説明

位相差素子およびその製造方法、表示装置、ならびに光吸収層付き基板およびその製造方法

【課題】簡易な方法でクロストークを低減することの可能な位相差素子およびその製造方法、上記位相差素子を備えた表示装置、ならびに光吸収層付き基材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】転写シート300を、UV硬化樹脂層33Fを介して基材100に貼り付ける。これにより転写シート300の着色層330がUV硬化樹脂層33Fのうち各帯状凸部32Aの直上に対応する部分にだけ接触する。その後、液晶層33DおよびUV硬化樹脂層33Fに対してUV光を照射し、液晶層33D内の液晶性モノマを重合させるとともに、UV硬化樹脂層33Fを硬化させたのち、転写シート300を基材100から剥離する。これにより、転写シート300の着色層330がUV硬化樹脂層33Fのうち各帯状凸部32Aの直上に対応する部分にだけ付着(残留)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収材を含む位相差素子およびその製造方法に関する。また、本発明は、上記位相差素子を備えた表示装置に関する。また、本発明は、光吸収層付き基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、偏光眼鏡を用いるタイプの立体映像表示装置として、左目用画素と右目用画素とで異なる偏光状態の光を射出させるものがある。このような表示装置では、視聴者が偏光眼鏡をかけた上で、左目用画素からの射出光を左目のみに入射させ、右目用画素からの射出光を右目のみに入射させることにより、立体映像の観察を可能とするものである。
【0003】
例えば、特許文献1では、左目用画素と右目用画素とで異なる偏光状態の光を射出させるために位相差素子が用いられている。この位相差素子では、一の方向に遅相軸または進相軸を有する片状位相差部材が左目用画素に対応して設けられ、上記片状位相差部材とは異なる方向に遅相軸または進相軸を有する片状位相差部材が右目用画素に対応して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3360787号公報
【特許文献2】WO2007/018064
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の表示装置では、左目用画素から射出された左目用の映像光が左目のみに入射され、右目用画素から射出された右目用の映像光が右目のみに入射されることが望ましい。しかし、例えば、左目用の映像光の一部が、右目用画素に対応して設けられた片状位相差部材に漏れ、その光が右目に入射するクロストークが生じる場合がある。表示装置におけるクロストークは、像が二重に見えるゴースト現象を発生させ、表示品質を悪化させるので、表示装置においては、クロストークをなくすることが表示品質を良くする上で極めて重要である。そこで、例えば、片状位相差部材の縁に対応する位置に光吸収材を配置し、漏れ光を光吸収材に吸収させることが考えられる。
【0006】
ところで、光吸収材を片状位相差部材の縁に対応する位置に配置する方法としては、例えば、片状位相差部材の縁に対応する位置に光吸収材を有するフィルムを位相差素子に貼り合わせることが考えられる。しかし、この方法では、フィルムを位相差素子に貼り合わせる際に高精度な位置合わせが必要となる。たとえば、フィルムを数十μm程度の精度で位相差素子に貼り合わせることが必要となる。そのため、作業の難易度が高く、生産歩留まりが低下するので、製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、高精度な位置合わせを必要としない簡易な方法でクロストークを低減することの可能な位相差素子およびその製造方法を提供することにある。また、第2の目的は、高精度な位置合わせを必要としない簡易な方法でクロストークを低減することの可能な位相差素子を備えた表示装置を提供することにある。また、第3の目的は、高精度な位置合わせを必要としない簡易な方法で、光吸収層付き基材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の位相差素子は、遅相軸の向きが互いに異なる二種類以上の位相差領域を有する位相差層と、位相差領域を種類ごとに分離する凸部を有する基材と、凸部の上面に設けられた光吸収材とを備えたものである。光吸収材は、印刷または箔転写により形成されたものである。また、光吸収材としては、例えば、カーボンブラック顔料の黒色材料などが用いられる。
【0009】
本発明の表示装置は、映像信号に基づいて駆動される表示パネルと、表示パネルを照明するバックライトユニットと、表示パネルとの関係でバックライトユニットとは反対側に設けられた位相差素子とを備えたものである。この表示装置に内蔵された位相差素子は、上記した位相差素子と同一の構成要素によって構成されている。
【0010】
本発明の位相差素子および表示装置では、凸部の上面に設けられた光吸収材が印刷または箔転写により形成されている。これにより、光吸収材を基材に形成する際に高精度な位置合わせが不要となる。
【0011】
本発明の光吸収層付き基材は、凸部を有する基材と、凸部の上面に設けられ、かつ箔転写により形成された光吸収層とを備えたものである。凸部の上面は、平坦面となっており、光吸収層は、平坦面に箔転写を行うことにより形成されたものであることが好ましい。また、光吸収層としては、例えば、カーボンブラック顔料の黒色材料などが用いられる。
【0012】
本発明の光吸収層付き基材では、凸部の上面に設けられた光吸収層が箔転写により形成されている。これにより、光吸収材を基材に形成する際に高精度な位置合わせが不要となる。
【0013】
本発明の第1の位相差素子の製造方法は、以下の3つの工程を含むものである。
(A)遅相軸の向きが互いに異なる二種類以上の位相差領域を有する位相差層と、位相差領域を種類ごとに分離する凸部を有する基材とを備えた光学素子を用意するとともに、支持基体上に、光吸収材を含む着色層を有する転写シートを用意する第1工程
(B)凸部の上面に、接着層を介して転写シートを貼り付ける第2工程
(C)転写シートを基材から剥離して、着色層を凸部の上面に転写する第3工程
【0014】
本発明の第1の位相差素子の製造方法では、基材に設けられた凸部の上面に、光吸収材を含む着色層が転写される。これにより、光吸収材を基材に形成する際に高精度な位置合わせが不要となる。
【0015】
本発明の第2の位相差素子の製造方法は、以下の工程を含むものである。
(A)遅相軸の向きが互いに異なる二種類以上の位相差領域を有する位相差層と、位相差領域を種類ごとに分離する凸部を有する基材とを備えた光学素子を用意したのち、印刷法を用いて、凸部の上面に、光吸収材を含む着色層を塗布する工程
【0016】
本発明の第2の位相差素子の製造方法では、基材に設けられた凸部の上面に、光吸収材を含む着色層が印刷法により塗布される。これにより、光吸収材を基材に形成する際に高精度な位置合わせが不要となる。
【0017】
本発明の光吸収層付き基材の製造方法は、以下の工程を含むものである。
(A)凸部を有する基材と、光吸収材を含む着色層を有する転写シートとを用意する第1工程
(B)凸部を有する基材のうち、凸部の上面に、接着層を介して転写シートを貼り付ける第2工程
(C)転写シートを基材から剥離して、着色層を凸部の上面に転写する第3工程
【0018】
なお、上記位相差素子の製造方法または光吸収層付き基材の製造方法における第2工程においては、光転写法(例えば、接着層として、基材にエネルギー線硬化型樹脂を塗布形成する)、または熱転写法(例えば、接着層として、転写シートに熱可塑性接着層を塗布形成する)を用いるのが好ましい。光転写法の場合、基材のうち凸部側の表面に接着層を形成したのち、接着層に転写シートを接触させた状態で接着層にエネルギーを与えて接着層を硬化させ、凸部の上面に、接着層を介して転写シートを貼り付けるのが好ましい。一方、熱転写法の場合、転写シートの表面に接着層を形成したのち、接着層にエネルギーを与えて接着層を軟化させ、さらに接着層に転写シートを接触させた状態で冷却することにより接着層を硬化させ、凸部の上面に、接着層を介して転写シートを貼り付けるのが好ましい。
【0019】
また、凸部の上面は、平坦面となっていることが好ましい。また、着色層に含まれる光吸収材としては、例えば、カーボンブラック顔料の黒色材料などが用いられる。
【0020】
本発明の光吸収層付き基材の製造方法では、基材に設けられた凸部の上面に、光吸収材を含む着色層が転写される。これにより、光吸収材を基材に形成する際に高精度な位置合わせが不要となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の位相差素子および表示装置、第1および第2の位相差素子の製造方法、ならびに光吸収層付き基材およびその製造方法によれば、光吸収材を基材に形成する際に高精度な位置合わせが不要となるようにした。これにより、簡易な方法でクロストークを低減することができる。また、高精度な位置合わせが不要であることから、高い生産歩留まりが得られ、しかも低コストでの製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成の一例を表す断面図である。
【図2】図1の位相差素子の構成の一例を表す断面図である。
【図3】図2の凹凸層の構成の一例を表す上面図である。
【図4】図2の凹凸層の溝の延在方向の一例について説明するための模式図である。
【図5】図2の凹凸層の構成の一例を表す断面図である。
【図6】図2の位相差層の構成の一例を表す上面図である。
【図7】図2の位相差層の遅相軸の一例について説明するための模式図である。
【図8】図1の表示装置および偏光眼鏡の構成および遅相軸の一例を表す構成図である。
【図9】図1の位相差素子の構成の他の例を表す断面図である。
【図10】図1の表示装置と偏光眼鏡との関係について表すシステム図である。
【図11】図1の表示装置の映像を右目で観察する際の透過軸および遅相軸の一例について説明するための概念図である。
【図12】図1の表示装置の映像を右目で観察する際の透過軸および遅相軸の他の例について説明するための概念図である。
【図13】図1の表示装置の映像を左目で観察する際の透過軸および遅相軸の一例について説明するための概念図である。
【図14】図1の表示装置の映像を左目で観察する際の透過軸および遅相軸の他の例について説明するための概念図である。
【図15】図1の位相差素子の基材を製造する装置の一例について表す構成図である。
【図16】基材および転写シートの構成の一例を表す断面図である。
【図17】図15に続く工程で使用される製造装置の一例について表す構成図である。
【図18】図17に続く工程で使用される製造装置の一例について表す構成図である。
【図19】図18の工程の中途におけるシートの構成の一例を表す断面図である。
【図20】図19に続く工程におけるシートの構成の一例を表す断面図である。
【図21】図17とは異なる一の方法で位相差素子を製造する工程で使用される製造装置の一例について表す構成図である。
【図22】図17とは異なる他の方法で位相差素子を製造する工程で使用される製造装置の一例について表す構成図である。
【図23】図22の製造方法を用いる際に好適な凸部の断面形状の一例を表す断面図である。
【図24】図2の位相差素子の製造方法のその他の例で用いられる製造装置の構成の一例を表す模式図である。
【図25】図24の製造装置の構成の他の例を表す模式図である。
【図26】図1の表示装置の構成の他の例を表す断面図である。
【図27】本発明の一実施の形態に係る光吸収層付き基板の構成の一例を表す断面図である。
【図28】図27の光吸収層付き基板を製造する装置の一例について表す構成図である。
【図29】図28に続く工程で使用される製造装置の一例について表す構成図である。
【図30】図29の工程の中途におけるシートの構成の一例を表す断面図である。
【図31】図30に続く工程におけるシートの構成の一例を表す断面図である。
【図32】図31とは異なる方法で光吸収層付き基板を製造する工程で使用される製造装置の一例について表す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施の形態とする。)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態
1.1 表示装置1の構成
1.2 位相差素子30の製造方法
1.3 基本動作
1.4 効果
2.変形例
2.1 位相差素子30の他の構成
2.2 表示装置1の他の構成
2.3 光吸収層付き基板50の構成
2.4 光吸収層付き基板50の製造方法
【0024】
<実施の形態>
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示装置の断面構成を表すものである。なお、本発明の一実施の形態に係る位相差素子については、本実施の形態の表示装置に内蔵されている場合を例示して説明するものとする。
【0025】
[表示装置1の構成]
本実施の形態の表示装置1は、後述する偏光眼鏡2を眼球の前に装着した観察者(図示せず)に対して立体映像を表示する偏光眼鏡方式の表示装置である。この表示装置1は、バックライトユニット10、液晶表示パネル20(表示パネル)および位相差素子30をこの順に積層して構成されたものである。この表示装置1において、位相差素子30の表面が映像表示面となっており、観察者側に向けられている。なお、本実施の形態では、映像表示面が垂直面(鉛直面)と平行となるように表示装置1が配置されているものとする。また、映像表示面は長方形状となっており、映像表示面の長手方向が水平方向(図中のy軸方向)と平行となっているものとする。また、観察者は偏光眼鏡2を眼球の前に装着した上で、映像表示面を観察するものとする。
【0026】
(バックライトユニット10)
バックライトユニット10は、例えば、反射板、光源および光学シート(いずれも図示せず)を有している。反射板は、光源からの射出光を光学シート側に戻すものであり、反射、散乱、拡散などの機能を有している。この反射板は、例えば、発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)などによって構成されている。これにより、光源からの射出光を効率的に利用することができる。光源は、液晶表示パネル20を背後から照明するものであり、例えば、複数の線状光源が等間隔で並列配置されたり、複数の点状光源が2次元配列されたりしたものである。なお、線状光源としては、例えば、熱陰極管(HCFL;Hot Cathode Fluorescent Lamp)、冷陰極管(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)などが挙げられる。また、点状光源としては、例えば、発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)などが挙げられる。光学シートは、光源からの光の面内輝度分布を均一化したり、光源からの光の発散角や偏光状態を所望の範囲内に調整したりするものであり、例えば、拡散板、拡散シート、プリズムシート、反射型偏光素子、位相差板などを含んで構成されている。また、光源は、エッジライト方式のものでもよく、その場合には、必要に応じて導光板や導光フィルムが用いられる。
【0027】
(液晶表示パネル20)
液晶表示パネル20は、複数の画素が行方向および列方向に2次元配列された透過型の表示パネルであり、映像信号に応じて各画素を駆動することによって映像を表示するものである。この液晶表示パネル20は、例えば、図1に示したように、バックライトユニット10側から順に、偏光板21A、透明基板22、画素電極23、配向膜24、液晶層25、配向膜26、共通電極27、カラーフィルタ28、透明電極29および偏光板21Bを有している。
【0028】
ここで、偏光板21Aは、液晶表示パネル20の光入射側に配置された偏光板であり、偏光板21Bは液晶表示パネル20の光射出側に配置された偏光板である。偏光板21A,21Bは、光学シャッタの一種であり、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。偏光板21A,21Bはそれぞれ、例えば、偏光軸が互いに所定の角度だけ(例えば90度)異なるように配置されており、これによりバックライトユニット10からの射出光が液晶層を介して透過し、あるいは遮断されるようになっている。なお、偏光板は、板状に限定されない。
【0029】
偏光板21Aの透過軸の向きは、バックライトユニット10から射出された光を透過可能な範囲内に設定される。例えば、バックライトユニット10から射出される光の偏光軸が垂直方向となっている場合には、偏光板21Aの透過軸も垂直方向を向いており、バックライトユニット10から射出される光の偏光軸が水平方向となっている場合には、偏光板21Aの透過軸も水平方向を向いている。なお、バックライトユニット10から射出される光は直線偏光光である場合に限られるものではなく、円偏光や、楕円偏光、無偏光であってもよい。
【0030】
偏光板21Bの偏光軸の向きは、液晶表示パネル20を透過した光を透過可能な範囲内に設定される。例えば、偏光板21Aの偏光軸の向きが水平方向となっている場合には、偏光板21Bの偏光軸は偏光板21Aの偏光軸と直交する方向(垂直方向)を向いている。また、例えば、偏光子21Aの偏光軸の向きが垂直方向となっている場合には、偏光板21Bの偏光軸は偏光板21Aの偏光軸と直交する方向(水平方向)を向いている。なお、上記の偏光軸と、上記の透過軸とは互いに同義である。
【0031】
透明基板22,29は、一般に、可視光に対して透明な基板である。なお、バックライトユニット10側の透明基板には、例えば、画素電極23に電気的に接続された駆動素子としてのTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)および配線などを含むアクティブ型の駆動回路が形成されている。画素電極23は、例えば酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)からなり、画素ごとの電極として機能する。配向膜24,26は、例えばポリイミドなどの高分子材料からなり、液晶に対して配向処理を行う。液晶層25は、例えばVA(Vertical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)モードまたはSTN(Super Twisted Nematic)モードの液晶からなる。液晶層25は、図示しない駆動回路からの印加電圧により、バックライトユニット10からの射出光を画素ごとに透過または遮断する機能を有している。共通電極27は、例えばITOからなり、各画素電極23に対する共通の対向電極として機能する。カラーフィルタ28は、バックライトユニット10からの射出光を、例えば、赤(R)、緑(G)および青(B)の三原色にそれぞれ色分離するためのフィルタ部28Aを配列して形成されている。このカラーフィルタ28では、画素間の境界に対応する部分に、遮光機能を有するブラックマトリクス部28Bが設けられている。
【0032】
(位相差素子30)
次に、位相差素子30について説明する。図2は、位相差素子30の断面構成の一例を表したものである。
【0033】
位相差素子30は、液晶表示パネル20の偏光子21Bを透過した光の偏光状態を変化させるものである。位相差素子30は、液晶表示パネル20の光射出側の表面(偏光板21B)に粘着剤(図示せず)などによって貼り付けられている。位相差素子30は、例えば、図1、図2に示したように、液晶表示パネル20側から順に、基材フィルム31、凹凸層32、および光吸収層34を有しており、凹凸層32において互いに隣り合う帯状凸部32A(後述)の間に位相差層33を有している。すなわち、凹凸層の32の帯状凸部32Aが液晶表示パネル20と反対側を向くように形成されている。なお、基材フィルム31および凹凸層32からなる基材が、本発明の「基材」の一具体例に相当する。また、凹凸層32が、本発明の「凸部」の一具体例に相当する。
【0034】
基材フィルム31は、透明樹脂フィルムによって構成されている。透明樹脂フィルムとしては、光学異方性の小さい、つまり複屈折の小さいものが好ましい。そのような特性を持つ透明樹脂フィルムとしては、例えば、TAC(トリアセチルセルロース)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)などが挙げられる。ここで、COPとしては、例えば、ゼオノアやゼオネックス(日本ゼオン社の登録商標)、アートン(JSR社の登録商標)などがある。基材フィルムの31の厚さは、例えば、30μm以上500μm以下となっていることが好ましい。基材フィルム31のリタデーションは、20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。なお、リタデーションは、例えば、回転検光子法や、セナルモン法など、いくつかの楕円偏光解析にて測定することが可能なものである。本明細書では、リタデーションの値として、回転検光子法を用いることによって得られた値が示されている。
【0035】
凹凸層32は、透明な樹脂、例えば、UV硬化型、電子線硬化型、または熱可塑性の透明樹脂によって構成されている。凹凸層32は、基材フィルム31の光射出側の表面に設けられており、例えば、図2、図3に示したように、水平方向(図中のy軸方向)(第1の方向)に延在する複数の帯状凸部32Aを有している。なお、図3は、凹凸層32の上面(光射出側の表面)の構成の一例を表したものである。
【0036】
各帯状凸部32Aは、カラーフィルタ28のブラックマトリクス部28Bと対向して配置されており、液晶表示パネル20の垂直方向(図中のx軸方向)の画素ピッチに対応するピッチで配置されている。凹凸層32の光射出側の表面は、各帯状凸部32Aによって複数の領域32Bに分離されている。各領域32Bは、互いに隣接する2つの帯状凸部32Aによって形成される帯状凹部の底面領域に対応しており、液晶表示パネル20の画素電極23と対向して配置されている。
【0037】
凹凸層32は、例えば、図2、図3に示したように、各領域32Bに対応して、配向方向が互いに異なる二種類の配向領域(右目用領域32C,左目用領域32D)を有している。右目用領域32Cおよび左目用領域32Dは、例えば、共通する一の方向(水平方向)に延在する帯状の形状となっている。これら右目用領域32Cおよび左目用領域32Dは、右目用領域32Cおよび左目用領域32Dの短手方向(垂直方向)に交互に配置されている。
【0038】
右目用領域32Cおよび左目用領域32Dは、後述の製造過程において液晶層33D(位相差層33の前駆体)に含まれる液晶分子の配向を制御する配向機能を有している。具体的には、右目用領域32Cは、図3、図4に示したように、帯状凸部32Aの中心線L1と直交以外の角度θ1(例えば、後述のθ4と同一の角度)で交差する方向に延在する複数の溝V1を有している。一方、左目用領域32Dは、図3、図4に示したように、帯状凸部32Aの中心線L1と直交以外の角度θ2(例えば、後述のθ5と同一の角度)で交差する方向であって、かつ溝V1の延在方向とは異なる方向に延在する複数の溝V2を有している。なお、図4は、溝V1,V2の延在方向と中心線L1との関係を模式的に表したものである。
【0039】
各溝V1は、一の方向に直線状に延在していてもよいし、例えば、揺らぎながら(蛇行しながら)一の方向に延在していてもよい。各溝V1の断面形状は、例えばV字状となっている。同様に、各溝V2の断面形状も、例えばV字状となっている。言い換えると、右目用領域32Cおよび左目用領域32D全体の断面形状は、鋸歯状となっている。このような形状は、例えば後述する型を用いた転写によって一括形成される。
【0040】
各帯状凸部32Aの垂直方向の断面形状は、例えば、図5に示したように、台形状となっている。つまり、各帯状凸部32Aの上面S1が平坦面となっており、さらに各帯状凸部32Aの側面S2が基材フィルム31の法線L2と所定の角度θ3で交差する傾斜面となっている。ここで、角度θ3は、後述の製造工程において液晶層33Dが側面S2に過剰に塗布されるのを抑制する観点から、3°以上であることが好ましい。また、角度θ3は、後述の製造工程において着色層330の転写をし易くする観点から、80°以下であることが好ましい。従って、角度θ3は、3°以上、80°以下であることが好ましい。
【0041】
各帯状凸部32Aの上面S1の、位相差層33の上面からの高さHは、後述の製造工程において光吸収層34を上面S1のみに配置し、位相差層33に付着しないようにする観点から、3μm以上となっていることが好ましい。また、高さHは、後述の製造工程において各帯状凸部32Aの形成時に、各帯状凸部32Aを構成する樹脂中に気泡が混入するのを防止する観点から、20μm以下となっていることが好ましく、10μm以下となっていることがより好ましい。従って、高さHは、3μm以上20μm以下となっていることが好ましく、3μm以上10μm以下となっていることがより好ましい。
【0042】
位相差層33は、光学異方性を有する薄い層である。この位相差層33は、例えば、各領域32Bの表面に設けられたものであり、互いに隣接する2つの帯状凸部32Aによって分離されている。この位相差層33は、例えば、図6に示したように、遅相軸の向きが互いに異なる二種類の位相差領域(右目用領域33A,左目用領域33B)を有している。なお、右目用領域33Aが本発明の「一方の種類の位相差領域」の一具体例に相当し、左目用領域33Bが本発明の「他方の種類の位相差領域」の一具体例に相当する。
【0043】
右目用領域33Aおよび左目用領域33Bは、例えば、図6に示したように、共通する一の方向(水平方向)に延在する帯状の形状となっている。これら右目用領域33Aおよび左目用領域33Bは、右目用領域33Aおよび左目用領域33Bの短手方向(垂直方向)に交互に配置されている。
【0044】
右目用領域33Aは、例えば、図6、図7に示したように、中心線L1と直交以外の角度θ4(0°<θ4<90°)で交差する方向に遅相軸AX1を有している。一方、左目用領域33Bは、例えば、図6、図7に示したように、中心線L1と直交以外の角度θ5(0°<θ5<90°)で交差する方向であって、かつ遅相軸AX1の向きとは異なる方向に遅相軸AX2を有している。なお、図7は、右目用領域33Aおよび左目用領域33Bの遅相軸AX1,AX2と中心線L1との関係を模式的に表したものである。
【0045】
ここで、「遅相軸AX1の向きとは異なる方向」とは、単に、遅相軸AX1の向きとは異なるということを意味しているだけでなく、中心線L1に関して、遅相軸AX1とは反対方向に回転しているということを意味している。つまり、遅相軸AX1,AX2は、中心線L1を挟んで互いに異なる方向に回転している。遅相軸AX1の角度θ4と、遅相軸AX2の角度θ5とは、絶対値としては(回転方向を考慮しない場合には)、互いに等しいことが好ましい。ただし、これらが、製造誤差などによって若干、互いに異なっていてもよく、場合によっては製造誤差よりも大きな角度で互いに異なっていてもよい。なお、上記した製造誤差としては、右目用領域33Aおよび左目用領域33Bを製造する技術によっても異なるが、例えば最大で1°〜2°程度である。
【0046】
遅相軸AX1,AX2は、例えば、図7に示したように、水平方向および垂直方向のいずれの方向とも交差する方向を向いている。また、遅相軸AX1,AX2は、遅相軸AX1と遅相軸AX2との水平方向の二等分線が中心線L1と平行な方向を向くような方向に向いていることが好ましい。
【0047】
遅相軸AX1,AX2は、例えば、図8(A),(B)に示したように、液晶表示パネル20の偏光子21Bの偏光軸AX4とも交差する方向を向いている。なお、図8(A),(B)は、偏光子21Bの偏光軸AX4と、位相差層33の遅相軸AX1,AX2と、偏光眼鏡2の遅相軸AX5〜AX8(後述)との関係の一例を模式的に表したものである。さらに、遅相軸AX1は、例えば、偏光眼鏡2の右目用位相差フィルム41B(後述)の遅相軸AX5の向きと同一の方向か、またはその方向と対応する方向を向いており、偏光眼鏡2の左目用位相差フィルム42B(後述)の遅相軸AX6の向きと異なる方向を向いている。一方、遅相軸AX2は、例えば、遅相軸AX6の向きと同一の方向か、またはその方向と対応する方向を向いており、遅相軸AX5の向きと異なる方向を向いている。
【0048】
位相差層33は、例えば、重合した高分子液晶材料を含んで構成されている。すなわち、位相差層33では、液晶分子の配向状態が固定されている。高分子液晶材料としては、相転移温度(液晶相−等方相)、液晶材料の屈折率波長分散特性、粘性特性、プロセス温度などに応じて選定された材料が用いられる。ただし、高分子液晶材料は、重合基としてアクリロイル基あるいはメタアクリロイル基を有していることが、透明性の観点から好ましい。また、高分子液晶材料として、重合性官能基と液晶骨格との間にメチレンスペーサのない材料を用いることが好ましい。プロセス時の配向処理温度を低くすることができるためである。位相差層33の厚みは、例えば1μm〜2μmである。なお、位相差層33が、重合した高分子液晶材料を含んで構成されている場合に、位相差層33が、重合した高分子液晶材料だけで構成されている必要はなく、その一部に未重合の液晶性モノマを含んでいてもよい。位相差層33に含まれる未重合の液晶性モノマは、後述の配向処理(加熱処理)によって、その周囲に存在する液晶分子の配向方向と同様の方向に配向しており、高分子液晶材料の配向特性と同様の配向特性を有しているからである。
【0049】
位相差層33において、溝V1と右目用領域33Aとの界面付近では、液晶分子の長軸が、溝V1の延在方向に沿うように配列しており、溝V2と左目用領域33Bとの界面付近では、液晶分子の長軸が、溝V2の延在方向に沿うように配列している。すなわち、溝V1および溝V2の形状および延在方向により、液晶分子の配向が制御され、右目用領域33Aおよび左目用領域33Bの光学軸が設定される。
【0050】
また、位相差層33において、右目用領域33Aおよび左目用領域33Bの構成材料や厚みを調整することにより、右目用領域33Aおよび左目用領域33Bのリタデーション値が設定される。このリタデーション値は、基材フィルム31が位相差を有する場合には、基材フィルム31の位相差をも考慮して設定されることが好ましい。なお、本実施の形態では、右目用領域33Aおよび左目用領域33Bは互いに同一の材料および厚みにより構成され、これにより、リタデーションの絶対値が互いに等しくなっている。
【0051】
光吸収層34は、液晶表示パネル20の各画素から射出された映像光のうち、隣接する画素に対応する位相差領域(右目用領域33Aまたは左目用領域33B)に向かって漏れ出る光(漏れ光)を吸収するものである。光吸収層34は、例えば、図1、図2、図5に示したように、各帯状凸部32Aの上面S1上に設けられている。ここで、製造工程において各領域32Bに液晶層33D(後述)を形成する際に、帯状凸部32Aの上面S1を含む表面全体に液晶層33Dを形成した場合には、光吸収層34は、例えば、図9に示したように、帯状凸部32Aの上面S1に、位相差層33のうち右目用領域33Aまたは左目用領域33Bとは異なる部分33Cを介して配置されている。一方、製造工程において各領域32Bにだけ液晶層33Dを形成した場合には、光吸収層34は、例えば、図2に示したように、帯状凸部32Aの上面S1に接して配置されている。なお、液晶層33Dは、光吸収層34を選択的に形成した後に、位相差領域(右目用領域33Aまたは左目用領域33B)を含む表面全体に形成されたものであってもよい。この場合には、図示しないが、光吸収層34上にも液晶層33Dが残存して配置されることになる。
【0052】
(偏光眼鏡2)
次に、偏光眼鏡2について説明する。図10は、偏光眼鏡2の構成の一例を、表示装置1と共に斜視的に表したものである。偏光眼鏡2は、観察者(図示せず)の眼球の前に装着されるものであり、映像表示面に映し出される映像を観察する際に観察者によって用いられるものである。この偏光眼鏡2は、例えば、図10に示したように、右目用眼鏡41および左目用眼鏡42を有している。
【0053】
右目用眼鏡41および左目用眼鏡42は、表示装置1の映像表示面と対向した状態で用いられる。なお、これら右目用眼鏡41および左目用眼鏡42は、図10に示したように、できるだけ一の水平面内に配置した状態で用いられることが好ましいが、多少傾いた平坦面内に配置した状態で用いられてもよい。
【0054】
右目用眼鏡41は、例えば、偏光板41Aおよび右目用位相差フィルム41Bを有している。一方、左目用眼鏡42は、例えば、偏光板42Aおよび左目用位相差フィルム42Bを有している。右目用位相差フィルム41Bは、偏光板41Aの表面であって、かつ液晶表示パネル20から射出された光Lの入射側に設けられたものである。左目用位相差フィルム42Bは、偏光板42Aの表面であって、かつ光Lの入射側に設けられたものである。
【0055】
偏光板41A,42Aは、偏光眼鏡2の光射出側に配置されており、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。例えば、図8(A),(B)に示したように、偏光板41A,42Aの偏光軸AX7,AX8はそれぞれ、偏光板21Bの偏光軸AX4と直交する方向を向いている。偏光軸AX7,AX8はそれぞれ、例えば、図8(A)に示したように、偏光板21Bの偏光軸AX4が垂直方向を向いている場合には水平方向を向いており、例えば、図8(B)に示したように、偏光板21Bの偏光軸AX4が水平方向を向いている場合には垂直方向を向いている。
【0056】
右目用位相差フィルム41Bおよび左目用位相差フィルム42Bは、光学異方性を有する薄い層である。これらの位相差フィルムの厚さは、例えば、30μm以上200μm以下であることが好ましい。また、これらの位相差フィルムとしては、光学異方性の小さい、つまり複屈折の小さいものが好ましい。そのような特性を持つ樹脂フィルムとしては、例えば、COP(シクロオレフィンポリマー)、PC(ポリカーボネート)などが挙げられる。ここで、COPとしては、例えば、ゼオノアやゼオネックス(日本ゼオン社の登録商標)、アートン(JSR社の登録商標)などがある。右目用位相差フィルム41Bの遅相軸AX5および左目用位相差フィルム42Bの遅相軸AX6は、図8(A),(B)に示したように、水平方向および垂直方向のいずれの方向とも交差する方向を向いており、偏光板41A,42Aの偏光軸AX7,AX8とも交差する方向を向いている。また、遅相軸AX5,AX6は、遅相軸AX5,AX6との垂直方向の二等分線が中心線L1と直交する方向を向くような方向に向いていることが好ましい。また、遅相軸AX5は、遅相軸AX1の向きと同一の方向か、またはその方向と対応する方向を向いており、遅相軸AX2の向きと異なる方向を向いている。一方、遅相軸AX6は、遅相軸AX2と同一の方向か、またはその方向と対応する方向を向いており、遅相軸AX1の向きと異なる方向を向いている。
【0057】
(リタデーション)
図11(A),(B)〜図14(A),(B)を参照して、位相差素子30と偏光眼鏡2のリタデーションについて説明する。図11(A),(B)および図12(A),(B)は、位相差層33の右目用領域33Aに入射した右目用画像光L2のみに着目し、偏光眼鏡2を介して、光L2が左右の目でどのように認識されるかを示した概念図である。また、図13(A),(B)および図14(A),(B)は、位相差層33の右目用領域33Bに入射した左目用画像光L3のみに着目し、偏光眼鏡2を介して、光L3が左右の目でどのように認識されるかを示した概念図である。なお、実際には、右目用画像光L2および左目用画像光L3は、混在した状態で出力されるが、図11(A),(B)〜図14(A),(B)では、説明の便宜上、右目用画像光L2と左目用画像光L3を別個に分けて記述した。
【0058】
ところで、偏光眼鏡2を用いて観察した場合に、例えば、図11(A),(B)、図12(A),(B)に示したように、右目には右目用画素の画像が認識でき、左目には右目用画素の画像が認識できないようにすることが必要である。また、同時に、例えば、図13(A),(B)、図14(A),(B)に示したように、左目には左目用画素の画像が認識でき、右目には左目用画素の画像が認識できないようにすることが必要である。そのためには、以下に示したように、右目用領域33Aおよび右目用位相差フィルム41Bのリタデーションならびに左目用領域33Bおよび左目用位相差フィルム42Bのリタデーションを設定することが好ましい。
【0059】
具体的には、右目用領域33Aおよび左目用領域33Bのリタデーションのうち一方が+λ/4となっており、他方が−λ/4となっていることが好ましい。ここで、リタデーションの符号が逆になっているのは、それぞれの遅相軸の向きが90°異なることを示している。このとき、右目用位相差フィルム41Bのリタデーションは右目用領域33Aのリタデーションと同一となっていることが好ましく、左目用位相差フィルム42Bのリタデーションは左目用領域33Bのリタデーションと同一となっていることが好ましい。
【0060】
[位相差素子30の製造方法]
次いで、位相差素子30の製造方法の一例について説明する。最初に、いわゆる2P成型法(Photo Polymerization:光硬化を利用した成型法)により基材100(基材フィルム31および凹凸層32からなる基材)を製造する場合について説明する。その後、基材100を利用して位相差素子30を製造する方法について説明する。
【0061】
図15は、2P成型法により基材100を製造する装置の一例を表したものである。2P成型法では、例えば、基材フィルム31上に、エネルギーを受けて硬化する樹脂材料を塗布して樹脂層を形成し、形成した樹脂層の上から凹凸層32の反転パターンを有する型を押し当てる。この後、エネルギーを与えて樹脂層を硬化させることにより、型のパターンを樹脂層の表面に転写する。
【0062】
図15に記載の製造装置は、巻き出しロール200と、ガイドロール220,230,250,260と、ニップロール240と、型ロール210と、巻き取りロール270と、吐出機280と、紫外線照射機290とを備えたものである。ここで、巻き出しロール200は、基材フィルム31を同心円状に巻いたものであり、基材フィルム31を供給するためものである。巻き出しロール200から巻き出された基材フィルム31は、ガイドロール220、ガイドロール230、ニップロール240、型ロール210、ガイドロール250、ガイドロール260の順に流れて行き、最後に巻き取りロール270で巻き取られるようになっている。ガイドロール220,230は、巻き出しロール200から供給された基材フィルム31をニップロール240に導くためのものである。ニップロール240は、ガイドロール230から供給された基材フィルム31を型ロール210に押し当てるものである。型ロール210は、ニップロール240と所定の間隙を介して配置されている。型ロール210の周面には、凹凸層32の反転パターンが形成されている。ガイドロール250は、型ロール210に巻きついている基材100を剥がすためのものである。また、ガイドロール260は、ガイドロール250によって剥がされた基材100を巻き取りロール270に導くためのものである。吐出機280は、巻き出しロール200から供給された基材フィルム31のうちガイドロール230と接する部分と所定の間隙を介して設けられている。吐出機280は、紫外線や電子線で硬化する液状の樹脂材料に光重合開始剤などの添加物が必要に応じて添加された組成物32Eを、基材フィルム31上に滴下するようになっている。紫外線照射機290は、巻き出しロール200から供給された基材フィルム31のうちニップロール240を通過した後の部分であって、かつ型ロール210と接している部分に対して紫外線を照射するようになっている。なお、紫外線照射機290に代えて、他のエネルギー線照射機などを設けてもよい。
【0063】
なお、上記型ロール210の材料としては、例えば、NiP、銅(Cu)およびステンレスなどの金属材料や、石英、シリコン、炭化ケイ素、サファイアなどを用いることができる。型ロール210は、このような材料よりなる母材(マザーロール)の表面に、帯状凸部32Aの第1の反転パターン(溝)を加工した後に、配向領域32B,32Cの第2の反転パターンを加工して形成する。第1の反転パターンは、例えば、単結晶ダイヤモンドバイトや超硬工具などで母材表面に切削加工を行うことにより形成することができる。なお、バイトでの切削加工に代えて、レーザ加工法、フォトリソグラフィを用いたエッチング加工法、固定砥粒や遊離砥粒による加工時の加工痕を用いた方法などにより第1の反転パターンを形成してもよい。また、第2の反転パターンは、例えば、ラビング布で傷を付けることにより形成することができる。なお、ラビング加工に代えて、例えば、上記の加工法を用いて、第2の反転パターンを形成してもよい。また、転写用の型としては、本実施の形態のようなロール状の型ロール210を用いてもよいが、平板状の型を用いるようにしてもよい。但し、ロール状の型を用いた方が、量産性を向上させることができる。
【0064】
なお、転写用の型のパターンを、フォトリソグラフィを用いて形成する場合には、例えば、電子線や2光束干渉法などが用いられる。これらのうち、電子線を用いたリソグラフィは、母材の表面にレジストを塗布したのち、マスクを介して電子線を照射することによりパターンを描画し、現像工程およびエッチング工程等を経て、所望のパターンを形成するものである。また、2光束干渉法を用いたリソグラフィは、2つのレーザ光を干渉させて照射することにより干渉縞を発生させ、この干渉縞を利用したリソグラフィによりパターンを形成するものである。
【0065】
また、転写用の型のパターンを、レーザ加工によって作製する場合には、例えば、型のパターンを、例えば、SUS、Ni、Cu、Al、Feなどの金属等に、パルス幅が1ピコ秒(10-12秒)以下の超短パルスレーザ、いわゆるフェムト秒レーザを用いてパターンを描画することにより形成する。このとき、レーザ波長、繰り返し周波数、パルス幅、ビームスポット形状、偏光、サンプルへ照射するレーザ強度、レーザの走査速度等を適宜設定することにより、所望の凹凸を有するパターンを形成することができる。レーザ加工に用いるレーザの波長は、例えば800nmである。ただし、レーザ加工に用いるレーザの波長は、400nmや266nmなどでもかまわない。繰り返し周波数は、加工時間を考慮すると大きいほうが好ましいが、繰り返し周波数が1000Hzや2000Hzであっても加工は可能である。パルス幅は短い方が好ましく、200フェムト秒(10-15秒)〜1ピコ秒(10-12秒)程度であることが好ましい。型へ照射されるレーザのビームスポットは、例えば四角形形状である。ビームスポットの整形は、例えば、アパーチャーやシリンドリカルレンズ等によって行うことが可能である。また、ビームスポットの強度分布は、に形成する凹凸の深さなどの面内分布を均一化するため、できるだけ均一であることが好ましい。
【0066】
上述したように、転写用の型のパターンを、フェムト秒レーザを用いて、そのビームスポット形状を制御して描画することにより、一度の照射でパターンをそれぞれ一括して形成することができる。また、フェムト秒レーザを用いた場合には、偏光方向に直交する方向に沿って延在するように凸(凹)部が形成されるため、偏光の制御によって容易に位相差板の溝方向を設定することができる。よって、製造プロセスの簡易化に有利となる。また、型の大面積化にも対応し易くなる。
【0067】
ところで、本実施の形態でのフェムト秒レーザにて形成されたパターンは、所望の周期構造を有するが、その周期や凹凸の方向に若干の揺らぎ(すなわち、揺らいだ周期構造)を有していてもよい。例えば、複数の溝によって形成されたパターンは、揺らいだ周期構造を有し、周期構造は、凹凸のピッチにおいて2〜10%の広がりを有し、凹凸の角度において3〜8°の広がりを有することが好ましい。本変形例の揺らぎを有するパターンが形成された型を使い、基材に転写を行った場合には、基材にも揺らぎのある凹凸形状が転写されることになる。
【0068】
図15に記載の製造装置を用いて、基材100を形成する。具体的には、まず、巻き出しロール200から巻き出した基材フィルム31を、ガイドロール220を介してガイドロール230に導いたのち、基材フィルム31上に、組成物32Eを吐出機280から滴下する。組成物32Eの種類は特に限定されないが、転写性を考慮すると、樹脂材料が用いられる。吐出機280から滴下された組成物32Eをニップロール240で、基材フィルム31を介して型ロール210の周面に押し当てる。これにより、組成物32Eが型ロール210の周面に隙間無く接し、組成物32Eに、型ロール210の周面に形成された凹凸形状が転写される。
【0069】
その後、紫外線照射機290から、凹凸形状の転写された組成物32Eに対して紫外線UVを照射する。これにより、組成物32Eに含まれる樹脂材料が硬化するので、組成物32Eに、型ロール210の周囲に形成された凹凸形状が転写され、凹凸層32が形成される。最後に、ガイドロール250で、基材フィルム31を型ロール210から剥離したのち、ガイドロール260を介して巻き取りロール270に巻き取る。このようにして、基材フィルム31の表面に凹凸層32を有する基材100が形成される。
【0070】
なお、基材フィルム31が紫外線UVを透過しない材料である場合には、型ロール210を、紫外線UVを透過する材料(例えば石英)で構成し、型ロール210の内部から組成物32Eに対して紫外線UVを照射するようにしてもよい。
【0071】
次に、上述した方法により製造された基材100を利用して位相差素子30を製造する方法の一例について、光転写法を用いる場合と、熱転写法を用いる場合と、グラビア印刷法を用いる場合とに分けて説明する。
【0072】
(光転写法)
まず、基材100を用意する(図16(A))。また、転写シート300(転写箔)を用意する(図16(B))。基材100は、その表面を複数の領域に分離する凸部を有している。例えば、基材100は、基材フィルム31の表面に凹凸層32を有する基材である。転写シート300は、基材310上に、順に剥離層320、および光吸収材を含む着色層330を有している。基材100および転写シート300は、巻き出しロール410,460(図17、図18参照)に巻いた状態で用意する。次に、巻き出しロール410から巻き出した基材100上に、液晶33Eを吐出機420から滴下して、液晶層33Dを形成する(図17)。ここで、液晶層33Dは、例えば、液晶性モノマを含んでいる。この液晶層33Dには、紫外線や電子線で硬化する液状の樹脂材料、および光重合開始剤などの添加物が必要に応じて添加されている。
【0073】
続いてヒータ430を用いて、基材100の表面に塗布された液晶層33Dの液晶性モノマの配向処理(加熱処理)を行った後、液晶層33Dを液晶の相転移温度よりも少し低い温度まで徐冷する(図17)。これにより、液晶性モノマは、基材100の表面に形成された複数の微細な溝V1,V2のパターンに応じて配向する。
【0074】
次に、紫外線照射機490を用いて、配向処理後の液晶層33Dに対してUV光を照射し、液晶層33D内の液晶性モノマを重合・硬化させる(図17)。なお、このとき、処理温度は、一般的に室温付近であることが多いが、リタデーション値を調整するために温度を液晶の相転移温度以下の温度まで上げてもよい。これにより、複数の複数の微細な溝V1,V2のパターンに沿って液晶分子の配向状態が固定され、位相差層33(右目用領域33Aおよび左目用領域33B)が形成される。
【0075】
続いて、吐出機440を用いて、位相差層33の表面全体、または位相差層33のうち少なくとも凹凸層32に対応する部分に、UV硬化樹脂層33F(エネルギーを受けて硬化する接着層)を塗布したのち、ヒータ450を用いて、UV硬化樹脂層33Fに含まれる溶剤を揮発させ、UV硬化樹脂層33Fを乾燥させる(図17)。
【0076】
次に、巻き出しロール460から巻き出した転写シート300をガイドロール470に導いたのち、ニップロール480を用いて、転写シート300を、UV硬化樹脂層33Fを介して基材100に貼り付ける(図18)。これにより、例えば、図19に示したように、転写シート300の着色層330がUV硬化樹脂層33Fのうち各帯状凸部32Aの直上に対応する部分にだけ接触する。その後、紫外線照射機490を用いて、UV硬化樹脂層33Fを硬化させる(図18)。
【0077】
次に、ガイドロール500で、転写シート300を基材100から剥離する。これにより、転写シート300の着色層330がUV硬化樹脂層33Fのうち各帯状凸部32Aの直上に対応する部分にだけ付着(残留)し、例えば、図20に示したように、各帯状凸部32Aの直上に光吸収層34が形成される。以上のようにして、光転写法によって位相差素子30が完成する。最後に、剥離した転写シート300をロール510に巻き取るとともに、位相差素子30を巻き取りロール520に巻き取る。
【0078】
(熱転写法)
熱転写法では、基材100上に位相差層33を形成するところまでは、上記の光転写法の工程と同様である。なお、熱転写法の場合には、一般的には、転写シート300の着色層330の表面に、予め熱可塑性樹脂層540A(いわゆるホットメルト型の接着用樹脂層)が設けられている(図21)。
【0079】
続いて、ヒートロール560およびニップロール570で、転写シート300および基材100等を所定の圧力および所定の温度で挟み込み、転写シート300を、熱可塑性樹脂層540Aを介して基材100に貼り付ける。このとき、熱可塑性樹脂層540Aにエネルギーを与えて熱可塑性樹脂層540Aを軟化させ、さらに熱可塑性樹脂層540Aに転写シート300を接触させた状態で冷却することにより熱可塑性樹脂層540Aを硬化させ、各帯状凸部32Aの上面に、熱可塑性樹脂層540Aを介して転写シート300を貼り付ける。これにより、転写シート300の着色層330が熱可塑性樹脂層540Aを介して、基材100の各帯状凸部32Aの直上に対応する部分にだけ接触する。
【0080】
なお、転写シート300は、図21に示すように、熱源、すなわちヒートロール560側から見て、基材310、剥離層320、着色層330、熱可塑性樹脂層540A(接着層)となるように、巻き出しロール460およびガイドロール550を介して供給されることが好ましい。このように、剥離層320がヒートロール560に近い側にあるほうが、後の剥離工程で剥離しやすくなるからである。
【0081】
次に、ガイドロール500で、転写シート300を基材100から剥離する。これにより、転写シート300の着色層330が凹凸層32のうち各帯状凸部32Aの直上に対応する部分にだけ付着(残留)し、各帯状凸部32Aの直上に光吸収層34が形成される。以上のようにして、熱転写法によって位相差素子30が完成する。最後に、剥離した転写シート300をロール510に巻き取るとともに、位相差素子30を巻き取りロール520に巻き取る。
【0082】
(グラビア印刷法)
グラビア印刷法では、基材100上に位相差層33を形成するところまでは、上記の光転写法の工程と同様である。続いて、図22に示すように、光吸収材を含む着色層610が表面(周面)に付着した版胴ロール600を所定の圧力および所定の温度で基材100の帯状凸部32Aの上面S1に接触させるとともに、回転させる。これにより、着色層610が帯状凸部32Aの上面S1に塗布される。このとき、帯状凸部32Aの上面S1が、例えば、図23(A),(B)に示したように、凹面となっていることが好ましい。上面S1のくぼみ量は、帯状凸部32Aの高さが例えば10μm程度となっているときに、例えば、2〜3μm程度である。このようにした場合には、帯状凸部32Aの上面S1に、より多くの着色層610を付着させることができる。その結果、帯状凸部32Aの上面S1の着色層610の総体積が増加し、着色層610の光吸収性を増大させることができる。また、上面S1のくぼみに着色層610が溜まり易くなるので、着色層610が上面S1からはみ出すのを抑制することができる。
【0083】
ここで、本発明に係るグラビア印刷法を用いた位相差フィルムの実施例について説明する。まず、配向層を形成するための原盤ロール(材質はS45C)を用意し、その表面に無電解Ni−Pを100μm被覆し、表面粗さRaが50nm以下になるように研磨を行った。その後、画素ピッチに相当するピッチでロールの円周方向にマスキングを施し、ラビング布を取り付けた円筒を回転させながら押圧して配向形状を形成した。次にマスキングを外し、今度は既加工部分をマスキングで覆い、ラビング布の円筒を90度回転させて未加工部分に配向形状を加工した。このようにして、ロールの軸方向には交互に+λ/4、−λ/4に対応する配向層が隣接して形成された。次に単結晶ダイヤモンドバイトによって配向層の境界に幅250μm、ピッチ250μm、深さ5μmの略矩形溝を旋削加工で形成した。
【0084】
上記原盤ロールから紫外線硬化転写法によって配向層と矩形凸部が形成されているフィルムを作成した。基材フィルムには、厚み100μmのPETフィルムを使用した。更に、このフィルムへ紫外線硬化型液晶を塗布し、60〜80℃で加熱して液晶配向を促進させた後、紫外線を照射して配向状態を保持したまま硬化させた。
【0085】
黒色層は上記フィルムを用いてグラビアコータにて印刷した。塗料にはカーボン顔料をアクリル系メジウムに15wt%混合し、溶剤で希釈したものを使用した。フィルムへ塗工後は60〜90℃に設定した乾燥炉を通過させて溶剤分を除去した。作成したフィルムの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した結果、凸部上面に形成された黒色層の厚みは塗料乾燥後で約3μmであった。また、黒色層部分の光透過率を測定したところ、OD値は3.1であった。
【0086】
以上のように作成した位相差フィルムを40インチ液晶テレビのパネル前面に貼合した。これを、左右に各々±λ/4板を設けた偏光眼鏡で観察したところ、水平方向を0度とした上下視野角において、±15°から画像を観察してもゴースト現象のない立体感のある映像が確認された。
【0087】
なお、図示しないが、上記以外の印刷法を用いて、着色層330を基材100の各帯状凸部32Aの直上に対応する部分にだけ形成するようにしてもよい。上記以外の印刷法としては、例えば、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷など、一般的な印刷が挙げられる。
【0088】
ところで、上記実施形態または実施例で用いられる着色層(光吸収層)には、光吸収のために十分な隠蔽性が求められる。塗料に含まれる光吸収材としては一般的にカーボンブラック顔料が用いられるが、印刷性や硬化性などを考慮すると、顔料の含有率には上限がある。よって十分な光吸収性能を得るには塗膜厚を大きく取ることが重要であり、塗料の乾燥時の塗膜厚が3μm以上10μm以下程度は必要となる。すると、印刷時の塗布厚としてはこれ以上の数値が必要となる。しかし、この印刷工程では位相差層への塗料付着があってはならない。位相差層からの凸部高さが低すぎる場合、十分な隠蔽性を得るために塗布厚を厚くすると塗料が凸部上面から流れ落ちて位相差層へ付着してしまう。一方、凸部高さが高すぎると液晶を塗布する場合にエアの巻き込みから塗工面に気泡が発生して位相差素子を形成することができない。従って、位相差層からの凸部高さは3μm以上20μm以下となっていることが好ましく、3μm以上10μm以下となっていることがより好ましい。
【0089】
(位相差素子の製造方法の変形例)
なお、上記製造工程において、組成物32Eを滴下せずに、基材フィルム31に直接、原盤(型ロール210等)の反転パターンを転写して、凹凸パターンが転写された基材を完成させてもよい。この場合、上記の組成物32Eを滴下する工程を省略するほかは、上記製造方法と同様の方法で位相差素子30を作製することができる。本変形例に係る転写方法について以下に説明する。
【0090】
(変形例1)
例えば、基材フィルム31の熱変形による形状転写を使って、上記の凹凸パターンが転写された基材として基板700を作製することが可能である。この場合、基材フィルム31を、高温に加熱された板状の原盤に押し付けて、基材フィルム31の表面に直接、微細溝形状を形成する(図示せず)。具体的には、上記の板状の原盤の表面に基材フィルム31を直接配置した状態で、高温・真空雰囲気下にてプレスを行い、冷却後に原盤を剥離する。これにより、凹凸パターンが転写された基板700が形成される。なお、凹凸パターンが転写された基板700の製造方法以外については、上記製造方法と同様の方法で位相差素子30を作製することができる。
【0091】
(変形例2)
なお、上記とは異なる方法で基板700を作製してもよい。例えば、基材フィルム31の熱変形による形状転写を使って、基板700として単層構造のものを作製することが可能である。この場合、基材フィルム31を、高温に加熱された型ロール210に押し付けて、基材フィルム31の表面に直接、微細溝形状を形成する(図示せず)。図15に示すような製造装置を用いる場合、吐出機280による組成物32Eの滴下工程を省略して、基材フィルム31に直接、型ロール210の反転パターンを転写すればよい。あるいは、図24に示すように、高温に加熱された型ロール210と、ニップロール710とによって基材フィルム31を挟み込む比較的簡素な製造装置で、基材フィルム31に微細溝形状を形成する方法がある。このような方法によっても、凹凸パターンが転写された単層構造の基板700が形成される。なお、上記いずれの場合においても、凹凸パターンが転写された単層構造の基板700の製造方法以外については、上記製造方法と同様の方法で位相差素子30を作製することができる。
【0092】
(変形例3)
また、単層構造の基板700の製造方法に関して、図25に示すようにベルト状原盤720を基材フィルム31に押し付ける方法がある。図25に記載の製造装置は、例えば、ベルト状原盤720と、ベルト状原盤720の内側に配置された加熱ロール730および冷却ロール740とを備えている。この製造装置は、さらに、例えば、ニップロール750および対向ロール760と、巻き出しロール200と、巻き取りロール270とを備えている。
【0093】
ベルト状原盤720は、ニップロール750および対向ロール760と所定の間隙を介して配置されている。ベルト状原盤720の周面には、複数の微細溝42Aおよび複数の微細溝42Bの反転パターンが形成されている。ベルト状原盤720は、例えば、ニッケル、NiP、銅(Cu)およびステンレスなどの金属材料によって構成されている。加熱ロール730は、ベルト状原盤720を動作させるとともに、ベルト状原盤720を加熱するものである。冷却ロール740は、ベルト状原盤720を動作させるとともに、ベルト状原盤720を冷却するものである。ニップロール750および対向ロール760は、巻き出しロール200から巻き出された基材フィルム31を原盤720に押し当てるものである。ニップロール750は、ベルト状原盤720を介して加熱ロール730と対向配置されており、対向ロール740は、ベルト状原盤720を介して冷却ロール740と対向配置されている。
【0094】
巻き出しロール200から供給された基材フィルム31は、ベルト状原盤720のうち加熱ロール730によって加熱された部分とニップロール750とによって、加熱されるとともに押圧され、その結果、微細溝形状が基材フィルム31の表面に転写される。その後、基材フィルム31は、ベルト状原盤720のうち冷却ロール740によって冷却された部分と対向ロール760とによって冷却されるとともにベルト状原盤720から剥離される。このようにして、凹凸パターンが転写された単層構造の基板700が作製される。最後に、基板700は、巻き取りロール270に巻き取られる。
【0095】
なお、基材フィルム31の相転移温度(液晶相−等方相)をTg(℃)とした場合、加熱ロール730の温度Th(℃)は、基材フィルム31のうちベルト状原盤720と接している部分の温度が転写時にTg(℃)以上となるような温度となっている。Th(℃)は、例えば、Tg+60℃<Th<Tg+90℃を満たす温度となっていることが好ましい。また、冷却ロール740の温度Tc(℃)は、基材フィルム31のうちベルト状原盤720と接している部分の温度が剥離時にTg(℃)よりも低くなるような温度となっている。Tc(℃)は、例えば、Tc<Tgを満たす温度となっていることが好ましい。
【0096】
また、ベルト状原盤720は、シームレス(継ぎ目なし)であることが好ましい。例えば、凹凸形状を内面側に有する円筒状の樹脂原盤にニッケル等を電鋳方式により成長させたり、または、円筒状のロールに巻装して直接、精密切削加工を施して凹凸形状を形成したりすることにより、シームレスのベルト状原盤720を作製することが可能である。なお、ベルト状原盤720の製法は、これらに限定されるものではない。
【0097】
なお、基板700の製造方法以外については、上記製造方法と同様の方法で位相差素子30を作製することができる。
【0098】
また、図示しないが、基材フィルム31と凹凸層32は、直接接して設けられていてもよいし、他の層が介在して設けられていてもよい。他の層としては、基材フィルム31と凹凸層32の密着性を高めるためのアンカー層などが挙げられる。
【0099】
また、図示しないが、UV硬化樹脂層33F(UV硬化樹脂層33Fを設けない場合には、基材フィルム31)と位相差層33の間に、位相差層33を構成する所定の材料(例えば、上記液晶材料)の配向性を良好にするための無配向性薄膜を別途形成してもよい。これにより、複数の微細溝の表面に直接、液晶層33Dを形成した場合と比べて、複数の微細溝の表面の分子配向の影響が液晶層33Dに及ぶ割合を低減することができる。その結果、複数の微細溝の表面の分子が、微細溝の延在方向とは異なる方向に配向しているときであっても、液晶層33D(位相差層33)の配向方向を無配向性薄膜によって形成される窪みの延在方向に揃えることが可能となる。すなわち、液晶層33D(位相差層33)の配向方向を所望の方向に揃えることが可能となる。
【0100】
無配向性薄膜の形成方法としては、例えば、複数の微細溝の表面に、例えばUV硬化樹脂層を配置する。該UV硬化樹脂層は、上記UV硬化樹脂層33Fを構成するUV硬化樹脂層と同一材料であっても、異なる材料であってもよい。次に、該UV硬化樹脂層にUV光を照射して、硬化させる。これにより、複数の微細溝の表面に倣って無配向性薄膜が形成される。
【0101】
本実施の形態では、従来のように配向膜を用いて液晶分子を配向させる場合と異なり、高温での加熱処理を必要としないため、ガラス材料などに比べて、加工し易く、かつ安価な基材フィルム(例えば、樹脂フィルム)を用いることができる。
【0102】
[表示装置1の製造方法]
次に、表示装置1の製造方法の一例について説明する。まず、透明基板22、画素電極23、配向膜24、液晶層25、配向膜26、共通電極27、カラーフィルタ28および透明基板29を順に含んで構成された積層体(図示せず)を用意する。次に、この積層体の透明基板22側の表面に、偏光板21Aを貼り付けるとともに、この積層体の透明基板29側の表面に、偏光板21Bを貼り付ける。このようにして、液晶表示パネル20が完成する。次に、偏光板21B上に、位相差素子30を貼り付けた後、液晶表示パネル20の偏光板21A側に、バックライトユニット10を取り付ける。このようにして、表示装置1が完成する。
【0103】
[基本動作]
次に、本実施の形態の表示装置1において画像を表示する際の基本動作の一例について、図11(A),(B)〜図14(A),(B)を参照しつつ説明する。
【0104】
まず、バックライト10から照射された光が液晶表示パネル20に入射している状態で、映像信号として右目用画像および左目用画像を含む視差信号が液晶表示パネル20に入力される。すると、奇数行の画素から右目用画像光L2が出力され(図11(A),(B)または図12(A),(B))、偶数行の画素から左目用画像光L3が出力される(図13(A),(B)または図14(A),(B))。
【0105】
その後、右目用画像光L2および左目用画像光L3は、位相差素子30の右目用領域33Aおよび左目用領域33Bによって楕円偏光に変換され、位相差素子30の基材フィルム31を透過したのち、表示装置1の画像表示面から外部に出力される。その後、表示装置1の外部に出力された光は、偏光眼鏡2に入射し、右目用位相差フィルム41Bおよび左目用位相差フィルム42Bによって楕円偏光から直線偏光に戻されたのち、偏光眼鏡2の偏光板41A,42Aに入射する。
【0106】
このとき、偏光板41A,42Aへの入射光のうち右目用画像光L2に対応する光の偏光軸は、偏光板41Aの偏光軸AX7と平行となっており、偏光板42Aの偏光軸AX8と直交している。従って、偏光板41A,42Aへの入射光のうち右目用画像光L2に対応する光は、偏光板41Aだけを透過して、観察者の右目に到達する(図11(A),(B)または図12(A),(B))。
【0107】
一方、偏光板41A,42Aへの入射光のうち左目用画像光L3に対応する光の偏光軸は、偏光板41Aの偏光軸AX7と直交しており、偏光板42Aの偏光軸AX8と平行となっている。従って、偏光板41A,42Aへの入射光のうち左目用画像光L3に対応する光は、偏光板42Aだけを透過して、観察者の左目に到達する(図13(A),(B)または図14(A),(B))。
【0108】
このようにして、右目用画像光L2に対応する光が観察者の右目に到達し、左目用画像光L3に対応する光が観察者の左目に到達した結果、観察者は表示装置1の映像表示面に立体画像が表示されているかのように認識することができる。
【0109】
[効果]
本実施の形態では、帯状凸部32Aの上面S1に設けられた光吸収層34が印刷または箔転写により形成されている。これにより、製造過程において、光吸収層34を基材100に形成する際に高精度な位置合わせが不要となるので、簡易な方法でクロストークを低減することができる。また、高精度な位置合わせが不要であることから、高い生産歩留まりが得られ、しかも低コストでの製造が可能である。
【0110】
また、本実施の形態では、凹凸層32(基材100)に設けられた帯状凸部32Aの上面に、光吸収材を含む着色層330を転写することにより、光吸収層34が形成される(図19、図20)。そのため、光吸収層34の厚さは、転写前の着色層330の厚さで決定されており、帯状凸部32Aの上面全体で均一となっている。これにより、光吸収層34のOD値を面内で均一にすることができる。ここで、OD値は、
OD=−logT (Tは透過率、T=0〜1.0)
で定義される。OD値の測定には、日本分光(株)製分光光度計V−550を用いた。
【0111】
OD値としては、例えば2.5以上、好ましくは3.0以上、さらに好ましくは3.5以上となっている。その結果、光吸収層34のOD値の不均一性に起因するクロストークを効果的に防止することができる。なお、参考例として、光吸収層34のOD値が1.8と低い値の場合には、光吸収層34が形成された基材(全厚約2mm)は半透過性を有してしまい、十分な遮光性を得られない。
【0112】
本実施の形態では、光吸収層34が帯状凸部32Aの上面への転写によって形成されているので、光吸収材が基材または基材上に設けられた層に直接貼り合わせによって形成されるときのような高精度な位置合わせを必要としない。従って、高い生産歩留まりが得られ、しかも低コストでの製造が可能である。
【0113】
<変形例>
また、上記実施の形態では、位相差素子30が偏光板21B上に設けられている場合が例示されていたが、それ以外の場所に設けられていてもよく、位相差素子30が、例えば、図示しないが、偏光板21Bと透明基板22との間に設けられていてもよい。このような構成の表示装置1では、バックライトユニット10から発せられた光は、偏光板21Aへ入射すると、水平方向の偏光成分のみが透過されて、位相差素子30に入射する。位相差素子30を透過した光は、液晶表示パネル20および偏光板21Bを順に透過して、垂直方向の偏光成分として射出される。これにより、2次元表示がなされる。ここで、位相差素子30が配置されていることにより、斜め方向からみた場合の液晶の位相差が補償され、黒表示の際の斜め方向の漏れ光や色づきを低減することができる。すなわち、位相差素子30を、AプレートやCプレートなどの視野角補償フィルムとして用いることができる。
【0114】
本変形例にかかる表示装置1は、例えば、以下のようにして製造することが可能である。まず、透明基板22、画素電極23、配向膜24、液晶層25、配向膜26、共通電極27、カラーフィルタ28および透明基板29を順に含んで構成された積層体(図示せず)を用意する。次に、この積層体の透明基板22側の表面に、偏光板21Aを貼り付けるとともに、この積層体の透明基板29側の表面に、位相差素子30を貼り付ける。次に、位相差素子30上に、偏光板21Bを貼り付けた後、偏光板21B上に、バックライトユニット10を取り付ける。このようにして、本変形例にかかる表示装置1が完成する。
【0115】
上記実施の形態では、位相差素子30には、遅相軸の向きが互いに異なる二種類の位相差領域(右目用領域33A,左目用領域33B)が設けられていたが、遅相軸の向きが互いに異なる三種類以上の位相差領域が設けられていてもよい。例えば、図示しないが、位相差素子30に、右目用領域33A,左目用領域33Bのほかに、これら右目用領域33Aおよび左目用領域33Bの遅相軸AX1,AX2の向きとは異なる向きの遅相軸を有する第3の領域を新たに設けることも可能である。
【0116】
また、上記実施の形態では、位相差素子30の位相差領域(右目用領域33A,左目用領域33B)が水平方向に延在している場合が例示されていたが、それ以外の方向に延在していてもかまわない。例えば、図示しないが、位相差素子30の位相差領域(右目用領域33A,左目用領域33B)が垂直方向に延在していていてもよい。
【0117】
また、上記実施の形態および変形例では、位相差素子30の位相差領域(右目用領域33A,左目用領域33B)が位相差素子30の水平方向もしくは垂直方向全体に渡って延在している場合が例示されていたが、例えば、図示しないが、水平方向および垂直方向の双方に2次元配置されていてもよい。
【0118】
また、上記実施の形態および各変形例では、位相差素子30を表示装置1に適用した場合が例示されていたが、他のデバイスに適用することももちろん可能である。
【0119】
以上では、偏光眼鏡2が円偏光タイプであり、表示装置1としては円偏光眼鏡用の表示装置である場合について説明をしたが、偏光眼鏡2が直線偏光タイプであり、表示装置1として直線偏光眼鏡用の表示装置である場合についても適用できる。
【0120】
なお、本明細書において、「均一」、「平行」、「直交」、「垂直」、「同一の方向」という場合には、本発明の効果を損なわない限度において、それぞれが、略均一、略平行、略直交、略垂直、略同一の方向の場合を含むものとする。例えば、製造誤差、バラツキ等の諸要因に起因する誤差を含んでもよいものとする。
【0121】
また、上記実施の形態等では、凹凸層32の帯状凸部32Aが液晶表示パネル20と反対側を向くように形成されていたが、例えば、図26に示したように、液晶表示パネル20側を向くように形成されていてもよい。このようにした場合には、光吸収層34が位相差素子30のうち液晶表示パネル20側に配置され、液晶表示パネル20の画素に近くなる。その結果、上記実施の形態の場合よりも、画像のクロストークをより効果的に防止することができる場合がある。
【0122】
(光吸収層付き基材)
また、本発明に係る、光吸収材を含む着色層を基材に転写して、光吸収層を有する基材を作製する方法は、位相差素子以外のものを製造する方法にも適用可能である。また、本発明に係る、光吸収層を有する基材は、位相差素子以外のものにも適用可能である。以下に、光吸収層付き基板の一実施の形態と、光吸収層付き基板の製造方法の一実施の形態について説明する。
【0123】
[光吸収層付き基板50]
光吸収層付き基板50は、例えば、図27に示したように、基材フィルム31、凹凸層32、および光吸収層34を有しており、位相差素子30に含まれていた位相差層33を有していない。光吸収層付き基板50は、位相差素子30以外にも、光学フィルタなどに適用することができる。その場合には、位相差層33に代えて、適宜必要な光学層を設ければよい。
【0124】
[光吸収層付き基板50の製造方法]
次に、光吸収層付き基板50の製造方法の一例について、光転写法を用いる場合と、熱転写法を用いる場合とに分けて説明する。
【0125】
(光転写法)
まず、基材100(第1の基材)と、転写シート300を用意する(図16(A),(B))。いわゆる2P成型法により、基材100(例えば、基材フィルム31および凹凸層32からなる基材、あるいは、基材フィルム31に直接凹凸が転写された基材)を製造するまでは、上記位相差素子の製造方法で説明したのと同様である(図15参照)。転写シート300(転写箔)は、基材310上に、順に剥離層320、および光吸収材を含む着色層330を有している。基材100および転写シート300は、巻き出しロール(図示せず)に巻いた状態で用意する。次に、吐出機440を用いて、巻き出しロール410から巻き出した基材100の表面全体、または基材100ののうち少なくとも凹凸層32に対応する部分に、UV硬化樹脂層33F(エネルギーを受けて硬化する接着層)を塗布したのち、ヒータ450を用いて、UV硬化樹脂層33Fに含まれる溶剤を揮発させ、UV硬化樹脂層33Fを乾燥させる(図28)。
【0126】
次に、巻き出しロール460から巻き出した転写シート300をガイドロール470に導いたのち、ニップロール480を用いて、転写シート300を、UV硬化樹脂層33Fを介して基材100に貼り付ける(図29)。これにより、例えば、図30に示したように、転写シート300の着色層330がUV硬化樹脂層33Fのうち各帯状凸部32Aの直上に対応する部分にだけ接触する。その後、紫外線照射機490を用いて、UV硬化樹脂層33Fを硬化させる(図29)。
【0127】
次に、ガイドロール500で、転写シート300を基材100から剥離する。これにより、転写シート300の着色層330がUV硬化樹脂層33Fのうち各帯状凸部32Aの直上に対応する部分にだけ付着(残留)し、例えば、図31に示したように、各帯状凸部32Aの直上に光吸収層34が形成される。以上のようにして、光転写法によって光吸収層付き基板50が完成する。最後に、剥離した転写シート300をロール510に巻き取るとともに、光吸収層付き基板50を巻き取りロール520に巻き取る。
【0128】
(熱転写法)
熱転写法では、基材100上に凹凸層32を形成するところまでは、上記の光転写法の工程と同様である。なお、熱転写法の場合には、一般的には、転写シート300の着色層330の表面に、予め熱可塑性樹脂層540A(いわゆるホットメルト型の接着用樹脂層)が設けられている(図32)。
【0129】
続いて、ヒートロール560およびニップロール570で、転写シート300および基材100等を所定の圧力および所定の温度で挟み込み、転写シート300を、熱可塑性樹脂層540Aを介して基材100に貼り付ける。このとき、熱可塑性樹脂層540Aにエネルギーを与えて熱可塑性樹脂層540Aを軟化させ、さらに熱可塑性樹脂層540Aに転写シート300を接触させた状態で冷却することにより熱可塑性樹脂層540Aを硬化させ、各帯状凸部32Aの上面に、熱可塑性樹脂層540Aを介して転写シート300を貼り付ける。これにより、転写シート300の着色層330が熱可塑性樹脂層540Aを介して、基材100の各帯状凸部32Aの直上に対応する部分にだけ接触する。
【0130】
次に、ガイドロール500で、転写シート300を基材100から剥離する。これにより、転写シート300の着色層330が凹凸層32のうち各帯状凸部32Aの直上に対応する部分にだけ付着(残留)し、各帯状凸部32Aの直上に光吸収層34が形成される。以上のようにして、熱転写法によって光吸収層付き基板50が完成する。最後に、剥離した転写シート300をロール510に巻き取るとともに、光吸収層付き基板50を巻き取りロール520に巻き取る。
【符号の説明】
【0131】
1…表示装置、2…偏光眼鏡、10…バックライトユニット、20…液晶表示パネル、21A,21B,41A,42A…偏光板、22,29…透明基板、23…画素電極、24,26…配向膜、25…液晶層、27…共通電極、28…カラーフィルタ、28A…フィルタ部、28B…ブラックマトリクス部、30…位相差素子、31…基材フィルム、32…凹凸層、32A…帯状凸部、32B…帯状領域、32C,33A…右目用領域、32D,33B…左目用領域、33…位相差層、33D…液晶層、33E…液晶、33F…UV硬化樹脂層、34…光吸収層、41…右目用眼鏡、41B…右目用位相差フィルム、42…左目用眼鏡、42B…左目用位相差フィルム、50…光吸収層付き基材、100,310,700…基材、200,410,460…巻き出しロール、210…型ロール、220,230,250,260,470,500,550…ガイドロール、240,480,570,710,750…ニップロール、270,510,520…巻き取りロール、280,420,440,540…吐出機、290,490,530…紫外線照射機、300…転写シート、320…剥離層、330,610…着色層、430,450…ヒータ、540A…熱可塑性樹脂層、560…ヒートロール、600…版胴ロール、720…ベルト状原盤、730…加熱ロール、740…冷却ロール、760…対向ロール、L…光、L2…右目用画像光、L3…左目用画像光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遅相軸の向きが互いに異なる二種類以上の位相差領域を有する位相差層と、
前記位相差領域を種類ごとに分離する凸部を有する基材と、
前記凸部の上面に設けられ、かつ印刷または箔転写により形成された光吸収材と
を備えた位相差素子。
【請求項2】
前記凸部の上面は、凹面となっており、
前記光吸収材は、前記凹面に印刷を行うことにより形成されたものである
請求項1に記載の位相差素子。
【請求項3】
前記凸部の上面は、平坦面となっており、
前記光吸収材は、前記平坦面に箔転写を行うことにより形成されたものである
請求項1に記載の位相差素子。
【請求項4】
前記位相差層は、液晶を含んで構成されており、
前記凸部の側面は、傾斜面となっている
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の位相差素子。
【請求項5】
前記位相差領域は、第1の方向に延在する帯状の形状となっており、
前記凸部は、前記第1の方向に延在する複数の帯状凸部を含み、
前記光吸収材は、各帯状凸部の上面との対向領域に設けられ、かつ帯状の形状となっている
請求項4に記載の位相差素子。
【請求項6】
前記位相差層は、二種類の位相差領域を有し、
一方の種類の位相差領域は+λ/4のリタデーションを有し、
他方の種類の位相差領域は−λ/4のリタデーションを有する
請求項5に記載の位相差素子。
【請求項7】
映像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルを照明するバックライトユニットと、
前記表示パネルとの関係で前記バックライトユニットとは反対側に設けられた位相差素子と
を備え、
前記位相差素子は、
遅相軸の向きが互いに異なる二種類以上の位相差領域を有する位相差層と、
前記位相差領域を種類ごとに分離する凸部を有する基材と、
前記凸部の上面に設けられ、かつ印刷または箔転写により形成された光吸収材と
を有する
表示装置。
【請求項8】
凸部を有する基材と、
前記凸部の上面に設けられ、かつ箔転写により形成された光吸収層と
を備えた光吸収層付き基材。
【請求項9】
前記凸部の上面は、平坦面となっており、
前記光吸収層は、前記平坦面に箔転写を行うことにより形成されたものである
請求項8に記載の光吸収層付き基材。
【請求項10】
遅相軸の向きが互いに異なる二種類以上の位相差領域を有する位相差層と、前記位相差領域を種類ごとに分離する凸部を有する基材とを備えた光学素子を用意するとともに、支持基体上に、光吸収材を含む着色層を有する転写シートを用意する第1工程と、
前記凸部の上面に、接着層を介して前記転写シートを貼り付ける第2工程と、
前記転写シートを前記基材から剥離して、前記着色層を前記凸部の上面に転写する第3工程と
を含む位相差素子の製造方法。
【請求項11】
前記第2工程において、前記基材のうち前記凸部側の表面全体に前記接着層を形成したのち、前記接着層に前記転写シートを接触させた状態で前記接着層にエネルギーを与えて前記接着層を硬化させ、前記凸部の上面に、前記接着層を介して前記転写シートを貼り付ける
請求項10に記載の位相差素子の製造方法。
【請求項12】
前記第2工程において、前記転写シートの表面に前記接着層を形成したのち、前記接着層にエネルギーを与えて前記接着層を軟化させ、さらに前記接着層に前記転写シートを接触させた状態で冷却することにより前記接着層を硬化させ、前記凸部の上面に、前記接着層を介して前記転写シートを貼り付ける
請求項10に記載の位相差素子の製造方法。
【請求項13】
前記凸部の上面は、平坦面となっている
請求項10ないし請求項12のいずれか一項に記載の位相差素子の製造方法。
【請求項14】
遅相軸の向きが互いに異なる二種類以上の位相差領域を有する位相差層と、前記位相差領域を種類ごとに分離する凸部を有する基材とを備えた光学素子を用意したのち、印刷法を用いて、前記凸部の上面に、光吸収材を含む着色層を塗布する工程を含む
位相差素子の製造方法。
【請求項15】
前記凸部の上面は、凹面となっている
請求項14に記載の位相差素子の製造方法。
【請求項16】
前記第3工程において、原盤の反転パターンを転写することにより、前記凸部を有する基材を形成する
請求項10ないし請求項15のいずれか一項に記載の位相差素子の製造方法。
【請求項17】
凸部を有する基材と、光吸収材を含む着色層を有する転写シートとを用意する第1工程と、
前記凸部を有する基材のうち、前記凸部の上面に、接着層を介して前記転写シートを貼り付ける第2工程と、
前記転写シートを前記基材から剥離して、前記着色層を前記凸部の上面に転写する第3工程と
を含む光吸収層付き基材の製造方法。
【請求項18】
前記第2工程において、前記基材のうち前記凸部側の表面に前記接着層を形成したのち、前記接着層に前記転写シートを接触させた状態で前記接着層にエネルギーを与えて前記接着層を硬化させ、前記凸部の上面に、前記接着層を介して前記転写シートを貼り付ける
請求項17に記載の光吸収層付き基材の製造方法。
【請求項19】
前記第2工程において、前記転写シートの表面に前記接着層を形成したのち、前記接着層にエネルギーを与えて前記接着層を軟化させ、さらに前記接着層に前記転写シートを接触させた状態で冷却することにより前記接着層を硬化させ、前記凸部の上面に、前記接着層を介して前記転写シートを貼り付ける
請求項17に記載の光吸収層付き基材の製造方法。
【請求項20】
前記凸部の上面は、平坦面となっている
請求項17ないし請求項19のいずれか一項に記載の光吸収層付き基材の製造方法。
【請求項21】
前記第3工程において、原盤の反転パターンを転写することにより、前記凸部を有する基材を形成する
請求項17ないし請求項20のいずれか一項に記載の光吸収層付き基材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−164563(P2011−164563A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97756(P2010−97756)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】