所望のパターンの光を対象物に照射し、且つ、光の照射に伴って生じる対象物の動的な変化を高い時間分解能で観測する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様は、照明光を射出するレーザ光源と、照明光を標本に照射する対物レンズと、レーザ光源と対物レンズの間の第1の照明光路と第2の照明光路とを合成する光路合成手段と、第1の照明光路上であって対物レンズの瞳位置と光学的に共役な位置に配置された、照明光の位相を変調する位相変調型空間光変調器と、第2の照明光路上に配置された、対物レンズの光軸と直交する平面内で標本を走査する2次元走査手段と、を含むレーザ顕微鏡を提供する。
【0015】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のレーザ顕微鏡において、レーザ光源は、位相変調型空間光変調器へ入射する第1の照明光を射出する第1のレーザ光源と、2次元走査手段へ入射する第2の照明光を射出する第2のレーザ光源と、を含むレーザ顕微鏡を提供する。
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載のレーザ顕微鏡において、光路合成手段は、入射する光の波長に応じて、交換されるレーザ顕微鏡を提供する。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1の態様に記載のレーザ顕微鏡において、さらに、照明光を第1の照明光と第2の照明光に分割し、第1の照明光を第1の照明光路へ、また、第2の照明光を第2の照明光路へ導く照明光路分割手段を含むレーザ顕微鏡を提供する。
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載のレーザ顕微鏡において、レーザ光源と照明光路分割手段の間に、λ/4板を含むレーザ顕微鏡を提供する。
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載のレーザ顕微鏡において、レーザ光源と照明光路分割手段の間に、さらに、λ/2板を含むレーザ顕微鏡を提供する。
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載のレーザ顕微鏡において、λ/4板及びλ/2板は、光軸に対して、回転可能に配置されるレーザ顕微鏡を提供する。
【0017】
本発明の第8の態様は、第1の態様乃至第7の態様のいずれか1つに記載のレーザ顕微鏡において、さらに、第1の照明光路上であって、位相変調型空間光変調器と光路合成手段の間に、標本を、対物レンズの光軸と直交する第1の方向に走査する第1の走査手段を含むレーザ顕微鏡を提供する。
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載のレーザ顕微鏡において、第1の走査手段は、対物レンズの瞳位置と光学的に共役であるレーザ顕微鏡を提供する。
【0018】
本発明の第10の態様は、第8の態様または第9の態様に記載のレーザ顕微鏡において、第1の走査手段は、位相変調型空間光変調器が照明光の位相を変調することにより標本上に形成される照明光のパターンを、標本上で第1の方向へ平行移動させるレーザ顕微鏡を提供する。
【0019】
本発明の第11の態様は、第9の態様または第10の態様に記載のレーザ顕微鏡において、さらに、第1の照明光路上であって、位相変調型空間光変調器と光路合成手段の間に、標本を、第1の方向と直交する第2の方向に走査する第2の走査手段を含むレーザ顕微鏡を提供する。
本発明の第12の態様は、第11の態様に記載のレーザ顕微鏡において、第2の走査手段は、第1の走査手段と光学的に共役であるレーザ顕微鏡を提供する。
【0020】
本発明の第13の態様は、第1の態様乃至第12の態様のいずれか1つに記載のレーザ顕微鏡において、さらに、照明光を照射することにより標本から生じる検出光を、照明光から分離して検出光路に導く検出光路分離手段と、検出光路上に配置された、検出光を検出する光検出器と、を含むレーザ顕微鏡を提供する。
【0021】
本発明の第14の態様は、第13の態様に記載のレーザ顕微鏡において、光検出器は、標本と光学的に共役な位置に配置された、検出光の強度の空間的な分布を検出する2次元センサであるレーザ顕微鏡を提供する。
【0022】
本発明の第15の態様は、第13の態様に記載のレーザ顕微鏡において、光検出器は、対物レンズの瞳位置と光学的に共役な位置近傍に配置されるレーザ顕微鏡を提供する。
【0023】
本発明の第16の態様は、第14の態様または第15の態様に記載のレーザ顕微鏡において、検出光路分離手段は、対物レンズと2次元走査手段との間に配置されるレーザ顕微鏡を提供する。
【0024】
本発明の第17の態様は、第13の態様に記載のレーザ顕微鏡において、さらに、検出光路分離手段と光検出器の間の、標本と光学的に共役な位置に配置された共焦点絞りを含み、検出光路分離手段は、レーザ光源と2次元走査手段との間に配置されるレーザ顕微鏡を提供する。
【0025】
本発明の第18の態様は、第1の態様乃至第12の態様のいずれか1つに記載のレーザ顕微鏡において、さらに、標本を透過した光が入射する透過検出光学系と、照明光を照射することにより標本から生じる検出光を、透過検出光学系を介して、検出する光検出器と、を含むレーザ顕微鏡を提供する。
【0026】
本発明の第19の態様は、第1の態様乃至第18の態様のいずれか1つに記載のレーザ顕微鏡において、対物レンズと位相変調型空間光変調器との間に配置される光学系及び対物レンズで生じる、ディストーション及び倍率色収差に関する収差情報が、像高毎及び照明光の波長毎に、記憶された記憶部を含み、位相変調型空間光変調器は、記憶部から取得した収差情報を考慮して、照明光の位相を変調するレーザ顕微鏡を提供する。
【0027】
本発明の第20の態様は、第1の態様乃至第18の態様のいずれか1つに記載のレーザ顕微鏡において、さらに、対物レンズと位相変調型空間光変調器との間に配置される光学系及び対物レンズで生じる、波面収差に関する収差情報が、像高毎及び照明光の波長毎に、記憶された記憶部を含み、位相変調型空間光変調器は、記憶部から取得した収差情報を考慮して、照明光の位相を変調するレーザ顕微鏡を提供する。
【0028】
本発明の第21の態様は、第1の態様乃至第20の態様のいずれか1つに記載のレーザ顕微鏡において、位相変調型空間光変調器で位相が変調された照明光が照射された標本を撮像し、標本上に形成される照射パターンを取得する撮像手段を含み、位相変調型空間光変調器は、所望のパターンと撮像手段で取得した照射パターンとの差が小さくなるように、照明光の位相の変調を調整するレーザ顕微鏡を提供する。
【0029】
本発明の第22の態様は、第1の態様乃至第21の態様のいずれか1つに記載のレーザ顕微鏡において、複数の画素部を有し、位相変調型空間光変調器で位相が変調された第1の照明光が照射された標本を撮像し、標本上に形成された照射パターンを取得する撮像手段を含み、レーザ顕微鏡は、2次元走査手段により偏向された第2の照明光が入射する画素部の位置と、画素部に第2の照明光が入射するときの2次元走査手段の走査位置を制御するパラメータと、を関連付けて記憶するレーザ顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、高い光の利用効率で所望のパターンの光を対象物に照射し、且つ、光の照射に伴って生じる対象物の動的な変化を高い時間分解能で観測する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係るレーザ顕微鏡の構成を例示する概略図である。
【図2】実施例2に係るレーザ顕微鏡の構成を例示する概略図である。
【図3】実施例2に係るレーザ顕微鏡の構成の変形例を例示する概略図である。
【図4】実施例3に係るレーザ顕微鏡の構成を例示する概略図である。
【図5】実施例4に係るレーザ顕微鏡の構成を例示する概略図である。
【図6】実施例5に係るレーザ顕微鏡の構成を例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、各実施例について説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は、本実施例に係るレーザ顕微鏡の構成を例示する概略図である。図1に例示されるレーザ顕微鏡1は、レーザ光源であるチタンサファイアレーザから射出された赤外線領域の超短パルスレーザ光(照明光)により、2光子過程を利用して標本13を励起する2光子励起顕微鏡である。
まず、本実施例に係るレーザ顕微鏡1の構成について説明する。
【0034】
レーザ顕微鏡1は、制御部1aと、第1の照明手段L1と、第2の照明手段L2と、ダイクロイックミラー8と、結像レンズ9と、ダイクロイックミラー10と、ダイクロイックミラー11と、レーザ光を標本13に照射する対物レンズ12と、標本13を配置し、対物レンズ12の光軸方向に移動するステージ1bと、第1の検出手段D1と、第2の検出手段D2と、を含んで構成されている。
【0035】
第1の照明手段L1は、所望のパターンの光を標本13に照射する照明手段である。具体的には、赤外線領域の超短パルスレーザ光(第1の照明光)を射出するチタンサファイアレーザ2と、レーザ光の光束径を調整するビームエクスパンダ3と、プリズム型ミラー4と、所望のパターンに応じてレーザ光の位相を変調する位相変調型のSLM5と、ミラー6と、瞳リレーレンズ7とを含んで構成されている。
【0036】
なお、SLM5は、第1の照明手段L1内の第1の照明光路上であって、対物レンズ12の瞳位置と光学的に共役な位置に配置されている。SLM5としては、例えば、反射型や透過型の液晶位相変調器、ミラーの駆動により光路長差を生じさせる反射型ミラー位相変調器などを用いることができる。
【0037】
一般に、収差のない理想的なレンズ系では、結像位置と瞳位置の間にはフーリエ変換の関係が成り立ち、瞳関数をフーリエ変換することによって結像位置での強度分布が求められる。つまり、対物レンズ12の収差を無視し、対物レンズ12の焦点面に標本13が配置されているとすると、対物レンズ12の瞳位置と標本面(標本13)は、フーリエ変換の関係が成り立つ。このことから、標本面は、対物レンズ12の瞳共役位置に配置されたSLM5に対しても、フーリエ変換面であると言える。
【0038】
例えば、レーザ光の位相がSLM5で変調されず、レーザ光が位相の揃った平行光としてSLM5から射出される場合には、レーザの振幅分布のフーリエ変換によって得られる点像が、フーリエ変換面である標本13上の一点に形成される。その一方で、SLM5でレーザ光の位相を正弦格子状に変調する場合には、射出されるレーザ光がプラスマイナス1次の進行方向を有する平面波に変換され、フーリエ変換面である標本13上の異なる2点に、レーザ光を集光させることができる。
【0039】
このように、第1の照明手段L1は、SLM5での位相の変調を制御することで、標本13上に所望のパターンの光を照射することができる。具体的には、例えば、細胞など対象物の形状に合わせたパターンの光を照射することができる。その他、標本13上の一点のみに光を照射することも、多点に同時に光を照射することもできる。また、標本13上の所望の領域を均一に照明することもできる。従って、第1の照明手段L1は、刺激手段としても、通常の蛍光観察用の照明手段としても利用可能である。
【0040】
第2の照明手段L2は、チタンサファイアレーザ2とは異なる波長の赤外線レーザ光(第2の照明光)を射出するチタンサファイアレーザ14と、レーザ光の光束径を調整するビームエクスパンダ15と、対物レンズ12の光軸と直交する平面内で標本13を2次元に走査する2次元走査手段であるXYスキャナ16と、瞳リレーレンズ17と、を含んで構成されている。
【0041】
なお、チタンサファイアレーザ14も2光子励起を生じさせるため、チタンサファイアレーザ2と同様に、超短パルスレーザ光を射出する。また、XYスキャナ16は、第2の照明手段L2内の第2の照明光路上であって、対物レンズ12の瞳位置と光学的に共役な位置またはその近傍に配置されることが望ましい。XYスキャナ16としては、例えば、ガルバノミラーや、音響光学偏向素子(AOD:Acoustic Optical Deflector)などを用いることができる。
【0042】
第2の照明手段L2は、通常のレーザ走査型顕微鏡の照明手段と同様に作用するため、XYスキャナ16を制御することで、標本13上の任意の一点に光を照射することができる。このため、第2の照明手段L2は、第1の照明手段と同様に、刺激手段としても、通常の蛍光観察用の照明手段としても利用可能である。
【0043】
なお、第2の照明手段L2からの光は標本13上の一点に集光されるため、多点を同時に照射する必要がある場合や特定の形状の光を照射する必要がある場合には、第1の照明手段L1の使用がより有効である。
【0044】
第1の照明手段L1と第2の照明手段L2は、別々の光路上に設けられているため、互いに影響を及ぼすことなく、それぞれ独立に制御される。また、それぞれの照明手段から射出された照明光は、後述するダイクロックミラー8により合成されて、同時に標本13に照射される。
【0045】
このため、第1の照明手段L1と第2の照明手段L2のいずれか一方を通常の蛍光観察用の照明手段として使用し、他方を刺激手段として使用することで、刺激による標本13の動的な変化を、刺激とほぼ同時に観測することができる。
【0046】
特に、第1の照明手段L1を刺激手段とし、第2の照明手段L2を通常の蛍光観察用の照明手段として使用する場合、所望のパターンの光刺激による標本13の動的な変化を、刺激とほぼ同時に観測することができる。
【0047】
第1の検出手段D1は、赤外線領域の波長の光を遮断する赤外線カットフィルタ18(以降、IRカットフィルタと記す。)と、結像レンズ19と、蛍光を電気信号に変換する光検出器である電荷結合素子20(CCD:Charge Coupled Device、以降、CCDと記す。)と、を含んで構成されている。
【0048】
なお、CCD20は、複数の画素部を有し、標本13と光学的に共役な位置に配置された2次元センサである。このため、標本13の焦点面で生じる蛍光の強度の空間的な分布(強度分布)は、CCD20へ投影され、CCD20で検出される。
【0049】
第2の検出手段D2は、リレーレンズ21と、赤外線領域の波長の光を遮断するIRカットフィルタ22と、蛍光を電気信号に変換する光検出器である光電子増倍管23(PMT:Photomultiplier Tube、以降、PMTと記す。)と、を含んで構成されている。
【0050】
なお、PMT23は、対物レンズ12の瞳位置と光学的に共役な位置近傍に配置されることが望ましい。レーザ顕微鏡1では、リレーレンズ21により対物レンズ12の瞳がリレーされた位置近傍に配置されている。これにより、対物レンズ12の瞳がPMT23の受光面内に投影されるようにリレーレンズ21を構成することで、標本13の任意の領域から生じる蛍光を検出することができる。
制御部1aは、ステージ1b、SLM5、XYスキャナ16、CCD20、PMT23と接続され、それぞれを制御する。
【0051】
次に、レーザ光源からレーザ光(照明光)を射出し、蛍光(検出光)を検出するまでの流れについて、具体的に説明する。なお、以降では、第1の照明手段L1を刺激手段として使用し、第2の照明手段L2を蛍光観察用の照明手段として使用する場合を例に説明する。
【0052】
チタンサファイアレーザ2から射出されたレーザ光(第1の照明光)は、まず、ビームエクスパンダ3に入射し、レーザ光の光束径がSLM5のサイズに合わせて調整される。さらに、プリズム型ミラー4によりSLM5の仕様に応じた角度でSLM5に入射するように偏向されて、平行光としてSLM5へ入射する。
【0053】
位相変調型のSLM5へ入射したレーザ光は、標本13上で所望のパターンの光が形成されるように変調される。より厳密には、レーザ光の位相が変調される。その後、再びプリズム型ミラー4で偏向され、ミラー6及び瞳リレーレンズ7を介して、ダイクロイックミラー8へ入射する。
【0054】
ダイクロイックミラー8は、波長に応じて入射光を反射または透過させる光学素子である。ダイクロイックミラー8は、レーザ光源(チタンサファイアレーザ2、チタンサファイアレーザ14)と対物レンズ12の間に配置されて、SLM5が配置された第1の照明光路とXYスキャナ16が配置された第2の照明光路とを合成する光路合成手段として機能する。具体的には、ダイクロイックミラー8は、第1の照明光路を通るレーザ光(第1の照明光)を反射し、第2の照明光路を通るレーザ光(第2の照明光)を透過する特性を有している。このため、ダイクロイックミラー8に入射したレーザ光(第1の照明光)は、ダイクロイックミラー8を反射する。そして、瞳リレーレンズ7とともにSLM5を対物レンズ12の瞳に投影するリレー光学系を構成する結像レンズ9を介して、ダイクロイックミラー10へ入射する。
【0055】
ダイクロイックミラー10及びダイクロイックミラー11は、レーザ光を照射することにより標本13から生じる蛍光(検出光)を、レーザ光(照明光)から分離して検出光路に導く検出光路分離手段として機能する。なお、本実施例に係るレーザ顕微鏡1では、ダイクロイックミラー10及びダイクロイックミラー11は、対物レンズ12とXYスキャナ16の間に配置されている。より詳細には後述するが、ダイクロイックミラー10は、特定波長域の蛍光を選択的に透過させる特性を有し、ダイクロイックミラー11は、特定波長域の蛍光を選択的に反射する特性を有している。このため、ダイクロイックミラー10に入射したレーザ光は、ダイクロイックミラー10を反射し、さらに、ダイクロイックミラー11を透過して、対物レンズ12へ入射する。
【0056】
そして、レーザ光が入射した対物レンズ12が、その焦点面にSLM5による位相変調に応じた所望のパターンを形成することにより、所望のパターンのレーザ光が標本13に照射される。
【0057】
一方、チタンサファイアレーザ14から射出されたレーザ光(第2の照明光)は、まず、ビームエクスパンダ15へ入射する。そして、ビームエクスパンダ15により光束径が調整されたレーザ光が、平行光としてXYスキャナ16へ入射する。XYスキャナ16へ入射したレーザ光は、標本13の走査位置に応じた方向へ偏向され、瞳リレーレンズ17を介してダイクロイックミラー8へ入射する。
【0058】
ダイクロイックミラー8は、上述したように、第2の照明光路を通るレーザ光(第2の照明光)を透過する特性を有している。このため、ダイクロイックミラー8に入射したレーザ光(第2の照明光)は、ダイクロイックミラー8を透過する。以降、チタンサファイアレーザ14から射出されたレーザ光(第2の照明光)は、チタンサファイアレーザ2から射出されたレーザ光と同一の光路を進行し、標本13へ入射する。
【0059】
なお、瞳リレーレンズ17は、結像レンズ9とともにXYスキャナ16を対物レンズ12の瞳に投影するリレー光学系を構成している。このため、XYスキャナ16へ平行光として入射するレーザ光(第2の照明光)は、対物レンズ12の瞳に平行光として入射し、標本13上の一点に集光する。このため、XYスキャナ16により集光位置を2次元に移動することにより、標本13を走査することができる。
【0060】
このようにして、チタンサファイアレーザ2及びチタンサファイアレーザ14から射出されたレーザ光が照射された標本13では、蛍光物質が2光子過程を経て励起され、蛍光が射出される。
【0061】
刺激手段として使用される第1の照明手段L1のチタンサファイアレーザ2から射出されたレーザ光を標本13に照射して光刺激を与えると、光刺激により蛍光物質がブリーチされ、蛍光物質からの発光量が低下する。
【0062】
本実施例に係るレーザ顕微鏡1では、光刺激前から光刺激後まで、常時標本13からの蛍光を検出し続けることで、光刺激による蛍光物質からの発光量の低下やその回復などの標本13の動的な変化を観測することができる。
【0063】
この場合、ダイクロイックミラー11としては、第2の照明手段L2からの照明光により生じた蛍光を選択的に反射する特性を有するダイクロイックミラーを用いる。
【0064】
これにより、標本13から射出され、対物レンズ12を介してダイクロイックミラー11に入射した蛍光は、ダイクロイックミラー11で選択的に反射され、第2の検出手段D2に入射する。第2の検出手段D2に入射した蛍光は、リレーレンズ21及びIRカットフィルタ22を介して、リレーレンズ21により対物レンズ12の瞳がリレーされた位置近傍に配置されたPMT23へ入射する。このようにして、XYスキャナ16の走査により変化するレーザ光の集光位置の各々から生じる蛍光が検出され、標本13内で生じる蛍光量の変化を観察することができる。
【0065】
なお、IRカットフィルタ18及びIRカットフィルタ22は、光検出器での蛍光検出精度が向上させるためのものであり、標本13や対物レンズ12及びその他の光学素子を反射し、ダイクロイックミラー10を透過した赤外線レーザ光を遮断する。
【0066】
以上、本実施例に係るレーザ顕微鏡1によれば、所望のパターンの制御はSLM5で行われ、標本13の走査の制御はXYスキャナ16で行われるため、互いに影響を与えることなくそれぞれを別々に制御することができる。このため、チタンサファイアレーザ2及びチタンサファイアレーザ14からレーザ光を同時に射出することで、標本13を蛍光観察しながら、所望のパターンの光刺激を標本13に与えることができる。したがって、光刺激の前後に渡って生じる標本13の動的な変化を高い時間分解能で観測することができる。
【0067】
なお、ここでは、第1の照明手段L1を刺激手段として使用し、第2の照明手段L2を蛍光観察用の照明手段として使用する場合を例示したが、特にこれに限られない。
本実施例に係るレーザ顕微鏡1は、第1の照明手段L1を蛍光観察用の照明手段として使用し、第2の照明手段L2を刺激手段として使用することもできる。
【0068】
第1の照明手段L1は、SLM5により、例えば、標本13に含まれる細胞などの観測対象の形状に応じた光パターンを形成し、その光パターンを標本13に照射し、標本13を励起する。一方、第2の照明手段L2は、標本13上の任意の一点を刺激する。そして、第1の照明手段L1からの照明光より生じる蛍光を2次元センサであるCCD20で検出することで、標本13の動的な変化を高い時間分解能で観測してもよい。なお、この場合、ダイクロイックミラー10としては、第1の照明手段L1からの照明光により生じる蛍光を選択的に透過する特性を有するダイクロイックミラーを用いる。また、ダイクロイックミラー11は、図示しない切替機構により、照明光と蛍光を透過するフィルタに切り替えられる、または、図示しない挿脱機構により、蛍光を第1の検出手段D1へ入射させるために、光路から取り外される。
【0069】
また、本実施例に係るレーザ顕微鏡1は、第1の照明手段L1と第2の照明手段L2を、それぞれ異なる蛍光物質を励起する蛍光観察用の照明手段として使用することもできる。
【0070】
第1の照明手段L1は、SLM5により光パターンを標本13に照射することにより、標本13の所望の領域を照明して励起する。第2の照明手段は、走査手段により光の照射位置を経時的に移動させることにより、標本13の所望の領域を照明して励起する。その上で、標本13に電気などで刺激を与える。このようにして生じる標本13の動的な変化を高い時間分解能で観測してもよい。なお、この場合、ダイクロイックミラー10としては、第1の照明手段L1からの照明光により生じる蛍光を選択的に透過する特性を有するダイクロイックミラーを用い、ダイクロイックミラー11としては、第1の照明手段L1からの照明光により生じる蛍光を選択的に透過し、第2の照明手段L2からの照明光により生じる蛍光を選択的に反射する特性を有するダイクロイックミラーを用いる。
【0071】
これにより、第1の照明手段L1の2次元照明により生じる蛍光は、2次元センサであるCCD20により検出され、第2の照明手段L2の点状照明により生じる蛍光は、PMT23により検出される。
【0072】
さらに、以上では、光刺激による蛍光量の低下やその回復を観測するFRAPやFLIPに、レーザ顕微鏡1を使用する例について説明したが、特にこれに限られない。本実施例に係るレーザ顕微鏡1は、光刺激により、標本13自体や標本13に含まれる蛍光物質の変化を引き起され、その結果、蛍光波長が変化するような現象の観測に使用されてもよい。
【0073】
例えば、ケージドグルタミン酸が導入された細胞に対してこれを解除する波長の刺激光を照射することにより細胞が活性化され、カルシウム濃度や膜電位の変化が引き起こされる。そして、カルシウム感受性蛍光色素や膜電位感受性蛍光色素を用いることで、各々の変化を蛍光強度や蛍光波長の変化として検出することができる。
【0074】
また、アブレーションでは直接的に標本の特定部分を破壊し、残された標本の形態や活動の変化を蛍光等で観察することで、破壊部分の役割を特定することもできる。
また、蛍光物質が変化する現象であるフォトコンバージョンなどでは、光刺激により、通常の励起により生じる蛍光とは異なる波長の蛍光が生じることになる。
【0075】
なお、このように、標本13の動的な変化を蛍光波長の変化を利用して観測する場合には、第1の検出手段D1及び第2の検出手段D2に、波長の異なる蛍光をそれぞれ検出する機能が必要となる。このため、第1の検出手段D1は、CCD20としてカラーCCDを用いてもよい。また、第2の検出手段D2は、ダイクロイックミラー等の波長分割素子をさらに設けて、変化前後の波長の光をそれぞれ異なるPMTに入射させるように構成してもよい。
【実施例2】
【0076】
図2は、本実施例に係るレーザ顕微鏡の構成を例示する概略図である。
【0077】
本実施例に係るレーザ顕微鏡24は、第1の照明手段L1の構成がレーザ顕微鏡1と異なっている。その他の構成は、レーザ顕微鏡1と同様であるので、同一の符号を付与し、説明を省略する。なお、レーザ顕微鏡24も、レーザ顕微鏡1と同様に制御部及びステージを有しているが、図2では、これらは省略されている。
【0078】
レーザ顕微鏡24の第1の照明手段L1は、チタンサファイアレーザ2及びビームエクスパンダ3の代わりに、それぞれ異なる波長のレーザ光を射出する複数の可視レーザ光源(レーザ25、レーザ26、レーザ27)と、ダイクロイックミラー28と、ダイクロイックミラー29と、ミラー30と、音響光学変調器31(AOM:Acoustic Optical Modurator、以降、AOMと記す。)と、シングルモード光ファイバ32と、コリメートレンズ33と、を含んでいる。また、第1の照明手段L1は、ミラー6の代わりに、瞳リレーレンズ34及びXYスキャナ35を含んでいる。
【0079】
なお、XYスキャナ35は、光パターン照射の位置を標本13上で移動させるための手段であり、第1の照明光路上で、且つ、SLM5とダイクロイックミラー8の間であって、対物レンズ12の瞳位置と光学的に共役な位置近傍に配置されている。XYスキャナ35は、標本13を対物レンズ12の光軸と直交するX方向(第1の方向)及びY方向(第2の方向)へ走査することができる点は、XYスキャナ16と同様である。XYスキャナ35としては、例えば、ガルバノミラーや、音響光学偏向素子(AOD:Acoustic Optical Deflector)などを用いることができる。
【0080】
各レーザ光源から射出されたレーザ光は、減光フィルタ(NDフィルタ)またはシャッターとして機能するAOM31へ入射する。より具体的には、レーザ光源25から射出されたレーザ光は、ダイクロイックミラー28を透過してAOM31に入射する。また、レーザ光源26から射出されたレーザ光は、ダイクロイックミラー29、ダイクロイックミラー28を反射してAOM31に入射する。また、レーザ光源27から射出されたレーザ光は、ミラー30を反射し、ダイクロイックミラー29を透過し、さらにダイクロイックミラー28を反射してAOM31に入射する。
【0081】
AOM31から射出されたレーザ光は、入射端32aからシングルモード光ファイバ32へ入射し、射出端32bからコリメートレンズ33へ向けて射出される。さらに、レーザ光は、コリメートレンズ33で平行光に変換され、プリズム型ミラー4によりSLM5の仕様に応じた角度でSLM5に入射するように偏向されて、SLM5へ入射する。
【0082】
SLM5へ入射したレーザ光は、標本13上で所望のパターンの光が形成されるように変調される。より厳密には、レーザ光の位相が変調される。その後、再びプリズム型ミラー4で偏向され、瞳リレーレンズ34、XYスキャナ35、瞳リレーレンズ7を介してダイクロイックミラー8へ入射する。以降、レーザ顕微鏡1と同様に作用することで、所望のパターンのレーザ光が標本13に照射される。
【0083】
本実施例に係るレーザ顕微鏡24の第1の照明手段L1及び第2の照明手段L2は、実施例1に係るレーザ顕微鏡1の第1の照明手段L1及び第2の照明手段L2と同様に、それぞれ蛍光観察用の照明手段、刺激手段のいずれとしても使用可能である。従って、本実施例に係るレーザ顕微鏡24によっても、実施例1に係るレーザ顕微鏡1と同様の効果を得ることができる。
また、レーザ顕微鏡24は、第1の照明手段に含まれる複数の可視レーザ光源を用いることで、さらに、さまざまな蛍光物質に対応することができる。
【0084】
さらに、XYスキャナ35による光パターン照射位置の移動は、SLM5による位相の変調状態を変更することによる光パターン照射位置の移動に比べて高速である。このため、レーザ顕微鏡24では、XYスキャナ35を制御することで光パターン照射位置を高速に移動させることができる。このような高速な移動により、単なる光パターン照射の位置の調整に加え、光パターン照射のさらなる高密度化も実現できる。具体的には、光パターン照射により同時に光が照射される照射領域を削減して、各位置に照射される光密度を高める。その上で、照射領域をXYスキャナ35によるラスタスキャンやトルネードスキャンなどを利用して高速に移動させることで、任意の部位をさらに高い光密度で刺激または励起することができる。
【0085】
図3は、本実施例に係るレーザ顕微鏡の構成の変形例を例示する概略図である。図3(a)に例示される変形例に係るレーザ顕微鏡36は、XYスキャナ35の配置を除いて、実施例2に係るレーザ顕微鏡24の構成と同様である。
【0086】
XYスキャナ35は、X方向(第1の方向)に標本13を走査するXスキャナ35aと、Y方向(第2の方向)に標本13を走査するYスキャナ35bを含んでいる。通常、XYスキャナは、図3(a)に例示されるように、2つのスキャナが近接して配置されているため、XYスキャナ(2つのスキャナ)を厳密に対物レンズの瞳と光学的に共役とすることはできない。
【0087】
レーザ顕微鏡36では、Xスキャナ35aを対物レンズ12の瞳位置と光学的に共役な位置に配置する。このように配置することで、レーザ顕微鏡36では、光パターン照射位置をX方向へ移動する場合には、パターンの劣化は生じない。このため、図3(b)に例示されるように、予め照射位置13aのX方向への移動を前提とすることで照射領域を削減して光密度を高めた場合でも、任意の部位をより正確に照射することができる。
【0088】
また、Yスキャナ35bは、主に光パターン照射の位置の微調整に利用される。その他、予めX方向に対して照射位置13aを高密度に形成し、Y方向への移動量を小さくすることで、Xスキャナ35a及びYスキャナ35bを使用した正確な2次元走査も可能である。
【0089】
以上、本変形例に係るレーザ顕微鏡36によれば、実施例2に係るレーザ顕微鏡24と同様の効果を得ることができる。また、レーザ顕微鏡36では、照射領域を削減して光密度を高めた場合に、任意の部位をより正確に照射することができる。
【実施例3】
【0090】
図4は、本実施例に係るレーザ顕微鏡の構成を例示する概略図である。
【0091】
本実施例に係るレーザ顕微鏡37の多くの構成要素は、レーザ顕微鏡1(またはレーザ顕微鏡24)と同様である。このため、同一の構成要素には、同一の符号を付与し、説明を省略する。なお、レーザ顕微鏡37も、レーザ顕微鏡1と同様に制御部及びステージを有しているが、図4では、これらは省略されている。
【0092】
レーザ顕微鏡37は、第1の照明手段L1と、第2の照明手段L2と、ダイクロイックミラー(ダイクロイックミラー47a、ダイクロイックミラー47b)を有するターレット47と、結像レンズ9と、ダイクロイックミラー10と、ダイクロイックミラー11と、レーザ光を標本13に照射する対物レンズ12と、第1の検出手段D1と、第2の検出手段D2と、第3の検出手段D3と、第4の検出手段D4を含んで構成されている。
【0093】
第1の照明手段L1は、瞳リレーレンズ34と、Xスキャナ35aと、瞳リレーレンズ46と、Yスキャナ35bとを含み、Xスキャナ35a及びYスキャナ35bが共に、対物レンズ12の瞳と光学的に共役である点が、レーザ顕微鏡1と異なっている。すなわち、レーザ顕微鏡37では、SLM5、Xスキャナ35a、Yスキャナ35b、対物レンズ12の瞳が、それぞれ光学的に共役である。
【0094】
これにより、レーザ顕微鏡37では、光パターン照射位置の移動によるパターンの劣化は生じない。予め照射位置の移動を前提とすることで照射領域を削減して光密度を高めた場合でも、任意の部位をより正確に照射することができる。
また、第1の照明手段L1は、プリズム型ミラー4が第1の照明光路に対して挿脱可能に配置されている点も、レーザ顕微鏡1と異なっている。
【0095】
プリズム型ミラー4が第1の照明光路上から取り除かれた場合、ビームエクスパンダ3から射出されたレーザ光は、平行光として瞳投影リレーレンズに入射するため、SLM5で変調されずに位相の揃った平行光としてSLM5から射出される場合のレーザ光と等しく、標本13上の一点を照射する。この場合、SLM5を経由することにより生じる光量の損失を抑えることができるため、第1の照明手段の光の利用効率を、さらに改善することができる。
【0096】
また、第1の照明手段L1は、プリズム型ミラー4を挿入することでパターン照明を実現するための手段として機能し、プリズム型ミラー4を取り除くことで通常のレーザ走査型顕微鏡の照明手段として機能する。このため、パターン照明と通常のレーザ走査型顕微鏡の照明を同時に実現する必要がない場合には、第2の照明手段L2を省略することができる。
【0097】
第2の照明手段L2は、チタンサファイアレーザ14及びビームエクスパンダ15の代わりに、それぞれ異なる波長のレーザ光を射出する複数の可視レーザ光源(レーザ38、レーザ39、レーザ40)と、ダイクロイックミラー41と、ダイクロイックミラー42と、ミラー43と、入射端44a及び射出端44bを有するシングルモード光ファイバ44と、コリメートレンズ45と、ダイクロイックミラー59と、を含んでいる点が、レーザ顕微鏡1と異なっている。
【0098】
また、ダイクロイックミラー8の代わりに、複数のダイクロイックミラー(ダイクロイックミラー47a、ダイクロイックミラー47b)を含むターレット47が光路合成手段として用いられている。ターレット47は、レーザ光源から射出されるレーザ光の波長に応じて、光路上に配置するダイクロイックミラーを交換するために、使用される。
これにより、レーザ顕微鏡37は、第1の照明手段に含まれる複数の可視レーザ光源を用いることで、さまざまな蛍光物質に対応することができる。
【0099】
また、レーザ顕微鏡37は、第1の検出手段D1及び第2の検出手段D2に加えて、第3の検出手段D3及び第4の検出手段D4を含んでいる点も、レーザ顕微鏡1と異なっている。
【0100】
第3の検出手段D3は、いわゆる透過検出を行うための手段である。また、第3の検出手段D3は、第2の検出手段D2と同様に、標本13の任意の領域からの蛍光(検出光)を検出するための検出手段である。具体的には、標本13を透過した光が入射するコンデンサレンズ48(透過検出光学系)と、蛍光を電気信号に変換する光検出器であるPMT49と、を含んでいる。透過検出光学系は、蛍光の検出のみならず、照明の方向と同じ方向に強い反応光を発生させるSHG光などの検出にも特に好適である。なお、図4では図示していないが、標本13とPMT49の間に、レーザ光を遮断し、蛍光を選択的に透過させるフィルタを設けても良い。
【0101】
第4の検出手段D4も、第2の検出手段D2と同様に、標本13上の任意の一点からの蛍光を検出するための検出手段である。具体的には、入射光を集光する集光レンズ60と、集光レンズ60の焦点面上に配置された共焦点絞り61と、蛍光を分離するダイクロイックミラー62と、それぞれ所望の蛍光のみを透過させるバリアフィルタ63及びバリアフィルタ65と、蛍光を検出するPMT64及びPMT66と、を含んでいる。
【0102】
なお、共焦点絞り61は、標本13(対物レンズ12の焦点位置)と光学的に共役な位置に配置されている。このため、照明光が集光した標本13上の一点から生じた蛍光のみが共焦点絞り61に設けられたピンホールを通過し、それ以外の位置から生じた蛍光は、共焦点絞り61で遮断される。その後、ピンホールを透過した蛍光は、ダイクロイックミラーにより反射または透過される。例えば、第2の照明手段L2を蛍光観察用の照明手段として利用している場合であって、複数の可視レーザ光源からのレーザ光により複数の蛍光物質が励起されている場合は、それぞれの蛍光物質から射出された蛍光毎に分離される。そして、ダイクロイックミラー62を透過した蛍光のうち、所望の蛍光のみがバリアフィルタ63を透過し、PMT64で検出される。同様に、ダイクロイックミラー62を反射した蛍光のうち、所望の蛍光のみがバリアフィルタ65を透過し、PMT66で検出される。
【0103】
このように、第4の検出手段D4では、XYスキャナ16でデスキャンされ、且つ、標本13と光学的に共役な共焦点絞り61を通過した蛍光のみが検出される。このため、第2の検出手段D2や第3の検出手段D3と異なり、常に、照明光が集光している標本13上の任意の一点から生じた蛍光のみを検出することができる。従って、不要な蛍光の検出が抑制されるため、高い分解能が実現できる。
【0104】
以上、本実施例に係るレーザ顕微鏡37の第1の照明手段L1及び第2の照明手段L2は、実施例1に係るレーザ顕微鏡1の第1の照明手段L1及び第2の照明手段L2と同様に、それぞれ蛍光観察用の照明手段、刺激手段のいずれとしても使用可能である。従って、本実施例に係るレーザ顕微鏡37によれば、実施例1に係るレーザ顕微鏡1と同様の効果を得ることができる。
【0105】
また、レーザ顕微鏡37では、実施例2に係るレーザ顕微鏡24と同様に、光パターン照射の高速な移動が可能であり、光パターン照射のさらなる高密度化も実現できる。また、レーザ顕微鏡37では、実施例2の変形例に係るレーザ顕微鏡36と同様に、光パターン照射の高速な移動に伴うパターンの劣化を抑制することができる。このため、光パターン照射の照射領域を削減して光密度を高めた場合でも、任意の部位を正確に照射することができる。
【0106】
また、レーザ顕微鏡37では、第2の照明手段L2の点状照明により生じる蛍光を、共焦点絞りを備えた第4の検出手段D4で検出することにより、可視レーザ光による一光子励起でも、高い分解能を実現することができる。
【実施例4】
【0107】
図5は、本実施例に係るレーザ顕微鏡の構成を例示する概略図である。図5に例示されるレーザ顕微鏡50は、図1に例示されるレーザ顕微鏡1と同様に、レーザ光源であるチタンサファイアレーザから射出された赤外線領域の超短パルスレーザ光(照明光)により、2光子過程を利用して標本13を励起する2光子励起顕微鏡である。
【0108】
本実施例に係るレーザ顕微鏡50の多くの構成要素は、レーザ顕微鏡1と同様である。このため、同一の構成要素には、同一の符号を付与し、説明を省略する。なお、レーザ顕微鏡50も、レーザ顕微鏡1と同様に制御部及びステージを有しているが、図5では、これらは省略されている。
【0109】
レーザ顕微鏡50は、チタンサファイアレーザ51と、偏光手段52と、ビームエクスパンダ53と、PBS54と、第1の照明手段L1と、第2の照明手段L2と、PBS57と、結像レンズ9と、ダイクロイックミラー10と、ダイクロイックミラー11と、レーザ光を標本13に照射する対物レンズ12と、第1の検出手段D1と、第2の検出手段D2と、を含んで構成されている。
偏光手段52は、λ/2板52a及びλ/4板52bを含み、λ/2板52a及びλ/4板52bは、光軸に対して回転可能に配置されている。
【0110】
本実施例に係るレーザ顕微鏡50は、同一のレーザ光源から射出されたレーザ光を、第1の照明手段L1及び第2の照明手段L2に導き、光パターン照射とそれに伴って生じる標本13の動的な変化の観測に利用する点が、実施例1に係るレーザ顕微鏡1と異なっている。
【0111】
チタンサファイアレーザ51から射出された直線偏光であるレーザ光(照明光)は、まず、偏光手段52へ入射し円偏光に変換される。そして、ビームエクスパンダ53に入射し、レーザ光の光束径が調整された上で、平行光としてPBS54へ入射する。
【0112】
PBS54は、偏光方向に応じて入射光を反射または透過させる光学素子である。PBS54は、円偏光であるレーザ光をP偏光(例えば、第1の照明光)とS偏光(例えば、第2の照明光)に分割し、それぞれSLM5が配置された第1の照明光路、XYスキャナ16が配置された第2の照明光路に導く。すなわち、PBS54は、照明光路分割手段として機能する。
【0113】
PBS54で分割され、第1の照明手段L1へ入射したP偏光であるレーザ光は、減光フィルタ(NDフィルタ)またはシャッターとして機能するAOM55へ入射する。さらに、レーザ光は、ミラー56を反射し、プリズム型ミラー4によりSLM5の仕様に応じた角度でSLM5に入射するように偏向されて、SLM5へ入射する。
【0114】
SLM5へ入射したレーザ光は、標本13上で所望のパターンの光が形成されるように変調される。より厳密には、レーザ光の位相が変調される。その後、再びプリズム型ミラー4で偏向され、ミラー6、瞳リレーレンズ7を介して、PBS54と同様の特性を有するPBS57へ入射する。
【0115】
PBS57は、PBS54を直進した光を同様に直進させ、PBS54を反射した光を同様に反射することにより、光路合成手段として機能する。このため、第1の照明手段L1からPBS57に入射したレーザ光は、PBS57で反射され、結像レンズ9へ入射する。以降、レーザ顕微鏡1と同様に作用することで、所望のパターンのレーザ光が標本13に照射される。
【0116】
一方、PBS54で分割され、第2の照明手段L2へ入射したS偏光であるレーザ光は、減光フィルタ(NDフィルタ)またはシャッターとして機能するAOM58へ入射する。さらに、レーザ光は、XYスキャナ16へ入射し、標本13の走査位置に応じた方向へ偏向される。そして、瞳リレーレンズ17を介して入射したレーザ光は、PBS57を透過して、第1の照明手段L1からのレーザ光と同一の光路を進行し、標本13へ入射する。
【0117】
なお、上述したように、偏光手段52に含まれるλ/2板52a及びλ/4板52bは回転可能に配置されている。このため、λ/2板52a及びλ/4板52bの回転を制御することで、第1の照明手段L1及び第2の照明手段L2に入射する偏光の強度比を任意に変更することができる。
【0118】
以上、本実施例に係るレーザ顕微鏡50の第1の照明手段L1及び第2の照明手段L2は、実施例1に係るレーザ顕微鏡1の第1の照明手段L1及び第2の照明手段L2と同様に、それぞれ蛍光観察用の照明手段、刺激手段のいずれとしても使用可能である。従って、本実施例に係るレーザ顕微鏡50によれば、実施例1に係るレーザ顕微鏡1と同様の効果を得ることができる。
また、必要とするレーザ光源の数を削減することができるため、構成の簡素化され、レーザ顕微鏡全体をコンパクトに構成することができる。
【実施例5】
【0119】
図6は、本実施例に係るレーザ顕微鏡の構成を例示する概略図である。図6に例示されるレーザ顕微鏡100は、光学的な構成は図1に例示されるレーザ顕微鏡1と同様である。このため、同一の構成要素には、同一の符号を付与し、説明を省略する。
【0120】
本実施例に係るレーザ顕微鏡100は、第1の照明手段L1及び第2の照明手段L2の照明精度を向上させるために、制御部102と接続された記憶演算部103及び表示部104を含む点が図1に例示されるレーザ顕微鏡1と異なっている。
【0121】
制御部102は、記憶演算部103、表示部104、CCD20、XYスキャナ16及びSLM5及び不図示のステージに接続されている。制御部102は、SLM5及びXYスキャナ16の動作を制御する。また、撮像手段として機能するCCD20からの電気信号を受信し表示部104へ表示する。
【0122】
記憶演算部103には、予め、SLM5と対物レンズ12の間に配置されている光学系の収差情報と、対物レンズ12の収差情報が記憶されている。具体的には、ディスクトーション、倍率色収差、像高毎及び波長毎の波面収差に関する情報が記憶されている。
本実施例に係るレーザ顕微鏡100では、標本の観測に先立ち、第1の照明手段L1及び第2の照明手段L2による高精度な照射を行うための事前調整を行う。
【0123】
事前調整は、対物レンズ12の焦点位置に参照標本101を配置して開始される。参照標本101は、第1の照明手段L1及び第2の照明手段L2からの照明光が標本上に照射される位置を正しく確認するための標本であり、例えば、蛍光プレートやミラーなどを用いることができる。
【0124】
なお、第1の照明手段L1からの照明光の照射位置と、第2の照明手段L2からの照明光の照射位置は、CCD20で検出する。このため、必要に応じて、IRカットフィルタの除去やダイクロイックミラーの特性の変更等が行われる。
まず、第1の照明手段L1の調整について説明する。
【0125】
制御部102は、所望のパターンで参照標本103が照射されるように、SLM5を制御する。このとき、制御部102が、SLM5を、参照標本103とSLM5との間で成立するフーリエ変換の関係により理論的に求められる位相パターンに制御すると、実際には参照標本103上には所望のパターンは照射されない。これは、対物レンズ12及びSLM5から対物レンズ12の間の光学系で生じる収差や製造誤差が影響するからである。特に、ディストーション、倍率色収差、波面収差の影響が大きい。
【0126】
そこで、制御部102は、予め測定して記憶演算部103に記憶されている、対物レンズ12及びSLM5から対物レンズ12の間の光学系の収差情報を考慮した位相パターンに、SLM5を制御する。これにより、より所望のパターンに近い照射パターンが得られる。
【0127】
または、照射された照射パターンをCCD20で観測するようにしても良い。つまり、CCD20によりSLM5で位相が変調された照明光が照射された参照標本103を撮像し、照明光が参照標本103上に形成した照射パターンを取得する。取得された照射パターンは、CCD20から出力され、表示部104へ画像として表示される。
【0128】
そして、制御部102は、記憶演算部103で、CCD20で取得された照射パターンと所望のパターンとを比較し、照射パターンと所望のパターンの差が小さくなるように、SLM5による位相変調量を調整する。これによっても、所望のパターンに近い照射パターンが得られる。
さらに、上記の光学系の収差情報を考慮した位相パターンにSLM5を制御する方法と、上記のCCD20で取得された照射パターンと所望のパターンとを比較し、照射パターンと所望のパターンの差が小さくなるように、SLM5による位相変調量を調整する方法の二つを組み合わせてもよい。これにより、さらに所望のパターンに近い照射パターンが得られる。
【0129】
以上のようにして、事前調整でSLM5の位相変調量が調整され、最適化されることで、実際の標本の観測でも第1の照明手段L1による高精度なパターン照射が可能となる。
次に、第2の照明手段L2の調整について説明する。
【0130】
ガルバノミラーなどであるXYスキャナ16は、別途、観測領域の大きさ、視野の中心位置、サンプリング位置に関するリニアリティの調整(例えば、振り角により変化する走査速度に応じたサンプリングクロックの調整)が行われている。
【0131】
その上で、XYスキャナ16の制御パラメータであるスキャナ角度を変更しながら参照標本101を照明し、CCD20で照明光の照射位置を確認する。そして、確認された照射位置に対応するCCD20の画素部の位置を、スキャナ角度と関連付けて記憶演算部103に記憶させる。
【0132】
以上のようにして、CCD20の画素部の位置とXYスキャナ16のスキャナ角度とが関連付けられることで、実際の標本の観測でも第2の照明手段L2による高精度な照射が可能となる。
【0133】
以上、本実施例に係るレーザ顕微鏡100によれば、実施例1に係るレーザ顕微鏡1と同様の効果を得ることができる。また、標本の観測前に行われる事前調整により、光学系の収差等に影響されず、第1の照明手段L1及び第2の照明手段L2による高精度な照射が可能となる。
【符号の説明】
【0134】
1、24、36、37、50、100・・・レーザ顕微鏡、1b・・・ステージ、2、14、51・・・チタンサファイアレーザ、3、15、53・・・ビームエクスパンダ、4・・・プリズム、5・・・SLM、6、30、43、56・・・ミラー、7、17、34、46・・・瞳リレーレンズ、8、10、11、28、29、41、42、47a、47b、62・・・ダイクロイックミラー、9・・・結像レンズ、12・・・対物レンズ、13・・・標本、13a・・・照射位置、16、35・・・XYスキャナ、18、22・・・IRカットフィルタ、19・・・結像レンズ、60・・・集光レンズ、20・・・CCD、21・・・リレーレンズ、23、49、64、66・・・PMT、25、26、27、38、39、40・・・レーザ、31、55、58・・・AOM、32、44・・・シングルモード光ファイバ、32a、44a・・・入射端、32b、44b・・・射出端、33、45・・・コリメートレンズ、35a・・・Xスキャナ、35b・・・Yスキャナ、47・・・ターレット、48・・・コンデンサレンズ、52・・・偏光手段、52a・・・λ/2板、52b・・・λ/4板、54、57・・・PBS、61・・・共焦点絞り、63、65・・・バリアフィルタ、101・・・参照標本、1a、102・・・制御部、103・・・記憶演算部、104・・・表示部、L1・・・第1の照明手段、L2・・・第2の照明手段、D1・・・第1の検出手段、D2・・・第2の検出手段、D3・・・第3の検出手段、D4・・・第4の検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を射出するレーザ光源と、
前記照明光を標本に照射する対物レンズと、
前記レーザ光源と前記対物レンズの間の第1の照明光路と第2の照明光路とを合成する光路合成手段と、
前記第1の照明光路上であって前記対物レンズの瞳位置と光学的に共役な位置に配置された、前記照明光の位相を変調する位相変調型空間光変調器と、
前記第2の照明光路上に配置された、前記対物レンズの光軸と直交する平面内で前記標本を走査する2次元走査手段と、を含むことを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ顕微鏡において、
前記レーザ光源は、前記位相変調型空間光変調器へ入射する第1の照明光を射出する第1のレーザ光源と、前記2次元走査手段へ入射する第2の照明光を射出する第2のレーザ光源と、を含むことを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ顕微鏡において、
前記光路合成手段は、入射する光の波長に応じて、交換されることを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザ顕微鏡において、
さらに、前記照明光を第1の照明光と第2の照明光に分割し、前記第1の照明光を前記第1の照明光路へ、また、前記第2の照明光を前記第2の照明光路へ導く照明光路分割手段を含むことを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ顕微鏡において、
前記レーザ光源と前記照明光路分割手段の間に、λ/4板を含むことを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ顕微鏡において、
前記レーザ光源と前記照明光路分割手段の間に、さらに、λ/2板を含むことを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザ顕微鏡において、
前記λ/4板及び前記λ/2板は、光軸に対して、回転可能に配置されることを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のレーザ顕微鏡において、さらに、
前記第1の照明光路上であって、前記位相変調型空間光変調器と前記光路合成手段の間に、前記標本を、前記対物レンズの光軸と直交する第1の方向に走査する第1の走査手段を含むことを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザ顕微鏡において、
前記第1の走査手段は、前記対物レンズの瞳位置と光学的に共役であることを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のレーザ顕微鏡において、
前記第1の走査手段は、前記位相変調型空間光変調器が前記照明光の位相を変調することにより前記標本上に形成される前記照明光のパターンを、前記標本上で前記第1の方向へ平行移動させることを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載のレーザ顕微鏡において、さらに、
前記第1の照明光路上であって、前記位相変調型空間光変調器と前記光路合成手段の間に、前記標本を、前記第1の方向と直交する第2の方向に走査する第2の走査手段を含むことを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項12】
請求項11に記載のレーザ顕微鏡において、
前記前記第2の走査手段は、前記第1の走査手段と光学的に共役であることを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のレーザ顕微鏡において、さらに、
前記照明光を照射することにより前記標本から生じる検出光を、前記照明光から分離して検出光路に導く検出光路分離手段と、
前記検出光路上に配置された、前記検出光を検出する光検出器と、を含むことを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項14】
請求項13に記載のレーザ顕微鏡において、
前記光検出器は、前記標本と光学的に共役な位置に配置された、前記検出光の強度の空間的な分布を検出する2次元センサであることを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項15】
請求項13に記載のレーザ顕微鏡において、
前記光検出器は、前記対物レンズの瞳位置と光学的に共役な位置近傍に配置されることを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載のレーザ顕微鏡において、
前記検出光路分離手段は、前記対物レンズと前記2次元走査手段との間に配置されることを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項17】
請求項13に記載のレーザ顕微鏡において、さらに、
前記検出光路分離手段と前記光検出器の間の、前記標本と光学的に共役な位置に配置された共焦点絞りを含み、
前記検出光路分離手段は、前記レーザ光源と前記2次元走査手段との間に配置されることを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項18】
請求項1乃至請求項12に記載のレーザ顕微鏡において、さらに、
前記標本を透過した光が入射する透過検出光学系と、
前記照明光を照射することにより前記標本から生じる検出光を、前記透過検出光学系を介して、検出する光検出器と、を含むことを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれか1項に記載のレーザ顕微鏡において、
前記対物レンズと前記位相変調型空間光変調器との間に配置される光学系及び前記対物レンズで生じる、ディストーション及び倍率色収差に関する収差情報が、像高毎及び前記照明光の波長毎に、記憶された記憶部を含み、
前記位相変調型空間光変調器は、前記記憶部から取得した前記収差情報を考慮して、前記照明光の位相を変調することを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項20】
請求項1乃至請求項18のいずれか1項に記載のレーザ顕微鏡において、さらに、
前記対物レンズと前記位相変調型空間光変調器との間に配置される光学系及び前記対物レンズで生じる、波面収差に関する収差情報が、像高毎及び前記照明光の波長毎に、記憶された記憶部を含み、
前記位相変調型空間光変調器は、前記記憶部から取得した前記収差情報を考慮して、前記照明光の位相を変調することを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項21】
請求項1乃至請求項20のいずれか1項に記載のレーザ顕微鏡において、
前記位相変調型空間光変調器で位相が変調された前記照明光が照射された前記標本を撮像し、前記標本上に形成される照射パターンを取得する撮像手段を含み、
前記位相変調型空間光変調器は、所望のパターンと前記撮像手段で取得した前記照射パターンとの差が小さくなるように、前記照明光の位相の変調を調整することを特徴とするレーザ顕微鏡。
【請求項22】
請求項1乃至請求項21のいずれか1項に記載のレーザ顕微鏡において、
複数の画素部を有し、前記位相変調型空間光変調器で位相が変調された第1の照明光が照射された前記標本を撮像し、前記標本上に形成された照射パターンを取得する撮像手段を含み、
前記レーザ顕微鏡は、前記2次元走査手段により偏向された第2の照明光が入射する前記画素部の位置と、当該画素部に前記第2の照明光が入射するときの前記2次元走査手段の走査位置を制御するパラメータと、を関連付けて記憶することを特徴とするレーザ顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−99986(P2011−99986A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254566(P2009−254566)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】