位相差フィルム、それを用いたエレクトロルミネッセント表示装置用円偏光板、3次元表示用パターン位相差フィルム、その製造方法およびそれに用いる配向膜
【課題】本発明は、視認性に優れた表示装置を形成可能な位相差フィルムを提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有し、上記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を含むものであり、上記位相差層が、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むことを特徴とする位相差フィルムを提供することにより、上記課題を解決する。
【解決手段】本発明は、透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有し、上記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を含むものであり、上記位相差層が、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むことを特徴とする位相差フィルムを提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認性に優れた表示装置を形成可能な位相差フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々のタイプのディスプレイが実用化されているが、これらのディスプレイには、位相層が直線偏光板と組み合わせられる等により適用されていることが多い。例えば、直線偏光板と1/4波長位相差板、もしくは1/2波長位相差板、1/4波長位相差板、および直線偏光板を組み合わせた円偏光板を、エレクトロルミネッセンスディスプレイの観察側に設けることにより、外光反射を防止して表示のコントラストの向上を可能としている(特許文献1)。
【0003】
また、従来、2次元表示のものが主流であったが、近年においては3次元表示可能なフラットパネルディスプレイが注目を集め始めており、一部市販されているものも存在しつつある。そして、今後のフラットパネルディスプレイにおいては3次元表示可能であることが、その性能として当然に求められる傾向にあり、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイの検討が幅広い分野において進められている。
フラットパネルディスプレイにおいて3次元表示をするには、通常、視聴者に対して何らかの方式で右目用の映像と、左目用の映像とを別個に表示することが必要とされる。右目用の映像と左目用の映像とを別個に表示する方法としては、例えば、パッシブ方式というものが知られている。このようなパッシブ方式の3次元表示方式について図を参照しながら説明する。図23はパッシブ方式の3次元表示の一例を示す概略図である。図23に示すようにこの方式では、まず、フラットパネルディスプレイを構成する画素を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。また、直線偏光板と当該画素の分割パターンに対応したパターン状の位相差層が形成されたパターン位相差フィルムとを用い、右目用の映像と、左目用の映像とを互いに直交関係にある円偏光に変換する。さらに、視聴者には右目用フィルターと左目用フィルターとに互いに直交する円偏光レンズを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目用レンズのみを通過し、かつ左目用の映像が左目用のレンズのみを通過するようにする。このようにして右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることによって3次元表示を可能とするものがパッシブ方式である。
このようなパターン位相差フィルムとしては、ガラス基板上に配向規制力がパターン状に制御された光配向膜と、当該光配向膜上に形成され、液晶化合物の配列が上記光配向膜のパターンに対応するようにパターニングされた位相差層とを有するものが開示されている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、このような位相差層を用いる表示装置では、表示装置で表示される色の種類によっては、上述のような機能を発揮することができず、視認性が不十分となるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−283246号公報
【特許文献2】特開2005−49865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、視認性に優れた表示装置を形成可能な位相差フィルムを提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有し、上記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を含むものであり、上記位相差層が、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むことを特徴とする位相差フィルムを提供する。
【0008】
本発明によれば、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、コントラストや色再現性等に優れ、視認性に優れたものとすることができる。
【0009】
本発明においては、上記位相差フィルムが長尺状であることが好ましい。表示装置のサイズ等に応じて自由度高く位相差フィルムを製造できる等、製造プロセスの自由度の高いものとすることができるからである。
【0010】
本発明においては、上記配向部のパターンが、互いに平行な帯状であることが好ましい。
表示装置において形成されている各色のパターンと対応関係にすることが容易になるからである。
【0011】
本発明は、上述の位相差フィルムと、上記位相差フィルム上に形成され、偏光子を含む偏光板と、を有し、上記配向層に含まれる配向部の上記棒状化合物の配列方向が同一方向であり、上記位相差部の面内レターデーション値が、上記各色のλ/4分に相当するものであることを特徴とするエレクトロルミネッセント(以下、単にELとする場合がある。)表示装置用円偏光板(以下、単に円偏光板とする場合がある。)を提供する。
【0012】
本発明によれば、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、コントラストに優れたEL表示装置とすることができる。
【0013】
本発明は、上述の位相差フィルムを有し、上記配向層が、上記棒状化合物を一定方向に配列させる第1配向領域および第1配向領域とは異なる方向に配列させる第2配向領域を含むことを特徴とする3次元表示用パターン位相差フィルム(以下、単にパターン位相差フィルムとする場合がある。)を提供する。
【0014】
本発明は、上述の位相差フィルムを有し、上記配向層が、厚みの大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域を有し、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させるものであることを特徴とする3次元表示用パターン位相差フィルムを提供する。
【0015】
本発明によれば、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、色再現性に優れた3次元表示装置とすることができる。
【0016】
本発明は、上述の位相差フィルムの製造方法であって、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を有するロール状金型と、配向層形成用樹脂組成物からなる配向層形成用層と、を接触させた後、加圧し、上記配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を賦型する賦型工程と、上記賦型工程後に、上記配向層形成用層を硬化させる硬化工程および上記配向層形成用層を上記ロール状金型から剥離し、配向層を形成する剥離工程と、上記配向層上に上記棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布する塗布工程と、上記位相差層形成用塗工液の塗膜に含まれる棒状化合物を、上記配向部の表面に形成された微細凹凸形状の形成方向に沿って配列させる配向工程と、を有することを特徴とする位相差フィルムの製造方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、上記ロール状金型を用いることにより、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる配向部を含む配向層を容易かつ大量に製造することができる。
このため、上述のような表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる位相差部を含む位相差層を有する位相差フィルムを容易かつ大量に製造することができる。
【0018】
本発明は、透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、を有し、上記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を有することを特徴とする配向膜を提供する。
【0019】
本発明によれば、このような表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる配向部を含む配向層を有することにより、屈折率異方性を有する棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布し、配向させることで、各色に対応して位相差性を発揮する位相差フィルムを容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の位相差フィルムによれば、視認性に優れた表示装置を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図2のA−A線断面図である。
【図2】本発明の位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。
【図3】本発明の位相差フィルムを用いたEL表示装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明における配向層を説明する説明図である。
【図5】本発明における微細凹凸形状を説明する説明図である。
【図6】本発明のEL表示装置用円偏光板の一例を示す概略断面図である。
【図7】図8のB−B線断面図である。
【図8】本発明のパターン位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。
【図9】本発明のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図10】本発明のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図11】本発明のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図12】本発明のパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図13】本発明のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図14】図15のC−C線断面図である。
【図15】本発明のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図16】本発明における厚膜領域および薄膜領域を説明する説明図である。
【図17】本発明の位相差フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
【図18】本発明の位相差フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
【図19】本発明におけるロール状金型の製造方法の一例を示す工程図である。
【図20】本発明における加圧方法を説明する説明図である。
【図21】本発明における加圧方法を説明する説明図である。
【図22】本発明の配向膜の一例を示す概略断面図である。
【図23】パッシブ方式で3次元映像を表示可能な液晶表示装置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、位相差フィルム、それを用いたエレクトロルミネッセント表示装置用円偏光板、3次元表示用パターン位相差フィルム、その製造方法およびそれに用いる配向膜に関するものである。
以下、本発明の位相差フィルム、エレクトロルミネッセント表示装置用円偏光板、3次元表示用パターン位相差フィルム、位相差フィルムの製造方法および配向膜について詳細に説明する。
【0023】
A.位相差フィルム
まず、本発明の位相差フィルムについて説明する。
本発明の位相差フィルムは、透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有し、上記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を含むものであり、上記位相差層が、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むことを特徴とするものである。
【0024】
このような本発明の位相差フィルムについて図を参照しながら説明する。図1は、図2のA−A線断面図である。また、図2は、本発明の位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。図1および図2に例示するように、透明フィルム基材1と、上記透明フィルム基材1上に形成された配向層2と、上記配向層2上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層3と、を有し、上記配向層2が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部(2a−1、2a−2、2a−3)を含むものであり、上記位相差層3が、上記配向部(2a−1、2a−2、2a−3)に対応して厚みが異なる位相差部(3a−1、3a−2、3a−3)を含むことを特徴とするものである。
なお、この例においては、本発明の位相差フィルムは、3色の色を表示する表示装置に用いられるものであり、配向層および位相差層がそれぞれ厚みの異なる3水準の配向部および位相差部を有し、このような配向部および位相差部の幅がそれぞれw1、w2およびw3のものである。また、配向部の表面の微細凹凸形状が同一方向に形成されているものである。さらに、図2においては、説明の容易のため位相差層の記載を省略するものである。
【0025】
また、図3は、本発明の位相差フィルムを含む円偏光板を用いたEL表示装置の一例を示す概略図である。図3に例示するように、EL表示装置が、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の画素を有するEL層25と、本発明の位相差フィルム10および位相差フィルム10上に形成された偏光子21からなる偏光板22を含む円偏光板20と、を有するものであり、上記位相差フィルム10に含まれる配向部(2a−1、2a−2、2a−3)、および上記配向部(2a−1、2a−2、2a−3)に対応して厚みが異なる位相差部(3a−1、3a−2、3a−3)が、上記EL層25の3色の画素(R,G,B)に対応するものである。
なお、図3中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。また、この例においては、上記位相差層に含まれる棒状化合物は、配向部表面の微細凹凸形状により同一方向に配列されるものである。
【0026】
本発明によれば、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した、すなわち、各色の波長に対応した適切な位相差性を発揮するものとすることができる。例えば、上記各配向部上に形成され、波長の長い色に対応する位相差部が波長の短い色に対応する位相差部よりも面内レターデーション値が高い、逆分散型の位相差層とすることが容易であり、各色により適した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、コントラストや色再現性等に優れ、視認性に優れたものとすることができる。
また、厚みの異なる位相差層が、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる配向層上に形成されていることにより、表示装置の種類に限定されず適応可能なものとすることができる。また、上記配向層に含まれる配向部により厚みを調整することにより、対応して形成される位相差部を含む位相差層の配向層と接する側と反対側の面を平坦なものとすることができる。このようなことからも、表示装置の種類によらず適応可能なものとすることができる。
さらに、後述するようなロール状金型を用いることにより、容易に、厚みの異なる配向層を形成することができることから、このような配向層上に上記棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布し、上記配向層の配向規制力に沿って配向させて位相差層を形成することで容易に製造できかつ大量生産が可能なものとすることができる。
【0027】
本発明の位相差フィルムは、少なくとも透明フィルム基材、配向層および位相差層を含むものである。
以下、本発明の位相差フィルムの各構成について詳細に説明する。
【0028】
1.配向層
本発明における配向層は、2以上の配向部を含むものである。
【0029】
(1)配向部
本発明における配向部は、表面に微細凹凸形状を有し、かつ、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるものである。
また、各配向部は位相差層を形成した際に、上記位相差層に含まれる棒状化合物を一定方向に配列させる配向規制力を有するものである。
【0030】
(i)配向部の形状
本発明における配向部の厚みは、表示装置の各色のパターンに対応して異なるものである。
本発明における表示装置としては、特定の色を表示する最小の表示単位である画素を2種類以上組み合わせて映像を表示するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、液晶表示装置や、EL表示装置等を挙げることができる。
また、表示装置の各色のパターンとは、特定の色を表示する画素の配置をいうものであり、表示装置の各色のパターンに対応する配向部とは、平面視上、特定の色のパターンとパターンが重なるものである。
また、本発明における配向部の厚みは表示装置の各色のパターンに対応して異なるものであるところ、隣接する配向部が、異なる色のパターンに対応するものである場合には、隣接する配向部は厚みが異なることになる。
具体的には、赤、緑、青を表示する表示装置に用いる場合には、赤を表示するパターンに対応する配向部、緑を表示するパターンに対応する配向部、および青を表示するパターンに対応する配向部の厚みは互いに異なるものとなる。
【0031】
このような厚みについては、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも、波長の長い色に対応する配向部が波長の短い色に対応する配向部よりも、厚みが薄いことが好ましい。このような厚みとすることにより、波長の長い色に対応する位相差部が波長の短い色に対応する位相差部よりも面内レターデーション値が高い逆分散型の位相差層とすることにより、各色により適した位相差性を発揮するものとすることができるからである。
具体的には、既に説明した図3に例示するように、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の色を表示する表示装置に用いられる場合には、赤、緑、青に対応する配向部の厚みは、この順で厚くなることが好ましく、対応する位相差部の厚みはこの順で薄くなることが好ましい。
【0032】
本発明における配向部の隣接する配向部との厚みの差としては、本発明の位相差フィルムの用途等に応じて適宜設定されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、位相差層の面内レターデーション値(Re)をλ/4とする場合には、隣接して表示される色の波長をλ1およびλ2(λ1>λ2)、上記配向層(各配向部)上に形成される位相差層(各位相差部)の面内方向の屈折率異方性をΔnとすると、厚みの差としては、(λ1-λ2)×(1/4)×(1/Δn)とすることが好ましい。
また、例えば、位相差層の面内レターデーション値(Re)をλ/2とする場合には、厚みの差を(λ1-λ2)×(1/2)×(1/Δn)とすることが好ましい。
より具体的には、本発明において面内レターデーション値(Re)をλ/4またはλ/2とする場合には、厚みの差は、(λ1-λ2)×(1/4(または1/2))×(1/Δn)±200nm(λ/4の場合)または400nm(λ/2の場合)程度であることが好ましく、なかでも、(λ1-λ2)×(1/4(または1/2))×(1/Δn)±100nm(λ/4の場合)または200nm(λ/2の場合)程度であることが好ましく、特に、(λ1-λ2)×(1/4(または1/2))×(1/Δn)±50nm(λ/4の場合)または100nm(λ/2の場合)程度であることが好ましい。より視認性に優れたものとすることができるからである。
【0033】
ここで、面内レターデーション値とは、屈折率異方体の面内方向における複屈折性の程度を示す指標であり、面内方向において屈折率が最も大きい遅相軸方向の屈折率をNx、遅相軸方向に直交する進相軸方向の屈折率をNy、屈折率異方体の面内方向に垂直な方向の厚みをdとした場合に、
Re[nm]=(Nx−Ny)×d[nm]
で表わされる値である。面内レターデーション値(Re値)は、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができるし、微小領域の面内レターデーション値はAXOMETRICS社(米国)製のAxoScanでミューラーマトリクスを使って測定することも出来る。また、本願明細書においては特に別段の記載をしない限り、Re値は波長589nmにおける値を意味するものとする。
また、上記屈折率異方性Δnは、Nx−Nyで表される値であり、通常は0.05〜0.3の範囲内、より一般的には0.1〜0.15の範囲内であることが多い。
【0034】
本発明における隣接する配向部間の具体的な厚みの差としては、上述のように後述する位相差層に用いられる棒状化合物の種類および所望の位相差層の面内レターデーション値により適宜決定されることになる。
もっとも、当該距離は本発明において一般的に用いられる棒状化合物であれば、隣接する色が赤(610〜750nm)、緑(500〜560nm)、青(435〜480nm)であり、位相差層の面内レターデーション値を対応する各色のλ/4とする場合には、通常、赤に対応する配向部と、緑に対応する配向部と間で、0.01μm〜0.03μmの範囲内となり、緑に対応する配向部と青に対応する配向部間で、0.01μm〜0.03μmの範囲内となる。
【0035】
本発明における各配向部の厚みとしては、上述の厚みの異なる配向部を安定的に形成できるものであれば特に限定されるものではないが、0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、特に、2μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0036】
なお、上記配向部の厚みおよび隣接する配向部の厚みの差は、それぞれ図4中のD1およびD2で示す距離を意味するものとする。また、図中では、D1は、最も厚みの厚い配向部の厚みを示すものであり、D2は、最も厚みの厚い配向部と2番目に厚みの厚い配向部との厚みの差を示すものである。
また、図4に示すように配向部の厚みおよび隣接する配向部の厚みの差は、表面の微細凹凸形状を含む厚みをいうものとする。
【0037】
本発明における配向部のパターン、すなわち、平面視上のパターンとしては、表示装置の各色のパターンに対応するものであれば特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば帯状パターン、モザイク状パターン、および千鳥配置状パターン等を挙げることができる。なかでも本発明においては上記各配向部のパターンが互いに平行な帯状であること、すなわち、各色のパターンが、互いに平行な帯状であることが好ましい。表示装置において形成されている各色のパターンと対応関係にすることが容易になるからである。また、各配向部をパターン精度良く形成することが容易だからである。
【0038】
既に説明した図1および図2は、上記配向部が互いに平行な帯状のパターンに形成されている場合の一例を示す概略図である。図1および図2に示すように、本発明に用いられる配向層2においては上記配向部が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。
【0039】
上記配向部が帯状のパターンに形成されている場合、各配向部の幅としては、上記各色のパターンに対応するものであれば特に限定されるものではなく、各配向部の幅は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
しかしながら、本発明においては各配向部の幅は同一であることが好ましい。上記各色のパターンに対応関係にすることが容易になり、その結果、容易に製造可能なものとすることができるようになるからである。
【0040】
上記配向部の具体的な幅としては、上記各色のパターンと対応関係にあるものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、上記表示装置において各色の画素部が形成されている幅に対応するように適宜決定されることになる。このように上記配向部の幅は特に限定されるものではないが、通常、10μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、50μm〜500μmの範囲内であることがより好ましい。
【0041】
さらに、本発明において上記配向部が上記帯状のパターンに形成されている場合、帯状のパターンが形成される方向としては特に限定されるものではない。例えば、本発明の位相差フィルムが長尺状である場合、上記帯状のパターンは帯状の長手方向が位相差フィルムの長尺方向と平行となる方向であっても良く、あるいは直交する方向であってもよく、さらには斜めに交差する方向であってもよい。なかでも本発明においては、上記帯状のパターンは帯状の長手方向が位相差フィルムの長尺方向と平行となる方向であることが好ましい。このような方向に帯状のパターンが形成されていることにより、後述する位相差フィルムの製造方法に示すように、ロール状金型を用いた賦型法等により容易かつ大量に形成することが可能となるからである。
【0042】
本発明に用いられる配向部は、各配向部が別体となるように形成されたものであっても良いが、全ての配向部が一体で形成されたものであることが好ましい。後述する位相差フィルムの製造方法に示すように、ロール状金型を用いた賦型法等により容易かつ大量に形成することが可能となるからである。
【0043】
(ii)微細凹凸形状
本発明における配向部は、表面に微細凹凸形状を有するものである。
ここで、微細凹凸形状としては、所望の配向規制力を発揮することができるものであれば特に限定されるものではないが、ストライプ状のライン状凹凸構造や、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成されたもの等とすることができるが、なかでも、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成されたものであることが好ましい。このようなライン状凹凸構造であることにより、この凹凸構造の形成方向に棒状化合物を安定的に配列させることができるからである。また、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成されたものであることにより、例えば、上記配向層の形成に用いられるロール状金型として、一定方向に表面研磨したものを用いることができる等、容易に金型を形成できるからである。
【0044】
ここで、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに不連続な状態で形成された態様とは、例えば、表面にラビング処理がなされた場合等に形成されるような微小な傷のようなライン状凹凸構造が、略一定方向に不連続な状態で形成された態様を意味するものである。
また、ストライプ状のライン状凹凸構造とは、壁状に形成された凸部が一定の間隔でストライプ状に形成された態様を意味するものであり、例えば表面にラビング処理がなされた場合に形成されるような微小な傷のような凹凸形状はこれに含まれないものである。
【0045】
本発明における微小なライン状凹凸構造の断面形状としては、凹凸構造を有し、上記棒状化合物を所定の方向に配列できるものであれば特に限定されるものではなく、略矩形、略三角形、略台形等とすることができる。また、一定の形状でなくともよい。
【0046】
本発明における微小なライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期としては、棒状化合物を配列させることができる範囲内であれば特に限定されるものではない。本発明において、微小なライン状凹凸構造の幅は、1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1nm〜500nmの範囲内であることがより好ましく、特に、1nm〜100nmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、微小なライン状凹凸構造の高さは、1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、特に、1nm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
さらに、微小なライン状凹凸構造の周期は、必ずしも一定ではなくても良いが、概ね1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、なかでも1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。微小なライン状凹凸構造が上述のサイズであることにより、安定的に液晶化合物を配列させることができるからである。
【0047】
ここで、微小なライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期はそれぞれ図5におけるl、m、nで示される距離を意味する。
なお、図5は、微小なライン状凹凸構造の断面形状が矩形状である場合を示す説明図である。
【0048】
(iii)構成材料
本発明における配向部を構成する材料としては、所望の微細凹凸形状を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を挙げることができる。本発明においてはこれらの何れの構成材料であっても好適に用いることができるが、なかでも紫外線硬化性樹脂が用いられることが好ましい。紫外線硬化性樹脂が用いられることにより、本発明における配向部を後述するような位相差フィルムの製造方法によって容易に形成可能なものにでき、生産性の高いものにできるからである。なお、構成材料として紫外線硬化性樹脂が用いられた場合、本発明における配向部は硬化された紫外線硬化性樹脂からなることになる。
【0049】
本発明に用いられる紫外線硬化性樹脂の具体例としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリロイル基をもつ重合性オリゴマー、モノマーと、アクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン等重合性ビニル基をもつ重合性オリゴマー、モノマー等の単体あるいは配合したものに、必要に応じて増感剤等の添加剤を加えたものに光重合開始剤を加えたもの等を挙げることができる。
【0050】
(2)配向層
本発明に用いられる配向層は、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を含むものであるが、1つの色に対して1つの厚みの配向部を有し、かつ、上記棒状化合物の配列方向が全面で同一方向である1つの配向領域からなるもの(単一配向領域)としても良く、上記棒状化合物を一定方向に配列させる第1配向領域および第1配向領域とは異なる方向に配列させる第2配向領域を含むものとしても良く、厚みの大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みの小さい薄膜領域を含み、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるものとしても良い。
【0051】
本発明に用いられる配向層は、上記配向部間および/または配向領域間に、光を吸収するブラックラインを有するものであっても良い。この場合、ブラックラインの幅は特に限定されるものではないが、通常、10μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
なお、このようなブラックラインが形成される領域としては、配向規制力を有する領域であっても良く、有さない領域であっても良い。
【0052】
本発明に用いられる配向層の形成方法、すなわち、上記透明フィルム基材上に配向層を形成する方法としては、例えば、透明フィルム基材上に上述した構成材料を含有する配向層形成用塗工液を塗布し、乾燥することによって配向層形成用塗工液からなる膜を形成し、必要に応じて硬化処理を行った後、当該膜の表面に微細凹凸形状を形成する方法や、透明フィルム基材上に予め別個に形成した配向層を転写する方法等を挙げることができる。配向層を形成する具体的な方法としては、例えば、ストライプ状のライン状凹凸や微細なライン状凹凸を金型に切削し、その上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、更にその上に透明フィルム基材を密着させ、紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次に、金型から剥離する等の方法を挙げることができる。
【0053】
2.位相差層
本発明における位相差層は、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有するものであり、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むものである。
また、位相差層は、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有することにより位相差フィルムに位相差性を付与するものである。また、本発明においては上記配向層、すなわち、上述したような厚みの異なる2以上の配向部を含む配向層が形成されていることにより、本発明における位相差層は、上記配向部の厚みに応じた厚みの位相差部が、上記配向部が形成されたパターンと同一のパターン状に形成され、かつ、それぞれの配向部が有する配向規制力に沿った方向に棒状化合物が配列されたものである。
【0054】
(1)位相差部
本発明における位相差部は、上記配向部に対応して厚みが異なるものである。
本発明に用いられる位相差部は、後述する棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差部の厚みに依存して決定されるものである。
したがって、本発明に用いられる位相差部の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本発明の位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定されるものである。
【0055】
本発明における位相差部の厚みとしては、所望の位相差性を発現することができるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の位相差フィルムの用途等に応じて適宜設定されるものである。具体的には、位相差部の面内レターデーション、すなわち、位相差部の面内レターデーション値を対応する各色のλ/4分に相当するような範囲内や、λ/2分に相当するような範囲内、さらには、λ/4+λ/2分に相当するような範囲内等とすることができる。
【0056】
本発明において、位相差部の厚みを面内レターデーションが対応する各色のλ/4分に相当するような範囲内の距離にする場合、具体的にどの程度の距離にするかは、後述する棒状化合物の種類および対応する色により適宜決定されることになる。もっとも、当該距離は本発明において一般的に用いられる棒状化合物であれば、通常、厚みが0.1μm〜1.9μmの範囲内であることが好ましく、0.25μm〜1.75μmの範囲内であることがより好ましく、0.5μm〜1.5μmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、λ/2分に相当するような範囲内の距離とする場合には、通常、0.5μm〜4μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜3μmの範囲内であることがより好ましく、1.5μm〜2.5μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0057】
次に、位相差層に含有される棒状化合物について説明する。本発明に用いられる棒状化合物は屈折率異方性を有するものである。本発明における位相差部中に含有される棒状化合物としては、規則的に配列することにより本発明における位相差部に所望の位相差性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる棒状化合物は、液晶性を示す液晶性材料であることが好ましい。液晶性材料は屈折率異方性が大きいため、本発明の位相差フィルムに所望の位相差性を付与することが容易になるからである。
【0058】
本発明に用いられる上記液晶性材料としては、例えば、ネマチック相、スメクチック相等の液晶相を示す材料を挙げることができる。本発明においては、これらのいずれの液晶相を示す材料であっても好適に用いることができるが、なかでもネマチック相を示す液晶性材料を用いることが好ましい。ネマチック相を示す液晶性材料は、他の液晶相を示す液晶性材料と比較して規則的に配列させることが容易であるからである。
【0059】
また、本発明においては上記ネマチック相を示す液晶性材料として、メソゲン両端にスペーサを有する材料を用いることが好ましい。メソゲン両端にスペーサを有する液晶性材料は柔軟性に優れるため、このような液晶性材料を用いることにより、本発明の位相差フィルムを透明性に優れたものにできるからである。
【0060】
さらに、本発明に用いられる棒状化合物は、分子内に重合性官能基を有するものが好適に用いられ、なかでも3次元架橋可能な重合性官能基を有するものがより好適に用いられる。上記棒状化合物が重合性官能基を有することにより、上記棒状化合物を重合して固定することが可能になるため、配列安定性に優れ、位相差性の経時変化が生じにくい位相差層を得ることができるからである。なお、重合性官能基を有する棒状化合物を用いた場合、本発明における位相差層には、重合性官能基によって架橋された棒状化合物が含有されることになる。
【0061】
なお、上記「3次元架橋」とは、液晶性分子を互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることを意味する。
【0062】
上記重合性官能基としては、例えば、紫外線、電子線等の電離放射線、或いは熱の作用によって重合する重合性官能基を挙げることができる。これら重合性官能基の代表例としては、ラジカル重合性官能基、或いはカチオン重合性官能基等が挙げられる。さらにラジカル重合性官能基の代表例としては、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が挙げられ、具体例としては、置換基を有するもしくは有さないビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等が挙げられる。また、上記カチオン重合性官能基の具体例としては、エポキシ基等が挙げられる。その他、重合性官能基としては、例えば、イソシアネート基、不飽和3重結合等が挙げられる。これらのなかでもプロセス上の点から、エチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が好適に用いられる。
【0063】
さらにまた、本発明における棒状化合物は液晶性を示す液晶性材料であって、末端に上記重合性官能基を有するものが特に好ましい。このような液晶材料を用いることにより、例えば、互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることができるため、配列安定性を備え、かつ、光学特性の発現性に優れた上記を形成することができるからである。
なお、本発明においては片末端に重合性官能基を有する液晶性材料を用いた場合であっても、他の分子と架橋して配列安定化することができる。
【0064】
本発明に用いられる棒状化合物の具体例としては、下記式(1)〜(17)で表される化合物を例示することができる。
【0065】
【化1】
【0066】
なお、本発明において上記棒状化合物は、1種類のみを用いてもよく、または、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、上記棒状化合物として、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料と、片末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料とを混合して用いると、両者の配合比の調整により重合密度(架橋密度)及び光学特性を任意に調整できる点から好ましい。また、信頼性確保の観点からは、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料が好ましいが、液晶配向の観点からは両末端の重合性官能基が1つであることが好ましい。
【0067】
本発明における位相差部の配向部と接触する面と反対側の面の上記透明フィルム基材からの距離としては、隣接する位相差部同士で同様であることが好ましい。本発明の位相差フィルムの表面形状を平坦なものとすることができ、他の部材との貼り合わせ性に優れたものとすることができるからである。また、本発明においては、配向層が厚みの異なる配向部を有することにより、厚みの異なる位相差部間の厚みの差を吸収させることができるからである。
【0068】
(2)位相差層
本発明に用いられる位相差層は、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むものである。
したがって、上記配向層が、1つの色に対して1つの厚みの配向部を有し、かつ、上記棒状化合物の配列方向が全面で同一方向である1つの配向領域からなるものである場合には、上記位相差層は、1つの位相差領域からなるもの(単一位相差領域)となり、上記配向層が、第1配向領域および第2配向領域を含むものや、厚膜領域および薄膜領域を含むもの等、複数の配向領域を有するものである場合には、それぞれ、第1位相差領域および第2位相差領域を含むものや、低位相差領域および高位相差領域を有するもの等、複数の位相差領域を有するものとなる。
【0069】
本発明における位相差層の形成方法としては、所望の厚みの位相差層を精度良く形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、通常、上記配向層上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を塗工し、必要に応じて硬化処理を行って位相差層を形成することによって製造することができる。
【0070】
3.透明フィルム基材
本発明に用いられる透明フィルム基材は、配向層および位相差層を支持する機能を有するものである。
【0071】
本発明に用いられる透明フィルム基材は、位相差性が低いものであることが好ましい。より具体的には、本発明に用いられる透明フィルム基材は、面内レターデーション値が、0nm〜10nmの範囲内であることが好ましく、0nm〜5nmの範囲内であることがより好ましく、0nm〜3nmの範囲内であることがさらに好ましい。透明フィルム基材の面内レターデーション値が上記範囲よりも大きいと、表示装置の表示品質が低下する場合があるからである。
【0072】
本発明に用いられる透明フィルム基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明フィルム基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0073】
本発明に用いられる透明フィルム基材は、ロール状に巻き取ることができる可撓性を有するフレキシブル材であることが好ましい。
このようなフレキシブル材としては、セルロース誘導体、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類などを例示することができる。なかでも本発明においてはセルロース誘導体を用いることが好ましい。セルロース誘導体は特に光学的等方性に優れるため、光学的特性に優れたものとすることができるからである。
【0074】
本発明においては、上記セルロース誘導体のなかでも、セルロースエステルを用いることが好ましく、さらに、セルロースエステル類のなかでも、セルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
【0075】
上記セルロースアシレート類としては、炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであってもよい。
【0076】
本発明においては、上記低級脂肪酸エステルのなかでもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5%〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。なお、トリアセチルセルロースフィルムを構成するトリアセチルセルロースの酢化度は、フィルム中に含まれる可塑剤等の不純物を除去した後、上記の方法により求めることができる。
【0077】
本発明に用いられる透明フィルム基材の厚みは、本発明の位相差フィルムの用途等に応じて、必要な自己支持性を付与できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、25μm〜125μmの範囲内が好ましく、なかでも40μm〜100μmの範囲内が好ましく、特に60μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。透明フィルム基材の厚みが上記の範囲よりも薄いと、十分な自己支持性を付与できない場合があるからである。また、厚みが上記の範囲よりも厚いと、例えば、長尺状の位相差フィルムを形成した後、裁断加工し、枚葉の位相差フィルムとする際に、加工屑が増加したり、裁断刃の磨耗が早くなってしまう場合があるからである。
【0078】
本発明に用いられる透明フィルム基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
【0079】
4.位相差フィルム
本発明に用いられる位相差フィルムは、上記透明フィルム基材、配向層、および位相差層を有するものであるが、必要に応じて、その他の構成を有するものであっても良い。
【0080】
本発明の位相差フィルムは、枚葉であってもいが、長尺状であることが好ましい。表示装置のサイズ等に応じて自由度高く位相差フィルムを供給可能となる等、製造プロセスの自由度の高いものとすることができるからである。
ここで、長尺状であるとは、ロール状に巻き取ることができる程度の長さのものであることをいうものであり、製造装置に設置できる重量等に応じて任意に決定すればよいが、具体的には、長さが10m以上の範囲内とすることが好ましく、なかでも、50m〜5000mの範囲内とすることが好ましく、特に、100m〜4000mの範囲内とすることが好ましい。
また、長さは幅に対して10倍以上であることが好ましく、なかでも50倍〜5000倍の範囲内であることが好ましく、特に、100倍〜4000倍の範囲内であることがこの好ましい。取扱い性等に優れたものとすることができるからである。
【0081】
本発明の位相差フィルムの位相差層が有する位相差性の程度については、本発明の用途等に応じて適宜決定することができる。したがって、位相差層が示す具体的な面内レターデーションの数値範囲についても特に限定されるものではなく、本発明の用途に応じて適宜調整すればよい。なかでも、本発明においては、位相差層の面内レターデーション値、すなわち、位相差層に含まれる各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4分、λ/2分、またはλ/4+λ/2分に相当する程度である場合には、位相差層に含まれる各位相差部の面内レターデーション値がλ/4(またはλ/2、λ/4+λ/2)±20nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、λ/4(またはλ/2、λ/4+λ/2)±10nmの範囲内であることが好ましく、特にλ/4(またはλ/2、λ/4+λ/2)±5nmの範囲内であることが好ましい。
それぞれの用途において本発明の位相差フィルムが所望の機能をより効果的に発揮できるからである。
【0082】
本発明の位相差フィルムの用途としては、例えば、エレクトロルミネッセント表示装置のエレクトロルミネッセント表示装置用円偏光板や、3次元表示装置の3次元表示用パターン位相差フィルム等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、優れた視認性が要求されるものに用いられることが好ましい。
【0083】
B.EL表示装置用円偏光板
次に、本発明のEL表示装置用円偏光板について説明する。
本発明のEL表示装置用円偏光板は、上述の位相差フィルムと、上記位相差フィルム上に形成され、偏光子を含む偏光板と、を有し、上記配向層に含まれる配向部の上記棒状化合物の配列方向が同一方向であり、上記位相差部の面内レターデーション値が、上記各色のλ/4分に相当するものであることを特徴とするものである。
【0084】
このようなEL表示装置用円偏光板を図を参照して説明する。既に説明した図3に示すように、本発明のEL表示装置用円偏光板20は、上述の位相差フィルム10と、上記位相差フィルム10上に形成された偏光子21からなる偏光板22と、を有し、上記位相差部(3a−1、3a−2、3a−3)の面内レターデーション値が、上記各色のλ/4分に相当するものであり、上記位相差部(3a−1、3a−2、3a−3)に含有される棒状化合物の配列方向が同一方向のものである。
【0085】
本発明によれば、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、コントラストに優れたものとすることができる。
【0086】
本発明のEL表示装置用円偏光板は、少なくとも上述の位相差フィルムおよび偏光子を有するものである。
以下、本発明のEL表示装置用円偏光板の各構成について詳細に説明する。
【0087】
1.位相差フィルム
本発明に用いられる位相差フィルムは、上記「A.位相差フィルム」の項に記載のものであって、上記配向層に含まれる配向部の上記棒状化合物の配列方向が同一方向であり、上記位相差部に含有される棒状化合物の配列方向が同一方向であるもの、すなわち、1つの色に対して1つの厚みの配向部を有し、かつ、上記棒状化合物の配列方向が全面で同一方向である単一配向領域からなるものである。また、上記位相差部の面内レターデーション値が、上記各色のλ/4分に相当するものである。
このような位相差フィルムについては、上記「A.位相差フィルム」の項に記載のものと同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0088】
2.偏光板
本発明における偏光板は、少なくとも偏光子を含むものであれば特に限定されるものではない。
【0089】
このような偏光板としては、少なくとも偏光子を含むものであれば特に限定されるものではなく、例えば、偏光子と、当該偏光子の両面に配置された偏光板保護フィルムとからなるものが一般的である。
【0090】
具体的には、既に説明した図3に示すように、偏光子のみからなり、位相差フィルム状に偏光子が直接接着される態様であってもよく,または、図6に例示するように、偏光子21の両面に偏光板保護フィルム23が貼り合わされた構成を有するものであっても良い。
なお、図6においては、偏光板22は、接着層24を介して位相差フィルム10に接着されている。
【0091】
また、本発明における偏光板の形成箇所としては、既に説明した図3に示すように、偏光板が、透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に貼り合わされたものであっても良く、上記位相差層の上記配向層が形成された面とは反対面上に貼り合わされるものであっても良い。
【0092】
(1)偏光子
本発明に用いられる偏光子としては、透過光を直線偏光とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に液晶表示装置用の偏光板に用いられる偏光子として公知のものを用いることができる。このような偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールからなるフィルムにヨウ素を含浸させ、これを一軸延伸することによってポリビニルアルコールとヨウ素との錯体を形成させたものを挙げることができる。
【0093】
(2)偏光板保護フィルム
本発明に用いられる偏光板保護フィルムとしては、上記偏光子が空気中の水分等に曝されることを防止する機能や、偏光子の寸法変化を防止する機能等を有するものであり、かつ、所望の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、可視光領域における透過率が80%以上であるものが好ましく、90%以上であるものがより好ましい。
ここで、上記偏光板保護フィルムの透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0094】
上記偏光板保護フィルムを構成する材料としては、例えば、セルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類等を挙げることができる。なかでも本発明においては、上記材料としてセルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、またはアクリル系樹脂を用いることが好ましい。
【0095】
上記セルロース誘導体としては、偏光板において偏光子が空気中の水分等に曝されることを防止する機能と、偏光子の寸法変化を防止する機能とを有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記セルロース誘導体としてセルロースエステル類を用いることが好ましく、さらにセルロースエステル類のなかでもセルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
【0096】
上記セルロースアシレート類としては、炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであってもよい。
【0097】
また本発明においては、上記低級脂肪酸エステルのなかでもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。このようなトリアセチルセルロールは光学的等方性に優れるからである。
ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。なお、トリアセチルセルロースフィルムを構成するトリアセチルセルロースの酢化度は、フィルム中に含まれる可塑剤等の不純物を除去した後、上記の方法により求めることができる。
【0098】
なお、従来、セルロース誘導体からなるフィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、表面をけん化処理することによってポリビニルアルコールからなる偏光子との接着性を向上することができる。
【0099】
一方、上記シクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。このような上記環状オレフィンからなるモノマーとしては、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等を挙げることができる。また、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであっても好適に用いることができる。また、上記シクロオレフィン系樹脂は上記環状オレフィンからなるモノマーの単独重合体であってもよく、または、共重合体であってもよい。
【0100】
また、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂は、23℃における飽和吸水率が1質量%以下であるものが好ましく、なかでも0.1質量%〜0.7質量%の範囲内であるものが好ましい。このようなシクロオレフィン系樹脂を用いることにより、偏光板を吸水による光学特性の変化や寸法の変化がより生じにくいものとすることができるからである。
ここで、上記飽和吸水率は、上記吸水率は、ASTMD570に準拠し23℃の水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められる。
【0101】
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、Ticona社製 Topas(登録商標)、ジェイエスアール社製 アートン(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONOR(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONEX(登録商標)、三井化学社製 アペル(登録商標)等を挙げることができる。
【0102】
また、上記アクリル系樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)などが挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキル、特に好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0103】
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、例えば、日本触媒社製アクリビュア(登録商標)を挙げることができる。
【0104】
また、本発明に用いられる偏光板保護フィルムの厚みは特に限定されないが、通常、5μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、特に15μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、さらに30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0105】
3.EL表示装置用円偏光板
本発明のEL表示装置用円偏光板は、上述の位相差フィルムおよび偏光子を含むものであるが、必要に応じて、他の構成を有するものであっても良い。
尚、位相差フィルムの遅相軸と偏光子の偏光軸が45度±5度、好ましくは45度±3度、より好ましくは45度±1度の範囲の関係になる様に配置することが好ましい。(楕)円偏光板としての機能が発現するからである。
【0106】
C.3次元表示用パターン位相差フィルム
次に、本発明の3次元表示用パターン位相差フィルムについて説明する。
本発明の3次元表示用パターン位相差フィルムは、上述の位相差フィルムを有するものであり、上記配向層が、上記棒状化合物を一定方向に配列させる第1配向領域および第1配向領域とは異なる方向に配列させる第2配向領域を含む態様(第1態様)と、厚みの大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域を有し、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させるものである態様(第2態様)と、の2つの態様に分けることができる。
以下、各態様に分けて本発明の3次元表示用パターン位相差フィルムについて説明する。
【0107】
I.第1態様
本態様の3次元表示用パターン位相差フィルムは、上述の位相差フィルムを有するものであり、上記位相差フィルムに含まれる配向層が、上記棒状化合物を一定方向に配列させる第1配向領域および第1配向領域とは異なる方向に配列させる第2配向領域を含むことを特徴とするものである。
【0108】
このような本態様のパターン位相差フィルムを図を参照して説明する。図7は、図8のB−B線断面図であり、図8は、本態様のパターン位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。図7および図8に例示するように、本態様のパターン位相差フィルム30は、上述の位相差フィルム10を有するものであり、上記位相差フィルム10に含まれる配向層2が、屈折率異方性を有する棒状化合物を一定の方向に配列させる第1配向領域12aおよび第1配向領域12aとは異なる方向に配列させる第2配向領域12bを含むものである。
また、第1配向領域12aに含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3)には、一定方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成され、第2配向領域12b(2b´−1、2b´−2、2b´−3)には、第1配向領域とは異なる方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成されている。また、位相差層3は、上記第1配向領域12aおよび第2配向領域12bの棒状化合物の配列方向に配列された棒状化合物を含む第1位相差領域13aおよび第2位相差領域13bを有し、さらに、第1位相差領域13aが、第1配向領域12aに含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3a´−1、3a´−2、3a´−3)を含み、第2位相差領域13bが、第2配向領域12bに含まれる配向部(2b´−1、2b´−2、2b´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3b´−1、3b´−2、3b´−3)を含むものである。
なお、この例においては、第1位相差領域および第2位相差領域がそれぞれ本態様のパターン位相差フィルムの長尺方向に対して45°および135°の方向に棒状化合物が配列され、両領域の遅相軸が直交するものである。また、図8中の矢印は、各配向領域での棒状化合物を配列させる方向である。さらに、図8におけるW1、W2はそれぞれ第1配向領域12aおよび第2配向領域12bの帯幅を示す。
【0109】
本態様によれば、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、色再現性に優れた3次元表示装置を形成可能とすることができる。
【0110】
本態様のパターン位相差フィルムは、上述の位相差フィルムを有するものである。また、上記位相差フィルムは、上述のように、透明フィルム基材、配向層および位相差層を少なくとも含むものである。
以下、本態様のパターン位相差フィルムの各構成について詳細に説明する。
なお、上記位相差フィルムを構成する透明フィルム基材については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0111】
1.配向層
本態様に用いられる配向層は、上記棒状化合物を一定方向に配列させる第1配向領域および第1配向領域とは異なる方向に配列させる第2配向領域を含むものである。
また、上記配向層は、上記第1配向領域および第2配向領域にそれぞれ配向部を含むものであるが、このような配向部については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0112】
本態様における第1配向領域および第2配向領域は、棒状化合物を配列させる方向が互いに異なるものである。すなわち、第1配向領域に含まれる配向部と、第2配向領域に含まれる配向部とでは、上記棒状化合物を配列させる方向が異なるものである。
また、本態様においては当該第1配向領域および第2配向領域はパターン状に形成されている。
【0113】
本態様における第1配向領域および第2配向領域が形成されるパターンは、本態様のパターン位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば、帯状パターン、モザイク状パターン、千鳥配置状パターン等を挙げることができる。なかでも本態様においては上記第1配向領域および第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。このようなパターンで第1配向領域および第2配向領域が形成されていることにより、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、3次元表示装置において右目用映像および左目用映像が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になる。このため、上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることにより、本態様のパターン位相差フィルムを用いて容易に3D液晶表示装置を製造することができるようになるからである。換言すると、本態様のパターン位相差フィルムを3D液晶表示装置に好適に用いられるものにできるからである。
【0114】
なお、上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されている場合の具体例としては、既に説明した図7および図8に示すものを挙げることができる。図7および図8に示すように、本態様に用いられる配向層2においては上記第1配向領域12aおよび上記第2配向領域12bが互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。
【0115】
上記第1配向領域および第2配向領域が帯状のパターンに形成されている場合、第1配向領域および第2配向領域の幅は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。しかしながら、本態様においては第1配向領域の幅と第2配向領域の幅は同一であることが好ましい。3次元表示装置においては、通常、右目用映像および左目用映像が同一の幅で形成されていることから、上記第1配向領域および上記第2配向領域の幅を同一幅とすることにより、本態様のパターン位相差フィルムを用いて3次元表示装置を製造する場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、3次元表示装置において右目用映像および左目用映像が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になり、その結果、本態様のパターン位相差フィルムを用いて容易に3D液晶表示装置を製造することができるようになるからである。
【0116】
上記第1配向領域および上記第2配向領域の具体的な幅としては、本態様のパターン位相差フィルムの用途に応じて適宜決定される。例えば、本態様のパターン位相差フィルムを、3次元表示可能な液晶表示装置を製造するために使用する場合、上記第1配向領域および第2配向領域の幅は液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて画素部が形成されている幅に対応するように適宜決定されることになる。このように上記第1配向領域および第2配向領域の幅は特に限定されるものではないが、通常、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100μm〜600μmの範囲内であることがより好ましい。
【0117】
さらに、本態様において上記第1配向領域および上記第2配向領域が上記帯状のパターンに形成されている場合、帯状のパターンが形成される方向としては特に限定されるものではない。例えば、上記帯状のパターンの形成方向が本態様のパターン位相差フィルムの長手方向(長尺方向)と平行となる方向であってもよく、あるいは直交する方向であってもよく、さらには斜めに交差する方向であってもよい。なかでも本態様のパターン位相差フィルムが長尺状のものから枚葉状とされるものである場合には、上記帯状のパターンは帯状の形成方向が長尺状のパターン位相差フィルムの長手方向と平行となる方向であること、すなわち、上記第1配向領域および上記第2配向領域が、長手方向に互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。
これにより、上記第1位相差領域および第2位相差領域が形成されたパターンと、表示装置に用いられるカラーフィルタ等において右目用映像および左目用映像が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になるからである。
【0118】
本態様における第1配向領域および第2配向領域が有する配向規制力、すなわち、棒状化合物を配列させる方向としては、互いに異なるものであれば特に限定されるものではないが、90°異なる方向および45°異なる方向等とすることが好ましい。
配列方向が例えば、長尺方向に対して45°/135°(図8)、または、0°/90°(図9)のように互いに直交する方向の場合、第1配向領域および第2配向領域上に形成される第1位相差領域および第2位相差領域に含まれるそれぞれの位相差部の面内レターデーション値を対応する各色のλ/4分に相当するものとすることにより、これらの位相差領域を透過することで直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、容易に3次元表示が可能な表示装置を製造するために好適に用いられるものにできるからである。
また、配列方向が長尺方向に対して0°/45°(図10)または0°/135°(図11)のように、形成される第1配向領域および第2配向領域の棒状化合物の配列方向が45°の角度となる方向である場合には、上記第1位相差領域および第2位相差領域に含まれるそれぞれの位相差部の面内レターデーション値を対応する各色のλ/2分に相当するものとし、さらに、λ/4板と組み合わせて用いることにより、容易に3D表示装置を製造するために好適に用いられるものにできるからである。
なお、90°異なる方向とは、本態様のパターン位相差フィルムを用いて3次元表示が可能な表示装置を形成した際に、精度良く3次元表示を行うことができるものであれば特に限定されるものではないが、通常、90°±3°の範囲内であることが好ましく、なかでも、90°±2°程度の範囲内であることが好ましく、なかでも、90°±1°程度の範囲内であることが好ましい。高性能な3次元表示が可能な表示装置とすることができるからである。
また、45°異なる方向とは、本態様のパターン位相差フィルムを用いて3次元表示が可能な表示装置を形成した際に、精度良く3次元表示を行うことができるものであれば特に限定されるものではないが、通常、45°±3°の範囲内であることが好ましく、なかでも、45°±2°程度の範囲内であることが好ましく、なかでも、45°±1°程度の範囲内であることが好ましい。高性能な3次元表示が可能な表示装置とすることができるからである。
なお、図9〜11中の符合については、図8と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0119】
2.位相差層
本態様に用いられる位相差層は、上記第1配向領域および第2配向領域に対応して、上記棒状化合物が一定方向に配列された第1位相差領域および第1位相差領域とは異なる方向に上記棒状化合物が配列された第2位相差領域を含むものである。
また、上記位相差層は、上記第1位相差領域および第2位相差領域にそれぞれ位相差部を含むものであるが、このような位相差部については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0120】
本態様における第1位相差領域および第2位相差領域は、上述した配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有することにより本態様のパターン位相差フィルムに位相差性を付与するものである。また、本態様においては上述したような特徴を有する配向層が形成されていることにより、本態様における位相差層は第1位相差領域と第2位相差領域とが、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと同一のパターン状に形成されたものになる。
【0121】
本態様に用いられる位相差層は上述した棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差層の厚みに依存して決定されるものである。したがって、本態様に用いられる位相差層の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本態様のパターン位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定されるものである。
本態様においては、上記第1配向領域および第2配向領域が有する配向規制力が互いに直交するものである場合、上記第1位相差領域および第2位相差領域の面内レターデーション値、すなわち、上記両領域に含まれる位相差部の面内レターデーション値を対応する各色のλ/4分に相当するような範囲内とするものであることが好ましい。これにより、本態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記第1位相差領域および上記第2位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、より精度良く3次元映像を表示できるものとすることができるからである。
また、上記第1配向領域および第2配向領域が有する配向規制力が45°の角度となる方向、すなわち、第1配向領域および第2配向領域の棒状化合物の配列方向が45°の角度となる方向である場合には、上記第1位相差領域および第2位相差領域に含まれるそれぞれの位相差部の面内レターデーション値を対応する各色のλ/2分に相当するような範囲内とするものであることが好ましい。第1位相差領域の遅相軸の方向と遅相軸が平行なλ/4板と組み合わせて用いることにより、容易に3D表示装置を製造するために好適に用いられるものにできるからである。
【0122】
ここで、このような位相差領域を有する場合に、λ/4板と組み合わせることにより、容易に3D表示装置を製造することができる点について、より詳細に説明する。図12は、本態様のパターン位相差フィルムを説明する説明図であり、パターン位相差フィルムとλ/4板とを組み合わせた、3次元表示可能な表示装置の一例を示すものである。図12に例示するように、パターン位相差フィルムと、λ/4板とを組み合わせて用いる表示装置は、パッシブ方式により3D表示が可能なものとなる。その原理は次の通りである。
まず、表示装置の画素部を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。次に、パターン位相差フィルムとして、位相差層の第1位相差領域が左目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成され、かつ第1位相差領域以外の領域(図12では、当該領域には何も形成されていないものとする。)が右目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成されたものを用意する。そして、このような本態様のパターン位相差フィルムを、偏光板の表示面側に配置し、さらにλ/4板をパターン位相差フィルムの表示面側に配置する。このとき、第1位相差領域の遅相軸の方向と、偏光板の偏光軸の方向とが45°で交差するようにし、さらに第1位相差領域の遅相軸方向とλ/4板の遅相軸方向とが平行または直交の関係になるようにする。このようにパターン位相差フィルムとλ/4板とを配置することによって、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された映像(以下、それぞれ「右目用映像」、「左目用映像」と称する場合がある。)は、次のような経路で観察者に視認されることになる。
すなわち、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された各映像は、まず、偏光板を透過することから、それぞれが直線偏光に変換されることになる。ここで、図12においては、偏光板の偏光軸は0°方向となっているため、第2偏光板を透過した各映像も、0°方向の直線偏光となる。次に、このように直線偏光に(0°)変換された各映像は、本態様のパターン位相差フィルムに入射することになるが、左目用映像は第1位相差領域を通過し、右目用映像は位相差層が形成されていない領域を通過するため、左目用映像は偏光軸が90°の直線偏光(L1)として、パターン位相差フィルムを透過するが、右目用映像には変化はなく、偏光軸が0°の直線偏光(L2)のままパターン位相差フィルムを透過することになる。次に、L1およびL2がλ/4板に入射することにより、左目用映像は右旋回の円偏光(C1)に、右目用映像は左旋回の円偏光(C2)に、それぞれ変換されることになる。
このように、パターン位相差フィルムおよびλ/4板を通過した右目用映像および左目用映像は、それぞれ右円偏光と左円偏光に変換されることになるため、視聴者に右目用フィルターと左目用フィルターとを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目用フィルターのみを通過し、かつ左目用の映像が左目用フィルターのみを通過するようにすることによって、右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることができ、3次元表示が可能となるのである。
なお、図12においては、パターン位相差フィルムにおける位相差層において、第2位相差領域には何も形成されていない例を説明したが、例えば、上記第2位相差領域に、面内レターデーション値がλ/2分に相当し、かつ遅相軸方向が上記第1位相差領域の遅相軸方向と45°で交差する関係にあり、さらに遅相軸方向が、偏光板の偏光軸方向と平行又は直交の関係にある第2位相差領域が形成されている場合であっても、上記と同様に3次元表示可能な表示装置を得ることができる。
【0123】
3.パターン位相差フィルム
(i)他の構成
本態様のパターン位相差フィルムは少なくとも上述の位相差フィルムを有するものであるが、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。本態様に用いられる他の構成としては、所望の3次元映像を表示することができるものであれば特に限定されるものではなく、本態様のパターン位相差フィルムの用途等に応じて所望の機能を有するものを適宜選択して用いることができる。このような他の構成の例としては、例えば、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に形成されるアンチグレア層または反射防止層を挙げることができる。このようなアンチグレア層および反射防止層が形成されていることにより、表示品質の良い表示装置を得ることができるという利点がある。なお、上記反射防止層、およびアンチグレア層は一方のみが用いられてもよく、または両方が用いられてもよい。
また、上記フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上または上記位相差層の上記配向層が形成された面とは反対面上に偏光板を有するもの、すなわち、偏光板付パターン位相差フィルムであっても良い。なお、このような偏光板については上記「B.EL表示装置用円偏光板」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0124】
図13は、本態様のパターン位相差フィルムに反射防止層が用いられる場合の一例を示す概略断面図である。図13に例示するように本態様のパターン位相差フィルム30には、上記透明フィルム基材1の上記配向層2が形成された面とは反対面上にアンチグレア層または反射防止層14が形成されていてもよい。
【0125】
上記アンチグレア層は、太陽や蛍光灯などからの外光が、表示装置の表示画面に入射して反射することから生じる画面の映り込みを低減させる機能を有する層である。一方、上記反射防止層は、表面の正反射率を抑えることで画像のコントラストがよくなり、その結果、画像の視認性を向上させる機能を有するものである。本態様に用いられるアンチグレア層、反射防止層としては、所望のアンチグレア機能、または反射防止機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、表示画質向上を目的として表示装置に用いられるものとして一般的に公知のものを用いることができる。上記アンチグレア層としては、例えば、微粒子を分散させた樹脂層を挙げることができ、上記反射防止層としては、例えば、屈折率の異なる複数の層が積層された構成を有するものを挙げることができる。尚、アンチグレア層の最表面に反射防止層を設ければ、明室における画像の視認性を更に向上することができる。
【0126】
(ii)パターン位相差フィルム
本態様のパターン位相差フィルムは、上述した第1配向領域および第2配向領域が形成されたパターンに対応するように、位相差層に第1位相差領域と第2位相差領域とがパターン状に形成された構成を有するものである。ここで、上記第1位相差領域および第2位相差領域が有する位相差性の程度については、所望の3次元映像を表示できるものであれば特に限定されるものではなく、本態様の用途等に応じて適宜決定することができる。したがって、第1位相差領域および第2位相差領域が示す具体的な面内レターデーションの数値範囲についても特に限定されるものではなく、本態様の用途に応じて適宜調整すればよい。なかでも、本態様においては、上記第1配向領域および第2配向領域が有する配向規制力が互いに直交するものである場合、位相差層(各位相差部)の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4分に相当する程度であり、上記第1配向領域および第2配向領域が有する配向規制力が45°の角度となる方向である場合には、位相差層(各位相差部)の面内レターデーション値が対応する各色のλ/2分に相当する程度であることが好ましい。
なお、本態様における位相差層において第1位相差領域および第2位相差領域が示す面内レターデーション値は、遅相軸の方向が異なる以外はほぼ同一となる。
【0127】
なお、本態様のパターン位相差フィルムにおいて位相差層に第1位相差領域および第2位相差領域からなるパターンが形成されていることは、例えば、偏光板クロスニコルの中にサンプルを入れて、サンプルを回転させた場合に明線と暗線が反転することを確認することにより評価することができる。このとき、第1位相差領域および第2位相差領域からなるパターンが細かい場合は偏光顕微鏡で観察するとよい。また、前述したAxoScanで各パターン内の遅相軸の方向(角度)を測定しても良い。
【0128】
II.第2態様
本態様の3次元表示用パターン位相差フィルムは、上述の位相差フィルムを有するものであり、上記配向層が、厚みの大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域を有し、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させるものであることを特徴とするものである。
【0129】
このような本態様のパターン位相差フィルムを図を参照して説明する。図14は、図15のC−C線断面図であり、図15は、本態様のパターン位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。図14および図15に例示するように、本態様のパターン位相差フィルム30は、上述の位相差フィルム10を有するものであり、厚みの大きい厚膜領域12b´および上記厚膜領域12b´よりも厚みが小さい薄膜領域12a´を含み、上記厚膜領域12b´および上記薄膜領域12a´が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるものである。
また、薄膜領域12a´に含まれる配向部(2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3)には、一定方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成され、厚膜領域12b´(2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3)には、薄膜領域12a´と同一方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成されている。また、薄膜領域12a´に含まれる配向部(2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3)と、厚膜領域12b´に含まれる配向部(2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3)とは、それぞれ、表示装置の同じ色に対応するものである。すなわち、配向部2a´´−1および配向部2b´´−1、配向部2a´´−2および配向部2b´´−2、配向部2a´´−3および配向部2b´´−3は、それぞれ、表示装置の同じ色のパターンに対応するものである。
また、位相差層3は、棒状化合物が同一方向に配列された低位相差領域13b´および高位相差領域13a´を有し、さらに、高位相差領域13a´が、薄膜領域12a´に含まれる配向部(2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3a´´−1、3a´´−2、3a´´−3)を含み、低位相差領域13b´が、厚膜領域12b´に含まれる配向部(2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3b´´−1、3b´´−2、3b´´−3)を含むものである。
なお、この例においては、高位相差領域13a´および低位相差領域13b´は、それぞれ長尺方向に対して0°の方向に棒状化合物が配列され、両領域の遅相軸が平行なものである。また、図15中の矢印は、棒状化合物の配列方向を示すものである。
【0130】
本態様の3次元表示用パターン位相差フィルムは、上述の位相差フィルムを有するものである。また、上記位相差フィルムは、上述のように、透明フィルム基材、配向層および位相差層を少なくとも含むものである。
以下、本態様の3次元表示用パターン位相差フィルムの各構成について詳細に説明する。
なお、上記位相差フィルムを構成する透明フィルム基材については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0131】
1.配向層
本態様に用いられる配向層は、上記位相差フィルムに含まれる配向層が、厚みの大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域を有し、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるものである。
また、上記配向層は、上記厚膜領域および薄膜領域にそれぞれ配向部を含むものであるが、このような配向部については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0132】
本態様における配向層は、厚みの大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みの小さい薄膜領域を含み、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるものである。
ここで、厚みの大きい厚膜領域は、表示装置で表示される色に対する厚みが厚い配向部を含むものであり、薄膜領域は、上記厚膜領域に含まれる配向部よりも同じ色に対する厚みが薄い配向部を含むことを示すものである。
【0133】
このような配向層が用いられることにより、当該配向層上に形成される位相差層において棒状化合物の配列方向は位相差層全体において同一方向になるが、上記厚膜領域および上記薄膜領域に対応して、低位相差領域および上記低位相差領域よりも厚みの大きい高位相差領域が形成されることになる。
ここで、上記厚膜領域上に形成された位相差層(低位相差領域)と、上記薄膜領域上に形成された位相差層(高位相差領域)とは厚みが異なるため、この厚みの差に相当する分だけ高位相差領域は、低位相差領域よりも位相差値が高くなることになる。
【0134】
このため、本態様における厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、低位相差領域と高位相差領域との位相差値の差をどの程度にするかによって適宜決定されるものである。したがって、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、本態様の用途、および後述する位相差層に用いられる棒状化合物の種類等に応じて適宜決定されるものであり特に限定されるものではない。なかでも本態様においては上記厚膜領域と上記薄膜領域との厚みの差が、位相差層の高位相差領域の面内レターデーション値と、位相差層の低位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値との差が対応する各色のλ/2分に相当する距離であることが好ましい。これにより、例えば、配向層上に位相差層を形成する際に、低位相差領域の各位相差部の面内レターデーションが対応する各色のλ/4分に相当するようにすることにより、得られるパターン位相差フィルムは、低位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4分に相当し、かつ高位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4+λ/2に相当することになるが、このような態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記低位相差領域、上記高位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、精度良く3次元映像を表示できるからである。
なお、ここでいう厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、厚膜領域に含まれる配向部と、薄膜領域に含まれ、厚膜領域に含まれる配向部と同じ色に対応する配向部との厚みの差をいうものである。
【0135】
なお、厚膜領域および薄膜領域の厚みは、各領域に含まれる全ての配向部の最も厚い配向部の厚みをいうものであり、上記厚膜領域の厚み、上記薄膜領域の厚み、および上記厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、それぞれ図16中のD4、D5、およびD6で示す距離を意味するものとする。
また、図16に示すように上記厚膜領域および上記薄膜領域の厚みは微細凹凸形状を含む厚みをいうものとする。
【0136】
上記厚膜領域および上記薄膜領域は配向層の表面にパターン状に形成されたものである。ここで、上記厚膜領域および上記薄膜領域が形成されるパターン、幅、および方向は、本態様の用途等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではないが、上記「I.第1態様」における第1配向領域および第2配向領域と同様とすることができる。
【0137】
2.位相差層
本態様における位相差層は、上記位相差層が、上記厚膜領域および上記薄膜領域に対応して、低位相差領域および上記低位相差領域よりも厚みの大きい高位相差領域を有するものである。
また、上記位相差層は、上記低位相差領域および高位相差領域にそれぞれ位相差部を含むものであるが、このような位相差部については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0138】
本態様における低位相差領域および高位相差領域は、上述した配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有することにより本態様のパターン位相差フィルムに位相差性を付与するものである。また、本態様においては上述したような特徴を有する配向層が形成されていることにより、本態様における位相差層は低位相差領域および高位相差領域が、上記厚膜領域および上記薄膜領域が形成されたパターンと同一のパターン状に形成されたものになる。
【0139】
本態様に用いられる位相差層は、後述する棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差層の厚みに依存して決定されるものである。したがって、本態様に用いられる位相差層の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本態様の用途等に応じて適宜決定されるものである。また、本態様における位相差層は、低位相差領域と、高位相差領域とでは厚みが異なることになる。なかでも本態様においては、低位相差領域の厚みは低位相差領域の各位相差部の面内レターデーションが対応する各色のλ/4分に相当するような範囲内であることが好ましい。これにより、上記厚膜領域と上記薄膜領域との厚みの差を低位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値と、高位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値との差が対応する各色のλ/2分に相当する距離とすることにより、低位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4分に相当し、かつ位相差層における高位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4+λ/2分に相当することになるが、このような態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記低位相差領域、上記高位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、より精度良く3次元映像を表示できるからである。
【0140】
3.パターン位相差フィルム
(i)他の構成
本態様のパターン位相差フィルムは少なくとも上記透明フィルム基材、配向層、および位相差層を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。本態様に用いられる他の構成としては、例えば、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に形成されるアンチグレア層または反射防止層を挙げることができる。また、偏光板を有するものであっても良い。
このようなアンチグレア層または反射防止層、および偏光板としては、具体的には、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0141】
(ii)パターン位相差フィルム
本態様のパターン位相差フィルムは、上述した厚膜領域および薄膜領域が形成されたパターンに対応するように、位相差層に高位相差領域と低位相差領域とがパターン状に形成された構成を有するものとなる。ここで、上記高位相差領域および低位相差領域が有する位相差性の程度については、所望の3次元映像を表示できるものであれば特に限定されるものではなく、本態様の用途等に応じて適宜決定することができる。したがって、高位相差領域および低位相差領域が示す具体的な面内レターデーションの数値範囲についても特に限定されるものではなく、本態様の用途に応じて適宜調整すればよい。そして、本態様においては厚膜領域と薄膜領域との厚みの差を調整することにより、高位相差領域および低位相差領域に任意の値の面内レターデーションを付与することができる。なかでも、本態様のパターン位相差フィルムを上記高位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4+λ/2分に相当する程度であり、かつ上記低位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4分に相当する程度であることが好ましい。
なお、本態様における位相差層において、高位相差領域の面内レターデーション値と低位相差領域の面内レターデーション値は異なるが、遅相軸の方向はほぼ同一の方向となる。
【0142】
また、本態様における位相差層において高位相差領域および低位相差領域が形成されるパターンについても特に限定されるものではなく、本態様の用途等に応じて適宜決定することができる。なお、高位相差領域および低位相差領域が形成されるパターンは配向層において厚膜領域および薄膜領域が形成されたパターンに一致するものになるため、厚膜領域および薄膜領域を形成するパターンを選択することによって、同時に高位相差領域および低位相差領域が形成されるパターンを決定することになる。
【0143】
なお、本態様のパターン位相差フィルムにおいて位相差層に高位相差領域および低位相差領域からなるパターンが形成されていることは、例えば、面内レターデーション値を測定し比較することにより評価することができる。
【0144】
D.位相差フィルムの製造方法
次に本発明の位相差フィルムの製造方法について説明する。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、上述の位相差フィルムの製造方法であって、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を有するロール状金型と、配向層形成用樹脂組成物からなる配向層形成用層と、を接触させた後、加圧し、上記配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を賦型する賦型工程と、上記賦型工程後に、上記配向層形成用層を硬化させる硬化工程および上記配向層形成用層を上記ロール状金型から剥離し、配向層を形成する剥離工程と、上記配向層上に上記棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布する塗布工程と、上記位相差層形成用塗工液の塗膜に含まれる棒状化合物を、上記配向部の表面に形成された微細凹凸形状の形成方向に沿って配列させる配向工程と、を有することを特徴とするものである。
【0145】
このような本発明の位相差フィルムの製造方法を図を参照して説明する。図17および図18に例示するように、本発明の位相差フィルムの製造方法は、透明フィルム基材1上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工することにより(図17(a))、上記配向層形成用層2´を形成し、上記配向層形成用層2´を、上記配向層の表面形状に対応し、ロールの回転方向に平行な帯状の金型部(42a−1、42a−2、42a−3)を含んでなる凹凸形状を有するロール状金型40上に配置することにより接触させた後、加圧ロールにて加圧することにより(図17(b))、上記配向層形成用層2´に、上記ロール状金型40の表面の凹凸形状を賦型し、その後、配向層形成用層2´に対してロール状金型40上に接触させた状態で紫外線を照射し、配向層形成用層2´を硬化させ(図17(c))、上記配向層形成用層を上記ロール状金型40から剥離することにより、透明フィルム基材1および上記透明フィルム基材1上に形成され、配向部(2a−1、2a−2、2a−3)を含む配向層2を形成する(図17(d))。
【0146】
次いで、図18(a)に例示するように、上記配向層2上に、屈折率異方性を有する棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜3´を加熱することにより、塗膜3´に含まれる棒状化合物を、上記配向層2に含まれる配向部(2a−1、2a−2、2a−3)の表面に形成された微細凹凸形状の方向に沿って配列させることにより(図18(b))、上記配向層2上に上記各配向部(2a−1、2a−2、2a−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3a−1、3a−2、3a−3)を含む位相差層3を形成し、配向部(2a−1、2a−2、2a−3)のパターンが互いに平行な帯状である位相差フィルム10とするものである(図18(c))。
【0147】
なお、この例においては、図17(a)が賦型工程であり、図17(b)が硬化工程、図17(c)が剥離工程であり、図18(a)が塗布工程、図18(b)が配向工程である。
【0148】
本発明によれば、上記ロール状金型を用いることにより、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる配向部を含む配向層を容易かつ大量に製造することができる。
このため、上述のような表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる位相差部を含む位相差層を有する位相差フィルムを容易かつ大量に製造することができる。
【0149】
本発明の位相差フィルムの製造方法は、賦型工程、硬化工程、剥離工程、塗布工程および配向工程を少なくとも有するものである。
以下、本発明の位相差フィルムの製造方法に含まれる各工程について詳細に説明する。
【0150】
1.賦型工程
本発明における賦型工程は、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を有するロール状金型と、配向層形成用樹脂組成物からなる配向層形成用層と、を接触させた後、加圧し、上記配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を賦型する工程である。
【0151】
(1)ロール状金型
本発明に用いられるロール状金型は、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を有するものである。
ここで、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状は、賦型することにより、上記配向層を形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、通常、上記配向層の表面形状を反転させたものである。
このため、本工程においては、加圧することによって、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を、上記配向層形成用層に賦型することにより、上述の配向層を形成することができる。
また、本工程により形成される配向層は、配向部のパターンが互いに平行な帯状のものである。すなわち、上記ロール状金型の配向層の表面形状に対応した凹凸形状は、配向部のパターンが互いに平行な帯状である配向層の表面形状に対応するものであり、ロールの回転方向と平行に、平行な帯状である配向部のパターンに対応して、平行な帯状の金型部を含んでなるものである。
【0152】
このようなロール状金型としては、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、基材表面に、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を切削等により形成したものや、基材および基材上に形成された凸部とを有するものを用いることができる。
本発明においては、なかでも、基材および基材上に形成された凸部を有するものを好ましく用いることができる。上記凹凸形状を精度良く形成することができるからである。
【0153】
本工程に用いられるロール状金型を構成する材料としては、上記凹凸形状を精度良く形成できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、金属材料や、金属以外の無機材料であっても良く、樹脂等を用いるものであっても良い。
具体的には、無機材料からなる基材と無機材料からなる凸部とからなるものや、無機材料からなる基材と樹脂からなる凸部からなるもの、樹脂からなる基材と無機材料からなる凸部からなるものを挙げることができる。
本工程においては、なかでも、金属材料および/または無機材料からなるもの、すなわち、上記ロール状金型が、金属基材と金属基材上に形成された無機材料からなる凸部とを有するもの、金属基材と金属基材上に形成された金属材料からなる凸部とを有するもの、無機基材と無機基材の上に形成された金属材料からなる凸部とを有するもの、または、無機基材と無機基材の上に形成された無機材料からなる凸部とを有するものであることが好ましい。
【0154】
本工程における基材を構成する金属材料としては、上述の形状の配向部対応部を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、ニッケル、ステンレス、ブリキ、鉄、銅、銀、金、クロム、亜鉛、珪素、チタン、タンタル、スズ、アルミ、ニッケル−リンおよびこれらの合金、アルマイト等を挙げることができ、なかでも、ニッケル、銅、クロム、ステンレスであることが好ましい。
また、上記基材を構成する無機材料としては、表面に微小なライン状凹凸構造を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、酸化チタン(TiO2、Ti3O5)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ケイ素(SiO、SiO2)、酸化錫(SnO2)、酸化アルミニウム(Al203)、酸化クロム(Cr2O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO、ZnO2)のような金属酸化物、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化マグネシウム(MgO)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、グラッシーカーボン、セラミック、窒化珪素、窒化炭素等を挙げることができ、なかでも、ダイヤモンドライクコーティング、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物であることが好ましい。配向部対応部表面に微細凹凸形状を容易に形成できるからである。また、剥離性に優れるため、本工程後の配向層形成用層を容易に剥離できるからである。
【0155】
本工程における基材の形状としては、上述の表面形状を精度良く形成できるものであれば特に限定されるものではないが、ロール形状、スリーブ形状等とすることができ、なかでも、スリーブ形状であることが好ましい。上記形状がスリーブ形状であることにより、配向層を製造効率高く製造することが可能となるからである。また、スリーブ形状のものは、ロール形状のものに比べて軽量であり、取扱いが容易となるといった利点を有するからである。
ここで、ロール形状の基材としては、具体的には、軸付ロール、軸なしパイプ等を挙げることができる。ここで、軸なしパイプとは、その厚みが3000μm以上である円筒形上の基材を指すものである。
また、スリーブ形状とはシームレスの基材の帯状体を表し、上記スリーブ形状の基材は空気圧力や応力により容易に変形させることができるものであり、具体的にはその厚みが1000μm以下の円筒形状の基材を指すものである。
本工程に用いられる基材としては、継ぎ目のないシームレスであることが好ましいが、板状の基材を円筒状にした継ぎ目を有するものも用いることができる。
【0156】
本工程における凸部を構成する材料としては、上記基材上に安定的に積層できるものであれば特に限定されるものではなく、金属材料、金属以外の無機材料、樹脂等を用いることができる。
上記凸部を構成する金属材料としては、ニッケル、ステンレス、ブリキ、鉄、銅、銀、金、クロム、亜鉛、珪素、チタン、タンタル、スズ、アルミ、ニッケル−リン、モリブデン等の金属やこれらの合金等を挙げることができる。
また、無機材料としては、酸化チタン(TiO2、Ti3O5)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ケイ素(SiO、SiO2)、酸化錫(SnO2)、酸化アルミニウム(Al203)、酸化クロム(Cr2O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO、ZnO2)のような金属酸化物、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化マグネシウム(MgO)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、グラッシーカーボン、セラミック、窒化珪素、窒化炭素等を挙げることができ、なかでも、DLC、ニッケル、クロム、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物であることが好ましい。例えば、基材が金属基材である場合、上記基材上に容易に形成可能だからである。
【0157】
本工程における無機材料からなる凸部の形成方法としては、所望の厚みの配向部対応部を精度良く形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、材料に応じて適宜選択されるものである。具体的には、蒸着法、スパッタ法、気相成長法(CVD法)等の乾式めっき法、湿式めっき法、塗布法等を挙げることができる。
具体的には、クロム、ニッケル等の金属材料である場合には、湿式めっき法あるいは乾式めっき法を用いることが好ましく、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物、DLC等である場合には、乾式めっき法を用いることが好ましい。このような方法であることにより、厚み精度良く形成することができるからである。
【0158】
このようなロール状金型の形成方法としては、上記ロール状金型が基材および基材上に形成された凸部とを有するものである場合には、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を精度良く形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、基材上に、上記配向部に対応する凸部を形成した後に、凸部の表面を研磨処理を行う方法を挙げることができる。
【0159】
図19はロール状金型の形成方法の一例を示す工程図であり、より具体的には、既に説明した図1に記載の配向層を形成可能なロール状金型の形成方法の一例を示すものである。図19に例示するように、まず、基材としてステンレス、ニッケルメッキあるいはクロムメッキ、気相成長法(CVD法)によりDLCなどの表面を有する金属あるいは無機基材41を準備し、上記金属あるいは無機基材41のペーパー研磨により表面を略一定方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を形成し、配向部2a−3に対応する位置に金型部42a−3を形成し(図19(a))、次いで、金属あるいは無機基材41の表面に、配向部2a−2に対応する位置以外の箇所にレジスト43を形成し(図19(b))、露出する上記金属あるいは無機基材41を覆うように湿式または乾式めっき法によりニッケルやクロムあるいは気相成長法(CVD法)によりDLCからなる凸部41a−2を形成し(図19(c))、上記凸部41a−2の表面をペーパー研磨により研磨することにより微小なライン状凹凸構造を形成することで、金型部42a−2を形成する(図19(d))。
このとき上記金属あるいは無機基材41に残存するレジスト43は研磨保護層として機能する。その後、レジスト43を剥離し、配向部2a−1に対応する位置以外の箇所にレジスト43を形成し(図19(e))、露出する上記金属あるいは無機基材41を覆うように湿式または乾式めっき法によりニッケルやクロムあるいは気相成長法(CVD法)によりDLCからなる凸部41a−1を形成し(図19(f))、上記凸部41a−1の表面をペーパー研磨により研磨することにより微小なライン状凹凸構造を形成することで、金型部42a−1を形成する(図19(g))。このとき上記金属あるいは無機基材41および金型部42a−2に残存するレジスト43は研磨保護層として機能する。その後、レジスト43を剥離することにより、上記配向層2に含まれる配向部(2a−1、2a−2、2a−3)に対応した金型部(42a−1、42a−2、42a−3)を含む凹凸形状を有するロール状金型40とすることができる(図19(h))。
【0160】
上記研磨処理で行われる研磨方法としては、微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成し、棒状化合物を配列可能に形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、砥石研磨、ペーパー研磨、テープ研磨、サンドブラスト法、ショットブラスト法、グリットブラスト法、ガラスビーズブラスト法等のブラスト法、ナイロン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂などの合成繊維からなる合成樹脂毛、不織布、動物毛、スチールワイヤ等のブラシ材を用いるブラシグレイニング法、金属ワイヤーで引っかくワイヤーグレイニング法、研磨剤を含有するスラリー液を供給しながらブラシ研磨する方法(ブラシグレイニング法)、ボールグレイン法、液体ホーニング法等のバフ研磨法、ショットピーニング法、回転型バレルや振動型バレルを用いたバレル研磨法、リューター研磨法、砥粒流動研磨法、電解研磨法、化学研磨法、化学複合研磨法、電解複合研磨法、化学機械研磨法、CMP研磨法等を挙げることができる。本工程においては、なかでも、研磨カスが溜まらない方法であることが好ましく、特に、テープ研磨法、ブラシグレイニング法等であることが好ましい。微小凹凸を精度良く形成できるからである。また、研磨カスが残存することによる賦型不良を防止することができるからである。
【0161】
また、レジスト、レジストのパターニング方法およびレジストの剥離方向としては、一般的に用いられるものを使用することができ、上記金属基材や凸部の材質等に応じて適宜選択することができる。
【0162】
また、上記ロール状金型が基材表面に、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を切削等により形成したものである場合、ロール状金型の形成方法としては、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を精度良く形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
具体的には、所定の周期の凹凸構造を有するダイヤモンドバイト等のバイトを用いて、各配向部の厚みに対応するような切削深さで切削する方法を挙げることができる。
具体的には、赤、緑、青の3色の色を表示する表示装置に用いられるものである場合には、基材の、赤に対応する配向部、緑に対応する配向部、青に対応する配向部に対応する位置を、それぞれ切削深さを変えて切削する方法を用いることができる。
【0163】
(2)配向層形成用層
本工程に用いられる配向層形成用層は、配向層形成用樹脂組成物からなるものである。
【0164】
本工程に用いられる配向層形成用樹脂組成物としては、上記ロール状金型上に接触させた後、加圧することによりロール状金型表面の凹凸形状を賦型できるものであれば特に限定されるものではなく、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の配向層を構成する材料を含むものを挙げることができる。
【0165】
また、本工程に用いられる配向層形成用樹脂組成物は、必要に応じて、酸素に対する変化を抑制するための酸化防止剤、光に対する変化を抑制するための光安定化剤、紫外性を吸収する紫外線吸収剤、粘度を調整するための粘度調節剤、屈折率を調整するための屈折率調整剤、賦型性を向上させるためのフッ素系またはシリコン系潤滑剤、溶媒等を含むものであっても良い。
【0166】
このような溶媒としては、上記配向層形成用樹脂組成物に含まれる樹脂のモノマー等を均一に溶解または分散できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、シクロヘキサン等のアノン系溶媒、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶媒を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、本工程に用いられる溶媒は、1種類でもよく、2種類以上の溶媒の混合溶媒でもよい。
【0167】
本工程に用いられる配向層形成用樹脂組成物の粘度としては、上記ロール状金型表面の凹凸形状を配向層形成用層に加圧により賦型することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、25℃において、5mPa・s〜200000mPa・sの範囲内であることが好ましく、なかでも、10mPa・s〜100000mPa・sの範囲内であること好ましく、特に、30mPa・s〜3000mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。
また、溶融型の樹脂の場合には、例えば、190℃におけるメルトフローインデックス(MFI)が、0.1g/10min以上であることが好ましく、なかでも1.0g/10min以上であることが好ましく、特に5.0g/10min以上であることが好ましい。上記粘度が上述の範囲内であることにより賦型性に優れたものとすることができるからである。
【0168】
本工程に用いられる配向層形成用層の厚みとしては、上記ロール状金型表面の凹凸形状を精度よく賦型できるものであれば特に限定されるものではなく、配向層とした際の厚みが一般的な位相差フィルムの配向層と同程度となるものとすることができる。
【0169】
(3)賦型工程
本工程は、上記ロール状金型上に、配向層形成用樹脂組成物からなる配向層形成用層を接触させた後、加圧し、上記配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を賦型する工程である。
【0170】
本工程において加圧した際に付与される圧力としては、配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を安定的に賦型できるものであれば特に限定されるものではなく、本工程に用いられる配向層形成用樹脂組成物の粘度等に応じて適宜選択されるものであり、上記配向層形成用樹脂組成物および上記ロール状金型を用いて、上記ロール状金型表面の凹凸形状を上記配向層形成用層にどの程度賦型することができるか、圧力を調整しながら繰り返し実験を行うことにより見出されるものである。例えば、上述した粘度を有する上記配向層形成用樹脂組成物を用いた場合、上記圧力は、10MPa/cm〜2000MPa/cmの範囲内であることが好ましく、なかでも100MPa/cm〜1000MPa/cmの範囲内であることが好ましく、特に、150MPa/cm〜500MPa/cmの範囲内であることが好ましい。上記圧力が低すぎると、上記配向層形成用層が上記ロール状金型にあまり入り込まず、上記微小なライン状凹凸構造における凸構造の高さが十分ではないものとなるおそれがあるからであり、上記圧力が高すぎると、上記配向層形成用層が上記ロール状金型に入り込み過ぎて、ロール状金型から抜けなくなるおそれがあるからである。
【0171】
本工程において、上記圧力を加圧する方法としては、配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を安定的に賦型できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ベルトプレス方式、ロールタッチ方式等を用いる方法を挙げることができる。
以下、これらの方式を用いて配向層形成用層に上記圧力を負荷する方法を図を用いて説明する。
【0172】
図20は、本発明における加圧方法を説明する説明図である。図20は、ロールタッチ方式により加圧する方法を例示するものであり、透明フィルム基材1を巻き出す巻き出し機51aと、配向層形成用樹脂組成物を吐出し配向層形成用層2´を形成する配向層形成用ダイ53と、紫外線を配向層形成用層2´に対して照射する紫外線照射装置55と、剥離ロールにてロール状金型40から配向層形成用層を剥離する剥離ロール52と、透明フィルム基材1および配向層2を含む配向膜を巻き取る巻き取り機51bと、を有し、さらに、配向層形成用層2´をロール状金型に加圧するゴム等の弾性を有する加圧ロール50を有する配向層製造装置を用いて加圧する方法を例示するものである。ロールタッチ方式においては、ゴム等の弾性を有する加圧ロールを用いることにより、加圧ロールが変形するため、ロール状金型と配向層形成用層との接触時間を長くすることができるため、配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を安定的に賦型することが可能となる。
また、図21は、本発明における加圧方法を説明する説明図である。図21は、ベルトプレス方式により加圧する方法を例示するものであり、ロール状金型40に直接、配向層形成用樹脂組成物を吐出する配向層形成用ダイ53と、加圧ベルト56とを有する配向層製造装置を用いて加圧する方法を例示するものである。ベルトプレス方式においては、ロール状金型と加圧ベルトとを対峙させることによって、配向層形成用層に圧力を負荷することができる。ベルトプレス方式はロール状金型と配向層形成用層との接触時間を長くすることができるため、配向層形成用層にロール状金型表面の凹凸形状を安定的に賦型することが可能となる。
なお、図21において説明していない符号については、図20と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0173】
本工程における賦型方法としては、上記配向層形成用層に上記ロール状金型の表面形状を精度よく賦型できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、上記ロール状金型を配向層形成用層に押し当てる方法を挙げることができるが、なかでもロール状金型上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工し、上記配向層形成用層を形成する充填処理と、上記配向層形成用層上に透明フィルム基材を配置する配置処理と、を行った後に、加圧する方法(第1実施態様)、透明フィルム基材上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工し、上記配向層形成用層を形成する配向層形成用層形成処理と、上記配向層形成用層を、ロール状金型上に接触させる接触処理と、を行った後に加圧する方法(第2実施態様)、ロール状金型上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工し、上記配向層形成用層を形成する充填処理、を行った後に、加圧する方法(第3実施態様)、であることが好ましい。上記配向層を安定的に形成できるからである。
以下、このような賦型方法について説明する。
【0174】
(a)第1実施態様
本態様の賦型方法は、上記ロール状金型上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工し、上記配向層形成用層を形成する充填処理と、上記配向層形成用層上に透明フィルム基材を配置する配置処理と、を行った後に、加圧する方法である。このような賦型方法を用いて賦型することにより、透明フィルム基材上に、配向層を容易に形成することができる。
このような透明フィルム基材については上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0175】
本態様における充填処理で行われる上記ロール状金型上への配向層形成用樹脂組成物の塗工方法としては、均一の厚みの配向層形成用層を形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ロールコート法、Tダイコート法、キャストコート法、ブレードコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、公知の方法を用いることができる。
本態様においては、なかでも、配向層形成用樹脂組成物への溶媒の添加が不要な方法であることが好ましく、特に、溶融押し出し法、ノンソルコーティング法を好ましく用いることができる。乾燥処理等を不要とすることができ、工程通過性に優れたものとすることができるからである。
ここで、溶融押し出し法としては、例えば、上記配向層形成用樹脂組成物をガラス転移温度以上熱分解温度以下の温度範囲内で熱溶融させた状態で準備し、Tダイを用いて押し出す方法等が挙げられる。
また、充填処理後、適宜乾燥処理や熱またはUVやEBによるハーフキュア処理を入れることができる。
【0176】
本態様における配置処理で行われる上記配向層形成用層上に透明フィルム基材を配置する方法としては、上記配向層形成用層と透明フィルム基材とが十分に密着することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ロール状金型上の配向層形成用層上に、ロール状の透明フィルム基材を連続的に巻き出しながら配置する方法等を挙げることができる。
【0177】
(b)第2実施態様
本態様の賦型方法は、透明フィルム基材上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工し、上記配向層形成用層を形成する配向層形成用層形成処理と、上記配向層形成用層と、上記ロール状金型とを接触させる接触処理と、を行った後に、加圧する方法である。このような賦型方法であることにより、透明フィルム基材上に配向層が積層された位相差フィルムを容易に形成することができる。
この場合、配向層形成用樹脂組成物には配向部を構成する樹脂と相溶性がある溶剤を含んでいても良い。溶剤を含有する場合、透明フィルム基材の上に配向層形成用樹脂組成物を塗工したのち、溶剤を蒸発させる乾燥処理を行うことが望ましい。また溶剤として、透明フィルム基材に浸透することで透明フィルム基材と配向層形成用層との間に溶剤浸透層を形成することができるため、透明フィルム基材と配向層との界面で発生するニジムラや密着不良を防止することが可能となる。
【0178】
本態様における配向層形成用層形成処理で行われる透明フィルム基材上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工する方法としては、所望の厚みの配向層形成用層を形成できる方法であれば良く、上記「(a)第1実施態様」の項に記載の充填処理と同様とすることができる。
【0179】
本態様における接触処理で行われる上記配向層形成用層を、上記ロール状金型上に接触させる方法としては、上記ロール状金型に配向層形成用層が十分に密着することができる方法であれば特に限定されるものではなく、上記「(a)第1実施態様」の項に記載の配置処理と同様とすることができる。
【0180】
(c)第3実施態様
本態様の賦型方法は、上記ロール状金型上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工し、上記配向層形成用層を形成する充填処理、を行った後に加圧する方法である。このような賦型方法であることにより、例えば、配向層のみを容易に得ることができる。このため、例えば、透明フィルム基材の種類の選択の自由度を広いものとすることができる。
本態様における充填処理で行われる、上記ロール状金型上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工する方法としては、所望の厚みの配向層形成用層を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、上記「(a)第1実施態様」の項に記載の充填処理と同様とすることができる。
なお、本態様の賦型方法を用いる場合には、別途、配向層と透明フィルム基材とを貼り合わせる透明フィルム基材積層工程を行うことになる。
【0181】
2.硬化工程
本発明の製造方法における硬化工程は、賦型工程後の上記配向層形成用層を硬化させる工程である。
【0182】
本工程において、上記配向層形成用層を硬化させる方法としては、上記配向層形成用層を構成する配向層形成用樹脂組成物に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記配向層形成用樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂組成物の場合、紫外線硬化法および電子線硬化法等を挙げることができ、上記配向層形成用樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物の場合、加熱硬化法および常温硬化法等を挙げることができる。また、上記配向層形成用樹脂組成物として熱可塑性樹脂組成物を用いる場合は、冷却ロールなどを接触させる冷却法により硬化させることができる。
【0183】
本工程における紫外線硬化法にて照射する紫外線の照射方法としては、通常、配向層形成用層のロール状金型と接触する面の反対面から照射する方法が用いられるが、本工程が上記剥離工程後に行われる場合には、必要に応じて、ロール状金型と接触する面から照射する方法を用いるものであっても良い。短時間で十分に硬化させることができるからである。
【0184】
本工程において紫外線硬化法にて硬化する場合、配向層形成用層の硬化率(反応率)としては、20%〜97%の範囲内であることが好ましく、なかでも30%〜90%の範囲内であることが好ましい。得られた配向層を保管した際に、微細な凹凸やパターンがつぶされて形状不良を生じたり、ブリード物が発生しやすくなり配向層の液晶コート面側の汚染し、液晶配向不良を起こすといった不具合を防ぐことができるからである。また、液晶層との密着性を確保することが可能になる等の利点があるからである。
なお、硬化率とは、本工程を行った後の配向層に含まれる反応性を有する官能基のモル数をX、本工程を行う前に配向層形成用層に含まれていた反応性を有する官能基のモル数をYとしたときに、(Y−X)/Y × 100(%)で表されるものである。
【0185】
本工程においては、紫外線硬化法にて紫外線を照射する際に、配向層形成用層を加熱するものであっても良い。反応効率を向上させることができるからである。
本工程において、配向層形成用層を加熱する方法としては、配向層形成用層を所望の温度とすることができる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の加熱方法を用いることができるが、具体的には、ロール状金型として温度調節可能なものを用いる方法や、赤外線照射装置、温風送風装置等を用いる方法を挙げることができる。
【0186】
3.剥離工程
本発明の製造方法における剥離工程は、上記賦型工程後に行われ、上記配向層形成用層を上記ロール状金型から剥離する工程である。
本工程における剥離方法としては、硬化された上記配向層形成用層を傷つけることなく上記ロール状金型を剥離することができれば、特に限定されるものではない。具体的には、既に説明した図20または図21に示すような剥離用ロールを用いて剥離する方法を挙げることができる。
【0187】
本工程を行う順番としては、上記賦型工程後に行われるものであれば特に限定されるものではないが、上記硬化工程後に行われることが好ましい。上記硬化工程が、上記ロール状金型および配向層形成用層を接触させた状態で行われることにより、上記配向層形成用層に賦型されたロール状金型表面の凹凸形状を、安定的に硬化させることができ、得られる配向層表面の形状を高精度なものとすることができるからである。
【0188】
4.塗布工程
本発明における塗布工程は、上記配向層上に上記棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布する工程である。
【0189】
本工程に用いられる位相差層形成用塗工液に含まれる棒状化合物としては、所望の位相差性を有する位相差層を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0190】
本工程に用いられる棒状化合物の位相差層形成用塗工液中の含有量としては、配向層上に塗布する塗布方法に応じて、位相差層形成用塗工液の粘度を所望の値にできるものであれば特に限定されない。なかでも本工程においては、上記位相差層形成用塗工液中、5質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、10質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0191】
本工程に用いられる位相差層形成用塗工液としては、上記棒状化合物を少なくとも含むものであるが、通常、溶媒を含むものである。また、必要に応じて他の化合物を含むものであっても良い。
このような溶媒としては、上記棒状化合物を均一に溶解または分散できるものであれば特に限定されるものではないが、上記「1.賦型工程」の項に記載の配向層形成用樹脂組成物に用いられるものと同様とすることができる。
【0192】
また、他の化合物としては、本工程により形成される位相差層において、棒状化合物の配列秩序を害するものでなければ特に限定されるものではない。本工程に用いられる上記他の化合物としては、例えば、カイラル剤、重合開始剤、重合禁止剤、可塑剤、界面活性剤、および、シランカップリング剤等を挙げることができる。
本工程においては、上記棒状化合物として上記重合性液晶材料を用いる場合は、上記他の化合物として重合開始剤または重合禁止剤を用いることが好ましい。
【0193】
上記重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ社製N1717、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等を例示できる。本工程では、これらの光重合開始剤を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0194】
さらに、上記光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始助剤を併用することができる。このような光重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の3級アミン類や、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミド安息香酸エチル等の安息香酸誘導体を例示することができるが、これらに限られるものではない。
【0195】
上記重合禁止剤としては、例えば、ジフェニルピクリルヒドラジド、トリ−p−ニトロフェニルメチル、p−ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、ピクリン酸、塩化銅、メチルハイドロキノン、メトキノン、tert−ブチルハイドロキノン等の反応の重合禁止剤を用いることができるが、なかでも保存安定性の点からハイドロキノン系重合禁止剤が好ましく、メチルハイドロキノンを用いるのが特に好ましい。
【0196】
また、本工程における位相差層形成用塗工液には、下記に示すような他の化合物を添加することができる。添加できる他の化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミノ基エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物;アクリル基やメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。
【0197】
本工程における位相差層形成用塗工液の塗布方法としては、配向層上に位相差層形成用塗工液からなる塗膜を安定的に形成できる方法であれば特に限定されるものではない。本工程において、具体的には、上記配向層形成用層の形成方法と同様とすることができる。
【0198】
本工程により形成される塗膜の厚みは、後述する配向工程後に、所定の位相差性を達成できる範囲内とするものであれば特に限定されるものではなく、本発明の製造方法により製造される位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定されるものである。
【0199】
5.配向工程
本発明における配向工程は、上記位相差層形成用塗工液の塗膜に含まれる棒状化合物を、上記配向層に含まれる配向部の表面に形成された微細凹凸形状の形成方向に沿って配列させる工程である。
【0200】
本工程における棒状化合物を上記配向部の表面に形成された微細凹凸形状の形成方向に沿って配列させる方法としては、所望の方向に配列させることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な方法を用いることができるが、棒状化合物が液晶性材料である場合には、上記塗膜を棒状化合物の液晶相形成温度以上に加温する方法が用いられる。具体的には、上記棒状化合物の種類等により異なるものであるが、50℃〜60℃の範囲内で加温する方法を挙げることができる。
【0201】
6.位相差フィルムの製造方法
本発明の位相差フィルムの製造方法は、上記賦型工程、硬化工程、剥離工程、塗布工程および配向工程を少なくとも有するものであるが、必要に応じて、塗布工程後に、位相差層形成用塗工液の塗膜を乾燥する乾燥工程や、上記棒状化合物として重合性液晶材料を用いる場合、上記重合性液晶材料を重合する重合工程を有するものであっても良い。位相差層上に粘着層を形成する粘着層形成工程およびセパレータを積層するセパレータ積層工程や、配向工程後に、長尺状の位相差フィルムを裁断し、枚葉に成形された位相差フィルムとして得るための裁断工程を有するものであっても良い。
【0202】
上記乾燥工程における塗膜の乾燥方法としては、加熱乾燥方法、減圧乾燥方法、ギャップ乾燥方法等、一般的に用いられる乾燥方法を用いることができる。また、本工程における乾燥方法は、単一の方法に限られず、例えば残留する溶媒量に応じて順次乾燥方式を変化させる等の態様により、複数の乾燥方式を採用してもよい。
さらに、上記塗膜の乾燥方法としては、一定の温度に調整された乾燥風を、上記塗膜に当てる方法を用いることもできるが、このようは乾燥方法を用いる場合は、上記塗膜に当てる乾燥風の風速が3m/秒以下であることが好ましく、特に0.5m/秒以下であることが好ましい。
【0203】
上記重合工程における重合性液晶材料の重合方法としては、重合性液晶材料が有する重合性官能基の種類に応じて任意に決定すればよい。なかでも本工程においては、活性放射線の照射により硬化させる方法が好ましい。活性放射線としては、重合性液晶材料を重合することが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光を使用することが好ましい。
【0204】
本発明においては、これらの各工程が独立して行われるもの、すなわち、工程毎に長尺状の配向層等をロール状に巻き取られた状態から巻き出し、所定の処理を行った後に巻き取るものであっても良いが、全工程が連続して行われること、すなわち、原材料から最終製造物である位相差フィルムまでロールトゥロールにて行われることが好ましい。
【0205】
E.配向膜
次に、本発明の配向膜について説明する。
本発明の配向膜は、透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、を有し、上記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を有することを特徴とするものである。
【0206】
このような本発明の配向膜について図を参照して説明する。図22は、本発明の配向膜の一例を示す概略断面図である。図22に例示するように、本発明の配向膜60は、透明フィルム基材1と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層2と、を有し、上記配向層2が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部(2a−1、2a−2、2a−3)を有するものである。
【0207】
本発明によれば、このような表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる配向部を含む配向層を有することにより、屈折率異方性を有する棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布し、配向させることで、各色に対応して位相差性を発揮する位相差フィルムを容易に形成することができる。
【0208】
本発明の配向膜は、上記透明フィルム基材および配向層を有するものである。
このような透明フィルム基材および配向層については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0209】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0210】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0211】
[実施例1]
10cm×10cmの大きさの銅版を準備し、FIB加工で作製したピッチが200nmの凹凸を有するダイヤモンドバイトで左右方向に、全面を切削した。その後、更に、ストライプの間隔が500μmになる様に、500μm毎に深さが360nmになる様に同じ左右方向に切削した。その後、UV硬化性樹脂(DIC株式会社製ユニディック)を銅版上に塗布し、その上に透明なフィルム(日本ゼオン株式会社製ゼオノア(登録商標))を透明フィルム基材として乗せて密着させ、紫外線を照射して硬化させた。
【0212】
次に、透明フィルム基材を銅版から剥離し、凹凸形状を透明フィルム基材(透明フィルム基材+表面に微細凹凸形状を有し、厚みの異なる2以上の配向部を含む配向層)に賦形した。SEMで断面形状を観察したところ、200nmピッチの凹凸からなる幅500μmのストライプ形状が平行な状態で、段差360nmの凹凸が交互に観測された。
次に、シクロヘキサノンに固形分15%で溶解した下記構造式(A)で表わされる液晶性材料溶液に光重合開始剤(BASF株式会社製イルガキュア184)を5重量%を加えた溶液を、上記賦形した透明フィルムにスピンコーターで乾燥硬化時の膜厚がストライプ凸部で1μm、ストライプ凹部で1.36μmになる様に塗布、80℃で10分乾燥し、紫外線を照射して硬化させ位相差層を形成した。このようにして、パターン位相差フィルムを得た。
【0213】
赤色と青色の2色発光するストライプの間隔が500μmのエレクトロルミネッセント表示装置のストライプとパターン位相差のストライプが赤色ラインと厚い方(1.36μm)が、青色ラインと薄い方(1μm)が合うように重ね合わせ、偏光板の偏光軸が位相差フィルムの遅相軸と45度の角度になる様に粘着剤で貼り合わせ円偏光板とした。エレクトロルミネッセント表示装置を点灯させ、太陽光を照射したところ、赤色も青色も円偏光板を使用しない場合と比較して明らかにコントラストが向上した。
【0214】
[比較例1]
透明フィルム基材上に形成される配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、全面が同じ厚みであり、位相差層を液晶の膜厚が全面に渡って1μmになる様にした以外は実施例1と同様に、エレクトロルミネッセント表示装置を点灯させ、太陽光を照射したところ、赤色のコントラストは青色のコントラストよりも低下した。
【0215】
【化2】
【符号の説明】
【0216】
1 … 透明フィルム基材
2´ … 配向層形成用層
2 … 配向層
2a−1、2a−2、2a−3、2a´−1、2a´−2、2a´−3、2b´−1、2b´−2、2b´−3、2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3、2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3 … 配向部
3 … 位相差層
3a−1、3a−2、3a−3、3a´−1、3a´−2、3a´−3、3b´−1、3b´−2、3b´−3、3a´´−1、3a´´−2、3a´´−3、3b´´−1、3b´´−2、3b´´−3 … 位相差部
10 … 位相差フィルム
12a … 第1配向領域
12b … 第2配向領域
12a´ … 薄膜領域
12b´ … 厚膜領域
13a … 第1位相差領域
13b … 第2位相差領域
13a´ … 高位相差領域
13b´ … 低位相差領域
14 … アンチグレア層または反射防止層
20 … EL表示装置用円偏光板
21 … 偏光子
22 … 偏光板保護フィルム
23 … 接着層
25 … EL層
30 … 3次元表示用パターン位相差フィルム
40 … ロール状金型
41 … 基材
42a−1、42a−2、42a−3 … 金型部
43 … レジスト
60 … 配向膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認性に優れた表示装置を形成可能な位相差フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々のタイプのディスプレイが実用化されているが、これらのディスプレイには、位相層が直線偏光板と組み合わせられる等により適用されていることが多い。例えば、直線偏光板と1/4波長位相差板、もしくは1/2波長位相差板、1/4波長位相差板、および直線偏光板を組み合わせた円偏光板を、エレクトロルミネッセンスディスプレイの観察側に設けることにより、外光反射を防止して表示のコントラストの向上を可能としている(特許文献1)。
【0003】
また、従来、2次元表示のものが主流であったが、近年においては3次元表示可能なフラットパネルディスプレイが注目を集め始めており、一部市販されているものも存在しつつある。そして、今後のフラットパネルディスプレイにおいては3次元表示可能であることが、その性能として当然に求められる傾向にあり、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイの検討が幅広い分野において進められている。
フラットパネルディスプレイにおいて3次元表示をするには、通常、視聴者に対して何らかの方式で右目用の映像と、左目用の映像とを別個に表示することが必要とされる。右目用の映像と左目用の映像とを別個に表示する方法としては、例えば、パッシブ方式というものが知られている。このようなパッシブ方式の3次元表示方式について図を参照しながら説明する。図23はパッシブ方式の3次元表示の一例を示す概略図である。図23に示すようにこの方式では、まず、フラットパネルディスプレイを構成する画素を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。また、直線偏光板と当該画素の分割パターンに対応したパターン状の位相差層が形成されたパターン位相差フィルムとを用い、右目用の映像と、左目用の映像とを互いに直交関係にある円偏光に変換する。さらに、視聴者には右目用フィルターと左目用フィルターとに互いに直交する円偏光レンズを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目用レンズのみを通過し、かつ左目用の映像が左目用のレンズのみを通過するようにする。このようにして右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることによって3次元表示を可能とするものがパッシブ方式である。
このようなパターン位相差フィルムとしては、ガラス基板上に配向規制力がパターン状に制御された光配向膜と、当該光配向膜上に形成され、液晶化合物の配列が上記光配向膜のパターンに対応するようにパターニングされた位相差層とを有するものが開示されている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、このような位相差層を用いる表示装置では、表示装置で表示される色の種類によっては、上述のような機能を発揮することができず、視認性が不十分となるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−283246号公報
【特許文献2】特開2005−49865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、視認性に優れた表示装置を形成可能な位相差フィルムを提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有し、上記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を含むものであり、上記位相差層が、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むことを特徴とする位相差フィルムを提供する。
【0008】
本発明によれば、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、コントラストや色再現性等に優れ、視認性に優れたものとすることができる。
【0009】
本発明においては、上記位相差フィルムが長尺状であることが好ましい。表示装置のサイズ等に応じて自由度高く位相差フィルムを製造できる等、製造プロセスの自由度の高いものとすることができるからである。
【0010】
本発明においては、上記配向部のパターンが、互いに平行な帯状であることが好ましい。
表示装置において形成されている各色のパターンと対応関係にすることが容易になるからである。
【0011】
本発明は、上述の位相差フィルムと、上記位相差フィルム上に形成され、偏光子を含む偏光板と、を有し、上記配向層に含まれる配向部の上記棒状化合物の配列方向が同一方向であり、上記位相差部の面内レターデーション値が、上記各色のλ/4分に相当するものであることを特徴とするエレクトロルミネッセント(以下、単にELとする場合がある。)表示装置用円偏光板(以下、単に円偏光板とする場合がある。)を提供する。
【0012】
本発明によれば、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、コントラストに優れたEL表示装置とすることができる。
【0013】
本発明は、上述の位相差フィルムを有し、上記配向層が、上記棒状化合物を一定方向に配列させる第1配向領域および第1配向領域とは異なる方向に配列させる第2配向領域を含むことを特徴とする3次元表示用パターン位相差フィルム(以下、単にパターン位相差フィルムとする場合がある。)を提供する。
【0014】
本発明は、上述の位相差フィルムを有し、上記配向層が、厚みの大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域を有し、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させるものであることを特徴とする3次元表示用パターン位相差フィルムを提供する。
【0015】
本発明によれば、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、色再現性に優れた3次元表示装置とすることができる。
【0016】
本発明は、上述の位相差フィルムの製造方法であって、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を有するロール状金型と、配向層形成用樹脂組成物からなる配向層形成用層と、を接触させた後、加圧し、上記配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を賦型する賦型工程と、上記賦型工程後に、上記配向層形成用層を硬化させる硬化工程および上記配向層形成用層を上記ロール状金型から剥離し、配向層を形成する剥離工程と、上記配向層上に上記棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布する塗布工程と、上記位相差層形成用塗工液の塗膜に含まれる棒状化合物を、上記配向部の表面に形成された微細凹凸形状の形成方向に沿って配列させる配向工程と、を有することを特徴とする位相差フィルムの製造方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、上記ロール状金型を用いることにより、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる配向部を含む配向層を容易かつ大量に製造することができる。
このため、上述のような表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる位相差部を含む位相差層を有する位相差フィルムを容易かつ大量に製造することができる。
【0018】
本発明は、透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、を有し、上記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を有することを特徴とする配向膜を提供する。
【0019】
本発明によれば、このような表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる配向部を含む配向層を有することにより、屈折率異方性を有する棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布し、配向させることで、各色に対応して位相差性を発揮する位相差フィルムを容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の位相差フィルムによれば、視認性に優れた表示装置を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図2のA−A線断面図である。
【図2】本発明の位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。
【図3】本発明の位相差フィルムを用いたEL表示装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明における配向層を説明する説明図である。
【図5】本発明における微細凹凸形状を説明する説明図である。
【図6】本発明のEL表示装置用円偏光板の一例を示す概略断面図である。
【図7】図8のB−B線断面図である。
【図8】本発明のパターン位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。
【図9】本発明のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図10】本発明のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図11】本発明のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図12】本発明のパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図13】本発明のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図14】図15のC−C線断面図である。
【図15】本発明のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図16】本発明における厚膜領域および薄膜領域を説明する説明図である。
【図17】本発明の位相差フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
【図18】本発明の位相差フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
【図19】本発明におけるロール状金型の製造方法の一例を示す工程図である。
【図20】本発明における加圧方法を説明する説明図である。
【図21】本発明における加圧方法を説明する説明図である。
【図22】本発明の配向膜の一例を示す概略断面図である。
【図23】パッシブ方式で3次元映像を表示可能な液晶表示装置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、位相差フィルム、それを用いたエレクトロルミネッセント表示装置用円偏光板、3次元表示用パターン位相差フィルム、その製造方法およびそれに用いる配向膜に関するものである。
以下、本発明の位相差フィルム、エレクトロルミネッセント表示装置用円偏光板、3次元表示用パターン位相差フィルム、位相差フィルムの製造方法および配向膜について詳細に説明する。
【0023】
A.位相差フィルム
まず、本発明の位相差フィルムについて説明する。
本発明の位相差フィルムは、透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有し、上記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を含むものであり、上記位相差層が、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むことを特徴とするものである。
【0024】
このような本発明の位相差フィルムについて図を参照しながら説明する。図1は、図2のA−A線断面図である。また、図2は、本発明の位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。図1および図2に例示するように、透明フィルム基材1と、上記透明フィルム基材1上に形成された配向層2と、上記配向層2上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層3と、を有し、上記配向層2が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部(2a−1、2a−2、2a−3)を含むものであり、上記位相差層3が、上記配向部(2a−1、2a−2、2a−3)に対応して厚みが異なる位相差部(3a−1、3a−2、3a−3)を含むことを特徴とするものである。
なお、この例においては、本発明の位相差フィルムは、3色の色を表示する表示装置に用いられるものであり、配向層および位相差層がそれぞれ厚みの異なる3水準の配向部および位相差部を有し、このような配向部および位相差部の幅がそれぞれw1、w2およびw3のものである。また、配向部の表面の微細凹凸形状が同一方向に形成されているものである。さらに、図2においては、説明の容易のため位相差層の記載を省略するものである。
【0025】
また、図3は、本発明の位相差フィルムを含む円偏光板を用いたEL表示装置の一例を示す概略図である。図3に例示するように、EL表示装置が、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の画素を有するEL層25と、本発明の位相差フィルム10および位相差フィルム10上に形成された偏光子21からなる偏光板22を含む円偏光板20と、を有するものであり、上記位相差フィルム10に含まれる配向部(2a−1、2a−2、2a−3)、および上記配向部(2a−1、2a−2、2a−3)に対応して厚みが異なる位相差部(3a−1、3a−2、3a−3)が、上記EL層25の3色の画素(R,G,B)に対応するものである。
なお、図3中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。また、この例においては、上記位相差層に含まれる棒状化合物は、配向部表面の微細凹凸形状により同一方向に配列されるものである。
【0026】
本発明によれば、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した、すなわち、各色の波長に対応した適切な位相差性を発揮するものとすることができる。例えば、上記各配向部上に形成され、波長の長い色に対応する位相差部が波長の短い色に対応する位相差部よりも面内レターデーション値が高い、逆分散型の位相差層とすることが容易であり、各色により適した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、コントラストや色再現性等に優れ、視認性に優れたものとすることができる。
また、厚みの異なる位相差層が、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる配向層上に形成されていることにより、表示装置の種類に限定されず適応可能なものとすることができる。また、上記配向層に含まれる配向部により厚みを調整することにより、対応して形成される位相差部を含む位相差層の配向層と接する側と反対側の面を平坦なものとすることができる。このようなことからも、表示装置の種類によらず適応可能なものとすることができる。
さらに、後述するようなロール状金型を用いることにより、容易に、厚みの異なる配向層を形成することができることから、このような配向層上に上記棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布し、上記配向層の配向規制力に沿って配向させて位相差層を形成することで容易に製造できかつ大量生産が可能なものとすることができる。
【0027】
本発明の位相差フィルムは、少なくとも透明フィルム基材、配向層および位相差層を含むものである。
以下、本発明の位相差フィルムの各構成について詳細に説明する。
【0028】
1.配向層
本発明における配向層は、2以上の配向部を含むものである。
【0029】
(1)配向部
本発明における配向部は、表面に微細凹凸形状を有し、かつ、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるものである。
また、各配向部は位相差層を形成した際に、上記位相差層に含まれる棒状化合物を一定方向に配列させる配向規制力を有するものである。
【0030】
(i)配向部の形状
本発明における配向部の厚みは、表示装置の各色のパターンに対応して異なるものである。
本発明における表示装置としては、特定の色を表示する最小の表示単位である画素を2種類以上組み合わせて映像を表示するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、液晶表示装置や、EL表示装置等を挙げることができる。
また、表示装置の各色のパターンとは、特定の色を表示する画素の配置をいうものであり、表示装置の各色のパターンに対応する配向部とは、平面視上、特定の色のパターンとパターンが重なるものである。
また、本発明における配向部の厚みは表示装置の各色のパターンに対応して異なるものであるところ、隣接する配向部が、異なる色のパターンに対応するものである場合には、隣接する配向部は厚みが異なることになる。
具体的には、赤、緑、青を表示する表示装置に用いる場合には、赤を表示するパターンに対応する配向部、緑を表示するパターンに対応する配向部、および青を表示するパターンに対応する配向部の厚みは互いに異なるものとなる。
【0031】
このような厚みについては、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも、波長の長い色に対応する配向部が波長の短い色に対応する配向部よりも、厚みが薄いことが好ましい。このような厚みとすることにより、波長の長い色に対応する位相差部が波長の短い色に対応する位相差部よりも面内レターデーション値が高い逆分散型の位相差層とすることにより、各色により適した位相差性を発揮するものとすることができるからである。
具体的には、既に説明した図3に例示するように、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の色を表示する表示装置に用いられる場合には、赤、緑、青に対応する配向部の厚みは、この順で厚くなることが好ましく、対応する位相差部の厚みはこの順で薄くなることが好ましい。
【0032】
本発明における配向部の隣接する配向部との厚みの差としては、本発明の位相差フィルムの用途等に応じて適宜設定されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、位相差層の面内レターデーション値(Re)をλ/4とする場合には、隣接して表示される色の波長をλ1およびλ2(λ1>λ2)、上記配向層(各配向部)上に形成される位相差層(各位相差部)の面内方向の屈折率異方性をΔnとすると、厚みの差としては、(λ1-λ2)×(1/4)×(1/Δn)とすることが好ましい。
また、例えば、位相差層の面内レターデーション値(Re)をλ/2とする場合には、厚みの差を(λ1-λ2)×(1/2)×(1/Δn)とすることが好ましい。
より具体的には、本発明において面内レターデーション値(Re)をλ/4またはλ/2とする場合には、厚みの差は、(λ1-λ2)×(1/4(または1/2))×(1/Δn)±200nm(λ/4の場合)または400nm(λ/2の場合)程度であることが好ましく、なかでも、(λ1-λ2)×(1/4(または1/2))×(1/Δn)±100nm(λ/4の場合)または200nm(λ/2の場合)程度であることが好ましく、特に、(λ1-λ2)×(1/4(または1/2))×(1/Δn)±50nm(λ/4の場合)または100nm(λ/2の場合)程度であることが好ましい。より視認性に優れたものとすることができるからである。
【0033】
ここで、面内レターデーション値とは、屈折率異方体の面内方向における複屈折性の程度を示す指標であり、面内方向において屈折率が最も大きい遅相軸方向の屈折率をNx、遅相軸方向に直交する進相軸方向の屈折率をNy、屈折率異方体の面内方向に垂直な方向の厚みをdとした場合に、
Re[nm]=(Nx−Ny)×d[nm]
で表わされる値である。面内レターデーション値(Re値)は、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができるし、微小領域の面内レターデーション値はAXOMETRICS社(米国)製のAxoScanでミューラーマトリクスを使って測定することも出来る。また、本願明細書においては特に別段の記載をしない限り、Re値は波長589nmにおける値を意味するものとする。
また、上記屈折率異方性Δnは、Nx−Nyで表される値であり、通常は0.05〜0.3の範囲内、より一般的には0.1〜0.15の範囲内であることが多い。
【0034】
本発明における隣接する配向部間の具体的な厚みの差としては、上述のように後述する位相差層に用いられる棒状化合物の種類および所望の位相差層の面内レターデーション値により適宜決定されることになる。
もっとも、当該距離は本発明において一般的に用いられる棒状化合物であれば、隣接する色が赤(610〜750nm)、緑(500〜560nm)、青(435〜480nm)であり、位相差層の面内レターデーション値を対応する各色のλ/4とする場合には、通常、赤に対応する配向部と、緑に対応する配向部と間で、0.01μm〜0.03μmの範囲内となり、緑に対応する配向部と青に対応する配向部間で、0.01μm〜0.03μmの範囲内となる。
【0035】
本発明における各配向部の厚みとしては、上述の厚みの異なる配向部を安定的に形成できるものであれば特に限定されるものではないが、0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、特に、2μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0036】
なお、上記配向部の厚みおよび隣接する配向部の厚みの差は、それぞれ図4中のD1およびD2で示す距離を意味するものとする。また、図中では、D1は、最も厚みの厚い配向部の厚みを示すものであり、D2は、最も厚みの厚い配向部と2番目に厚みの厚い配向部との厚みの差を示すものである。
また、図4に示すように配向部の厚みおよび隣接する配向部の厚みの差は、表面の微細凹凸形状を含む厚みをいうものとする。
【0037】
本発明における配向部のパターン、すなわち、平面視上のパターンとしては、表示装置の各色のパターンに対応するものであれば特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば帯状パターン、モザイク状パターン、および千鳥配置状パターン等を挙げることができる。なかでも本発明においては上記各配向部のパターンが互いに平行な帯状であること、すなわち、各色のパターンが、互いに平行な帯状であることが好ましい。表示装置において形成されている各色のパターンと対応関係にすることが容易になるからである。また、各配向部をパターン精度良く形成することが容易だからである。
【0038】
既に説明した図1および図2は、上記配向部が互いに平行な帯状のパターンに形成されている場合の一例を示す概略図である。図1および図2に示すように、本発明に用いられる配向層2においては上記配向部が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。
【0039】
上記配向部が帯状のパターンに形成されている場合、各配向部の幅としては、上記各色のパターンに対応するものであれば特に限定されるものではなく、各配向部の幅は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
しかしながら、本発明においては各配向部の幅は同一であることが好ましい。上記各色のパターンに対応関係にすることが容易になり、その結果、容易に製造可能なものとすることができるようになるからである。
【0040】
上記配向部の具体的な幅としては、上記各色のパターンと対応関係にあるものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、上記表示装置において各色の画素部が形成されている幅に対応するように適宜決定されることになる。このように上記配向部の幅は特に限定されるものではないが、通常、10μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、50μm〜500μmの範囲内であることがより好ましい。
【0041】
さらに、本発明において上記配向部が上記帯状のパターンに形成されている場合、帯状のパターンが形成される方向としては特に限定されるものではない。例えば、本発明の位相差フィルムが長尺状である場合、上記帯状のパターンは帯状の長手方向が位相差フィルムの長尺方向と平行となる方向であっても良く、あるいは直交する方向であってもよく、さらには斜めに交差する方向であってもよい。なかでも本発明においては、上記帯状のパターンは帯状の長手方向が位相差フィルムの長尺方向と平行となる方向であることが好ましい。このような方向に帯状のパターンが形成されていることにより、後述する位相差フィルムの製造方法に示すように、ロール状金型を用いた賦型法等により容易かつ大量に形成することが可能となるからである。
【0042】
本発明に用いられる配向部は、各配向部が別体となるように形成されたものであっても良いが、全ての配向部が一体で形成されたものであることが好ましい。後述する位相差フィルムの製造方法に示すように、ロール状金型を用いた賦型法等により容易かつ大量に形成することが可能となるからである。
【0043】
(ii)微細凹凸形状
本発明における配向部は、表面に微細凹凸形状を有するものである。
ここで、微細凹凸形状としては、所望の配向規制力を発揮することができるものであれば特に限定されるものではないが、ストライプ状のライン状凹凸構造や、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成されたもの等とすることができるが、なかでも、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成されたものであることが好ましい。このようなライン状凹凸構造であることにより、この凹凸構造の形成方向に棒状化合物を安定的に配列させることができるからである。また、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成されたものであることにより、例えば、上記配向層の形成に用いられるロール状金型として、一定方向に表面研磨したものを用いることができる等、容易に金型を形成できるからである。
【0044】
ここで、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに不連続な状態で形成された態様とは、例えば、表面にラビング処理がなされた場合等に形成されるような微小な傷のようなライン状凹凸構造が、略一定方向に不連続な状態で形成された態様を意味するものである。
また、ストライプ状のライン状凹凸構造とは、壁状に形成された凸部が一定の間隔でストライプ状に形成された態様を意味するものであり、例えば表面にラビング処理がなされた場合に形成されるような微小な傷のような凹凸形状はこれに含まれないものである。
【0045】
本発明における微小なライン状凹凸構造の断面形状としては、凹凸構造を有し、上記棒状化合物を所定の方向に配列できるものであれば特に限定されるものではなく、略矩形、略三角形、略台形等とすることができる。また、一定の形状でなくともよい。
【0046】
本発明における微小なライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期としては、棒状化合物を配列させることができる範囲内であれば特に限定されるものではない。本発明において、微小なライン状凹凸構造の幅は、1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1nm〜500nmの範囲内であることがより好ましく、特に、1nm〜100nmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、微小なライン状凹凸構造の高さは、1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、特に、1nm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
さらに、微小なライン状凹凸構造の周期は、必ずしも一定ではなくても良いが、概ね1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、なかでも1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。微小なライン状凹凸構造が上述のサイズであることにより、安定的に液晶化合物を配列させることができるからである。
【0047】
ここで、微小なライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期はそれぞれ図5におけるl、m、nで示される距離を意味する。
なお、図5は、微小なライン状凹凸構造の断面形状が矩形状である場合を示す説明図である。
【0048】
(iii)構成材料
本発明における配向部を構成する材料としては、所望の微細凹凸形状を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を挙げることができる。本発明においてはこれらの何れの構成材料であっても好適に用いることができるが、なかでも紫外線硬化性樹脂が用いられることが好ましい。紫外線硬化性樹脂が用いられることにより、本発明における配向部を後述するような位相差フィルムの製造方法によって容易に形成可能なものにでき、生産性の高いものにできるからである。なお、構成材料として紫外線硬化性樹脂が用いられた場合、本発明における配向部は硬化された紫外線硬化性樹脂からなることになる。
【0049】
本発明に用いられる紫外線硬化性樹脂の具体例としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリロイル基をもつ重合性オリゴマー、モノマーと、アクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン等重合性ビニル基をもつ重合性オリゴマー、モノマー等の単体あるいは配合したものに、必要に応じて増感剤等の添加剤を加えたものに光重合開始剤を加えたもの等を挙げることができる。
【0050】
(2)配向層
本発明に用いられる配向層は、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を含むものであるが、1つの色に対して1つの厚みの配向部を有し、かつ、上記棒状化合物の配列方向が全面で同一方向である1つの配向領域からなるもの(単一配向領域)としても良く、上記棒状化合物を一定方向に配列させる第1配向領域および第1配向領域とは異なる方向に配列させる第2配向領域を含むものとしても良く、厚みの大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みの小さい薄膜領域を含み、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるものとしても良い。
【0051】
本発明に用いられる配向層は、上記配向部間および/または配向領域間に、光を吸収するブラックラインを有するものであっても良い。この場合、ブラックラインの幅は特に限定されるものではないが、通常、10μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
なお、このようなブラックラインが形成される領域としては、配向規制力を有する領域であっても良く、有さない領域であっても良い。
【0052】
本発明に用いられる配向層の形成方法、すなわち、上記透明フィルム基材上に配向層を形成する方法としては、例えば、透明フィルム基材上に上述した構成材料を含有する配向層形成用塗工液を塗布し、乾燥することによって配向層形成用塗工液からなる膜を形成し、必要に応じて硬化処理を行った後、当該膜の表面に微細凹凸形状を形成する方法や、透明フィルム基材上に予め別個に形成した配向層を転写する方法等を挙げることができる。配向層を形成する具体的な方法としては、例えば、ストライプ状のライン状凹凸や微細なライン状凹凸を金型に切削し、その上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、更にその上に透明フィルム基材を密着させ、紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次に、金型から剥離する等の方法を挙げることができる。
【0053】
2.位相差層
本発明における位相差層は、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有するものであり、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むものである。
また、位相差層は、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有することにより位相差フィルムに位相差性を付与するものである。また、本発明においては上記配向層、すなわち、上述したような厚みの異なる2以上の配向部を含む配向層が形成されていることにより、本発明における位相差層は、上記配向部の厚みに応じた厚みの位相差部が、上記配向部が形成されたパターンと同一のパターン状に形成され、かつ、それぞれの配向部が有する配向規制力に沿った方向に棒状化合物が配列されたものである。
【0054】
(1)位相差部
本発明における位相差部は、上記配向部に対応して厚みが異なるものである。
本発明に用いられる位相差部は、後述する棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差部の厚みに依存して決定されるものである。
したがって、本発明に用いられる位相差部の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本発明の位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定されるものである。
【0055】
本発明における位相差部の厚みとしては、所望の位相差性を発現することができるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の位相差フィルムの用途等に応じて適宜設定されるものである。具体的には、位相差部の面内レターデーション、すなわち、位相差部の面内レターデーション値を対応する各色のλ/4分に相当するような範囲内や、λ/2分に相当するような範囲内、さらには、λ/4+λ/2分に相当するような範囲内等とすることができる。
【0056】
本発明において、位相差部の厚みを面内レターデーションが対応する各色のλ/4分に相当するような範囲内の距離にする場合、具体的にどの程度の距離にするかは、後述する棒状化合物の種類および対応する色により適宜決定されることになる。もっとも、当該距離は本発明において一般的に用いられる棒状化合物であれば、通常、厚みが0.1μm〜1.9μmの範囲内であることが好ましく、0.25μm〜1.75μmの範囲内であることがより好ましく、0.5μm〜1.5μmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、λ/2分に相当するような範囲内の距離とする場合には、通常、0.5μm〜4μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜3μmの範囲内であることがより好ましく、1.5μm〜2.5μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0057】
次に、位相差層に含有される棒状化合物について説明する。本発明に用いられる棒状化合物は屈折率異方性を有するものである。本発明における位相差部中に含有される棒状化合物としては、規則的に配列することにより本発明における位相差部に所望の位相差性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる棒状化合物は、液晶性を示す液晶性材料であることが好ましい。液晶性材料は屈折率異方性が大きいため、本発明の位相差フィルムに所望の位相差性を付与することが容易になるからである。
【0058】
本発明に用いられる上記液晶性材料としては、例えば、ネマチック相、スメクチック相等の液晶相を示す材料を挙げることができる。本発明においては、これらのいずれの液晶相を示す材料であっても好適に用いることができるが、なかでもネマチック相を示す液晶性材料を用いることが好ましい。ネマチック相を示す液晶性材料は、他の液晶相を示す液晶性材料と比較して規則的に配列させることが容易であるからである。
【0059】
また、本発明においては上記ネマチック相を示す液晶性材料として、メソゲン両端にスペーサを有する材料を用いることが好ましい。メソゲン両端にスペーサを有する液晶性材料は柔軟性に優れるため、このような液晶性材料を用いることにより、本発明の位相差フィルムを透明性に優れたものにできるからである。
【0060】
さらに、本発明に用いられる棒状化合物は、分子内に重合性官能基を有するものが好適に用いられ、なかでも3次元架橋可能な重合性官能基を有するものがより好適に用いられる。上記棒状化合物が重合性官能基を有することにより、上記棒状化合物を重合して固定することが可能になるため、配列安定性に優れ、位相差性の経時変化が生じにくい位相差層を得ることができるからである。なお、重合性官能基を有する棒状化合物を用いた場合、本発明における位相差層には、重合性官能基によって架橋された棒状化合物が含有されることになる。
【0061】
なお、上記「3次元架橋」とは、液晶性分子を互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることを意味する。
【0062】
上記重合性官能基としては、例えば、紫外線、電子線等の電離放射線、或いは熱の作用によって重合する重合性官能基を挙げることができる。これら重合性官能基の代表例としては、ラジカル重合性官能基、或いはカチオン重合性官能基等が挙げられる。さらにラジカル重合性官能基の代表例としては、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が挙げられ、具体例としては、置換基を有するもしくは有さないビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等が挙げられる。また、上記カチオン重合性官能基の具体例としては、エポキシ基等が挙げられる。その他、重合性官能基としては、例えば、イソシアネート基、不飽和3重結合等が挙げられる。これらのなかでもプロセス上の点から、エチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が好適に用いられる。
【0063】
さらにまた、本発明における棒状化合物は液晶性を示す液晶性材料であって、末端に上記重合性官能基を有するものが特に好ましい。このような液晶材料を用いることにより、例えば、互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることができるため、配列安定性を備え、かつ、光学特性の発現性に優れた上記を形成することができるからである。
なお、本発明においては片末端に重合性官能基を有する液晶性材料を用いた場合であっても、他の分子と架橋して配列安定化することができる。
【0064】
本発明に用いられる棒状化合物の具体例としては、下記式(1)〜(17)で表される化合物を例示することができる。
【0065】
【化1】
【0066】
なお、本発明において上記棒状化合物は、1種類のみを用いてもよく、または、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、上記棒状化合物として、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料と、片末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料とを混合して用いると、両者の配合比の調整により重合密度(架橋密度)及び光学特性を任意に調整できる点から好ましい。また、信頼性確保の観点からは、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料が好ましいが、液晶配向の観点からは両末端の重合性官能基が1つであることが好ましい。
【0067】
本発明における位相差部の配向部と接触する面と反対側の面の上記透明フィルム基材からの距離としては、隣接する位相差部同士で同様であることが好ましい。本発明の位相差フィルムの表面形状を平坦なものとすることができ、他の部材との貼り合わせ性に優れたものとすることができるからである。また、本発明においては、配向層が厚みの異なる配向部を有することにより、厚みの異なる位相差部間の厚みの差を吸収させることができるからである。
【0068】
(2)位相差層
本発明に用いられる位相差層は、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むものである。
したがって、上記配向層が、1つの色に対して1つの厚みの配向部を有し、かつ、上記棒状化合物の配列方向が全面で同一方向である1つの配向領域からなるものである場合には、上記位相差層は、1つの位相差領域からなるもの(単一位相差領域)となり、上記配向層が、第1配向領域および第2配向領域を含むものや、厚膜領域および薄膜領域を含むもの等、複数の配向領域を有するものである場合には、それぞれ、第1位相差領域および第2位相差領域を含むものや、低位相差領域および高位相差領域を有するもの等、複数の位相差領域を有するものとなる。
【0069】
本発明における位相差層の形成方法としては、所望の厚みの位相差層を精度良く形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、通常、上記配向層上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を塗工し、必要に応じて硬化処理を行って位相差層を形成することによって製造することができる。
【0070】
3.透明フィルム基材
本発明に用いられる透明フィルム基材は、配向層および位相差層を支持する機能を有するものである。
【0071】
本発明に用いられる透明フィルム基材は、位相差性が低いものであることが好ましい。より具体的には、本発明に用いられる透明フィルム基材は、面内レターデーション値が、0nm〜10nmの範囲内であることが好ましく、0nm〜5nmの範囲内であることがより好ましく、0nm〜3nmの範囲内であることがさらに好ましい。透明フィルム基材の面内レターデーション値が上記範囲よりも大きいと、表示装置の表示品質が低下する場合があるからである。
【0072】
本発明に用いられる透明フィルム基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明フィルム基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0073】
本発明に用いられる透明フィルム基材は、ロール状に巻き取ることができる可撓性を有するフレキシブル材であることが好ましい。
このようなフレキシブル材としては、セルロース誘導体、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類などを例示することができる。なかでも本発明においてはセルロース誘導体を用いることが好ましい。セルロース誘導体は特に光学的等方性に優れるため、光学的特性に優れたものとすることができるからである。
【0074】
本発明においては、上記セルロース誘導体のなかでも、セルロースエステルを用いることが好ましく、さらに、セルロースエステル類のなかでも、セルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
【0075】
上記セルロースアシレート類としては、炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであってもよい。
【0076】
本発明においては、上記低級脂肪酸エステルのなかでもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5%〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。なお、トリアセチルセルロースフィルムを構成するトリアセチルセルロースの酢化度は、フィルム中に含まれる可塑剤等の不純物を除去した後、上記の方法により求めることができる。
【0077】
本発明に用いられる透明フィルム基材の厚みは、本発明の位相差フィルムの用途等に応じて、必要な自己支持性を付与できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、25μm〜125μmの範囲内が好ましく、なかでも40μm〜100μmの範囲内が好ましく、特に60μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。透明フィルム基材の厚みが上記の範囲よりも薄いと、十分な自己支持性を付与できない場合があるからである。また、厚みが上記の範囲よりも厚いと、例えば、長尺状の位相差フィルムを形成した後、裁断加工し、枚葉の位相差フィルムとする際に、加工屑が増加したり、裁断刃の磨耗が早くなってしまう場合があるからである。
【0078】
本発明に用いられる透明フィルム基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
【0079】
4.位相差フィルム
本発明に用いられる位相差フィルムは、上記透明フィルム基材、配向層、および位相差層を有するものであるが、必要に応じて、その他の構成を有するものであっても良い。
【0080】
本発明の位相差フィルムは、枚葉であってもいが、長尺状であることが好ましい。表示装置のサイズ等に応じて自由度高く位相差フィルムを供給可能となる等、製造プロセスの自由度の高いものとすることができるからである。
ここで、長尺状であるとは、ロール状に巻き取ることができる程度の長さのものであることをいうものであり、製造装置に設置できる重量等に応じて任意に決定すればよいが、具体的には、長さが10m以上の範囲内とすることが好ましく、なかでも、50m〜5000mの範囲内とすることが好ましく、特に、100m〜4000mの範囲内とすることが好ましい。
また、長さは幅に対して10倍以上であることが好ましく、なかでも50倍〜5000倍の範囲内であることが好ましく、特に、100倍〜4000倍の範囲内であることがこの好ましい。取扱い性等に優れたものとすることができるからである。
【0081】
本発明の位相差フィルムの位相差層が有する位相差性の程度については、本発明の用途等に応じて適宜決定することができる。したがって、位相差層が示す具体的な面内レターデーションの数値範囲についても特に限定されるものではなく、本発明の用途に応じて適宜調整すればよい。なかでも、本発明においては、位相差層の面内レターデーション値、すなわち、位相差層に含まれる各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4分、λ/2分、またはλ/4+λ/2分に相当する程度である場合には、位相差層に含まれる各位相差部の面内レターデーション値がλ/4(またはλ/2、λ/4+λ/2)±20nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、λ/4(またはλ/2、λ/4+λ/2)±10nmの範囲内であることが好ましく、特にλ/4(またはλ/2、λ/4+λ/2)±5nmの範囲内であることが好ましい。
それぞれの用途において本発明の位相差フィルムが所望の機能をより効果的に発揮できるからである。
【0082】
本発明の位相差フィルムの用途としては、例えば、エレクトロルミネッセント表示装置のエレクトロルミネッセント表示装置用円偏光板や、3次元表示装置の3次元表示用パターン位相差フィルム等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、優れた視認性が要求されるものに用いられることが好ましい。
【0083】
B.EL表示装置用円偏光板
次に、本発明のEL表示装置用円偏光板について説明する。
本発明のEL表示装置用円偏光板は、上述の位相差フィルムと、上記位相差フィルム上に形成され、偏光子を含む偏光板と、を有し、上記配向層に含まれる配向部の上記棒状化合物の配列方向が同一方向であり、上記位相差部の面内レターデーション値が、上記各色のλ/4分に相当するものであることを特徴とするものである。
【0084】
このようなEL表示装置用円偏光板を図を参照して説明する。既に説明した図3に示すように、本発明のEL表示装置用円偏光板20は、上述の位相差フィルム10と、上記位相差フィルム10上に形成された偏光子21からなる偏光板22と、を有し、上記位相差部(3a−1、3a−2、3a−3)の面内レターデーション値が、上記各色のλ/4分に相当するものであり、上記位相差部(3a−1、3a−2、3a−3)に含有される棒状化合物の配列方向が同一方向のものである。
【0085】
本発明によれば、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、コントラストに優れたものとすることができる。
【0086】
本発明のEL表示装置用円偏光板は、少なくとも上述の位相差フィルムおよび偏光子を有するものである。
以下、本発明のEL表示装置用円偏光板の各構成について詳細に説明する。
【0087】
1.位相差フィルム
本発明に用いられる位相差フィルムは、上記「A.位相差フィルム」の項に記載のものであって、上記配向層に含まれる配向部の上記棒状化合物の配列方向が同一方向であり、上記位相差部に含有される棒状化合物の配列方向が同一方向であるもの、すなわち、1つの色に対して1つの厚みの配向部を有し、かつ、上記棒状化合物の配列方向が全面で同一方向である単一配向領域からなるものである。また、上記位相差部の面内レターデーション値が、上記各色のλ/4分に相当するものである。
このような位相差フィルムについては、上記「A.位相差フィルム」の項に記載のものと同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0088】
2.偏光板
本発明における偏光板は、少なくとも偏光子を含むものであれば特に限定されるものではない。
【0089】
このような偏光板としては、少なくとも偏光子を含むものであれば特に限定されるものではなく、例えば、偏光子と、当該偏光子の両面に配置された偏光板保護フィルムとからなるものが一般的である。
【0090】
具体的には、既に説明した図3に示すように、偏光子のみからなり、位相差フィルム状に偏光子が直接接着される態様であってもよく,または、図6に例示するように、偏光子21の両面に偏光板保護フィルム23が貼り合わされた構成を有するものであっても良い。
なお、図6においては、偏光板22は、接着層24を介して位相差フィルム10に接着されている。
【0091】
また、本発明における偏光板の形成箇所としては、既に説明した図3に示すように、偏光板が、透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に貼り合わされたものであっても良く、上記位相差層の上記配向層が形成された面とは反対面上に貼り合わされるものであっても良い。
【0092】
(1)偏光子
本発明に用いられる偏光子としては、透過光を直線偏光とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に液晶表示装置用の偏光板に用いられる偏光子として公知のものを用いることができる。このような偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールからなるフィルムにヨウ素を含浸させ、これを一軸延伸することによってポリビニルアルコールとヨウ素との錯体を形成させたものを挙げることができる。
【0093】
(2)偏光板保護フィルム
本発明に用いられる偏光板保護フィルムとしては、上記偏光子が空気中の水分等に曝されることを防止する機能や、偏光子の寸法変化を防止する機能等を有するものであり、かつ、所望の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、可視光領域における透過率が80%以上であるものが好ましく、90%以上であるものがより好ましい。
ここで、上記偏光板保護フィルムの透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0094】
上記偏光板保護フィルムを構成する材料としては、例えば、セルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類等を挙げることができる。なかでも本発明においては、上記材料としてセルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、またはアクリル系樹脂を用いることが好ましい。
【0095】
上記セルロース誘導体としては、偏光板において偏光子が空気中の水分等に曝されることを防止する機能と、偏光子の寸法変化を防止する機能とを有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記セルロース誘導体としてセルロースエステル類を用いることが好ましく、さらにセルロースエステル類のなかでもセルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
【0096】
上記セルロースアシレート類としては、炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであってもよい。
【0097】
また本発明においては、上記低級脂肪酸エステルのなかでもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。このようなトリアセチルセルロールは光学的等方性に優れるからである。
ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。なお、トリアセチルセルロースフィルムを構成するトリアセチルセルロースの酢化度は、フィルム中に含まれる可塑剤等の不純物を除去した後、上記の方法により求めることができる。
【0098】
なお、従来、セルロース誘導体からなるフィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、表面をけん化処理することによってポリビニルアルコールからなる偏光子との接着性を向上することができる。
【0099】
一方、上記シクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。このような上記環状オレフィンからなるモノマーとしては、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等を挙げることができる。また、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであっても好適に用いることができる。また、上記シクロオレフィン系樹脂は上記環状オレフィンからなるモノマーの単独重合体であってもよく、または、共重合体であってもよい。
【0100】
また、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂は、23℃における飽和吸水率が1質量%以下であるものが好ましく、なかでも0.1質量%〜0.7質量%の範囲内であるものが好ましい。このようなシクロオレフィン系樹脂を用いることにより、偏光板を吸水による光学特性の変化や寸法の変化がより生じにくいものとすることができるからである。
ここで、上記飽和吸水率は、上記吸水率は、ASTMD570に準拠し23℃の水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められる。
【0101】
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、Ticona社製 Topas(登録商標)、ジェイエスアール社製 アートン(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONOR(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONEX(登録商標)、三井化学社製 アペル(登録商標)等を挙げることができる。
【0102】
また、上記アクリル系樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)などが挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキル、特に好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0103】
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、例えば、日本触媒社製アクリビュア(登録商標)を挙げることができる。
【0104】
また、本発明に用いられる偏光板保護フィルムの厚みは特に限定されないが、通常、5μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、特に15μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、さらに30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0105】
3.EL表示装置用円偏光板
本発明のEL表示装置用円偏光板は、上述の位相差フィルムおよび偏光子を含むものであるが、必要に応じて、他の構成を有するものであっても良い。
尚、位相差フィルムの遅相軸と偏光子の偏光軸が45度±5度、好ましくは45度±3度、より好ましくは45度±1度の範囲の関係になる様に配置することが好ましい。(楕)円偏光板としての機能が発現するからである。
【0106】
C.3次元表示用パターン位相差フィルム
次に、本発明の3次元表示用パターン位相差フィルムについて説明する。
本発明の3次元表示用パターン位相差フィルムは、上述の位相差フィルムを有するものであり、上記配向層が、上記棒状化合物を一定方向に配列させる第1配向領域および第1配向領域とは異なる方向に配列させる第2配向領域を含む態様(第1態様)と、厚みの大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域を有し、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させるものである態様(第2態様)と、の2つの態様に分けることができる。
以下、各態様に分けて本発明の3次元表示用パターン位相差フィルムについて説明する。
【0107】
I.第1態様
本態様の3次元表示用パターン位相差フィルムは、上述の位相差フィルムを有するものであり、上記位相差フィルムに含まれる配向層が、上記棒状化合物を一定方向に配列させる第1配向領域および第1配向領域とは異なる方向に配列させる第2配向領域を含むことを特徴とするものである。
【0108】
このような本態様のパターン位相差フィルムを図を参照して説明する。図7は、図8のB−B線断面図であり、図8は、本態様のパターン位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。図7および図8に例示するように、本態様のパターン位相差フィルム30は、上述の位相差フィルム10を有するものであり、上記位相差フィルム10に含まれる配向層2が、屈折率異方性を有する棒状化合物を一定の方向に配列させる第1配向領域12aおよび第1配向領域12aとは異なる方向に配列させる第2配向領域12bを含むものである。
また、第1配向領域12aに含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3)には、一定方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成され、第2配向領域12b(2b´−1、2b´−2、2b´−3)には、第1配向領域とは異なる方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成されている。また、位相差層3は、上記第1配向領域12aおよび第2配向領域12bの棒状化合物の配列方向に配列された棒状化合物を含む第1位相差領域13aおよび第2位相差領域13bを有し、さらに、第1位相差領域13aが、第1配向領域12aに含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3a´−1、3a´−2、3a´−3)を含み、第2位相差領域13bが、第2配向領域12bに含まれる配向部(2b´−1、2b´−2、2b´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3b´−1、3b´−2、3b´−3)を含むものである。
なお、この例においては、第1位相差領域および第2位相差領域がそれぞれ本態様のパターン位相差フィルムの長尺方向に対して45°および135°の方向に棒状化合物が配列され、両領域の遅相軸が直交するものである。また、図8中の矢印は、各配向領域での棒状化合物を配列させる方向である。さらに、図8におけるW1、W2はそれぞれ第1配向領域12aおよび第2配向領域12bの帯幅を示す。
【0109】
本態様によれば、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、色再現性に優れた3次元表示装置を形成可能とすることができる。
【0110】
本態様のパターン位相差フィルムは、上述の位相差フィルムを有するものである。また、上記位相差フィルムは、上述のように、透明フィルム基材、配向層および位相差層を少なくとも含むものである。
以下、本態様のパターン位相差フィルムの各構成について詳細に説明する。
なお、上記位相差フィルムを構成する透明フィルム基材については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0111】
1.配向層
本態様に用いられる配向層は、上記棒状化合物を一定方向に配列させる第1配向領域および第1配向領域とは異なる方向に配列させる第2配向領域を含むものである。
また、上記配向層は、上記第1配向領域および第2配向領域にそれぞれ配向部を含むものであるが、このような配向部については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0112】
本態様における第1配向領域および第2配向領域は、棒状化合物を配列させる方向が互いに異なるものである。すなわち、第1配向領域に含まれる配向部と、第2配向領域に含まれる配向部とでは、上記棒状化合物を配列させる方向が異なるものである。
また、本態様においては当該第1配向領域および第2配向領域はパターン状に形成されている。
【0113】
本態様における第1配向領域および第2配向領域が形成されるパターンは、本態様のパターン位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば、帯状パターン、モザイク状パターン、千鳥配置状パターン等を挙げることができる。なかでも本態様においては上記第1配向領域および第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。このようなパターンで第1配向領域および第2配向領域が形成されていることにより、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、3次元表示装置において右目用映像および左目用映像が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になる。このため、上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることにより、本態様のパターン位相差フィルムを用いて容易に3D液晶表示装置を製造することができるようになるからである。換言すると、本態様のパターン位相差フィルムを3D液晶表示装置に好適に用いられるものにできるからである。
【0114】
なお、上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されている場合の具体例としては、既に説明した図7および図8に示すものを挙げることができる。図7および図8に示すように、本態様に用いられる配向層2においては上記第1配向領域12aおよび上記第2配向領域12bが互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。
【0115】
上記第1配向領域および第2配向領域が帯状のパターンに形成されている場合、第1配向領域および第2配向領域の幅は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。しかしながら、本態様においては第1配向領域の幅と第2配向領域の幅は同一であることが好ましい。3次元表示装置においては、通常、右目用映像および左目用映像が同一の幅で形成されていることから、上記第1配向領域および上記第2配向領域の幅を同一幅とすることにより、本態様のパターン位相差フィルムを用いて3次元表示装置を製造する場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、3次元表示装置において右目用映像および左目用映像が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になり、その結果、本態様のパターン位相差フィルムを用いて容易に3D液晶表示装置を製造することができるようになるからである。
【0116】
上記第1配向領域および上記第2配向領域の具体的な幅としては、本態様のパターン位相差フィルムの用途に応じて適宜決定される。例えば、本態様のパターン位相差フィルムを、3次元表示可能な液晶表示装置を製造するために使用する場合、上記第1配向領域および第2配向領域の幅は液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて画素部が形成されている幅に対応するように適宜決定されることになる。このように上記第1配向領域および第2配向領域の幅は特に限定されるものではないが、通常、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100μm〜600μmの範囲内であることがより好ましい。
【0117】
さらに、本態様において上記第1配向領域および上記第2配向領域が上記帯状のパターンに形成されている場合、帯状のパターンが形成される方向としては特に限定されるものではない。例えば、上記帯状のパターンの形成方向が本態様のパターン位相差フィルムの長手方向(長尺方向)と平行となる方向であってもよく、あるいは直交する方向であってもよく、さらには斜めに交差する方向であってもよい。なかでも本態様のパターン位相差フィルムが長尺状のものから枚葉状とされるものである場合には、上記帯状のパターンは帯状の形成方向が長尺状のパターン位相差フィルムの長手方向と平行となる方向であること、すなわち、上記第1配向領域および上記第2配向領域が、長手方向に互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。
これにより、上記第1位相差領域および第2位相差領域が形成されたパターンと、表示装置に用いられるカラーフィルタ等において右目用映像および左目用映像が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になるからである。
【0118】
本態様における第1配向領域および第2配向領域が有する配向規制力、すなわち、棒状化合物を配列させる方向としては、互いに異なるものであれば特に限定されるものではないが、90°異なる方向および45°異なる方向等とすることが好ましい。
配列方向が例えば、長尺方向に対して45°/135°(図8)、または、0°/90°(図9)のように互いに直交する方向の場合、第1配向領域および第2配向領域上に形成される第1位相差領域および第2位相差領域に含まれるそれぞれの位相差部の面内レターデーション値を対応する各色のλ/4分に相当するものとすることにより、これらの位相差領域を透過することで直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、容易に3次元表示が可能な表示装置を製造するために好適に用いられるものにできるからである。
また、配列方向が長尺方向に対して0°/45°(図10)または0°/135°(図11)のように、形成される第1配向領域および第2配向領域の棒状化合物の配列方向が45°の角度となる方向である場合には、上記第1位相差領域および第2位相差領域に含まれるそれぞれの位相差部の面内レターデーション値を対応する各色のλ/2分に相当するものとし、さらに、λ/4板と組み合わせて用いることにより、容易に3D表示装置を製造するために好適に用いられるものにできるからである。
なお、90°異なる方向とは、本態様のパターン位相差フィルムを用いて3次元表示が可能な表示装置を形成した際に、精度良く3次元表示を行うことができるものであれば特に限定されるものではないが、通常、90°±3°の範囲内であることが好ましく、なかでも、90°±2°程度の範囲内であることが好ましく、なかでも、90°±1°程度の範囲内であることが好ましい。高性能な3次元表示が可能な表示装置とすることができるからである。
また、45°異なる方向とは、本態様のパターン位相差フィルムを用いて3次元表示が可能な表示装置を形成した際に、精度良く3次元表示を行うことができるものであれば特に限定されるものではないが、通常、45°±3°の範囲内であることが好ましく、なかでも、45°±2°程度の範囲内であることが好ましく、なかでも、45°±1°程度の範囲内であることが好ましい。高性能な3次元表示が可能な表示装置とすることができるからである。
なお、図9〜11中の符合については、図8と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0119】
2.位相差層
本態様に用いられる位相差層は、上記第1配向領域および第2配向領域に対応して、上記棒状化合物が一定方向に配列された第1位相差領域および第1位相差領域とは異なる方向に上記棒状化合物が配列された第2位相差領域を含むものである。
また、上記位相差層は、上記第1位相差領域および第2位相差領域にそれぞれ位相差部を含むものであるが、このような位相差部については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0120】
本態様における第1位相差領域および第2位相差領域は、上述した配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有することにより本態様のパターン位相差フィルムに位相差性を付与するものである。また、本態様においては上述したような特徴を有する配向層が形成されていることにより、本態様における位相差層は第1位相差領域と第2位相差領域とが、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと同一のパターン状に形成されたものになる。
【0121】
本態様に用いられる位相差層は上述した棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差層の厚みに依存して決定されるものである。したがって、本態様に用いられる位相差層の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本態様のパターン位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定されるものである。
本態様においては、上記第1配向領域および第2配向領域が有する配向規制力が互いに直交するものである場合、上記第1位相差領域および第2位相差領域の面内レターデーション値、すなわち、上記両領域に含まれる位相差部の面内レターデーション値を対応する各色のλ/4分に相当するような範囲内とするものであることが好ましい。これにより、本態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記第1位相差領域および上記第2位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、より精度良く3次元映像を表示できるものとすることができるからである。
また、上記第1配向領域および第2配向領域が有する配向規制力が45°の角度となる方向、すなわち、第1配向領域および第2配向領域の棒状化合物の配列方向が45°の角度となる方向である場合には、上記第1位相差領域および第2位相差領域に含まれるそれぞれの位相差部の面内レターデーション値を対応する各色のλ/2分に相当するような範囲内とするものであることが好ましい。第1位相差領域の遅相軸の方向と遅相軸が平行なλ/4板と組み合わせて用いることにより、容易に3D表示装置を製造するために好適に用いられるものにできるからである。
【0122】
ここで、このような位相差領域を有する場合に、λ/4板と組み合わせることにより、容易に3D表示装置を製造することができる点について、より詳細に説明する。図12は、本態様のパターン位相差フィルムを説明する説明図であり、パターン位相差フィルムとλ/4板とを組み合わせた、3次元表示可能な表示装置の一例を示すものである。図12に例示するように、パターン位相差フィルムと、λ/4板とを組み合わせて用いる表示装置は、パッシブ方式により3D表示が可能なものとなる。その原理は次の通りである。
まず、表示装置の画素部を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。次に、パターン位相差フィルムとして、位相差層の第1位相差領域が左目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成され、かつ第1位相差領域以外の領域(図12では、当該領域には何も形成されていないものとする。)が右目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成されたものを用意する。そして、このような本態様のパターン位相差フィルムを、偏光板の表示面側に配置し、さらにλ/4板をパターン位相差フィルムの表示面側に配置する。このとき、第1位相差領域の遅相軸の方向と、偏光板の偏光軸の方向とが45°で交差するようにし、さらに第1位相差領域の遅相軸方向とλ/4板の遅相軸方向とが平行または直交の関係になるようにする。このようにパターン位相差フィルムとλ/4板とを配置することによって、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された映像(以下、それぞれ「右目用映像」、「左目用映像」と称する場合がある。)は、次のような経路で観察者に視認されることになる。
すなわち、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された各映像は、まず、偏光板を透過することから、それぞれが直線偏光に変換されることになる。ここで、図12においては、偏光板の偏光軸は0°方向となっているため、第2偏光板を透過した各映像も、0°方向の直線偏光となる。次に、このように直線偏光に(0°)変換された各映像は、本態様のパターン位相差フィルムに入射することになるが、左目用映像は第1位相差領域を通過し、右目用映像は位相差層が形成されていない領域を通過するため、左目用映像は偏光軸が90°の直線偏光(L1)として、パターン位相差フィルムを透過するが、右目用映像には変化はなく、偏光軸が0°の直線偏光(L2)のままパターン位相差フィルムを透過することになる。次に、L1およびL2がλ/4板に入射することにより、左目用映像は右旋回の円偏光(C1)に、右目用映像は左旋回の円偏光(C2)に、それぞれ変換されることになる。
このように、パターン位相差フィルムおよびλ/4板を通過した右目用映像および左目用映像は、それぞれ右円偏光と左円偏光に変換されることになるため、視聴者に右目用フィルターと左目用フィルターとを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目用フィルターのみを通過し、かつ左目用の映像が左目用フィルターのみを通過するようにすることによって、右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることができ、3次元表示が可能となるのである。
なお、図12においては、パターン位相差フィルムにおける位相差層において、第2位相差領域には何も形成されていない例を説明したが、例えば、上記第2位相差領域に、面内レターデーション値がλ/2分に相当し、かつ遅相軸方向が上記第1位相差領域の遅相軸方向と45°で交差する関係にあり、さらに遅相軸方向が、偏光板の偏光軸方向と平行又は直交の関係にある第2位相差領域が形成されている場合であっても、上記と同様に3次元表示可能な表示装置を得ることができる。
【0123】
3.パターン位相差フィルム
(i)他の構成
本態様のパターン位相差フィルムは少なくとも上述の位相差フィルムを有するものであるが、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。本態様に用いられる他の構成としては、所望の3次元映像を表示することができるものであれば特に限定されるものではなく、本態様のパターン位相差フィルムの用途等に応じて所望の機能を有するものを適宜選択して用いることができる。このような他の構成の例としては、例えば、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に形成されるアンチグレア層または反射防止層を挙げることができる。このようなアンチグレア層および反射防止層が形成されていることにより、表示品質の良い表示装置を得ることができるという利点がある。なお、上記反射防止層、およびアンチグレア層は一方のみが用いられてもよく、または両方が用いられてもよい。
また、上記フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上または上記位相差層の上記配向層が形成された面とは反対面上に偏光板を有するもの、すなわち、偏光板付パターン位相差フィルムであっても良い。なお、このような偏光板については上記「B.EL表示装置用円偏光板」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0124】
図13は、本態様のパターン位相差フィルムに反射防止層が用いられる場合の一例を示す概略断面図である。図13に例示するように本態様のパターン位相差フィルム30には、上記透明フィルム基材1の上記配向層2が形成された面とは反対面上にアンチグレア層または反射防止層14が形成されていてもよい。
【0125】
上記アンチグレア層は、太陽や蛍光灯などからの外光が、表示装置の表示画面に入射して反射することから生じる画面の映り込みを低減させる機能を有する層である。一方、上記反射防止層は、表面の正反射率を抑えることで画像のコントラストがよくなり、その結果、画像の視認性を向上させる機能を有するものである。本態様に用いられるアンチグレア層、反射防止層としては、所望のアンチグレア機能、または反射防止機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、表示画質向上を目的として表示装置に用いられるものとして一般的に公知のものを用いることができる。上記アンチグレア層としては、例えば、微粒子を分散させた樹脂層を挙げることができ、上記反射防止層としては、例えば、屈折率の異なる複数の層が積層された構成を有するものを挙げることができる。尚、アンチグレア層の最表面に反射防止層を設ければ、明室における画像の視認性を更に向上することができる。
【0126】
(ii)パターン位相差フィルム
本態様のパターン位相差フィルムは、上述した第1配向領域および第2配向領域が形成されたパターンに対応するように、位相差層に第1位相差領域と第2位相差領域とがパターン状に形成された構成を有するものである。ここで、上記第1位相差領域および第2位相差領域が有する位相差性の程度については、所望の3次元映像を表示できるものであれば特に限定されるものではなく、本態様の用途等に応じて適宜決定することができる。したがって、第1位相差領域および第2位相差領域が示す具体的な面内レターデーションの数値範囲についても特に限定されるものではなく、本態様の用途に応じて適宜調整すればよい。なかでも、本態様においては、上記第1配向領域および第2配向領域が有する配向規制力が互いに直交するものである場合、位相差層(各位相差部)の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4分に相当する程度であり、上記第1配向領域および第2配向領域が有する配向規制力が45°の角度となる方向である場合には、位相差層(各位相差部)の面内レターデーション値が対応する各色のλ/2分に相当する程度であることが好ましい。
なお、本態様における位相差層において第1位相差領域および第2位相差領域が示す面内レターデーション値は、遅相軸の方向が異なる以外はほぼ同一となる。
【0127】
なお、本態様のパターン位相差フィルムにおいて位相差層に第1位相差領域および第2位相差領域からなるパターンが形成されていることは、例えば、偏光板クロスニコルの中にサンプルを入れて、サンプルを回転させた場合に明線と暗線が反転することを確認することにより評価することができる。このとき、第1位相差領域および第2位相差領域からなるパターンが細かい場合は偏光顕微鏡で観察するとよい。また、前述したAxoScanで各パターン内の遅相軸の方向(角度)を測定しても良い。
【0128】
II.第2態様
本態様の3次元表示用パターン位相差フィルムは、上述の位相差フィルムを有するものであり、上記配向層が、厚みの大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域を有し、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させるものであることを特徴とするものである。
【0129】
このような本態様のパターン位相差フィルムを図を参照して説明する。図14は、図15のC−C線断面図であり、図15は、本態様のパターン位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。図14および図15に例示するように、本態様のパターン位相差フィルム30は、上述の位相差フィルム10を有するものであり、厚みの大きい厚膜領域12b´および上記厚膜領域12b´よりも厚みが小さい薄膜領域12a´を含み、上記厚膜領域12b´および上記薄膜領域12a´が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるものである。
また、薄膜領域12a´に含まれる配向部(2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3)には、一定方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成され、厚膜領域12b´(2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3)には、薄膜領域12a´と同一方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成されている。また、薄膜領域12a´に含まれる配向部(2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3)と、厚膜領域12b´に含まれる配向部(2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3)とは、それぞれ、表示装置の同じ色に対応するものである。すなわち、配向部2a´´−1および配向部2b´´−1、配向部2a´´−2および配向部2b´´−2、配向部2a´´−3および配向部2b´´−3は、それぞれ、表示装置の同じ色のパターンに対応するものである。
また、位相差層3は、棒状化合物が同一方向に配列された低位相差領域13b´および高位相差領域13a´を有し、さらに、高位相差領域13a´が、薄膜領域12a´に含まれる配向部(2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3a´´−1、3a´´−2、3a´´−3)を含み、低位相差領域13b´が、厚膜領域12b´に含まれる配向部(2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3b´´−1、3b´´−2、3b´´−3)を含むものである。
なお、この例においては、高位相差領域13a´および低位相差領域13b´は、それぞれ長尺方向に対して0°の方向に棒状化合物が配列され、両領域の遅相軸が平行なものである。また、図15中の矢印は、棒状化合物の配列方向を示すものである。
【0130】
本態様の3次元表示用パターン位相差フィルムは、上述の位相差フィルムを有するものである。また、上記位相差フィルムは、上述のように、透明フィルム基材、配向層および位相差層を少なくとも含むものである。
以下、本態様の3次元表示用パターン位相差フィルムの各構成について詳細に説明する。
なお、上記位相差フィルムを構成する透明フィルム基材については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0131】
1.配向層
本態様に用いられる配向層は、上記位相差フィルムに含まれる配向層が、厚みの大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域を有し、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるものである。
また、上記配向層は、上記厚膜領域および薄膜領域にそれぞれ配向部を含むものであるが、このような配向部については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0132】
本態様における配向層は、厚みの大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みの小さい薄膜領域を含み、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるものである。
ここで、厚みの大きい厚膜領域は、表示装置で表示される色に対する厚みが厚い配向部を含むものであり、薄膜領域は、上記厚膜領域に含まれる配向部よりも同じ色に対する厚みが薄い配向部を含むことを示すものである。
【0133】
このような配向層が用いられることにより、当該配向層上に形成される位相差層において棒状化合物の配列方向は位相差層全体において同一方向になるが、上記厚膜領域および上記薄膜領域に対応して、低位相差領域および上記低位相差領域よりも厚みの大きい高位相差領域が形成されることになる。
ここで、上記厚膜領域上に形成された位相差層(低位相差領域)と、上記薄膜領域上に形成された位相差層(高位相差領域)とは厚みが異なるため、この厚みの差に相当する分だけ高位相差領域は、低位相差領域よりも位相差値が高くなることになる。
【0134】
このため、本態様における厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、低位相差領域と高位相差領域との位相差値の差をどの程度にするかによって適宜決定されるものである。したがって、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、本態様の用途、および後述する位相差層に用いられる棒状化合物の種類等に応じて適宜決定されるものであり特に限定されるものではない。なかでも本態様においては上記厚膜領域と上記薄膜領域との厚みの差が、位相差層の高位相差領域の面内レターデーション値と、位相差層の低位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値との差が対応する各色のλ/2分に相当する距離であることが好ましい。これにより、例えば、配向層上に位相差層を形成する際に、低位相差領域の各位相差部の面内レターデーションが対応する各色のλ/4分に相当するようにすることにより、得られるパターン位相差フィルムは、低位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4分に相当し、かつ高位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4+λ/2に相当することになるが、このような態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記低位相差領域、上記高位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、精度良く3次元映像を表示できるからである。
なお、ここでいう厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、厚膜領域に含まれる配向部と、薄膜領域に含まれ、厚膜領域に含まれる配向部と同じ色に対応する配向部との厚みの差をいうものである。
【0135】
なお、厚膜領域および薄膜領域の厚みは、各領域に含まれる全ての配向部の最も厚い配向部の厚みをいうものであり、上記厚膜領域の厚み、上記薄膜領域の厚み、および上記厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、それぞれ図16中のD4、D5、およびD6で示す距離を意味するものとする。
また、図16に示すように上記厚膜領域および上記薄膜領域の厚みは微細凹凸形状を含む厚みをいうものとする。
【0136】
上記厚膜領域および上記薄膜領域は配向層の表面にパターン状に形成されたものである。ここで、上記厚膜領域および上記薄膜領域が形成されるパターン、幅、および方向は、本態様の用途等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではないが、上記「I.第1態様」における第1配向領域および第2配向領域と同様とすることができる。
【0137】
2.位相差層
本態様における位相差層は、上記位相差層が、上記厚膜領域および上記薄膜領域に対応して、低位相差領域および上記低位相差領域よりも厚みの大きい高位相差領域を有するものである。
また、上記位相差層は、上記低位相差領域および高位相差領域にそれぞれ位相差部を含むものであるが、このような位相差部については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
【0138】
本態様における低位相差領域および高位相差領域は、上述した配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有することにより本態様のパターン位相差フィルムに位相差性を付与するものである。また、本態様においては上述したような特徴を有する配向層が形成されていることにより、本態様における位相差層は低位相差領域および高位相差領域が、上記厚膜領域および上記薄膜領域が形成されたパターンと同一のパターン状に形成されたものになる。
【0139】
本態様に用いられる位相差層は、後述する棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差層の厚みに依存して決定されるものである。したがって、本態様に用いられる位相差層の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本態様の用途等に応じて適宜決定されるものである。また、本態様における位相差層は、低位相差領域と、高位相差領域とでは厚みが異なることになる。なかでも本態様においては、低位相差領域の厚みは低位相差領域の各位相差部の面内レターデーションが対応する各色のλ/4分に相当するような範囲内であることが好ましい。これにより、上記厚膜領域と上記薄膜領域との厚みの差を低位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値と、高位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値との差が対応する各色のλ/2分に相当する距離とすることにより、低位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4分に相当し、かつ位相差層における高位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4+λ/2分に相当することになるが、このような態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記低位相差領域、上記高位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、より精度良く3次元映像を表示できるからである。
【0140】
3.パターン位相差フィルム
(i)他の構成
本態様のパターン位相差フィルムは少なくとも上記透明フィルム基材、配向層、および位相差層を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。本態様に用いられる他の構成としては、例えば、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に形成されるアンチグレア層または反射防止層を挙げることができる。また、偏光板を有するものであっても良い。
このようなアンチグレア層または反射防止層、および偏光板としては、具体的には、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0141】
(ii)パターン位相差フィルム
本態様のパターン位相差フィルムは、上述した厚膜領域および薄膜領域が形成されたパターンに対応するように、位相差層に高位相差領域と低位相差領域とがパターン状に形成された構成を有するものとなる。ここで、上記高位相差領域および低位相差領域が有する位相差性の程度については、所望の3次元映像を表示できるものであれば特に限定されるものではなく、本態様の用途等に応じて適宜決定することができる。したがって、高位相差領域および低位相差領域が示す具体的な面内レターデーションの数値範囲についても特に限定されるものではなく、本態様の用途に応じて適宜調整すればよい。そして、本態様においては厚膜領域と薄膜領域との厚みの差を調整することにより、高位相差領域および低位相差領域に任意の値の面内レターデーションを付与することができる。なかでも、本態様のパターン位相差フィルムを上記高位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4+λ/2分に相当する程度であり、かつ上記低位相差領域の各位相差部の面内レターデーション値が対応する各色のλ/4分に相当する程度であることが好ましい。
なお、本態様における位相差層において、高位相差領域の面内レターデーション値と低位相差領域の面内レターデーション値は異なるが、遅相軸の方向はほぼ同一の方向となる。
【0142】
また、本態様における位相差層において高位相差領域および低位相差領域が形成されるパターンについても特に限定されるものではなく、本態様の用途等に応じて適宜決定することができる。なお、高位相差領域および低位相差領域が形成されるパターンは配向層において厚膜領域および薄膜領域が形成されたパターンに一致するものになるため、厚膜領域および薄膜領域を形成するパターンを選択することによって、同時に高位相差領域および低位相差領域が形成されるパターンを決定することになる。
【0143】
なお、本態様のパターン位相差フィルムにおいて位相差層に高位相差領域および低位相差領域からなるパターンが形成されていることは、例えば、面内レターデーション値を測定し比較することにより評価することができる。
【0144】
D.位相差フィルムの製造方法
次に本発明の位相差フィルムの製造方法について説明する。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、上述の位相差フィルムの製造方法であって、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を有するロール状金型と、配向層形成用樹脂組成物からなる配向層形成用層と、を接触させた後、加圧し、上記配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を賦型する賦型工程と、上記賦型工程後に、上記配向層形成用層を硬化させる硬化工程および上記配向層形成用層を上記ロール状金型から剥離し、配向層を形成する剥離工程と、上記配向層上に上記棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布する塗布工程と、上記位相差層形成用塗工液の塗膜に含まれる棒状化合物を、上記配向部の表面に形成された微細凹凸形状の形成方向に沿って配列させる配向工程と、を有することを特徴とするものである。
【0145】
このような本発明の位相差フィルムの製造方法を図を参照して説明する。図17および図18に例示するように、本発明の位相差フィルムの製造方法は、透明フィルム基材1上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工することにより(図17(a))、上記配向層形成用層2´を形成し、上記配向層形成用層2´を、上記配向層の表面形状に対応し、ロールの回転方向に平行な帯状の金型部(42a−1、42a−2、42a−3)を含んでなる凹凸形状を有するロール状金型40上に配置することにより接触させた後、加圧ロールにて加圧することにより(図17(b))、上記配向層形成用層2´に、上記ロール状金型40の表面の凹凸形状を賦型し、その後、配向層形成用層2´に対してロール状金型40上に接触させた状態で紫外線を照射し、配向層形成用層2´を硬化させ(図17(c))、上記配向層形成用層を上記ロール状金型40から剥離することにより、透明フィルム基材1および上記透明フィルム基材1上に形成され、配向部(2a−1、2a−2、2a−3)を含む配向層2を形成する(図17(d))。
【0146】
次いで、図18(a)に例示するように、上記配向層2上に、屈折率異方性を有する棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜3´を加熱することにより、塗膜3´に含まれる棒状化合物を、上記配向層2に含まれる配向部(2a−1、2a−2、2a−3)の表面に形成された微細凹凸形状の方向に沿って配列させることにより(図18(b))、上記配向層2上に上記各配向部(2a−1、2a−2、2a−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3a−1、3a−2、3a−3)を含む位相差層3を形成し、配向部(2a−1、2a−2、2a−3)のパターンが互いに平行な帯状である位相差フィルム10とするものである(図18(c))。
【0147】
なお、この例においては、図17(a)が賦型工程であり、図17(b)が硬化工程、図17(c)が剥離工程であり、図18(a)が塗布工程、図18(b)が配向工程である。
【0148】
本発明によれば、上記ロール状金型を用いることにより、表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる配向部を含む配向層を容易かつ大量に製造することができる。
このため、上述のような表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる位相差部を含む位相差層を有する位相差フィルムを容易かつ大量に製造することができる。
【0149】
本発明の位相差フィルムの製造方法は、賦型工程、硬化工程、剥離工程、塗布工程および配向工程を少なくとも有するものである。
以下、本発明の位相差フィルムの製造方法に含まれる各工程について詳細に説明する。
【0150】
1.賦型工程
本発明における賦型工程は、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を有するロール状金型と、配向層形成用樹脂組成物からなる配向層形成用層と、を接触させた後、加圧し、上記配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を賦型する工程である。
【0151】
(1)ロール状金型
本発明に用いられるロール状金型は、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を有するものである。
ここで、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状は、賦型することにより、上記配向層を形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、通常、上記配向層の表面形状を反転させたものである。
このため、本工程においては、加圧することによって、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を、上記配向層形成用層に賦型することにより、上述の配向層を形成することができる。
また、本工程により形成される配向層は、配向部のパターンが互いに平行な帯状のものである。すなわち、上記ロール状金型の配向層の表面形状に対応した凹凸形状は、配向部のパターンが互いに平行な帯状である配向層の表面形状に対応するものであり、ロールの回転方向と平行に、平行な帯状である配向部のパターンに対応して、平行な帯状の金型部を含んでなるものである。
【0152】
このようなロール状金型としては、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、基材表面に、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を切削等により形成したものや、基材および基材上に形成された凸部とを有するものを用いることができる。
本発明においては、なかでも、基材および基材上に形成された凸部を有するものを好ましく用いることができる。上記凹凸形状を精度良く形成することができるからである。
【0153】
本工程に用いられるロール状金型を構成する材料としては、上記凹凸形状を精度良く形成できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、金属材料や、金属以外の無機材料であっても良く、樹脂等を用いるものであっても良い。
具体的には、無機材料からなる基材と無機材料からなる凸部とからなるものや、無機材料からなる基材と樹脂からなる凸部からなるもの、樹脂からなる基材と無機材料からなる凸部からなるものを挙げることができる。
本工程においては、なかでも、金属材料および/または無機材料からなるもの、すなわち、上記ロール状金型が、金属基材と金属基材上に形成された無機材料からなる凸部とを有するもの、金属基材と金属基材上に形成された金属材料からなる凸部とを有するもの、無機基材と無機基材の上に形成された金属材料からなる凸部とを有するもの、または、無機基材と無機基材の上に形成された無機材料からなる凸部とを有するものであることが好ましい。
【0154】
本工程における基材を構成する金属材料としては、上述の形状の配向部対応部を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、ニッケル、ステンレス、ブリキ、鉄、銅、銀、金、クロム、亜鉛、珪素、チタン、タンタル、スズ、アルミ、ニッケル−リンおよびこれらの合金、アルマイト等を挙げることができ、なかでも、ニッケル、銅、クロム、ステンレスであることが好ましい。
また、上記基材を構成する無機材料としては、表面に微小なライン状凹凸構造を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、酸化チタン(TiO2、Ti3O5)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ケイ素(SiO、SiO2)、酸化錫(SnO2)、酸化アルミニウム(Al203)、酸化クロム(Cr2O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO、ZnO2)のような金属酸化物、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化マグネシウム(MgO)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、グラッシーカーボン、セラミック、窒化珪素、窒化炭素等を挙げることができ、なかでも、ダイヤモンドライクコーティング、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物であることが好ましい。配向部対応部表面に微細凹凸形状を容易に形成できるからである。また、剥離性に優れるため、本工程後の配向層形成用層を容易に剥離できるからである。
【0155】
本工程における基材の形状としては、上述の表面形状を精度良く形成できるものであれば特に限定されるものではないが、ロール形状、スリーブ形状等とすることができ、なかでも、スリーブ形状であることが好ましい。上記形状がスリーブ形状であることにより、配向層を製造効率高く製造することが可能となるからである。また、スリーブ形状のものは、ロール形状のものに比べて軽量であり、取扱いが容易となるといった利点を有するからである。
ここで、ロール形状の基材としては、具体的には、軸付ロール、軸なしパイプ等を挙げることができる。ここで、軸なしパイプとは、その厚みが3000μm以上である円筒形上の基材を指すものである。
また、スリーブ形状とはシームレスの基材の帯状体を表し、上記スリーブ形状の基材は空気圧力や応力により容易に変形させることができるものであり、具体的にはその厚みが1000μm以下の円筒形状の基材を指すものである。
本工程に用いられる基材としては、継ぎ目のないシームレスであることが好ましいが、板状の基材を円筒状にした継ぎ目を有するものも用いることができる。
【0156】
本工程における凸部を構成する材料としては、上記基材上に安定的に積層できるものであれば特に限定されるものではなく、金属材料、金属以外の無機材料、樹脂等を用いることができる。
上記凸部を構成する金属材料としては、ニッケル、ステンレス、ブリキ、鉄、銅、銀、金、クロム、亜鉛、珪素、チタン、タンタル、スズ、アルミ、ニッケル−リン、モリブデン等の金属やこれらの合金等を挙げることができる。
また、無機材料としては、酸化チタン(TiO2、Ti3O5)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ケイ素(SiO、SiO2)、酸化錫(SnO2)、酸化アルミニウム(Al203)、酸化クロム(Cr2O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO、ZnO2)のような金属酸化物、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化マグネシウム(MgO)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、グラッシーカーボン、セラミック、窒化珪素、窒化炭素等を挙げることができ、なかでも、DLC、ニッケル、クロム、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物であることが好ましい。例えば、基材が金属基材である場合、上記基材上に容易に形成可能だからである。
【0157】
本工程における無機材料からなる凸部の形成方法としては、所望の厚みの配向部対応部を精度良く形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、材料に応じて適宜選択されるものである。具体的には、蒸着法、スパッタ法、気相成長法(CVD法)等の乾式めっき法、湿式めっき法、塗布法等を挙げることができる。
具体的には、クロム、ニッケル等の金属材料である場合には、湿式めっき法あるいは乾式めっき法を用いることが好ましく、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物、DLC等である場合には、乾式めっき法を用いることが好ましい。このような方法であることにより、厚み精度良く形成することができるからである。
【0158】
このようなロール状金型の形成方法としては、上記ロール状金型が基材および基材上に形成された凸部とを有するものである場合には、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を精度良く形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、基材上に、上記配向部に対応する凸部を形成した後に、凸部の表面を研磨処理を行う方法を挙げることができる。
【0159】
図19はロール状金型の形成方法の一例を示す工程図であり、より具体的には、既に説明した図1に記載の配向層を形成可能なロール状金型の形成方法の一例を示すものである。図19に例示するように、まず、基材としてステンレス、ニッケルメッキあるいはクロムメッキ、気相成長法(CVD法)によりDLCなどの表面を有する金属あるいは無機基材41を準備し、上記金属あるいは無機基材41のペーパー研磨により表面を略一定方向に研磨することにより微小なライン状凹凸構造を形成し、配向部2a−3に対応する位置に金型部42a−3を形成し(図19(a))、次いで、金属あるいは無機基材41の表面に、配向部2a−2に対応する位置以外の箇所にレジスト43を形成し(図19(b))、露出する上記金属あるいは無機基材41を覆うように湿式または乾式めっき法によりニッケルやクロムあるいは気相成長法(CVD法)によりDLCからなる凸部41a−2を形成し(図19(c))、上記凸部41a−2の表面をペーパー研磨により研磨することにより微小なライン状凹凸構造を形成することで、金型部42a−2を形成する(図19(d))。
このとき上記金属あるいは無機基材41に残存するレジスト43は研磨保護層として機能する。その後、レジスト43を剥離し、配向部2a−1に対応する位置以外の箇所にレジスト43を形成し(図19(e))、露出する上記金属あるいは無機基材41を覆うように湿式または乾式めっき法によりニッケルやクロムあるいは気相成長法(CVD法)によりDLCからなる凸部41a−1を形成し(図19(f))、上記凸部41a−1の表面をペーパー研磨により研磨することにより微小なライン状凹凸構造を形成することで、金型部42a−1を形成する(図19(g))。このとき上記金属あるいは無機基材41および金型部42a−2に残存するレジスト43は研磨保護層として機能する。その後、レジスト43を剥離することにより、上記配向層2に含まれる配向部(2a−1、2a−2、2a−3)に対応した金型部(42a−1、42a−2、42a−3)を含む凹凸形状を有するロール状金型40とすることができる(図19(h))。
【0160】
上記研磨処理で行われる研磨方法としては、微小なライン状凹凸構造を略一定方向にランダムに形成し、棒状化合物を配列可能に形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、砥石研磨、ペーパー研磨、テープ研磨、サンドブラスト法、ショットブラスト法、グリットブラスト法、ガラスビーズブラスト法等のブラスト法、ナイロン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂などの合成繊維からなる合成樹脂毛、不織布、動物毛、スチールワイヤ等のブラシ材を用いるブラシグレイニング法、金属ワイヤーで引っかくワイヤーグレイニング法、研磨剤を含有するスラリー液を供給しながらブラシ研磨する方法(ブラシグレイニング法)、ボールグレイン法、液体ホーニング法等のバフ研磨法、ショットピーニング法、回転型バレルや振動型バレルを用いたバレル研磨法、リューター研磨法、砥粒流動研磨法、電解研磨法、化学研磨法、化学複合研磨法、電解複合研磨法、化学機械研磨法、CMP研磨法等を挙げることができる。本工程においては、なかでも、研磨カスが溜まらない方法であることが好ましく、特に、テープ研磨法、ブラシグレイニング法等であることが好ましい。微小凹凸を精度良く形成できるからである。また、研磨カスが残存することによる賦型不良を防止することができるからである。
【0161】
また、レジスト、レジストのパターニング方法およびレジストの剥離方向としては、一般的に用いられるものを使用することができ、上記金属基材や凸部の材質等に応じて適宜選択することができる。
【0162】
また、上記ロール状金型が基材表面に、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を切削等により形成したものである場合、ロール状金型の形成方法としては、上記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を精度良く形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
具体的には、所定の周期の凹凸構造を有するダイヤモンドバイト等のバイトを用いて、各配向部の厚みに対応するような切削深さで切削する方法を挙げることができる。
具体的には、赤、緑、青の3色の色を表示する表示装置に用いられるものである場合には、基材の、赤に対応する配向部、緑に対応する配向部、青に対応する配向部に対応する位置を、それぞれ切削深さを変えて切削する方法を用いることができる。
【0163】
(2)配向層形成用層
本工程に用いられる配向層形成用層は、配向層形成用樹脂組成物からなるものである。
【0164】
本工程に用いられる配向層形成用樹脂組成物としては、上記ロール状金型上に接触させた後、加圧することによりロール状金型表面の凹凸形状を賦型できるものであれば特に限定されるものではなく、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の配向層を構成する材料を含むものを挙げることができる。
【0165】
また、本工程に用いられる配向層形成用樹脂組成物は、必要に応じて、酸素に対する変化を抑制するための酸化防止剤、光に対する変化を抑制するための光安定化剤、紫外性を吸収する紫外線吸収剤、粘度を調整するための粘度調節剤、屈折率を調整するための屈折率調整剤、賦型性を向上させるためのフッ素系またはシリコン系潤滑剤、溶媒等を含むものであっても良い。
【0166】
このような溶媒としては、上記配向層形成用樹脂組成物に含まれる樹脂のモノマー等を均一に溶解または分散できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、シクロヘキサン等のアノン系溶媒、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶媒を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、本工程に用いられる溶媒は、1種類でもよく、2種類以上の溶媒の混合溶媒でもよい。
【0167】
本工程に用いられる配向層形成用樹脂組成物の粘度としては、上記ロール状金型表面の凹凸形状を配向層形成用層に加圧により賦型することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、25℃において、5mPa・s〜200000mPa・sの範囲内であることが好ましく、なかでも、10mPa・s〜100000mPa・sの範囲内であること好ましく、特に、30mPa・s〜3000mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。
また、溶融型の樹脂の場合には、例えば、190℃におけるメルトフローインデックス(MFI)が、0.1g/10min以上であることが好ましく、なかでも1.0g/10min以上であることが好ましく、特に5.0g/10min以上であることが好ましい。上記粘度が上述の範囲内であることにより賦型性に優れたものとすることができるからである。
【0168】
本工程に用いられる配向層形成用層の厚みとしては、上記ロール状金型表面の凹凸形状を精度よく賦型できるものであれば特に限定されるものではなく、配向層とした際の厚みが一般的な位相差フィルムの配向層と同程度となるものとすることができる。
【0169】
(3)賦型工程
本工程は、上記ロール状金型上に、配向層形成用樹脂組成物からなる配向層形成用層を接触させた後、加圧し、上記配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を賦型する工程である。
【0170】
本工程において加圧した際に付与される圧力としては、配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を安定的に賦型できるものであれば特に限定されるものではなく、本工程に用いられる配向層形成用樹脂組成物の粘度等に応じて適宜選択されるものであり、上記配向層形成用樹脂組成物および上記ロール状金型を用いて、上記ロール状金型表面の凹凸形状を上記配向層形成用層にどの程度賦型することができるか、圧力を調整しながら繰り返し実験を行うことにより見出されるものである。例えば、上述した粘度を有する上記配向層形成用樹脂組成物を用いた場合、上記圧力は、10MPa/cm〜2000MPa/cmの範囲内であることが好ましく、なかでも100MPa/cm〜1000MPa/cmの範囲内であることが好ましく、特に、150MPa/cm〜500MPa/cmの範囲内であることが好ましい。上記圧力が低すぎると、上記配向層形成用層が上記ロール状金型にあまり入り込まず、上記微小なライン状凹凸構造における凸構造の高さが十分ではないものとなるおそれがあるからであり、上記圧力が高すぎると、上記配向層形成用層が上記ロール状金型に入り込み過ぎて、ロール状金型から抜けなくなるおそれがあるからである。
【0171】
本工程において、上記圧力を加圧する方法としては、配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を安定的に賦型できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ベルトプレス方式、ロールタッチ方式等を用いる方法を挙げることができる。
以下、これらの方式を用いて配向層形成用層に上記圧力を負荷する方法を図を用いて説明する。
【0172】
図20は、本発明における加圧方法を説明する説明図である。図20は、ロールタッチ方式により加圧する方法を例示するものであり、透明フィルム基材1を巻き出す巻き出し機51aと、配向層形成用樹脂組成物を吐出し配向層形成用層2´を形成する配向層形成用ダイ53と、紫外線を配向層形成用層2´に対して照射する紫外線照射装置55と、剥離ロールにてロール状金型40から配向層形成用層を剥離する剥離ロール52と、透明フィルム基材1および配向層2を含む配向膜を巻き取る巻き取り機51bと、を有し、さらに、配向層形成用層2´をロール状金型に加圧するゴム等の弾性を有する加圧ロール50を有する配向層製造装置を用いて加圧する方法を例示するものである。ロールタッチ方式においては、ゴム等の弾性を有する加圧ロールを用いることにより、加圧ロールが変形するため、ロール状金型と配向層形成用層との接触時間を長くすることができるため、配向層形成用層に上記ロール状金型表面の凹凸形状を安定的に賦型することが可能となる。
また、図21は、本発明における加圧方法を説明する説明図である。図21は、ベルトプレス方式により加圧する方法を例示するものであり、ロール状金型40に直接、配向層形成用樹脂組成物を吐出する配向層形成用ダイ53と、加圧ベルト56とを有する配向層製造装置を用いて加圧する方法を例示するものである。ベルトプレス方式においては、ロール状金型と加圧ベルトとを対峙させることによって、配向層形成用層に圧力を負荷することができる。ベルトプレス方式はロール状金型と配向層形成用層との接触時間を長くすることができるため、配向層形成用層にロール状金型表面の凹凸形状を安定的に賦型することが可能となる。
なお、図21において説明していない符号については、図20と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0173】
本工程における賦型方法としては、上記配向層形成用層に上記ロール状金型の表面形状を精度よく賦型できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、上記ロール状金型を配向層形成用層に押し当てる方法を挙げることができるが、なかでもロール状金型上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工し、上記配向層形成用層を形成する充填処理と、上記配向層形成用層上に透明フィルム基材を配置する配置処理と、を行った後に、加圧する方法(第1実施態様)、透明フィルム基材上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工し、上記配向層形成用層を形成する配向層形成用層形成処理と、上記配向層形成用層を、ロール状金型上に接触させる接触処理と、を行った後に加圧する方法(第2実施態様)、ロール状金型上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工し、上記配向層形成用層を形成する充填処理、を行った後に、加圧する方法(第3実施態様)、であることが好ましい。上記配向層を安定的に形成できるからである。
以下、このような賦型方法について説明する。
【0174】
(a)第1実施態様
本態様の賦型方法は、上記ロール状金型上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工し、上記配向層形成用層を形成する充填処理と、上記配向層形成用層上に透明フィルム基材を配置する配置処理と、を行った後に、加圧する方法である。このような賦型方法を用いて賦型することにより、透明フィルム基材上に、配向層を容易に形成することができる。
このような透明フィルム基材については上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0175】
本態様における充填処理で行われる上記ロール状金型上への配向層形成用樹脂組成物の塗工方法としては、均一の厚みの配向層形成用層を形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ロールコート法、Tダイコート法、キャストコート法、ブレードコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、公知の方法を用いることができる。
本態様においては、なかでも、配向層形成用樹脂組成物への溶媒の添加が不要な方法であることが好ましく、特に、溶融押し出し法、ノンソルコーティング法を好ましく用いることができる。乾燥処理等を不要とすることができ、工程通過性に優れたものとすることができるからである。
ここで、溶融押し出し法としては、例えば、上記配向層形成用樹脂組成物をガラス転移温度以上熱分解温度以下の温度範囲内で熱溶融させた状態で準備し、Tダイを用いて押し出す方法等が挙げられる。
また、充填処理後、適宜乾燥処理や熱またはUVやEBによるハーフキュア処理を入れることができる。
【0176】
本態様における配置処理で行われる上記配向層形成用層上に透明フィルム基材を配置する方法としては、上記配向層形成用層と透明フィルム基材とが十分に密着することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ロール状金型上の配向層形成用層上に、ロール状の透明フィルム基材を連続的に巻き出しながら配置する方法等を挙げることができる。
【0177】
(b)第2実施態様
本態様の賦型方法は、透明フィルム基材上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工し、上記配向層形成用層を形成する配向層形成用層形成処理と、上記配向層形成用層と、上記ロール状金型とを接触させる接触処理と、を行った後に、加圧する方法である。このような賦型方法であることにより、透明フィルム基材上に配向層が積層された位相差フィルムを容易に形成することができる。
この場合、配向層形成用樹脂組成物には配向部を構成する樹脂と相溶性がある溶剤を含んでいても良い。溶剤を含有する場合、透明フィルム基材の上に配向層形成用樹脂組成物を塗工したのち、溶剤を蒸発させる乾燥処理を行うことが望ましい。また溶剤として、透明フィルム基材に浸透することで透明フィルム基材と配向層形成用層との間に溶剤浸透層を形成することができるため、透明フィルム基材と配向層との界面で発生するニジムラや密着不良を防止することが可能となる。
【0178】
本態様における配向層形成用層形成処理で行われる透明フィルム基材上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工する方法としては、所望の厚みの配向層形成用層を形成できる方法であれば良く、上記「(a)第1実施態様」の項に記載の充填処理と同様とすることができる。
【0179】
本態様における接触処理で行われる上記配向層形成用層を、上記ロール状金型上に接触させる方法としては、上記ロール状金型に配向層形成用層が十分に密着することができる方法であれば特に限定されるものではなく、上記「(a)第1実施態様」の項に記載の配置処理と同様とすることができる。
【0180】
(c)第3実施態様
本態様の賦型方法は、上記ロール状金型上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工し、上記配向層形成用層を形成する充填処理、を行った後に加圧する方法である。このような賦型方法であることにより、例えば、配向層のみを容易に得ることができる。このため、例えば、透明フィルム基材の種類の選択の自由度を広いものとすることができる。
本態様における充填処理で行われる、上記ロール状金型上に上記配向層形成用樹脂組成物を塗工する方法としては、所望の厚みの配向層形成用層を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、上記「(a)第1実施態様」の項に記載の充填処理と同様とすることができる。
なお、本態様の賦型方法を用いる場合には、別途、配向層と透明フィルム基材とを貼り合わせる透明フィルム基材積層工程を行うことになる。
【0181】
2.硬化工程
本発明の製造方法における硬化工程は、賦型工程後の上記配向層形成用層を硬化させる工程である。
【0182】
本工程において、上記配向層形成用層を硬化させる方法としては、上記配向層形成用層を構成する配向層形成用樹脂組成物に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記配向層形成用樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂組成物の場合、紫外線硬化法および電子線硬化法等を挙げることができ、上記配向層形成用樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物の場合、加熱硬化法および常温硬化法等を挙げることができる。また、上記配向層形成用樹脂組成物として熱可塑性樹脂組成物を用いる場合は、冷却ロールなどを接触させる冷却法により硬化させることができる。
【0183】
本工程における紫外線硬化法にて照射する紫外線の照射方法としては、通常、配向層形成用層のロール状金型と接触する面の反対面から照射する方法が用いられるが、本工程が上記剥離工程後に行われる場合には、必要に応じて、ロール状金型と接触する面から照射する方法を用いるものであっても良い。短時間で十分に硬化させることができるからである。
【0184】
本工程において紫外線硬化法にて硬化する場合、配向層形成用層の硬化率(反応率)としては、20%〜97%の範囲内であることが好ましく、なかでも30%〜90%の範囲内であることが好ましい。得られた配向層を保管した際に、微細な凹凸やパターンがつぶされて形状不良を生じたり、ブリード物が発生しやすくなり配向層の液晶コート面側の汚染し、液晶配向不良を起こすといった不具合を防ぐことができるからである。また、液晶層との密着性を確保することが可能になる等の利点があるからである。
なお、硬化率とは、本工程を行った後の配向層に含まれる反応性を有する官能基のモル数をX、本工程を行う前に配向層形成用層に含まれていた反応性を有する官能基のモル数をYとしたときに、(Y−X)/Y × 100(%)で表されるものである。
【0185】
本工程においては、紫外線硬化法にて紫外線を照射する際に、配向層形成用層を加熱するものであっても良い。反応効率を向上させることができるからである。
本工程において、配向層形成用層を加熱する方法としては、配向層形成用層を所望の温度とすることができる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の加熱方法を用いることができるが、具体的には、ロール状金型として温度調節可能なものを用いる方法や、赤外線照射装置、温風送風装置等を用いる方法を挙げることができる。
【0186】
3.剥離工程
本発明の製造方法における剥離工程は、上記賦型工程後に行われ、上記配向層形成用層を上記ロール状金型から剥離する工程である。
本工程における剥離方法としては、硬化された上記配向層形成用層を傷つけることなく上記ロール状金型を剥離することができれば、特に限定されるものではない。具体的には、既に説明した図20または図21に示すような剥離用ロールを用いて剥離する方法を挙げることができる。
【0187】
本工程を行う順番としては、上記賦型工程後に行われるものであれば特に限定されるものではないが、上記硬化工程後に行われることが好ましい。上記硬化工程が、上記ロール状金型および配向層形成用層を接触させた状態で行われることにより、上記配向層形成用層に賦型されたロール状金型表面の凹凸形状を、安定的に硬化させることができ、得られる配向層表面の形状を高精度なものとすることができるからである。
【0188】
4.塗布工程
本発明における塗布工程は、上記配向層上に上記棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布する工程である。
【0189】
本工程に用いられる位相差層形成用塗工液に含まれる棒状化合物としては、所望の位相差性を有する位相差層を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0190】
本工程に用いられる棒状化合物の位相差層形成用塗工液中の含有量としては、配向層上に塗布する塗布方法に応じて、位相差層形成用塗工液の粘度を所望の値にできるものであれば特に限定されない。なかでも本工程においては、上記位相差層形成用塗工液中、5質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、10質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0191】
本工程に用いられる位相差層形成用塗工液としては、上記棒状化合物を少なくとも含むものであるが、通常、溶媒を含むものである。また、必要に応じて他の化合物を含むものであっても良い。
このような溶媒としては、上記棒状化合物を均一に溶解または分散できるものであれば特に限定されるものではないが、上記「1.賦型工程」の項に記載の配向層形成用樹脂組成物に用いられるものと同様とすることができる。
【0192】
また、他の化合物としては、本工程により形成される位相差層において、棒状化合物の配列秩序を害するものでなければ特に限定されるものではない。本工程に用いられる上記他の化合物としては、例えば、カイラル剤、重合開始剤、重合禁止剤、可塑剤、界面活性剤、および、シランカップリング剤等を挙げることができる。
本工程においては、上記棒状化合物として上記重合性液晶材料を用いる場合は、上記他の化合物として重合開始剤または重合禁止剤を用いることが好ましい。
【0193】
上記重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ社製N1717、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等を例示できる。本工程では、これらの光重合開始剤を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0194】
さらに、上記光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始助剤を併用することができる。このような光重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の3級アミン類や、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミド安息香酸エチル等の安息香酸誘導体を例示することができるが、これらに限られるものではない。
【0195】
上記重合禁止剤としては、例えば、ジフェニルピクリルヒドラジド、トリ−p−ニトロフェニルメチル、p−ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、ピクリン酸、塩化銅、メチルハイドロキノン、メトキノン、tert−ブチルハイドロキノン等の反応の重合禁止剤を用いることができるが、なかでも保存安定性の点からハイドロキノン系重合禁止剤が好ましく、メチルハイドロキノンを用いるのが特に好ましい。
【0196】
また、本工程における位相差層形成用塗工液には、下記に示すような他の化合物を添加することができる。添加できる他の化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミノ基エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物;アクリル基やメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。
【0197】
本工程における位相差層形成用塗工液の塗布方法としては、配向層上に位相差層形成用塗工液からなる塗膜を安定的に形成できる方法であれば特に限定されるものではない。本工程において、具体的には、上記配向層形成用層の形成方法と同様とすることができる。
【0198】
本工程により形成される塗膜の厚みは、後述する配向工程後に、所定の位相差性を達成できる範囲内とするものであれば特に限定されるものではなく、本発明の製造方法により製造される位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定されるものである。
【0199】
5.配向工程
本発明における配向工程は、上記位相差層形成用塗工液の塗膜に含まれる棒状化合物を、上記配向層に含まれる配向部の表面に形成された微細凹凸形状の形成方向に沿って配列させる工程である。
【0200】
本工程における棒状化合物を上記配向部の表面に形成された微細凹凸形状の形成方向に沿って配列させる方法としては、所望の方向に配列させることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な方法を用いることができるが、棒状化合物が液晶性材料である場合には、上記塗膜を棒状化合物の液晶相形成温度以上に加温する方法が用いられる。具体的には、上記棒状化合物の種類等により異なるものであるが、50℃〜60℃の範囲内で加温する方法を挙げることができる。
【0201】
6.位相差フィルムの製造方法
本発明の位相差フィルムの製造方法は、上記賦型工程、硬化工程、剥離工程、塗布工程および配向工程を少なくとも有するものであるが、必要に応じて、塗布工程後に、位相差層形成用塗工液の塗膜を乾燥する乾燥工程や、上記棒状化合物として重合性液晶材料を用いる場合、上記重合性液晶材料を重合する重合工程を有するものであっても良い。位相差層上に粘着層を形成する粘着層形成工程およびセパレータを積層するセパレータ積層工程や、配向工程後に、長尺状の位相差フィルムを裁断し、枚葉に成形された位相差フィルムとして得るための裁断工程を有するものであっても良い。
【0202】
上記乾燥工程における塗膜の乾燥方法としては、加熱乾燥方法、減圧乾燥方法、ギャップ乾燥方法等、一般的に用いられる乾燥方法を用いることができる。また、本工程における乾燥方法は、単一の方法に限られず、例えば残留する溶媒量に応じて順次乾燥方式を変化させる等の態様により、複数の乾燥方式を採用してもよい。
さらに、上記塗膜の乾燥方法としては、一定の温度に調整された乾燥風を、上記塗膜に当てる方法を用いることもできるが、このようは乾燥方法を用いる場合は、上記塗膜に当てる乾燥風の風速が3m/秒以下であることが好ましく、特に0.5m/秒以下であることが好ましい。
【0203】
上記重合工程における重合性液晶材料の重合方法としては、重合性液晶材料が有する重合性官能基の種類に応じて任意に決定すればよい。なかでも本工程においては、活性放射線の照射により硬化させる方法が好ましい。活性放射線としては、重合性液晶材料を重合することが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光を使用することが好ましい。
【0204】
本発明においては、これらの各工程が独立して行われるもの、すなわち、工程毎に長尺状の配向層等をロール状に巻き取られた状態から巻き出し、所定の処理を行った後に巻き取るものであっても良いが、全工程が連続して行われること、すなわち、原材料から最終製造物である位相差フィルムまでロールトゥロールにて行われることが好ましい。
【0205】
E.配向膜
次に、本発明の配向膜について説明する。
本発明の配向膜は、透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、を有し、上記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を有することを特徴とするものである。
【0206】
このような本発明の配向膜について図を参照して説明する。図22は、本発明の配向膜の一例を示す概略断面図である。図22に例示するように、本発明の配向膜60は、透明フィルム基材1と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層2と、を有し、上記配向層2が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部(2a−1、2a−2、2a−3)を有するものである。
【0207】
本発明によれば、このような表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる配向部を含む配向層を有することにより、屈折率異方性を有する棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布し、配向させることで、各色に対応して位相差性を発揮する位相差フィルムを容易に形成することができる。
【0208】
本発明の配向膜は、上記透明フィルム基材および配向層を有するものである。
このような透明フィルム基材および配向層については、上記「A.位相差フィルム」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0209】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0210】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0211】
[実施例1]
10cm×10cmの大きさの銅版を準備し、FIB加工で作製したピッチが200nmの凹凸を有するダイヤモンドバイトで左右方向に、全面を切削した。その後、更に、ストライプの間隔が500μmになる様に、500μm毎に深さが360nmになる様に同じ左右方向に切削した。その後、UV硬化性樹脂(DIC株式会社製ユニディック)を銅版上に塗布し、その上に透明なフィルム(日本ゼオン株式会社製ゼオノア(登録商標))を透明フィルム基材として乗せて密着させ、紫外線を照射して硬化させた。
【0212】
次に、透明フィルム基材を銅版から剥離し、凹凸形状を透明フィルム基材(透明フィルム基材+表面に微細凹凸形状を有し、厚みの異なる2以上の配向部を含む配向層)に賦形した。SEMで断面形状を観察したところ、200nmピッチの凹凸からなる幅500μmのストライプ形状が平行な状態で、段差360nmの凹凸が交互に観測された。
次に、シクロヘキサノンに固形分15%で溶解した下記構造式(A)で表わされる液晶性材料溶液に光重合開始剤(BASF株式会社製イルガキュア184)を5重量%を加えた溶液を、上記賦形した透明フィルムにスピンコーターで乾燥硬化時の膜厚がストライプ凸部で1μm、ストライプ凹部で1.36μmになる様に塗布、80℃で10分乾燥し、紫外線を照射して硬化させ位相差層を形成した。このようにして、パターン位相差フィルムを得た。
【0213】
赤色と青色の2色発光するストライプの間隔が500μmのエレクトロルミネッセント表示装置のストライプとパターン位相差のストライプが赤色ラインと厚い方(1.36μm)が、青色ラインと薄い方(1μm)が合うように重ね合わせ、偏光板の偏光軸が位相差フィルムの遅相軸と45度の角度になる様に粘着剤で貼り合わせ円偏光板とした。エレクトロルミネッセント表示装置を点灯させ、太陽光を照射したところ、赤色も青色も円偏光板を使用しない場合と比較して明らかにコントラストが向上した。
【0214】
[比較例1]
透明フィルム基材上に形成される配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、全面が同じ厚みであり、位相差層を液晶の膜厚が全面に渡って1μmになる様にした以外は実施例1と同様に、エレクトロルミネッセント表示装置を点灯させ、太陽光を照射したところ、赤色のコントラストは青色のコントラストよりも低下した。
【0215】
【化2】
【符号の説明】
【0216】
1 … 透明フィルム基材
2´ … 配向層形成用層
2 … 配向層
2a−1、2a−2、2a−3、2a´−1、2a´−2、2a´−3、2b´−1、2b´−2、2b´−3、2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3、2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3 … 配向部
3 … 位相差層
3a−1、3a−2、3a−3、3a´−1、3a´−2、3a´−3、3b´−1、3b´−2、3b´−3、3a´´−1、3a´´−2、3a´´−3、3b´´−1、3b´´−2、3b´´−3 … 位相差部
10 … 位相差フィルム
12a … 第1配向領域
12b … 第2配向領域
12a´ … 薄膜領域
12b´ … 厚膜領域
13a … 第1位相差領域
13b … 第2位相差領域
13a´ … 高位相差領域
13b´ … 低位相差領域
14 … アンチグレア層または反射防止層
20 … EL表示装置用円偏光板
21 … 偏光子
22 … 偏光板保護フィルム
23 … 接着層
25 … EL層
30 … 3次元表示用パターン位相差フィルム
40 … ロール状金型
41 … 基材
42a−1、42a−2、42a−3 … 金型部
43 … レジスト
60 … 配向膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム基材と、
前記透明フィルム基材上に形成された配向層と、
前記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、
を有し、
前記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を含むものであり、
前記位相差層が、前記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むことを特徴とする位相差フィルム。
【請求項2】
前記位相差フィルムが長尺状であることを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム。
【請求項3】
前記配向部のパターンが、互いに平行な帯状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の位相差フィルム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の位相差フィルムと、
前記位相差フィルム上に形成され、偏光子を含む偏光板と、
を有し、
前記配向層に含まれる配向部の前記棒状化合物の配列方向が同一方向であり、
前記位相差部の面内レターデーション値が、前記各色のλ/4分に相当するものであることを特徴とするエレクトロルミネッセント表示装置用円偏光板。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の位相差フィルムを有し、
前記配向層が、前記棒状化合物を一定方向に配列させる第1配向領域および第1配向領域とは異なる方向に配列させる第2配向領域を含むことを特徴とする3次元表示用パターン位相差フィルム。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の位相差フィルムを有し、
前記配向層が、厚みの大きい厚膜領域および前記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域を有し、
前記厚膜領域および前記薄膜領域が同一方向に前記棒状化合物を配列させるものであることを特徴とする3次元表示用パターン位相差フィルム。
【請求項7】
請求項3に記載の位相差フィルムの製造方法であって、
前記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を有するロール状金型と、配向層形成用樹脂組成物からなる配向層形成用層と、を接触させた後、加圧し、前記配向層形成用層に前記ロール状金型表面の凹凸形状を賦型する賦型工程と、
前記賦型工程後に、前記配向層形成用層を硬化させる硬化工程および前記配向層形成用層を前記ロール状金型から剥離し、配向層を形成する剥離工程と、
前記配向層上に前記棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布する塗布工程と、
前記位相差層形成用塗工液の塗膜に含まれる棒状化合物を、前記配向部の表面に形成された微細凹凸形状の形成方向に沿って配列させる配向工程と、
を有することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
【請求項8】
透明フィルム基材と、
前記透明フィルム基材上に形成された配向層と、
を有し、
前記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を有することを特徴とする配向膜。
【請求項1】
透明フィルム基材と、
前記透明フィルム基材上に形成された配向層と、
前記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、
を有し、
前記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を含むものであり、
前記位相差層が、前記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むことを特徴とする位相差フィルム。
【請求項2】
前記位相差フィルムが長尺状であることを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム。
【請求項3】
前記配向部のパターンが、互いに平行な帯状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の位相差フィルム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の位相差フィルムと、
前記位相差フィルム上に形成され、偏光子を含む偏光板と、
を有し、
前記配向層に含まれる配向部の前記棒状化合物の配列方向が同一方向であり、
前記位相差部の面内レターデーション値が、前記各色のλ/4分に相当するものであることを特徴とするエレクトロルミネッセント表示装置用円偏光板。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の位相差フィルムを有し、
前記配向層が、前記棒状化合物を一定方向に配列させる第1配向領域および第1配向領域とは異なる方向に配列させる第2配向領域を含むことを特徴とする3次元表示用パターン位相差フィルム。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の位相差フィルムを有し、
前記配向層が、厚みの大きい厚膜領域および前記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域を有し、
前記厚膜領域および前記薄膜領域が同一方向に前記棒状化合物を配列させるものであることを特徴とする3次元表示用パターン位相差フィルム。
【請求項7】
請求項3に記載の位相差フィルムの製造方法であって、
前記配向層の表面形状に対応した凹凸形状を有するロール状金型と、配向層形成用樹脂組成物からなる配向層形成用層と、を接触させた後、加圧し、前記配向層形成用層に前記ロール状金型表面の凹凸形状を賦型する賦型工程と、
前記賦型工程後に、前記配向層形成用層を硬化させる硬化工程および前記配向層形成用層を前記ロール状金型から剥離し、配向層を形成する剥離工程と、
前記配向層上に前記棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布する塗布工程と、
前記位相差層形成用塗工液の塗膜に含まれる棒状化合物を、前記配向部の表面に形成された微細凹凸形状の形成方向に沿って配列させる配向工程と、
を有することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
【請求項8】
透明フィルム基材と、
前記透明フィルム基材上に形成された配向層と、
を有し、
前記配向層が、表面に微細凹凸形状を有し、さらに、表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる2以上の配向部を有することを特徴とする配向膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図12】
【図15】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図12】
【図15】
【図23】
【公開番号】特開2012−230263(P2012−230263A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98701(P2011−98701)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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