説明

位相差フィルム用保護フィルム

【課題】 保護フィルムを剥がさずに位相差フィルムの外観検査が可能であるとともに、位相差フィルムに対する剥離性の良好な位相差フィルム用保護フィルムを提供すること。
【解決手段】 下記(A)成分50〜99質量%および(B)成分1〜50質量%からなる樹脂成分を含有する組成物を成形してなり、かつ、下記(1)〜(4)の特性をすべて満たす位相差フィルム用保護フィルム。(A)曲げ弾性率が800MPa以上、2000MPa未満であり、かつDSCで測定した融解熱量が38J/g以上、50J/g未満であるポリメチルペンテン。(B)ブテン−1をモノマーとして重合したポリブテンおよび/またはブテン−1を主成分とするブテン共重合体。(1)レタデーション値(R0)が15nm以下。(2)厚みが20μm以上、200μm未満。(3)ヘーズ値が3%以下。(4)全光線透過率が90%以上。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルム用保護フィルムに関するものであり、詳しくは、保護フィルムを剥がさずに位相差フィルムの外観検査が可能であるとともに、位相差フィルムに対する剥離性の良好な位相差フィルム用保護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
位相差フィルムは表面保護のため、通常保護フィルムが施されている。しかし、現状使用されている保護フィルムの材質はPET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等光学特性を考慮したものではなく、位相差フィルムの光学特性を利用した外観検査を実施するには保護フィルムを剥がし、位相差フィルムを単体にする必要がある。しかし、このような手順は破壊検査であり、作業効率の低下につながる等の問題がある。
【0003】
保護フィルムを剥がさずに位相差フィルムの外観検査を行うためには、保護フィルムが低レタデーションであること、均一な配向であること、高い透明性を有すること、取り扱い性に優れること、さらに位相差フィルムに対して優れた剥離性を有することが必要である。
しかしながら、現在、上記要件をすべて満たす位相差フィルム用保護フィルムは知られていない。例えば、光学部材用の保護フィルムとして、特許文献1,2が開示されているが保護フィルムを付けたままで外観検査が充分に出来るまでには至っていない。
【0004】
低レタデーションであり、高い透明性を有するフィルムとしては、COP(環状オレフィンポリマー)フィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム等が知られている。しかし、これらのフィルムは、位相差フィルム用の保護フィルムとして使用するには、位相差フィルムからの剥離時に位相差フイルムを傷つけやすいという点で、その取り扱い性に問題がある。
【特許文献1】特許第2798787号公報
【特許文献2】特許第2823322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、位相差フィルムの表面保護性を有し、保護フィルムを剥がさずに位相差フィルムの外観検査が可能であるとともに、パネル製造工程における位相差フィルムに対する剥離性の良好な位相差フィルム用保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のとおりである。
1.下記(A)成分50〜99質量%および(B)成分1〜50質量%からなる樹脂成分を含有する組成物を成形してなり、かつ、下記(1)〜(4)の特性をすべて満たすことを特徴とする位相差フィルム用保護フィルム。
(A)曲げ弾性率が800MPa以上、2000MPa未満であり、かつDSCで測定した融解熱量が38J/g以上、50J/g未満であるポリメチルペンテン
(B)ブテン−1をモノマーとして重合したポリブテンおよび/またはブテン−1を主成分とするブテン共重合体
(1)レタデーション値(R0)が15nm以下
(2)厚みが20μm以上、200μm未満
(3)ヘーズ値が3%以下
(4)全光線透過率が90%以上
【0007】
2.前記組成物が、前記(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対し、さらに(C)パラフィンオイルを1〜15質量部含有することを特徴とする前記1に記載の位相差フィルム用保護フィルム。
【0008】
3.前記位相差フィルムが、透明支持体およびその上に設けられた液晶性ディスコティック化合物を含む光学異方性層からなるフィルムであることを特徴とする前記1または2に記載の位相差フィルム用保護フィルム。
【0009】
4.前記透明支持体がトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする前記3に記載の位相差フィルム用保護フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂成分としてポリメチルペンテンを使用するとともに、その曲げ弾性率および融解熱量を特定し、レタデーション値(R0)、厚み、ヘーズ値および全光線透過率を適切な範囲に設定したので、位相差フィルムの表面保護性を有し、保護フィルムを剥がさずに位相差フィルムの外観検査が可能であるとともに、位相差フィルムに対する剥離性の良好な位相差フィルム用保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の位相差フィルム用保護フィルム(以下単に保護フィルムということがある)をさらに詳細に説明する。
【0012】
(A)ポリメチルペンテン
本発明で(A)成分として用いるポリメチルペンテンは、4−メチル−1−ペンテンおよび/または3−メチル−1−ペンテンの単独重合体もしくは、他のα−オレフィンとの共重合体である。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ここで、α−オレフィンとは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、1−ヘキサデセン、1−ドデセンおよび1−テトラデセン等の炭素数2〜30のオレフィンであり、それぞれ単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0013】
(A)成分の曲げ弾性率(ASTM D790)は800MPa以上、2000MPa未満であり、好ましくは800MPa以上、1900MPa未満、さらに好ましくは850MPa以上、1800MPa未満である。曲げ弾性率が2000MPaを超えると成形したフィルムが硬くなり柔軟性が不足し、位相差フィルムからの剥離に際し、位相差フィルムを傷付けやすく剥離性が低下する。曲げ弾性率が800MPa未満では、コシが無く、位相差フィルムとのラミネート時および剥離時に作業が困難となる。
【0014】
(A)成分のDSCで測定した融解熱量は、38J/g以上、50J/g未満であり、好ましくは38J/g以上、48J/g未満であり、さらに好ましくは39J/g以上、47J/g未満である。
上記融解熱量が38J/g未満であると、コシが無く、位相差フィルムとのラミネート時および剥離時に作業が困難であり、50J/g以上であると成形したフィルムが硬くなり柔軟性が不足し、位相差フィルムからの剥離に際し、位相差フィルムを傷付けやすくなり好ましくない。
なお、本発明でいうDSCの測定は、以下の測定条件および測定機種を採用する。
測定条件: 室温―(10℃/min)→300℃―(10℃/min)→−50℃―(10℃/min)→300℃
融解熱量は−50℃から300℃の昇温行程で測定した。
測定機種: ティー・エイ・インスツルメント社製DSC Q1000
【0015】
また、(A)成分のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準じ、荷重5.0kg、温度260℃の条件で測定した値で、1〜300g/10分の範囲にあることが好ましい。より好ましくは5〜200g/10分の範囲である。
また、融点は、好ましくは200〜250℃、より好ましくは215〜240℃である。
【0016】
これら上記の条件を満たす(A)成分の製品としては、三井化学株式会社製TPX MX021、RT31が挙げられる。
【0017】
(B)ブテン−1をモノマーとして重合したポリブテンおよび/またはブテン−1を主成分とするブテン共重合体
本発明における(B)成分は必須成分であり、ブテン−1単量体を主成分として重合したものであり、例えば、ポリブテン−1、好ましくは、ブテン−1を主成分とし、これに、エチレン、プロピレン、ヘキセン、および/またはその他のα−オレフィンを共重合させたものを包含する。(B)成分の質量平均分子量は、好ましくは100万〜300万のものが使用される。
【0018】
これら上記の条件を満たす(B)成分の製品としては、三井化学株式会社製タフマー BL3110、BL3080、サンアロマー株式会社製PB8640M等が挙げられる。
【0019】
本発明における組成物は、上記(A)成分50〜99質量%および(B)成分1〜50質量%からなる樹脂成分を含有する。(A)成分の配合量が50質量%未満では、成形したフィルムのレタデーション値が大きくなり、また透明性も低下する。樹脂成分における(A)成分の配合量は、好ましくは75〜95質量%である。
また、(B)成分の配合量が1質量%未満では、保護フィルムの剥離性が悪化し、(B)成分の配合量が50質量%を超えると、成形したフィルムのレタデーション値が大きくなり、また透明性も低下する。(B)成分の配合量は、好ましくは5〜25質量%である。
【0020】
また本発明における組成物は、必要に応じて上記(A)成分および(B)成分に加えて、(C)パラフィンオイルを使用することがが位相差フィルムからの剥離に際し、位相差フィルムを傷付けにくくなり、剥離性の向上効果の観点から好ましい。
(C)成分としては、例えば、炭素数4〜155のパラフィン系化合物、好ましくは炭素数4〜50のパラフィン系化合物が挙げられ、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサコンタン、ヘプタコンタン等のn−パラフィン(直鎖状飽和炭化水素)、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、イソノナン、2−メチルノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、イソエイコサン、4−エチル−5−メチルオクタン等のイソパラフィン(分岐状飽和炭化水素)および、これらの飽和炭化水素の誘導体等を挙げることができる。これらのパラフィンは、混合物で用いられ、室温で液状であるものが好ましい。
また、パラフィンオイルには、少量の不飽和炭化水素およびこれらの誘導体が共存していてもよい。不飽和炭化水素としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のエチレン系炭化水素、アセチレン、メチルアセチレン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシン、1−オクチン、1−ノニン、1−デシン等のアセチレン系炭化水素を挙げることができる。
室温で液状であるパラフィンオイルの市販品としては、日本油脂株式会社製のNAソルベント(イソパラフィン系炭化水素油)、出光興産株式会社製のPW−90(n−パラフィン系プロセスオイル)、出光石油化学株式会社製のIP−ソルベント2835(合成イソパラフィン系炭化水素、99.8wt%以上のイソパラフィン)、三光化学工業株式会社製のネオチオゾール(n−パラフィン系プロセスオイル)等が挙げられる。
【0021】
(C)成分の配合量は、前記(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対し、1〜15質量部が好ましく、3〜10質量部がさらに好ましい。(C)成分の配合量が15質量部を超えるとブリードが生じやすく、また、レタデーションや透明性の低下を招く事にもなる。
【0022】
本発明における組成物は、上記(A)〜(C)成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、更に必要に応じて熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤等の各種添加剤を含み得る。
【0023】
本発明の保護フィルムは、上記組成物を成形して得られる。成形法に特に制限はない。各成分が実質的に均一に分散、混合、混練される方法であれば、どのような製造法をも採用することができ、そのための設備としても任意のものを用いることができる。例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等でブレンドした後、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーまたは各種ニーダー等で溶融混練し、Tダイ押出機、カレンダー製造機、インフレーション製造機等を用いて、所望のサイズおよび厚さのフィルムに成形することができる。また、組成物を単軸または二軸の押出機を用いてペレット化した後にTダイ押出機、カレンダー製造機、インフレーション製造機等で成形することもできる。
【0024】
このようにして得られた本発明の保護フィルムは、下記(1)〜(4)の特性をすべて満たすことが必要である。
(1)レタデーション値(R0)が15nm以下
(2)厚みが20μm以上、200μm未満
(3)ヘーズ値が3%以下
(4)全光線透過率が90%以上
【0025】
上記(1)の条件において、保護フィルムのレタデーション値(R0)を15nm以下にする手段としては、保護フィルムの延伸条件を適切に設定することが挙げられる。例えば、Tダイ押出機、カレンダー製造機を用いる場合は、無延伸とするか、あるいは3.5倍未満の延伸倍率で一軸延伸を行えばよい。一軸延伸の方法としては、製膜時にインラインでロールに速度差を付けて流れ方向の延伸をする方法や、テンター方式でフィルムの幅方向を延伸する方法等が挙げられる。また、無延伸のフィルムを作成した後にアウトラインにより上述の一軸延伸(ロール、テンター)を行ってもよい。一方、インフレーション製造機を用いる場合は、1.0以上、3.0倍未満のブロー比にすることが望ましい。
保護フィルムのレタデーション値(R0)は、好ましくは13nm以下であり、より好ましくは7nm以下である。レタデーション値が15nmを超えると保護フィルムを付けたままでの位相差フィルムの外観検査に支障を来す。
レタデーション値(R0)は、下記の式で表される面内のレタデーションであり、nx,nyは面内の屈折率(ただし、nx≧ny)、dはフィルムの厚さである。
R0=(nx−ny)×d
また、本明細書において、レタデーション値(R0)とは、測定波長590nmでの測定を意味する。
【0026】
上記(2)の条件において、保護フィルムの厚みは20μm以上、200μm未満であり、好ましくは30μm以上、150μm未満であり、より好ましくは40μm以上、120μm未満である。厚みが200μm以上であるとフィルムが厚いがために取り扱い性が悪くなり、またレタデーションや透明性が低下し保護フィルムを付けたままでの外観検査に支障を来す。厚みが20μm未満であると、フィルムにコシが無く、位相差フィルムとのラミネートの際や、剥離の際の作業性が著しく低下する。
【0027】
上記(3)の条件において、保護フィルムのヘーズ値は3%以下である必要がある。ヘーズ値が3%を超えると、透明性が不足し保護フィルムを付けたままでの外観検査に支障を来す。ヘーズ値は、JIS K−7105に従い測定された値である。さらに好ましいヘーズ値は、2%以下である。
【0028】
上記(4)の条件において、保護フィルムの全光線透過率は90%以上である必要がある。全光線透過率が90%未満であると、透明性が不足し保護フィルムを付けたままでの外観検査に支障を来す。全光線透過率は、JIS K−7105に従い測定された値である。さらに好ましい全光線透過率は94%以上である。
【0029】
上記(3)および(4)の条件を満たす保護フィルムを作成するには、延伸が効果的ではあるが、レタデーションとのバランスで延伸倍率を設定する必要がある。
【0030】
本発明の保護フィルムで保護する位相差フィルムとしては、とくに制限されないが、本発明の効果が良好に発現するという観点から、下記の位相差フィルムであることが特に好ましい。
透明支持体およびその上に設けられた液晶性ディスコティック化合物を含む光学異方性層からなるフィルムであって、透明支持体と光学異方性層の間に配向膜を有し、光学異方性層がディスクティック構造単位を有する化合物からなる負の複屈折を有する層であるフィルムである。光学異方性層は例えば化1に示すような液晶性ディスコティック化合物とアクリロイル基及びメタクリロイル基を有する重合性モノマーとセルロースエステル等のポリマーとを含んで形成される事が好ましい。
【0031】
【化1】

【0032】
当該フィルムは公知であり、特許第2587398号公報に開示されている。とくに透明支持体がTAC(トリアセチルセルロース)フィルムであるときに、剥離性に代表される本発明の効果が高まる。
【0033】
本発明の保護フィルムと位相差フィルムとの貼り合わせ方法としては、熱圧着または粘着剤を使用しての圧着が好ましい。粘着剤を使用する場合は、レタデーションが外観検査に支障が無い程度に低いことが要求され、また剥離性を考慮し弱粘着タイプを選定することが望ましい。粘着剤としては具体的に、ポリエステル系、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等が挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を下記の実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0035】
物性測定方法および製造性評価方法
(1)レタデーション(R0)
王子計測機器株式会社製 位相差測定装置KOBRA−WRを使用し、平行ニコル回転法で測定した。
(2)ヘーズ
JIS K−7105に準拠し測定。
(3)全光線透過率
JIS K−7105に準拠し測定。
(4)外観検査性
二枚の偏光フィルムを偏光軸が直交するように配置し、位相差フィルムに本発明の保護フィルムをラミネートしたフィルムを、二枚の偏光フィルムの間に入れ、片側より光を照射し、反対側より目視により判断した。二枚の偏光フィルムの偏光軸が直交して配置されているため、光の透過が無く視野は暗い状態であるが、その間にレタデーションの大きなフィルムが入ると視野が明るくなったり、配向が乱れていると明暗がムラになったり、干渉縞のような現象が発生する。
◎: 位相差フィルム単体との差が無く非常に良好
○: 視野が暗く、歪みがなく良好
△: 視野が暗いが、歪みがあるが検査は可能
×: 視野が明るく検査が困難
××: 干渉縞が発生し検査が不可能
視野が暗く、歪みがなく良好と判断したサンプルを10人のモニターに対し位相差フィルム単体と比較させ、差が無いと判断した人が7人以上いたサンプルを◎とした。
(5)剥離性
ゼラチン薄膜を塗設した厚み80μmのTACフィルム上に直鎖アルキル変性ポリビニルアルコールを塗布した後、ラビング処理を行い、配向膜を形成し、更にこの配向膜の上に化1に示す液晶性ディスコティック化合物、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、セルロースアセテートブチレート及び光重合開始剤をメチルエチルケトンに溶解して得られた塗布液を塗工し加熱硬化させ厚さ1.8μmの液晶性ディスコティック化合物を含む光学異方性層形成し、位相差フィルムとした。
該位相差フィルムに本発明の保護フィルムをラミネートし、手動で保護フィルムを剥離し、その時の状況を10点のサンプルで、以下基準で判断した。
〇: 位相差フィルムに傷や歪みを全く生じさせなない。(剥がすのが容易で、安定している)
△: 位相差フィルムに傷や歪みの発生が2点以下である。(傷や歪みの発生は無いが、剥がすのが容易と判断されないものも含まれる、程度としては傷や歪みの発生が無い方が良好である)
×: 位相差フィルムに傷や歪みの発生が3点以上である。(剥がすのに困難性があり、安定性に欠ける)
〇と評価した保護フィルムを対象とし、厚み40μmのTACフィルムで上記同様の手順で作成した位相差フィルムにラミネートし、上記同様の評価を実施し、以下評価とした。
◎: 40μmの位相差フィルムを使用しても傷や歪みを全く生じさせなない。(剥がすのが容易で、安定している)
【0036】
実施例および比較例において用いた試料
(A)成分
TPX MX021:三井化学株式会社製、4−メチル−1−ペンテンと炭素数エチレンおよびヘキセン−1との共重合体、曲げ弾性率(ASTM D790)980MPa、融解熱量40.3J/g、MFR(ASTM D1238、荷重5.0kg、温度260℃)23g/10分、融点228℃、密度(ASTM D1505)0.833g/cm3
TPX RT31:三井化学株式会社製、4−メチル−1−ペンテンとヘキセン−1との共重合体、曲げ弾性率(ASTM D790)1765MPa、融解熱量46.7J/g、MFR(ASTM D1238、荷重5.0kg、温度260℃)21g/10分、融点235℃、密度(ASTM D1505)0.833g/cm3
(B)成分
タフマー BL3110:三井化学株式会社製、ブテン−1とエチレンの結晶性共重合体、MFR(ASTM D1238E、荷重2.16kg、温度190℃)1.0g/10分、ヤング率2800kg/cm3、密度0.91g/cm3
(C)成分
PW−90:出光興産株式会社製、n−パラフィン系プロセスオイル、質量平均分子量:540、40℃における動的粘度:95.54cSt、100℃における動的粘度:11.25cSt、流動点:−15℃、引火点(COC):270℃
【0037】
比較例使用フィルム
PEフィルム:E−203(株式会社スミロン製)
COPフィルム:ZEONOR ZF−14(日本ゼオン株式会社製)
TACフィルム:TD80ULG(富士フィルム株式会社製)
PETフィルム:エンブレット TA50(ユニチカ株式会社製)
PPフィルム:OWクリヤー(リケンテクノス株式会社製)
【0038】
実施例1〜11および比較例1〜9
下記表1および2に記載の各成分を記載量でもって配合し(数値単位は質量部)、押出機を用いて混練し、Tダイより押し出して、表1および2に示す厚さのフィルムを製造した。各フィルムの評価結果を表1および2に示す。なお、実施例11では幅方向の延伸操作を行った。また、比較例8で使用した保護フィルムのPETフィルムである、エンブレット TA50は、延伸フィルムである。結果を表1および2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
実施例1〜11は、実施例3が(A)成分が少ないため、実施例10がフィルムの厚みが厚いため外観検査性が若干劣り、実施例8がフィルムの厚みが薄いため剥離に多少の困難性(位相差フィルムの傷つきは無い)はあるが、本発明で規定する(A)成分の曲げ弾性率、融解熱量、(A)および(B)成分の配合量の関係、レタデーション値(R0)、厚み、ヘーズ値および全光線透過率を満たしているので、剥離性および外観検査性に優れた結果を示した。
一方、比較例1および2の保護フィルムは(A)および(B)成分の配合量が本発明の範囲外であるために、比較例1では剥離時に位相差フィルムの傷つきが発生し、比較例2ではレタデーションおよび透明性が劣り、その結果、外観検査性に問題が生じる結果となった。比較例3の保護フィルムはフィルムの厚みが下限より薄いため、剥離が困難で、位相差フィルムに傷が発生した。逆に厚みが上限を超えた比較例4はレタデーションが劣り、その結果、外観検査性が悪化した。また、取り扱い性が悪く剥離時に位相差フィルムの傷つきが発生した。比較例5ではPEフィルムを使用しておりレタデーションが劣っており、外観検査性が悪い結果となっている。比較例6ではCOPフィルムを、比較例7ではTACフィルムを使用しており共に剥離時に位相差フィルムが傷つくという問題が発生する。比較例8ではPETフィルムを使用しておりレタデーションが非常に悪く、外観検査性も非常に劣っている。比較例9ではPPフィルムを使用しておりレタデーションが劣っており、外観検査性も悪い結果となっている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の保護フィルムは、破壊検査の手法を取らずに位相差フィルムの外観検査が可能であり、また位相差フィルムに対する剥離性が良好であるので、位相差フィルム用の保護フィルムとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分50〜99質量%および(B)成分1〜50質量%からなる樹脂成分を含有する組成物を成形してなり、かつ、下記(1)〜(4)の特性をすべて満たすことを特徴とする位相差フィルム用保護フィルム。
(A)曲げ弾性率が800MPa以上、2000MPa未満であり、かつDSCで測定した融解熱量が38J/g以上、50J/g未満であるポリメチルペンテン
(B)ブテン−1をモノマーとして重合したポリブテンおよび/またはブテン−1を主成分とするブテン共重合体
(1)レタデーション値(R0)が15nm以下
(2)厚みが20μm以上、200μm未満
(3)ヘーズ値が3%以下
(4)全光線透過率が90%以上
【請求項2】
前記組成物が、前記(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対し、さらに(C)パラフィンオイルを1〜15質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム用保護フィルム。
【請求項3】
前記位相差フィルムが、透明支持体およびその上に設けられた液晶性ディスコティック化合物を含む光学異方性層からなるフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の位相差フィルム用保護フィルム。
【請求項4】
前記透明支持体がトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項3に記載の位相差フィルム用保護フィルム。

【公開番号】特開2008−268364(P2008−268364A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108444(P2007−108444)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】